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審決分類 |
審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 H01H 審判 全部申し立て 特許請求の範囲の実質的変更 H01H 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01H 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 H01H 審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) H01H |
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管理番号 | 1330109 |
異議申立番号 | 異議2016-700672 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-08-03 |
確定日 | 2017-06-16 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5906377号発明「プッシュスイッチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5906377号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第5906377号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5906377号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成23年9月8日に特許出願され、平成28年4月1日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人宮▲崎▼日出夫(以下、「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされ、同年12月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年3月6日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して異議申立人から、同年4月28日付けで意見書が提出されたものである。 第2 本件訂正の適否についての判断 1.本件訂正の内容 本件訂正請求による本件訂正の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1:特許請求の範囲の請求項1に「前記保護シートは、前記押圧体が配された箇所から、前記溶着された箇所に向けて傾斜しているプッシュスイッチ。」とあるのを、「前記保護シートは、前記押圧体の外縁から、前記溶着された箇所に向けて傾斜しているプッシュスイッチ。」に訂正する。 (2)訂正事項2:明細書の段落【0015】に、「保護シートは、押圧体が配された箇所から、溶着された箇所に向けて傾斜しているプッシュスイッチとしたものである。」とあるのを、「保護シートは、押圧体の外縁から、溶着された箇所に向けて傾斜しているプッシュスイッチとしたものである。」に訂正する。 2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記訂正事項1に関連する記載として、本件訂正前の明細書の段落【0027】には、「そして、保護シート15の中央部分は、押圧体17の上端形状に沿って上方に突出し、その突出している上面位置が被操作箇所となっている。その被操作箇所は、平坦面やなだらかな球面状であると好ましい。そして、保護シート15は、上記被操作箇所から壁部11A上端に重なっている周縁部との間が周囲に向かうにつれて下がっていく傾斜状態になっている。この傾斜状態のものであれば、操作時に保護シート15から受ける影響を少なく抑えることができる。」との記載がある。 また、【図1】ないし【図3】によれば、保護シートは15は、円柱状の押体圧17の外縁から、壁部11Aの上面へ向けて傾斜していることが看取される。 したがって、上記訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内において、「保護シート」の傾斜の態様に関して、「前記押圧体の外縁から、前記溶着された箇所に向けて傾斜している」と限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、訂正事項2は、訂正事項1に伴って、明細書の記載を特許請求の範囲の記載に整合させるものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項1と同様に新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。 そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 3.小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による本件訂正は特許法120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1.本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれを「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 電気的接続が行われるスイッチ接点部と、 壁部と前記壁部で囲まれた上方開口の凹部とを有し、前記凹部内に前記スイッチ接点部が配されたケースと、 前記凹部を覆う保護シートと、 前記保護シートの下方に配された押圧体と、を備え、 前記保護シートと前記ケースの前記壁部の上面は、レーザー照射により少なくとも一部が線状に溶着されており、 前記保護シートは、前記押圧体の外縁から、前記溶着された箇所に向けて傾斜しているプッシュスイッチ。 【請求項2】 前記溶着された箇所は、前記壁部の内周よりも外側に位置する請求項1記載のプッシュスイッチ。 【請求項3】 前記溶着された箇所は、前記壁部の外周に沿って形成されている請求項1記載のプッシュスイッチ。 【請求項4】 前記溶着された箇所は、少なくとも一部が0.1mm以上、0.2mm以下の線幅で形成されている請求項1記載のプッシュスイッチ。 【請求項5】 前記溶着された箇所は、前記凹部を全周に亘って囲むように形成されている請求項1記載のプッシュスイッチ。」 2.取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし5に係る発明に対して平成28年12月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明(引用発明)及び甲第2号証に記載された事項(刊行物2記載の技術事項1)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1に係る特許は、取り消されるべきものである。 (2)請求項2ないし5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明(引用発明)及び甲第2号証に記載された事項(刊行物2記載の技術事項1及び刊行物2記載の技術事項2)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項2ないし5に係る特許は、取り消されるべきものである。 3.甲各号証の記載 (1)甲第1号証 甲第1号証(特開2011-100549号公報)には、「プッシュスイッチ」に関して、図面(特に、図1及び図2参照。)とともに、次の事項が記載されている。 ア.「【0001】 本発明は、例えば携帯電話機の操作ボタン等に好適なプッシュスイッチに関する。 【背景技術】 【0002】 携帯電話機等の電子機器では、小型化及び薄型化に伴って操作ボタンもサイズが小さくされてきた。従来、このような電子機器では、ドーム状のスイッチであるプッシュスイッチが多く採用されている。」 イ.「【0009】 また、本発明のプッシュスイッチは、前記上部突起部が、前記下部突起部よりも外径が大きいことを特徴とする。 すなわち、このプッシュスイッチでは、上部突起部が下部突起部よりも外径が大きいので、上面が広い上部突起部により大きな組み込みズレにも対応可能であると共に小さい下部突起部により確実に可動接点バネの頭頂部を押し下げることができ、組み込み時のズレ量の許容値を上げることができる。 【0010】 また、本発明のプッシュスイッチは、前記上部突起部が、円板状に形成されていることを特徴とする。 すなわち、このプッシュスイッチでは、上部突起部が、円板状に形成されているので、組み込みズレが生じても押し子との接触面である上面が平坦面であるため、押し下げる力が斜め方向に加わり難く、真下方向に加わることで、より良好なクリック感を得ることができる。 【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、以下の効果を奏する。 すなわち、本発明に係るプッシュスイッチによれば、支持シートの上面かつ可動接点バネの頭頂部の直上に形成された上部突起部と、支持シートの下面かつ可動接点バネの頭頂部の直上に形成された下部突起部と、を備えているので、組み込みズレが生じても、良好なクリック感で正確にスイッチ操作が行われ、動作寿命を向上させることができる。したがって、本発明のプッシュスイッチを備えた携帯電話機等の電子機器では、小型で薄型であると共に多少の組み込みズレが生じても良好かつ安定したスイッチ操作の操作キーを得ることができる。」 ウ.「【0014】 本実施形態におけるプッシュスイッチ1は、図1及び図2に示すように、上面に収納凹部2aを有する基板2と、収納凹部2a内の中央に設けられた中央接点3及び該中央接点3を挟んで収納凹部2aの内周縁側に設けられた一対の周辺接点4と、一対の周辺接点4上に架設され押圧によって弾性反転して下方の中央接点3に接触する上方凸形のドーム状金属薄板である可動接点バネ5と、収納凹部2aの開口部を閉塞して基板2上に接着された可撓性の支持シート6と、該支持シート6の上面かつ可動接点バネ5の頭頂部の直上に形成された上部突起部7と、支持シート6の下面かつ可動接点バネ5の頭頂部の直上に形成された下部突起部8と、を備えている。 【0015】 上記基板2は、樹脂板等で形成された絶縁性基板部9と、該絶縁性基板部9の上面に貼り付けられ収納凹部2aとなる円形孔が形成された接着シート10と、で構成されている。すなわち、接着シート10は、両面接着シートであり、この上に支持シート6が接着される。 上記中央接点3及び周辺接点4は、収納凹部2aの底面にパターン形成された銅箔等で形成されている。中央接点3は、収納凹部2aの底面中央に円形状に形成され、一対の周辺接点4は、収納凹部2aの底面周縁に矩形状又は円弧状に中央接点3を中心とした点対称の位置にそれぞれ形成されている。また、中央接点3及び周辺接点4は、基板2の下面又は側端面等に形成された図示しない端子電極に電気的に接続されている。 【0016】 上記可動接点バネ5は、下方に押圧されて所定の押圧力を超えると、節度感を伴って下方に向けて弾性反転する断面円弧状の板バネである。 上記支持シート6は、接着シート10上に円形孔を覆って貼り付けられている。 この支持シート6は、絶縁樹脂フィルムで形成された保護シートであって防水シートとしても機能しており、収納凹部2a内を密封状態としている。 【0017】 上記上部突起部7及び下部突起部8は、硬質な樹脂でそれぞれ円板状に形成されている。また、上部突起部7は、下部突起部8よりも外径が大きく設定されている。例えば、上部突起部7が、直径1mmとされ、下部突起部8が直径0.5mmとされる。また、例えば、上部突起部7の厚さは、0.15mmとされ、下部突起部8の厚さは、0.095mmとされる。」 エ.「【0022】 このように本実施形態のプッシュスイッチ1では、支持シート6の上面かつ可動接点バネ5の頭頂部の直上に形成された上部突起部7と、支持シート6の下面かつ可動接点バネ5の頭頂部の直上に形成された下部突起部8と、を備えているので、組み込みズレが生じても、上部突起部7が押し下げられると下部突起部8が常に可動接点バネ5の中心を押圧して弾性反転させることができる。したがって、良好なクリック感で正確にスイッチ操作が行われると共に、動作寿命を向上させることができる。」 オ.「【0029】 例えば、上記実施形態では、上述したように、上部突起部が円板状であることが好ましいが、下部突起部は、例えば下方に突出したドーム状でも構わない。 また、上記実施形態では、絶縁性基板部に接着シートを貼り付けて接着シートの円形孔によって収納凹部を形成すると共に支持シートを接着シートに貼り付けているが、接着シートを用いず、絶縁性基板部自体に円形状の穴部(収納凹部)を形成して、支持シートを絶縁性基板部の上面に接着剤等で直接貼り付けても構わない。」 カ.上記記載事項オ.の「上記実施形態では、絶縁性基板部に接着シートを貼り付けて接着シートの円形孔によって収納凹部を形成すると共に支持シートを接着シートに貼り付けているが、接着シートを用いず、絶縁性基板部自体に円形状の穴部(収納凹部)を形成して、支持シートを絶縁性基板部の上面に接着剤等で直接貼り付けても構わない。」との記載から、図1の実施形態の変形例として、絶縁性基板部自体に収納凹部を形成する形態が理解できる。そして、当該形態では、収納凹部は、壁部と前記壁部で囲まれた上方開口の凹部からなることは明らかであり、また、図1の記載を合わせみれば、支持シート6は、上部突起部7の外縁から、絶縁性基板部の壁部の上面の接着された箇所に向けて傾斜していることが理解できる。 これらの記載事項、認定事項び図面の図示内容を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「電気的接続が行われる可動接点バネ5及び中央接点3と、 壁部と前記壁部で囲まれた上方開口の凹部とを有し、前記凹部内に前記可動接点バネ5及び中央接点3が配された絶縁性基板部と、 前記凹部を覆う支持シート6と、 前記支持シート6の下方に配された下部突起部8と、を備え、 前記支持シート6と前記絶縁性基板部の前記壁部の上面は、接着剤により接着されており、 前記支持シート6は、上部突起部7の外縁から、前記接着された箇所に向けて傾斜しているプッシュスイッチ1。」 (2)甲第2号証 甲第2号証(特開2002-331587号公報)には、「フィルム接着方法」に関して、図面(特に、図1(a)、図1(b)参照。)とともに、次の事項が記載されている。 キ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、フィルム接着方法に係わり、更に詳しくは電気部品等のプラスチック成形体へ絶縁や封止等を目的としたプラスチックフィルムを接着する際のフィルム接着方法に関する。」 ク.「【0009】また、接着剤による接着では、プラスチック成形体が小い場合又は接着部の面積が小さい場合、その接着部に通常は液状である接着剤を塗布することになるから技術的に難しく、また、化学反応を起こす接着剤の場合は反応時の発生ガスの問題があり、更に、有機溶剤からなる接着剤の場合は接着部が変形しない程度の適正な塗布量を設定することが困難である。」 ケ.「【0011】 【課題を解決するための手段】先ず、請求項1記載の第1の発明のフィルム接着方法は、プラスチック成形体に透明又は半透明のプラスチックフィルムを接着するフィルム接着方法であって、上記プラスチック成形体の一面に、上記プラスチックフィルムを載置し、レーザ光により上記プラスチックフィルムを透過して上記プラスチック成形体を照射することにより、該プラスチック成形体の上記レーザ光による照射部を溶融させ、この溶融部により上記プラスチックフィルムを接着するように構成される。」 コ.「【0016】同図(a)に示すプラスチック成形体1は、例えばサーモスタットのハウジングであり、内部にはバイメタルを利用して開閉するサーモスタットの固定接点2と可動接点3が収容されており、外部には接点端子4が引き出されている。このプラスチック成形体1全体の大きさは、縦20mm、横10mm、高さ5mm程度のものである。 【0017】尚、このようなプラスチック成形体1の材料としては、比較的溶融温度が高いABS、66ナイロン、PBT樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、液晶ポリマ等の樹脂材が好適である。さらに熱硬化性樹脂でもよく、その場合は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を用いてよい。通常的には、これらの樹脂材を射出成形によって所望の形状に成形する。 【0018】このプラスチック成形体1の薄い肉厚の端面5の上にプラスチックフィルム6を載置する。このプラスチックフィルム6の材料としては、レーザ光を吸収しない材料が選択される。例えば無色透明のポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ナイロン、ポリイミド、塩ビ等が挙げられる。勿論、使用されるレーザ光を吸収しない材料であれば無色透明と限ることなく、有色透明でもよく、また半透明であっても良い。」 サ.「【0020】この状態で、端面5に向けて垂直にレーザ光8を照射する。この照射光は押さえのガラス板7及びプラスチックフィルム6を透過して直接プラスチック成形体1の端面5に照射される。そして、レーザ光8は、その照射点9において端面5を加熱して溶融させる。このように端面5の照射点9を溶融させながら、その照射点9を、端面5に対し相対的に移動させ、例えば同図(b)に示すように端面5に設定されたパターン9aに沿って一周させる。 【0021】これにより、プラスチック成形体1の端面5がパターン9aに従って溶融してプラスチックフィルム6に融着し、再び固結する。これにより、プラスチックフィルム6がプラスチック成形体1に接着される。図1(b)にパターン9aで示す接合(接着)部分の幅は0.1?0.2mm程度と極めて狭い。したがって、接合部の面積がどのように小さなプラスチック成形体に対しても、おおむねプラスチックフィルム6の接着が可能である。そして、上述したように、接着面での溶融が発生して、この溶融により接着するので、確実な接着が行われる。 【0022】尚、図1(b)にパターン9aで示す接合部分の周囲には、加熱と溶融に伴う変質部11が観察されるが、この程度の変質は、プラスチック成形体1にもプラスチックフィルム6に対しても悪影響を与えることはない。すなわち、接着によるプラスチック成形体1あるいはプラスチックフィルム6の変形などの悪影響は殆どない。」 シ.上記記載事項サ.の段落【0020】の「端面5に向けて垂直にレーザ光8を照射する。この照射光は押さえのガラス板7及びプラスチックフィルム6を透過して直接プラスチック成形体1の端面5に照射される。そして、レーザ光8は、その照射点9において端面5を加熱して溶融させる。」との記載及び上記記載事項サ.の段落【0021】の「プラスチック成形体1の端面5がパターン9aに従って溶融してプラスチックフィルム6に融着し、再び固結する。これにより、プラスチックフィルム6がプラスチック成形体1に接着される。」との記載並びに図1(a)及び(b)の記載から、「プラスチックフィルム6とプラスチック成形体1の端面5は、レーザ光8の照射により少なくとも一部が線状に溶着されていること。」(以下、「刊行物2記載の技術事項1」という。)が分かる。 ス.上記記載事項サ.の段落【0020】の「端面5に向けて垂直にレーザ光8を照射する。この照射光は押さえのガラス板7及びプラスチックフィルム6を透過して直接プラスチック成形体1の端面5に照射される。そして、レーザ光8は、その照射点9において端面5を加熱して溶融させる。」との記載及び上記記載事項サ.の段落【0021】の「プラスチック成形体1の端面5がパターン9aに従って溶融してプラスチックフィルム6に融着し、再び固結する。これにより、プラスチックフィルム6がプラスチック成形体1に接着される。図1(b)にパターン9aで示す接合(接着)部分の幅は0.1?0.2mm程度と極めて狭い。」との記載並びに図1(a)及び(b)の記載から、「プラスチックフィルム6とプラスチック成形体1の端面5は、レーザ光8の照射により、端面5の内周より外側の位置で端面5の外周に沿って、0.1?0.2mm程度の幅で端面5の外周に沿って、プラスチック成形体1の凹部を全周に亘って囲むように溶着されていること。」(以下、「刊行物2記載の技術事項2」という。)が分かる。 4.判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由について ア.本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明とを対比すると、その技術的意義、機能または構造からみて、引用発明における「可動接点バネ5及び中央接点3」は本件発明1における「スイッチ接点部」に相当し、以下同様に、「絶縁性基板部」は「ケース」に、「支持シート6」は「保護シート」に、「下部突起部8」は「押圧体」に、「プッシュスイッチ1」は「プッシュスイッチ」に、それぞれ相当する。 また、引用発明における「接着剤により接着されて」は、「接着されて」という限りにおいて、本件発明1における「レーザー照射により少なくとも一部が線状に溶着されて」と共通する。 以上の点からみて、本件発明1と引用発明とは、 [一致点] 「電気的接続が行われるスイッチ接点部と、 壁部と前記壁部で囲まれた上方開口の凹部とを有し、前記凹部内にスイッチ接点部が配されたケースと、 前記凹部を覆う保護シートと、 前記保護シートの下方に配された押圧体と、を備え、 前記保護シートと前記ケースの前記壁部の上面は、接着されており、 前記保護シートは、前記接着された箇所に向けて傾斜しているプッシュスイッチ。」 である点で一致し、次の各点で相違する。 [相違点1] 本件発明1では、「前記保護シートと前記ケースの前記壁部の上面は、レーザー照射により少なくとも一部が線状に溶着されて」いるのに対して、引用発明では、「前記支持シート6と前記絶縁性基板部の前記壁部の上面は、接着剤により接着されて」いる点。 [相違点2] 本件発明1では、前記保護シートは、「前記押圧体の外縁から、前記溶着された箇所に向けて」傾斜しているのに対して、引用発明では、前記支持シート6は、「上部突起部8の外縁から、前記接着された箇所に向けて」傾斜している点。 (イ)判断 まず、相違点1について検討する。 甲第2号証には、前記3.(2)シ.の刊行物2記載の技術事項1が記載されている。 本件発明1と刊行物2記載の技術事項1とを対比すると、その技術的意義、機能または構造からみて、刊行物2記載の技術事項1における「プラスチックフィルム6」は本件発明1における「保護シート」に相当し、以下同様に、「プラスチック成形体1」は「ケース」に、「端面5」は「壁部の上面」に、「レーザ光8の照射」は「レーザー照射」に、それぞれ相当するから、刊行物2記載の技術事項1は、「保護シートとケースの壁部の上面は、レーザー照射により少なくとも一部が線状に溶着されていること。」ということができる。 そして、引用発明と刊行物2記載の技術事項1とは、スイッチの小型化を課題としているから(甲第1号証の段落【0002】、甲第2号証の段落【0009】参照。)、引用発明に刊行物2記載の技術事項1を適用して、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得た事項である。 次に、相違点2について検討する。 甲第1号証の段落【0009】の「上部突起部が下部突起部よりも外径が大きいので、上面が広い上部突起部により大きな組み込みズレにも対応可能である」との記載、及び段落【0011】の「支持シートの上面かつ可動接点バネの頭頂部の直上に形成された上部突起部と、支持シートの下面かつ可動接点バネの頭頂部の直上に形成された下部突起部と、を備えている」との記載からみて、甲第1号証には、大きな組み込みズレにも対応可能とするために、支持シート6の上面に下部突起部8より外径の大きな上部突起部7を形成することが記載されているが、甲第1号証には、下部突起部8の外縁から支持シート6を傾斜させることについての記載や示唆はない。 また、甲第2号証にも下部突起部の外縁から支持シートを傾斜させることについての記載や示唆はない。 したがって、引用発明及び甲第2号証に基いて、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)まとめ 以上のとおり、本件発明1は、引用発明及び甲第2号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ.本件発明2ないし5について 本件発明2ないし5は、本件発明1の発明特定事項の全てを含むものであるから、本件発明1と同様に、引用発明及び甲第2号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)異議申立人の主張について 異議申立人は、平成29年4月28日付けの意見書の添付書類として、参考資料1(米国特許出願公開2011/0036696号明細書)、参考資料2(特開2006-216291号公報)及び参考資料3(特開2010-257601号公報)を提出し、平成29年4月28日付けの意見書の第7ページの下から7行ないし同4行において「本件特許発明1の『前記保護シートは、前記押圧体の外縁から、前記溶着(接着)された箇所に向けて傾斜している』との構成は、周知である。」旨を主張する。 しかしながら、参考資料1ないし3に記載された事項からは、保護シートは、押圧体の外縁から傾斜しているとはいえるが、保護シートは、保護シートが接着された箇所に向けて傾斜していることは図示されていない。 そして、そもそも、前記(1)ア.(イ)の相違点2についての当審の判断のとおり、甲第1号証には、大きな組み込みズレにも対応可能とするために、支持シート6の上面に下部突起部8より外径の大きな上部突起部7を形成することが記載されているから、引用発明に参考資料1ないし3に記載された事項を適用する動機付けはない。 また、仮に引用発明に参考資料1ないし3に記載された事項を適用しても、参考資料1ないし3に記載された事項は、前述のように、保護シートは、保護シートが接着された箇所に向けて傾斜しているものではないから、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とはならない。 したがって、異議申立人の主張を採用することはできない。 第4.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 プッシュスイッチ 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、各種電子機器の入力操作部に用いられるプッシュスイッチに関するものである。 【背景技術】 【0002】 各種電子機器の入力操作部の信号用スイッチとしては、押圧操作すると軽快なクリック感を伴って動作するプッシュスイッチが多く用いられている。 【0003】 このような従来のプッシュスイッチについて、図7?図9を用いて説明する。 【0004】 図7は従来のプッシュスイッチの断面図、図8は同外観斜視図、図9は同分解斜視図であり、同図において、1は上面が開口した箱型に形成された絶縁樹脂製のケースで、その凹部の内底面には中央接点2と外側接点3が固定されている。中央接点2に繋がった端子2A、外側接点3に繋がった端子3Aは、ケース1外方にそれぞれ延設されている。 【0005】 4は上方凸形で円形ドーム状に形成された弾性薄板金属製の可動接点であり、その外周下端が外側接点3上に載置されて凹部内に配され、ドーム状頂点部の下面は中央接点2と間隔をあけて対峙している。 【0006】 そして、5は下面の全面に粘着層5Aを有する絶縁フィルム製の保護シートで、ケース1の凹部上を覆うように、上記凹部を構成している壁部1A上端に粘着層5Aで粘着保持されてケース1に装着されている。 【0007】 以上のように従来のプッシュスイッチは構成されている。 【0008】 次に動作について説明する。上方から保護シート5を介して可動接点4のドーム状頂点部を押圧し、その力が所定の大きさを超えると、ドーム状の中央部分がクリック感を伴って下方凸形に弾性反転し、その中央部分の下面が下方に対峙した中央接点2と接触する。これによって、可動接点4を介して中央接点2と外側接点3との間が導通したスイッチオン状態となる。 【0009】 そして、加えていた押し下げ力を解除すると、クリック感を伴って、弾性反転していた可動接点4のドーム状の中央部分が元の上方凸形に弾性復帰して中央接点2から離れ、中央接点2と外側接点3との間が絶縁状態となったスイッチオフ状態に戻るものであった。 【0010】 なお、この出願の発明に関連する先行技術文献としては、例えば、特許文献1、特許文献2が知られている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0011】 【特許文献1】特開2006-236805号公報 【特許文献2】特開2010-021034号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0012】 近年、各種電子機器は小型軽量化などが進み、それに搭載される電子部品についても小型化されたものへの要望が高まっている。その中で、上記従来のプッシュスイッチでは、ケース1の凹部上を覆う保護シート5を、下面の粘着層5Aでケース1の壁部1A上端に保持させた構成であり、その構成のままで小型化を進めると保護シート5の粘着代にあたる面積が少なくなっていくようになってしまい、保護シート5のケース1への安定した粘着保持状態の確保が困難になることもあるという課題があった。 【0013】 本発明は、上記課題を解決するものであり、保護シートの粘着代にあたる面積が少なくなっても保護シートがケースに安定して保持された状態で構成されたプッシュスイッチを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0014】 上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。 【0015】 本発明は、電気的接続が行われるスイッチ接点部と、壁部と壁部で囲まれた上方開口の凹部とを有し、凹部内にスイッチ接点部が配されたケースと、凹部を覆う保護シートと、保護シートの下方に配された押圧体と、を備え、保護シートとケースの壁部の上面は、レーザー照射により少なくとも一部が線状に溶着されており、保護シートは、押圧体の外縁から、溶着された箇所に向けて傾斜しているプッシュスイッチとしたものである。 【0016】 これであれば、レーザー照射による溶着固定箇所で保護シートがケースに強固に溶着固定された状態のものに構成できると共に、操作時に保護シートから受ける影響を少なく抑えたものに構成できるという作用を有する。 【発明の効果】 【0020】 以上のように本発明によれば、保護シートの粘着代にあたる面積が少なくなっても保護シートがケースに安定して保持された状態で構成されたプッシュスイッチを提供することができるという有利な効果が得られる。 【図面の簡単な説明】 【0021】 【図1】本発明の一実施の形態によるプッシュスイッチの外観斜視図 【図2】同断面図 【図3】同分解斜視図 【図4】同上面図 【図5】同第一の溶着固定箇所において他の形状で設定したものの上面図 【図6】同第一の溶着固定箇所において他の形状で設定したものの上面図 【図7】従来のプッシュスイッチの断面図 【図8】同外観斜視図 【図9】同分解斜視図 【発明を実施するための形態】 【0022】 以下、本発明によるプッシュスイッチについて、図1?図6を用いて説明する。なお、従来と同一構成の部分には、同一符号を付して詳細説明は省略する。 【0023】 (実施の形態) 図1は、本発明の一実施の形態によるプッシュスイッチの外観斜視図、図2は同断面図、図3は同分解斜視図、図4は同上面図である。 【0024】 同図において、11は上面が開口した箱型に形成された絶縁樹脂製のケースで、壁部11Aで囲まれて構成された凹部の内底面には、ケース11を形成する樹脂により金属製の中央接点2と金属製の外側接点3がインサート成形されて固定されている。中央接点2に繋がった端子2A、外側接点3に繋がった端子3Aは、ケース11の外方にそれぞれ延設されている。4は上方凸形でドーム状に形成された弾性薄板金属製の可動接点で、その外周下端が外側接点3上に載置されて凹部内に配され、ドーム状の中央部下面は中央接点2と間隔をあけて対峙している。以上の中央接点2と外側接点3、および可動接点4によって凹部内にスイッチ接点部が構成されている。 【0025】 15は絶縁フィルム製の保護シートであり、凹部を覆うようにケース11上に配され、ケース11の壁部11A上端に重ねて配された周縁部が装着保持されている。ここに、当該構成品では、保護シート15のケース11への保持状態が従来のものとは異なっている。つまり、当該構成品では、保護シート15がケース11にレーザー照射によって溶着固定されたものとなっている。なお、その第一の溶着固定箇所21の詳細説明は後述するが、その第一の溶着固定箇所21は所定幅の線状で、それを図1、図4では斜線部で示している。 【0026】 そして、保護シート15の下面には、絶縁樹脂製の押圧体17が固着されており、押圧体17の下面は可動接点4の中央頂点部上に載せられている。なお、押圧体17としては、小径の円柱状のものなどであればよい。そして、この保護シート15と押圧体17もレーザー照射によって溶着固定されている。なお、その第二の溶着固定箇所22においても図1、図4では斜線部で示している。 【0027】 そして、保護シート15の中央部分は、押圧体17の上端形状に沿って上方に突出し、その突出している上面位置が被操作箇所となっている。その被操作箇所は、平坦面やなだらかな球面状であると好ましい。そして、保護シート15は、上記被操作箇所から壁部11A上端に重なっている周縁部との間が周囲に向かうにつれて下がっていく傾斜状態になっている。この傾斜状態のものであれば、操作時に保護シート15から受ける影響を少なく抑えることができる。 【0028】 そして、保護シート15とケース11との間をレーザー照射によって溶着固定させた当該構成とするために、ケース11としては、レーザーを吸収する材質、色調で構成されたものを用い、保護シート15としては、レーザーの透過率が高い材質、色調のものを用いている。例えば、ケース11は、ケース11全体を形成する樹脂がナイロンまたはPPS製で、保護シート15はケース11の材質と同じ絶縁フィルムを用いている。さらに、保護シート15としては、下面に粘着層を形成していない絶縁フィルムそのものを用いている。なお、ケース11と保護シート15の材質としては同じものが好ましいが、少なくとも互いの融点が近く溶融状態となった折りに互いに混じりやすいものであってもよい。そして、上述した保護シート15、ケース11として用いた素材の関係は、保護シート15に対する押圧体17の素材の選定のときも同じである。 【0029】 そして、保護シート15は、ケース11の上面視形状とほぼ同じ外形の矩形状で、上記第一の溶着固定箇所21は、ケース11の壁部11A上端の範囲内において、保護シート15の外縁付近に上面視で完全に繋がった矩形リング形状で線状に設けられている。これであれば、第一の溶着固定箇所21で、凹部の外周周囲が全周に亘って囲まれ、防塵性や防滴性の確保ができる。なお、第一の溶着固定箇所21を、保護シート15の外縁に沿うようにその外縁付近に設ければ、保護シート15の外縁側からの浮きや捲くれ防止もなされて好ましく、また押圧体17を介在させる場合にも有利となるという利点がある。 【0030】 以上のように、当該実施の形態によるプッシュスイッチは構成されている。 【0031】 ここで、当該構成品を製造するための一つ目の製造方法について説明すると、まず、可動接点4の中央部上面に押圧体17を仮固定した押圧体17付きの可動接点4がケース11の凹部内に配されている第一の仕掛品、および保護シート15を準備する。なお、可動接点4と押圧体17との仮固定は、柔軟性の大きい粘着剤(図示せず)で仮固定されているものとすれば好ましいが、特に限定はされない。また、保護シート15も単品に加工される前の長尺状のものなどであってもよい。 【0032】 続いて、第一の仕掛品に対し、ケース11の凹部上が保護シート15で覆われるように、保護シート15の周縁部をケース11の壁部11A上端に載せる。 【0033】 次に、その状態で、保護シート15の上方側からレーザー照射をする。これにより、保護シート15の周縁部とケース11の壁部11A上端の範囲内の位置を、線状の第一の溶着固定箇所21で溶着させる。また、保護シート15下面に押圧体17上端を第二の溶着固定箇所22で溶着させる。なお、第一の溶着固定箇所21と第二の溶着固定箇所22とは同時に溶着させてもよいし、個別に順次溶着させてもよい。 【0034】 ここで、それらの溶着状態について第一の溶着固定箇所21を例として簡単に説明する。レーザー照射をすると、被照射箇所となる保護シート15位置をレーザーが透過して、下方に位置する壁部11A上端の表面部分を溶融させ、それと同時に両者の当接箇所となった保護シート15下面の表面部分も溶融して、両者間の界面部分が互いに混じって溶着される。 【0035】 そして、第一の溶着固定箇所21は、レーザーを絞って上述した上面視リング形状になるように線状に順次設けていく、もしくは、線状の第一の溶着固定箇所21に応じた保護シート15位置のみに同時にレーザー照射がなされるように保護シート15上にマスクを介在させて設けるなど、様々な手法を用いて構成することができる。なお、レーザー照射によって効率よく第一の溶着固定箇所21を設けるには、保護シート15の周縁部下面をケース11の壁部11A上端位置に少なくとも当接もしくは圧接させた状態でレーザー照射をすることが好ましいが、その当接もしくは圧接状態とする手段は特に限定はされない。 【0036】 そして、線状の第一の溶着固定箇所21としては、線幅として0.1?0.2mm程度が好ましい。また、線状の第一の溶着固定箇所21は、凹部の外周位置からは0.03mm程度もしくはそれ以上を目安に寸法をあけた外側位置に設けるようにしておくと、レーザー溶着時において凹部内のスイッチ接点部への影響度合いが少なく抑えられて好ましい。さらに、当該構成のように押圧体17を介在させる場合には、線状の第一の溶着固定箇所21を保護シート15の外縁に沿うように設けると好ましい。 【0037】 第二の溶着固定箇所22は、押圧体17上部の範囲内に収まる設定とすると、スイッチ接点部への影響が少なくできて好ましい。なお、押圧体17は可動接点4上に仮固定されているため、押圧体17が位置精度よく可動接点4に合わせ込んで配されたものに容易に構成できる。また、押圧体17を可動接点4上に仮固定させておくと、その押圧体17上に保護シート15を載せるようにすればよいので、保護シート15の配置自由度も高く好ましい。 【0038】 このように、当該構成品では、保護シート15において従来品で粘着代にあたる周縁部が、壁部11A上端の範囲内において部分的な線状の第一の溶着固定箇所21により溶着保持されたものとなっている。このように溶融箇所を部分的に抑えた当該構成であれば、溶着時に発生する熱量も抑えられることとなるため、スイッチ接点部に加えて、溶融する保護シート15およびケース11への影響度合いも少なく、管理の簡素化も可能となる。 【0039】 そして、保護シート15をレーザー照射でケース11に溶着固定したものとすると、たとえ、その第一の溶着固定箇所21が線状であっても従来の粘着固定よりも強固な装着保持状態のものに構成できる。つまり、従来品では粘着代にあたる面積が少なくなると保護シートの安定した粘着保持状態を確保することが困難になる場合もあるが、当該構成であれば、その粘着代にあたる面積が少ない場合であっても、保護シート15のケース11への保持状態が安定したものに容易に構成できる。さらに、レーザー照射を用いるため、保護シート15のケース11への装着工数を低減させることも可能となり、品質の安定したものを安価に提供することができる。 【0040】 次に、当該実施の形態によるプッシュスイッチの動作の説明をする。上方から保護シート15の被操作箇所に押し下げ力を加えると、その押し下げ力が押圧体17を介して可動接点4の中央部に伝わり、押圧体17で可動接点4の中央部が押圧されていく。そして、その力が所定の大きさを超えると可動接点4の中央部分がクリック感を伴って下方凸形に弾性反転する。これによって、可動接点4の中央部分の下面が中央接点2に接触してスイッチオン状態となる。その力を解除すると、クリック感を伴って、弾性反転していた可動接点4が元の上方凸形に弾性復帰して押圧体17などを元の位置に押し戻すと共に、中央接点2と外側接点3との間が絶縁状態となった元のスイッチオフ状態に戻る。 【0041】 このように、当該構成品では、押圧体17を介して可動接点4の中央頂点位置が常に押圧されるものにできるため、操作時の良好なクリック感触が得られるものに実現できる。 【0042】 なお、上記動作時には保護シート15も撓むようになり、その影響がケース11と保護シート15との間の保持箇所にも繰り返して加わることになるが、保護シート15をケース11に第一の溶着固定箇所21でレーザー溶着して保持させている当該構成では、上記影響によってケース11に対する保護シート15の保持位置がずれたりすることもなくせる。また、押圧体17も保護シート15に第二の溶着固定箇所22でレーザー溶着して固着させているため、押圧体17と可動接点4との間の仮固定状態がなくなったとしても、両者間での大きな位置ずれなどの発生も防止でき、操作時に得られる良好な操作感触は長期に亘って維持されるものとして実現できる。 【0043】 以上のように、当該構成のプッシュスイッチは、保護シート15において、従来品で粘着代にあたる面積が少なくなったとしても、保護シート15がケース11に安定して保持されたものに実現することができる。このため、当該構成品では従来品よりも小型化への対応も容易に可能となる。 【0044】 なお、当該構成品のプッシュスイッチは、様々な変形例を有する。すなわち、上記には押圧体17を可動接点4に仮固定させた製造方法で製作したものを説明したが、押圧体17が保護シート15に予め固着されたものであってもよい。その固着方法は、上述したレーザー照射による第二の溶着固定箇所22で固着されていたり、保護シート15に押圧体17の上端が接着または粘着固定されているものなどであってもよい。このものの場合には、下記の二つ目の製造方法で製造することができる。 【0045】 二つ目の製造方法としては、まず、ケース11の凹部内に可動接点4が配された第二仕掛品、および保護シート15の下面に押圧体17が固着された第三仕掛品を準備する。 【0046】 続いて、第二仕掛品における可動接点4の中央部上に第三仕掛品の押圧体17が当接状態で直接載ると共に、ケース11の凹部が第三仕掛品の保護シート15で覆われるように、第三仕掛品の保護シート15の周縁部を第二仕掛品のケース11の壁部11A上端に載せる。 【0047】 次に、その状態で、保護シート15の上方側からレーザー照射をして、保護シート15をケース11の壁部11A上端の範囲内で、線状の第一の溶着固定箇所21により溶着保持させたものとする。 【0048】 このとき、前述した製造方法の場合と同様に、第一の溶着固定箇所21は、順次設けていったり、マスクを介在させるなどして設けるなど、様々な手法を用いることができること、保護シート15の周縁部下面をケース11の壁部11A上端に少なくとも当接もしくは圧接させた状態でレーザー照射をすると好ましいこと、その当接もしくは圧接状態とする手段は特に限定はされないことは上述したとおりである。 【0049】 この二つ目の製造方法で製造した当該構成品は、押圧体17が可動接点4上に載っているのみのため、可動接点4が動作する際の規制が少なくでき、より良好な感触が得られ易くなるという付帯効果が期待できる。 【0050】 なお、以上には、ケース11全体がレーザーを吸収する材質、色調で構成されたものを用いた構成事例を説明したが、ケース11は、少なくとも壁部11A上端部分のみがレーザーを吸収する材質、色調で構成されていてもよい。また、その上端面に塗料などが塗布されてレーザーを吸収して溶融するように構成されたものなどであってもよい。また、押圧体17においても同様である。 【0051】 なお、以上には押圧体17を凹部内に備えた構成事例について説明したが、従来品のように押圧体17を有していないタイプのものに対しても、第一の溶着固定箇所21で保護シート15がケース11に溶着されているものに構成しても上述同様の作用効果が得られるものに実現できる。また、ケース11内の押圧体17をなくして、その代わりに可動接点4の中央部に対応する保護シート15の上面側の位置に押圧体を固着させた構成のものにしてもよい。 【0052】 そして、押圧体17の有無に拘わらず保護シート15とケース11との間の第一の溶着固定箇所21の上面視形状についても、上述説明した繋がった矩形リング形状に限定はされない。例えば、図5の上面図に示すようにケース11における凹部形状に沿いつつその周囲を囲うリング形状で第一の溶着固定箇所21Aを設けたり、図6の上面図に示すようにケース11における凹部の周囲位置を多角形のリング形状で囲うように第一の溶着固定箇所21Bを設けたりしてもよい。また、第一の溶着固定箇所21、21A、21Bは、繋がったリング状であると好ましいが、部分的に開口した線状であってもよい。このように、その溶着箇所の形状や線幅の寸法などは、求める特性や管理面などを総合的に勘案して、適宜設定すればよい。 【0053】 なお、スイッチ接点部は、上述説明した構成のものに限られることはなく、例えば、可動接点に常接していない独立状態の二つの固定接点間を可動接点で接離させるものなどであってもよい。または、操作時にクリック感を生じないものなどであってもよい。さらには、二段動作するタイプや、プッシュオフタイプのものなどであってもよい。 【0054】 また、ケース11としても全体が絶縁樹脂で形成されたもの以外に、例えばケース11の底部がプリント配線基板で形成され、その上面に絶縁樹脂層が形成されている形態のものなどであっても本発明による思想は適用可能である。 【産業上の利用可能性】 【0055】 本発明によるプッシュスイッチは、保護シートの粘着代にあたる面積が少なくなっても保護シートがケースに安定して保持された状態に構成されたものに実現できるという特徴を有し、各種電子機器の入力操作部等に有用である。 【符号の説明】 【0056】 2 中央接点 2A 中央接点の端子 3 外側接点 3A 外側接点の端子 4 可動接点 11 ケース 11A 壁部 15 保護シート 17 押圧体 21、21A、21B 第一の溶着固定箇所 22 第二の溶着固定箇所 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 電気的接続が行われるスイッチ接点部と、 壁部と前記壁部で囲まれた上方開口の凹部とを有し、前記凹部内に前記スイッチ接点部が配されたケースと、 前記凹部を覆う保護シートと、 前記保護シートの下方に配された押圧体と、を備え、 前記保護シートと前記ケースの前記壁部の上面は、レーザー照射により少なくとも一部が線状に溶着されており、 前記保護シートは、前記押圧体の外縁から、前記溶着された箇所に向けて傾斜しているプッシュスイッチ。 【請求項2】 前記溶着された箇所は、前記壁部の内周よりも外側に位置する請求項1記載のプッシュスイッチ。 【請求項3】 前記溶着された箇所は、前記壁部の外周に沿って形成されている請求項1記載のプッシュスイッチ。 【請求項4】 前記溶着された箇所は、少なくとも一部が0.1mm以上、0.2mm以下の線幅で形成されている請求項1記載のプッシュスイッチ。 【請求項5】 前記溶着された箇所は、前記凹部を全周に亘って囲むように形成されている請求項1記載のプッシュスイッチ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-06-06 |
出願番号 | 特願2011-195825(P2011-195825) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(H01H)
P 1 651・ 855- YAA (H01H) P 1 651・ 841- YAA (H01H) P 1 651・ 854- YAA (H01H) P 1 651・ 851- YAA (H01H) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 出野 智之 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
内田 博之 中川 隆司 |
登録日 | 2016-04-01 |
登録番号 | 特許第5906377号(P5906377) |
権利者 | パナソニックIPマネジメント株式会社 |
発明の名称 | プッシュスイッチ |
代理人 | 鎌田 健司 |
代理人 | 藤井 兼太郎 |
代理人 | 藤井 兼太郎 |
代理人 | 前田 浩夫 |
代理人 | 前田 浩夫 |
代理人 | 鎌田 健司 |