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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E04F |
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管理番号 | 1330140 |
異議申立番号 | 異議2017-700424 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-04-26 |
確定日 | 2017-07-24 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6016503号発明「木質系床材および床構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6016503号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第6016503号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成24年7月27日(優先権主張平成24年2月15日、平成24年5月24日)に特許出願され、平成28年10月7日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人青木一幸(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 2 本件発明 特許第6016503号の請求項1ないし9に係る発明(以下「本件特許発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものである。 3 申立理由の概要 申立人は、証拠として特開平5-116113号公報(甲第1号証)、特開2008-240416号公報(甲第2号証)、特開平6-341213号公報を提出し、請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき旨主張している。 4 刊行物の記載 (1)甲第1号証 甲第1号証には、「厚さ1.0?1.5mmの5枚のクロス単板1(1a、1b、1c、1d、1e)を積層一体化させたクロス合板2の表面のクロス単板1aをサンディングして0.2?0.5mm厚にした後化粧単板3を貼着し、クロス合板2の裏面側に表面側から三層目のクロス単板1cにまで至る直線状または格子状の複数の切り溝4を形成し、クロス合板2の裏面にクッション材5を貼着させて成る床材。」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 (2)甲第2号証 甲第2号証には、「木質単板を3枚以上且つ奇数枚積層してなり、厚さが6?12mm、特に8?10mm程度が好ましい防音床材の木質合板であって、表層単板の厚さが1.4mm以上であり、木質合板の厚さに対して60?80%、特に好ましくは70?80%程度の深さの溝加工が裏面からおもて面に向けて施されていること。」の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 (3)甲第3号証 甲第3号証には、「床衝撃音遮断性能がL-50以下である木質系床材30。」の技術事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されていると認められる。 5 当審の判断 (1)本件特許発明1について ア 対比・判断 (ア)本件特許発明1と甲1発明を対比すると、少なくとも、「裏溝の上端位置」に関し、本件特許発明1は、「合板基材層における上から2層目の単板内に配置され」ているのに対し、甲1発明は、「表面側から三層目のクロス単板1cにまで至る」点で相違しているが(以下「相違点」という。)、当該相違点は、甲第2号証ないし甲第3号証にも記載されていない。したがって、甲1発明において、上記相違点に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 イ 申立人の主張について (ア)申立人は、特許異議申立書において、 (a)甲第2号証に記載されている「合板の厚さに対して70?80%の深さの裏溝」という甲2記載事項を甲1発明に適用すると、切り溝4の上端は合板2の表面から2層目のクロス単板1bの厚さ方向中間部に位置する。甲1発明と甲第2号証に記載されたものは、技術分野を一にし、かつ、共通の課題を有するものであるから、甲1発明に甲2記載事項を適用することに十分な動機付けはあり、たとえ、甲第2号証に表層単板の厚さを1.4mm以上とすることが記載されていても、甲2記載事項の甲1発明への適用に阻害すべき特段の事項や要因は全く見当たらない。 (b)甲第1号証の段落0002には、甲1発明の従来技術として、「クロス合板2の裏面側に表面側から二層目のクロス単板1bに至るまでの切り溝4を形成すること」が記載されており、この記載からみて、「裏溝の上端位置を合板基材層における上から2層目の単板内に配置すること」は、本願発明の出願時点において周知の技術であることは明らかである。 と主張している。 (イ)そこでまず、上記主張(a)について検討する。 a 甲1発明は、「通常クロス合板2が1.0?1.5mmの厚単板を使用しているため、化粧単板3を接着すると上方に凹曲する上反りが発生してしまい、床下地に馴染まず、接着不良の原因となっていた。」(甲第1号証の段落【0003】)との課題を解決し、「クロス単板1aをサンディングして0.2?0.5mm厚にした後化粧単板3を貼着し、クロス合板2の裏面側に表面側から三層目のクロス単板1cにまで至る切り溝4を形成しているので、表面のクロス単板1aが強度的に弱くなることと相まって切り溝4によりクロス合板2の腰が弱くなり、上方に凸曲する下反り傾向になって、化粧単板3を貼着することにより略平らになる」(甲第1号証の段落【0005】)との作用を奏するものであるから、甲1発明において、切り溝4の至る位置を、クロス単板の層の数である三層目と特定したことを、木質合板全体の厚みに対する割合で特定する甲2技術事項を適用する動機付けは存在しない。 b また、甲1発明のクロス合板2において、他のクロス単板1b?1dと比べて、表面のクロス単板1aを0.2?0.5mmと薄くするのに対し、甲2技術事項の木質合板における表層単板の厚さは1.4mm以上であって、その他の木質単板と比べて薄くしている特定はない。そうすると、そもそも、甲1発明のクロス合板2におけるクロス単板1b、1cの位置と、甲2技術事項の木質合板における二層目、三層目の木質単板の位置とは、それぞれ合板全体の厚みに対する位置が異なっていることからみて、甲1発明において、切り溝4の至る位置を、クロス単板の層の数である三層目と特定したことを、木質合板全体の厚みに対する割合で特定する甲2技術事項を適用する動機付けは存在しない。 (ウ)次に、上記主張(b)について検討する。 申立人が主張するように、本件出願時点で、表面側から二層目のクロス単板1bに至るまでの切り溝4を形成することが周知技術であったとしても、甲1発明は、上記aで述べた課題を解決し、作用を奏するものであるから、甲1発明の切り溝4の至る位置を、二層目から三層目に代えた本件特許発明1において、再度、周知技術と主張する二層目に代えることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 ウ 本件特許発明1のまとめ 上記イのとおり、申立人の主張は採用することができず、本件特許発明1は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件特許発明2ないし8について 本件特許発明2ないし8は、本件特許発明1を更に減縮したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件特許発明9について 本件特許発明9と甲1発明を対比すると、少なくとも、本件特許発明1で検討した相違点と同じく、「裏溝の上端位置」に関し、本件特許発明9は、「合板基材層における上から2層目の単板内に配置され」ているのに対し、甲1発明は、「表面側から三層目のクロス単板にまで至る」点で相違している。 しかしながら、相違点は、上記(1)で検討したとおり、当業者が容易に想到し得たことではない。 よって、本件特許発明9は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)小括 以上のとおり、本件特許発明1ないし9は、当業者が、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものではないから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 6 むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-07-13 |
出願番号 | 特願2012-166872(P2012-166872) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(E04F)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 五十幡 直子 |
特許庁審判長 |
小野 忠悦 |
特許庁審判官 |
太田 恒明 住田 秀弘 |
登録日 | 2016-10-07 |
登録番号 | 特許第6016503号(P6016503) |
権利者 | 朝日ウッドテック株式会社 |
発明の名称 | 木質系床材および床構造 |
代理人 | 清水 久義 |
代理人 | 高田 健市 |
代理人 | 清水 義仁 |