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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  D04H
審判 全部申し立て 2項進歩性  D04H
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  D04H
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D04H
管理番号 1330092
異議申立番号 異議2016-700780  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-26 
確定日 2017-06-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5873225号発明「立体網状繊維集合体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5873225号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第5873225号の請求項1?4、6?10に係る特許を維持する。 特許第5873225号の請求項5に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5873225号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成27年7月3日(優先権主張 平成26年7月4日、日本国)を国際特許出願日とする出願であって、平成28年1月22日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人大塚博明及び柏木里実により特許異議の申立てがされ、平成28年11月29日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年1月27日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)があり、その訂正の請求に対して、特許異議申立人大塚博明及び特許異議申立人柏木里実から、それぞれ意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア.?ク.のとおりである。
ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「プロピレン系重合体(a)を含んでなる樹脂から構成される150?100000dtexの繊度の繊維からなり、多数の該繊維を溶融状態でランダムな方向性を持たせて互いに融着させた立体網状繊維集合体であって、
前記プロピレン系重合体(a)は、その全モノマー100モル%に対して、51?95モル%のプロピレンおよび5?49モル%のα-オレフィンを構造単位として有する、立体網状繊維集合体。」
と記載されているのを、
「プロピレン系重合体(a)を含んでなる樹脂から構成される150?100000dtexの繊度の繊維からなり、多数の該繊維を溶融状態でランダムな方向性を持たせて互いに融着させた立体網状繊維集合体であって、
前記プロピレン系重合体(a)は、その全モノマー100モル%に対して、51?95モル%のプロピレンおよび5?49モル%のα-オレフィンを構造単位として有し、
前記樹脂は、前記プロピレン系重合体(a)およびプロピレン単独重合体(b)から構成されるポリマーアロイである、立体網状繊維集合体。」
に訂正する。

イ.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

ウ.訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項5に記載の立体網状繊維集合体。」
と記載されているのを、
「請求項1?4のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。」
に訂正する。

エ.訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項5または6に記載の立体網状繊維集合体。」
と記載されているのを、
「請求項1?4および6のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。」
に訂正する。

オ.訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1?7のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。」
と記載されているのを、
「請求項1?4、6および7のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。」
に訂正する。

カ.訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1?8のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。」
と記載されているのを、
「請求項1?4および6?8のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。」
に訂正する。

キ.訂正事項7
特許請求の範囲の請求項10に
「請求項1?9のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。」
と記載されているのを、
「請求項1?4および6?9のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。」
に訂正する。

ク.訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6に
「前記ポリマーアロイは、該ポリマーアロイの全体100重量%に対して、10?80重量%の前記プロピレン単独重合体(b)を含んでなる」
と記載されているのを、
「前記ポリマーアロイは、該ポリマーアロイの全体100重量%に対して、20?70重量%の前記プロピレン単独重合体(b)を含んでなる」
に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項1?7について
訂正事項1、2の訂正は、訂正前の請求項1に係る発明に訂正前の請求項5の発明特定事項を加えて限定し、それに伴い、訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、訂正事項3?7の訂正は、上記訂正事項2の訂正に伴い、従属項である請求項6?10が引用する項から請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、いずれの訂正も、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

イ.訂正事項8について
訂正事項8の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0029】の「・・・該ポリマーアロイは、樹脂全体100重量%に対して、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下のプロピレン単独重合体(b)を含んでなる。・・・」の記載及び段落【0046】の【表1】のポリマーアロイの全体100重量%に対して、20?70重量%のプロピレン単独重合体(b)を含んでなる実施例3?7に基づいて、特許請求の範囲の請求項6のポリマーアロイの全体100重量%に対するプロピレン単独重合体(b)の含有量を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項8の訂正は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

(3)一群の請求項について
訂正前の請求項2?10は、訂正前の請求項1を引用する請求項であるから、請求項1?10は一群の請求項であるところ、本件訂正は、一群の請求項に対して請求されたものである。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?10〕について訂正することを認める。

3.本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?10に係る発明(以下「本件発明1?10」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された次の事項により特定されるとおりのものであると認める。
「【請求項1】
プロピレン系重合体(a)を含んでなる樹脂から構成される150?100000dtexの繊度の繊維からなり、多数の該繊維を溶融状態でランダムな方向性を持たせて互いに融着させた立体網状繊維集合体であって、
前記プロピレン系重合体(a)は、その全モノマー100モル%に対して、51?95モル%のプロピレンおよび5?49モル%のα-オレフィンを構造単位として有し、
前記樹脂は、前記プロピレン系重合体(a)およびプロピレン単独重合体(b)から構成されるポリマーアロイである、立体網状繊維集合体。
【請求項2】
前記α-オレフィンは、2?10個の炭素原子を有するα-オレフィンである、請求項1に記載の立体網状繊維集合体。
【請求項3】
前記2?10個の炭素原子を有するα-オレフィンは、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンからなる群から選択される1種以上である、請求項2に記載の立体網状繊維集合体。
【請求項4】
前記プロピレン系重合体(a)は、4.0以下の分子量分布Mw/Mnを有する、請求項1?3のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記ポリマーアロイは、該ポリマーアロイの全体100重量%に対して、20?70重量%の前記プロピレン単独重合体(b)を含んでなる、請求項1?4のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。
【請求項7】
前記プロピレン単独重合体(b)は、2.0?6.0の分子量分布Mw/Mnを有する、請求項1?4および6のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。
【請求項8】
アルコール中に1日間浸漬させた場合の前記立体網状繊維集合体の重量変化率が0%である、請求項1?4、6および7のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。
【請求項9】
前記立体網状繊維集合体は、圧縮率が50%の時の圧縮応力と圧縮率が25%の時の圧縮応力との比率が、1.7?3.0である、請求項1?4および6?8のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。
【請求項10】
医療・介護用器具として使用される、請求項1?4および6?9のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。」

4.取消理由の概要
訂正前の請求項1?10に係る特許に対して平成28年11月29日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。なお、特許異議申立人大塚博明による特許異議申立書を、以下「申立書1」といい、特許異議申立人柏木里実による特許異議申立書を、以下「申立書2」という。

1)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3)本件特許は、明細書、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

刊行物1.特許第5454733号公報(申立書1の甲第1号証)
刊行物2.国際公開第2009/033540号(申立書1の甲第2号証)
刊行物3.特表2010-523758号公報(申立書1の甲第3号証)
刊行物4.ネロ・パスクイーニ編著、横山裕外1名翻訳監修、「新版ポリプロピレンハンドブック基礎から用途開発まで」日刊工業新聞社、2012年9月28日、139?141頁及び158?162頁(申立書1の甲第4号証)
刊行物5.高木謙行外1名編著、「ポリプロピレン樹脂」日刊工業新聞社、昭和56年1月30日、89?94頁(申立書1の甲第5号証)
刊行物6.特表2010-516836号公報(申立書1の甲第7号証)
刊行物7.特開2009-82446号公報(申立書1の甲第8号証)
刊行物8.特開2006-283278号公報(申立書2の甲第1号証)
刊行物9.特開2002-266223号公報(申立書2の甲第2号証)
刊行物10.特開2001-159026号公報(申立書2の甲第4号証)
刊行物11.特開2003-166139号公報(申立書2の甲第5号証)

<理由1:第29条第1項3号
(1)請求項1?6、8、9に対し
刊行物1発明と同一である。

(2)請求項1?3に対し
刊行物8発明と同一である。

<理由2:第29条第2項
・刊行物1発明を主たる引用発明とした理由
(1)請求項1?3に対し
刊行物1発明、刊行物2記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。

(2)請求項4に対し
刊行物1発明、刊行物2記載事項、刊行物3記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。

(3)請求項5、6に対し
刊行物1発明、刊行物2記載事項、刊行物4記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。

(4)請求項7に対し
刊行物1発明、刊行物10記載事項、刊行物11記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。
または、刊行物1発明、刊行物2記載事項、刊行物4記載事項、刊行物10記載事項、刊行物11記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。

(5)請求項8に対し
刊行物1発明、刊行物2記載事項、刊行物5記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。

(6)請求項9に対し
刊行物1発明、刊行物2記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。

(7)請求項10に対し
刊行物1発明、刊行物2記載事項、刊行物6記載事項、刊行物7記載事項、刊行物9記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。

・刊行物9発明を主たる引用発明とした理由
(1)請求項1に対し
刊行物9発明、刊行物1記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。
または、刊行物9発明、刊行物1記載事項、刊行物2記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。

(2)請求項2、3に対し
刊行物9発明、刊行物1記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。
または、刊行物9発明、刊行物1記載事項、刊行物2記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。

(3)請求項4に対し
刊行物9発明、刊行物1記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。
または、刊行物9発明、刊行物1記載事項、刊行物2記載事項、刊行物3記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。

(4)請求項5、6に対し
刊行物9発明、刊行物1記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。
または、刊行物9発明、刊行物1記載事項、刊行物2記載事項、刊行物4記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。

(5)請求項7に対し
刊行物9発明、刊行物1記載事項、刊行物10記載事項、刊行物11記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。
または、刊行物9発明、刊行物1記載事項、刊行物2記載事項、刊行物4記載事項、刊行物10記載事項、刊行物11記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。

(6)請求項8に対し
刊行物9発明、刊行物1記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。
または、刊行物9発明、刊行物1記載事項、刊行物2記載事項、刊行物5記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。

(7)請求項9に対し
刊行物9発明、刊行物1記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。
または、刊行物9発明、刊行物1記載事項、刊行物2記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。

(8)請求項10に対し
刊行物9発明、刊行物1記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。
または、刊行物9発明、刊行物1記載事項、刊行物2記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。

<理由3:36条第4項第1号、第6項第1号及び第6項第2号>
(1)請求項1及び請求項1を引用する請求項2?10について
請求項1には「プロピレン系重合体(a)を含んでなる樹脂から構成される150?100000dtexの繊度の繊維からなり、多数の該繊維を溶融状態でランダムな方向性を持たせて互いに融着させた立体網状繊維集合体」と記載されている。
しかし、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、多数の繊維を溶融状態でランダムな方向性を持たせて互いに融着させた立体網状繊維集合体における繊維の繊度の測定方法について記載されていないから、上記記載が意味するものの範囲を明確に把握することができず、また、実施可能要件違反である。

(2)請求項4及び請求項4を引用する請求項5?10について
請求項4には「プロピレン系重合体(a)は、4.0以下の分子量分布Mw/Mnを有する」と記載されている。
しかし、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、GPC法で使用されるカラムの種類・本数について記載されていないから、上記記載が意味するものの範囲を明確に把握することができず、また、実施可能要件違反である。

(3)請求項6及び請求項6を引用する請求項7?10について
請求項6には「ポリマーアロイは、該ポリマーアロイの全体100重量%に対して、10?80重量%の前記プロピレン単独重合体(b)を含んでなる」と記載されている。
しかし、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、プロピレン単独重合体(b)を20?70重量%含有するものしか記載されていないから、サポート要件違反であり、実施可能要件違反である。

(4)請求項7及び請求項7を引用する請求項8?10について
請求項7には「プロピレン単独重合体(b)は、2.0?6.0の分子量分布Mw/Mnを有する」と記載されている。
しかし、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、GPC法で使用されるカラムの種類・本数について記載されていないから、上記記載が意味するものの範囲を明確に把握することができず、また、実施可能要件違反である。

(5)請求項8及び請求項8を引用する請求項9、10について
請求項8には「アルコール中に1日間浸漬させた場合の前記立体網状繊維集合体の重量変化率が0%である」と記載されている。
しかし、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、立体網状繊維集合体をアルコールに浸漬した後の乾燥条件について記載されていないから、上記記載が意味するものの範囲を明確に把握することができず、また、実施可能要件違反である。

5.刊行物の記載
(1)刊行物1(特許5454733号公報)(申立書1の甲第1号証)には、以下の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる繊度が100デシテックス以上60000デシテックス以下の連続線状体を曲がりくねらせランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめた三次元ランダムループ接合構造体であって、見かけ密度が0.005g/cm^(3)?0.20g/cm^(3)であり、50%定変位繰返し圧縮残留歪みが15%以下であり、50%定変位繰返し圧縮後の50%圧縮時硬度保持率が85%以上である網状構造体。」
「【0009】
本発明による網状構造体は、繰返し圧縮残留歪みが小さく、しかも繰返し圧縮後の硬度保持率が大きく、繰返し使用しても座り心地、寝心地が変化しにくい、繰返し圧縮耐久性優れた網状構造体である。さらには、高反発性にも優れた網状構造体である。この優れた繰返し圧縮耐久性や高反発性により、オフィスチェア、家具、ソファー、ベッド等寝具、電車・自動車・二輪車・ベビーカー・チャイルドシート等の車両用座席等に用いられるクッション材、フロアーマットや衝突や挟まれ防止部材等の衝撃吸収用のマット等に好適な網状構造体を提供することが可能となった。」
「【0046】
[実施例1]
ポリオレフィン系エラストマーは、メタロセン化合物を触媒としてヘキサン、ヘキセン、エチレンを公知の方法で重合し、エチレン・α-オレフィン共重合体とし、次いで酸化防止剤2%を添加混合練込み後ペレット化して得た。得られたポリオレフィン系エラストマー(熱可塑性エラストマーA-1)は、比重が0.919g/cm^(3)で、融点が110℃であった。ポリプロピレン系エラストマーとしてExxonMobil Chemical社製のVistamax 2125(熱可塑性エラストマーA-2)を用いた。ポリプロピレン系エラストマーは、比重が0.87g/cm^(3)で、融点が162℃であった。
【0047】
幅方向1050mm、厚み方向の幅55mmのノズル有効面にオリフィスの形状は外径2mm、内径1.6mmでトリプルブリッジの中空形成性断面としたオリフィスを孔間ピッチ5mmの千鳥配列としたノズルに、得られたポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(A-1)を溶融温度210℃にて、単孔吐出量1.5g/minの速度でノズル下方に吐出させ、ノズル直下30mmの保温領域を経て、ノズル面30cm下に35℃の冷却水を配し、幅150cmのステンレス製エンドレスネットを平行に開口幅50mm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配して、その水面上のコンベアネットの表面温度を60℃になるように赤外線ヒーターで加熱し、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル-プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状体の両面を引取りコンベア-で挟み込みつつ毎分0.8mの速度で35℃の冷却水中へ引込み固化させ両面をフラット化した後、所定の大きさに切断して70℃熱風にて15分間乾燥熱処理して、網状構造体を得た。得られた熱可塑性弾性樹脂からなる網状構造体の特性を表1に示す。・・・」
「【0051】
[実施例5]
ポリプロピレン系エラストマー(熱可塑性エラストマーA-2)を用い、紡糸温度を230℃、単孔吐量を2.0g/min、コンベアネット表面温度を加熱せずに40℃にした以外、実施例1と同様にして得た網状構造体は、断面形状が中空断面で中空率が21%、繊度が3300デシテックスの線条で形成しており、見かけ密度が0.041g/cm^(3)、表面が平坦化された厚みが51mm、25%圧縮時硬度が58N/φ200mm、50%圧縮時硬度が124N/φ200mm、50%定変位繰返し圧縮残留歪みが8.6%、50%定変位繰返し圧縮後の50%圧縮時硬度保持率が88.2%、50%定変位繰返し圧縮後の25%圧縮時硬度保持率が81.1%、ヒステリシスロスが31.1%であった。得られた網状構造体の特性を表1に示す。得られたクッションは、本発明の要件を満たし、繰返し圧縮耐久性と高反発性に優れた網状構造体であった。」

以上の記載によれば、刊行物1(特に、実施例5、比較例3)には以下の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「ポリプロピレン系エラストマーであるVistamax 2125(ExxonMobil Chemical社製)を用い、外径2mm、内径1.6mmの孔を孔間ピッチ5mmの千鳥配列としたノズルから、紡糸温度を230℃あるいは220℃にて、ノズル下方に吐出させ、溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル-プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成した網状構造体であって、
その繊度が繊度が3300デシテックスあるいは4000デシテックスである網状構造体。」

(2)刊行物2(国際公開第2009/033540号)(申立書1の甲第2号証)には、以下の事項が記載されている。
「VM2125は、ExxonMobil社(テキサス州、ヒューストン) からVISTAMAXXの商品名で販売されている特殊ポリオレフィンエラストマーである。この特殊ポリオレフィンエラストマーは、少なくとも85%のプロピレン単位を有し、メタロセン触媒の存在下の重合工程によって製造された半結晶のプロピレン系のエラストマー系オレフィン共重合体である。この共重合体は、80g/10minのメルトフローレート(MFR1a)(230℃、2.16kg-ASTM D-1238で測定)、幅広い融点範囲及び160℃の最高融点を有する。」(19頁20?27行)
表1(21頁)には、VM2125のエチレン含有量が13重量%である点が記載されている。

(3)刊行物3(特表2010-523758号公報)(申立書1の甲第3号証)には、以下の事項が記載されている。
「【0022】
これらの実施例に用いたプロピレン/エチレンベース樹脂は、20.9モルパーセント(15.0重量%)のエチレン単位および0.855g/cm^(3)の密度を有するExxon MobilのVistamaxx(登録商標)VM 6100;22.3モルパーセント(16.1重量%)のエチレンおよび0.861g/cm^(3)の密度を有するVM 1100;21.2モルパーセント(15.2重量%)のエチレンおよび0.861g/cm^(3)の密度を有するVM 1120ならびに0.865g/cm3の密度および80のMFRを有するVM 2125であった。これらの樹脂の全てが3.5未満のMw/Mnを有する。」

(4)刊行物4(「新版ポリプロピレンハンドブック基礎から用途開発まで」)(申立書1の甲第4号証)には、メタロセン触媒、チーグラー・ナッタ触媒(ZN触媒)を用いて製造したプロピレン-エチレン共重合体とエチレン含有量の関係が示されている(158?159頁、図2.70)。

(5)刊行物5(「ポリプロピレン樹脂」)(申立書1の甲第5号証)には、ポリプロピレンの耐薬品性はポリエチレンと同様に優れている点が記載されている。(89頁)

(6)刊行物6(特表2010-516836号公報)(申立書1の甲第7号証)には、以下の事項が記載されている。
「【0003】
スパンボンド不織布の製造には、プロピレンベースのランダム共重合体が長い間用いられている。一般的なスパンボンドの製造プロセスでは、先ず顆粒またはペレット形状のランダムプロピレン共重合体の樹脂が押出機に供給され、加熱溶融スクリューにより、樹脂が溶融されるとともに輸送される。スクリューの先端部では、紡糸ポンプが溶融ポリマーを計量しながら、フィルターを通してダイ(以下、紡糸口金)へ移送する。紡糸口金は多数の孔(以下、細孔)を有し、溶融ポリマーは加圧下で細孔から押し出されて繊維になる。紡糸口金から出た繊維は、高速エアージェットによって固化され、より径の細い繊維へ延伸される。固化された繊維は、走行ベルト上にランダムに集積され、この技術分野で繊維ウエブと呼ばれる、ランダムな繊維状の網目状構造体が形成される。・・・」
「【0009】
この発明のポリオレフィンブレンド組成物から成る繊維または長繊維は、スパンボンド不織布に用いられ、この不織布は、商品としての複合シートを製造するために、裁断され、別のプラスチックまたは別の天然繊維の布に固定または接合される。すなわち、この発明のポリオレフィンブレンド組成物はスパンボンド不織布に用いられ、例えば幼児用オムツ、成人用失禁パンツ、その他、医療用ガウン、エプロン、ベッド用品またはこれらに類似の衣料品やカバー等の複合体に使用することができるが、これらの例示に限定されない。」
「【0035】
メタロセン触媒を用いた溶液重合により、MFRが20g/10分、密度が0.863g/cm^(3)で、プロピレン結晶性を有し、15wt%のエチレンを含有するプロピレン共重合体(PE1)を調製した。PE1は、ExxonMobil Chemical Co社から商品名VM2000として販売されている。
4日間アニールした後、前記の方法によりPE1をDSC測定した結果、Tm48℃、融解熱量19J/gであった。PE1のMWD(LALLS較正GPCによる)は1.9、Mwは134,000、Mnは72,000であった。
【0036】
以下の実施例では、PE1はペレット化され、次いで異なる分量のポリプロピレンホモポリマー(PP1)のペレット、及び有機ジアルキル過酸化物(2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン)とともに溶融ブレンドした。PP1はExxonMobil Chemical Co社から商品名PP3155として販売されている。有機ジアルキル過酸化物はArkema Inc社からLuperox(登録商標)101として市販されている。
PP1は不織布及び繊維用途に適したグレードであり、Tmが166℃、融解熱量が98J/g(1回目のヒートサイクルで測定)である。PP1のMFRは36g/10分で、MWD<0.3である。ブレンド操作は、アンダーウォータペレタイザを備え、L:D比24/1の単軸Davis Extruderを用いて行なった。生産速度50ポンド/時(22.7kg/時)で、ポリプロピレンブレンドの一般的な押出温度、すなわち220℃から250℃を維持した。
得られたブレンド物の組成を表1に示す。ブレンドA1とA4は対照ブレンド物であり、ブレンドA2,A3,A5はこの発明のブレンド物である。
【表1】




(7)刊行物7(特開2009-82446号公報)(申立書1の甲第8号証)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
三次元網状構造体からなる層を複数積層させた積層体であって、前記三次元網状構造体からなる各層が、前記積層体の長手方向の両端部において、連続的にあるいは断続的に固定されていることを特徴とするマットレス用中材。」
「【0001】
本発明は、介護用、病院用などのベッドとして好適に使用されるマットレス用中材、および、それを用いたマットレスに関する。」
「【0014】
前記網状構造体層としては、熱可塑性樹脂からなる連続線条体が三次元ランダム状に交絡されてなり、前記交絡部の少なくとも一部が融着してなる三次元網状構造体層を使用することが好ましい。斯かる網状構造体層は、疎な構造を有するため通気性が高い。その結果、得られるマットレス用中材は、容易に洗濯および乾燥することができ衛生的である。三次元ランダム状とは、複数の連続線条体(熱可塑性樹脂からなる連続線条体)を曲がりくねらせて大きさや向きが不規則なループ状などの任意の形状を多数形成すると共に、これら線条体同士の交絡部の少なくとも一部が融着している立体構造をいう。」
「【0015】
また『連続線条体』とは、熱可塑性樹脂を原料とする連続線条体(ストランド)である。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、生分解性樹脂など各種熱可塑性樹脂が例示される。これらの中でも、ポリエステル樹脂またはポリオレフィン樹脂を原料とする連続線条体が好ましく、40℃?70℃程度の温熱下の耐久性という観点から、ポリエステル樹脂を原料とする連続線条体がより好ましい。また、特にポリエステル樹脂の中でも、耐久性に優れた特性を示すものとして、共重合ポリエステル、ブロック共重合ポリエーテルエステルやブロック共重合ポリエステルエステルなどの重合体が好ましい。」

(8)刊行物8(特開2006-283278号公報)(申立書2の甲第1号証)には、以下の記載がある。
「【0001】
本発明は、法面,法肩,護岸部分などの一般土木、及び廃棄物処分場の底面及び法面を形成する遮水シート,埋立て完了後の雨水の浸透による有害物の移動を防止するための遮水性キャッピングシートなどの廃棄物処分場等に有用である遮水性植生基盤材に関する。」
「【0017】
本発明の使用する立体網状体は、例えば、深さが20mmほどの凹凸に付形した金属金型へ、繊維直径が0.1?2mmの熱可塑性樹脂から成る複数の連続糸条を流下させて立体的に付形させると共に、周動現象を利用してそれぞれの連続糸条を不規則なループをなさしめ、糸条が重なる点で両糸条を融着接着させて立体網状体であって、厚み方向の断面が、平面的に重なって熱接着した連続糸条の平面板がプリーツ状になっており、プリーツの高さが立体網状体の厚みとして計測される様な立体網状体であることが好ましい。・・・」
「【0020】
本発明の1つの例は、前記立体網状体及び前記遮水性シートを構成する熱可塑性樹脂が共に、同系樹脂を少なくとも70mass%含む樹脂であり、前記同系樹脂の融点が100?150℃である遮水性植生基盤材であり、より好ましくは、同系樹脂が低密度ポリエチレン樹脂、プロピレン主体(プロピレン成分が50mass%以上)のエチレン-プロピレン共重合体、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン樹脂から選ばれた1つまたは複数の種類の柔軟性がある樹脂であり、必要に応じて混合される熱可塑性樹脂が同系樹脂と相溶性のある熱可塑性樹脂とで構成されている遮水性植生基盤材である。・・・」

(9)刊行物9(特開2002-266223号公報)(申立書2の甲第2号証)には、以下の事項が記載されている。
「【0006】すなわち、本発明の請求項1は、オレフィン系熱可塑性弾性樹脂からなる連続線条がループを形成して、互いの接触部の半数以上が接合した立体立体網状構造体において、100℃水中で10日間浸漬後の該線条の引張強さ保持率が80%以上である立体網状構造体である。請求項2は、前記線条の見掛比重が0.85以下である請求項1記載の立体網状構造体である。請求項3は100℃水中で10日間浸漬後の前記線条の引張強さ保持率が85%以上である請求項1?2のいずれかに記載の立体網状構造体である。請求項4は、前記オレフィン系熱可塑性弾性樹脂が該樹脂中に動的架橋されたEDPMゴムを分散させた組成物である請求項1?3のいずれかに記載の立体網状構造体である。」
「【0008】本発明のポリオレフィン系熱可塑性弾性樹脂からなる線条は過酷な熱水処理や蒸気処理に耐える耐熱且つ耐加水分解性を保持するため、100℃水中で10日間浸漬した後の引張強さが初期の引張強さの80%以上保持する必要がある。引張強さ保持率が80%未満では、過酷な蒸気消毒等に耐えられないので好ましくない。本発明における100℃水中での10日間放置後の引張強さ保持率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。このような耐加水分解性は、素材及び製造条件に依存する。本発明では、上記耐熱性と耐加水分解性とを同時に満足するポリオレフィン系熱可塑性弾性樹脂を選択する必要がある。
【0009】本発明におけるオレフィン系熱可塑性弾性樹脂とは、熱可塑性を示すポリオレフィン樹脂組成物が少なくとも10重量%以上、好ましくは20重量%以上含有し、常温で伸縮性を有し、溶融可能な組成物を意味する。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、それらの共重合体、及び、それらのグラフト改質ポリマー等が例示できる。伸縮性を付与する方法としては、ゴム成分との動的架橋、ゴム成分とのアロイ化、ゴム弾性成分となるソフトセグメント成分との共重合、アイオノマー化等の公知のオレフィン系熱可塑性弾性樹脂化技術が使用できる。
【0010】本発明の最も好ましい実施形態としては、耐熱性と耐加水分解性が優れ、軽量化のための発泡も可能で、製造コストが安価にでき、再生が可能であるポリオレフィン樹脂をマトリックスとしたゴム成分との動的架橋(該オレフィン系熱可塑性弾性樹脂が動的架橋されたEDPMゴムを含有する)が例示できる。例えば、特公昭55-18448号公報、特公平5-87529号公報、特公平5-29653号公報、特開平3-54237号公報、特開平4-63850号公報、特開平4-63852号公報、特開平6-73222号公報等が例示できる。なお、該熱可塑性弾性樹脂には、発泡剤、難燃剤、耐光剤、着色剤、坑酸化剤、抗菌剤、防黴剤等の機能改良薬剤や添加剤を混入できる。」
「【0017】本発明の好ましい実施形態としての線条の線径は0.03mm以上3mm以下である。線条の線径が0.03mm未満では抗圧縮力が低くなり、大きな荷重を支える場合には適さない場合がある。線条の線径が3mmを越える場合、ゴム様弾力体が発泡していてもハードな触感を示し、ソフトなフィーリングが得られない場合がある。本発明の坑圧縮機能からのより好ましい線条の線径は0.04mm以上、2mm以下である。しかしながら、よりソフトなフィーリングを所望する場合は、線条の線形を0.03mm以下とする選択もできる。」
「【0020】次に本発明の製法の一例を述べる。複数の中実丸断面又は、中空断面形成性オリフィスを持つ多列ノズルよりポリオレフィン系熱可塑性弾性樹脂(好ましくは100℃水中で10日間保持した後の引張強さ保持率が90%以上、より好ましくは95%以上となるオレフィン樹脂中に動的架橋したEPDMゴムを分散させた組成物、発泡剤を発泡させない条件で予め混練した組成物)を樹脂が溶融流動して線条を形成できる温度から熱分解しない温度で溶融する。即ち、該ポリオレフィン系熱可塑性樹脂の融点より10℃以上高く、融点+120℃未満の溶融温度(発泡させる場合は発泡する温度以上、発泡温度+40℃未満。発泡温度より極端に高い温度では均一で緻密な独立気泡を得られ難い。)で各ノズルオリフィスに分配し、該ノズルより下方に向けて吐出させ、溶融状態で互いに接触させて融着させ3次元構造を形成しつつ、引取り装置で挟み込み冷却槽で冷却せしめた後、所望の長さに切断して本発明の立体網状構造体を得る。」
「【0031】幅100mm、長さ1000mmのノズル有効面に幅方向の孔間ピッチを5mmの千鳥配列としたオリフィス孔形状は外径2mm、内径1.6mmでトリプルブリッジの中空形成性断面としたノズル(4836孔)を用いて、得られたポリオレフィン系熱可塑性弾性樹脂原料A-1を溶融紡糸温度220℃、単孔吐出量1.4g/分にてノズル下方に吐出させ、ノズル面150mm下に冷却水を配し、幅1500mmのステンレス製エンドレスネットを平行に、85mm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配して、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル-プを形成して接触部分を接合させつつ3次元立体網状構造を形成し、該溶融状態の立体網状体の両面を引取りコンベア-で挟み込みつつ、毎分2mの速度で25℃の冷却水中へ引込み固化させ、両面をフラット化した後、2mに切断して立体網状構造体(B-1)を得た。得られた立体網状構造体(B-1)は断面形状が三角おむすび型の中空断面で中空率が0.30、線径が0.8mmの線条で形成しており、平均の見掛け密度が0.04g/cm3であった。この立体網状構造体の評価結果を表1に示す。」
「【0032】
【表1】



「【0042】
【発明の効果】本発明は、オレフィン系熱可塑性弾性樹脂からなる連続線条がループを形成して、互いの接触部の半数以上が接合した立体網状構造体において、100℃水中で10日間浸漬後の該線条の引張強さ保持率が80%以上である立体網状構造体とすることで、耐加水分解性、耐乾熱耐久性、クッション性に優れ、リサイクル可能な立体網状構造体を提供することができ、更に、線条の見掛比重が0.85以下とすることでより軽量化することが可能となる。かくして、布団、枕、座布団、マットレス等の一般寝装品に止まらず、蒸気消毒も可能なため病院用の寝装品としても使用できる。又、耐熱耐久性が特に要求される自動車、鉄道、船舶等の交通機関のクッション材、温泉や浴室用のマットや雑品等にも有用である。これらの用途で使用済みのものは、熱可塑性の特徴を生かして再度の使用にリサイクルすることも可能である。更には、本発明の好ましい実施形態として、ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器等に関する自主基準に合格する組成を用いたクッション構造体とすることで、安全で環境適合性が良好なクッション構造体を提供できる。」

以上の記載によれば、刊行物9(特に、段落【0006】、【0009】、【0017】)には以下の発明(以下「刊行物9発明」という。)が記載されていると認められる。
「オレフィン系熱可塑性弾性樹脂からなる連続線条が、溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル-プを形成して接触部分を接合させつつ3次元立体網状構造を形成した立体網状構造体において、
オレフィン系熱可塑性弾性樹脂は、熱可塑性を示すポリオレフィン樹脂組成物が少なくとも10重量%以上、好ましくは20重量%以上含有し、オレフィン樹脂中に動的架橋したEPDMゴムを分散させた組成物で、常温で伸縮性を有し、溶融可能な組成物であり、
ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、それらの共重合体、及び、それらのグラフト改質ポリマー等であり、
線条の線径は0.03mm以上3mm以下である立体網状構造体。」

(10)刊行物10(特開2001-159026号公報)(申立書2の甲第4号証)には、以下の記載がある。
「【0019】
【実施例】(実施例1)常法の溶融紡糸装置により、Q値が3、アイソタクチックペンタッド分率が95%の高強度化可能ポリプロピレン97mass%と、メルトインデックスが680の混在ポリプロピレン3mass%とを混合したペレットを、紡糸温度260℃、吐出量を1ホールあたり0.125g/minで溶融紡糸を実施した。紡出された糸を冷却しながら引き取り、繊度6.7dtexの未延伸ポリプロピレン繊維を得た。この溶融紡糸時においては紡糸性に優れていた。次いで、この未延伸ポリプロピレン繊維を集束し、延伸温度120℃で4.1倍延伸して、延伸ポリプロピレン繊維を得た。次いで、切断して、繊度1.8dtex、繊維長10mmの延伸ポリプロピレン繊維(引張り強さ:7.3cN/dtex、断面形状:円形)を得た。」

(11)刊行物11(特開2003-166139号公報)(申立書2の甲第5号証)には、以下の記載がある。
「【0054】実施例1
(1)未延伸ポリプロピレンマルチフィラメントの作製
アイソタクチックホモポリプロピレン樹脂[出光石油化学社製「Y2000GV」、メルトインデックス(MI):19g/10分、Q値:3.1]を原料として用い、ホール径が0.6mmで、ホール数が60の紡糸ノズルを備えた溶融紡糸装置によって、シリンダー温度260℃、ノズル温度265℃、巻取り速度800m/分の条件で溶融紡糸を行い、単糸繊度が25.6dTexの未延伸ポリプロピレンマルチフィラメントを作製した。」

6.判断
(1)理由1(29条第1項3号)について
ア.本件発明1
本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、少なくとも以下の相違点1で相違する。
(相違点1)本件発明1では、立体網状繊維集合体は、プロピレン系重合体(a)およびプロピレン単独重合体(b)を含んでなるポリマーアロイから構成される繊維からなるのに対して、刊行物1発明では、網状構造体は、ポリプロピレン系エラストマーであるVistamax 2125(ExxonMobil Chemical社製)を用いて形成されているが、Vistamax 2125が、プロピレン系重合体およびプロピレン単独重合体を含んでなるポリマーアロイであるか否か不明である点。
相違点1を検討する。刊行物2の「VM2125は、・・・特殊ポリオレフィンエラストマーである。この特殊ポリオレフィンエラストマーは、少なくとも85%のプロピレン単位を有し、メタロセン触媒の存在下の重合工程によって製造された半結晶のプロピレン系のエラストマー系オレフィン共重合体である。この共重合体は、80g/10minのメルトフローレート(MFR1a)(230℃、2.16kg-ASTM D-1238で測定)、幅広い融点範囲及び160℃の最高融点を有する。」(19頁20?27行)の記載から、「VM2125」は、「プロピレン系のエラストマー系オレフィン共重合体」であることは認められるが、刊行物2には、「VM2125」が「プロピレン系重合体およびプロピレン単独重合体を含んでなるポリマーアロイ」である点についての記載がない。刊行物2の上記記載(19頁20?27行)によれば「VM2125」は、「メタロセン触媒の存在下の重合工程によって製造される」ものであるところ、刊行物4の「メタロセン触媒、チーグラー・ナッタ触媒(ZN触媒)を用いて製造したプロピレン-エチレン共重合体とエチレン含有量の関係」(158?159頁、図2.70)を踏えると、むしろ、「メタロセン触媒」でない「チーグラー・ナッタ触媒(ZN触媒)を用いて製造したプロピレン-エチレン共重合体とエチレン含有量の関係」から、「VM2125」が「プロピレン系重合体およびプロピレン単独重合体を含んでなるポリマーアロイ」であると認めることはできない。
そうすると、相違点1は実質的な相違点であり、本件発明1は、刊行物1発明ではない。

イ.本件発明2?4、6、8、9
本件発明2?4、6、8、9は、本件発明1の発明特定事項をすべてを含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2?4、6、8、9は、刊行物1発明ではない。

ウ.取消理由通知で通知した「請求項1?3に対し 刊行物8発明と同一である。」について
本件発明1?3は、訂正により訂正前の請求項5の発明特定事項を含むこととなったが、訂正前の請求項5に係る発明については、刊行物8発明と同一であるとの取消理由は通知されていないため、本件発明1?3に対する刊行物8発明に係る取消理由は存在しないものとなった。

(2)理由2(29条第2項)について
ア.刊行物1発明を主たる引用発明とした理由
(ア)本件発明1
本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1((1)ア.)で相違する。
相違点1を検討する。上記(1)ア.で検討したように、刊行物2及び刊行4からは、「VM2125」が「プロピレン系重合体およびプロピレン単独重合体を含んでなるポリマーアロイ」であるとまでは認められない。さらに、相違点1の「立体網状繊維集合体は、プロピレン系重合体(a)およびプロピレン単独重合体(b)を含んでなるポリマーアロイから構成される繊維からなる」点は、刊行物2及び刊行物4には記載も示唆もない。
そして、本件発明1は、相違点1に係る発明特定事項を有することにより、「本発明の立体網状繊維集合体は、優れた耐薬品性を有するため、ウィルスや細菌の感染を防止するために薬品処理を行うことができ、繰り返しの使用においても清潔に使用することができ、また臭気によって使用者に不快感を与えにくい。」(本件特許明細書段落【0008】)との作用効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、刊行物1発明、刊行物2及び刊行物4記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明2?4、6?10
本件発明2?4、6?10は、本件発明1の発明特定事項をすべてを含むものである。そして、相違点1の「立体網状繊維集合体は、プロピレン系重合体(a)およびプロピレン単独重合体(b)を含んでなるポリマーアロイから構成される繊維からなる」点は、刊行物2?7には記載も示唆もない。
よって、本件発明2?4、6?10は、本件発明1と同様の理由により、刊行物1発明、刊行物2?7記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ.刊行物9発明を主たる引用発明とした理由
(ア)本件発明1
本件発明1と刊行物9発明とを対比すると、少なくとも以下の相違点2がある。
(相違点2)本件発明1の「立体網状繊維集合体」は、プロピレン系重合体(a)およびプロピレン単独重合体(b)を含んでなるポリマーアロイから構成される繊維からなるのに対して、刊行物9発明の「立体網状構造体」は、オレフィン系熱可塑性弾性樹脂からなる連続線条が、溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル-プを形成して接触部分を接合させつつ3次元立体網状構造を形成したもので、オレフィン系熱可塑性弾性樹脂は、熱可塑性を示すポリオレフィン樹脂組成物が少なくとも10重量%以上、好ましくは20重量%以上含有し、オレフィン樹脂中に動的架橋したEPDMゴムを分散させた組成物で、常温で伸縮性を有し、溶融可能な組成物であり、ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、それらの共重合体、及び、それらのグラフト改質ポリマー等である点。
相違点2を検討する。刊行物9には、立体網状構造体を形成するポリオレフィン樹脂に関して、「本発明におけるオレフィン系熱可塑性弾性樹脂とは、熱可塑性を示すポリオレフィン樹脂組成物が少なくとも10重量%以上、好ましくは20重量%以上含有し、常温で伸縮性を有し、溶融可能な組成物を意味する。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、それらの共重合体、及び、それらのグラフト改質ポリマー等が例示できる。伸縮性を付与する方法としては、ゴム成分との動的架橋、ゴム成分とのアロイ化、ゴム弾性成分となるソフトセグメント成分との共重合、アイオノマー化等の公知のオレフィン系熱可塑性弾性樹脂化技術が使用できる。」(刊行物9段落【0009】)と記載されるのみで、「ポリオレフィン樹脂」が「プロピレン系重合体およびプロピレン単独重合体を含んでなるポリマーアロイから構成される」点は記載されていない。しかも、相違点2の「立体網状繊維集合体は、プロピレン系重合体(a)およびプロピレン単独重合体(b)を含んでなるポリマーアロイから構成される繊維からなる」点は、刊行物1及び刊行物2には記載されていない。
そして、本件発明1は、相違点2に係る発明特定事項を有することにより、「本発明の立体網状繊維集合体は、優れた耐薬品性を有するため、ウィルスや細菌の感染を防止するために薬品処理を行うことができ、繰り返しの使用においても清潔に使用することができ、また臭気によって使用者に不快感を与えにくい。」(本件特許明細書段落【0008】)との作用効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、刊行物9発明、刊行物1及び刊行物2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明2?4、6?10
本件発明2?4、6?10は、本件発明1の発明特定事項をすべてを含むものである。また、相違点2の「立体網状繊維集合体は、プロピレン系重合体(a)およびプロピレン単独重合体(b)を含んでなるポリマーアロイから構成される繊維からなる」点は、刊行物1?4、10、11には記載されていない。
よって、本件発明2?4、6?10は、本件発明1と同様の理由により、刊行物9発明、刊行物1?4、10、11記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)理由3(36条関係)
ア.請求項1及び請求項1を引用する請求項2?4、6?10について
繊度の測定方法については、本件特許明細書段落【0047】に「【上記のように作製した各立体網状繊維集合体について、繊度、厚み、見掛け密度および目付を測定した。その結果を表2に示す。さらに、各立体網状繊維集合体およびポリエチレン系重合体からなる市販の立体網状繊維集合体(エアウィーブTM、AWC-01[カバーなし]、比較例3)についても測定を行った。なお、10個以上のサンプルの平均値を各測定値とした。」と記載されている。そして、具体的な繊度の測定方法については、本件特許明細書段落【0004】で引用されている特許第5459436号公報(乙第7号証)の段落【0038】に記載されているような方法を用いることが、当該分野の技術常識であることを考慮すると、立体網状繊維集合体の繊度をどのようにして測定するかが、当業者が理解することができないとはいえない。

また、ポリマーアロイに含まれる全重合体を構成する全モノマー単位を基準としたプロピレン構造単位の比率については、本件特許明細書段落【0044】?【0046】に、実施例でプロピレン系重合体(a)及びプロピレン単独重合体(b)として用いた樹脂製品の具体的な品番及び仕込み比を記載しているから、それに基づいて当業者が容易に算出することができる。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許の請求項1に係る発明を実施できるように明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。
また、本件特許の請求項1の記載は明確でないとはいえない。
請求項1を引用する請求項2?4、6?10についても同様である。

イ.請求項4及び請求項4を引用する請求項6?10について
本件特許明細書の段落【0016】に「本発明における数平均分子量Mnおよび重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定し、ポリスチレン換算により算出することができる。」と記載されている。その記載に基づけば、分子量が既知である標準ポリスチレンを用いて予め検量線を作成し、GPC法で使用されるカラムの種類・本数の測定条件の違いによって生じる分子量分布Mw/Mnの測定値の差異をこの検量線に基づいて補正することが理解できる。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許の請求項4に係る発明を実施できるように明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。
また、本件特許の請求項4の記載は明確でないとはいえない。
請求項4を引用する請求項6?10についても同様である。

ウ.請求項6及び請求項6を引用する請求項7?10について
請求項6は「ポリマーアロイは、該ポリマーアロイの全体100重量%に対して、20?70重量%の前記プロピレン単独重合体(b)を含んでなる」と訂正されたため、この取消理由は解消した。

エ.請求項7及び請求項7を引用する請求項8?10について
本件特許明細書の段落【0016】に「本発明における数平均分子量Mnおよび重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定し、ポリスチレン換算により算出することができる。」と記載されている。その記載に基づけば、分子量が既知である標準ポリスチレンを用いて予め検量線を作成し、GPC法で使用されるカラムの種類・本数の測定条件の違いによって生じる分子量分布Mw/Mnの測定値の差異をこの検量線に基づいて補正することが理解できる。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許の請求項7に係る発明を実施できるように明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。
また、本件特許の請求項7の記載は明確でないとはいえない。
請求項7を引用する請求項8?10についても同様である。

オ.請求項8及び請求項8を引用する請求項9、10について
本件特許明細書の段落【0053】に「2.耐薬品性評価
表1に示す配合に従って、上記のように作製した各立体網状繊維集合体を20mm×50mmのサイズに切断してサンプルを作製した。この各サンプルを室温下においてエタノール(キシダ化学(株)製、1級、製品コード010-28555)中に1日間浸漬させた。なお、エタノールは、病院等において殺菌処理に使用される薬品である。1日間経過後のサンプルの重量変化率が0%である場合を○、0%より高く1%以下である場合を△、1%より高い場合を×と評価した。ここで、重量変化率は、エタノールに浸漬させる前の各サンプルの重量を基準とした。その結果を表4に示す。」と記載されており、エタノールは沸点が低く、蒸発による除去は容易であるとの技術常識を考慮すれば、立体網状繊維集合体のサンプルをエタノールに浸漬した後の重量変化は、容易に求めることができる。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許の請求項8に係る発明を実施できるように明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。
また、本件特許の請求項8の記載は明確でないとはいえない。
請求項8を引用する請求項9、10についても同様である。

7.取消理由通知で採用しなかった申立書2の理由について
申立書2では、本件特許発明1?4、6?10は、刊行物9発明、刊行物8発明、甲3(特公昭55-18448号公報)発明、刊行物10と刊行物11記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるという、主張をしている。
しかし、甲3(特公昭55-18448号公報)にも、上記「6.(2)イ.」で検討した、相違点2が記載されていないので、上記「6.(2)イ.」で述べた理由と同様の理由により、本件特許発明1?4、6?10は、刊行物9発明、刊行物8発明、甲3(特公昭55-18448号公報)発明、刊行物10と刊行物11記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

8.特許異議申立人の意見について
特許異議申立人大塚博明(平成29年3月7日付け意見書「(2)特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号違反の取消理由」)及び特許異議申立人柏木里実(平成29年3月6日付け意見書「(2)訂正請求に伴う新たな取消理由(その1):サポート要件及び実施可能要件」)は、本件訂正発明1が、サポート要件及び実施可能要件(特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号)を満たしていないと主張している。

当初、申立人は、訂正前の請求項5について、36条の理由を示してなかったので、遅れた主張であるが、上記主張を予備的に検討する。

本件特許の特許請求の範囲の記載によると、本件訂正発明1は、立体網状繊維集合体の、前記プロピレン系重合体(a)は、その全モノマー100モル%に対して、51?95モル%のプロピレンおよび5?49モル%のα-オレフィンを構造単位として有し、前記樹脂は、前記プロピレン系重合体(a)およびプロピレン単独重合体(b)から構成されるポリマーアロイである、とすることをその発明特定事項として含むものである。
他方、本件特許の明細書には、発明が解決しようとする課題として、「本発明は、より優れた耐薬品性を有し、低臭気性の立体網状繊維集合体を提供することを主たる課題とする。」(【0006】)と記載されていることから、本件特許発明の発明が解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「より優れた耐薬品性を有し、低臭気性の立体網状繊維集合体を提供すること」である。
そして、本件特許の明細書には、プロピレン系重合体(a)について、「・・・その中でも、本発明におけるプロピレン系重合体(a)としては、耐薬品性に優れ、低揮発性であり、使用者に不快感を与えにくい立体網状繊維集合体が得られるため、プロピレンとα-オレフィンとの共重合体が好ましい。・・・上記プロピレン系重合体(a)は、その全モノマー100モル%に対して、典型的には51?95モル%、・・・のプロピレンを構造単位として含んでなる。プロピレン系重合体(a)におけるプロピレン単位が上記範囲内であると、立体網状繊維集合体は耐薬品性により優れ、臭気性が低い。・・・」(【0010】)と記載され、ポリマーアロイについて、「上記樹脂は、プロピレン系重合体(a)およびプロピレン単独重合体(b)から構成されるポリマーアロイであってもよい。立体網状繊維集合体が上記ポリマーアロイから構成されることによって、立体網状繊維集合体は、耐薬品性により優れ、低臭気性を有するだけでなく、高い耐熱性を有する。・・・」(【0024】)と記載されている
また、本件特許の明細書の段落【0042】?【0057】には、実施例3?7について、耐薬品性及び低臭気性に関して、発明の課題を解決していることが示されている。
したがって、上記本件特許の明細書の記載によれば、プロピレン系重合体(a)は、その全モノマー100モル%に対して、51?95モル%のプロピレンおよび5?49モル%のα-オレフィンを構造単位として有し、樹脂は、プロピレン系重合体(a)およびプロピレン単独重合体(b)から構成されるポリマーアロイであるとすることで、上記課題を解決できると当業者は認識できる。
なお、申立人が主張する「高い耐熱性を有する」点について、その主張の根拠とされる本件特許明細書の段落【0029】には、「・・・さらに好ましくは20重量%以上のプロピレン単独重合体(b)を含んでなる。また、該ポリマーアロイは・・・より好ましくは20?70重量%のプロピレン単独重合体(b)を含んでなる。ポリマーアロイに含まれるプロピレン単独重合体(b)の含有量が上記範囲であると、立体網状繊維集合体は耐薬品性により優れ、臭気性が低く、さらに耐熱性にも優れる。」と記載されている。
しかしながら、この記載は、ポリマーアロイが、20?70重量%のプロピレン単独重合体(b)を含んでなる場合には、「耐薬品性により優れ、臭気性が低」いこと、すなわち、上記課題を解決し得ることに加え、「さらに耐熱性にも優れる」という効果が得られることを説明しているにすぎず、ポリマーアロイ中のプロピレン系重合体(a)とプロピレン単独重合体(b)の含有量を規定しなければ、上記課題を解決し得ないことを裏付けるものではない。
よって、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、本件訂正発明1に関して、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合しないものとはいえないので、上記申立人の主張を採用することはできない。

9.むすび
上記6.?7.に示したとおり、本件訂正請求により訂正された請求項1?4、6?10に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び申立書1及び申立書2に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件訂正請求により訂正された請求項1?4、6?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項5は、本件訂正請求により削除された。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体(a)を含んでなる樹脂から構成される150?100000dtexの繊度の繊維からなり、多数の該繊維を溶融状態でランダムな方向性を持たせて互いに融着させた立体網状繊維集合体であって、
前記プロピレン系重合体(a)は、その全モノマー100モル%に対して、51?95モル%のプロピレンおよび5?49モル%のα-オレフィンを構造単位として有し、
前記樹脂は、前記プロピレン系重合体(a)およびプロピレン単独重合体(b)から構成されるポリマーアロイである、立体網状繊維集合体。
【請求項2】
前記α-オレフィンは、2?10個の炭素原子を有するα-オレフィンである、請求項1に記載の立体網状繊維集合体。
【請求項3】
前記2?10個の炭素原子を有するα-オレフィンは、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンからなる群から選択される1種以上である、請求項2に記載の立体網状繊維集合体。
【請求項4】
前記プロピレン系重合体(a)は、4.0以下の分子量分布Mw/Mnを有する、請求項1?3のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記ポリマーアロイは、該ポリマーアロイの全体100重量%に対して、20?70重量%の前記プロピレン単独重合体(b)を含んでなる、請求項1?4のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。
【請求項7】
前記プロピレン単独重合体(b)は、2.0?6.0の分子量分布Mw/Mnを有する、請求項1?4および6のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。
【請求項8】
アルコール中に1日間浸漬させた場合の前記立体網状繊維集合体の重量変化率が0%である、請求項1?4、6および7のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。
【請求項9】
前記立体網状繊維集合体は、圧縮率が50%の時の圧縮応力と圧縮率が25%の時の圧縮応力との比率が、1.7?3.0である、請求項1?4および6?8のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。
【請求項10】
医療・介護用器具として使用される、請求項1?4および6?9のいずれかに記載の立体網状繊維集合体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-05-29 
出願番号 特願2015-553980(P2015-553980)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (D04H)
P 1 651・ 113- YAA (D04H)
P 1 651・ 537- YAA (D04H)
P 1 651・ 121- YAA (D04H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 長谷川 大輔  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 井上 茂夫
蓮井 雅之
登録日 2016-01-22 
登録番号 特許第5873225号(P5873225)
権利者 パネフリ工業株式会社
発明の名称 立体網状繊維集合体  
代理人 江間 晴彦  
代理人 田村 恭生  
代理人 鮫島 睦  
代理人 鮫島 睦  
代理人 江間 晴彦  
代理人 田村 恭生  
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