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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1330003 |
審判番号 | 不服2016-16929 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-11 |
確定日 | 2017-07-06 |
事件の表示 | 特願2015-106708「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月22日出願公開、特開2016-214791〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年5月26日の出願であって、平成28年3月29日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年5月23日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成28年8月1日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成28年11月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正がなされたものである。 第2 平成28年11月11日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年11月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の概要 本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 所定の演出を画像表示部に表示可能な画像表示手段と、 可動役物に演出動作させることが可能な可動役物手段と、 前記画像表示手段と前記可動役物手段との作動を制御可能な演出制御手段と、 を備え、 前記可動役物手段の前記可動役物が、遊技領域を備えた遊技盤側に配設される盤側可動役物と、前記遊技盤を保持する機枠側に配設される枠側可動役物と、 を備えて構成され、 前記演出制御手段が、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物とを演出動作させる際に、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の演出動作を、他方の演出動作とずらす調整手段、を備えて構成され、 前記調整手段が、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の第1位置から第2位置への到達演出動作を第1タイミングでおこない、他方の前記枠側可動役物又は前記盤側可動役物の第3位置から第4位置への到達演出動作を前記第1タイミングとは異なる第2タイミングでおこなうことを特徴とする遊技機。」 から 「【請求項1】 A 所定の演出を画像表示部に表示可能な画像表示手段と、 B 可動役物に演出動作させることが可能な可動役物手段と、 C 前記画像表示手段と前記可動役物手段との作動を制御可能な演出制御手段と、 を備え、 D 前記可動役物手段の前記可動役物が、遊技領域を備えた遊技盤側に配設される盤側可動役物と、前記遊技盤を保持する機枠側に配設されて遊技者が操作可能な枠側可動役物と、 を備えて構成され、 E 前記演出制御手段が、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物とを演出動作させる際に、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の演出動作を、他方の演出動作とずらす調整手段、を備えて構成され、 F 前記調整手段が、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の第1位置から第2位置への到達演出動作を第1タイミングでおこない、他方の前記枠側可動役物又は前記盤側可動役物の第3位置から第4位置への到達演出動作を前記第1タイミングとは異なる第2タイミングでおこなうことを特徴とする遊技機。」 に補正された(下線部は、補正箇所を示す。また、A?Fは、分説するために当審にて付した。)。 2 補正の適否 補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「枠側可動役物」に関して、「遊技者が操作可能な」ものである点を限定するものである。 また、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。 3 独立特許要件について 本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)刊行物1に記載された発明 特開2015-19985号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。 (1-a) 「【0012】 遊技盤110は、前面に、遊技球により遊技を行うための遊技領域111と、下方から発射された遊技球が上昇して遊技領域111の上部位置へ向かう通路を形成するレール部材112と、遊技領域111の右側に遊技球を案内する案内部材113とを備えている。 本実施形態では、遊技者により視認され易い遊技領域111の位置に、演出のための各種の画像を表示する画像表示部114が配設されている。この画像表示部114は、液晶ディスプレイ等による表示画面を備え、遊技者によるゲームの進行に伴い、例えば、図柄抽選結果(図柄変動結果)を遊技者に報知するための装飾図柄を表示したり、キャラクタの登場やアイテムの出現による演出画像を表示したりする。 また、遊技盤110の前面に、各種の演出に用いられる可動役物115および盤ランプ116を備えている。可動役物115は、遊技盤110上で動作することにより各種の演出を行い、また、盤ランプ116は、発光することで各種の演出を行う。可動役物115は、図1に示すように画像表示部114に重ならない位置に待機した状態と、画像表示部114の前面に位置して画像表示部114に重なった状態とのそれぞれ移行可能に動作する。」 (1-b) 「【0024】 パチンコ遊技機100の枠部材150は、遊技者が演出に対する入力を行うための入力装置を備えている。図2-1(b)に示すように、本実施形態では、操作手段の一例としての演出ボタン161と、演出ボタン161に隣接し、略十字に配列された複数のキーからなる演出キー162と、が枠部材150に配設されている。図示の例において、遊技者は、例えば、十字に配列された4つのキーからなる演出キー162を操作することにより、画像表示部114に表示されている複数の画像の何れかを指示することが可能であり、また、演出ボタン161を操作することにより、指示した画像を選択することも可能である。また、入力装置の形態としては、図示した演出ボタン161および演出キー162の他、レバーやダイヤル等、演出の内容等に応じて様々な入力形態を採用することができる。 【0025】 図2-2は、演出ボタン161を詳細に説明するための図である。 本実施形態の演出ボタン161は、図2-2(a)に示すように、突出可能に構成された突出部161Pを有している。突出部161Pは、ランプ制御部320(図3参照)によって、突出した突出状態と、突出していない非突出状態とに制御される。 なお、演出ボタン161は、突出部161Pの突出状態および非突出状態のいずれの状態のおいても、遊技者が突出部161Pを押下することによって演出ボタン161を操作できる。突出状態における押し込み量は、非突出状態よりも大きくなっている。そのため、押し込み量が大きいことによりボタンを操作するという感覚を十分に得られるように構成している。また、このような突出部161Pが、非突出状態から突出状態に移行するという動作自体が遊技者に与えるインパクトが大きく、遊技者を楽しませることができる。 そして、演出ボタン161の操作に関して、操作を指示する操作指示音や、突出部161Pが操作されたことに基づく操作音が場面に応じて出力される。これら、演出ボタン161と音による演出については、後に詳しく説明する。」 (1-c) 「【0035】 〔演出制御部の構成・機能〕 演出制御部300は、演出を制御する際の演算処理を行うCPU301と、CPU301にて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROM302と、CPU301の作業用メモリ等として用いられるRAM303と、日時を計測するリアルタイムクロック(RTC)304と、を備えている。 演出制御部300は、例えば遊技制御部200から送られる特別図柄抽選での当選か否かの判定結果および変動パターンに基づいて、演出内容を設定する。その際、演出ボタン161または演出キー162を用いたユーザからの操作入力を受けて、操作入力に応じた演出内容を設定する場合もある。この場合、例えば演出ボタン等のコントローラ(不図示)から操作に応じた信号(操作信号)を受け付け、この操作信号により識別される操作内容を演出の設定に反映させる。 【0036】 また、演出制御部300は、遊技が所定期間中断された場合には、演出の一つとして客待ち用の画面表示の設定を指示する。 さらには、演出制御部300は、遊技制御部200より受信した高確率状態と低確率状態の変更情報、時短無状態と時短状態の変更情報に基づいて演出内容を設定する。 また、演出制御部300は、設定した演出内容の実行を指示するコマンドを画像/音響制御部310およびランプ制御部320に送る。 【0037】 〔画像/音響制御部の構成・機能〕 画像/音響制御部310は、演出内容を表現する画像および音響を制御する際の演算処理を行うCPU311と、CPU311にて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROM312と、CPU311の作業用メモリ等として用いられるRAM313と、を備えている。 そして、画像/音響制御部310は、演出制御部300から送られたコマンドに基づいて、画像表示部114に表示する画像およびスピーカ156から出力する音響を制御する。 具体的には、画像/音響制御部310のROM312には、画像表示部114において遊技中に表示する図柄画像や背景画像、遊技者に抽選結果を報知するための装飾図柄、遊技者に予告演出を表示するためのキャラクタやアイテム等といった画像データが記憶されている。 【0038】 ROM312には、さらに、画像データと同期させて、または画像データとは独立にスピーカ156から出力させる楽曲や音声、さらにはジングル等の効果音、演出ボタン161に関わる音(操作音や操作指示音)等といった各種音響データが記憶されている。CPU311は、ROM312に記憶された画像データや音響データの中から、演出制御部300から送られたコマンドに対応したものを選択して読み出す。さらには、読み出した画像データを用いて背景画像表示、図柄画像表示、図柄画像変動、およびキャラクタ/アイテム表示等のための画像処理と、読み出した音響データを用いた音声処理とを行う。 そして、画像/音響制御部310は、画像処理された画像データにより画像表示部114での画面表示を制御する。また、音声処理された音響データによりスピーカ156から出力される音響を制御する。 なお、本実施形態において、演出制御部300のもと画像/音響制御部310による制御によって通常演出時音声出力手段および特別演出時音声出力手段が実現される。 【0039】 〔ランプ制御部の構成・機能〕 ランプ制御部320は、盤ランプ116および枠ランプ157の発光や可動役物115および演出ボタン161の突出部161Pの動作を制御する際の演算処理を行うCPU321と、CPU321にて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROM322と、CPU321の作業用メモリ等として用いられるRAM323と、を備えている。 そして、ランプ制御部320は、演出制御部300から送られたコマンドに基づいて、盤ランプ116および枠ランプ157の点灯/点滅や発光色等を制御する。また、ランプ制御部320は、可動役物115や演出ボタン161の突出部161Pの動作を制御する。」 (1-d) 「【0163】 図30は、演出ボタン161に関わる音出力処理の内容を示すフローチャートである。 ここでは、上述した特別演出および通常演出を実行する場合を例に説明する。 まず、演出制御部300は、ボタン演出を実行する際に、特別演出であるか否かを判断する(ステップ3001)。・・・ 【0166】 ステップ3001において、実行する演出が特別演出である場合には(ステップ3001でYes)、演出ボタン161を突出状態に移行させる(ステップ3009)。その後、遊技者に対して演出ボタン161の操作を促すための操作指示音をスピーカ156にて出力する(ステップ3010)。本実施形態では、突出状態における操作指示音は、通常演出(非突出状態)とは異なり、突出部161Pの突出を表現する音を用いている。 なお、突出状態における操作指示音と、非突出状態における操作指示音が同じ音であっても構わない。 【0167】 次に、所定の有効期間内において、演出ボタン161が操作されたか否かを判断する(ステップ3011)。そして、演出ボタン161が操作された場合(ステップ3011でYes)、特別演出においては、演出ボタン161が操作されたことを示す操作音を出力しない(ステップ3012)。一方で、演出ボタン161の操作によって演出ボタンコマンド(図26のステップ2602参照)がセットされる。そして、演出制御部300は、演出ボタンコマンドに基づいて、演出ボタン161の操作のタイミングで特別演出として設定された内容の演出を実行する(ステップ3013)。 この特別演出における演出では、例えば図28を参照しながら説明したとおり、可動役物115等が動作し、この可動役物115の動作による演出に伴って大音量の効果音がスピーカ156から出力する。あるいは、特別遊技を行わないようはずれに当選したことを報知する場合には、逆に小音量で地味な効果音をスピーカ156から出力する。」 (1-e)上記摘記事項(1-d)より、刊行物1には、「演出制御部300は、ボタン演出を実行する際に、特別演出であるか否かを判断」し、「実行する演出が特別演出である場合に」、「演出ボタン161を突出状態に移行させ」、「その後、遊技者に対して演出ボタン161の操作を促すための操作指示音をスピーカ156にて出力」し、「そして、演出ボタン161が操作された場合」に「演出ボタン161の操作のタイミングで特別演出として設定された内容の演出を実行する」との制御が行われる点が記載されている。また、「特別演出における演出では」「可動役物115等が動作」するものであり、「演出ボタン161を突出状態に移行させ」る動作や「可動役物115等」の動作の制御は、上記摘記事項(1-c)より、「ランプ制御部320」が「演出制御部300から送られたコマンドに基づいて」行うものであり、さらに、「突出状態に移行」されるのは、上記摘記事項(1-b)より「 突出部161P」であるから、ランプ制御部320は、演出制御部300から送られたコマンドに基づいて、演出ボタン161の突出部161Pを突出状態に移行させ、その後、演出ボタン161が操作された場合、特別演出として設定された可動役物115が動作する演出を実行するといえる。 上記(1-a)?(1-d)の記載事項、及び、(1-e)の認定事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。(a?fは、本願発明のA?Fに対応させて付した。) 「a 演出制御部300から送られたコマンドに基づいて、演出のための各種の画像を表示する画像表示部114に表示する画像を制御する画像/音響制御部310と、(段落【0012】、【0037】) b 演出制御部300から送られたコマンドに基づいて、可動役物115や、突出した突出状態と、突出していない非突出状態とに制御される演出ボタン161の突出部161Pを有し、非突出状態から突出状態に移行するという動作自体により遊技者を楽しませる演出ボタン161の突出部161Pの動作を制御するランプ制御部320と、(段落【0025】、【0039】) c 演出内容を設定し、設定した演出内容の実行を指示するコマンドを画像/音響制御部310およびランプ制御部320に送る演出制御部300と、を備え、(段落【0036】) d 遊技領域111を備えた遊技盤110上で動作することにより各種の演出を行う可動役物115と、枠部材150に配設された操作手段としての演出ボタン161の突出部161Pと、を備え、(段落【0012】、【0024】、【0025】) e、f ランプ制御部320は、演出制御部300から送られたコマンドに基づいて、演出ボタン161の突出部161Pを突出状態に移行させ、その後、演出ボタン161が操作された場合、可動役物115が動作する演出を実行するパチンコ遊技機100。(認定事項(1-e))」 (2)対比 本願補正発明と刊行物1発明とを対比する(下記の(a)?(f)は、刊行物1発明の構成に対応している。)。 (a)刊行物1発明における「各種の画像を表示する」「演出」及び「画像表示部114」は、それぞれ、本願補正発明における「所定の演出」及び「画像表示部」に相当する。 そうすると、刊行物1発明における「演出制御部300から送られたコマンドに基づいて、演出のための各種の画像を表示する画像表示部114に表示する画像を制御する画像/音響制御部310」は、本願補正発明における「所定の演出を画像表示部に表示可能な画像表示手段」としての機能を有する。 (b)刊行物1発明における「可動役物115」は、本願補正発明における「可動役物」に相当する。また、刊行物1発明における「演出ボタン161の突出部161P」は、「突出した突出状態と、突出していない非突出状態とに制御される」ものであるから可動であり、また、「非突出状態から突出状態に移行するという動作自体により遊技者を楽しませることができるもの」であるから、「可動役物」ということができる。そして、刊行物1発明における「可動役物115や」「演出ボタン161の突出部161Pの動作」は、本願補正発明における「可動役物」の「演出動作」に相当する。 そうすると、刊行物1発明における「演出制御部300から送られたコマンドに基づいて、可動役物115や、突出した突出状態と、突出していない非突出状態とに制御される演出ボタン161の突出部161Pを有し、非突出状態から突出状態に移行するという動作自体により遊技者を楽しませる演出ボタン161の突出部161Pの動作を制御するランプ制御部320」は、本願補正発明における「可動役物に演出動作させることが可能な可動役物手段」としての機能を有する。 (c)刊行物1発明において、「演出制御部300」は、「演出内容を設定し、設定した演出内容の実行を指示するコマンドを画像/音響制御部310およびランプ制御部320に送る」ものであり、また、「画像/音響制御部310」及び「ランプ制御部320」は、「演出制御部300から送られたコマンドに基づいて」「制御」を行うものであるから、「演出制御部300」は、「演出内容の実行を指示するコマンド」を送ることにより「画像/音響制御部310」と「ランプ制御部320」との作動を制御可能であるといえる。 そうすると、刊行物1発明における「演出内容を設定し、設定した演出内容の実行を指示するコマンドを画像/音響制御部310およびランプ制御部320に送る演出制御部300」は、本願補正発明における「前記画像表示手段と前記可動役物手段との作動を制御可能な演出制御手段」としての機能を有する。 (d)刊行物1発明における「遊技領域111を備えた遊技盤110上で動作することにより各種の演出を行う可動役物115」は、本願補正発明における「遊技領域を備えた遊技盤側に配設される盤側可動役物」に相当する。また、刊行物1発明における「操作手段としての演出ボタン161の突出部161P」は「操作手段」であるから遊技者が操作可能なものであり、よって、刊行物1発明における「枠部材150に配設された操作手段としての演出ボタン161の突出部161P」は、本願補正発明における「前記遊技盤を保持する機枠側に配設されて遊技者が操作可能な枠側可動役物」に相当する。そして、「可動役物115」と「演出ボタン161の突出部161P」とは、上記(b)で検討したとおり、ランプ制御部320(可動役物手段)で制御するものといえる。 そうすると、刊行物1発明における、「ランプ制御部320」で制御する「遊技領域111を備えた遊技盤110上で動作することにより各種の演出を行う可動役物115」と、「枠部材150に配設された操作手段としての演出ボタン161の突出部161P」とを備えることは、本願補正発明における「前記可動役物手段の前記可動役物が、遊技領域を備えた遊技盤側に配設される盤側可動役物と、前記遊技盤を保持する機枠側に配設されて遊技者が操作可能な枠側可動役物と」を備えることに相当する。 (e、f)刊行物1発明における「演出ボタン161の突出部161Pを突出状態に移行」させる動作、及び、「可動役物115が動作する演出」における可動役物115の動作は、それぞれ、本願補正発明における「一方の演出動作」、及び、「他方の演出動作」に相当する。また、刊行物1発明において、「可動役物115が動作する演出」は、「演出ボタン161の突出部161Pを突出状態に移行させ」る動作が行われて、「その後、演出ボタン161が操作された場合」に行われるものであるから、「演出ボタン161を突出状態に移行させる動作」は、「可動役物115」の動作とずれているといえる。さらに、「演出ボタン161の突出部161Pを突出状態に移行」させる動作、及び、「可動役物115」の動作は、「演出制御部300」が「設定した演出内容の実行を指示するコマンド」に基づいて「ランプ制御部320」が行うものであるから、演出内容を設定する「演出制御部300」は、本願補正発明における「一方の演出動作を、他方の演出動作とずらす調整手段」としての機能を有する。 刊行物1発明における「演出ボタン161の突出部161Pを突出状態に移行」させる前の「演出ボタン161の突出部161P」の位置、及び、「演出ボタン161の突出部161Pを突出状態に移行」させた後の「演出ボタン161の突出部161P」の位置は、それぞれ、本願補正発明における「第1位置」、及び、「第2位置」に相当し、「演出ボタン161の突出部161Pを突出状態に移行」させる動作を行うタイミングが、本願補正発明における「前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の第1位置から第2位置への到達演出動作」を行う「第1タイミング」に相当する。 また、刊行物1発明における「可動役物115が動作する演出」を行う前の「可動役物115」の位置、及び、「可動役物115が動作する演出」を行った後の「可動役物115」の位置は、それぞれ、本願補正発明における「第3位置」、及び、「第4位置」に相当し、「可動役物115が動作する演出」を行うタイミングが、本願補正発明における「他方の前記枠側可動役物又は前記盤側可動役物の第3位置から第4位置への到達演出動作」を行う「第2タイミング」に相当する。 そして、刊行物1発明は、「演出ボタン161を突出状態に移行」させ、「その後、演出ボタン161が操作され」てから「可動役物115が動作する演出を実行する」ものであるから、「可動役物115が動作する演出」は、「演出ボタン161の突出部161Pを突出状態に移行」の動作を行うタイミングとは異なるタイミングで行われるものといえる。 そうすると、刊行物1発明における「ランプ制御部320は、演出制御部300から送られたコマンドに基づいて、演出ボタン161の突出部161Pを突出状態に移行させ、その後、演出ボタン161が操作された場合、可動役物115が動作する演出を実行する」ことは、本願補正発明における「前記演出制御手段が、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物とを演出動作させる際に、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の演出動作を、他方の演出動作とずらす調整手段、を備えて構成され、 前記調整手段が、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の第1位置から第2位置への到達演出動作を第1タイミングでおこない、他方の前記枠側可動役物又は前記盤側可動役物の第3位置から第4位置への到達演出動作を前記第1タイミングとは異なる第2タイミングでおこなう」ことに相当する。 また、刊行物1発明における「パチンコ遊技機100」は、本願補正発明における「遊技機」に相当する。 以上、(a)?(e)の対比より、本願補正発明と刊行物1発明とは、 「A 所定の演出を画像表示部に表示可能な画像表示手段と、 B 可動役物に演出動作させることが可能な可動役物手段と、 C 前記画像表示手段と前記可動役物手段との作動を制御可能な演出制御手段と、 を備え、 D 前記可動役物手段の前記可動役物が、遊技領域を備えた遊技盤側に配設される盤側可動役物と、前記遊技盤を保持する機枠側に配設されて遊技者が操作可能な枠側可動役物と、 を備えて構成され、 E 前記演出制御手段が、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物とを演出動作させる際に、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の演出動作を、他方の演出動作とずらす調整手段、を備えて構成され、 F 前記調整手段が、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の第1位置から第2位置への到達演出動作を第1タイミングでおこない、他方の前記枠側可動役物又は前記盤側可動役物の第3位置から第4位置への到達演出動作を前記第1タイミングとは異なる第2タイミングでおこなう遊技機。」 である点で一致し、相違点はない。 (3)判断 したがって、本願補正発明は刊行物1発明と同一であり、刊行物1に記載された発明といえる。 仮に、相違点があったとしても、本願補正発明は刊行物1発明から当業者が容易に想到することができたものであるといえる。 (4)まとめ 以上のように、本願補正発明は刊行物1発明と同一の発明であるか、又は、当業者が刊行物1発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号、又は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 補正却下の決定についてのむすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成28年5月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、特に、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 A 所定の演出を画像表示部に表示可能な画像表示手段と、 B 可動役物に演出動作させることが可能な可動役物手段と、 C 前記画像表示手段と前記可動役物手段との作動を制御可能な演出制御手段と、 を備え、 D 前記可動役物手段の前記可動役物が、遊技領域を備えた遊技盤側に配設される盤側可動役物と、前記遊技盤を保持する機枠側に配設される枠側可動役物と、 を備えて構成され、 E 前記演出制御手段が、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物とを演出動作させる際に、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の演出動作を、他方の演出動作とずらす調整手段、を備えて構成され、 F 前記調整手段が、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の第1位置から第2位置への到達演出動作を第1タイミングでおこない、他方の前記枠側可動役物又は前記盤側可動役物の第3位置から第4位置への到達演出動作を前記第1タイミングとは異なる第2タイミングでおこなうことを特徴とする遊技機。」 2 刊行物2に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2015-62635号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。 (2-a) 「【0020】 遊技盤30の表面には、ガイドレール31で囲われた略円形状の遊技領域32が形成されている。遊技領域32は、遊技盤30の四隅に各々設けられた樹脂製のサイドケース33及びガイドレール31に囲繞されて構成される。遊技領域32には、ほぼ中央に表示装置41を備えたセンターケース(遊技演出構成体)40が配置されている。表示装置41は、センターケース40に設けられた凹部に、センターケース40の前面より奥まった位置に取り付けられている。すなわち、センターケース40は表示装置41の表示領域の周囲を囲い、表示装置41の表示面よりも前方へ突出し周囲の遊技領域32から遊技球が飛び込みにくくするように形成されている。 【0021】 表示装置41(変動表示装置)は、例えば、LCD(液晶表示器)、CRT(ブラウン管)等の表示画面を有する装置で構成されている。表示画面の画像を表示可能な領域(表示領域)には、複数の識別情報(特別図柄)や特図変動表示ゲームを演出するキャラクタや演出効果を高める背景画像等の遊技に関する情報が表示される。表示装置41の表示画面においては、識別情報として割り当てられた複数の特別図柄が変動表示(可変表示)されて、特図変動表示ゲームに対応した飾り特図変動表示ゲームが行われる。また、表示画面には遊技の進行に基づく演出のための画像(例えば、大当り表示画像、ファンファーレ表示画像、エンディング表示画像等)が表示される。」 (2-b) 「【0081】 次に、図4を用いて、演出制御装置300の構成について説明する。 演出制御装置300は、遊技用マイコン111と同様にアミューズメントチップ(IC)からなる主制御用マイコン(CPU)311と、主制御用マイコン311からのコマンドやデータに従って表示装置41への映像表示のための画像処理を行うグラフィックプロセッサとしてのVDP(Video Display Processor)312と、各種のメロディや効果音などをスピーカ19a,19bから再生させるため音の出力を制御する音源LSI314を備えている。 【0082】 上記主制御用マイコン311には、CPUが実行するプログラムを格納したPROM(プログラマブルリードオンリメモリ)からなるプログラムROM321、作業領域を提供するRAM322、種々のデータを記憶するFeRAM323、日付や時間を管理するRTC(Real Time Clock)328が接続されている。なお、主制御用マイコン311の内部にも作業領域を提供するRAMが設けられている。また、主制御用マイコン311にはWDT(ウォッチドッグ・タイマ)回路324が接続されている。主制御用マイコン311は、遊技用マイコン111からのコマンドを解析し、演出内容を決定してVDP312へ出力映像の内容を指示したり、音源LSI314への再生音の指示、装飾ランプの点灯、モータの駆動制御、演出時間の管理などの処理を実行する。また、主制御用マイコン311には、ガラス枠15に設けられたマイク80aにより集音された音声を認識する音声認識ユニット80が接続されている。」 (2-c) 「【0089】 また、演出制御装置300には、遊技盤30(センターケース40を含む)に設けられているLED(発光ダイオード)を有する盤装飾装置46を駆動制御する盤装飾LED制御回路332、ガラス枠15に設けられているLED(発光ダイオード)を有する枠装飾装置(例えば枠装飾装置18等)を駆動制御する枠装飾LED制御回路333、遊技盤30(センターケース40を含む)に設けられている盤演出装置44(例えば表示装置41における演出表示と協働して演出効果を高める可動役物等)を駆動制御する盤演出可動体制御回路334が設けられている。ランプやモータ及びソレノイドなどを駆動制御するこれらの制御回路332?334は、アドレス/データバス340を介して主制御用マイコン311と接続されている。なお、ガラス枠15に設けられているモータ(例えばムービングライト16を動作させるモータ)等の枠演出装置を駆動制御する枠演出可動体制御回路を備えていても良い。」 (2-d) 「【0549】 本実施形態の遊技機10が特徴とする枠役物95について説明する。 図133に、本実施形態の遊技機10が備える前面枠12及びガラス枠15の正面図の一例を示す。また、図134に、本実施形態の遊技機10の正面図の一例を示す。 枠役物95は、図133及び図134に示すように、所定の立体形状(本実施形態の場合、馬の形状)をなし、ガラス枠15の前面右部に、その一部がカバーガラス14と前後に重なるように設けられている。」 (2-e) 「【0552】 なお、枠役物95は、可動式であってもよいし、非可動式であってもよい。 枠役物95が可動式である場合、当該枠役物95は、例えば、図134に示すように、第1状態(初期状態)として、表示装置41の表示画面と前後に重ならない状態(以下、単に「画面に重ならない状態」という)と、図135に示すように、第2状態として、その一部が表示装置41の表示画面と前後に重なる状態(以下、単に「画面に重なる状態」という)と、に変換可能に構成することができる。」 (2-f) 「【0573】 図145に示すように、演出役物96は、例えば、遊技盤30と表示装置41との間の空間に配設されており、表示装置41の表示画面と前後に重ならない状態(すなわち、遊技盤30に隠れて視認不能な状態)と、表示装置41の表示画面と前後に重なる状態(すなわち、遊技盤30(センターケース40)に形成された表示装置41の表示画面を露出するための開口内に出現する視認可能な状態)と、に変換可能となっている。 これにより、カバーガラス14を介して枠役物95と演出役物96とでより大きな役物を形成することができる。枠役物95が大型化するほど、枠役物95がガラス枠15の開閉の邪魔になる、ガラス枠15の開閉時に枠役物95が破損しやすくなる等の要因で、ガラス枠15が開閉し難くなるが、枠役物95と演出役物96とを組み合わせることで、ガラス枠15を開閉しやすくすることと、より大きな役物を設けることと、を両立することが可能となる。 【0574】 図146に、本実施形態における、枠役物95と演出役物96の動作タイミングの一例を説明するためのタイミングチャートを示す。 本実施形態の場合、演出役物96が動いて視認可能な状態になると、枠役物95が画面に重ならない状態(図143参照)から画面に重なる状態(図144参照)に変換するよう構成されている。 具体的には、例えば、図146に示すように、演出役物96は、発射位置指定信号がOFFのとき、すなわち、右打ちよりも左打ちの方が遊技者にとって有利なときに、所定のタイミングで、視認不能な状態から視認可能な状態に変換する。 演出役物96が視認可能な状態になると、枠役物95が画面に重ならない状態から画面に重なる状態に変換し、その後、演出役物96が視認可能な状態から視認不能な状態に戻るとともに、枠役物95が画面に重なる状態から画面に重ならない状態に戻る。」 (2-g) 「【0577】 なお、枠役物95が画面に重ならない状態から画面に重なる状態への変換中に、枠役物規制フラグがONされた場合には、画面に重ならない状態から画面に重なる状態に変換した後に、画面に重ならない状態に戻るよう構成することも可能であるし、画面に重ならない状態から画面に重なる状態に変換する途中であっても、画面に重ならない状態に戻るよう構成することも可能である。 また、遊技球転動通路42の位置は、図143?図145に示す位置に限られず、適宜任意に変更可能である。また、遊技球転動通路42は、変形例3の遊技球転動通路42(図138参照)のように、二股に分岐していてもよい。 また、枠役物95の動作タイミングや演出役物96の動作タイミングは、前述したタイミングに限られるものではなく、適宜任意に変更可能である。」 (2-h)図146には、演出役物が可動となった後、枠役物が可動となり、その後、演出役物と枠役物とが同時に停止する点がタイミングチャートとして図示されている。 (2-i)上記(2-f)の「図146に、本実施形態における、枠役物95と演出役物96の動作タイミングの一例を説明するためのタイミングチャートを示す。 本実施形態の場合、演出役物96が動いて視認可能な状態になると、枠役物95が画面に重ならない状態(図143参照)から画面に重なる状態(図144参照)に変換するよう構成されている。」(【0574】)との記載事項、及び、上記(2-h)の認定事項より、演出役物96が動いて視認可能な状態になると、枠役物95が画面に重ならない状態から画面に重なる状態に変換する時の動作タイミングが、演出役物96が可動となった後、枠役物95が可動となり、その後、演出役物96と枠役物95とが同時に停止するものであるといえる。 (2-j)上記(2-b)、(2-c)、(2-f)の記載事項より、「主制御用マイコン311は、遊技用マイコン111からのコマンドを解析し、演出内容を決定してVDP312へ出力映像の内容を指示したり、音源LSI314への再生音の指示、装飾ランプの点灯、モータの駆動制御、演出時間の管理などの処理を実行する」(【0082】)ものであり、また、「盤演出装置44(例えば表示装置41における演出表示と協働して演出効果を高める可動役物等)を駆動制御する盤演出可動体制御回路334」は「アドレス/データバス340を介して主制御用マイコン311と接続されている。」(【0089】)から、「主制御用マイコン311」は、「演出役物96が動いて視認可能な状態になると、枠役物95が画面に重ならない状態(図143参照)から画面に重なる状態(図144参照)に変換する」(【0574】)ように枠役物95と演出役物96とを盤演出可動体制御回路334に駆動制御させる機能を備えているといえる。 上記(2-a)?(2-g)の記載事項、及び、(2-h)?(2-j)の認定事項を総合すると、刊行物2には、次の発明(以下「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる。(a?fは、本願発明のA?Fに対応させて付した。) 「a 遊技の進行に基づく演出のための画像が表示される表示画面を有する表示装置41への映像表示のための画像処理を行うVDP312と、(段落【0021】、【0081】) b 演出効果を高める可動役物等の盤演出装置44を駆動制御する盤演出可動体制御回路334と、(段落【0089】) c 演出内容を決定してVDP312へ出力映像の内容を指示し、盤演出可動体制御回路334と接続される主制御用マイコン311と、を備え、(段落【0082】、【0089】) d 遊技盤30と表示装置41との間の空間に配設されており、動いて視認不能な状態から視認可能な状態に変換する演出役物96と、ガラス枠15に設けられ、可動式であって画面に重ならない状態から画面に重なる状態に変換する枠役物95とを備え、(段落【0549】、【0552】、【0573】、【0574】) e 主制御用マイコン311は、演出役物96が動いて視認可能な状態になると、枠役物95が画面に重ならない状態から画面に重なる状態に変換するように、枠役物95と演出役物96とを盤演出可動体制御回路334に駆動制御させる機能を備えて構成されており、(段落【0574】、認定事項(2-j)) f 主制御用マイコン311は、枠役物95と演出役物96との動作タイミングを、演出役物96が可動となった後、枠役物95が可動となり、その後、演出役物96と枠役物95とが同時に停止するものとし、枠役物95の動作タイミングや演出役物96の動作タイミングは、適宜任意に変更可能である、遊技機10。(段落【0574】、【0577】、認定事項(2-i))」 3 対比・判断 本願補正発明と刊行物2発明とを対比する(下記の(a)?(f)は、刊行物2発明の構成に対応している。)。 (a)刊行物2発明における「遊技の進行に基づく演出のための画像」、「表示画面」、及び、「VDP312」は、本願発明における「所定の演出」、「画像表示部」、及び、「画像表示手段」に相当する。 そうすると、刊行物2発明における「遊技の進行に基づく演出のための画像が表示される表示画面を有する表示装置41への映像表示のための画像処理を行うVDP312」は、本願発明における「所定の演出を画像表示部に表示可能な画像表示手段」に相当する。 (b)刊行物2発明における「演出効果を高める可動役物等の盤演出装置44」に含まれる「可動役物」は、本願発明における「可動役物」に相当する。また、刊行物2発明における、「演出効果を高める可動役物等の盤演出装置44を駆動制御する」ことは、本願発明における「可動役物に演出動作させること」に相当する。 そうすると、刊行物2発明における「演出効果を高める可動役物等の盤演出装置44を駆動制御する盤演出可動体制御回路334」は、本願発明における「可動役物に演出動作させることが可能な可動役物手段」に相当する。 (c)刊行物2発明における「演出内容を決定してVDP312へ出力映像の内容を指示」することは、本願発明における「画像表示手段」の「作動を制御」することに相当する。また、本願発明における「盤演出可動体制御回路334」が、「演出内容を決定」する「制御回路334と接続される主制御用マイコン311」により制御可能であることは、当業者にとって自明である。 そうすると、刊行物2発明における「演出内容を決定してVDP312へ出力映像の内容を指示し、盤演出可動体制御回路334と接続される主制御用マイコン311」は、本願発明における「前記画像表示手段と前記可動役物手段との作動を制御可能な演出制御手段」に相当する。 (d)刊行物2発明における「演出役物96」及び「枠役物95」は、それぞれ、「動いて視認不能な状態から視認可能な状態に変換する」及び「可動式であって画面に重ならない状態から画面に重なる状態に変換する」ものであるから、「可動役物」であるといえる。また、「演出役物96」及び「枠役物95」が、「盤演出可動体制御回路334」に駆動制御される「演出効果を高める可動役物等の盤演出装置44」を構成する可動役物であることは、当業者にとって自明である。 さらに、刊行物2発明における「遊技盤30と表示装置41との間の空間に配設」、「演出役物96」、「ガラス枠15に設けられ」、及び、「枠役物95」は、それぞれ、本願発明における「遊技領域を備えた遊技盤側に配設」、「盤側可動役物」、「前記遊技盤を保持する機枠側に配設され」、及び、「枠側可動役物」に相当する。 そうすると、刊行物2発明における「遊技盤30と表示装置41との間の空間に配設されており、動いて視認不能な状態から視認可能な状態に変換する演出役物96と、ガラス枠15に設けられ、可動式であって画面に重ならない状態から画面に重なる状態に変換する枠役物95とを備え」は、本願発明における「前記可動役物手段の前記可動役物が、遊技領域を備えた遊技盤側に配設される盤側可動役物と、前記遊技盤を保持する機枠側に配設される枠側可動役物と、を備えて構成され」に相当する。 (e)刊行物2発明において、「演出役物96が動いて視認可能な状態になると、枠役物95が画面に重ならない状態から画面に重なる状態に変換するように、枠役物95と演出役物96とを」「駆動制御させる」際には、「演出役物96」と「枠役物95」の演出動作は、その一方の演出動作が、他方の演出動作とずれているといえる。よって、刊行物2発明における「演出役物96が動いて視認可能な状態になると、枠役物95が画面に重ならない状態から画面に重なる状態に変換するように、枠役物95と演出役物96とを盤演出可動体制御回路334に駆動制御させる機能」は、本願発明における「前記枠側可動役物と前記盤側可動役物とを演出動作させる際に、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の演出動作を、他方の演出動作とずらす調整手段」に相当する。 そうすると、刊行物2発明における「主制御用マイコン311は、演出役物96が動いて視認可能な状態になると、枠役物95が画面に重ならない状態から画面に重なる状態に変換するように、枠役物95と演出役物96とを盤演出可動体制御回路334に駆動制御させる機能を備えて構成されて」いることは、本願発明における「前記演出制御手段が、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物とを演出動作させる際に、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の演出動作を、他方の演出動作とずらす調整手段、を備えて構成され」ていることに相当する。 (f)刊行物2発明における、「演出役物96が可動となった」時の「演出役物96」の位置、及び、「演出役物96と枠役物95とが同時に停止」した時の「演出役物96」の位置が、それぞれ、本願発明における「第1位置」及び「第2位置」に相当し、刊行物2発明における、「演出役物96が可動となった」時から「演出役物96と枠役物95とが同時に停止」した時までの動作のタイミングが、本願発明における「第1タイミング」に相当する。 刊行物2発明における、「枠役物95が可動」となった時の「枠役物95」の位置、及び、「演出役物96と枠役物95とが同時に停止」した時の「枠役物95」の位置が、それぞれ、本願発明における「第3位置」及び「第4位置」に相当し、刊行物2発明における、「枠役物95が可動」となった時から「演出役物96と枠役物95とが同時に停止」した時までの動作のタイミングが、本願発明における「第2タイミング」に相当する。 また、枠役物95と演出役物96の動作タイミングは、「演出役物96が可動となった後、枠役物95が可動と」なるものであるから、その可動となる時間が異なるものであり、枠役物95の動作タイミングと演出役物96の動作タイミングとは異なるといえる。 そうすると、刊行物2発明における「主制御用マイコン311は、枠役物95と演出役物96との動作タイミングを、演出役物96が可動となった後、枠役物95が可動となり、その後、演出役物96と枠役物95とが同時に停止するものとし、枠役物95の動作タイミングや演出役物96の動作タイミングは、適宜任意に変更可能である」ことは、本願発明における「前記調整手段が、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の第1位置から第2位置への到達演出動作を第1タイミングでおこない、他方の前記枠側可動役物又は前記盤側可動役物の第3位置から第4位置への到達演出動作を前記第1タイミングとは異なる第2タイミングでおこなう」ことに相当する。 また、刊行物2発明における「遊技機10」は、本願発明における「遊技機」に相当する。 以上、(a)?(f)の対比より、本願発明と刊行物2発明とは、 「A 所定の演出を画像表示部に表示可能な画像表示手段と、 B 可動役物に演出動作させることが可能な可動役物手段と、 C 前記画像表示手段と前記可動役物手段との作動を制御可能な演出制御手段と、 を備え、 D 前記可動役物手段の前記可動役物が、遊技領域を備えた遊技盤側に配設される盤側可動役物と、前記遊技盤を保持する機枠側に配設される枠側可動役物と、 を備えて構成され、 E 前記演出制御手段が、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物とを演出動作させる際に、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の演出動作を、他方の演出動作とずらす調整手段、を備えて構成され、 F 前記調整手段が、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の第1位置から第2位置への到達演出動作を第1タイミングでおこない、他方の前記枠側可動役物又は前記盤側可動役物の第3位置から第4位置への到達演出動作を前記第1タイミングとは異なる第2タイミングでおこなうことを特徴とする遊技機。」 である点で一致し、相違点はない。 したがって、本願発明は刊行物2発明と同一であり、刊行物2に記載された発明といえる。 なお、請求人は平成28年5月23日付けの意見書において、「すなわち、開始調整手段を調整手段と書き換えましたが、本願発明のポイントは、開始時点だけでなく、終了時点も異なったタイミングのずれである、という点を明確にするために、調整手段と補正しました。」、及び、「これに対し、引用文献1には、・・・すなわち、引用文献1では、演出役物96が移動を開始すると、演出役物96の移動中に、枠役物95が移動を開始し、そして、演出役物96と枠役物95とが共に移動した後、同時に、演出役物96と枠役物95とが動作を停止しており、そのため、共に動作中の時期があり、そして、同時に停止することから、視線が定め難く、「枠側可動役物と盤側可動役物との演出動作を共に視認し易い」という本願発明の作用・効果を達成できません。」との主張をしているが、請求項1には、「第1タイミングとは異なる第2タイミングでおこなう」との事項が、開始時点だけでなく、終了時点も異なったものであると解釈できる旨の記載はないし、通常、開始時点が異なっていれば、終了時点が異なっていないとしても、同一の「タイミング」ではなく異なる「タイミング」であると解釈されるから、請求人の上記主張は請求項の記載に基づくものではなく、採用できない。 また、仮に本願発明における「前記調整手段が、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の第1位置から第2位置への到達演出動作を第1タイミングでおこない、他方の前記枠側可動役物又は前記盤側可動役物の第3位置から第4位置への到達演出動作を前記第1タイミングとは異なる第2タイミングでおこなう」との事項が、枠側可動役物と盤側可動役物との一方の第1位置から第2位置への到達演出動作と他方の第3位置から第4位置への到達演出動作とが、その開始時点だけでなく、終了時点も異なっていることを意味すると解釈すると、刊行物2発明と本願発明とは、以下の点で相違する。 (相違点)本願発明は「前記調整手段が、前記枠側可動役物と前記盤側可動役物との一方の第1位置から第2位置への到達演出動作を第1タイミングでおこない、他方の前記枠側可動役物又は前記盤側可動役物の第3位置から第4位置への到達演出動作を前記第1タイミングとは異なる第2タイミングでおこなう」のに対して、刊行物2発明の枠役物95と演出役物96の動作タイミングは、「演出役物が可動となった後、枠役物が可動となり、その後、演出役物と枠役物とが同時に停止する」ものであって、停止の時点が異なるものであるから、演出役物96の演出動作を、枠役物95の動作タイミングである「第1タイミングとは異なる第2タイミングでおこなう」(タイミングが「異なる」とは、その開始時点だけでなく、終了時点も異なったことを意味する)とはいえない点。 上記相違点について検討する。 遊技機の分野において、2つの可動役物を演出動作させる際に、一方の可動役物の第1位置から第2位置への到達演出動作を第1タイミングで行い、他方の可動役物の第3位置から第4位置への到達演出動作を第1タイミングとは異なる第2タイミングで行い、また、第1タイミングと第2タイミングとは、その開始時点だけでなく終了時点も異なるものとすることは、本願出願前における周知技術である(例えば、特開2011-234807号公報の【0722】、【0723】、図199、特開2011-172703号公報の【0050】-【0053】、図6-9、特開2013-220142号公報の【0444】、【0445】、図2参照。)。 そして、刊行物2発明は、「枠役物95の動作タイミングや演出役物96の動作タイミングは、適宜任意に変更可能」なものであるから、「演出役物96が動いて視認可能な状態になると、枠役物95が画面に重ならない状態から画面に重なる状態に変換」させるための枠役物95と演出役物96との具体的な動作タイミングとして、上記周知技術を適用し、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 また、本願発明の効果は、刊行物2発明、及び、本願出願前における周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別なものではない。 以上のように、本願発明は刊行物2発明と同一の発明であるか、又は、当業者が刊行物2発明と本願出願前における周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-05-08 |
結審通知日 | 2017-05-09 |
審決日 | 2017-05-23 |
出願番号 | 特願2015-106708(P2015-106708) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F) P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 酒井 保、河本 明彦、小泉 早苗 |
特許庁審判長 |
平城 俊雅 |
特許庁審判官 |
萩田 裕介 長崎 洋一 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 江間 路子 |
代理人 | 飯田 昭夫 |
代理人 | 上田 千織 |
代理人 | 安藤 敏之 |