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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  B60J
管理番号 1330356
審判番号 無効2015-800056  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-03-09 
確定日 2017-05-31 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5665191号発明「車両用サンバイザの製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5665191号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。 特許第5665191号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 特許第5665191号の請求項2に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1 手続の経緯の概要
本件の特許第5665191号についての手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成23年 5月17日 特願2011-110467号出願
平成26年12月19日 特許第5665191号の設定登録
平成27年 3月 9日 審判請求書提出(請求人)
平成27年 5月22日 審判事件答弁書提出(被請求人)
平成27年 8月 4日付け 審理事項通知
平成27年 9月 7日 参加申請書提出
平成27年 9月24日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成27年 9月24日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成27年10月 5日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成27年10月 8日 第1回口頭審理
平成27年10月14日付け 参加許否の決定
平成27年10月28日 上申書提出(請求人)
平成27年10月29日付け 承諾書提出(被請求人)
平成27年11月 4日 請求取下書提出(請求人)
平成27年11月12日 上申書提出(被請求人)
平成27年11月19日 上申書(2)提出(参加人)
平成27年11月20日 上申書(請求人主張の援用)提出(参加人)
平成28年 3月17日付け 補正許否の決定
平成28年 3月28日付け 審決の予告
平成28年 5月31日 訂正請求書提出(被請求人)
平成28年 5月31日 上申書提出(被請求人)
平成28年 6月24日 弁駁書提出(参加人)
平成28年10月 3日付け 補正許否の決定
平成28年11月 2日 審判事件答弁書提出(被請求人)
平成29年 1月16日 上申書提出(被請求人)

なお、平成27年11月20日提出の上申書(請求人主張の援用)のとおり、参加人は証拠を含め請求人の主張を全て援用しており、以下、請求取下書提出前の請求人の主張部分については、参加人の主張として表記する。

第2 平成28年5月31日付けの訂正請求の可否
1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容
平成28年5月31日付け訂正請求書により被請求人が求める訂正は、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲及び図面のとおり請求項1及び請求項2ごとに訂正しようとするものであって、その内容は次のとおりである。
なお、下線は訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「外表面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法であって、」とあるのを、
「発泡芯材と前記発泡芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体を有する車両用サンバイザの組立完成体の塩化ビニールからなる前記外表面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法であって、
前記発泡芯材は、発泡ビーズを発泡成形して凹凸が発生した発泡芯材であり、」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「外表面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法であって、」とあるのを、
「ミラーユニットを収容保持する収容凹所が形成された発泡芯材と前記発泡芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体と、前記収容凹所に収容保持された外表面の一部を構成するポリプロピレン樹脂のカバーを備える前記ミラーユニットと、を有する車両用サンバイザの組立完成体の前記外表面の一部を構成する前記カバーのカバー外面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法であって、
前記発泡芯材は、発泡ビーズを発泡成形して凹凸が発生した発泡芯材であり、」と訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に「プライマリー処理」とあるのを、
「プライマー処理」に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、「外表面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法であって、」について、外表面は「発泡芯材と前記発泡芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体を有する車両用サンバイザの組立完成体の塩化ビニールからなる」もので、「前記発泡芯材は、発泡ビーズを発泡成形して凹凸が発生した発泡芯材であ」るという発明特定事項を付加して、当該「外表面」の構造、並びに、当該「印刷表示を有している車両用サンバイザ」の材料及び構造を限定する訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0003】、【0009】、【0010】、【0018】、【0022】及び【0023】を参照すると、当該訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、当該訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件を満たすものである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、「外表面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法であって、」について、外表面に印刷表示を有していることは「ミラーユニットを収容保持する収容凹所が形成された発泡芯材と前記発泡芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体と、前記収容凹所に収容保持された外表面の一部を構成するポリプロピレン樹脂のカバーを備える前記ミラーユニットと、を有する車両用サンバイザの組立完成体の前記外表面の一部を構成する前記カバーのカバー外面に」印刷表示を有しているもので、「前記発泡芯材は、発泡ビーズを発泡成形して凹凸が発生した発泡芯材であ」るという発明特定事項を付加して、当該「外表面」の材料及び構造、当該「外面」の材料及び構造、当該「外面」と当該「外表面」との関係、並びに、当該「印刷表示を有している車両用サンバイザ」の材料及び構造を限定する訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0003】、【0009】、【0010】、【0011】、【0018】、【0019】、【0022】及び【0023】を参照すると、当該訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、当該訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件を満たすものである。

(3)訂正事項3について
本件特許の願書に最初に添付した明細書の段落【0025】の「プライマー処理」及び「プライマー層13」並びに段落【0026】の「プライマー処理」及び「プライマー処理層13」から、本件特許の特許請求の範囲の請求項2の「プライマリー処理」は、「プライマー処理」の誤記であることが明らかであり、訂正事項3に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項2に「プライマリー処理」とあるのを、「プライマー処理」とする訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第2号の「誤記の訂正」を目的とするものに該当する。
また、当該訂正は、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件を満たすものである。

(4)
なお、平成29年1月16日に提出した上申書において、被請求人が主張する、特許請求の範囲の請求項1において「・・・車両用サンバイザの組立完成体の塩化ビニールからなる前記外表面に、・・・」、及び、特許請求の範囲の請求項2において「・・・前記車両用サンバイザの組立完成体の前記外表面の一部を構成している前記ミラーユニットの前記カバー外面に対して・・・」とする訂正は、訂正事項1及び2に係る訂正との整合性を図る訂正であり、特許法第134条の2第1項ただし書第3号の「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
また、当該訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、当該訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件を満たすものである。

3 小括
以上のとおりであるので、訂正事項1及び2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、訂正事項3に係る訂正は、誤記の訂正を目的とし、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、上記2(4)で述べた訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とし、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項1?3に係る訂正及び上記2(4)で述べた訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号、第2号及び第3項に掲げる事項を目的とし、同法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであり、当該訂正は適法なものであるからこれを認める。


第3 本件特許発明
上記「第2」で述べたように、本件訂正請求による訂正は適法な訂正であるから、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
発泡芯材と前記発泡芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体を有する車両用サンバイザの組立完成体の塩化ビニールからなる前記外表面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法であって、
前記発泡芯材は、発泡ビーズを発泡成形して凹凸が発生した発泡芯材であり、
車両用サンバイザの組立完成体の塩化ビニールからなる前記外表面に、アクリル酸エステル40?60%、二アクリル酸ヘキサメチレン30?35%、光重合開始剤10?15%であって、残部が顔料、添加剤である紫外線硬化インクを直接噴射するインクジェット印刷方式を用いて、印刷表示を印刷した後、該印刷表示に対して紫外線を照射することを特徴とする車両用サンバイザの製造方法。
【請求項2】
ミラーユニットを収容保持する収容凹所が形成された発泡芯材と前記発泡芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体と、前記収容凹所に収容保持された外表面の一部を構成するポリプロピレン樹脂のカバーを備える前記ミラーユニットと、を有する車両用サンバイザの組立完成体の前記外表面の一部を構成する前記カバーのカバー外面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法であって、
前記発泡芯材は、発泡ビーズを発泡成形して凹凸が発生した発泡芯材であり、
前記車両用サンバイザの組立完成体の前記外表面の一部を構成している前記ミラーユニットの前記カバー外面に対してプライマー処理を行い、前記カバー外面に、アクリル酸エステル40?60%、二アクリル酸ヘキサメチレン30?35%、光重合開始剤10?15%であって、残部が顔料、添加剤である紫外線硬化インクを直接噴射するインクジェット印刷方式を用いて、印刷表示を印刷した後、該印刷表示に対して紫外線を照射することを特徴とする車両用サンバイザの製造方法。」

第4 参加人の主張と証拠方法
1 参加人が主張する請求の趣旨及び理由
参加人は、「特許第5665191号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その無効の理由は、以下のとおりである。
(無効理由)
本件特許の請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明は出願前に頒布された刊行物(甲第1号証乃至甲第3号証)に記載された発明及び電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(甲第4号証)に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号の規定に該当し無効とすべきものである。

2 無効理由に係る主張の要点
(1)
審判請求書第15頁第11?12行
「静電印刷法の代わりにインクジェット印刷法が適用可能であることは自動車部品の分野では周知のことである。」
(2)
審判請求書第16頁第11?13行
「引用発明は印刷する部分の材質が塩化ビニルであり、さらに、紫外線硬化インクの組成比は全て甲第4号証に記載されている。」
(3)
審判請求書第16頁第22?24行
「自動車部品の樹脂成形品の表面に印刷する方法として紫外線硬化インクによるインクジェット印刷法が用いられるので、印刷対象物に対して熱が付与されることがない。」
(4)
平成27年9月24日付け口頭審理陳述要領書第10頁第18?20行、及び、平成27年10月28日付け上申書第6頁第22?24行
「本件発明は、紫外線硬化インク『LH-100』を採用したミマキ製インクジェットプリンタ『JFX-1631』を用いた『インクジェット印刷法』を、車両用サンバイザの外表面の印刷に適用しただけの発明にすぎない。」
(5)
平成28年6月24日付け弁駁書第7頁第12行?末行
「甲1発明の本来の目的は、・・・溶剤を使用せずに表皮材に表示部を形成することが可能な車両用サンバイザの製造方法を提供すること」にあり(甲1の段落【0003】)、トナーを用いることが甲1発明の目的ではない。・・・甲1発明の本来の目的の放棄となることを理由として、甲1発明のトナーを紫外線硬化インクに置換することに阻害要因があるとする被請求人の上記主張には理由がない。」
(6)
平成28年6月24日付け弁駁書第15頁第4?10行
「車両用サンバイザの組立完成体のどの部分に印刷表示を印刷するかは単なる設計事項にすぎず(審決予告46頁4?5行)、また、印刷層の密着性を向上させるための下処理として、印刷対象物にプライマー処理を行うことは印刷技術の分野における周知技術である(甲2の段落【0036】、甲12、甲16、甲30の3の17頁・18頁、審決予告46頁12?16行)。 したがって、当業者において、相違点2-1aに係る構成を容易に想到し得たことは自明である。」

3 参加人の証拠方法
参加人は、証拠方法として、審判請求書に添付して以下の甲第1?8号証(甲第4号証は1?4の枝番を含む)を提出し、平成27年9月24日付け口頭審理陳述要領書に添付して以下の甲第9?24号証(甲第22号証は1?2、甲第24号証は1?5の枝番をそれぞれ含む)を提出し、平成27年10月28日付け上申書に添付して以下の甲第25?34号証(甲第30号証は1?4の枝番を含む)を提出し、平成28年6月24日付け弁駁書に添付して以下の甲第35?42号証を提出している。
なお、審判請求書に添付して提出した参考資料1?3の5は、撤回されている(口頭審理陳述要領書第24頁第18行)。

甲第1号証 特開2003-267050号公報
甲第2号証 特開2001-162758号公報
甲第3号証 特開2001-334609号公報
甲第4号証の1 化学物質等安全データシート(MSDS)
製品名:LH-100 Cyan
MSDS整理番号:030-36U06CC
作成:2010年12月24日
甲第4号証の2 化学物質等安全データシート(MSDS)
製品名:LH-100 Magenta
MSDS整理番号:030-36U06MC
作成:2010年12月24日
甲第4号証の3 化学物質等安全データシート(MSDS)
製品名:LH-100 Yellow
MSDS整理番号:030-36U06YC
作成:2010年12月24日
甲第4号証の4 化学物質等安全データシート(MSDS)
製品名:LH-100 Black
MSDS整理番号:030-36U06KC
作成:2010年12月24日
甲第5号証 化学物質等安全データシート(MSDS)
製品名:LH-100 White
MSDS整理番号:030-36U06WC
作成:2010年12月24日
甲第6号証 インクジェットプリンタ MIMAKI JFX-1631
の特徴及び仕様に関する
インターネット上の紹介記事
甲第7号証 JFX-1631 の販売開始に関する
Mimakiが作成したニュースリリース
2009年5月12日
甲第8号証 本件の出願(特願2011-110467号)の
審査で平成26年6月20日に提出された意見書
甲第9号証 再公表特許第WO2009/148124号
甲第10号証 ウェブサイトのプリントアウト
http://jp.reuters.com/article/2007/04/05/
idJPJAPAN-25425720070405
甲第11号証 ウェブサイトのプリントアウト
http://web.archive.org/web/20041206101532/
http://www.mimaki.co.jp/japanese/ip/
inkjet/ujf-605c/ujf-605c.pdf
甲第12号証 ウェブサイトのプリントアウト
http://web.archive.org/web/20080920145813/
http://www.mimaki.co.jp/japanese/ip/
inkjet/jf/jf-series_j.pdf
甲第13号証 Oceユーザーマニュアル(抄)「なお、eは、
アキュートアクセント付きE小文字を意味する。」
Oec Arizona T220UV ユーザーガイド
オーダー番号3010102780 Prevision C版
甲第14号証 Truepress Jet2500UVパンフレット
https://web.archive.org/web/20120211020429/
http://www.screen.co.jp/ga_dtp/product/
digitalprint/tp_jet2500uv/pdf_2.html
甲第15号証 ウェブサイトのプリントアウト
http://web.archive.org/web/20100730215353/
http://www.mimaki.co.jp/japanese/ip/
inkjet/jfx/jfx_merit.php
甲第16号証 ウェブサイトのプリントアウト
http://web.archive.org/web/20101107180529/
http://www.mimaki.co.jp/english/ip/
inkjet/jfx/jfx_spec.php
甲第17号証 ウェブサイトのプリントアウト
http://web.archive.org/web/20100929082948/
http://www.mimaki.co.jp/japanese/topics/uv/
甲第18号証 ウェブサイトのプリントアウト
http://www.jfpi.or.jp/
webyogo/index.php?term=1286
甲第19号証 ウェブサイトのプリントアウト
http://www.printos.co.jp/printos/printos.html
甲第20号証 産業用インクジェットプリンター用小形UV照射装置
GS Yuasa Technical Report
2004年12月 第1巻 第1号 第78-82頁
甲第21号証 ウェブサイトのプリントアウト
http://isseisha.ict-cube.jp/gizyutu/
index-gizyutu.asp?P=SYO&D=20080000008
甲第22号証-1 特集「UVインクジェットシステムの現状と課題」
UVインクジェットシステムの現状と将来展望
日本印刷学会誌 第45巻第6号(2008) 第602-608頁
甲第22号証-2 ウェブサイトのプリントアウト
https://www.jstage.jst.go.jp/
article/nig/45/6/45_6_602/_article/-char/ja/
甲第23号証 ウェブサイトのプリントアウト
http://www.chem-station.com/
chemistenews/2005/01/post-89.html
甲第24号証-1 SCREEN製品安全データシート
製品名:Truepress ink(UV硬化型インク)
WJ215(C)
甲第24号証-2 SCREEN製品安全データシート
製品名:Truepress ink(UV硬化型インク)
WJ867(M)
甲第24号証-3 SCREEN製品安全データシート
製品名:Truepress ink(UV硬化型インク)
WJ052(Y)
甲第24号証-4 SCREEN製品安全データシート
製品名:Truepress ink(UV硬化型インク)
WJ004(K)
甲第24号証-5 SCREEN製品安全データシート
製品名:Truepress ink(UV硬化型インク)
WJ021(W)
甲第25号証 ウェブサイトのプリントアウト
http://www.mimaki.co.jp/
archives/032/Note_IJ_Primer_D202301_V1.0.pdf.pdf
甲第26号証 ウェブサイトのプリントアウト
http://www.m-kagaku.co.jp/
grproduct/company/mcc/cmd/
notification/1194423_6179.html?category...
甲第27号証 ウェブサイトのプリントアウト
http://techon.nikkeibp.co.jp/
article/HONSHI/20080129/146479/?rt=nocnt
甲第28号証 ウェブサイトのプリントアウト
http://www.musashi-kasei.com/products/index.html
甲第29号証 LED-UV インクジェットプリンタ(UJF-3042)の
開発と拡がる応用分野
日本画像学会誌 第51巻 第4号(2012) 第399-406頁
甲第30号証の1 照会申出書・照会事項書
平成27年10月9日付けの東照第201511862号
甲第30号証の2 弁護士法第23条の2に基づくご照会事項について
平成27年10月21日付け
(株)ミマキエンジニアリング
甲第30号証の3 UVインク密着性に関するガイダンス Ver.1.00
2010/03/10 国内営業部 営業技術G
株式会社ミマキエンジニアリング 管理番号DA20079
甲第30号証の4 UJF3042 UV PRINTER Product Guide
2012年3月13日 Ver1.00 DA20101 Mimaki
甲第31号証 複写機用ポリエステル系トナーバインダー
三洋化成ニュース 2010春No.459
甲第32号証 特開2011-57121号公報
甲第33号証 特開2010-241177号公報
甲第34号証 特開2005-75011号公報
甲第35号証 LED方式UV硬化大型フラットベッドインクジェッ
トプリンタ JFX plusシリーズの出荷開始に
関するお知らせ
株式会社ミマキエンジニアリング
平成22年10月4日
甲第36号証 特開2002-316535号公報
甲第37号証 特開2003-39470号公報
甲第38号証 特開平10-67230号公報
甲第39号証 ウェブサイトのプリントアウト
http://daiwa-kagaku.co.jp/knowledge/1/
甲第40号証 特開平8-253030号公報
甲第41号証 特開平10-16554号公報
甲第42号証 特開平10-315764号公報


第5 被請求人の主張と証拠方法
1 被請求人が主張する答弁の趣旨
被請求人の主張の趣旨は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、無効理由に対して、本件の特許請求の範囲の請求項1、2は、甲第1号証乃至甲第4号証に基づき当業者が容易に想到し得るものではなく、参加人の主張する無効理由には理由が無い、というものである。

2 無効理由に係る主張の要点
(1)
平成27年5月22日付け審判事件答弁書第6頁第32行?第7頁第1行
「甲第1号証には、『静電印刷法によりトナーを付着させる』ことが記載されているだけであって、その他の印刷法で代替できる旨の記載は一切ない。」
(2)
平成27年5月22日付け審判事件答弁書第9頁第17行?第20行
「甲第1号証に記載された発明は、加熱する構成を備える発明であり、インクジェット印刷用のインクには、熱硬化型インクも多数存在するところ^(1)、仮に、インクジェット印刷法を採用したと仮定しても、当然に、その時に選ばれるインクは熱硬化型インクであると解されるべきである。」
(3)
平成27年5月22日付け審判事件答弁書第10頁第11行?第23行
「上記のとおり、・・・請求人は、あえて、何らかの示唆に基づくそれなりの動機付けもなく、甲第4号証の紫外線硬化インクを適用する旨主張しているのであって、・・・表皮材の主成分がPVCであれば、熱膨張の関係、化学結合のしやすさ、定着後の安定のためにトナーもPVCを含有すべきであることが記載されているところ、甲第4号証のインクにはPVCは含有されていないのであって、甲第1号証の記載に基づけば、熱膨張の関係、化学結合のしやすさ、定着後の安定性の点で劣ることになるかもしれないようなPVCを含有していない甲第4号証に記載のインクを何故採用するのか全くに理由が不存在であると言わざるを得ない。」
(4)
平成27年5月22日付け審判事件答弁書第12頁第25行?第29行
「単に、あらゆる印刷法が羅列されている印刷法であればなんでも良い発明に過ぎない甲第2、3号証の記載中に静電印刷法とインクジェット印刷法とが併記されているからと言って、特定の印刷法によって課題達成を目指していると言える甲第1号証に記載された発明の「静電印刷法」が「インクジェット印刷法」に代え得ることの根拠にならないことは言うまでもない。」
(5)
平成28年5月31日付け上申書第13頁第16?20行
「溶剤を用いずにトナーによる表示部を形成することを主たる目的とする甲第1号証において、トナーを用いないものとすることは、甲第1号証の発明本来の目的を放棄することであるから、・・・甲第1号証のトナーを紫外線硬化型インクに置換することには阻害要因があるというべきである。」
(6)
平成28年5月31日付け上申書第15頁第7?10行
「それらの文献(甲第4,6,7号証)は、・・・それらの文献の存在が、第3者が周知のものとして認識していることを立証できるものではないことは明らかである。」
(7)
平成28年11月2日付け審判事件答弁書第8頁第4?11行
「甲第1号証は、トナーを使用する印刷技術を用いた製造方法において、トナーの定着に溶剤を用いない技術を提供することを課題とする発明である・・・トナーの使用は本来の目的を達成する上で不可欠な事項であるから、甲第1号証において、トナー以外のものを採用することは、発明本来の目的を放棄することであり、且つ、甲第1号証では、トナー以外のものを積極的に排除する記載がなされているのである。」
(8)
平成28年11月2日付け審判事件答弁書第12頁第15?20行
「そうすると、『伸縮性を有した材料(例えば塩化ビニル製シート』からなるサンバイザの表皮に使用するインクとして、販売者が伸びに対応していないとして販売しているLH-100ではなく、そのLH-100と併記されている伸びに対応しているLF-200というインクを選択するのが自然な選択であり、客観的な第3者の視点に立てば、あえて、LH-100を選択することは極めて不自然な選択である。」
(9)
平成28年11月2日付け審判事件答弁書第15頁下から第2?第16頁第2行
「その『ステンレス製のスクリーン』で印刷できる表示内容は1種に限られるのであって・・・多種の表示に対応できるものではないのである。」
(10)
平成28年11月2日付け審判事件答弁書第21頁第18?25行
「そして、いずれの文献にも、本件訂正発明2の『発泡ビーズを発泡成形して凹凸が発生した発泡芯材であ』る場合に『発泡芯材に発生する凹凸の存在が問題とならない部位としてのミラーユニットのカバー外面に印刷表示をする』という着眼は記載も示唆もされていないのである。
さらに、その着眼に関連して『カバーの材質がポリプロプレン樹脂であるが、故に、新たに、インクの乗り性及び馴染み性等の問題が生じ、・・・プライマー処理を施す』ことで、その問題を解決することに関しても記載も示唆もないのである。」

3 被請求人の証拠方法
被請求人は、証拠方法として、平成27年5月22日付け審判事件答弁書に添付して以下の乙第1?4号証を提出し、平成27年10月5日付け口頭審理陳述要領書に添付して以下の乙第5?8号証を提出し、平成27年11月12日付け上申書に添付して以下の乙第9?13号証を提出し、平成28年5月31日付け上申書に添付して以下の乙第14?16号証を提出し、平成28年11月2日付け審判事件答弁書に添付して以下の乙第17?18号証を提出している。

乙第1号証 特開2001-310551号公報
乙第2号証 特開平7-188596号公報
乙第3号証 平成20年(行ケ)第10405号判決
乙第4号証 平成20年(行ケ)第10096号判決
乙第5号証 ウエブサイトのプリントアウト
http://www.mimaki.co.jp/
archives/009/DB20266-03_JFX-plus_JPN.pdf
乙第6号証 特表2005-501954号公報
乙第7号証 特開2006-248573号公報
乙第8号証 特開2005-289021号公報
乙第9号証 特開平6-317947号公報
乙第10号証 ウエブサイトのプリントアウト
http://www.jaf.or.jp/
eco-safety/safety/usertest/temperature/detail2.htm
乙第11号証 高温試験結果報告書 発行NO.実A140275
河西工業(株) 試作・実験部 第1課
乙第12号証 特開2014-168980号公報
乙第13号証 特許庁編 工業所有権法(産業財産権法)
逐条解説〔第19版〕 第382-385頁
乙第14号証 平成13年(行ケ)第519号判決
乙第15号証 平成13年(行ケ)第64号判決
乙第16号証 ウェブサイトのプリントアウト
http://www.selcam.co.jp/history.html
乙第17号証 平成23年(行ケ)第10371号判決
乙第18号証 平成26年(行ケ)第10184号判決

第6 当審の判断
1 補正許否
(1)平成28年3月17日付け補正許否の決定
「参加人(審判請求人)が平成27年10月28日付けで提出した上申書(以下「上申書1」という。)及び平成27年11月19日付けで提出した上申書(以下「上申書2」という。)において主張する明確性要件違反に係る無効理由(上申書1の7.(3)ウ〔第22頁第20行?第23頁第16行〕、上申書2の6.(1)〔第3頁第4行?第5頁第18行〕)は、審判請求時の請求書において記載しなかった新たな無効理由であるから、この理由を追加することは、請求書の要旨を変更することになる。そして、この理由を審判請求時の請求書に記載しなかったことにつき合理的な理由があったものとすることもできないから、上記無効理由を追加する補正は、許可しない。」旨の決定をした。
なお、参加人(審判請求人)が口頭審理陳述要領書において提示した甲第9?17、20?23号証については、非接触の印刷法として紫外線硬化インクを用いた「インクジェット印刷法」が本件特許出願時に技術常識であることを立証する証拠の限度で採用する。

(2)平成28年10月3日付け補正許否の決定
「1)参加人(審判請求人)が平成27年10月28日付けで提出した上申書及び平成28年6月24日付けで提出した弁駁書において主張する公然実施発明による進歩性の欠如に係る無効理由(上申書の7.(3)ア及びイ〔第19頁第15行?第22頁第19行〕及び弁駁書の6.(3)〔第17頁第1行?第20頁第12行〕は、審判請求時の請求書において記載しなかった新たな無効理由であるから、この理由を追加することは、請求書の要旨を変更することになる。そして、この理由を審判請求時の請求書に記載しなかったことにつき合理的な理由があったものとすることもできないから、上記無効理由を追加する補正は、許可しない。
2)上記弁駁書に記載された事項のうち、6.(1)イ〔第3頁第21行?第4頁末行〕及び6.(2)〔第5頁第12行?第16頁末行〕の事項による請求の理由の補正については、許可する。」旨の決定をした。

2 甲号証について
(1)甲第1号証に記載の事項及び甲第1号証に記載の発明
ア 甲第1号証に記載の事項
甲第1号証には、図とともに、次の事項が記載されている。
なお、下線は当審が加筆した。以下、同様である。
(1a)
「【請求項2】 バイザ本体が、芯材とその芯材を被覆する表皮材とを備えて構成される、車両用サンバイザの製造方法であって、
前記芯材に前記表皮材を被覆する工程と、
前記表皮材の表面に表示部を形成するために、前記表皮材の前記表示部に対応した位置に静電印刷方法によりトナーを付着させる工程と前記トナーに近赤外線を非接触にて照射し、これによって前記トナーを前記表皮材に溶着させ、前記表皮材に前記表示部を形成する工程とを有することを特徴とする車両用サンバイザの製造方法。」
(1b)
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車室に取付けられる車両用サンバイザの製造方法に関する。」
(1c)
「【0002】
【従来の技術】車両用サンバイザは、一般に板状のバイザ本体を有しており、そのバイザ本体は、芯材とその芯材を被覆する表皮材とを備えて構成されている。そしてその表皮材には、コーションマークなどの表示部が形成されているものも少なくない。そして従来、その表示部がトナーを成分として構成されるものも知られていた。この場合の表示部の形成は、先ず表皮材の所望位置にトナーを付着させる。そしてそのトナーに定着液を噴霧してトナーを表皮材に定着させる。これにより表示部が表皮材に形成されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしトナーを定着させるための定着液は、一般に塩化メチレンなどの溶剤であった。そのため環境への配慮から定着液の飛散を防止したり、揮発性が高いことから定着液の保管方法を工夫する必要があって、作業性が悪いなどの問題があった。そこで本発明は、上記の問題点に鑑みて、溶剤を使用せずに表皮材に表示部を形成することが可能な車両用サンバイザの製造方法を提供することを課題とする。」
(1d)
「【0005】請求項2に記載の発明によれば、表示部を形成する前に表皮材を芯材に被覆する。そのため表皮材は、表示部の位置を考慮することなく芯材に被覆できる。そして表示部は、芯材の位置を考慮しながら所望位置へ設けることができる。そのため芯材に対する所望位置に表示部を設けることができる。かくして表皮材を容易に芯材に被覆できるとともに、表示部を適所に容易に設けることができる。また本発明は、請求項1に記載の発明と同様に、トナーの定着に近赤外線を利用している。そのためトナーの定着の際に溶剤を使用せず、溶剤を使用することによる作業性の問題などが解消される。また近赤外線を利用するためにトナーを表皮材に溶着させやすい。また表皮材の表面に施された意匠処理の溶融を少なくすることも可能である。また非接触にてトナーを溶融するため、表皮材やトナーの厚みが異なる場合であっても柔軟にそれらに対応することが可能である。またトナーを多層状に付着させた際においても容易に対応することが可能である。」
(1e)
「【0007】
【発明の実施の形態】本発明は、車両用サンバイザ1にかかるものであって、図4に示すように板状のバイザ本体を備える。そしてこのバイザ本体は、製品形状に形成された芯材5と、その芯材5の表面を被覆する表皮材4とを備えて構成されている。そして表皮材4の表面側には、図4に示すように表示部6が形成されている。この表示部6は、例えば製品の取扱方法、注意書き(コーション)などの文字・記号であったり、あるいはデザインを構成する模様などである。」
(1f)
「【0008】以下に、車両用サンバイザの製造方法を図1(a)にしたがって説明する。先ず表皮材4を所望形状にカットする。そのカット形状は、製品形状に対応した形状ないし、表示部6を構成するための装置(図2参照)に対応した形状である。そしてカットした表皮材4を印刷装置にセットする(準備する)(ステップS1)。次に、表皮材4の表面のうちの表示部6を構成したい位置に静電印刷装置を利用してトナーを付着させる(ステップS2)。そしてトナーに近赤外線を照射してトナーを溶融し、表皮材4にトナーを溶着させる(ステップS3)。これによって表皮材4の表面にトナーを定着させ、表皮材4に表示部6を形成する(図2参照)。
【0009】次に、図3に示すように製品形状にトリムされた芯材5を準備する。そしてその芯材5に表皮材4を被覆する(ステップS4)。この被覆方法は、例えば図3に示すように二枚の表皮材4の間に芯材5を配設し、表皮材4と芯材5とを層状に重ねる。そして表皮材4に芯材5の外周形状に沿って高周波ないし超音波を照射し、二枚の表皮材4同士を溶着させる。したがって表皮材4が袋状となり、その袋内に芯材5が配設される。かくして芯材5は、表皮材4によって被覆される。そして最後に余分となった表皮材4の端部を切り落とす。また被覆方法は、上記の方法に代えて次の方法による場合であってもよい。すなわち先ず、表皮材4を二つ折りにし、表皮材4の一辺を除いた周縁を縫製して表皮材4を一端側開口となった袋状にする。そして縫製されていない一辺側から芯材5を挿入し、その一辺を閉じる。これによって芯材5は、表皮材4によって被覆される。以上のようにして、車両用サンバイザ1が製造される。」
(1g)
「【0010】なお表皮材4にトナーを付着させる工程(ステップS2)は、静電気を利用する静電印刷方法により行う。この方法は、ステンレス製のスクリーンと電極を適当な距離に向かい合わせ、その間に表皮材4を設置し、スクリーンと電極間に電圧をかける。そしてスクリーン上に付着させられたトナーをブラシローラーなどでこすり、スクリーンの目を通過させ、通過することで帯電したトナーが電極側に引き寄せられ、その電極側にある表皮材4の上に載る(付着する)。この方法は、非接触によって表皮材4にトナーを付着させることができる方法であるため、表皮材4の材質や形状によって影響を受けることが少ない方法である。
【0011】またトナーを表皮材4に溶着(定着)させる工程は(ステップS3)、図2に示すように近赤外線を照射する加熱装置3を利用して行う。したがって先ず、表皮材4が載置された作業台2を加熱装置3の下方へ移動させる(図2参照)。あるいは加熱装置3を表皮材4の上方へ移動させ、表皮材4の上方に加熱装置3を配置する。そして加熱装置3から近赤外線を非接触で照射させ、トナーに熱を与える。これによってトナーは、熱を受けて溶融し、表皮材4に溶着する。例えばトナーが粒子状のものから液状に相変化し、表皮材4の表面上の凹凸部に入り込む。そしてその状態においてトナーが固まり、トナーが表皮材4に物理的に溶着する。あるいはトナーと表皮材4とが化学的に反応して、化学的に溶着し、トナーと表皮材4とが溶着する。」
(1h)
「【0012】また近赤外線は、照射されることで極性の有する分子に運動エネルギーを与え、その分子を振動させる。そしてその振動により熱を生じさせる。したがって近赤外線によってトナーを加熱する場合は、伝導や対流の熱伝達による加熱方法に比べて効率よく加熱できる。これは、近赤外線による加熱方法が媒体物(空気など)を必要としない方法であって、エネルギー損失が少ないからである。また近赤外線は、遠赤外線などに比べて透過性が高い。したがって近赤外線は、トナー(表示部6)や表皮材4に深く侵入して深部からこれらを溶融する特性を持っている。そのためトナーは、図5(b)に示すように表皮材4に接する側を中心に溶融する。かくしてトナーは、表皮材4に対して溶着しすい。
【0013】またトナーは、図5(b)に示すように溶着側が十分に溶融された場合であっても、その反対側である表面側の溶融量を少なくすることができる。したがってトナーが溶融しすぎてダレることによる印刷にじみを少なくすることができる。また表皮材4も、図5(b)に示すように深部から溶融する。したがって表皮材4の表面側の溶融量は少ない。そのため表皮材4の表面に施された意匠処理、例えば光沢処理やシボ加工処理などの溶融を少なくすることも可能である。また表皮材4を溶融しすぎることで表皮材4の変形を防止することも可能である。また近赤外線は、非接触にてトナーないし表皮材4側へ照射される。そのため表皮材4やトナーの厚みが異なる場合であっても柔軟にそれらに対応させることができる。またトナーを多層状に付着させた場合にも、その層の数に容易に対応させることができる。
【0014】ところで近赤外線を利用しない加熱方法、例えば遠赤外線による加熱方法、あるいはヒータによる加熱方法も考えられるが、この場合は、図6に示すようにトナーや表皮材4が表面側から溶融してしまう。したがってこれらの加熱方法では、上記の効果を得ることが困難である。したがって近赤外線による加熱方法は、遠赤外線などによる加熱方法に比べてトナーを表皮材4に容易に溶着させることができる。あるいは表皮材4の表面処理を保持しやすいなどの効果を奏する。」
(1i)
「【0017】一方表皮材4は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、オレフィン樹脂(TPO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)などの熱可塑性樹脂を素材として成形される。また織布ないし不織布などを素材として成形されるものでもよい。また表皮材4は、トナーが熱によって定着されており、溶剤によって定着されていない。したがって表皮材4を耐溶剤性の弱い材質によって成形することも可能である。
【0018】またトナーは、表皮材4との相性がよいものを選択することが好ましい。例えば表皮材4の材料成分に含有される成分を有する材料から成形されるもの、特に表皮材4の主となる成分を含有する材料から成形されるものが好ましい。もし表皮材4が熱可塑性樹脂(例えばPVC)を主成分とする材料から成形されている場合は、トナーがその熱可塑性樹脂(例えばPVC)をキャリヤーとして含有する材料から成形されるものが好ましい。これによってトナーは、表皮材4に対して物理的に溶着しやすい。これは、トナーの熱膨張率と表皮材の熱膨張率とが近いために剥離が生じにくいなどを原因とするからである。またトナーと表皮材4とが化学的に結合しやすい。そのためトナーは、表皮材4に定着しやすく、定着後は、安定よく表皮材4に定着する。」
(1j)
「【0019】以上のようにして車両用サンバイザが製造されるため、表皮材4に表示部6を形成する際には、溶剤を必要としない。したがって溶剤の飛散を防止したり、揮発性の高い溶剤を保管するなどの作業が不要であって、容易に車両用サンバイザを製造できる。また消耗材となる溶剤を不要とするため、製造コストを安くすることも可能である。またトナーは、熱によって溶融される。そのためトナーの溶融が場所によって変わってしまうことが少ない。例えば溶剤によりトナーを溶かす方法では、溶剤を均一に噴霧することが容易でないため、場所によってトナーの溶融状態が異なり、これによって定着にムラがでてしまう可能性が高い。そして溶剤の量が多い部分では、トナーが広がりやすく、これによって印刷にじみを発生させる原因にもなっていた。特に表皮材4にシボ加工がある場合には、表皮材4の表面に凹凸が多いことから、その現象が多く見られた。これに対して本発明によると、そのようなトナーのにじみを押えることができるため、シボを有する表皮材4であってもにじみが発生しにくく、表示部6をきれいに仕上げることができる。」
(1k)
「【0020】次に、上記の実施の形態と異なる車両用サンバイザの製造方法を図1(b)にしたがって説明する。すなわち先ず、芯材5に表皮材4を被覆する(ステップS5、図4参照)。次に、その表皮材4の表面にトナーを付着させる(ステップS6)。そしてそのトナーに熱を加えて表皮材4にトナーを溶着(定着)させ(ステップS7)、これによって表皮材4に表示部6を形成する。なおステップS5,S6,S7は、それぞれ上記の実施の形態のステップS4,S2,S3と同じ工程であり、ここではその説明を割愛する。
【0021】すなわち表示部6を形成する前に表皮材4を芯材5に被覆するため、表示部6が芯材5のどの位置に配されるかを配慮することなく、表皮材4を芯材5に被覆することができる。そして表示部6は、芯材5に被覆された状態の表皮材4に設けられる。したがって表示部6は、芯材5の位置を考慮しつつ所望位置に設けられる。したがって本実施の形態によると、表皮材4を芯材5に容易に被覆することができる。そして表示部6を適所に容易に設けることができる。またトナーの定着の際に溶剤を使用しないため、芯材5の材質を耐溶剤性の弱いものにすることも可能である。」
(1l)
「【0022】
【発明の効果】本発明に係る車両用サンバイザの製造方法によれば、溶剤を使用せずに表皮材に表示部を形成することができる。」

イ 甲第1号証に記載の発明
(ア)
上記ア(1e)の「表皮材4」として、「ポリ塩化ビニル(PVC)」を用いることが、上記ア(1i)に記載されている。
(イ)
上記ア(1a)から、「表示部」は、「表皮材の表示部に対応した位置に静電印刷方法によりトナーを付着させ、前記トナーに近赤外線を非接触にて照射し、これによって前記トナーを前記表皮材に溶着させ」形成されるものであるところ、「静電印刷方法によりトナーを付着させ」ることは、「静電印刷方法を用いて、トナーを印刷表示として付着させ」ることであるといえること、及び、「表皮材の表示部に対応した位置」は、表示部が視認できる位置であるから(図4)、「表皮材の外表面」といえることから、「表示部」は、「表皮材の外表面に、トナーを静電印刷方法を用いて、印刷表示として付着させた後、該印刷表示に近赤外線を非接触にて照射してトナーを溶着させる」ことで形成されるといえる。
(ウ)
上記(イ)から、上記ア(1e)の「表皮材4の表面側には、図4に示すように表示部6が形成されている」ことは、「表皮材4の外表面に印刷表示を有している」ことといえるし、当該印刷表示については、「表皮材4の外表面に、トナーを静電印刷方法を用いて、印刷表示として付着させた後、該印刷表示に近赤外線を非接触にて照射してトナーを溶着させる」ものであるといえる。
(エ)
上記ア(1a)に記載の各構成要素には、上記ア(1e)、(1f)、(1k)及び図に記載の各構成要素の番号が対応しているといえる。
(オ)
上記(ア)?(エ)及び上記ア(1a)?(1l)〔特に、上記ア(1a)及び(1e)〕及び図から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

[甲1発明]
「芯材5とその芯材5の表面を被覆するポリ塩化ビニルからなる表皮材4とを備えて構成されているバイザ本体を備える車両用サンバイザ1の、ポリ塩化ビニルからなる表皮材4の外表面に印刷表示を有している、車両用サンバイザ1の製造方法であって、
車両用サンバイザ1のバイザ本体を構成している、ポリ塩化ビニルからなる表皮材4の外表面に、トナーを静電印刷方法を用いて、印刷表示として付着させた後、該印刷表示に近赤外線を非接触にて照射してトナーを溶着させる
車両用サンバイザ1の製造方法。」

(2)甲第2号証に記載の事項
甲第2号証には、図とともに、次の事項が記載されている。
(2a)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、住宅等の建築物における壁面、天井面、床面等の内外装や造作材、建具等の建築資材、家具什器類、住設機器や家電製品等の表面化粧、車両内装等の用途に使用するための化粧材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より上記した各種の用途に使用されてきた化粧材としては、隠蔽性の着色ポリ塩化ビニル樹脂シート等の基材シートの表面に木目等の所望の絵柄の印刷を施し、該絵柄の上に更に透明なポリ塩化ビニル樹脂シートを積層してなる化粧シートや、当該化粧シートを合板等の各種の基材の表面に貼付してなる化粧板などが代表的なものである。」
(2b)
「【0025】上記化粧材の構成要素中、基材シート5としては、従来の同種の化粧材におけるそれと同様の材料を使用することができる。具体的には例えば、薄葉紙、チタン紙、リンター紙、クラフト紙、上質紙、コート紙、樹脂含浸紙、樹脂混抄紙、紙間強化紙等の紙類、天然繊維、再生繊維、合成繊維又は無機繊維等からなる織布又は不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂、酢酸セルロース、硝酸セルロース等の繊維素誘導体、ロジン、シェラック、カゼイン等の天然樹脂等の熱可塑性樹脂からなるフィルム乃至シート、鉄箔、銅箔、錫箔、真鍮箔、アルミニウム箔、ステンレス箔等の金属箔、木材を薄くスライスしてなる突板等、又はそれらから選ばれる2種以上の複合体、積層体等を使用することができる。
・・・
【0035】絵柄層4の形成方法としては、例えばグラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、凸版印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法、転写印刷法等の各種の印刷方法や、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、スプレーコート法、ディップコート法等の各種のコーティング法、その他例えば手描き法、墨流し法、写真法、電子写真法、レーザービーム又は電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法やエッチング法等、又はこれらから選ばれる2種以上の方法を適宜組み合わせて実施することもできる。」
(2c)
「【0036】絵柄層4の基材シート5への密着性を向上するために、絵柄層4の形成の前に基材シート5の表面に予め例えばコロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカー又はプライマー処理等の表面処理を施すこともできる。」

(3)甲第3号証に記載の事項
甲第3号証には、図とともに、次の事項が記載されている。
(3a)
「【0002】
【従来の技術】従来、例えば自動車のフロントパネル等として使用されるABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)樹脂成形品に、印刷による繊細な絵柄の意匠を施すために、予め熱可塑性樹脂シートに絵柄の印刷を施した化粧シートを、ABS樹脂成形品の成形後若しくは成形と同時に、その表面に積層する手法が、広く用いられている。
【0003】係るABS樹脂成形品への絵付用の化粧シートとしては、従来は主として、ポリ塩化ビニル樹脂シートの表面に絵柄印刷インキ層を設け、該絵柄印刷インキ層上に、耐候性に優れた透明アクリル系樹脂シートを積層し、更に、前記ポリ塩化ビニル樹脂シートの裏面に、ABS樹脂バッカー層を積層した構成の化粧シートが用いられている。
・・・
【0005】しかしながら、前記した従来の化粧シートを用いた絵付樹脂成形品は、ABS樹脂とは全く異質な樹脂であるポリ塩化ビニル樹脂を使用していたために、そのまま粉砕しても成形用樹脂として再利用することができない。化粧シートを樹脂成形品から剥離して分別回収することも困難であり、リサイクル化の目処が立っていないのが現状である。」
(3b)
「【0011】
【発明の実施の形態】本発明の化粧シートは、図1に示す様に、表面側から順に、透明アクリル系樹脂シート層11、絵柄印刷インキ層12、ABS樹脂シート層13、及びABS樹脂バッカー層14が積層されて構成されるものである。なお、以下は図示しないが、必要に応じて、任意の層間に接着剤層を設けたり、透明アクリル系樹脂シート層11の表面にエンボス加工やワイピング加工、表面保護層等を施したり、ABS樹脂バッカー層14の裏面に接着剤層又は易接着プライマー層を設けたりすることも任意である。
・・・
【0018】絵柄印刷インキ層12は、透明アクリル系樹脂シート層11の裏面又はABS樹脂シート層12の表面に設けられるものであり、そのインキの組成や印刷方法等は特に限定されるものではないが、例えばアクリル系、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ウレタン系、ポリエステル系、繊維素誘導体系、塩素化ポリプロピレン系、ポリビニルブチラール系等又はそれらの2種以上の混合系等の印刷インキ又は塗料を使用して、例えばグラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、オフセット印刷法、ドライオフセット印刷法、フレキソ印刷法、凸版印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等の各種印刷法や、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、リップコート法、ダイコート法、コンマコート法等の各種塗工法、その他、フォトリソグラフ法、電子写真法、転写法等、適宜の画像形成方法で形成すればよい。
・・・
【0034】こうして得た本発明の絵付樹脂成形品は、自動車のフロントパネルやドアパネル、シート裏面材等の各種車両内装材や、住宅等の建築物における壁材、化粧柱、扉材、窓・扉等の枠材等の建具、幅木、飾り縁等の造作材、浴室や洗面所・厨房等の壁面パネルや装飾材等の各種建築内装材、収納家具の扉材、家具装飾材等の各種家具材等として、幅広く利用可能である。」





























(4)甲第4号証に記載の事項
(4-1)甲第4号証の1に記載の事項
甲第4号証の1には、次の事項が記載されている。





(4-2)甲第4号証の2に記載の事項
甲第4号証の2には、次の事項が記載されている。
なお、甲第4号証の1の内容と重複するpageは摘記を省略する。





(4-3)甲第4号証の3に記載の事項
甲第4号証の3には、次の事項が記載されている。
なお、甲第4号証の1の内容と重複するpageは摘記を省略する。





(4-4)甲第4号証の4に記載の事項
甲第4号証の4には、次の事項が記載されている。
なお、甲第4号証の1の内容と重複するpageは摘記を省略する。





(5)甲第9号証に記載の事項
甲第9号証には、次の事項が記載されている。
(9a)
「【0002】
近年、インクジェット記録方式は、多種多様な基材に対して、それぞれ最適な性能を付与したインクを利用して高画質な印刷物の製造を可能としている。更に、印刷版が不要という特徴を生かして、非常に手軽で安価に印刷でき、また、ワイドフォーマットと呼ばれる広幅の基材にも適用できるようになっている。そこで、この様な特徴を生かして、最近では、広い画像面積を必要とする屋外の大型宣伝広告等の製作分野でも利用される機会が多くなっている。
【0003】
これに使用される基材としては、塩化ビニル樹脂そのものからなるシートや複合材料のターポリンシート等というように、野外の使用に耐える強靭なポリ塩化ビニル系シートが使用されている。そして、このポリ塩化ビニル系シートに印字するインクジェット印刷用インクとしては、基材に対する密着性が良好な油性型のものが主として使用されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、油性型のインクジェット印刷用インク組成物では、有機溶剤等が揮発して作業環境や自然環境を悪化させる等の環境問題を引き起こすことがあった。このため、揮発成分を用いない光硬化型のインクジェット印刷用インク組成物が提案されるようになっている。」
(9b)
「【0050】
画像の硬化における光源としては、紫外線、電子線、可視光線、発光ダイオード(LED)等を挙げることができる。本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、光源としてLEDを用いた場合であっても優れた硬化性を得ることができる。また、LEDを使用するとオゾンを発生させることなく低エネルギーで画像を硬化できる。LEDによる光は、波長ピークが365?420nmの範囲内にある活性エネルギー線であることが好ましい。このようにして得られる印刷物も本発明の一つである。
すなわち、本発明はまた、ポリ塩化ビニル系シートに、上記光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を1?20μmの膜厚で印刷した後、光硬化して得られることを特徴とする印刷物である。」





(6)甲第10号証に記載の事項
甲第10号証には、次の事項が記載されている。





(7)甲第20号証に記載の事項
甲第20号証には、次の事項が記載されている。



(8)甲第21号証に記載の事項
甲第21号証には、次の事項が記載されている。





(9)甲第22号証-1に記載の事項
甲第22号証-1には、次の事項が記載されている。





(10)甲第23号証に記載の事項
甲第23号証には、次の事項が記載されている。





(11)甲第34号証に記載の事項
甲第34号証には、次の事項が記載されている。
(34a)
「【0003】
そして、サンバイザ本体2は、保形性並びに適度の緩衝性を有するサンバイザコア(サンバイザ芯材)4の外表面をPVC樹脂シート、布地シート等から選択されたサンバイザ表皮5により被包して構成されており、このサンバイザ表皮5により外観見栄えを向上させ、かつ良好な手触り感を付与している。」
(34b)
「【0004】
ところで、上記車両用サンバイザ1の製造方法について、図10を基に説明すると、サンバイザコア4は、図10(a)に示すように、ビーズ成形金型6a,6bを型締めして、製品キャビティC内に発泡性ビーズ材料を注入した後、蒸気をベント孔7から製品キャビティC内に供給してビーズ成形を行ない、サンバイザコア4を所要形状に成形する。」
(34c)
「【0009】
しかしながら、図11に示すように、サンバイザコア4の外表面は、蒸気を供給する際に形成されるベント孔7の痕跡が凹凸4aとして生じ、図示するようにサンバイザ表皮5により被包しても、サンバイザ表皮5がサンバイザコア4の外表面に密着状態で被包されるため、サンバイザ本体2の外表面にも同様な凹凸2aが生じ、製品美観の低下を招くとともに、手触り感の悪化をもたらすという不具合が指摘されている。」
(34d)
「【0014】
更に、サンバイザコアの外表面に塗工される塗膜は、サンバイザコアに対する接着性を考慮して、例えば、サンバイザコアとしてPPビーズ成形体を使用した場合には、PP樹脂との接着性の良好な塗料、例えば、ウレタン・アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂を主成分とする反応硬化型塗料が好ましい。」








(12)甲第35号証に記載の事項
甲第35号証には、次の事項が記載されている。





(13)甲第40号証に記載の事項
甲第40号証には、次の事項が記載されている。
(40a)
「【0009】図1は本発明の芯材を施用したサンバイザを示す図面で、図において1はサンバイザ本体である。このサンバイザ本体1は芯材2と、この芯材2の外表面を覆う表皮部材3と、ミラーユニット4とを主要素として構成されている。前記芯材2はポリプロピレン(PP)ビーズ等の合成樹脂発泡材料を発泡成形され、表皮部材3は塩化ビニール樹脂(PVC)、パッド付きクロス等の材料を可とする。また、このサンバイザ本体1は、このサンバイザ本体1の一側に回動自在に取付けられた支軸5を介して図外の車両の天井部分に回動自在に取り付けられ、車体の前後及び上下方向に回動可能である。前記ミラーユニット4は、ミラー本体6とこのミラー本体6に軸6aを介して回動自在に連結されたミラーカバー7とから構成されている。」
(40b)
「【0014】前記ミラーユニット4は、芯材2に形成したミラーユニット収容凹部9内に取付けられる。詳しくは、ミラーユニット4の裏面を収容ミラーユニット凹部9の高密度化された底部9aに超音波溶着することでミラーユニット収容凹部9内に取付けられる。」

(14)甲第41号証に記載の事項
甲第41号証には、次の事項が記載されている。
(41a)
「【0002】
【従来の技術】従来のサンバイザとして、図6及び図7に示すようなものが開発されている。これについて説明すると、11はサンバイザ本体で、このサンバイザ本体11は合成樹脂発泡材料からなる芯材12と、この芯材12を覆う表皮材16と、ミラーユニット15とを主要素として構成されている。
【0003】前記芯材12は、ポリプロピレン等の合成樹脂発泡粒子(PPビーズ)を発泡成形されている。前記芯材12には補強用のワイヤーフレーム13が埋設してあると共に、ミラーユニット収容凹部19が形成してある。前記ミラーユニット収容凹部19の底部19aには合成樹脂製の取付け板14が配置されており、この取付け板14は、その対向する二辺に形成した溝14aをワイヤーフレーム13に係合固定してある。
【0004】前記表皮材16は塩化ビニール(PVC)等の合成樹脂材料からなり、内部に芯材12を包み込んで外周に沿ってウエルダによって溶着されて、芯材12の外表面を覆っている。
【0005】前記ミラーユニット15の背面には複数の溶着リブ15cが形成してあり、ミラーユニット15は、溶着リブ15cを取付け板14に振動溶着することによってミラーユニット収容凹部19内に収容固定されている。」

(15)甲第42号証に記載の事項
甲第42号証には、次の事項が記載されている。
(42a)
「【0002】
【従来の技術】従来のミラーユニット付きサンバイザとして、例えば図4に示すものがある。これについて説明すると、1はサンバイザ本体でこのサンバイザ本体1は図5に示すように、合成樹脂発泡材料を発泡成形して形成した樹脂芯材2と、この樹脂芯材2の外表面を覆う表皮部材3と、ミラーユニット4とを主要素として構成されている。
【0003】また、このサンバイザ本体1は、このサンバイザの一側に取付けられた支軸5を介して図外の車両の天井部分に回動自在に取付けられて、車体の前後及び上下方向に回動可能となっている。
【0004】6は前記樹脂芯材2に埋設された補強用のワイヤーフレームで、このワイヤーフレーム6は、その一部が前記支軸5を形成している。
【0005】7はミラーユニット収容凹部、8はこのミラーユニット収容凹部7の底部に配置された薄鋼板製の取付け板で、この取付け板8はワイヤーフレーム6に溶接固定されている。
【0006】そして、ミラーユニット4は、図6に示すように、そのミラーユニット4の一端側に水平方向に突設した爪9を樹脂芯材2に凹設した取付け孔10に挿入し、且つミラーユニット4の他端側裏面に突設した爪11を樹脂芯材2及び表皮部材3に穿設した取付け孔12に挿入し、爪11を取付け板8に掛止することで、ミラーユニット収容凹部7内に取付けられている。」
(42b)
「【0014】樹脂芯材2はポリプロピレン(PP)ビーズ等の合成樹脂発泡材料を発泡成形され、表皮部材3は塩化ビニール樹脂(PVC)、パッド付きクロス等の材料を用いている。」

3 本件特許発明1と甲1発明との対比・判断
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。

甲1発明の「芯材5」と、本件特許発明1の「発泡芯材」とは、「芯材」の限りで共通するといえる。

甲1発明の「ポリ塩化ビニルからなる表皮材4」、「バイザ本体」及び「車両用サンバイザ1」は、それぞれ、本件特許発明1の「塩化ビニールの表皮」、「サンバイザ本体」及び「車両用サンバイザ」に相当する。

甲1発明の「外表面」は、「バイザ本体を備える車両用サンバイザ1」の「外表面」であるところ、本件特許発明1の「外表面」は、「サンバイザ本体を有する車両用サンバイザの組立完成体」の「外表面」であるが、「バイザ本体を備える車両用サンバイザ1」及び「サンバイザ本体を有する車両用サンバイザの組立完成体」は、いずれも「車両用サンバイザ」であるといえるから、甲1発明の「バイザ本体を備える車両用サンバイザ1」の「外表面」と、本件特許発明1の「サンバイザ本体を有する車両用サンバイザの組立完成体」の「外表面」とは、「車両用サンバイザの外表面」の限りで共通するといえる。

上記ア?ウから、甲1発明の「芯材5とその芯材5の表面を被覆するポリ塩化ビニルからなる表皮材4とを備えて構成されているバイザ本体を備える車両用サンバイザ1の、ポリ塩化ビニルからなる表皮材4の外表面に印刷表示を有している、車両用サンバイザ1の製造方法」と、本件特許発明1の「発泡芯材と前記発泡芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体を有する車両用サンバイザの組立完成体の塩化ビニールからなる前記外表面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法」とは、「芯材と前記芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体を有する車両用サンバイザの塩化ビニールからなる前記外表面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法」の限りで共通するといえる。

上記イ及びウから、甲1発明の「車両用サンバイザ1のバイザ本体を構成している、ポリ塩化ビニルからなる表皮材4の外表面」と、本件特許発明1の「車両用サンバイザの組立完成体の塩化ビニールからなる前記外表面」とは、「車両用サンバイザの塩化ビニールからなる前記外表面」の限りで共通するといえる。

甲1発明の「該印刷表示に近赤外線を非接触にて照射してトナーを溶着させる」ことと、本件特許発明1の「該印刷表示に対して紫外線を照射すること」とは、それらの技術的意義を踏まえると、印刷表示を定着させるために「電磁波を照射する」ことという限りにおいて共通するといえる。

上記カから、甲1発明の「トナーを静電印刷方法を用いて、印刷表示として付着させた後、該印刷表示に近赤外線を非接触にて照射してトナーを溶着させる」ことと、本件特許発明1の「アクリル酸エステル40?60%、二アクリル酸ヘキサメチレン30?35%、光重合開始剤10?15%であって、残部が顔料、添加剤である紫外線硬化インクを直接噴射するインクジェット印刷方式を用いて、印刷表示を印刷した後、該印刷表示に対して紫外線を照射すること」とは、「印刷表示を印刷した後、該印刷表示に対して電磁波を照射する」ことという限りにおいて共通するといえる。

(2)一致点及び相違点
以上より、本件特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点1>
「芯材と前記芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体を有する車両用サンバイザの塩化ビニールからなる前記外表面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法であって、
車両用サンバイザの塩化ビニールからなる前記外表面に、印刷表示を印刷した後、該印刷表示に対して電磁波を照射する
車両用サンバイザの製造方法。」
<相違点1-1>
「印刷表示を有している」対象、及び、「印刷表示を印刷」する対象が、本件特許発明1では、「発泡芯材と前記発泡芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体を有する車両用サンバイザの組立完成体の塩化ビニールからなる前記外表面」であって、「発泡芯材は、発泡ビーズを発泡成形して凹凸が発生した発泡芯材であ」ること、及び、「車両用サンバイザの組立完成体の塩化ビニールからなる前記外表面」であるのに対して、甲1発明では、「芯材5とその芯材5の表面を被覆するポリ塩化ビニルからなる表皮材4とを備えて構成されているバイザ本体を備える車両用サンバイザ1の、ポリ塩化ビニルからなる表皮材4の外表面」、及び、「車両用サンバイザ1のバイザ本体を構成している、ポリ塩化ビニルからなる表皮材4の外表面」である点。
<相違点1-2>
「印刷表示」を行う手段及び「該印刷表示に対して電磁波を照射する」ことに関して、本件特許発明1では、「アクリル酸エステル40?60%、二アクリル酸ヘキサメチレン30?35%、光重合開始剤10?15%であって、残部が顔料、添加剤である紫外線硬化インクを直接噴射するインクジェット印刷方式を用いて、印刷表示を印刷した後、該印刷表示に対して紫外線を照射する」のに対して、甲1発明では、「トナーを静電印刷方法を用いて、印刷表示として付着させた後、該印刷表示に近赤外線を非接触にて照射してトナーを溶着させる」点。

(3)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1-1について
(ア)
車両用サンバイザに対して、注意書き(コーション)等の印刷表示を印刷をする場合に、印刷をする対象は、本件特許発明1も甲1発明も、「芯材と前記芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体を有する車両用サンバイザの塩化ビニールからなる前記外表面」であるから、印刷対象となる外表面が、サンバイザ本体を有する車両用サンバイザの塩化ビニールからなる外表面である点では、格別に相違するものではない。また、甲1発明の「サンバイザ本体」は、組立完成体となった場合の主要部品であり、サンバイザ本体は、車両用サンバイザの基本的形状をなしているといえるから(本件特許明細書の段落【0022】)、甲1発明の「サンバイザ本体」と、本件特許発明1の「サンバイザ本体を有する車両用サンバイザの組立完成体」とは、基本的形状(全体的な寸法や形など)が共通しているといえる。
これらのことから、印刷をする対象として、サンバイザ本体の外表面を選択するか、サンバイザ本体を有する車両用サンバイザの組立完成体の外表面を選択するかは、当業者が必要に応じて適宜に選択し得る程度のものといえる。
(イ)
また、サンバイザ本体として、発泡ビーズを発泡成形した発泡芯材と当該発泡芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮とを備えているものは、甲第40?42号証(甲第40号証(上記2(13)(40a))、甲第41号証(上記2(14)(41a))、及び、甲第42号証(上記2(15)(42a)及び(42b)))に示すように、周知技術であり、この発泡芯材は、発泡ビーズを発泡成形して、凹凸が発生しているといえる(甲第34号証(上記2(11)(34a)?(34d)))。
(ウ)
そうすると、上記周知技術を、甲1発明に適用することで、甲1発明の「芯材5とその芯材5の表面を被覆するポリ塩化ビニルからなる表皮材4とを備えて構成されているバイザ本体」を、「発泡ビーズを発泡成形して凹凸が発生した発泡芯材と前記発泡芯材を被覆して塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体」として構成し、「印刷表示を印刷」する対象として、甲1発明の「車両用サンバイザ1のバイザ本体を構成している、ポリ塩化ビニルからなる表皮材4の外表面」に代えて、「サンバイザ本体を有する車両用サンバイザの組立完成体の塩化ビニールからなる外表面」を適宜に選択することは、格別に困難なことではない。
そして、この結果、「印刷表示を印刷」する対象として、適宜に選択された「外表面」は、「発泡芯材と前記発泡芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体を有する車両用サンバイザの組立完成体の塩化ビニールからなる前記外表面」となり、「発泡芯材は、発泡ビーズを発泡成形して凹凸が発生した発泡芯材」であるといえるから、本件特許発明1の「印刷表示を印刷」する対象の「車両用サンバイザの組立完成体の塩化ビニールからなる前記外表面」でもあり、「印刷表示を有している」対象の「外表面」でもあるといえる。
したがって、上記周知技術を甲1発明に適用し、印刷対象(塩化ビニールからなる外表面)の態様を適宜に選択するととで、上記相違点1-1に係る本件特許発明1の構成に到ることは、当業者が容易になし得たといえる。

イ 相違点1-2について
(ア)
甲1発明は、溶剤を使用せずに非接触の印刷法を用いることを目的とし(上記2(1)ア(1c)及び(1g))、それによって、「表皮材4は、ポリ塩化ビニルとして形成され」るものであって、「凹凸が多いシボを有する表皮材4であっても、表示部6をきれいに仕上げることができる」(上記2(1)ア(1j))という作用効果を奏する発明であるのに対して、本件特許発明1は、「表皮の外表面に・・・凹凸が部分的に表れることから、・・・外表面に対して印刷を適切に行うことはできない。」という技術背景があり(本件特許明細書の段落【0003】)、「凹凸が表皮に表れるとしても、インクジェット印刷方式を用いることにより、非接触状態をもってその表皮の外表面に印刷表示を適切に印刷できる。」(同段落【0009】)、及び、「塩化ビニール製表皮が用いられる場合であっても、その表皮に対して適切なインクを用いて、その表皮の外表面に印刷表示を的確に印刷できる。」(同段落【0010】)という作用効果を奏する発明であるから、前提となっている、両者の技術背景、課題及び作用効果は、共通する部分があるといえる。
(イ)
上記2(1)ア(1g)及び(1h)を参照すると、甲1発明には、熱の影響による表皮材4の変形等を考慮し、それを防止するための印刷法が採用されているといえる。
(ウ)
上記2(1)ア(1i)には、甲1発明の印刷を実施する際に、印刷の対象となる表皮材4と相性の良いトナー(すなわち、インク材料)を選択することが好ましいことが示されている。
(エ)
種々の印刷方法のうち、静電印刷法、インクジェット印刷法等の非接触の印刷法が、車両内装等を含めた種々の技術分野において用いられているところ(甲第2号証(上記2(2)(2a)及び(2b))及び甲第3号証(上記2(3)(3a)及び(3b)))、参加人(審判請求人)の口頭審理陳述要領書に添付された甲第9-10号証及び甲第20-23号証(上記2(5)?(10))によれば、本件特許出願時に、非接触の印刷法として、紫外線硬化インクを用いたインクジェット印刷法は、すでに一般に広く採用されていた印刷法であり、技術常識であったといえる。
(オ)
また、近赤外線は赤外線の区分を示すものであり、可視光線に波長が近い区分の赤外線を近赤外線として区分しており(以下、近赤外線も含めて単に「赤外線」という。)、赤外線は熱を伝えやすく紫外線は化学作用を誘発しやすい性質を備えており、赤外線を照射すればよく加熱され、赤外線の照射に比べて紫外線を照射すれば加熱の影響が少ないことは、技術常識である。
(カ)
ここで、甲第4号証の1?4(以下、まとめて「甲第4号証」という。)に記載の紫外線硬化インクLH-100の材料成分は、本件特許発明1の紫外線硬化インクの材料成分と同一であるところ(本件の実施例とも完全に一致するところ)、甲第4号証の化学物質等安全データシートを作成する意味は、製造・流通・販売を行う場合の危険物の取り扱いの注意喚起にあるといえるものであり、当該化学物質等安全データシートが、本件特許出願の概ね半年前には作成されていたことを併せて考慮すると、紫外線硬化インクLH-100は、本件特許出願前に、インクジェット印刷用のインクとして周知のインクであったといえる。
このことは、甲第6号証には、UV硬化インクジェットプリンタJFX-1613のインクの種類として、UV硬化インクLH-100(C、M、Y等)が記載されており、2009年5月12日付けのニュースリリース用の書類である甲第7号証には、UV硬化インクジェットプリンタJFX-1613を5月14日から出荷開始する旨が記載されており、さらに、甲第35号証(上記2(2)(12))には、UV硬化インクジェットプリンタJFX-1613に一部の部品を装着したものと変わらぬ仕様のUV硬化インクジェットプリンタであり、UV硬化インクLH-100(C、M、Y等)を使用している、UV硬化インクジェットプリンタJFX-1613plusが展示されていたといえる展示会の開催期間(2010年10月5?8日)が記載されており、これら甲第6?7及び35号証の記載からみても明らかである。
(キ)
甲1発明と本件特許発明1とは、非接触の印刷法による作用効果(本件特許明細書の【0003】及び【0009】、並びに、上記(ア))を維持しつつ、表皮材(塩化ビニール)に対する熱の影響による変形等を防止する(本件特許明細書の【0005】及び【0010】、並びに、上記(イ))という課題においても共通する部分があるところ、甲1発明において、当業者が、溶剤を使用せずに作業性の改善を目指し、当該課題を解決しようと、非接触の印刷法に用いるインクの材料として、さらに熱の影響が少ない材料や表皮材と相性の良い材料(上記(ウ))を選定しようと試みる動機付けは充分に存在するといえるし、当該材料の選定を試みる際に、上記(オ)の技術常識から、インクの定着のために、化学作用を誘発しやすく加熱の影響が少ない紫外線に着目することで、赤外線を用いて溶着させるトナー(粉末インク)よりも熱の影響が少なく表皮材と相性も悪くない紫外線硬化インクを採用しようとする動機付けも充分に存在するといえる。
(ク)
以上によれば、甲1発明において、非接触の印刷法に用いることができ熱の影響が少ないインクとして、赤外線を照射することで溶着させるトナーに代えて、紫外線硬化インクとして本件特許出願前に周知であった、甲第4号証に記載の紫外線硬化インクLH-100(上記(カ))を適宜に選択し、当該インクの印刷法として、甲第4号証にも記載されており、非接触の印刷法として技術常識である、紫外線硬化インクを直接噴射するインクジェット印刷法(上記(エ))を採用することで、上記相違点1-2に係る本件特許発明1の構成に到ることは、当業者が容易になし得たといえる。

ウ 本件特許発明1の作用効果について
(ア)
塩化ビニールが熱の影響を受けやすい材料であることは技術常識であり、紫外線は赤外線よりも熱を伝えにくいから(上記イ(オ))、甲1発明の塩化ビニールに、非接触のインクジェット印刷法によって、甲第4号証に記載の紫外線硬化インクLH-100を適用すれば、非接触の印刷法による凹凸にも印刷できるという作用効果を維持しつつ、紫外線の照射によって表皮材・塩化ビニールに対する熱の影響による変形等を充分に防止できるという作用効果が得られ、その結果、凹凸が発生した発泡芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮(凹凸の影響があるといえる。)に的確に印刷できるという作用効果が得られるということは、当業者の予測の範囲内のものであり、格別な作用効果ということはできない。
また、速乾性・生産性が向上するという作用効果は、インクジェット印刷法で紫外線硬化インクを採用することで得られるものであって、当該作用効果も、当業者の予測の範囲内のものであり、格別な作用効果ということはできない。
(イ)
甲第4号証に記載の紫外線硬化インクLH-100という特定の材料を、インクジェット印刷法という特定の印刷法により、甲1発明の塩化ビニールという特定の材質に印刷をすることで、予測できない格別な効果が得られることについては、本件明細書等には記載されていないし、被請求人の提出した証拠を精査しても、明確な根拠は得られない。
(ウ)
上記(ア)及び(イ)から、本件特許発明1が奏する作用効果は、いずれも、甲1発明、甲第1?4号証に記載の技術事項、周知技術及び技術常識から予測できる程度のものであり、顕著な作用効果ということはできない。

エ 被請求人の主張について
(ア)
被請求人が平成27年5月22日付け審判事件答弁書(以下、「答弁書1」という。)等で主張する容易想到性(上記第5 2(1)?(4)等)の可否については、上記ア?ウで述べたとおりであるが、以下、さらに補足する。
上記第5 2(2)において「甲第1号証に記載された発明は、加熱する構成を備える発明であり、・・・インクジェット印刷法を採用したと仮定しても、当然に、その時に選ばれるインクは熱硬化型インクであると解されるべきである。」と被請求人は主張する。
甲1発明は、加熱が必要なトナーを用いているから、加熱する構成を備える発明といえるものの、熱の影響による印刷対象の変形等に着目し、できる限り熱の影響を避けようともする発明であり(上記2(1)ア(1h))、印刷対象として塩化ビニールを選択しているものである。
塩化ビニールが熱の影響を受けやすい材料であるという技術常識を考慮すると、当業者であれば、甲1発明において、塩化ビニールの熱による変形を防止することを重要視することは自然なことである。
そして、甲1発明において、さらに熱の影響を軽減するために、周知の紫外線硬化インクを適宜に選択し得たことは、上記イ(キ)(ク)で述べたとおりであるから、被請求人の上記主張は採用できない。
(イ)
平成28年5月31日付け上申書(以下、「答弁書2」という。)及び平成28年11月2日付け審判事件答弁書(以下、「答弁書3」という。)で被請求人が主張する「トナーを使用している印刷方法をトナーを使用しない印刷方法に置換することには阻害要因がある」旨(上記第5 2(5)、(7)及び(9))については、以下のとおりである。
甲1発明は、「定着液は、・・・溶剤であった。そのため・・・定着液(溶剤)の飛散を防止したり、・・・定着液(溶剤)の保管方法を工夫する必要があって、作業性が悪いなどの問題があった。」ことに鑑み、「溶剤を使用せずに表皮材に表示部を形成することが可能な車両用サンバイザの製造方法を提供すること」(上記2(1)ア(1c))を課題とするものであり、その解決手段として、非接触の印刷法、すなわち、「トナーを静電印刷方法を用いて、印刷表示として付着させた後、該印刷表示に近赤外線を非接触にて照射してトナーを溶着させる」ことで、溶剤を必要としないため、「溶剤の飛散を防止し・・・溶剤を保管するなどの作業が不要であって、容易に車両用サンバイザを製造できる。また消耗材となる溶剤を不要とするため、製造コストを安くすることも可能である。」(上記2(1)ア(1j))、「表皮材4の表面に凹凸が多い」「シボを有する表皮材4であってもにじみが発生しにくく、表示部6をきれいに仕上げることができる。」(上記2(1)ア(1j))、「表皮材4を耐溶剤性の弱い材質によって成形することも可能である。」(上記2(1)ア(1i))、「芯材5の材質を耐溶剤性の弱いものにすることも可能である。」(上記2(1)ア(1k))という作用効果を奏する発明であるといえる。
上記の溶剤に起因する作業性の問題を解決して上記の作用効果を得ることは、生産性を向上させ、かつ、サンバイザ本体が変形することなく、凹凸があっても印刷を明確な状態に仕上げることであるといえる(本件特許発明1と共通するといえる)ところ、甲1発明は、上記のように溶剤を必要としない非接触の印刷手法を採用することが課題を解決するための手段となっているから、非接触の印刷手法を採用することは、課題を解決し作用効果を得るための前提となっているといえる。
そうすると、甲第1号証に接した当業者は、溶剤を必要としない非接触の印刷手法ないしインク材料の選定を試行錯誤することが自然であり、当業者の通常の創作能力は、甲1発明において、周知の種々の印刷手法(上記2(2)(2b)及び上記2(3)(3b)等)から、溶剤を必要としない非接触の印刷手法と同様の機能・作用を備えている印刷手法を選定することに及ぶといえる。
また、そもそも、当業者であれば、定着のために溶剤(定着液)を使用することもあるインク(粉末のインク(トナー)など)を選定しなければ、溶剤に起因する問題は解決できると考えるものである。
したがって、甲1発明において、溶剤を使用しないという課題を解決するために、インク材料として、近赤外線を非接触にて照射して溶着させることで定着させていたトナー(粉末インク)に代えて、紫外線硬化インクを採用し、紫外線を非接触にて照射してインクを定着させること、すなわち、トナーを使用していた印刷方法を、トナーを使用しない印刷方法に置換することに、阻害要因があるとはいえない。
したがって、上記第5 2(5)及び(7)、並びに、トナーを前提としている(9)の被請求人の主張は、いずれも採用できない。
(ウ)
答弁書2における「甲第4、6及び7号証からは、本件特許出願前に、紫外線硬化インクLH-100が周知のインクであったとはいえない」旨(第5 2(6))の被請求人の主張については、以下のとおりである。
甲第4、6及び7号証からは、本件特許出願前に、紫外線硬化インクLH-100が、既に販売されていたことが推認できるのである。特に、甲第4号証は、法律により定められる安全データシートの写しであり、販売などで当該インクを取り扱う第三者は認識することが必要であると考えられる証拠であるといえる。
さらに、当該インクの出荷の時期(2009年5月14日から出荷開始される旨)に関する甲第6及び7号証に併せて、甲第35号証の展示会の開催期間(2010年10月5?8日)を参照すれば(上記イ(カ))、紫外線硬化インクLH-100は、本件特許出願前に既に販売されていた蓋然性が極めて高く、周知のインクであったことは明らかであるから、上記第5 2(6)の被請求人の主張は、採用できない。
(エ)
答弁書3における「伸縮性を有した材料(塩化ビニル製シート)に対しては、LH-100と併記されている伸びに対応しているLF-200というインクを選択するのが自然である」旨の(第5 2(8))の被請求人の主張については、以下のとおりである。
LF-200は、「200%伸びる性能があり、成型・曲げ加工をする場合に適して」(甲第15号証を参照)いるから、極めて変形が大きい部分に用いることを想定しているといえるが、サンバイザの表皮材(塩化ビニル製シート)は、ある程度の伸縮性を有しているとしても、折り曲げたりすることは想定されておらず、成型後に印刷されるものであるから、200%も伸びる性能のLF-200というインクを採用することは、必ずしも自然な選択であるとはいえない。
そして、周知のインクから、どのインクを選定するかは、上記イ(ク)で述べたとおりであるから、第5 2(8)の被請求人の上記主張は採用できない。

4 本件特許発明2と甲1発明との対比・判断
(1)対比
本件特許発明2と甲1発明とを対比する。

甲1発明の「芯材5」と、本件特許発明2の「発泡芯材」とは、「芯材」の限りで共通するといえる。

甲1発明の「ポリ塩化ビニルからなる表皮材4」、「バイザ本体」及び「車両用サンバイザ1」は、それぞれ、本件特許発明2の「塩化ビニールの表皮」、「サンバイザ本体」及び「車両用サンバイザ」に相当する。

甲1発明の「外表面」は、「バイザ本体を備える車両用サンバイザ1」の「外表面」であるところ、「車両用サンバイザ1」の「外面」でもあるといえるから、甲1発明の「バイザ本体を備える車両用サンバイザ1」の「外表面」と、本件特許発明2の「車両用サンバイザの組立完成体の前記外表面の一部を構成する前記カバーのカバー外面」又は「前記車両用サンバイザの組立完成体の前記外表面の一部を構成している前記ミラーユニットの前記カバー外面」とは、「車両用サンバイザの外面」の限りで共通するといえる。

上記ア?ウから、甲1発明の「芯材5とその芯材5の表面を被覆するポリ塩化ビニルからなる表皮材4とを備えて構成されているバイザ本体を備える車両用サンバイザ1の、ポリ塩化ビニルからなる表皮材4の外表面に印刷表示を有している、車両用サンバイザ1の製造方法」と、本件特許発明2の「ミラーユニットを収容保持する収容凹所が形成された発泡芯材と前記発泡芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体と、前記収容凹所に収容保持された外表面の一部を構成するポリプロピレン樹脂のカバーを備える前記ミラーユニットと、を有する車両用サンバイザの組立完成体の前記外表面の一部を構成する前記カバーのカバー外面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法」とは、「芯材と前記芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体を有する車両用サンバイザの外面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法」の限りで共通するといえる。

上記イ及びウから、甲1発明の「車両用サンバイザ1のバイザ本体を構成している、ポリ塩化ビニルからなる表皮材4の外表面」と、本件特許発明2の「前記車両用サンバイザの組立完成体の前記外表面の一部を構成している前記ミラーユニットの前記カバー外面に対してプライマー処理を行」った「前記カバー外面」とは、「車両用サンバイザの外面」の限りで共通するといえる。

甲1発明の「該印刷表示に近赤外線を非接触にて照射してトナーを溶着させる」ことと、本件特許発明2の「該印刷表示に対して紫外線を照射すること」とは、それらの技術的意義を踏まえると、印刷表示を定着させるために「電磁波を照射する」ことという限りにおいて共通するといえる。

上記カから、甲1発明の「トナーを静電印刷方法を用いて、印刷表示として付着させた後、該印刷表示に近赤外線を非接触にて照射してトナーを溶着させる」ことと、本件特許発明2の「アクリル酸エステル40?60%、二アクリル酸ヘキサメチレン30?35%、光重合開始剤10?15%であって、残部が顔料、添加剤である紫外線硬化インクを直接噴射するインクジェット印刷方式を用いて、印刷表示を印刷した後、該印刷表示に対して紫外線を照射すること」とは、「印刷表示を印刷した後、該印刷表示に対して電磁波を照射する」ことという限りにおいて共通するといえる。

(2)一致点及び相違点
以上より、本件特許発明2と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点2>
「芯材と前記芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体を有する車両用サンバイザの外面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法であって、
前記車両用サンバイザの外面に、印刷表示を印刷した後、該印刷表示に対して電磁波を照射する
車両用サンバイザの製造方法。」
<相違点2-1>
「印刷表示を有している」対象、及び、「印刷表示を印刷」する対象が、本件特許発明2では、「ミラーユニットを収容保持する収容凹所が形成された発泡芯材と前記発泡芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体と、前記収容凹所に収容保持された外表面の一部を構成するポリプロピレン樹脂のカバーを備える前記ミラーユニットと、を有する車両用サンバイザの組立完成体の前記外表面の一部を構成する前記カバーのカバー外面」であり、「前記発泡芯材は、発泡ビーズを発泡成形して凹凸が発生した発泡芯材であ」ること、及び、「前記車両用サンバイザの組立完成体の前記外表面の一部を構成している前記ミラーユニットの前記カバー外面に対してプライマー処理を行」った、「前記カバー外面」であるのに対して、甲1発明では、「芯材5とその芯材5の表面を被覆するポリ塩化ビニルからなる表皮材4とを備えて構成されているバイザ本体を備える車両用サンバイザ1の、ポリ塩化ビニルからなる表皮材4の外表面」であり、芯材5の構成が特定されていないこと、及び「車両用サンバイザ1のバイザ本体を構成している、ポリ塩化ビニルからなる表皮材4の外表面」である点。
<相違点2-2>
「印刷表示」を行う手段及び「該印刷表示に対して電磁波を照射する」ことに関して、本件特許発明2では、「アクリル酸エステル40?60%、二アクリル酸ヘキサメチレン30?35%、光重合開始剤10?15%であって、残部が顔料、添加剤である紫外線硬化インクを直接噴射するインクジェット印刷方式を用いて、印刷表示を印刷した後、該印刷表示に対して紫外線を照射する」のに対して、甲1発明では、「トナーを静電印刷方法を用いて、印刷表示として付着させた後、該印刷表示に近赤外線を非接触にて照射してトナーを溶着させる」点。

(3)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点2-1について
(ア)
無効理由の証拠方法として提示され、審決の予告で採用した甲第1?4号証、及び、訂正請求に対して参加人が新たな証拠方法として提出した甲第40?42号証には、以下の技術事項が記載されている。
(a)甲1号証には、甲1発明(上記2(1)イ(オ))が記載されている。
(b)甲2号証には、上記2(2)(2a)?(2d)を参照すると、極めて多岐に及ぶ選択肢が示されている中の選択肢として、「車両内装等の用途に使用するための化粧材に関するものである」(同(2a))こと、「基材シート5としては、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等を使用することができる」(同(2b)の段落【0025】)こと、「絵柄層4の基材シート5への密着性を向上するために、絵柄層4の形成の前に基材シート5の表面に予め例えばコロナ放電処理、プラズマ処理又はプライマー処理等の表面処理を施すこともできる」(同(2c))こと、及び、「絵柄層4の形成方法としては、例えばインクジェット印刷法、静電印刷法等の各種の印刷方法を実施することもできる」(同(2b)の段落【0035】)こと、という技術事項が記載されているといえる。
(c)甲第3号証には、上記2(3)(3b)を参照すると、「化粧シートは、表面側から順に、透明アクリル系樹脂シート層11、絵柄印刷インキ層12、ABS樹脂シート層13、及びABS樹脂バッカー層14が積層されて構成されるもので、必要に応じて、ABS樹脂バッカー層14の裏面に易接着プライマー層を設けたりすることも任意である」(同(3b)の段落【0011】)こと、「絵柄印刷インキ層12は、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等の各種印刷法で形成すればよい」(同(3b)の段落【0018】)こと、及び、「絵付樹脂成形品は、自動車のフロントパネルやドアパネル、シート裏面材等の各種車両内装材等として、幅広く利用可能である」(同(3b)の段落【0034】)こと、という技術事項が記載されているといえる。
(d)甲第4号証には、上記2(4)を参照すると、「インクジェットプリンター用の紫外線硬化インクLH-100」の技術事項が記載されているといえる。
(e)甲第40号証には、上記2(13)及び図2を参照し、本件特許発明2の記載に則ると、「ミラーユニット4を収容する収容凹部9が形成されたポリプロピレンビーズを発泡成形した発泡芯材2と、前記発泡芯材2を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮部材3を備えるサンバイザ本体1と、前記収容凹部9に収容された外表面の一部を構成するミラーカバー7を備える前記ミラーユニット4と、を有する車両用サンバイザの組立完成体の前記外表面の一部を構成する前記ミラーカバー7のカバー外面」という技術事項が記載されているといえる。
(f)
甲第41号証(上記2(14))又は甲第42号証(上記2(15)(42a))には、ミラーユニットを、サンバイザ本体に形成したミラーユニット収容凹部に収容する技術事項が記載されているといえる。
(イ)
ところが、本件特許発明2が備える「ポリプロピレン樹脂のカバーを備えるミラーユニット」という発明特定事項は、上記(ア)の各甲号証のいずれにも記載されていない。
また、当該発明特定事項は、他のいずれの甲号証にも記載も示唆もされておらず、当該発明特定事項が、公知技術ないし周知技術といえる根拠は示されていない。
(ウ)
このように、印刷表示を印刷する対象(「ポリプロピレン樹脂のカバーを備えるミラーユニット」の「ポリプロピレン樹脂のカバー」)自体が存在していないのであるから、甲1発明において、印刷表示を印刷する対象として、ミラーユニットのポリプロピレン樹脂のカバー外面を選択する動機付けは無いといえる。
(エ)
さらに、技術分野を問わない一般の技術として、「基材シートとしてポリプロピレン樹脂を使用する」(上記2(2)(2b)の段落【0025】)こと、印刷する対象の「基材シートにプライマー処理を施す」(上記2(2)(2c))こと、及び、「化粧シート」に関して「易接着プライマー層を設けたりすることも任意である」(上記2(3)(3b)の段落【0011】)ことが、いずれも周知技術であり、かつ、サンバイザにおいてミラーユニットを備えることが周知技術であるといえること(上記(ア)(e)及び上記(f)並びに上記2(13)?(15)等)から、甲1発明のサンバイザに、カバーを備えるミラーユニットの技術事項(上記(ア)(e)及び上記2(13))を適用することが容易になし得えたとしても、甲1発明にカバーを備えるミラーユニットの技術事項を適用した上に、そのカバーの材料としてポリプロピレン樹脂を採用し、さらにその上に、その(特定の材質の)ポリプロピレン樹脂のカバーに対して、プライマー処理を行う周知技術を適用して、また、さらにその上に、(特定のインクの)印刷の技術事項を適用することは、適用の論理付けに飛躍があり、当業者が容易になし得えたとはいえない。
(オ)
以上のとおり、本件特許発明2が備える「ポリプロピレン樹脂のカバーを備えるミラーユニット」という発明特定事項が、公知技術ないし周知技術であるという根拠は存在しておらず、甲1発明において、印刷表示を印刷する対象として、当該発明特定事項を選定し得る動機付けも無く、上記相違点2-1に係る本件特許発明2の構成を想到するために、公知技術ないし一般的な周知技術を併せて適用することには、適用の論理付けに飛躍があるといえるから、甲1発明において、上記相違点2-1に係る本件特許発明2の構成を、当業者が容易になし得えたとはいえない。
(カ)
なお、ポリプロピレン樹脂という材料と、その材料に対するプライマー処理と、そこにLH-100という紫外線硬化インクを用いて印刷するという特定の組み合わせは、いずれの甲号証にも記載されておらず、サンバイザの技術分野に限らずとも、当該特定の組み合わせが、公知技術ない周知技術であるといえる根拠も無い。

5 小括
上記1?3で述べたとおりであるから、本件特許発明1は、その出願前日本国内において頒布された刊行物(甲第1号証)に記載された発明(甲1発明)、甲第2?4号証に記載の技術事項、周知技術及び技術常識に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、上記1、2及び4で述べたとおりであるから、本件特許発明2は、その出願前日本国内において頒布された刊行物(甲第1号証)に記載された発明(甲1発明)、甲第2?4号証に記載の技術事項、周知技術及び技術常識に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、訂正は認容する。
本件特許発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許発明1の特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、参加人の主張する無効理由によって無効とすべきものである。
また、本件特許発明2の特許は、参加人の主張する無効理由及び提出した証拠方法によっては、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、その2分の1を請求人の負担とし、その2分の1を被請求人の負担とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
車両用サンバイザの製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、注意事項等が印刷された印刷表示(コーションラベル)を有する車両用サンバイザの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、車両用サンバイザが備えられている。車両用サンバイザは、一般に発泡ビーズを発泡させて板状の芯材を形成し、その発泡芯材の外面を表皮により被覆した構成となっており、そのような車両用サンバイザは、車両内部において、フロントガラスの上方に配置されて、格納姿勢位置と遮光姿勢位置とを取り得るようにされている。これにより、車両用サンバイザが遮光姿勢位置に位置されたときには、その車両用サンバイザにより直射日光や対向車のヘッドライトからの幻惑光が遮蔽される。
【0003】
ところで、このような車両用サンバイザの外表面には、その車両用サンバイザが目につきやすい位置にあることから、特許文献1に示すように、注意事項等を記載した印刷表示(具体的には、コーションラベル)が印刷されている。この印刷表示の印刷方法としては、スクリーン印刷方式、パッド印刷方式、ラベル熱転写等が考えられる。しかし、これらのいずれのものを用いても、組立後のサンバイザにおける表皮の外表面に発泡芯材の成形時に発生する凹凸が部分的に表れることから、組立後のサンバイザの外表面に対して印刷を適切に行うことはできない。このため、サンバイザを製造するに際しては、サンバイザの組立前(ウェルダー前)に、サンバイザの組立部品である表皮の外表面に平坦な作業面上でラベル熱転写等の上記印刷方法により印刷を行い、その表皮を用いてサンバイザの組立が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62-68812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、注意事項等の種類は、内容、各国言語等について等、多数あり、上述のように、サンバイザの組立前において表皮の外表面に印刷表示を印刷し、それを用いて組立てる製造方法を採用した場合には、迅速な出荷に対応すべく、各種類の印刷表示をそれぞれ備えたサンバイザを多数用意しておかなければならない。このため、サンバイザについて多数の在庫を抱え、在庫管理負担が増大することになっている。
しかも、上記内容に加えて、特に印刷方法のうち、ラベル熱転写を組立部品としての表皮に行う場合には、熱を付与する必要があり(例えば130?150℃ 5秒程度)、表皮等、サンバイザにおいて、収縮、変形のおそれがある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、その目的は、印刷表示の適正な印刷を確保しつつ、サンバイザの在庫数を減らして在庫管理負担を軽減できると共に、印刷に伴う変形等を防止できるサンバイザの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記(1)?(7)の本発明により達成される。
【0008】
(1)外表面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法であって、
車両用サンバイザの組立完成体の外表面に、インクを直接噴射するインクジェット印刷方式を用いて、印刷表示を印刷することを特徴とする車両用サンバイザの製造方法。
上記構成によれば、車両用サンバイザの組立完成体の外表面に、多少の凹凸がある場合であっても、インクジェット印刷方式を利用して、印刷表示を明確な状態をもって随時印刷できることになり、迅速な出荷に対応すべく、種類の異なる印刷表示を有するサンバイザを多数用意しておく必要がなくなる。
しかも、インクジェット印刷方式を用いることから、印刷を行うに際して、組立完成体に対して熱を付与する必要性はなくなる。
【0009】
(2)前記組立完成体として、発泡芯材と、該発泡芯材の外面を包みこむ表皮とを備えるものを形成し、
前記表皮の外表面を前記組立完成体の外表面として構成させて、該表皮の外表面に前記印刷表示を印刷することを特徴とする(1)に記載の車両用サンバイザの製造方法。
上記構成によれば、発泡芯材の発泡成形時の凹凸が表皮に表れるとしても、インクジェット印刷方式を用いることにより、非接触状態をもってその表皮の外表面に印刷表示を適切に印刷できる。
【0010】
(3)前記表皮として、塩化ビニール樹脂からなるものが用いられ、
前記インクジェット印刷方式による印刷において用いられるインクとして、全体に対して40?60%のアクリル酸エステルが含有されているものを用いることを特徴とする(2)に記載の車両用サンバイザの製造方法。
上記構成によれば、塩化ビニール製表皮が用いられる場合であっても、その表皮に対して適切なインクを用いて、その表皮の外表面に印刷表示を的確に印刷できる。
【0011】
(4)前記組立完成体として、開閉蓋を備えるミラーユニットを備えるものを形成し、
前記ミラーユニットの開閉蓋の外面を前記組立完成体の外表面として構成させて、該開閉蓋の外面に前記印刷表示を印刷することを特徴とする(1)に記載の車両用サンバイザの製造方法。
上記構成によれば、ミラーユニットの開閉蓋の外面に印刷表示を適正に随時印刷することにより、異なる種類の印刷表示を有するサンバイザを、在庫として、多数抱えることをなくすことができる。
【0012】
(5)前記開閉蓋の外面に前記印刷表示を印刷する前工程として、プライマー処理を行うことを特徴とする(4)に記載の車両用サンバイザの製造方法。
上記構成によれば、ミラーユニットの開閉蓋の材質が、組立完成体の他の材質に比して、インクの特性の観点から好ましくないものであっても、開閉蓋の外面に対するプライマー処理により、その開閉蓋の外面上に、組立完成体の他の材質と同様、適正な印刷を行うことができる。
【0013】
(6)前記インクジェット印刷方式による印刷において用いられるインクとして、紫外線照射により硬化する紫外線硬化インクを用い、
前記組立完成体の外表面に対して印刷表示を印刷した後、該印刷表示に対して紫外線を照射することを特徴とする(1)に記載の車両用サンバイザの製造方法。
上記構成によれば、紫外線硬化インクに対する紫外線による紫外線硬化作用を利用して、印刷表示の速乾性を高めることができる。このため、印刷表示を有するサンバイザの生産性を高めることができる。
【0014】
(7)前記紫外線硬化インクとして、
アクリル酸エステル:40?60%、二アクリル酸ヘキサメチレン:30?35%、光重合開始剤:10?15%であって、残部が顔料、添加剤であるものを用いることを特徴とする(6)に記載の車両用サンバイザの製造方法。
上記構成によれば、組立完成体の外表面に印刷される印刷表示の速乾性等を具体的に高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、印刷表示を明確な状態をもって随時印刷でき、種類の異なる印刷表示を有するサンバイザを多数用意しておく必要がなくなることから、印刷表示の適正な印刷を確保しつつ、在庫数を減らして在庫管理負担を軽減できる。
しかも、印刷を行うに際して、組立完成体に対して熱を付与することにはならないことから、印刷に伴うサンバイザの変形等を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るサンバイザの一方の面を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るサンバイザの他方の面を示す図である。
【図3】図1のA-A線拡大断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る製造工程を示す工程図である。
【図5】サンバイザ本体の組立工程を示す説明図である。
【図6】図5の続きの工程を示す説明図である。
【図7】サンバイザ本体に対する付属部品取付け工程を示す説明図である。
【図8】組立完成体におけるミラーユニットのカバー外面に対するプライマー処理を示す説明図である。
【図9】サンバイザ組立完成体におけるミラーユニットのカバー外面(プライマー処理済み)に対する印刷処理を示す説明図である。
【図10】サンバイザ組立完成体における表皮(他方の面)に対する印刷処理を示す説明図である。
【図11】サンバイザ組立完成体におけるミラーユニットのカバー外面のコーションラベルに対する紫外線照射を示す説明図である。
【図12】サンバイザ組立完成体における表皮外表面のコーションラベルに対する紫外線照射を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)について詳細に説明する。
【0018】
先ず、本発明の実施形態に係る製造方法を説明する前に、その製造方法により製造される車両用サンバイザ(以下、サンバイザという)1について、図1?図3に基づいて説明する。
サンバイザ1は、板状の発泡芯材2と、その発泡芯材2を被覆してサンバイザ1の外表面を構成する表皮3と、を備えている。発泡芯材2は、発泡ビーズ(例えばポリプロピレン)等を用いて発泡成形されたものであり、その形状は、サンバイザ1の略全体形状を形成すべく、平面視略長方形状に形成されている。表皮3としては、本実施形態においては、塩化ビニール製シートが用いられている。
【0019】
また本実施形態においては、図3に示すように、前記サンバイザ1(発泡芯材2)の一方の面4に、略中央領域において収納凹所5が形成され、その収納凹所5内にミラーユニット6が収納保持されている。ミラーユニット6は、化粧用ミラー7(ガラス製ミラー)と、収納凹所5内に保持されて化粧用ミラー7を保持する枠体8と、枠体8に回動軸9を介して回動可能に支持されて化粧用ミラー7を覆う開閉蓋としてのカバー10と、を備えており、カバー10は、図3に示すように、閉時に、サンバイザ1の一方の面4に対して略面一状態をもって収納凹所5の開口を覆うことになる。このため、カバー10の外面10aは、サンバイザ1の一方の面4において、サンバイザ1の外表面の一部を構成する。このカバー10は、本実施形態においては、ポリプロピレン樹脂を用いて成形されている。
【0020】
前記サンバイザ1の一方の面4及び他方の面11には、図1、図2に示すように、印刷表示としてのコーションラベル12(注意事項表示)がそれぞれ印刷されている。サンバイザ1の一方の面4においては、前記ミラーユニット6におけるカバー外面10aにコーションラベル12が印刷されており、そのカバー外面10aとコーションラベル12との間には、印刷を的確に行うべく、プライマー層13が介在されている。そのプライマー層13は、本実施形態においては、ポリプロピレン樹脂製カバー10に対するインクの乗り性、馴染み性等を考慮した組成からなるプライマー処理液のプライマー処理により形成されている。サンバイザ1の他方の面11においては、表皮3に対して直接、コーションラベル12が印刷されている。塩化ビニール製表皮3は、インクの乗り性、馴染み性等が良く、表皮3とコーションラベル12との間にプライマー層13を介在させるまでもないからである。勿論、プライマー処理を行って、表皮3とコーションラベル12との間にプライマー層13を介在させることはより好ましい。
尚、図3においては、プライマー層13及びコーションラベル12の存在を明らかにするため厚みが誇張表示されている。
【0021】
上記のようなサンバイザ1は、図4に示す工程の下で製造される。
先ず、サンバイザ1の組立工程が実行され、サンバイザ1の組立完成体(コーションラベル12が印刷されていないサンバイザ)1Aが完成される。組立完成体1Aの外表面に対して印刷を行うためである。
【0022】
具体的には、上記サンバイザ1の組立工程は、サンバイザ本体(コーションラベル12が印刷されず、ミラーユニット6等、付属品が取付けられていないサンバイザ)1Bの組立工程と、サンバイザ本体1Bに対する付属部品取付け工程と、からなる。サンバイザ本体1Bの組立工程においては、先ず、前記発泡芯材2と、表皮3(塩化ビニール製シート)と、が用意される。発泡芯材2は、発泡ビーズ(例えばポリプロピレン)を発泡成形させたものであり、その形状は、前述したように、サンバイザ1の基本的形状をなし、その一方の面4には、ミラーユニット6を収納保持するための収納凹所5が形成されている。表皮3(塩化ビニール製シート)としては、発泡芯材2よりも大きなものが2枚用意される。この各表皮3の表面には、未だコーションラベル12は印刷されていない。
【0023】
サンバイザ本体1Bの組立工程においては、図5、図6に示すように、2枚の表皮3を用いて、その間に発泡芯材2が挟むように被包され、その上で、発泡芯材2の周縁部に沿って表皮3に対してウエルダー溶着・溶断加工等が行われる。これにより、発泡芯材2の外面に表皮3を被覆したサンバイザ本体1Bが得られることになる。図6において、符号14はウエルダー溶断する個所を示す。このサンバイザ本体1Bの組立工程を終えると、図7に示すように、サンバイザ本体1Bに対する付属部品取付け工程が実行される。付属部品取付け工程においては、ミラーユニット6が収納凹所5内に収納保持され、ノブ15、シャフト16等が各所定個所に取付けられる。これにより、サンバイザ1の組立工程が終了し、サンバイザ1の組立完成体1Aが得られる。
【0024】
サンバイザ1の組立工程が終了して、組立完成体1Aが完成されると、組立完成体1Aは、基本的には、次のプライマー処理工程に直ちに移行せず、在庫品としてためられる。組立完成体1Aとしてためて、必要に応じて、必要なコーションラベル12を組立完成体1Aの外表面に印刷する場合の方が、種類の異なるコーションラベルを有するサンバイザを予め在庫品としてためておく場合よりも、ストック数を少なくできるからである。勿論、組立完成体1Aの完成時点で、組立完成体1Aの在庫がなく、コーションラベルを有するサンバイザ1が求められているときには、サンバイザの組立工程後、直ちに、組立完成体1Aは、次のプライマー処理工程に移行される。
【0025】
プライマー処理工程では、図4、図8に示すように、サンバイザ1の組立完成体1Aの外表面を構成しているミラーユニット6のカバー外面10aに対してプライマー処理が行われる。カバー10の材質(本実施形態ではポリプロピレン)を考慮し、そのカバー外面10a上であってもコーションラベル12を適切に印刷できるようにプライマー層13(各図においては、存在を明らかにするため厚みが誇張表示されている。)を形成するためである。このため、カバー10の材質(本実施形態ではポリプロピレン)を考慮して、下記組成のプライマー処理液が用いられている。
プライマー処理液の組成
合成樹脂:1?6%
トルエン:98%
【0026】
上記プライマー処理工程を終えると、図4、図9、図10に示すように、印刷処理工程が行われる。コーションラベル12を組立完成体1Aの外表面に印刷するためである。
印刷処理は、印刷すべき個所として、組立完成体1Aの外表面のうち、ミラーユニット6のカバー外面10a(プライマー処理層13を有するもの:図9参照)及び組立完成体1Aの表皮3(他方の面11:図10参照)が対象となる。
【0027】
印刷方式としては、インクを直接噴射するインクジェット印刷方式が用いられ、そのインクジェット印刷方式を用いて、上記組立完成体1Aにおけるミラーユニット6のカバー外面10a及び組立完成体1Aの表皮3(他方の面11)に対してコーションラベル12が非接触状態をもって印刷される。インクジェット印刷方式の印刷対象に対する非接触性を利用して、印刷対象(面)に多少の凹凸があっても、コーションラベル12を適正に印刷するためであり、また、表皮3、カバー外面10aに、収縮、変形の原因となる熱を付与しないためである。この印刷処理方式は、図9、図10に示すように、インクジェットプリンタ17により実行されるが、そのインクジェットプリンタ17については、非接触式で、多少の凹凸を有する印刷面に対しても印刷ができる限り、そのタイプ(コンティニュアス型、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式等))はどのようなタイプのものであってもよい。
【0028】
印刷処理に用いるインクとしては、基本的に、表皮3(塩化ビニール)、プライマー処理されたカバー外面10a(ポリプロピレン)に対して適正な印刷(乗り性、馴染み性、速乾性等)が行える観点から、その組成が決められている。
【0029】
特に本実施形態においては、インクとして、紫外線の照射により重合反応を起こして硬化、定着する紫外線硬化インク(UV系顔料インク)が用いられる。コーションラベル12のインクを瞬時に乾燥させることができること、プラスチック(非吸収性素材)にも直接、印刷できること、揮発性有機化合物(VOC)の発生をなくすことができること、耐摩擦性、耐薬品性等に優れていること等が考慮されたからである。本実施形態においては、上記内容等を考慮し、紫外線硬化インクの好ましいものとして、下記組成のものが用いられる。
(1)紫外線硬化インク(ブラック)
アクリル酸エステル :40?60%
二アクリル酸ヘキサメチレン:30?35%
光重合開始剤 :10?15%
カーボンブラック :0.1?5%
添加剤 :0.1?5%
(2)紫外線硬化インク(マゼンタ)
アクリル酸エステル :40?60%
二アクリル酸ヘキサメチレン:30?35%
光重合開始剤 :10?15%
キナクリドン化合物 :0.1?5%
添加剤 :0.1?5%
(3)紫外線硬化インク(イエロー)
アクリル酸エステル :40?60%
二アクリル酸ヘキサメチレン :30?35%
光重合開始剤 :10?15%
ニッケル化合物 :0.1?5%
添加剤 :0.1?5%
(4)紫外線硬化インク(シアン)
アクリル酸エステル :40?60%
二アクリル酸ヘキサメチレン:30?35%
光重合開始剤 :10?15%
銅フタロシアニン化合物 :0.1?5%
添加剤 :0.1?5%
(5)紫外線硬化インク(ホワイト)
アクリル酸エステル :40?60%
二アクリル酸ヘキサメチレン:20?30%
ジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン-オキシド(光重合開始剤)
:10?15%
酸化チタン :10?15%
添加剤 :0.1?5%
【0030】
上記印刷処理工程が終了すると、図4、図11、図12に示すように、紫外線照射工程が行われる。表皮3、プライマー処理されたカバー外面10aに印刷のために噴射されたインク(コーションラベル12)を光重合反応させて、直ちに硬化、定着させるためである。
紫外線UVは、図示を略す紫外線照射装置により照射されるが、その照射される紫外線の波長は、インクの組成、インク厚み等を考慮して決められる。具体的には、波長254nm、365nmのものが用いられる。
【0031】
この紫外線照射工程を経ることにより、図1?図3に示すサンバイザ1、すなわち、コーションラベル12が印刷されたサンバイザ1を得ることになる。
【0032】
したがって、サンバイザ1の組立完成体1Aの完成後に、その組立完成体1Aの外表面に、多少の凹凸がある場合であっても、コーションラベル12を明確な状態をもって印刷できることから、コーションラベル12を有していない組立完成体1Aだけを作っておき、その組立完成体1Aの外表面に必要な種類のコーションラベル12を随時印刷できる。このため、種類の異なるコーションラベル12を有するサンバイザ1を多数、在庫として抱えることをなくすことができ、在庫管理負担は軽減される。
しかも、インクジェット印刷方式により印刷が行われて、表皮3及びカバー外面10aに熱を付与する必要がないことから、表皮3、カバー10が収縮、変形等することが防止される。
【0033】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次の態様を包含する。
(1)コーションラベル12をサンバイザ1の片方の面のみに印刷すること。
(2)プライマー処理は、ミラーユニット6のカバー外面10aに限らず、サンバイザ1の他の部分(表皮3部分(塩化ビニール部分))に対しても行ってもよいこと。
(3)本発明を、ミラーユニット6を備えないサンバイザ1に対して適用すること。
【0034】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0035】
1 サンバイザ
1A 組立完成体
2 発泡芯材
3 表皮
6 ミラーユニット
10 カバー
10a カバー外面(組立完成体の外表面)
12 コーションラベル(印刷表示)
13 プライマー層
17 インクジェットプリンタ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡芯材と前記発泡芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体を有する車両用サンバイザの組立完成体の塩化ビニールからなる前記外表面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法であって、
前記発泡芯材は、発泡ビーズを発泡成形して凹凸が発生した発泡芯材であり、
車両用サンバイザの組立完成体の塩化ビニールからなる前記外表面に、アクリル酸エステル40?60%、二アクリル酸ヘキサメチレン30?35%、光重合開始剤10?15%であって、残部が顔料、添加剤である紫外線硬化インクを直接噴射するインクジェット印刷方式を用いて、印刷表示を印刷した後、該印刷表示に対して紫外線を照射することを特徴とする車両用サンバイザの製造方法。
【請求項2】
ミラーユニットを収容保持する収容凹所が形成された発泡芯材と前記発泡芯材を被覆して外表面を構成する塩化ビニールの表皮を備えるサンバイザ本体と、前記収容凹所に収容保持された外表面の一部を構成するポリプロピレン樹脂のカバーを備える前記ミラーユニットと、を有する車両用サンバイザの組立完成体の前記外表面の一部を構成する前記カバーのカバー外面に印刷表示を有している車両用サンバイザの製造方法であって、
前記発泡芯材は、発泡ビーズを発泡成形して凹凸が発生した発泡芯材であり、
前記車両用サンバイザの組立完成体の前記外表面の一部を構成している前記ミラーユニットの前記カバー外面に対してプライマー処理を行い、前記カバー外面に、アクリル酸エステル40?60%、二アクリル酸ヘキサメチレン30?35%、光重合開始剤10?15%であって、残部が顔料、添加剤である紫外線硬化インクを直接噴射するインクジェット印刷方式を用いて、印刷表示を印刷した後、該印刷表示に対して紫外線を照射することを特徴とする車両用サンバイザの製造方法。
【図面】












 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-03-27 
結審通知日 2017-03-29 
審決日 2017-04-20 
出願番号 特願2011-110467(P2011-110467)
審決分類 P 1 123・ 121- ZDA (B60J)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 須山 直紀  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 出口 昌哉
氏原 康宏
登録日 2014-12-19 
登録番号 特許第5665191号(P5665191)
発明の名称 車両用サンバイザの製造方法  
代理人 朴 志恩  
代理人  
代理人 朴 志恩  
代理人 大石 敏弘  
代理人 井上 義隆  
代理人 宮本 陽子  
代理人 坂本 智弘  
代理人  
代理人 石野 忠志  
代理人 成川 弘樹  
代理人 矢田 歩  
代理人 宮本 陽子  
代理人 石野 忠志  
代理人 坂本 智弘  
代理人 渡辺 浩司  
代理人 玉木 満優子  
代理人 渡辺 浩司  
代理人 玉木 満優子  
代理人 大石 敏弘  
代理人 矢田 歩  
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