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審決分類 審判 全部申し立て 1項2号公然実施  B24D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B24D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B24D
審判 全部申し立て 1項1号公知  B24D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B24D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B24D
管理番号 1330103
異議申立番号 異議2016-700974  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-10-06 
確定日 2017-06-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5898821号発明「研磨フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5898821号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第5898821号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5898821号の請求項1-6に係る特許についての出願は、平成28年3月11日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人大井四郎(以下、「特許異議申立人」という。)より請求項1-6に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、平成28年12月6日付けで取消理由が通知され、平成29年2月3日に特許権者から意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年3月14日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。

2 訂正の適否
(1)訂正の内容
ア 特許権者は、特許請求の範囲の請求項1を以下の事項により特定されるとおりの請求項1とし、その結果として請求項1を引用する請求項2-6も訂正することを請求する(訂正事項1)。
「【請求項1】
基材フィルムと、この基材フィルムの表面側に積層される研磨層とを有する研磨フィルムであって、
上記研磨層が、研磨粒子とそのバインダーとを有し、
上記研磨層のテーバー摩耗試験による摩耗量が13mg以上25mg以下であることを特徴とする研磨フィルム。」

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、「摩耗量が10mg以上25mg以下」との記載を「摩耗量が13mg以上25mg以下」と訂正することを請求するものである。
そして、明細書の段落0027に「研磨層20のテーバー摩耗試験による摩耗量の下限としては、10mgであり、12mgがより好ましく、13mgがさらに好ましい。」と記載されていることからして、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、この訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

(3)小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正を認める。

3 本件発明
上記2のとおり本件訂正は認容されるので、本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件発明1ないし6」という。)は、その訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
基材フィルムと、この基材フィルムの表面側に積層される研磨層とを有する研磨フィルムであって、
上記研磨層が、研磨粒子とそのバインダーとを有し、
上記研磨層のテーバー摩耗試験による摩耗量が13mg以上25mg以下であることを特徴とする研磨フィルム。
【請求項2】
上記研磨層における上記研磨粒子の含有量が85質量%以上である請求項1に記載の研磨フィルム。
【請求項3】
上記研磨粒子が、一次粒子径10nm以上50nm未満の第1研磨粒子と、一次粒子径50nm以上250nm未満の第2研磨粒子とを有し、
上記研磨粒子全体に対する第1研磨粒子の含有量が55質量%以上80質量%以下、第2研磨粒子の含有量が15質量%以上45質量%以下である請求項1に記載の研磨フィルム。
【請求項4】
上記第2研磨粒子のうち一次粒子径100nm以上250nm未満の研磨粒子の上記研磨粒子全体に対する含有量が5質量%以上25質量%以下である請求項3に記載の研磨フィルム。
【請求項5】
上記研磨層の平均厚さが、4μm以上15μm以下である請求項1に記載の研磨フィルム。
【請求項6】
上記研磨粒子が、シリカ粒子である請求項1に記載の研磨フィルム。」

4 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし6に係る特許に対して、平成28年12月6日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。なお、「甲第1号証」を単に「甲1」などという。

(1)請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2)請求項1ないし6に係る特許は、甲6に記載された発明であるから、請求項1-6に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。

(3)請求項1に係る特許は、甲1ないし5及び8により、特許法第29条第1項第1号又は第2号の規定に違反してされたものである。

(4)請求項1に係る特許は、甲1ないし5により、特許法第29条第1項第1号又は第2号の規定に違反してされたものである。

(5)請求項2ないし6に係る特許は、甲1ないし甲8に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に違反してされたものである。

(6)請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(7)請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

また、異議申立書に添付された甲1ないし8は次のとおりである。

甲1:市販の研磨フィルム(TOPX S030及びTOPX S035)のウェブカタログ、バンドー化学株式会社ウェブ、製品情報>オプトエレクトロニクス関連製品>精密研磨材TOPX、TOPX S030及びTOPX S035、http://www.bando.co.jp/product/optoelectronics/polish_01.html
甲2:メカニカル・テック社ウェブ、ニュース「バンドー化学、光通信コネクタの仕上げ研磨用精密研磨フィルム」、http://surface.mechanical-tech.jp/node/1166
甲3:市販の研磨フィルム(026UltimasNEC3)のウェブカタログ、Mipox株式会社ウェブ、製品案内>製品別>研磨フィルム>光ファイバー・光コネクタ>026Ultimas(仕上げフィルム)、026UltimasNEC3、http://www.mipox.co.jp/products/product1/tape/026-ultimas
甲4:Mipox株式会社ウェブ、NEWS>仕上げフィルム『026Ultimas』をリリースしました。、http://www.mipox.co.jp/news/026ultimas-release
甲5:市販の研磨フィルム(FOS)のウェブカタログ、大日本印刷株式会社ウェブ、ニュースリリース2001年、超微細シリカ粒子を用いた光コネクタ端面用最終仕上げ研磨フィルム『FOS』を開発、http://www.dnp.co.jp/news/1188890_2482.html
甲6:特開2010-274348号公報
甲7:特開2008-1803号公報
甲8:実験成績証明書(甲第1号証・甲第3号証・甲第5号証の研磨フィルムを含む市販の研磨フィルムのテーバ摩耗試験により測定された摩耗量と、特許明細書の記載に基づいて行った研磨試験の結果)

5 当審の判断
(1)各甲号証の記載
ア 甲1、2及び8
甲1には市販の研磨フィルム(TOPX S035)のウェブカタログが示され、甲2にはTOPX S035が本件出願前に公知であったことを示すニュースが示され、甲8には、TOPX S035の研磨フィルムの摩耗量が11.6mgである測定結果が示されている。

イ 甲3、4及び8
甲3には市販の研磨フィルム(026UltimasNEC3)のウェブカタログが示され、甲4には026Ultimasが本件出願前に公知であったことを示すニュースが示され、甲8には、026UltimasNEC3の研磨フィルムの摩耗量が11.4mgである測定結果が示されている。

ウ 甲5及び8
甲5には市販の研磨フィルム(FOS)が本件出願前に公知であったことを示すニュースが示され、甲8には、FOSの研磨フィルムの摩耗量が22.1mg及び14.6mgである測定結果が示されている。

エ 甲6
甲6には、実施例3ないし5として、本件特許の実施例5に近い配分量の研磨粒子を有する研磨フィルムが示されている。

オ 甲7
甲7には、フィルムからなる基材と、その基材の表面に形成された研磨層とを有する研磨フィルムが示されている。

(2)甲5及び甲8について
事案に鑑み、まず、甲5及び甲8について検討する。
甲8の表1には、丸つきの数字(以下同様)として試料番号1ないし8のデータが示されている。この摩耗量について、訂正により請求項1の記載が「摩耗量が13mg以上25mg以下」とされたことにより、数値範囲を満たすものが甲5に係るFOSの試料番号3のもののみとなった。
そして、試料番号3については、2回の実験データが示されているのみである。
特許権者は、意見書第5ないし6頁の(4)において「本発明の出願時点で本出願人は、大日本印刷株式会社の「FOS」・・について試験を行っており、・・摩耗量は10mg未満、良品率は10%未満であることを確認しています。・・さらに、この甲第8号証を見ますと、NTT-AT社の「ADS」の摩耗量は最初の数回の摩耗量が比較的安定しているにも関わらず9回の測定が行われています。一方、大日本印刷株式会社の「FOS」は1回目と2回目との摩耗量の測定結果が大きく異なっているにも関わらず、2回で測定が中止されています。成績書の信頼性を鑑みれば、当業者であればこのような測定回数とすることは不自然な対処と考えます。」と主張している。
これに対し、異議申立人は、意見書の第2/6頁第7-11行において「特許権者はこの指摘をもって異議申立人が行った甲第8号証に係る試験、すなわち甲第5号証の研磨フィルムのテーバー摩耗試験による摩耗量が22.1mg、14.6mgであって、本件発明の請求項1に規定する範囲に含まれていることを間接的に否定しようとしているように思われますが、その思惑は適正なものとは思われません。」とし、これに続けて、「テーバー摩耗試験」では、結果がばらつく旨の主張が展開されているのみである。
結果がばらつくことを認識していたのであれば、測定を2回しか行わなかった理由についての説明がなされてもしかるべきところ、そのような説明もなく、さらに、異議申立人からは証人尋問等でさらに説明をする用意がある等の申し出もなされていない。

このような状況で、甲8を精査すると、試料によって測定回数がまちまちであり、測定回数をどのように決めたのかも説明がなく不明である。また、一般的には、測定にばらつきが多ければ、より多くの回数を試してみると考えられるが、試料番号3において2回の測定で証拠としては十分と判断した根拠も不明である。さらに、異議申立人単独での測定で、第3者の立ち会いもないので、測定の客観性についても十分に立証されているとは言えない。
してみると、甲8の実験成績証明書をもって、実験を正しく行えていない可能性を排除することのできない試料番号3の実験結果を、本件特許発明の特許要件を検討するための根拠として採用するには不十分である。

(3)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 特許法第36条第4項第1号について
本件特許明細書の表1に関する記載からすると、研磨粒子の量等を変更することにより、様々な摩耗量の研磨フィルムを得ることができることが理解できる。そして、摩耗量が13mgから24mgにおいて良品率が高いことも理解できる。
してみると、訂正により請求項1の記載が「摩耗量が13mg以上25mg以下」とされたことにより、数値範囲が実施例とより対応することになり、数値範囲により課題が解決できることが明らかとなった。

また、甲8の試料番号8は、良品率が低いものであり、そのようなものを含む数値範囲は課題を解決できない旨の通知をしたが、訂正により、本件発明1は試料番号8を含まないこととなった。

したがって、本件発明1ないし6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反して特許されたものとはいえない。

イ 特許法第29条第1項第3号について
甲6の実施例3ないし5には、研磨粒子の含有量が94%の研磨フィルムが示されている。本件特許の実施例5は研磨粒子の含有量が92%で、比較例4は95%である。そうすると、甲6の実施例3ないし5の摩耗量について、本件特許の実施例5の24mgより大きく、比較例4の31mgよりは小さい蓋然性は高いものの「摩耗量が13mg以上25mg以下」の範囲になるとまでは断定できない。
したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものとはいえない。
よって、本件発明1を引用する本件発明2ないし6に係る特許も同様に、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものとはいえない。

ウ 特許法第29条第1項第1号又は第2号について
上記(1)アのとおり、甲1、2及び8からは、甲8の実験成績証明書の記載どおりであったとしても、摩耗量が11.6mgの研磨フィルムの存在が認められるのみである。そして、訂正により特許発明1は、摩耗量が11.6mgの研磨フィルムは含まないこととなった。
上記(1)イのとおり、甲3、4及び8からは、甲8の実験成績証明書の記載どおりであったとしても、摩耗量が11.4mgの研磨フィルムの存在が認められるのみである。そして、訂正により特許発明1は、摩耗量が11.4mgの研磨フィルムは含まないこととなった。
上記(2)のとおり、甲5及び8からは、摩耗量が13mg以上25mg以下の研磨フィルムが本件出願前に公知ないし実施されていたとまではいうことはできない。

したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項第1号又は第2号の規定に違反して特許されたものとはいえない。

エ 特許法第29条第2項について
上記ウのとおり、甲1ないし5及び8からは、摩耗量が13mg以上25mg以下の研磨フィルムが本件出願前に公知ないし実施されていたとまではいうことはできない。そして、甲1ないし5及び8からは、摩耗量が13mg以上25mg以下の研磨フィルムを容易に想到しうるとする示唆ないし動機付けを認めることもできない。

したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。
よって、本件発明1を引用する本件発明2ないし6に係る特許も同様に、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

オ 特許法第36条第6項第1号及び第2号について
上記アと同様に、甲8の試料番号8は、良品率が低いものであり、そのようなものを含む数値範囲は課題を解決できない旨の通知をしたが、訂正により、本件発明1は試料番号8を含まないこととなった。

したがって、本件発明1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号または第2号の規定に違反して特許されたものとはいえない。

(4)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立ての根拠として、異議申立書第6頁下から14-12行に
「請求項 1
条文 特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)
証拠 甲第1号証から甲第5、甲第8号証」
と記載されているが、摩耗量が13mg以上25mg以下の研磨フィルムについて、具体的な摩耗量の数値が刊行物等に示されていたとはいえず、また、上記(3)ウの結論と同様であるので、採用しない。

また、異議申立人は、意見書において「テーバー摩耗試験」のばらつきを理由として、当業者が発明の課題を解決できると理解できる程度に明細書には記載されていないと主張しているが、このような主張は、異議申立書に記載された事項ではないので採用しない。しかしながら、一応検討すると、「テーバー摩耗試験」自体は一般的に知られた試験であり、異議申立人も認識しているように、JIS-K7204として通常認識しうるものである。したがって、テーバー摩耗試験の数値を得ることは可能と考えられる。
そして、測定には誤差が生じることは技術常識であり、ばらつきがあるからといって、数値を特定することができないとまではいうことはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、この基材フィルムの表面側に積層される研磨層とを有する研磨フィルムであって、
上記研磨層が、研磨粒子とそのバインダーとを有し、
上記研磨層のテーバー摩耗試験による摩耗量が13mg以上25mg以下であることを特徴とする研磨フィルム。
【請求項2】
上記研磨層における上記研磨粒子の含有量が85質量%以上である請求項1に記載の研磨フィルム。
【請求項3】
上記研磨粒子が、一次粒子径10nm以上50nm未満の第1研磨粒子と、一次粒子径50nm以上250nm未満の第2研磨粒子とを有し、
上記研磨粒子全体に対する第1研磨粒子の含有量が55質量%以上80質量%以下、第2研磨粒子の含有量が15質量%以上45質量%以下である請求項1に記載の研磨フィルム。
【請求項4】
上記第2研磨粒子のうち一次粒子径100nm以上250nm未満の研磨粒子の上記研磨粒子全体に対する含有量が5質量%以上25質量%以下である請求項3に記載の研磨フィルム。
【請求項5】
上記研磨層の平均厚さが、4μm以上15μm以下である請求項1に記載の研磨フィルム。
【請求項6】
上記研磨粒子が、シリカ粒子である請求項1に記載の研磨フィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-06-02 
出願番号 特願2015-559363(P2015-559363)
審決分類 P 1 651・ 112- YAA (B24D)
P 1 651・ 537- YAA (B24D)
P 1 651・ 536- YAA (B24D)
P 1 651・ 121- YAA (B24D)
P 1 651・ 113- YAA (B24D)
P 1 651・ 111- YAA (B24D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 須中 栄治  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 刈間 宏信
平岩 正一
登録日 2016-03-11 
登録番号 特許第5898821号(P5898821)
権利者 バンドー化学株式会社
発明の名称 研磨フィルム  
代理人 天野 一規  
代理人 天野 一規  
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