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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61H
管理番号 1330361
審判番号 無効2016-800095  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-08-02 
確定日 2017-06-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5791845号発明「美容器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 1 特許第5791845号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。2 本件審判の請求は、成り立たない。3 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

平成25年 5月22日 原出願(特願2013-108438号)
平成27年 6月 2日 本件特許出願
(特願2015-111980号)
平成27年 8月14日 特許権の設定登録
(特許第5791845号)
平成28年 8月 2日 請求人株式会社ファイブスターによる
本件無効審判請求
(無効2016-800095号)
平成28年10月17日 被請求人株式会社MTGによる
訂正請求書提出
平成28年10月21日付け 審尋
平成28年11月 4日 被請求人による審尋回答書提出
平成28年11月22日 被請求人による審判事件答弁書
(以下単に「答弁書」という。)提出
平成28年12月31日 請求人による手続補正書提出
平成28年12月31日 請求人による弁駁書提出
平成29年 1月25日付け 審理事項通知書
平成29年 3月10日 請求人による口頭審理陳述要領書提出
平成29年 3月10日 請求人による上申書提出
平成29年 3月10日 被請求人による口頭審理陳述要領書提出
平成29年 3月14日付け 審理事項通知書(2)
平成29年 3月27日 請求人による口頭審理陳述要領書(2)提出
平成29年 3月27日 被請求人による口頭審理陳述要領書2提出
平成29年 3月27日 第1回口頭審理
平成29年 4月10日 被請求人による上申書提出
平成29年 4月19日 被請求人による上申書提出

なお、本審決において、記載箇所を行により特定する場合、行数は空行を含まない。また、特許法の条文を使用する際に「特許法」という表記を省略することがある。

第2 平成28年10月17日付け訂正請求について
1 訂正事項
本件特許請求の範囲及び明細書についての平成28年10月17日提出の訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、以下のとおりである(下線は訂正部分を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「4本の支持軸と、
これら4本の支持軸の先端部に回転可能に支持されたマッサージ用の4個のローラと、
を備えており、
4本の前記支持軸は、一方向からの側面投影において二対が先広がり傾斜状であるとともに、90度異なる他方からの側面投影において他の組み合わせの二対が先広がり傾斜状に延びており、
隣接する一対の前記ローラの間隔が、これらローラの配列方向と交差する方向で隣接する一対の前記ローラの間隔よりも狭く、
4個の前記ローラを肌に押し当てて隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げることを特徴とする美容器。」という記載を、
「4本の支持軸と、
これら4本の支持軸の先端部に回転可能に支持されたマッサージ用の4個のローラと、
を備えており、
4個のローラは基端側にのみ穴を有し、各ローラはその内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態であり、
4本の前記支持軸は、一方向からの側面投影において二対が先広がり傾斜状であるとともに、90度異なる他方からの側面投影において他の組み合わせの二対が先広がり傾斜状に延びており、
隣接する一対の前記ローラの間隔が、これらローラの配列方向と交差する方向で隣接する一対の前記ローラの間隔よりも狭く、
4個の前記ローラを肌に押し当てて間隔が狭い隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げ、
かつ、4個の前記ローラを肌に押し当てて間隔が広い隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げることを特徴とする美容器。」と訂正する。

(2)訂正事項2
明細書段落【0008】の
「【0008】
本発明の美容器は、4本の支持軸と、
これら4本の支持軸の先端部に回転可能に支持されたマッサージ用の4個のローラと、
を備えており、
4本の前記支持軸は、一方向からの側面投影において二対が先広がり傾斜状であるとともに、90度異なる他方からの側面投影において他の組み合わせの二対が先広がり傾斜状に延びており、
隣接する一対の前記ローラの間隔が、これらローラの配列方向と交差する方向で隣接する一対の前記ローラの間隔よりも狭く、
4個の前記ローラを肌に押し当てて隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げることを特徴とする。」という記載を、
「【0008】
本発明の美容器は、4本の支持軸と、
これら4本の支持軸の先端部に回転可能に支持されたマッサージ用の4個のローラと、
を備えており、
4個のローラは基端側にのみ穴を有し、各ローラはその内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態であり、
4本の前記支持軸は、一方向からの側面投影において二対が先広がり傾斜状であるとともに、90度異なる他方からの側面投影において他の組み合わせの二対が先広がり傾斜状に延びており、
隣接する一対の前記ローラの間隔が、これらローラの配列方向と交差する方向で隣接する一対の前記ローラの間隔よりも狭く、
4個の前記ローラを肌に押し当てて間隔が狭い隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げ、
かつ、4個の前記ローラを肌に押し当てて間隔が広い隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げることを特徴とする。」と訂正する。

2 訂正請求についての当審の判断
これら訂正事項1及び2の適法性について検討する。

(1)訂正事項1について
ア 訂正前の請求項1においては、(i)ローラと支持軸の関係について具体的な特定がなく、また、(ii)美容器の一方向への移動に関する特定しかなかったところ、訂正事項1により、(i)ローラ内部に支持軸の先端が位置する非貫通状態にあることを特定し、また、(ii)間隔が狭い隣接する一対のローラの配列方向と交差する方向への移動のみならず、間隔が広い隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動し、いずれにおいても、同様の肌の押圧・摘み上げをすることを特定したものであるから、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当する。

イ そして、訂正事項1の(i)「4個のローラは基端側にのみ穴を有し、各ローラはその内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態であ」ることに関しては、願書に添付した図面(以下単に「本件特許図面」ということがある。)の図8に示されたローラ17ないし20は、基端側(図中上方)にのみ穴を有しており、また、各ローラはローラ内部に支持軸の13?16の先端が位置していることは明らかである。さらに、本件特許図面の図2、図4、図5及び図8から、ローラは支持軸が貫通していない非貫通状態であることも明らかである。
また、訂正事項1(ii)の間隔が狭い隣接する一対のローラの配列方向と交差する方向への移動のみならず、間隔が広い隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動し、いずれにおいても、同様の肌の押圧・摘み上げをすることに関しては、願書に添付した明細書(以下単に「本件特許明細書」ということがある。)の段落【0020】?【0021】に、「【0020】ところで、ローラ17,18対及びローラ19,20対を支持する支持軸13,14及び支持軸15,16の軸間間隔L1が小さくなっている。このため、前記のように、身体の腕や足首等の曲率の大きい部位を二対のローラ17,18及びローラ19,20間において、効果的にマッサージすることができる。特に、図4(b)に示すように、肌34を摘まみ上げられるようにマッサージする作用は美容に有効である。」「【0021】次に、身体の腿や腰等の曲率が小さい平面的な部位をマッサージする場合には、ハンドル22の把持部221を把持して、各ローラ17?20を腿や腰等の肌34に押し当てる。そして、ローラ17,19及びローラ18,20を例えば図3の矢印P2方向に移動させる。すると、先行するローラ17,19において、図5(a)に示すように、肌34が押圧されようにマッサージされる。それと同時に、後行する対間のローラ18,20間において、図5(b)に示すように、肌34が摘まみ上げられるようにマッサージされる。」とあり、さらに段落【0023】に「【0023】 そして、これらの場合には、対間のローラ17,19及びローラ18,20を支持する支持軸13,15及び支持軸14,16の軸間間隔L2が大きくなっている。このため、身体の腿や腰等の曲率の小さい部位を対間のローラ17,19及びローラ18,20間において、効果的にマッサージすることができる。」との記載がある。
これらの記載を踏まえれば、訂正事項1は、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」ということがある。)に記載された事項の範囲内といえ、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

ウ さらに、訂正事項1が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合することは明らかである。

エ 訂正事項1の適法性に関し、請求人は、被請求人が主張するように訂正後の本件特許発明につき、「ローラが深く沈み込んだ場合でも、同先端部分においてマッサージ可能となるものである」との作用効果が認められる場合においては、本件特許明細書等の範囲を超えた作用効果を含む発明が訂正後の特許請求の範囲に記載された発明に含まれることとなるから、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものであり、かかる訂正の請求は認められない旨主張する(弁駁書第2ページ第14?21行)。
しかし、被請求人も被請求人口頭審理陳述要領書(第7ページ第3?16行)にて主張するように、訂正が特許請求の範囲を拡張又は変更するものであるか否かは、明細書、特許請求の範囲及び図面についてした訂正が対象となるところ(特許法第126条第6項)、訂正した特許請求の範囲、明細書においては、前記作用効果は訂正事項に含まれていない。したがって、訂正後の発明について同作用効果を主張したとしても、特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当しないことは明らかである。よって、請求人の主張には理由がない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正に伴って、訂正後の特許請求の範囲と明細書との整合を図ろうとするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項2が、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものであることは、上記(1)イの訂正事項1に関する検討と同様である。
また、訂正事項2が、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。

(3)小括
したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、これを認める。

第3 本件訂正発明
上記のとおり本件訂正が認められるところ、本件訂正後の本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明」ということがある。)は、本件訂正により訂正した特許請求の範囲及び明細書並びに願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「4本の支持軸と、
これら4本の支持軸の先端部に回転可能に支持されたマッサージ用の4個のローラと、
を備えており、
4個のローラは基端側にのみ穴を有し、各ローラはその内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態であり、
4本の前記支持軸は、一方向からの側面投影において二対が先広がり傾斜状であるとともに、90度異なる他方からの側面投影において他の組み合わせの二対が先広がり傾斜状に延びており、
隣接する一対の前記ローラの間隔が、これらローラの配列方向と交差する方向で隣接する一対の前記ローラの間隔よりも狭く、
4個の前記ローラを肌に押し当てて間隔が狭い隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げ、
かつ、4個の前記ローラを肌に押し当てて間隔が広い隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げることを特徴とする美容器。」

第4 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人の主張する請求の趣旨は、本件訂正発明についての特許を無効とする、との審決を求めるものである。

2 証拠方法
請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。

甲第1号証の1 米国特許公報第2,633,844号公報の写し
(以下、写しである旨の表記は省略する)
甲第1号証の2 米国特許公報第2,633,844号公報の翻訳文
甲第1号証の3 「甲第1号証の1の実測値」、2016年7月28日作成
甲第1号証の4 「2,633,844測定値」、2016年7月28日
弁理士・高山嘉成作成
甲第2号証の1 米国特許公報第1,999,939号公報
甲第2号証の2 米国特許公報第1,999,939号公報の翻訳文
甲第2号証の3 「甲第2号証の1の実測値」、2016年7月28日作成
甲第2号証の4 「1,999,939の測定値」、2016年7月28日
弁理士・高山嘉成作成
甲第2号証の5 「1,999,939の測定値」、2016年3月 9日
弁理士・高山嘉成作成
甲第3号証 特開2009-142509号公報
甲第4号証 意匠登録第1374522号公報
甲第5号証 実願平1-82324号(実開平3-21333号)のマイクロフィルム
甲第6号証 登録実用新案第3154738号公報
甲第7号証 「クロワッサン」第35巻第17号、
株式会社マガジンハウス
(2011年9月10日発行)第26?27ページ
甲第8号証 意匠登録第1426575号公報
甲第9号証 「美的」2012年8月号、小学館
(2012年6月23日発行)第113ページ
甲第10号証 「美ST」2012年10月号、光文社
(2012年8月17日発行)第64,76ページ
甲第11号証 特開2012-161517号公報
甲第12号証 登録実用新案第3159255号公報
甲第13号証 特開2000-24065号公報
甲第14号証 「甲1発明測定図」、2016年11月30日
弁理士・高山嘉成作成
甲第15号証 「甲1発明3次元画像」、2016年11月30日
弁理士・高山嘉成作成
甲第16号証 「甲1発明図面」、2016年11月30日
弁理士・高山嘉成作成

なお、以下において、甲第○号証を単に甲○ということがある。

(1)証拠方法の提出時期
以上の証拠方法のうち、
甲第1号証の1ないし甲第1号証の3、甲第2号証の1ないし甲第2号証の3、及び甲第3号証ないし甲第7号証は、審判請求書(以下単に「請求書」ということがある。)に添付されたものであり、
甲第8号証ないし甲第13号証は、平成28年12月31日提出の手続補正書に添付されたものであり、
甲第1号証の4、甲第2号証の4、及び甲第14号証ないし甲第16号証は、弁駁書に添付されたものであり、
甲第2号証の5は、口頭審理陳述要領書に添付されたものである。

(2)書証としての成立性
上記甲第1号証の1ないし甲第16号証の証拠の成立について、当事者間に争いはない(口頭審理調書の「被請求人」欄4)。

3 請求の理由の要点
請求の理由は、本件訂正が認められたこと及び請求人の主張の全趣旨を踏まえ、その要点は以下のとおりである。
(1)本件訂正発明は、甲第1号証の1に記載された発明に、甲第2号証の1に記載された発明、甲第3号証又は甲第7号証ないし甲第13号証に記載された技術事項、及び従来周知の技術事項に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである(以下「無効理由1」という。)。

(2)本件訂正発明は、甲第2号証の1に記載された発明に、甲第1号証の1に記載された発明、甲第3号証又は甲第7号証ないし甲第13号証に記載された技術事項、及び従来周知の技術事項に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである(以下「無効理由2」という。)。

4 主張の概要
請求人の主張の概要は、以下のとおりである。

(1)無効理由1及び無効理由2共通の主張並びに特に無効理由1について
(ア)甲第1号証の1については、甲第1号証の3に示したように、一方の一対のローラの間隔が10.01mmであるのに対して、他方の一対のローラの間隔が32.21mmであることから、甲1発明では、隣接する一対のローラ(massaging elements 27)の間隔が、これらのローラ(massaging elements 27)の配列方向と交差する方向で隣接する一対のローラ(massaging elements 27)の間隔よりも狭くなっていると言える。
また、甲第1号証の1のFig.1,2,及び4より、4個のローラ(massaging elements 27)は基端側と先端側に穴を有し、各ローラの先端側の穴から支持軸が抜け出た貫通状態であることが分かる。さらに、第2欄28?46行の記載において、移動させる方向については特段限定されておらず、図1中左右に移動させても、図1中上下に移動させてもよいことは、当業者にとって明らかである。
これらを踏まえれば、甲第1号証の1には、以下の甲1発明が記載されている。
「a1.4本の支持軸(angularly disposed portions 24)と、
b1.これら4本の支持軸(angularly disposed portions 24)の先端部に回転可能に支持されたマッサージ用の4個のローラ(massaging elements 27)と、を備えており、
x1.4個のローラ(massaging elements 27)は基端側と先端側に穴を有し、各ローラの先端側の穴から支持軸が抜け出た貫通状態であり、
c1.4本の支持軸(angularly disposed portions 24)は、一方向からの側面投影において二対が先広がり傾斜状であるとともに、90度異なる他方からの側面投影において他の組み合わせの二対が先広がり傾斜状に延びており、
d1.隣接する一対のローラ(massaging elements 27)の間隔が、これらのローラ(massaging elements 27)の配列方向と交差する方向で隣接する一対のローラ(massaging elements 27)の間隔よりも狭く、
e1.4個のローラ(massaging elements 27)を肌に押し当てて図1中上下に隣接する一対のローラ(massaging elements 27)の配列方向と交差する方向に沿って移動させると、一対のローラ(massaging elements 27)は、体の脂肪部分を把持し、それによって脂肪部分を揉み、かつ、図1中左右に隣接する一対のローラの配列方向と交差して隣接する一対のローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、一対のローラは、体の脂肪部分を把持し、それによって脂肪部分を揉む
f1.マッサージデバイス。」(手続補正書第14ページ中段付近?第16ページ中段付近)

(イ)甲第2号証の3に示したように、一方の一対のローラの間隔が15.85mmであるのに対して、他方の一対のローラの間隔が32.37mmであることから、甲2発明では、d2.隣接する一対のローラ部(roller-carrying portions)の間隔が、これらローラ部(roller-carrying portions)の配列方向と交差する方向で隣接する一対のローラ部(roller-carrying portions)の間隔よりも狭くなっていると言える。
本体の長手方向(longitudinally)以外の他の任意の方向(any other direction)に移動する使い方が、甲第2号証の1には開示されている。ここで、本体(the body)とは、甲第2号証の1の第2ページ右欄第44?45行の記載より、図1の数字1によって現されているとされている。したがって、図1上の上下の方向が長手方向であると言える。そして、長手方向以外の他の任意の方向に移動してもよいことが、記載されているわけであるから、図1上の左右の方向に移動させてもよいということが、甲第2号証の1には、開示されている。
さらに、バー9とハンドル10及び11を取り外して、器具に対して回転式の運動を与えるシャフトを取り付けることで、本体1を回転可能にすることが可能なマッサージ器が提供できると示唆されている。すなわち、バー9とハンドル10及び11を取り外して回転式のシャフトに置き換えること自体が、甲第2号証の1には記載されており、バー9とハンドル10及び11は、必須構成ではないわけであるから、ハンドル10及び11を掴んで移動させるという本体1の長手方向への移動だけに、甲第2号証の1では限定されているわけではない。よって、甲第2号証の1には、以下の甲2発明が記載されている。
「a2.4本の支持軸(straight roller-carrying portions 19)と、
b2.これら4本の支持軸(straight roller-carrying portions 19)の先端部に回転可能に支持されたそれぞれ3個の離間したローラ(spaced rollers 22)を有するマッサージ用の4組のローラ部(roller-carrying portions)と、を備えており、
x2. 4組のローラ部(roller-carrying portions)は基端側と先端側に穴を有し、各ローラ部の先端側の穴から支持軸が抜け出た貫通状態であり、
c2.4本の支持軸(straight roller-carrying portions 19)は、一方向からの側面投影において二対が先広がり傾斜状であるとともに、90度異なる他方からの側面投影において他の組み合わせの二対が先広がり傾斜状に延びており、
d2.隣接する一対のローラ部(roller-carrying portions)の間隔が、これらローラ部(roller-carrying portions)の配列方向と交差する方向で隣接する一対のローラ部(roller-carrying portions)の間隔よりも狭く、
e2. 4組のローラ部(roller-carrying portions)を肌に押し当てて図1中左右に隣接する一対のローラ部(roller-carrying portions)の配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対のローラ部(the forward group of rollers)で肌を引き延ばし、後行する隣接状態の一対のローラ(the rear group of rollers)間で肌を引っ張り揉み、かつ、図1中上下に隣接する一対のローラ部(roller-carrying portions)の配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対のローラ部(the forward group of rollers)で肌を引き延ばし、後行する隣接状態の一対のローラ(the rear group of rollers)間で肌を引っ張り揉む
f2.マッサージ器。」(手続補正書第23ページ中段付近?第26ページ上段付近)

(ウ)甲第3ないし7号証又は甲第9ないし11号証に記載されているように、Y字状又はV字状に回転可能に支持されたローラを移動させることで、肌が摘み上げられるという作用が生じることは、出願時、当業者にとって、周知の技術であったと言える。なお、甲第3号証や甲第6号証に記載されているように、Y字又はV字状に支持されている一対のローラを引くことで肌が摘み上げられるわけであるが、「引く」という表現は、使用者のハンドルの把持状態に依存している相対的な表現に過ぎない。この点を、甲第3号証に当てはめて図解すると以下のようになる。下図では、右側に手首が位置するように把持しているとする。(手続補正書第41ページ中段付近?第42ページ中段付近)

(エ)押すことで肌が摘み上げられるのか、引くことで肌が摘み上げられるのかは、「押す」、「引く」という表現が、使用者の把持状態に依存する表現となってしまうため、技術的には、肌とボールの支持軸とが鋭角になる方向にハンドルを移動させれば、肌が摘み上げられるのであると理解することは、当業者にとって、何ら困難なものではない。上記当業者による理解を、甲1発明及び甲2発明に当てはめて考えると、下図の矢印の方向に、マッサージデバイスを移動させた場合、後行する一対のローラの支持軸と肌とが鋭角になるので、後行する一対のローラが肌を摘み上げるとの作用が生じるであろうことは、上記周知技術を考慮すれば、当業者にとって、明らかなことである。(手続補正書第43ページ中段付近?第44頁中段付近)

(オ)Y字状又はV字状の一対のローラ又はボールを有するマッサージローラを移動させると、肌が摘み上げられることは、当業者にとって、周知技術(甲第3ないし7号証又は甲第9ないし11号証)であることを考慮すれば、甲1発明における構成e1についても、後行する一対のローラが肌を摘み上げているのではないかと、当業者であれば、推察するのは明らかである。
そして、甲第2号証の1には、先行する一対のローラ部(the forward group of rollers)が、肌を引き延ばし、後行する一対のローラ(the rear group of rollers)が、肌を引っ張り揉むと明記されており、周知技術を考慮すれば、甲第2号証の1における後行する一対のローラ(the rear group of rollers)が肌を引っ張り揉むのは、肌を摘み上げているのと同様の作用であると考えられる。
そして、甲1発明においても、「4個のローラ(massaging elements 27)を肌に押し当てて図1中上下に隣接する一対のローラ(massaging elements 27)の配列方向と交差する方向に沿って移動させると、一対のローラ(massaging elements 27)は、体の脂肪部分を把持し、それによって脂肪部分を揉み、かつ、図1中左右に隣接する一対のローラの配列方向と交差して隣接する一対のローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、一対のローラは、体の脂肪部分を把持し、それによって脂肪部分を揉む」という甲2発明と類似の作用が生じているわけであるから、甲1発明に対して、甲第2号証の1の記載事項を適用して、「F.4個の前記ローラを肌に押し当てて間隔が狭い隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げ、G.かつ、4個の前記ローラを肌に押し当てて間隔が広い隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘まみ上げる」との作用が生じるように構成することは、当業者であれば、容易に発明できることである。
そして、狭い間隔の一対のローラと広い間隔の一対のローラの使い分けについては、甲第1号証の1ではそのような使用方法について特段排除されていないことに加えて、甲第2号証の1には、マッサージ器を任意の方向に移動させて使うようにしたローラの使い分けについて明示されている。
また、ローラで肌をマッサージする美容器で用いる一対のローラについて、基端側にのみ穴を有し、内部に支持軸の先端側が位置する非貫通状態とすることは、甲第3号証及び甲第7ないし13号証に記載されている。そして、甲1発明もローラで肌をマッサージする作用を有しているのであり、甲第3号証及び甲第7ないし13号証に記載のローラも、肌をマッサージする作用を有するものであるから、甲第3号証又は甲第7ないし13号証に記載のローラを甲1発明に適用することは、当業者にとって何ら困難のものではない。
よって、本件訂正発明は、甲1発明に対して、甲第2号証の1に記載された発明、甲第3号証又は甲第7ないし13号証に記載された発明、及び周知技術を適用することにより、当業者であれば、容易に発明することができる。(手続補正書第46ページ下段付近?第48ページ中段付近)

(カ)本件訂正許発明の構成「E.隣接する一対の前記ローラの間隔が、これらローラの配列方向と交差する方向で隣接する一対の前記ローラの間隔よりも狭く」につき、隣接する一対のローラの間隔とは、どの部分の間隔を示すのかが、明確ではない。たとえば、ローラの形状が球体の場合、最短の距離を一対のローラの間隔とするのか、それとも、球体の中心間の距離を一対のローラの間隔とするのか明確ではない。
本件図面の図4及び図5のL1及びL2では、球体のローラの中心あたりの間隔を示しているのに対して、答弁書4ページ右中の図では、一対のローラの最短距離を間隔AD及び間隔ABとして説明されており、解釈がより困難なものとなっている。 加えて、球体以外のローラについて、どのようにして一対のローラの間隔を定義づけるのかが明確ではない。
以上を踏まえ、請求人は、ローラの間隔に関する本件訂正発明の要旨の認定にあたり、一対のローラの最短距離を指すのか、若しくは、明細書及び図面を参酌し、ローラの中心間の距離を指すのか、判断しかねるため、ローラの間隔については、一対のローラの最短距離、一対のローラの中心間の距離の両方につき主張を行うものとする。
甲第1号証の4は、甲第1号証の1のPDFデータを、110ピクセル/インチかつ100%に表示し、パソコン上のプリントスクリーン機能を利用して、画面をコピーし、Fig.1のみを切り出して、図面ソフト上に貼り付け、図面ソフト上で寸法を測定した結果である。
寸法の測定に際して、4つのローラの中心部分を明確にするため、Fig.1上の4つのローラの円の中心を割り出して、一対のローラの中心間の距離を赤色の引き出し線で示し、一対のローラの最短の間隔を青色の引き出し線で示した。

上記(甲第1号証の4)のとおり、ローラの中心を基準とした場合、一方の一対のローラの間隔が39であるのに対して、他方の一対のローラの間隔が35である。また、ローラの最短距離部を基準とした場合、一方の一対のローラの間隔が11であるのに対して、他方の一対のローラの間隔が7である。なお、ローラの最短距離部を基準とした場合による一対のローラの間隔の決め方は、答弁書4ページの右中図と一致する。
以上のとおり、ローラの中心を基準とした場合、ローラの最短距離部を基準とした場合のいずれにおいても、隣接する一対のローラの間隔が、これらのローラの配列方向と交差する方向で隣接する一対のローラの間隔よりも狭くなっている。(弁駁書第4ページ中段付近?第5ページ中段付近)

(キ)甲第2号証の4は、甲第1号証の4と同一の方法により作成されており、一対のローラの中心間の距離を赤色の引き出し線で示し、一対のローラの最短の間隔を青色の引き出し線で示した。ここで、一対のローラの中心としては、甲第2号証の4のFig.2.に示すように、離間する3つのローラ(spaced rollers 22)の真ん中に存在する円形のローラの円中心を通る直径と円周との交点Pを用い、残りのローラ(spaced rollers 22)についても同様にして、中心間の距離を図面ソフト上で計測した。

上記(甲第2号証の4)のとおり、ローラ部の中心を基準とすると一方の一対のローラの間隔が20であるのに対して、他方の一対のローラの間隔が34である。他方、ローラ部間の最も狭い部分を基準とすると一方の一対のローラの間隔が11であるのに対して、他方の一対のローラの間隔が12である。
以上のとおり、ローラの中心を基準とした場合、ローラの最短距離部を基準とした場合のいずれにおいても、隣接する一対のローラの間隔が、これらのローラの配列方向と交差する方向で隣接する一対のローラの間隔よりも狭くなっている。
また、甲2発明においても、いずれの対のローラを使用するかは、使用者が適宜選択することである。(弁駁書第4ページ中段付近?第5ページ中段付近)

(ク)甲第14号証は、支持軸及びローラの相対的な寸法を計測した図であり、甲第15号証は、甲1発明を三次元CAD上で再現したものである。そして、甲第16号証は、甲第15号証から機械的に導き出された図面であり、三次元CAD上から二次元図面に投影して、寸法を示した図面である。甲第15号証及び甲第16号証の右側面図及び正面図に示されているように、ナット25の先端の肌面からの高さは、右側面図及び正面図共にほぼ同一である。
したがって、答弁書第10ページ右下図の赤色矢印の方向(図1の左右)にマッサージデバイスを移動させた際にナット25が皮膚に当たって皮膚を傷つけることがないのであれば、図1の上下方向にマッサージデバイスを移動させたとしても、ナット25が皮膚に当たって傷つけることはない。事実、甲1発明は、甲第15号証の斜視図青色矢印の方向に移動させたとしても、何ら使用上に問題が生じない。

よって、甲第1号証記載の発明が、図1の左右方向にのみ移動させるということを想定しているとしているとの被請求人の主張は誤りであり、甲1発明は、図1の左右方向のみならず、図1の上下方向にも移動させることができる器具であると評価せざるを得ない。(弁駁書第6ページ中段付近?第7ページ上段付近)

(ケ)特許図面の全てが模式図ではなく、甲第2号証の1では、FIG.1が上面図(平面図に対応)であり、FIG.2がライン2-2で切り取ったときの断面図であるところ、当業者としては、FIG.1とFIG.2は相互に整合がとれた図面と理解し、FIG.1及びFIG.2は、甲2発明を正確に表現した図面であると把握する。このような甲第2号証の1の図面を元に、用いられている寸法を測定し、甲第2号証の1に記載されている技術的事項を導き出すことは、当業者にとって、自然なことであり、被請求人の批判はあたらない。(弁駁書第12ページ中段付近)

(コ)仮にもし、甲第2号証の1第2ページ右欄7行?13行の記載の意図が、“the forward rollers”として存在するのは、“the planes of which define an obtuse angle”のものに限られる、すなわち、先行する一対のローラとして存在するのは、鈍角を形成する一対のローラに限られるものであるとの解釈が成立したとしても、そのことだけをもってして、甲2発明が、甲第2号証の1の図1上において左右に移動することができないということはならない。すでに手続補正書の第24?25ページ(上記(イ))で述べたとおり、回転式のシャフトに置き換えることも想定されているわけであるから、甲第2号証の1の記載においても、甲第2号証の1の図1の上下方向への移動以外に、左右方向への移動についても示唆されていると言える。
また、仮に、回転式シャフトへの置き換えに関する記載だけを以てしては、左右方向への移動が示唆されていないと解釈されたとしても、甲2発明に接した当業者であれば、甲2発明を甲第2号証の1の図1の左右方向へ移動させても一対のローラ22は回転し、先行する一対のローラで肌を押圧し、後行する一対のローラで肌を摘まみ上げることができるものであると技術的に理解することができる。
なぜなら、甲第5号証に記載の発明(甲第5号証の第2図では、一対のローラが鋭角である)や甲第11号証に記載の発明(甲第11号証の請求項2、【0027】等に、60度以上90度未満の一対のローラの角度が開示されている)のように、一対のローラが鋭角になっていたとしても、肌を摘まみ上げるとの作用が生じていることから、当業者であれば、一対のローラが鋭角であったとしても、甲2発明を甲第2号証の1の図1の左右方向へ移動させても一対のローラ22は回転し、先行する一対のローラで肌を押圧し、後行する一対のローラで肌を摘まみ上げることができるものであると技術的に理解することができるからである。
被請求人の主張によると、甲第2号証の1には、図1上の上下にマッサージ器を移動させることのみしか記載されていないということとなるが、それは、あくまでも、最善の使用方法として、甲2発明は、上下に移動させるものであるとの記載が甲第2号証の1に記載されているというだけに過ぎず、甲2発明のマッサージ器自体が、図1上の左右に移動することができないということの根拠とはならない。(請求人口頭審理陳述要領書第7ページ下段付近?第8ページ中段付近)

(サ)「ローラの間隔」を「ローラの最短距離又は軸間距離のいずれか」と定義した場合について、請求人の主張を以下に整理する。
「ローラの最短距離」を用いた場合は、甲第1号証の4で示したように、甲1発明においては、「11」と「7」との広狭の関係が成立している。また、甲第2号証の4で示したように、甲2発明においては、「12」と「11」との広狭の関係が成立している。
「ローラの軸間距離」を用いた場合、非貫通状態のローラを用いて軸の先端をどこに位置させるかは、当業者にとって単なる設計事項に過ぎないため、たとえば、ローラの中心に、軸の先端を位置させると当業者は設計する。
ローラの中心に軸の先端を位置させた場合、甲第1号証の4で示したように、甲1発明においては、「39」と「35」との広狭の関係が成立している。また、甲第2号証の5で示したように、甲2発明においては、「51」と「47」との広狭の関係が成立している。
よって、「ローラの間隔」を「ローラの最短距離又は軸間距離のいずれか」と定義した場合であっても、請求人の今までの主張は維持可能である。(請求人口頭審理陳述要領書(2)第2ページ中段付近)

(シ)被請求人は、口頭審理陳述要領書第7ページ下から3行?同第8ページ1行において、青色矢印方向に移動させる場合の前後の一対のローラの方が、赤色矢印に移動させる場合の前後の一対のローラに比べて、一対のローラの軸の角度が狭いことを根拠に、同第8ページ2行?5行において、「甲1発明にかかるマッサージデバイスを肌上で甲第15号証第4ページの青色矢印方向に移動させる場合には、赤色矢印方向に移動させる場合に比して回転抵抗が大きくローラが回りにくい。つまり、同方向にマッサージデバイスを移動しにくいことは明らかである。」と主張しているが、回転軸の角度が狭いと、回転しにくいのかについては、その物理的根拠は説明されていない。
そして、被請求人自体も「移動しにくい」と表現しているように、回転軸の回転角度が狭かったとしても、甲1発明が、甲第1号証の1の図1中で、左右だけでなく、上下にも移動可能であることに違いはない。(請求人口頭審理陳述要領書(2)第4ページ中段付近)

(ス)甲第1号証の1の第2欄10行目から16行目に記載のように、左 右一対のローラの開き角度は、20°から30°となっており、左右一対のローラは最大60°開くこととなるため、ナットが皮膚に当たるという問題は生じない。(口頭審理調書の「請求人」欄7)

(セ)予備的主張として、甲第2号証が上下への移動しか開示していないと認定された場合、左右への移動を相違点として挙げるが、従前の主張を踏まえ、当該相違点についても容易に想到できる。(口頭審理調書の「請求人」欄8」)

(2)特に無効理由2について
(ソ)甲第1号証の1には、4本の支持軸(angularly disposed portions 24)の先端部に回転可能に支持されたマッサージ用の4個のローラ(massaging elements 27)が開示されており、甲第2号証の1では、各ローラ部におけるローラの個数は任意に変更してもよいことが示唆されているわけであるから、甲第1号証の1に記載の4個のローラ(massaging elements 27)を甲2発明の各ローラ部に適用することは、当業者にとって、何ら困難なものではない。
なお、甲2発明におけるマッサージ用の4個のローラ部(roller-carrying portions)を、甲1発明の4個のローラ(massaging elements 27)に置き換えたとしても、甲第3ないし7号証又は甲第9ないし11号証に記載のように、Y字又はV字状の一対のローラを移動させると肌が摘み上げられるという作用が生じることは周知であるから、置き換え後の発明においても、構成要素F及びGの作用が生じるように発明を構成することは、当業者にとって容易である。
そして、狭い間隔の一対のローラと広い間隔の一対のローラの使い分けについては、甲第2号証の1ではそのような使用方法について特段排除されていないことに加えて、甲第2号証の1には、マッサージ器を任意の方向に移動させることによる移動方向の使い分けについて明示されている。
次に、ローラで肌をマッサージする美容器で用いる一対のローラについて、基端側にのみ穴を有し、内部に支持軸の先端側が位置する非貫通状態とすることは、甲第3号証及び甲第7ないし13号証に記載されている。そして、甲2発明もローラで肌をマッサージする作用を有しているのであり、甲第3号証及び甲第7ないし13号証に記載のローラも、肌をマッサージする作用を有するものであるから、甲第3号証又は甲第7ないし13号証に記載のローラを甲2発明に適用することは、当業者にとって何ら困難のものではない。
よって、本件訂正発明は、甲2発明に対して、甲第1号証の1に記載された発明、甲第3号証又は甲第7ないし13号証に記載された発明、及び周知技術を適用することにより、当業者であれば、容易に発明することができたものである。(手続補正書第50ページ中段付近?第51ページ上段付近)

第5 被請求人の主張
1 要点
これに対し、被請求人は、以下の理由に基づき、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。

2 主張の概要
被請求人の主張の概要は、以下のとおりである。

(1)無効理由1及び無効理由2に対する反論
(ア)請求人は、審判請求書では、甲1の図1のPDFデータについて寸法を測定した結果、甲1の図1中、上下に隣接するローラの間隔が、左右に隣接するローラの間隔よりも狭いと主張する(請求書第11?13ページ)。しかし、特許図面は模式図であり、設計図面のような正確な寸法で描かれているとは限らない。したがって、甲1の図面から何らかの数値を測定したとしてもその数値は技術的事項とはいえず、審判請求書にて認定したと主張する技術的事項は甲1には開示されていない。(答弁書第9ページ中段付近)

(イ)甲1の1に記載されている発明は、甲1の1の図1の左右方向に移動させるものであり、同図中の上下方向に移動させることを意図していない。当該図1には、マッサージ要素27を通るロッド24の先端がマッサージ要素27から露出したナット25によって固定された構成が図示されている。
仮に、甲1の1に記載されているものを、図1の1の上下方向に移動させるとすると、移動方向(上下方向)の正面側にナット25が位置することとなり、移動時に装置全体が前方に傾斜した場合などナット25が皮膚に接触する可能性がある。
例えば、甲1の1に開示された発明に係るマッサージデバイスを、図1の上下方向に皮膚上を移動させようとした場合、マッサージ要素27の移動方向の先端にナット25が位置することになるため、マッサージ要素27が皮膚に沈み込みながら移動すると、マッサージ要素27の先端にあるナット25が皮膚に接触することになる。
このように、マッサージデバイスの使用において皮膚を傷つける可能性のある使用方法を当業者が採用することはあり得ず、むしろ、甲1の1の記載を前提にすれば、甲1の1に開示されている発明においては、図1の上下方向へ移動させての使用は忌避されていると理解される。(答弁書第10ページ下段付近?第11ページ中段付近)

(ウ)審判請求書では、甲2の2(第2ページ下から3行?第3ページ第3行)の「器具が本体の長手方向に移動される、又は任意の他の方向に移動されるかに関わらず、その面が鈍角を形成する前方ローラは、組織を中心から各々の面に押しやり、これに続くローラは、組織を再度器具の中心に向かって押し返すことが強調される。これにより完璧なマッサージが生み出される。ローラが対頂角にセットされる事実を考慮すると、組織は、十字に似た形で扱われることになるであろう。」との翻訳を根拠に、十字に移動させることが可能なマッサージデバイスであると主張する(審判請求書第18?19ページ)。しかし、この「十字」はマッサージ器の移動方向を示すものではない。
「ローラが対頂角にセットされる事実を考慮すると、組織は十字に似た形で扱われる」との翻訳は、原文の記載「In view of the fact that the rollers are set at opposite angles, the tissues will be manipulated in a criss-cross like manner.」(甲2の1第2ページ右欄第14?17行)に基づけば「ローラ自体が対角線状(十字状)にセットされるため、組織が十字状に作用される」という意味である。「十字状」(criss-cross)の主語は「組織」(the tissues)であることから、少なくともマッサージ器が十字に移動することを意味する記載ではない。(答弁書第14ページ下段?第15ページ中段)

(エ)甲2の2には「器具が本体の長手方向に移動される、又は任意の他の方向に移動されるかに関わらず、その面が鈍角を形成する前方ローラは・・」と記載されている(甲2の2第2ページ下から3行)。この記載からは、長手方向或いは他の任意の方向に移動させる場合であっても、前方ローラは鈍角を形成することが前提であると理解できる。
ここで、甲2の1の図1に図示されているローラのうち、「鈍角」を形成するのは、図1中の左右で対をなすローラであり、上下で対をなすローラは「鋭角」を形成する(下記図参照)。なお、甲2の2第2ページ第13?15行には「ロッドは、ローラ担持部を配設するためにループ2および3の一方の対応する対向する端部に直接隣接するように曲げられ、その結果それぞれの軸は、互いに対しておよび本体に対して鈍角の関係になる。」との記載もある。

このため、甲2発明を、上記図1中の左右方向に移動させると、その移動方向の前方に位置するローラ(上下で対をなすローラ)は「鋭角」を形成することとなり、上記甲2の2の「鈍角を形成する前方ローラ」の記載と整合せず、甲2の2の当該記載は、上下で対をなすローラを前方ローラとして使用する方法、すなわち、甲2発明を図1中の左右方向に移動させることを説明したものではない。つまり、甲2の2の「器具が本体の長手方向に移動される。又は任意の他の方向に移動される」との記載は、図1中の左右で対をなすローラ(鈍角を形成するローラ)を前方ローラとすることを前提とした「任意の他の方向」であり、その方向とは図1中の上下方向に近似する方向としか理解することができない。(被請求人口頭審理陳述要領書第3ページ上段?第4ページ上段)

(オ)請求人は、甲5及び甲11に開示された発明を踏まえれば、一対のローラが鋭角であったとしても、甲2発明を図1の左右方向に移動させ一対のローラを回転させる等と主張する(上記第4の4(1)(コ))。しかし、甲5に開示された技術は、「面に押し付けたローラを傾斜させて真横に推進させた時」(甲5第3ページ7行目)と記載されているとおり、甲5の第2図の左右方向に器具を移動させ、ローラ4を回転させる技術であり、前提において失当である。甲11に開示された技術は、球状部材3を有するものであって、甲2の1のような円盤状のローラを回転させる技術とは異なるものである。また、甲5、甲11の何れも肌を押圧等する部材が2つの技術であって、今問題となっている4つローラを有する技術とは異なるものである。(被請求人口頭審理陳述要領書2第5ページ下段付近?第6ページ上段付近)

(カ)合議体から、「ローラの間隔が狭い」における広狭の関係とは、「隣接する一対のローラと、これに交差する方向で隣接する一対のローラとの、ローラの最短距離又は軸間距離のいずれかで比較した場合の広狭の関係」との理解で差し支えないかと問われているが、その解釈で差し支えない。(被請求人口頭審理陳述要領書2第2ページ中段付近)

第6 無効理由についての当審の判断
1 各甲号証の記載内容
請求人が提出した証拠のうち、甲第1号証の1ないし甲第13号証には、以下の発明又は事項が記載されている。

(1)甲第1号証の1
ア 甲第1号証の1に記載された事項
甲第1号証の1には、「MASSAGE DEVICE」(マッサージデバイス)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
なお、括弧書きで示した日本語訳は、請求人が甲第1号証の2として提出した甲第1号証の1の和訳に準じて作成したものである。また、日本語訳の下線は理解の便のため付した。

(ア)「

」(第1欄第28?39行)
(図1はマッサージデバイスの上面図である。
図2は矢印によって示された方向で見た、図1の線2-2で切り取られた端面図である。
図3は図1の線3-3上で切り取られ、矢印の方向で見た断面図である。
図4は軟質のしなやかなマッサージ手段がその上に装着された軸受の1つおよびシャフト上の軸受を示す、図1の線4-4上で切り取られた断面図である。)

(イ)「

」(第2欄第10?16行)
(孔12内に装着されるのは、心棒22であり、この心棒は、真っすぐな中央部分23と、角度を付けて配設された部分24とを有するロッドを備え、この角度を付けて配設された部分24は、20から30°の外方向に配設された角度で孔の端部に隣接して曲げられ、角度を付けて配設された部分24の端部は、ナット25を受け入れるようにねじ切りされる。)

(ウ)「

」(第2欄第17?24行)
(心棒24上に回転可能に装着されるのは、軸受26であり、これらの軸受は、スポンジゴムなどの軟質のしなやかな材料のものである、球形に形成されたマッサージ要素27を担持し、軸受の管状部分は、心棒の直径よりごくわずかに大きい直径のものであり、こうしてマッサージ要素27の自由な回転をもたらす。)

(エ)「

」(第2欄第28?46行)
(デバイスを使用して体のさまざまな部分をマッサージする際、ハンドル16が掴まれ、ハンドルの周囲壁内の凹状および凸状の部分20および21により、デバイスは、右手又は左手によって使用し易くなる。デバイスは、皮膚にあてられ、手による前進運動が使用され、又は前進および後進運動が使用されてよい。デバイスの移動中、軟質のしなやかなマッサージ要素27は、自由に回転し、回転は、心棒24上の軸受26によるものである。心棒は角度を付けて配設されているため、マッサージ要素27は、体の脂肪部分を把持し、それによってその脂肪部分を揉み、手のマッサージに類似する処置を与える。ハンドル16上に圧力を与えることにより、可撓性本体10は撓み、したがって回転するマッサージ要素27を広げ、体の脂肪部分に激しいマッサージを与える。)

(オ)「

」(第3欄第7?14行 特許請求の範囲)
(1 マッサージデバイスであって、弾性本体と、前記本体の両端部に孔を形成する内転された部分と、前記孔を通って延びるロッドであって、前記ロッドの一部分が心棒を形成する、ロッドと、前記ロッドの前記心棒部分によって担持された、一体的に形成された端部を有するスリーブ軸受と、前記スリーブ軸受によって担持された球形のマッサージ手段と、前記本体によって担持されたハンドルとを備える、マッサージデバイス。)

イ 甲第1号証の1記載の発明
(カ)上記記載事項(イ)を図1、図2及び図4を参酌して合わせ読めば、“4個のマッサージ要素27は、基端側と先端側に穴を有し、各マッサージ要素27の先端側の穴から心棒24が抜け出た貫通状態でナット25に受け入れられ”ていることが看取できる。

(キ)上記記載事項(イ)に、「角度を付けて配設された部分24」とあり、また、上記記載事項(エ)に「心棒は角度を付けて配設されている」とあり、さらに、図1ないし図3に示される「心棒24」の形状を踏まえて三次元的な配置を合理的に考えれば、「心棒24」は2本のアーチ状部材の両側先端部分として計4本あるものと認められ、該4本の心棒24は、“一方向からの側面投影において、二対が先広がりに角度を付けて配設されるとともに、90度異なる他方からの側面投影において他の組み合わせの二対が先広がりに角度を付けて配設され”ているものと認められる。

そこで、上記記載事項ア(ア)ないし(オ)及び認定事項(カ)及び(キ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて本件訂正発明に照らして整理すると、甲第1号証の1には以下の発明が記載されていると認める(以下「甲1の1発明」という。)。
「4本の心棒24と、
これら4本の心棒24の先端部に回転可能に支持されたマッサージ用の4個のマッサージ要素27と、
を備えており、
4個のマッサージ要素27は、基端側と先端側に穴を有し、各マッサージ要素27の先端側の穴から心棒24が抜け出た貫通状態でナット25に受け入れられ、
4本の前記心棒24は、一方向からの側面投影において、二対が先広がりに角度を付けて配設されるとともに、90度異なる他方からの側面投影において他の組み合わせの二対が先広がりに角度を付けて配設されており、
4個の前記マッサージ要素27は、体の脂肪部分を把持し、それによってその脂肪部分を揉み、手のマッサージに類似する処置を与えるマッサージデバイス。」

ウ 一対のローラの間隔について
上記甲第1号証の1記載の発明の認定に関し、請求人は、甲第1号証の4に示すように、ローラの中心を基準とした場合、一方の一対のローラの間隔が39であるのに対して、他方の一対のローラの間隔が35である。また、ローラの最短距離部を基準とした場合、一方の一対のローラの間隔が11であるのに対して、他方の一対のローラの間隔が7である。したがって、甲第1号証の1記載のマッサージデバイスにおいては、ローラの中心を基準とした場合、ローラの最短距離部を基準とした場合のいずれにおいても、隣接する一対のローラの間隔が、これらのローラの配列方向と交差する方向で隣接する一対のローラの間隔よりも狭くなっているなどと主張する(上記第4の4(1)(カ))。
しかしながら、まず、甲第1号証の1の明細書には、一対のローラ(マッサージ要素27)の間隔を90度異なる方向で異ならせることについては、記載も示唆もされていない。
また、被請求人も主張するように(上記第5の2(1)(ア))、一般に特許図面は模式図であり、設計図面のような正確な寸法で描かれているものとは限らないから、甲1号証の1の図面上の数値を測定したとしても、そもそも、その数値は技術的事項とは言い難い。
加えて、本件訂正発明の「ローラの間隔」を「ローラの最短距離又は軸間距離のいずれか」と定義することに、両当事者間に争いはないところ(上記第4の4(1)(サ)、第5の2(1)(カ))、請求人の主張する測定結果によれば、ローラの中心を基準とした場合において「ローラの間隔」は、39対35であり、両者の差は僅かである。また、ローラの最短距離部を基準とした場合において「ローラの間隔」は、請求人は11対7と主張するが、甲第1号証の4(上記第4の4(1)(カ))を参酌するに、測定する引き出し線の採り方次第で、差はほとんどないともいえる。
いずれにせよ、甲第1号証の1には、2組の「ローラの間隔」に広狭を設ける技術思想が示されていると認めることはできず、当審の甲第1号証の1記載の発明の認定は、上記のとおりである。

(2)甲第2号証の1
ア 甲第2号証の1に記載された事項
甲第2号証の1には、「MASSAGE DEVICE」(マッサージデバイス)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
なお、括弧書きで示した日本語訳は、請求人が甲第2号証の2として提出した甲第2号証の1の和訳に準じて作成したものである。また、日本語訳の下線は理解の便のため付した。

(ア)


」(第1ページ左欄第29?37行)
(図1は、マッサージデバイスの上面図である。
図2は、図1のライン2-2に沿って切り取った断片的な横向きの断面図であり、矢印によって示される方向で見た図である。
図3は、利用されるローラのグループを通る長手方向の断面図である。
図4は、図2のライン4-4に沿って切り取った拡大された断片的な断面図である。)

(イ)


」(第1ページ右欄第23?52行)
(ハンドルバー9が、本体1に対してその比較的幅広の中心部に取り付けられ、本体1および支柱4の長さに対して直角に延びており、図面の図1に最もよく見られるように、ハンドルバーは、両端において拡大されてハンドル10および11を形成しており、これらは手を使って係合するように適合されている。このバー9は、木製、又は他の好適な材料から形成され、ハンドルは、器具を掴む準備を可能にするのに十分な長さである。上向きに延びるボルト12が、ハンドルをその中心において本体に接続し、このボルトはその上端に六角形のナット13を備えている。実質的に逆転した半球形のプレート14が、バー9の中心部を取り囲み、前記バーの上に重なるような関係で本体の幅の大半の部分にわたって延在する。プレート14は好ましくはネームプレートとして使用することが意図されており、好適な表示がその上に刻まれてよい。しかしながらプレート14はまた、バー9の中心部を保護する、およびナット13およびボルト12と協働することでバーを本体に剛性に接続するように機能する場合もある。舌15が、本体の拡大された部分において、かつその縁部付近において、互いにかつボルト12と横方向に整列して本体1から上に切り取られており、これらの舌は、バー9の中へと突出し、本体に対するバーの回転運動を阻止するためにボルト12と協働するように適合されている。)
(ウ)


」(第1ページ右欄下から3行?第2ページ左欄第27行)
(本体1に取り付けられ、ループ2および3を貫通して延びるローラ取り付けロッドが、数字16および17によって全体を示されている。ロッドはほぼ同一の構造であるため、一方の記載のみで両方にとって十分である。典型的なロッドは、直線の中央部分18と、角度を成すように配置された直線のローラ担持部19とで構成され、このローラ担持部は、その外側端部にねじ山が付けられる。ロッドは、ローラ担持部を配設するためにループ2および3の一方の対応する対向する端部に直接隣接するように曲げられ、その結果それぞれの軸は、互いに対しておよび本体に対して鈍角の関係になる。ロッドの中央部分18上にロックリップ20が形成され、図面の図2に最もよく見られるように、ロックリップは、本体のループ2および3の一方の中に内向きに配置されることでループ内でのロッドの軸回転が阻止されるように適合されている。故に、ローラ担持部は常に同一方向に提示されることが分かる。本体の対向する端部上に担持されるロッドは、ローラ担持部が最初に挙げたロッドのローラ担持部と反対方向に提示されること以外は、上記に述べたように上記に記載したロッドと同一構造である。ローラ担持部のそれぞれの内側の先端においてその各々に止め具ワッシャ21が取り付けられる。)

(エ)


」(第2ページ左欄第28?55行)
(ローラ担持部の各々に好ましくは3つの離間したローラ22が回転可能に取り付けられる。ローラは、木製、又は他の好適な材料で形成されてよく、図面の図3に最もよく見られるように、各々のセットのローラの最も外側のローラに凹部23が備わっている。ワッシャ24が、ローラ担持部19の外側のねじ山付きの端部を取り囲み、キャップナット25がワッシャの上に重なり、前記ねじ山付きの端部にねじ込まれる。観察されるように、ローラはわずかに離間されており、ローラ担持部の自由な回転を可能にする。好ましくはゴム製のタイヤ26がローラの各々の上に担持されており、これは、断面が円形であり、ローラ上に形成された半球形の溝に埋め込まれた実質的に半分のその円周部を有し、これによりタイヤがローラから移動することが制限されている。最も外側のローラの凹部23内にキャップナット25を取り付けることによって、シャフトの端部が露出した皮膚に接触するのが大幅に阻止される。これに関連して、最も外側のローラは、可能な最も幅広で最も下の地点に設置され、それぞれの外側の面は、前記ローラの自由な活動が促進されるように配置されることが指摘されており、これは、前記ローラが柔らかい皮膚組織に埋め込まれる場合に特に当てはまる。)

(オ)


」(第2ページ左欄第56行?第2ページ右欄第17行)
(使用する際、身体の所与の部分をマッサージすることが望まれる場合、器具は、ハンドル10および11が手によって把持される。器具はその後皮膚に当てられ、器具は次いで皮膚の表面上で回転され、これにより皮膚がマッサージされ、極めて健康的な状況が生まれる。ローラのセットがこのようにして設置される際、各々のセットは、互いのセットに対しておよび本体に対して角度を成す関係で配置され、組織は、比較的短時間にわたって非常に効果的なやり方でマッサージされることが特に強調される。器具が本体1の長手方向に皮膚の上を転がされる際、ローラの前方のグループは、皮膚組織を器具の中心から引き延ばし、ローラの後方のグループは、組織を内向きに器具の中心に向かって引っ張る。それ故、組織は、皮膚の表面から上向きに揉まれることが分かるであろう。当然のことながら、器具が本体の長手方向と反対の方向に後方に引っ張られる際、作用は、逆向きになることが理解されよう。すなわち、後方ローラが最初に組織を引き延ばし、今度は器具の後方にある前方ローラが、組織を内向きおよび上向きに引っ張り揉む作業を行う。器具が本体の長手方向に移動される、又は任意の他の方向に移動されるかに関わらず、その面が鈍角を形成する前方ローラは、組織を中心から各々の面に押しやり、これに続くローラは、組織を再度器具の中心に向かって押し返すことが強調される。これにより完璧なマッサージが生み出される。ローラが対頂角にセットされる事実を考慮すると、組織は、十字に似た形で扱われることになるであろう。)

(カ)


」(第2ページ右欄第27?37行)
(バー9は、ハンドル10および11が本体に近接して配置されるように本体1に取り付けられることで、器具が使用されているとき、器具が転倒してひっくり返る危険性が回避される。完璧に回転可能なマッサージ器が必要とされる場合、ハンドルバーを取り外し、器具に回転式の運動を与えるシャフトなどを取り付けることのみが必要である。ローラの各々のセットを備える3つのローラを示してきたが、所望されるいずれの数のローラも利用することができることを理解されたい。)

イ 甲第2号証の1記載の発明
(キ)上記記載事項(エ)の「3つの離間したローラ22」に関しては、上記記載事項(オ)の「ローラのセット」との関係を、図1の図示内容を踏まえて整理すると、これらは、“3つの離間したローラ22からなるマッサージ用の4組のローラのセット”ということができる。

(ク)図1及び図3を参酌すれば、4組のローラのセットは(それぞれ)基端側と先端側に穴を有し、各ローラのセットの先端側の穴から支持軸が抜け出た貫通状態であることが看取できる。

(ケ)上記記載事項(ウ)に、「角度を成すように配置された直線のローラ担持部19」とあり、また、「ロッドは、ローラ担持部を配設するためにループ2および3の一方の対応する対向する端部に直接隣接するように曲げられ、その結果それぞれの軸は、互いに対しておよび本体に対して鈍角の関係になる。」とあり、さらに、図1ないし図3に示される「直線のローラ担持部19」の形状を踏まえて三次元的な配置を合理的に考えれば、「直線のローラ担持部19」は2本のアーチ状部材の両側先端部分として計4本あるものと認められ、該4本の直線のローラ担持部19は、“一方向からの側面投影において、二対が先広がりに鈍角の角度を付けて配設されるとともに、90度異なる他方からの側面投影において他の組み合わせの二対が先広がりに鋭角の角度を付けて配置され”ているものと認められる。

そこで、上記記載事項ア(ア)ないし(カ)及び認定事項(キ)ないし(ケ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて本件訂正発明に照らして整理すると、甲第2号証の1には以下の発明が記載されていると認める(以下「甲2の1発明」という。)。
「4本の直線のローラ担持部19と、
これら4本の直線のローラ担持部19の先端部に回転可能に取り付けられた3つの離間したローラ22からなるマッサージ用の4組のローラのセットと、
を備えており、
4組のローラのセットは基端側と先端側に穴を有し、各ローラのセットの先端側の穴から直線のローラ担持部19が抜け出た貫通状態であり、
4本の前記直線のローラ担持部19は、一方向からの側面投影において、二対が先広がりに鈍角の角度を付けて配設されるとともに、90度異なる他方からの側面投影において他の組み合わせの二対が先広がりに鋭角の角度を付けて配置されており、
4組の前記ローラのセットを皮膚に当てて隣接する一対の前記ローラのセットの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、鈍角を形成する隣接状態の一対の前方のグループの前記ローラのセットで皮膚を引き延ばし、後方のグループの前記ローラのセット間で皮膚を引っ張り揉むマッサージデバイス。」

ウ 一対のローラの間隔について
上記甲第2号証の1記載の発明の認定に関し、請求人は、甲第2号証の4に示すとおり、ローラ部の中心を基準とすると一方の一対のローラの間隔が20であるのに対して、他方の一対のローラの間隔が34である。他方、ローラ部間の最も狭い部分を基準とすると一方の一対のローラの間隔が11であるのに対して、他方の一対のローラの間隔が12であるから、ローラの中心を基準とした場合、ローラの最短距離部を基準とした場合のいずれにおいても、隣接する一対のローラの間隔が、これらのローラの配列方向と交差する方向で隣接する一対のローラの間隔よりも狭くなっているなどと主張する(上記第4の4(1)(キ))。
しかしながら、まず、甲第2号証の1の明細書には、一対のローラ(のセット)の間隔を90度異なる方向で異ならせることについては、記載も示唆もされていない。
また、被請求人も主張するように(上記第5の2(ア))、一般に特許図面は模式図であり、設計図面のような正確な寸法で描かれているものとは限らないから、甲2号証の1の図面上の数値を測定したとしても、そもそも、その数値は技術的事項とは言い難い。
加えて、本件訂正発明の「ローラの間隔」を「ローラの最短距離又は軸間距離のいずれか」と定義することに、両当事者間に争いはないところ(上記第4の4(1)(サ)、第5の2(1)(カ))、請求人の主張する測定結果によれば、ローラの最短距離部を基準とした場合において「ローラの間隔」は、11対12であり、両者の差は僅かである。また、ローラの中心を基準とした場合において「ローラの間隔」は、請求人は20対34と主張するが、甲第2号証の1の「3つの離間したローラ22からなる」「ローラセット」においては、そもそもローラの中心が定義し難い。
いずれにせよ、甲第2号証の1には、2組の「ローラの間隔」に広狭を設ける技術思想が示されていると認めることはできず、当審の甲第2号証の1記載の発明の認定は、上記のとおりである。。

(3)甲第3号証
ア 甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、「美肌ローラ」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。

(ア)「【0012】
図3は本実施形態の美肌ローラのローラ部分の拡大図である。図3に示すように、ローラ20の回転軸φ1、φ2が、柄10の長軸方向の中心線Xとそれぞれ鋭角θ1、θ2に設けられ、一対のローラ20の回転軸φ1、φ2のなす角が鈍角θ0に設けられる。」

(イ)「【0015】
次に、第1の実施例の作用を説明する。本実施形態の美肌ローラを肌に押し付け、図3に示す矢印Aの方向に押す。このとき肌は両脇に引っ張られ、毛穴が開く。これにより、毛穴の奥の汚れが毛穴の開口部に向けて移動する。
【0016】
さらに、本実施形態の美肌ローラを肌に押し付けたまま矢印Bの方向に引く。このとき、肌は一対のローラの間に挟み込まれ、毛穴は収縮する。これにより、毛穴の中の汚れが押し出される。
【0017】
この押し引きを繰り返すことにより、毛穴の奥の汚れまで効率的に除去することが可能となる。」

(ウ)「【0020】
軽く押さえつけながらローラ20を回転させれば、適度な圧でリンパに働きかけ、顔および全身のリフトアップマッサージができる。引けばつまみ上げ、押せば押し広げるという2パターンの作用により、こり固まったセルライト、脂肪を柔らかくもみほぐす。これにより、セルライト、脂肪を低減させることが可能となる。
【0021】
以上述べたように、本実施形態の美肌ローラは一対のローラ20を角度をつけて柄10の一端に設けた。このため、ローラ20を肌に押し付けて押し引きすることにより、効率的に毛穴の汚れを除去することが可能となるという効果がある。」

イ 甲3事項
(エ)図3及び図1より、ローラ20の回転軸は、非貫通状態であるものと認められる。

上記記載事項ア(ア)ないし(ウ)及び上記認定事項(エ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、甲第3号証には以下の事項が記載されていると認める。(以下「甲3事項」という。)
「V字状の非貫通状態の一対のローラ20を回転させる美肌ローラにおいて、美肌ローラを引けば肌をつまみ上げ、押せば肌を押し広げるという作用が得られること。」

(4)甲第4号証
甲第4号証は、登録意匠公報であり、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)
「本物品は、健康や美容のために、足首からふくらはぎ、二の腕等の肌や筋肉をマッサージするための器具である。本物品のローラーを肌上でころがしながらグリップ部を肌に対し立てたり寝かせたりするなど角度を変えると、軸部の高さがローラー高さより大きいために、ローラーが中心へ向かって動き、肌や筋肉をググッとつまみあげるというマッサージ効果を得ることができる(使用状態を示す参考図(1)、(2)参照)。」(意匠に係る物品の説明の欄)

(イ)参考図2

(5)甲第5号証
甲第5号証には、「美顔ローラー」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)
「(作用)上述のように柄(1)の一端にローラー(4)をV字状に軸支することで、面に押し付けたローラーを傾斜させて真横に推進させた時、面とローラー双方の擦れ合う軌跡は螺旋状に生じるが、その作用をV字状に軸支する2本のローラー(4)各々に生起させ得、しかも2本のローラー(4)はV字状に軸支されて傾斜軸か相反するので、一方は下方に、他方は上方に螺旋状に擦れ合う作用を及ぼし、皮膚面(5)は弾力性があるので、各々のローラー(4)の周壁面を埋め込むように摺接し易く、又、微細な突起を有するローラー(4)はフラットな表面に近いながらも、既述の作用が併合的に複合して皮膚面(5)上にマッサーシ効果のある刺激ともみ上げ及びもみ下げ効果を同時に皮膚面(5)に及ぼす。」(第3ページ(作用)の欄)


(6)甲第6号証
甲第6号証には、「Y字形美容ローラ」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【0013】
本考案により、柄部を持ち、ほぼ中心線方向の下方に引くだけで、ローラー部と接触する部位に適切な挟圧とつまみあげ効果を与えることができる美容ローラーを得られたので、美容産業に貢献することができる。」

(7)甲第7号証
甲第7号証は、株式会社マガジンハウスより発行された「クロワッサン」第35巻第17号の一部の写しであり、写真とともに以下の事項などが記載されている。

(ア)
「プロのエステティシャンのハンド技術を取り入れたもので、先っぽの2つのボールが肌の上を転がり、ギュッとつまみながら引きあげる。」(第26ページ上から第3段の右から14?17行)

(イ)
「頬やフェイスラインがギューンと上がるんですよ。友人にも勧めています」(第27ページ左上の写真の下)

(ウ)甲第7号証の第26ページ右下の写真のように、V字状に支持されている一対のボールが先端に取り付けられたマッサージ器が記載されている。

(8)甲第8号証
甲第8号証は、「美容用ローラ」に関する登録意匠公報であり、下に示す図面等を参酌すれば、基端側にのみ穴を有し、内部に支持軸の先端が位置する非貫通状態の一対のローラが記載されているものと認められる。

(9)甲第9号証、甲第10号証、甲第12号証及び甲第13号証
甲第9号証、甲第10号証、甲第12号証及び甲第13号証には、いずれも、内部に支持軸の先端が位置する非貫通状態の一対のローラが記載されているものと認められる。

(10)甲第11号証
甲第11号証には、その要約欄、段落【0025】及び【0038】などの記載、下に示す図1の図示内容等からして、「基端側にのみ穴を有し、内部に支持軸の先端が位置する非貫通状態の一対のローラ」及び「V字状に配置された一対の支軸2に支持された球状部材3を用いて肌が摘み上げられること」が開示されているものと認められる。

2 無効理由1について
(1)甲1の1発明
甲1の1発明は、上記1(1)イにて認定したとおりである。

(2) 対比
本件訂正発明と甲1の1発明とを対比すると以下のとおりである。
甲1の1発明の「心棒24」が本件訂正発明の「支持軸」に相当することは、その機能に照らして明らかであり、以下同様にそれぞれの機能及び技術常識を踏まえれば、「マッサージ要素27」は「ローラ」に、「先広がりに角度を付けて配設される」は「先広がり傾斜状である」に、「先広がりに角度を付けて配設され」は「先広がり傾斜状に延び」に、「マッサージデバイス」は「美容器」に相当することも明らかである。

次に、甲1の1発明の
「4個の前記マッサージ要素27は、体の脂肪部分を把持し、それによってその脂肪部分を揉み、手のマッサージに類似する処置を与える」ことは、上記対比を踏まえ、
「4個の前記ローラは、体の脂肪部分を把持し、それによってその脂肪部分を揉み、手のマッサージに類似する処置を与える」こと、と言い換えられるところ、これは、本件訂正発明の
「4個の前記ローラを肌に押し当てて」「隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げ」ることと、
“4個の前記ローラは、肌に作用してマッサージ作用を与える”ことである限りにおいて共通する。

したがって、本件訂正発明と甲1の1発明とは、以下の点で一致しているということができる。

<一致点>
「4本の支持軸と、
これら4本の支持軸の先端部に回転可能に支持されたマッサージ用の4個のローラと、
を備えており、
4本の前記支持軸は、一方向からの側面投影において、二対が先広がり傾斜状であるとともに、90度異なる他方からの側面投影において他の組み合わせの二対が先広がり傾斜状に延びており、
4個の前記ローラは、肌に作用してマッサージ作用を与える美容器。」

そして、本件訂正発明と甲1の1発明とは、以下の3点で相違する。
<相違点1>
本件訂正発明は、4個のローラは基端側にのみ穴を有し、各ローラはその内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態であるのに対し、
甲1の1発明は、4個のマッサージ要素27(ローラ)は、基端側と先端側に穴を有し、各マッサージ要素27の先端側の穴から心棒24(支持軸)が抜け出た貫通状態でナット25に受け入れられるものである点。
<相違点2>
本件訂正発明においては、隣接する一対のローラの間隔が、これらローラの配列方向と交差する方向で隣接する一対のローラの間隔よりも狭いのに対し、
甲1の1発明においては、隣接する一対のマッサージ要素27の間隔と、これらと交差する方向で隣接する一対のマッサージ要素27の間隔との広狭が不明である点。
<相違点3>
本件訂正発明においては、4個のローラを肌に押し当てて間隔が狭い隣接する一対のローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対のローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対のローラ間で肌を摘み上げ、かつ、4個の前記ローラを肌に押し当てて間隔が広い隣接する一対のローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対のローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対のローラ間で肌を摘み上げるのに対し、
甲1の1発明においては、4個のマッサージ要素27は、体の脂肪部分を把持し、それによってその脂肪部分を揉み、手のマッサージに類似する処置を与えるものの、先行ローラ間で肌を押圧し後行ローラ間で肌を摘み上げるものか明らかでなく、また、体の脂肪部分を把持しそれによってその脂肪部分を揉む一方向に対して交差する(他の直交)方向に移動させるものか不明である点。

(3)相違点についての判断
ア 本件訂正発明の技術的意義
上記各相違点の検討に先立って上記相違点2及び3に係る本件訂正発明の構成の技術的意義について検討する。

(ア)本件訂正明細書の記載
まず、相違点2及び3に係る本件訂正発明の構成の技術的意義に関連する本件訂正明細書の記載として、以下の記載がある。
「【0017】
次に、前記のように構成された美容器11の作用を説明する。
この美容器11を使用して、身体の腕,足,首等の曲率が大きく平面度が低い細い部位をマッサージする場合には、ハンドル22の把持部221を把持して、図4(a)に鎖線で示すように、各ローラ17?20をマッサージしたい箇所の肌34に押し当てる。そして、狭い間隔で配置されたローラ17,18及びローラ19,20の各配置方向と直交する方向である図2及び図3の矢印P1方向,反矢印P1方向のいずれかに移動させる。
【0018】
このようにすると、美容器11が、図2及び図3において例えば矢印P1方向に移動されると、円弧矢印Q1,Q2で示すように、移動方向において先行する一対のローラ17,18が、移動方向の前方側に向かって広がるとともに交差した軸線を中心にして回転される。これにより、図4(a)に示すように、各ローラ17,18において肌34が押圧されようにマッサージされる。それと同時に、図2及び図3に矢印Q3,Q4で示すように、移動方向において後行する一対のローラ19,20が、その前部側が移動方向の後部側に狭まるとともに交差した軸線を中心にして内向きに回転される。これにより、図4(b)に示すように、両ローラ19,20間において肌34が摘まみ上げられながらマッサージされる。つまり、本体12の一方向への移動によって、肌34に対する押圧と摘まみ上げとの異なった種類のマッサージ効果が同時に得られる。」
「【0020】
ところで、ローラ17,18対及びローラ19,20対を支持する支持軸13,14及び支持軸15,16の軸間間隔L1が小さくなっている。このため、前記のように、身体の腕や足首等の曲率の大きい部位を二対のローラ17,18及びローラ19,20間において、効果的にマッサージすることができる。特に、図4(b)に示すように、肌34を摘まみ上げられるようにマッサージする作用は美容に有効である。」

「【0021】
次に、身体の腿や腰等の曲率が小さい平面的な部位をマッサージする場合には、ハンドル22の把持部221を把持して、各ローラ17?20を腿や腰等の肌34に押し当てる。そして、ローラ17,19及びローラ18,20を例えば図3の矢印P2方向に移動させる。すると、先行するローラ17,19において、図5(a)に示すように、肌34が押圧されようにマッサージされる。それと同時に、後行する対間のローラ18,20間において、図5(b)に示すように、肌34が摘まみ上げられるようにマッサージされる。」
「【0023】
そして、これらの場合には、対間のローラ17,19及びローラ18,20を支持する支持軸13,15及び支持軸14,16の軸間間隔L2が大きくなっている。このため、身体の腿や腰等の曲率の小さい部位を対間のローラ17,19及びローラ18,20間において、効果的にマッサージすることができる。」

(イ)相違点2及び3に係る本件訂正発明の構成の技術的意義
上記記載に鑑みれば、相違点2及び3に係る本件訂正発明の構成の技術的意義は、
(a)二対の支持軸が先広がり傾斜状であるとともに、90度異なる他方からの側面投影において他の組み合わせの二対の支持軸が先広がり傾斜状であり、かつ、(b)間隔の狭い一対のローラのみならず、一対のローラと交差して隣接する間隔の広い一対のローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させても、どちらの方向も移動することを特定することによって、
先行するローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げる作用効果を、直交する二方向いずれでも得られ、しかも、身体の適応箇所に応じて移動方向を使い分けることによって適応性が高まるというものであると考えられる。

イ 相違点2及び3についての検討
事案に鑑み、まず相違点2及び3について検討する。
(ア)相違点3のうち、「先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げ」る点について
はじめに、相違点3のうち、前段の「先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げ」る点(以下「相違点3前段部分」という。)について検討する。
請求人も同様に主張するように(上記第4の4(1)(ウ)及び(オ))、甲3事項のように又は甲第4号証、甲第6号証及び甲第7号証に記載されているように、Y字状又はV字状、すなわち「先広がりに」回転可能に支持されたローラを移動させることで、肌が摘み上げられ又は押圧されるという作用が生じることは、従来周知の技術事項であったと言える。そして、甲1の1発明においても、4本の支持軸(心棒24)の二対ずつが先広がり傾斜状であることからすれば、先行する隣接状態の一対のローラ(マッサージ要素27)間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対のローラ間で肌を摘み上げる作用が得られているものと考えられ、相違点3前段部分は実質的な差異ではないというべきである。

(イ)甲第1号証の1記載のマッサージデバイスの他の直交方向への移動について
当審の甲第1号証の1記載の発明の認定は、上記1(1)イに示した甲1の1発明であるところ、甲第1号証の1には、マッサージデバイスを甲第1号証の1の図1の上下方向に移動させることは、少なくとも、明記されていない。
次に、甲1の1発明は「基端側と先端側に穴を有し、各マッサージ要素27の先端側の穴から心棒24が抜け出た貫通状態でナット25に受け入れられ」るものであるところ、支持軸が貫通状態のローラは、非貫通状態のローラと比べて、支持軸と交差する方向への指向性を有するものと解されるから、甲1の1発明に係るマッサージデバイスにおいては、(貫通支持軸延在方向に近い)甲第1号証の1図1の上下方向への移動は、実用上想定されていないものと考えられる。
また、甲1の1発明に係るマッサージデバイスを、図1の上下方向に皮膚上を移動させようとした場合、マッサージ要素27の移動方向の先端にナット25が位置することになるため、マッサージ要素27が皮膚に沈み込みながら移動すると、マッサージ要素27の先端にあるナット25が皮膚に接触することになりかねないから、マッサージデバイスの使用において皮膚を傷つける可能性のある使用方法を当業者が採用することは考え難く、その意味でも、甲1の1発明に係るマッサージデバイスにおいては、図1の上下方向へ移動させての使用は避けるべきものとされていると考えられる。
これらを併せ考えると、甲第1号証の1には図1の左右・上下2方向の移動については記載されていると認めることはできないから、相違点3は実質的な差異であると認められる。そして、甲1の1発明に係るマッサージデバイスにおいては、甲第1号証の1図1の左右・上下2方向の移動は、想定されていないというべきである。

(ウ)甲第2号証の1記載の発明の認定等について
無効理由1の従たる証拠たる甲第2号証の1記載の発明の当審の認定は、上記1(2)イにて示したとおり、「・・・4組の前記ローラのセットを皮膚に当てて隣接する一対の前記ローラのセットの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、鈍角を形成する隣接状態の一対の前方のグループの前記ローラのセットで皮膚を引き延ばし、後方のグループの前記ローラのセット間で皮膚を引っ張り揉むマッサージデバイス。」の甲2の1発明というものであり、鋭角を形成する一対のローラのセットと交差する方向に移動する場合は含まれていない。
すなわち、甲第2号証の1には「その面が鈍角を形成する前方ローラは、組織を中心から各々の面に押しやり、これに続くローラは、組織を再度器具の中心に向かって押し返すことが強調される」と記載されている(上記2(2)ア(オ))一方で、その面が鋭角を形成する場合についての前方ローラやこれに続くローラの作用に関することは明記されていない。
また、甲第2号証の1の記載のマッサージデバイスは、本件訂正発明のような非貫通支持とは異なり、「3つの離間したローラ22」を貫通する支持軸で支持して1つの「ローラセット」としていることから、ローラセット(本件訂正発明のローラに相当)が、全体で円筒形をしている上、貫通状態で支持しているので、この結果、ローラの指向性がきわめて強く回転移動方向の自由度が低くなっており、鈍角を形成する甲第2号証の1の図1の上下方向近傍への回転移動しか美容器として実用上行えないものと認められる。
よって、甲第2号証の1記載のマッサージデバイスについては、甲第2号証の1の図1の左右方向への移動は記載されているとは認められず、またそのような図1の上下・左右二方向の使用形態は想定されていないと解するのが相当である。

(エ)相違点2及び相違点3の容易想到性の総合的検討
上記アにおける本件訂正発明の技術的意義の検討、及び上記(ア)ないし(ウ)の検討を踏まえ、上記相違点2の容易想到性を総合的に検討する。
上記(イ)にて説示したように、甲第1号証の1には、甲第1号証の1の図1の上下左右方向への移動が記載されているものとはいえず、しかもそのように移動させての使用は想定されていないことから、甲1の1発明を甲第1号証の1の図1の左右方向のみならず上下方向へも移動できるようにしつつ使用させようとするには、動機付けが必要となる。そのような中、上記(ウ)にて説示したように、請求人が従たる証拠とする甲第2号証の1には、当審の甲2の1発明の認定のとおり、鈍角を形成する甲第2号証の1の図1の上下方向近傍への移動しか記載されておらず、また図1の左右方向の移動は想定されていない。
すなわち、甲第1号証の1及び甲第2号証の1いずれにも、直交2方向に移動することは記載されておらず、また、甲1の1発明及び甲2の1発明においては、そのようなことは想定されていない。
加えて、相違点2及び相違点3に係る本件訂正発明は、直交2方向に交差する方向で隣接する二組の一対のローラの間隔に広狭の差を設けることによって、上記アにて説示したように、身体の適応箇所に応じて移動方向を使い分け得るものであり、甲1の1発明のような一方向移動に比して、身体への適応性が高まるというものである。
以上を踏まえると、甲1の1発明から出発して、上記技術的意義を有する本件訂正発明の相違点2及び相違点3に係る構成に到達することは、上記従来周知の技術事項(上記(ア))を勘案しても、困難であるといわざるを得ない。

(オ)請求人の主張について
請求人は、甲第1号証の1記載のマッサージデバイスの図1上下方向の移動に関連し、甲第1号証の1記載のナット25の先端の肌面からの高さは、右側面図及び正面図共にほぼ同一であるから、図1の上下方向にマッサージデバイスを移動させたとしても、ナット25が皮膚に当たって傷つけることはないなどと主張するが(上記第4の4(1)(ク))、甲第1号証の1記載のマッサージデバイスは使用者が手に持って完全な平面とはいえない人体の表面を力を加えて移動させるものであるから、マッサージ要素27が皮膚に沈み込みながら移動する可能性も十分あることを考えれば、請求人の主張は採用し得ない。
また、請求人は、甲第2号証の1記載の発明の図1左右方向の移動に関連し、仮に、先行する一対のローラとして存在するのは、鈍角を形成する一対のローラに限られるものである(すなわち、甲第2号証の1には、図1の上下方向への移動しか開示されていない)としても、甲第2号証の1には回転式のシャフトに置き換えることも想定されている(上記1(2)(カ)参照)わけであるから、甲第2号証の1の記載のマッサージデバイスにおいても、甲第2号証の1の図1の上下方向への移動以外に、左右方向への移動についても示唆されていると主張する(上記第4の4(1)(コ)等)。しかしながら、甲第2号証の1にはハンドルバーを回転式のシャフトに置き換えることが記載されてはいるといっても、当該記載は、マッサージデバイスを回転して用いる態様を示唆したものと考えるべきであって、甲第2号証の1の図1における左右方向への移動を示唆したものとは認められない。
また、甲3事項のように又は甲第4号証、甲第6号証及び甲第7号証に記載されているように、Y字状又はV字状、すなわち「先広がりに」回転可能に支持されたローラを移動させることで、肌が摘み上げられ又は押圧されるという作用が生じることは、従来周知の技術事項であるといっても(上記(ア)参照)、これは一方向へ移動しての肌の摘み上げ・押圧に関するものにとどまり、本件訂正発明のように、直交2方向に移動し、かつ、それぞれの方向において肌の摘み上げ・押圧を行うことを何ら示唆するものではない。
よって、請求人の主張には理由がない。

(4)まとめ
よって、相違点1の容易想到性について検討するまでもなく、本件訂正発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証の1に記載された発明、甲第3号証又は甲第7号証ないし甲第13号証に記載された技術事項、及び従来周知の技術事項(上記(3)イ(ア))に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできず、請求人の主張する無効理由1には理由がない。

3 無効理由2について
(1)甲2の1発明
甲2の1発明は、上記1(2)イにて認定したとおりである。

(2)対比
本件訂正発明と甲2の1発明とを対比すると以下のとおりである。
甲2の1発明の「直線のローラ担持部19」が本件訂正発明の「支持軸」に相当することは、その機能に照らして明らかであり、以下同様にそれぞれの機能及び技術常識を踏まえれば、「取り付けられた」は「支持された」に、「4組の」「ローラのセット」は「4個の」「ローラ」に、「先広がりに鈍角の角度を付けて配設される」は「先広がり傾斜状である」に、「先広がりに鋭角の角度を付けて配置され」は「先広がり傾斜状に延び」に、「皮膚」「に当てて」は「肌」「に押し当てて」に、「マッサージデバイス」は「美容器」に相当することも明らかである。
また、甲2の1発明の
「鈍角を形成する隣接状態の一対の前方のグループの前記ローラのセットで肌を引き延ばし、後方のグループの前記ローラのセット間で肌を引っ張り揉む」ことは、上記対応関係も踏まえ、本件訂正発明の
「先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げ」ることに相当するといえる。

次に、甲2の1発明の「4組の前記ローラのセットを皮膚に当てて隣接する一対の前記ローラのセットの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、鈍角を形成する隣接状態の一対の前方のグループの前記ローラのセットで皮膚を引き延ばし、後方のグループの前記ローラのセット間で皮膚を引っ張り揉む」ことは、上記対応関係を踏まえ、「4個の前記ローラを肌に押し当てて隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げ」ると言い改められるところ、
これは、本件訂正発明の「4個の前記ローラを肌に押し当てて間隔が狭い隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げ、
かつ、4個の前記ローラを肌に押し当てて間隔が広い隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げること」と、
“4個の前記ローラを肌に押し当てて隣接する少なくとも一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げ”ることである限りにおいて共通する。

したがって、本件訂正発明と甲2の1発明とは、以下の点で一致しているということができる。

<一致点>
「4本の支持軸と、
これら4本の支持軸の先端部に回転可能に支持されたマッサージ用の4個のローラと、
を備えており、
4本の前記支持軸は、一方向からの側面投影において、二対が先広がり傾斜状であるとともに、90度異なる他方からの側面投影において他の組み合わせの二対が先広がり傾斜状に延びており、
4個の前記ローラを肌に押し当てて隣接する少なくとも一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げる美容器。」

そして、本件訂正発明と甲2の1発明とは、以下の4点で相違する。
<相違点2-1>
ローラに関し、本件訂正発明においては、単に「ローラ」と特定しているのに対し、甲2の1発明においては、3つの離間したローラ22からなるローラのセットである点。
<相違点2-2>
本件訂正発明は、4個のローラは基端側にのみ穴を有し、各ローラはその内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態であるのに対し、
甲2の1発明は、4組のローラのセット(ローラ)は基端側と先端側に穴を有し、各ローラのセットの先端側の穴から直線のローラ担持部19(支持軸)が抜け出た貫通状態である点。
<相違点2-3>
本件訂正発明は、隣接する一対のローラの間隔が、これらローラの配列方向と交差する方向で隣接する一対のローラの間隔よりも狭いのに対し、
甲2の1発明においては、隣接する一対のローラの間隔と、これらと交差する方向で隣接する一対のローラの間隔との広狭が不明である点。
<相違点2-4>
4個の前記ローラを肌に当てて隣接する少なくとも一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げることに関し、
本件訂正発明においては、(先行するローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げる)間隔が狭い隣接する一対のローラの配列方向と交差する方向のみならず、間隔が広い一対のローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させても、(同様に)先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げるのに対し、
甲2の1発明においては、鈍角を形成する隣接状態の一対の前方のグループのローラのセットの配列方向と交差する方向に移動させるものの、それに加え、鋭角の角度を付けて配置される隣接状態の一対の前方のグループのローラのセットの配列方向と交差する方向(すなわち他の直交方向)に移動させるものか不明である点。

(3)相違点についての判断
(ア)相違点2-4の実質性について
甲第2号証の1記載の発明の認定等に関しては、上記2(3)イ(ウ)にて説示したように、甲2の1発明に係るマッサージデバイスは、甲第2号証の1の図1の左右方向へ移動することは記載されているとはいえず、またそのような想定もされていないと解される。
したがって、相違点2-4は実質的な差異であると認められる。

(イ)甲第1号証の1記載の発明の認定等について
無効理由2の従たる証拠たる甲第1号証の1記載の発明の当審の認定は、上記1(1)イにて示したとおりであり、また、上記2(3)イ(イ)にて説示したように、甲第1号証の1記載のマッサージデバイスにおいては、図1の上下方向へ移動することは記載されているとはいえず、また、そのように移動させての使用は想定されていないと解される。

(ウ)相違点2-3及び2-4の容易想到性の総合的検討
上記2(3)アにおける本件訂正発明の技術的意義の検討、並びに上記(ア)及び(イ)の検討を踏まえ、上記相違点2-3及び2-4を総合的に検討する。上記2(3)イ(エ)における無効理由1についての「相違点2及び相違点3の容易想到性の総合的検討」における甲1の1発明の場合と同様、無効理由2における主たる証拠たる甲第2号証の1記載の横長円筒形の貫通軸ローラセットを用いるマッサージデバイスは、甲第2号証の1の図1の左右方向へ移動することが記載されているとはいえず、また、そのような想定もされていない(上記(ア)参照)。そして、上記(イ)にて説示したように、請求人が従たる証拠とする甲第1号証の1記載のマッサージデバイスにおいても、他の交差方向へ移動することが記載されているとはいえず、またそのように移動させての使用は想定されておらず、他に、甲第2号証の1記載のマッサージデバイスを図1左右方向へ移動させる動機付けとなるような証拠は見当たらない。
また、甲3事項のように又は甲第4号証、甲第6号証及び甲第7号証に記載されているように、Y字状又はV字状、すなわち「先広がりに」回転可能に支持されたローラを移動させることで、肌が摘み上げられ又は押圧されるという作用が生じることは、従来周知の技術事項であるといっても(上記2(3)イ(ア)参照)、これは一方向へ移動しての肌の摘み上げ・押圧に関するものにとどまり、本件訂正発明のように、直交2方向に移動し、かつ、それぞれの方向において肌の摘み上げ・押圧を行うことを何ら示唆するものではない。
加えて、相違点2-3及び2-4に係る本件訂正発明は、直交2方向に交差する方向で隣接する二組の一対のローラの間隔に広狭の差を設けることによって、上記2(3)アにて説示したように、身体の適応箇所に応じて移動方向を使い分け得るものであり、甲2の1発明のような一方向移動に比して、身体への適応性が高まるというものである。
以上を総合すると、甲2の1発明から出発して、上記技術的意義を有する本件訂正発明の相違点2-3及び2-4に係る構成に到達することは当業者といえども困難であるというのが相当である。

(4)まとめ
よって、上記相違点2-1及び2-2の容易想到性について検討するまでもなく、本件訂正発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第1号証の1に記載された発明、甲第3号証又は甲第7号証ないし甲第13号証に記載された技術事項、及び上記従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできず、請求人の主張する無効理由2には理由がない。

4 小括
したがって、請求人の主張する無効理由1及び無効理由2並びに提出した証拠方法によっては、本件訂正発明に係る特許を無効にすることはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人主張の理由及び証拠方法によっては、本件訂正発明に係る特許を無効にすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
美容器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、美しい肌を実現するためのマッサージ用のローラが設けられた美容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の美容器としては、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されるような構成が提案されている。
特許文献1に記載の従来構成においては、本体上に3個のステンレス球が等間隔をおいた状態で、ボール支えを介して回転可能に支持されている。そして、これらのステンレス球が肌に押し当てられて移動されることにより、肌がマッサージされる。
【0003】
また、特許文献2に記載の従来構成においては、ハンドルの先端に2個の球体状のローラが、先広がり状の一対の軸線を中心に回転可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3151598号公報
【特許文献2】意匠登録第1426575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、これらの従来の美容器においては、次のような問題があった。
特許文献1に記載の従来構成では、各ステンレス球は肌を押圧したり、肌の上を転がったりするだけであるため、有効なマッサージ効果を得ることは難しい。
【0006】
一方、特許文献2に記載の従来構成では、2個の球体状のローラにより特許文献1と同様なマッサージ効果を得ることができる。さらに、特許文献2の構成においては、両ローラが肌に押し当てられた状態で、一方向に回転しながら移動されたときには、両ローラ間において肌を摘まみ上げるようなマッサージ効果を得ることができる。しかしながら、肌の摘み上げはローラが一方向に回転するときにしか得られないため、肌を押圧するマッサージ効果と肌を摘まみ上げるマッサージ効果とを同時に得ようとすると、美容器を小まめに往復動させる必要があって、取り扱いが面倒であった。
【0007】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、本体を一方向に移動させるのみで、肌を押圧するマッサージ効果と肌を摘まみ上げるマッサージ効果とを同時に得ることができる美容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の美容器は、4本の支持軸と、
これら4本の支持軸の先端部に回転可能に支持されたマッサージ用の4個のローラと、
を備えており、
4個のローラは基端側にのみ穴を有し、各ローラはその内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態であり、
4本の前記支持軸は、一方向からの側面投影において二対が先広がり傾斜状であるとともに、90度異なる他方からの側面投影において他の組み合わせの二対が先広がり傾斜状に延びており、
隣接する一対の前記ローラの間隔が、これらローラの配列方向と交差する方向で隣接する一対の前記ローラの間隔よりも狭く、
4個の前記ローラを肌に押し当てて間隔が狭い隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げ、
かつ、4個の前記ローラを肌に押し当てて間隔が広い隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げることを特徴とする。
【0009】
従って、この美容器においては、各ローラを肌に押し当てた状態で、本体を隣接する一対のローラの配列方向と交差する方向に沿って一方向及び他方向に移動させると、各ローラが先広がり傾斜状に延びる軸線の周りで回転される。このとき、先行する隣接状態のローラにおいては、移動方向の前方側に向かって広がるように交差した軸線を中心にして回転されるため、肌を押圧するようなマッサージ効果が得られる。これに対して、後行する隣接状態のローラにおいては、移動方向の後方側に向かって広がるように交差した軸線を中心にして内向きに回転されるため、両ローラ間で肌を摘まみ上げるようなマッサージ効果が得られる。よって、本体を往復動させることなく一方向に移動させるのみの操作で、肌に対する押圧と摘まみ上げとの異なったマッサージ効果を同時に得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
前記の美容器によれば、本体を一方向に移動させるのみで、肌を押圧するマッサージ効果と肌を摘まみ上げるマッサージ効果とを同時に得ることができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態の美容器を示す斜視図。
【図2】図1の美容器を底面側から見て示す斜視図。
【図3】同美容器の平面図。
【図4】(a)及び(b)は同美容器の異なった作用状態を示す正面図。
【図5】(a)及び(b)は同美容器の異なった作用状態を示す側面図。
【図6】図3の6-6線における拡大断面図。
【図7】図6の7-7線における部分拡大断面図。
【図8】ローラの支持構成を示す断面図。
【図9】ローラの支持構成の変更例を示す断面図。
【図10】ローラの支持構成の別の変更例を示す断面図。
【図11】ローラの形状の変更例を示す側面図。
【図12】ローラの形状の別の変更例を示す側面図。
【図13】ローラの形状のさらに別の変更例を示す側面図。
【図14】ローラの形状のさらに別の変更例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、美容器の一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、この実施形態の美容器11は、合成樹脂よりなる本体12を備えている。図2及び図6に示すように、本体12の4箇所の隅角部には、4本の脚部121が突出形成されている。脚部121は長方形の頂点部に位置している。各脚部121には、合計4本の支持軸13,14,15,16が突設されている。図4及び図5に示すように、各支持軸13?16は、水平面に対して設置された状態で、鉛直線に対して傾斜状に延びて、先広がり傾斜状をなすとともに、長四角形のコーナ部上に位置している。すなわち、図4(a)(b)に示すように、長方形の短辺の両端に位置してその短辺を挟む二対の支持軸13,14及び支持軸15,16は、側面投影において先広がり傾斜状をなし、各対の軸間間隔L1は狭く形成されている。また、図5(a)(b)に示すように、長方形の長辺の両端に位置してその長辺を挟む二対の支持軸13,15及び支持軸14,16は、前記側面投影とは90度異なる側面投影において先広がり傾斜状をなし、各対の軸間間隔L2は前記間隔L1より広く形成されている。従って、4本の各支持軸13,14,15,16は、一方向からの側面投影において二対が先広がり傾斜状であるとともに、90度異なる他方向からの側面投影において他の組み合わせの二対が先広がり傾斜状である。
【0013】
図2及び図8に示すように、前記各支持軸13?16の先端部には、それぞれマッサージ用のローラ17,18,19,20が軸受40を介して回転可能に支持されている。各ローラ17?20の回転の中心となる自身の軸線101は、支持軸13?16の軸線100と一致している。各ローラ17?20は、合成樹脂により全体としてほぼ球体状となるように形成されている。各ローラ17?20の外表面には、肌の表面や組織に好適な刺激を与える多数の三角状の小平面171,181,191,201が形成されている。各ローラ17?20の外表面には、導電材料を構成する導電金属メッキが施されている。
【0014】
図6に示すように、前記本体12の中央部には、ボス部21が形成されている。本体12上には、ハンドル22がその下面中央に突設された支軸23をボス部21に挿通することによって各ローラ17?20の配置平面内において回転可能に、かつ図6において上下動可能に支持されている。図3に示すように、ハンドル22は、合成樹脂により本体12の上面全体を覆う大きさであって、平面ほぼ分銅形状をなすように形成されている。ハンドル22の両側部には、円弧凹状の把持部221が形成されている。ハンドル22の外表面には、導電材料を構成する導電金属メッキが施されている。ハンドル22の導電金属メッキとローラ17?20の導電金属メッキとの間は電気絶縁されている。支軸23の下端部に固定されたバネ座24とボス部21の下端縁との間には、ハンドル22を図6の下方に向かって移動付勢するバネ25が介装されている。
【0015】
図6及び図7に示すように、前記ハンドル22の下面中央には、金属製のカラー26が埋設状態で固定されている。カラー26の下面には、一対の半球状の係合突起27が支軸23の軸心を中心とする同一円周上において180度の間隔をおいて形成されている。本体12のボス部21の上面中央には、係合突起27に係合可能な複数対の半球状の係合凹部28,29,30,31が形成されている。各対の係合凹部28?31は、支軸23の軸心を中心とする同一円周上において45度の間隔をおいて形成されている。そして、本体12に対してハンドル22が時計方向又は反時計方向に回転されたとき、係合突起27が各係合凹部28?31に係合される。これにより、ハンドル22の回動位置が45度ごとに規制されて、例えば図3に実線及び鎖線で示すように、ハンドル22の向きが45度おきに360度の範囲で任意に調節される。この場合、係合凹部の数や配列ピッチを変更することにより、ハンドル22の調節角度や角度範囲を任意に設定できる。従って、係合突起27及び係合凹部28?31によってハンドル22を複数の向きにおいて保持する保持機構が構成されている。
【0016】
図1、図3及び図6に示すように、前記ハンドル22の上面には、一対の凹部32が形成されている。各凹部32内には、太陽電池パネル33が設置されている。太陽電池パネル33の出力は図示しない給電線を介して前記各ローラ17?20の導電メッキ及びハンドル22の導電金属メッキに供給される。従って、各導電金属メッキは太陽電池パネル33の出力端子を構成する。このため、太陽電池パネル33で発電された電力が、各ローラ17?20及びハンドル22の導電金属メッキに供給される。そして、美容器11の使用時に、それらの導電部間に人体を介在させた電路が形成され、ローラ17?20とハンドル22の間において皮膚を含む身体に微弱電流が流れて、身体への刺激増進により美容的効果が高められる。
【0017】
次に、前記のように構成された美容器11の作用を説明する。
この美容器11を使用して、身体の腕,足,首等の曲率が大きく平面度が低い細い部位をマッサージする場合には、ハンドル22の把持部221を把持して、図4(a)に鎖線で示すように、各ローラ17?20をマッサージしたい箇所の肌34に押し当てる。そして、狭い間隔で配置されたローラ17,18及びローラ19,20の各配置方向と直交する方向である図2及び図3の矢印P1方向,反矢印P1方向のいずれかに移動させる。
【0018】
このようにすると、美容器11が、図2及び図3において例えば矢印P1方向に移動されると、円弧矢印Q1,Q2で示すように、移動方向において先行する一対のローラ17,18が、移動方向の前方側に向かって広がるとともに交差した軸線を中心にして回転される。これにより、図4(a)に示すように、各ローラ17,18において肌34が押圧されようにマッサージされる。それと同時に、図2及び図3に矢印Q3,Q4で示すように、移動方向において後行する一対のローラ19,20が、その前部側が移動方向の後部側に狭まるとともに交差した軸線を中心にして内向きに回転される。これにより、図4(b)に示すように、両ローラ19,20間において肌34が摘まみ上げられながらマッサージされる。つまり、本体12の一方向への移動によって、肌34に対する押圧と摘まみ上げとの異なった種類のマッサージ効果が同時に得られる。
【0019】
また、ハンドル22により本体12を図2及び図3の矢印P1方向の反対方向に移動させた場合には、前記の場合と逆のローラ17?20において、押圧と摘まみ上げとのマッサージが行われる。すなわち、先行する一対のローラ19,20において、図4(a)に示すように、肌34が押圧されようにマッサージされる。それと同時に、後行する一対のローラ17,18間において、図4(b)に示すように、肌34が摘まみ上げられながらマッサージされる。よって、本体12を図2及び図3の矢印P1方向及び反対方向に往復移動させれば、双方向移動において肌34に対する押圧及び摘まみ上げのマッサージ効果を連続して得ることができる。
【0020】
ところで、ローラ17,18対及びローラ19,20対を支持する支持軸13,14及び支持軸15,16の軸間間隔L1が小さくなっている。このため、前記のように、身体の腕や足首等の曲率の大きい部位を二対のローラ17,18及びローラ19,20間において、効果的にマッサージすることができる。特に、図4(b)に示すように、肌34を摘まみ上げられるようにマッサージする作用は美容に有効である。
【0021】
次に、身体の腿や腰等の曲率が小さい平面的な部位をマッサージする場合には、ハンドル22の把持部221を把持して、各ローラ17?20を腿や腰等の肌34に押し当てる。そして、ローラ17,19及びローラ18,20を例えば図3の矢印P2方向に移動させる。すると、先行するローラ17,19において、図5(a)に示すように、肌34が押圧されようにマッサージされる。それと同時に、後行する対間のローラ18,20間において、図5(b)に示すように、肌34が摘まみ上げられるようにマッサージされる。
【0022】
また、本体12を図3の矢印P2と反対方向に移動させた場合には、前記の場合と逆のローラ17?20において、押圧と摘まみ上げとのマッサージが行われる。すなわち、先行する対間のローラ18,20において、図5(a)に示すように、肌34が押圧されると同時に、後行するローラ17,19間において、図5(b)に示すように、肌34が摘まみ上げられる。よって、前記と同様に本体12の一方向への移動ごとに、肌34に対する押圧と摘まみ上げとの異なったマッサージ効果が同時に得られるとともに、本体12を図3の矢印P2方向及び反対方向に往復移動させることにより、それらのマッサージ効果を連続して得ることができる。
【0023】
そして、これらの場合には、対間のローラ17,19及びローラ18,20を支持する支持軸13,15及び支持軸14,16の軸間間隔L2が大きくなっている。このため、身体の腿や腰等の曲率の小さい部位を対間のローラ17,19及びローラ18,20間において、効果的にマッサージすることができる。
【0024】
また、身体の曲率の大きい部位及び小さい部位のいずれのマッサージの場合においても、ハンドル22の角度を360度の範囲にわたって45度単位で任意に調節できる。このため、マッサージする部位等に応じてハンドル22を適切な角度に選択することにより、ハンドル22を無理なく持つことができる。このため、マッサージを少ない疲労で容易に行なうことができる。
【0025】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この美容器11においては、本体12に4本の支持軸13?16が、先広がり傾斜状に延びるように突設されている。各支持軸13?16上には、マッサージ用のローラ17?20が回転可能に支持されている。
【0026】
このため、この美容器11においては、先行する隣接状態の一対のローラ17?20において、肌34を押圧するようなマッサージ効果が得られる。これに対して、後行する隣接状態の一対のローラ17?20において、両ローラ17?20間で肌34を摘まみ上げるようなマッサージ効果が得られる。よって、本体12を往復動させることなく一方向に移動させるのみで、肌34及び筋肉に対する押圧と摘まみ上げとの異なった種類のマッサージ効果を同時に得ることができる。
【0027】
(2) この美容器11においては、前記支持軸13?16が二対4本設けられ、各対の支持軸13,14及び支持軸15,16の軸間間隔L1より他の各対の支持軸13,15及び支持軸14,16の軸間間隔L2が大きくなるように構成されている。このため、腕や足首等の細い部位をマッサージする場合には、軸間間隔L1の小さい二対の支持軸13,14及び支持軸15,16上に支持されたローラ17,18及びローラ19,20を移動方向の前方及び後方にした状態で、本体12を移動させる。このことにより、二対のローラ17?20において腕等の曲率の大きな細い部位に対する押圧と摘まみ上げとの異なったマッサージ効果を発揮させることができる。これに対して、腿や腰等の曲率の小さい太い部位をマッサージする場合には、軸間間隔L2の大きい二対の支持軸13,15及び支持軸14,16上に支持されたローラ17,19及びローラ18,20を前方及び後方にした状態で、本体12を移動させる。このことにより、二対のローラ17?20において太い部位に対する押圧と摘まみ上げとの異なったマッサージ効果を発揮させることができる。よって、マッサージする部位に応じてローラ17?20を適切に使い分けすることができて、身体の希望する部分において良好なマッサージ効果を得ることができる。
【0028】
(3) この美容器11においては、前記本体12にハンドル22が設けられている。このため、ハンドル22を把持して本体12を容易に移動させることができて、マッサージを適切に行なうことができる。
【0029】
(4) この美容器11においては、前記ハンドル22の向きが変更可能に構成されるとともに、所望の角度で保持されるようになっている。このため、例えばマッサージの部位に応じて、ハンドル22の向きを変更することにより、本体12を所望の方向に自由に、かつ無理なく移動させることができて、良好な操作性とマッサージ効果とを得ることができる。
【0030】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0031】
・ ハンドル22の向きを前記の構成とは異なった角度、例えば30度ごとに変更できるように構成すること。
・ ハンドル22として、棒状、ボール状、環状等、前記実施形態と異なる形状にすること。
【0032】
・ ハンドル22を省略すること。この場合、本体12がハンドル機能を有することになる。
・ ハンドル22を本体12に対して一体にすること。
【0033】
・ ハンドル22を本体12に対して固定にすること。
・ 本体12を合成樹脂以外の材料,例えば、金属や木,あるいは石やセラミック等によって形成すること。
【0034】
・ ハンドル22を合成樹脂以外の材料,例えば、金属や木,あるいは石やセラミック等によって形成すること。
・ 本体12,ハンドル22,ローラ17?20の導電金属メッキを省略すること。この場合、太陽電池パネル33の例えば埋め込み型の出力端子を本体12,ハンドル22,ローラ17?20等の表面に設けて、出力端子に使用者の皮膚が接触できるようにする。
【0035】
・ 太陽電池パネル33の数を1または3以上にすること。
・ 太陽電池パネル33を省略すること。
・ 他のローラに対して、径の異なるローラを少なくともひとつ設けること。従って、全てのローラの径が異なるケースも考えられる。
【0036】
・ 図9に示すように、支持軸13?16の中心軸線100と少なくとも1個のローラ17?20の中心軸線101とを一致させず、それらを異なる位置に配置して、支持軸13?16の中心軸線100に対してローラ17?20の中心軸線101を傾斜させること。この場合、ローラ17?20の中心軸線101は支持軸13?16の中心軸線100に対して交差しても交差しなくてもよい。このようにすれば、図9に2点鎖線で示すように、ローラ17?20はその回転にともなって揺動するため、皮膚への当接圧力に強弱をつけることができる。
【0037】
・ 図10に示すように、支持軸13?16の中心軸線100に対して少なくとも1個のローラ17?20の中心軸線101を偏心させること。この場合、ローラ17?20の中心軸線101は支持軸13?16の中心軸線100に対して平行である。このようにすれば、図10に2点鎖線で示すように、ローラ17?20は偏心回転するため、皮膚への当接圧力に強弱をつけることができる。
【0038】
・ 少なくとも1個のローラ17?20において、支持軸13?16を本体12に軸受を介して回転可能に支持するとともに、その支持軸13?16にローラ17?20を固定すること。従って、この構成においては、支持軸13?16とローラ17?20とが一体に回転される。また、この構成において、図示はしないが、少なくとも1個のローラ17?20において、支持軸13?16の脚部121に支持される部分と、ローラ17?20を支持する部分との間において、支持軸13?16を屈曲または湾曲させること。このようにすれば、支持軸13?16が全体としてくの字状やクランク状になる。従って、ローラ17?20が揺動しながら回転されたり、偏心回転されたりするため、皮膚への当接圧力に強弱をつけることができる。
【0039】
・ 図11?14に示すように、ローラ17?20の形状を変更すること。図11ではローラ17?20が球形に形成され、図12では楕円球形あるいはラグビーボール形状に形成され、図13では両端を半球状にした円筒状に形成され、図14では一端側を半球状にしたバルーン形状に形成されている。さらに、例えば、両端を切り落とした平面状にするとともに、外周面が円筒面を有する筒形状、すなわちドラム状あるいは樽状にしたり、多角形の筒形状(10角筒,12角筒等)にしたりすること。なお、前記のようにバルーン形状に形成された場合は、曲率の大きな先端側の部分で肌を摘まみ上げ、曲率の小さな部分で摘まみ上げ状態を保持できるため、摘まみ上げ効果を向上させることができる。
【0040】
・ ローラ17?20の表面の小平面171,181,191,201の形状を変更すること。例えば、図11のように四角形にしたり、図12のように細長形状にしたり、図14のように円形状にしたりしてもよい。なお、図12では、ローラ17?20の最大径部に環状のライン103が付されている。図13のローラ17?20は、表面が平滑で、小平面171,181,191,201は形成されていないが、その表面を梨地状にしたり、多数の小孔を有するディンプル状にしたりしてもよい。
【0041】
・ ローラ17?20として表面に多数のイボ状の突起を有する形状にすること。
・ 少なくとも1個のローラ17?20において、ほぼ球状あるいはラグビーボール形状等の各種形状のローラ17?20の皮膚と接する部分における外周の一部または複数部分を凹ませたり、突出させたりすること。このようにすれば、ローラ17?20の回転にともない、ローラ17?20間の間隔が変化するため、皮膚への当接圧力に強弱をつけることができる。
【0042】
・ 長辺上において隣接したり、対角線上において隣接したりするローラ17?20間に電位差が形成されようにすること。このようにすれば、ローラ17?20間に交流電流やパルス電流を供給することにより、ローラ17?20間の皮膚や筋肉に対して電気マッサージを与えることができる。ただし、この場合は、電位差が形成されるローラ17?20間に電気絶縁構造を設ける必要がある。
【符号の説明】
【0043】
11…美容器、12…本体、13?16…支持軸、17?20…ローラ、22…ハンドル、33…太陽電池パネル、100…軸線、101…軸線、L1,L2…軸間間隔
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4本の支持軸と、
これら4本の支持軸の先端部に回転可能に支持されたマッサージ用の4個のローラと、
を備えており、
4個のローラは基端側にのみ穴を有し、各ローラはその内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態であり、
4本の前記支持軸は、一方向からの側面投影において二対が先広がり傾斜状であるとともに、90度異なる他方からの側面投影において他の組み合わせの二対が先広がり傾斜状に延びており、
隣接する一対の前記ローラの間隔が、これらローラの配列方向と交差する方向で隣接する一対の前記ローラの間隔よりも狭く、
4個の前記ローラを肌に押し当てて間隔が狭い隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げ、
かつ、4個の前記ローラを肌に押し当てて間隔が広い隣接する一対の前記ローラの配列方向と交差する方向に沿って移動させると、先行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を押圧し、後行する隣接状態の一対の前記ローラ間で肌を摘み上げることを特徴とする美容器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-04-28 
結審通知日 2017-05-02 
審決日 2017-05-15 
出願番号 特願2015-111980(P2015-111980)
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (A61H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 平瀬 知明
長屋 陽二郎
登録日 2015-08-14 
登録番号 特許第5791845号(P5791845)
発明の名称 美容器  
代理人 小林 徳夫  
代理人 冨宅 恵  
代理人 小林 徳夫  
代理人 ▲高▼山 嘉成  
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