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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1330566
審判番号 不服2016-13474  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-08 
確定日 2017-08-08 
事件の表示 特願2015-505660「オープンタイプのビーズ製造方式を利用した印刷反射シート」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月31日国際公開,WO2013/162293,平成27年 6月11日国内公表,特表2015-516595,請求項の数(6)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特願2015-505660号(以下,「本件出願」という。)は,2013年4月25日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2012年4月26日 韓国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成27年10月28日付け:拒絶理由通知書(同年11月4日発送)
平成28年 3月29日差出:意見書,手続補正書
平成28年 5月19日付け:拒絶査定(同年同月24日発送)
(以下,「原査定」という。))
平成28年 9月 8日差出:審判請求書,手続補正書
平成29年 5月29日付け:拒絶理由通知書(同年同月30日発送)
(以下,この拒絶理由通知書による拒絶の理由を「当審拒絶理由」という。)
平成29年 6月 5日差出:意見書,手続補正書
(以下,この手続補正書による補正を「本件補正」という。)

第2 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1?請求項6に係る発明は,平成29年6月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項6に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明は,次のとおりである(以下「本願発明1」といい,同様に請求項2?請求項6に係る発明をそれぞれ「本願発明2」?「本願発明6」という。)。なお,下線は当合議体が付したものであり,補正箇所を示す。
「印刷層が形成された印刷反射シートであって,
基材シートと,
前記基材シート上に形成された接着層と,
前記接着層の上に形成され,反射ビーズが突出した構造で埋め込まれて固定される反射フィルムと,
前記反射フィルム上に形成され,前記反射ビーズが突出した面に形成されたインクを安着させるためのインク接着層と,
前記インク接着層の上に形成されたインクを含む印刷層と,
前記印刷層の上に形成された透明保護層とを備え,
前記印刷層はUVオフセット印刷された層であり,
前記インク接着層は,シリコン樹脂,ポリウレタン(PU),メラミン樹脂,ポリ塩化ビニル(PVC),ポリビニルアルコール(PVA)及びアクリル(acrylic)樹脂から選択された一つ以上のベース樹脂と,湿潤剤及び界面活性剤を含むインクプライマーと,を含み,前記ベース樹脂100重量部に対して前記湿潤剤は0.05?30重量部,前記界面活性剤は0.05?20重量部であり,
前記インク接着層,印刷層及び透明保護層が,前記反射ビーズの突出構造に対応する屈曲構造で形成され,光が入射する表面が凸部と凹部で構成された表面屈曲構造を持ち,前記インク接着層,印刷層,及び透明保護層の厚さは,T_(30)を前記インク接着層の厚さ,T_(40)を前記印刷層の厚さ,T_(50)を前記透明保護層の厚さ,Hを前記反射フィルムの表面に突出した前記反射ビーズの高さ,としたとき,
T_(30)≦H/3
T_(40)≦H/3
T_(50)≦H/3
を満たす
ことを特徴とする印刷反射シート。」

本願発明2?本願発明6は,本願発明1を減縮した発明である。

第3 引用例
1 引用例1
(1)引用例1の記載
本件出願の優先権主張の日(以下「優先日という。)前に頒布され,原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用された刊行物である特開昭50-54680号公報(以下「引用例1」という。)には,以下の事項が記載されている。なお,下線は,当合議体が付したものであり,引用発明の認定に活用した箇所を示す。
ア 「2 特許請求の範囲
(1) 少くとも一つの着色領域と,少くとも一つの無色領域とを有する着色可能な樹脂物質からなる透明固体表面層を支持した再帰反射装置の基体,および少くとも一つの液体着色剤に対して防染力を有する固体無泡性樹脂組成物からなる被覆を含み,前記被覆が前記基体の透明表面に接着して前記無色領域を覆つていることを特徴とする着色再帰反射装置。」

イ 「本発明は被覆され,あるいは光学的に包囲された形式の再帰反射基材の一形態の上に重ねられた色染可能な固形樹脂の層(10)を示す第1図を始めとして添附の図面に従つて最もよく説明される。図に示すとうり,これらの反射装置は合成樹脂の透明介在層(14)上に施されたアルミニウムまたは銀被覆を磨き上げたシートからなる鏡面反射器(12)を具備する。合成樹脂層(14)は透明ガラスビーズ(16)の層を反射器(12)から適当な距離に維持して入射光を高輝度に再帰反射させるようにする。完成品としての再帰反射装置が使用中に被る振動等によつてガラスビーズ(16)が動かないようにするため,結合樹脂層(18)が形成され,そして,ポリメチールメタクリル酸または他の透明無色合成樹脂層(20)がガラスビーズの被覆として働き,かつ露出した光学系のビーズが雨滴に覆われて生ずるような,再帰反射特性のひずみを実質的に除去することができる平担表面を提供する。
必要なら,基材は強固な裏うち部材(21)を貼付けることにより補強されうる(第5図参照)。すなわち,その部材は反射素子(12)の背面に積層される。また,反射素子(12)あるいは補強部材(21)の外表面は転写画,標識,マーカーまたは装飾シートのようなさまざまの使用目的に従つて完成品を設置するのに役立てるため感圧接着剤を被覆する。」(3ページ右下欄11行?4ページ左上欄17行)

ウ 「第2図を参照すると,この図には色染可能な層(10)の露出表面のうち選択された領域をそれぞれに覆つた2つの被覆(22)を有する同様な品物が描かれている。これらの被覆は層(10)の表面に液状で施されるのが好ましい。すなわち,液状被覆材料は樹脂層(10)にほとんど,あるいはまつたく影響を与えないことが要求される溶剤中に適当な樹脂を溶解させて得られる溶液である。被覆は広範囲なさまざまの技術,たとえばオフセツト,凹版および文字印刷技術や,随意に,あるいは型板(ステンシル)を透しての吹きつけまたは刷毛塗り,さらには凹凸基材の浮出パターンの上にローラー被覆を施すことなどによつて達せられる。被覆(22)は連続番号マーカーの構成において必要となる場合など色染可能な層(10)の表面の特定領域上の位置を変えることによつて位置ぎめされうる。」(4ページ右上欄11行?同ページ左下欄7行)

エ 「第4図を参照すると,この実施例の製品は無色透明の耐候性外被コーテイング(28)を有するものであることがわかる。この最終層は刷毛塗り,浸漬,吹きつけ又はローラーコーテイング等によつて,適当な炭化水素溶剤中に分散したポリメチルメタクリル酸のようなラツカーを塗布した後,その溶剤を蒸発させて塗膜を硬化するために乾燥するという工程により,あるいはワニスを用いてそのバインダー成分の酸化をともなう乾燥によつて硬化する工程によつて形成される。保護層(28)は,選択的に鋳造または積層技術によつて製品に結合されることができる。この外被は被覆(22)およびバツクグラウンド領域(26)双方の水蝕あるいはかき傷等を最少に抑え,かつ製品を洗浄する場合にそれらの表面から着色剤が溶離することを阻止し,さらには着色剤の褪色を最小限にする拡散紫外線吸収化合物の支持体として役立つなど,種々の効用を有する。」(5ページ左上欄15行?同ページ右上欄12行)

オ 「第5図は反射基材が露出レンズ型となつているこの発明の別の実施例を示すものである。この形式において,結合樹脂(18)の硬化層によつて半分より少し大きい部分を覆われ,かつ透明介在層(14)上に固定されたビーズ(16)の正面には平坦表面カバーは存在しない。この介在層は反射素子(12)からビーズ(16)を適当に分離させるものであり,完成品は裏打部材(21)に支持されて補強される。この裏打補強層は波型にしわよせられた紙板からガラスファイバーその他によつて補強されたプラスチツク成層体に到るまでの種々の補強材,または特別の使用に必要な物理的特性に従つた金属板によつて形成される。第5図において,被染層(110)はすでに参照した図面のものと異り,層(18)の表面から露出したビーズの領域の輪郭に従つている。層(110)は着色領域(126)(第5図においてクロスハツチングを施した部分)と,無色・透明化被覆(122)の下側における無色・透明領域(124)とからなつている。被染樹脂層(110)の無色透明領域(124)は,その他の実施例と同様,バツクグラウンド染剤の侵入や,それによる着色を防止するために,染液によつて着色されていない硬化剤の防染被覆フイルム(122)によつてシールされている。
この実施例のものは,これまでに述べた光学的包囲型のものよりは屋外使用にとつて好ましいものではない。すなわち,ガラス球(16)の頂面によつて製品の表面に形成される輪郭が,降雨によって著しくゆがめられ,再帰反射特性を実質的に減小させてしまうからである。さらに,この型の製品は平滑表面のものに較べて表面を清浄にしかつその清浄さを維持することが困難であると言える。しかしながら,光学的露出式の再帰反射システムはある種の屋外使用目的にとつてはむしろ好ましいのである。たとえば,道路や空港の滑走路における大きなマーカーは,最初にアルミニウム又は白色塗料で大きな領域を塗装し,その粘着性の塗装の上に反射型ガラスビーズを散布してからその塗装を乾燥し,然る後,散布ガラスビーズの上に透明・被染樹脂をスプレイ又は刷毛塗りによつて全面に被覆し,それを乾燥してから,防染性の着色被覆物質の溶液を塗布・乾燥して固形化し,次いで前記被染樹脂被覆を色染するために異つた色彩のバックグラウンド染剤を,最後にマーカーの全面に耐候性樹脂透明被覆を塗布・乾燥することによつて形成される。」(5ページ右上欄16行?6ページ右上欄2行)

カ 「図における層(10)又は(110)は基板の少くとも一表面を覆う透明樹脂層の被覆又はフイルムである。それはこのような加工形状,すなわち独立した形態においてバツクグラウンド染剤によつて慣習的に色染される。きわめて薄いフイルムの場合においては,普通には透明または半透明であると認識される樹脂が,光束の過大なゆがみ(distortion)や拡散をさせずに十分明らかに再帰反射光を透過するのに用いられる。液体樹脂又は樹脂溶液のデイツピング,スプレイあるいはローラコーテイング等のコーテイング法による基材への被染樹脂の被着は普通に実施されるところであるが,熱可塑性樹脂の場合においても基板へのフイルムやシートの圧着あるいは接着のような加工を施すことができる。この目的に適した多くの樹脂の一例として,メタクリル酸メチルの重合体又はこれとスチレン又はα-メチルスチレンとの共重合体,セルロースアセテート,セルロースニトレート,ナイロン,ポリカーボネート,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスルフオン,スチレン-アクリルニトリル共重合体,スチレン-ブタジエン共重合体,尿素ホルムアルデヒド,ビニールブチラールおよび塩化ビニリデン共重合体等がある。ナイロンは極性(水性)溶媒へのバツクグラウンド染剤の溶解と,染剤がそのナイロン中に実質的な深さまで浸入したことを示す染色域の表面下におけるならし(scraping)にとつて好ましい結果を与える。少量の酢酸(たとえば1%)を添加したナイロンでは概して発色性を高めることができる。バツクグラウンド染剤が非極性有機溶媒に溶解する場合には透明層(10)として染色可能なアルキツド樹脂を用いることが好ましい。
被覆(22)は被染層(10)に固く接合されて,それらの成層が製品の全表面に加えられるどのようなバツクグラウンド染剤溶液の浸入をも阻止しなければならないが,その被覆は透明,半透明又は非透明のいずれでもよい。しかし,一般的にいつても,あるいは高輝度再帰反射製品ではなおのこと,装飾の大きな自由度を与えるために,その被覆として透明フイルムを採用するのが好ましい。被覆(22)が水のように無色であれば,それは未被覆の反射素子と同様な光,普通には白銀色の光を反射する。しかし,種々の目的のために,被覆(22)は被染層(10)に重合される前に,その被覆用物質中に適当な染剤又はインクを混入して透明ではあるが着色されていることが望まれる場合も多い。これらの実施例において,光束の入射により,この被覆を透して再帰反射する光は被覆フイルム中に分散した染剤と同色になる。そしてこのことは被覆フイルムがバツクグラウンド染剤等による汚染を受けないための無泡性固体となつていることが重要であるという理由である。これらの被覆は,被染層(10)に対して適当な粘着性を有するバインダーを含む何らかの展色剤(ビヒクル)中に展開した非溶解の顔料又は充填物を有する塗料やエナメルを用いることによつて非透明フイルムとなることもやむを得ない。」(6ページ左下欄12行?7ページ左下欄6行)

キ 「本発明の方法の好ましい実施例においては,被染色透明層および防染性被覆として本質的に異つた樹脂を採用する。そうでないと,所望の異色効果が得られないからである。したがつてアルキツド樹脂を同じ製品の被染色層と,その上の被覆成分としての防染膜の両方に用いることはできない。このことは,アルキツド樹脂が水のような極性溶媒に溶解するバツクグラウンド染剤を用いる場合の防染性被覆成分として採用され,一方,その染剤のために異なつた非極性溶媒(たとえばキシレン)を用いたことにより,アルキツド組成物が被染性樹脂層として好ましい結果をもたらすであろうと考えられるときにも守らなければならない。本発明方法の別の実施例は被覆組成物中にジメチルポリシロキサンのようなシリコン化合物を前述の如く含ませて,バツクグラウンド染剤の水性溶液を撥水させるものである。」(7ページ右下欄18行?8ページ左上欄15行)

ク 「



(2)引用発明
引用例1には,請求項1に係る着色再帰反射装置を具体化したものとして,第5図に示されるような形態を有する発明として,以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「少くとも一つの着色領域と,少くとも一つの無色領域とを有する着色可能な樹脂物質からなる透明固体表面層を支持した再帰反射装置の基体,および少くとも一つの液体着色剤に対して防染力を有する固体無泡性樹脂組成物からなる被覆を含み,前記被覆が前記基体の透明表面に接着して前記無色領域を覆っていることを特徴とする着色再帰反射装置であって,
結合樹脂(18)の硬化層によって半分より少し大きい部分を覆われ,かつ透明介在層(14)上に固定されたビーズ(16)は,前記透明介在層により,反射素子(12)から,適当に分離させられ,完成品は裏打部材(21)に支持されて補強され,
前記透明固体表面層であるところの被染層(110)は,前記結合樹脂の硬化層の表面から露出した前記ビーズの領域の輪郭に従っていて,着色領域(126)と,前記固体無泡性樹脂組成物からなる被覆であるところの,無色・透明化被覆(122)の下側における無色・透明領域(124)とからなり,
最後に,全面に耐候性樹脂透明被覆を形成した
着色再帰反射装置」

2 引用例2?5の記載事項
(1)引用例2の記載
本件出願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由において引用文献3として引用された刊行物である特開2012-40788号公報(以下「引用例2」という。)には,以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,生産性に優れたインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法に関する。


イ 「【0043】
・・・(略)・・・
<インク定着層>
本発明のインク定着層は,インクジェットインク中の色材を主に定着する層であり,顔料,バインダー,インク定着剤を含有する塗工層である。
【0044】
(顔料)
顔料としては,公知のインクジェット記録用の定着層として使用できる顔料が使用できる。
・・・(略)・・・
【0045】
中でも,平均粒子径が10nm以上,1000nm未満であるサブミクロンオーダーの顔料を用いると,優れた光沢性,及びインク滲みや印字ムラが無い優れた記録画質を得るために好ましい。・・・(略)・・・
平均粒子径が10nm未満では,空隙が少なくなりすぎてインク吸収性が低下しインク滲みや印字ムラが悪化する。またミクロンオーダー(1μm以上)となると,塗膜の透明性が損なわれかつ平滑性も低下するため,優れた光沢が得られなくなる。また,塗工層内の細孔径が大きくなるためインクを吸収する駆動力である毛細管力が小さくなり,インクの滲みや印字ムラが悪化するようになる。加えて,塗膜の透明性が劣り印字濃度も著しく低下するため,優れた記録画質が得られなくなる。
平均粒子径は,20nm?500nmの範囲がより好ましく,30nm?300nmの範囲が最も好ましい。微細顔料は,1種単独でも,或いは2種以上併用して用いてもよい。


ウ 「【0061】
(界面活性剤)
インク定着層には,カチオン性及び/又はノニオン性界面活性剤を少なくとも1種以上含有するのが好ましい。界面活性剤は,インクと塗工層内の細孔を形成する微細顔料等の濡れ性を良化させ,インク定着層へのインクの浸透を速くかつ均一にする効果が有るためか,インクの滲みや印字ムラを抑制して記録画質を良化させる効果があり,好ましく用いられる。
界面活性剤の添加量はその種類にもよるが,微細顔料100質量部に対して0.01?10質量部が好ましく,より好ましくは0.05?5質量部の範囲で調節される。界面活性剤を0.01質量部以上とすることで,上記記録画質を良化させる効果が得られ易くなる。また10質量部以下とすることで,インク定着層の表面張力や泡立ちを適度な範囲として塗工適性を良化させ易くできる。」

(2)引用例3の記載
本件出願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由において引用文献4として引用された刊行物である特開平5-221112号公報(以下「引用例3」という。)には,以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,水溶性染料を組成中に含む水性インクを使用し,ペンレコ-ダ-,プロッタ-等の印字機を用いて接触印字する記録用インク受容性透明シ-トに関し,主にはオ-バ-ヘッドプロジェクタ-に適用した場合,スクリ-ン上に優れた映像を写し出すことのできる透明記録用シ-トあるいは,透明原図の作成に適した記録用シ-トに関するものである。」

イ 「【0008】次に,前記基材上にインク定着層を設けるわけであるが,バインダ-としてはポリビニルアルコ-ルにアルデヒドを反応させてアセタ-ル化することにより得られるポリビニルアセタ-ル樹脂が他の水溶性樹脂に比べインクの吸収性,定着性に優れているのでこれを使用する。なかでもアルデヒドとしては,ブチルアルデヒド又は芳香族系アルデヒドが特に好ましく用いられる。アセタ-ル化度は,一般に2?40モル%の範囲であり,好ましくは5?20モル%である。アセタ-ル化度が低すぎる場合は,インクの定着性は良いが,耐水性が良好でなく,逆に高すぎる場合は耐水性は良好であるが,インクの定着性が悪くなる。また,更に水性インクの吸収性を向上させるためには,良好な親水性を有する界面活性剤を添加することが有効で,その種類はカチオン系,アニオン系,ノニオン系のものなど特に限定されるものではないが,カチオン系,アニオン系の界面活性剤の方がノニオン系界面活性剤よりも,単位重量あたりの親水性がはるかに大きいため前者を使うことが好ましい。ここで,使用する界面活性剤はポリビニルアセタ-ル樹脂と良好な相溶性を示し製膜後透明性を有することが必要なのは勿論である。」

(3)引用例4の記載
本件出願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由において引用文献5として引用された刊行物である特開平9-263042号公報(以下「引用例4」という。)には,以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はインクジェット記録用透明記録フィルムに関し,さらに詳しくは,水性インクを用いたインクジェット方式で記録されるインクジェットプリンタやインクジェットプロッタなどに使用される透明記録フイルムに関する。」

イ 「【0002】
【従来の技術】インクジェット記録方式は,熱転写記録方式や電子写真記録方式と同様に,記録時の騒音の少ない,代表的なノンインパクトプリント方式の一つであり,近年,カラー記録の容易性,装置のコンパクト性,ならびに,記録媒体に普通紙が使えることによる低ランニングコスト性など,コストパフォーマンスに優れた記録方式として,特に注目されている。このインクジェット記録方式では,安全性や取り扱い性の点で,水性インクが使用されることが一般的である。したがって,インクジェット用記録紙としては,吸水性に優れたものを用いることが必要である。一般に,セルロース繊維紙などの多孔質の材料では,毛細管現象によりインクジェットプリンタの水性インクが材料表面の多孔質層に浸透し,その結果,乾燥して色材が定着する。」

ウ 「【0008】
【発明の実施の形態】以下に,本発明のインクジェット記録用透明記録フィルムの構成について,図面を参照しながら説明する。図1は,本発明の透明記録フィルムの構成の一例を示す拡大部分断面図であり,フィルム状透明基体1の片面に,インク定着層2が形成されている。また,透明基体1とインク定着層2の間には,両者の密着性を高める目的で,密着層3が形成されていてもよい。図2は,本発明の透明記録フィルムの他の構成を示し,フィルム状透明基体1の両面に,それぞれ密着層3,3’を介してインク定着層2,2’が形成されている。
・・・(略)・・・
【0012】上記のポリビニルアルコールと共に定着層に使用される水溶性可塑剤は,ポリビニルアルコールの可塑剤として一般的に知られているものを使用することができる。具体的には,グリセリン;モノエタノールアミン,ジエタノールアミン,トリエタノールアミンなどのエタノールアミン類;テトラヒドロフルフリル誘導体のようなエステルアミド化合物;水溶性のリン酸アミドエステル;スルホキシド系化合物などがあげられる。これらの水溶性可塑剤のポリビニルアルコールに対する添加量は,0.5?50重量%であることが好ましい。添加量は0.5重量%以下では,可塑剤の添加効果が十分ではなく,得られた透明記録フィルムに著しいカールが生じる場合があり,逆に,添加量が50重量%以上では,インク定着層に水性インクが必要以上ににじんでしまい,画像形成に支障をきたすことが多い。可塑剤のさらに好ましい添加量は,1?20重量%である。
【0013】インク定着層には,上述したポリビニルアルコールと水溶性可塑剤の他に,必要に応じて,例えば,消泡剤,潤滑剤,透明性を損なわない範囲の有機もしくは無機顔料,及び,界面活性剤などを添加してもよい。」

エ 「【0016】
【実施例】以下,本発明の具体的実施例について,さらに説明する。
<実施例1>図1において,フィルム状透明基体1としてポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人(株)製,厚さ100μm)を使用し,この基体1の一面に,プライマー処理を施して密着層3を形成したのち,下記に示すインク定着層組成物をロールコート法により塗工し,90℃で10分間の乾燥処理を行って,定着層2を形成し,インクジェット記録用透明記録フィルムを完成した。乾燥後の定着層2の膜厚は5μmであった。
【0017】
【表1】
インク定着層組成物
・部分けん化ポリビニルアルコール 10重量部
(電気化学工業(株)製,H-17)
・グリセリン 1重量部(10PHR)
・シリコーン樹脂微粒子 0.05重量部(0.5PHR)
((株)東芝シリコーン製,トスパール)
・ポリオキシアルキレングリコール誘導体 0.05重量部(0.5PHR)
(日本油脂(株)製,ディスホーム)
・水 88.9重量部


(4)引用例5の記載
本件出願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された刊行物である特開昭55-166602号公報(以下「引用例5」という。)には,以下の事項が記載されている。
ア 「3.発明の詳細な説明
本発明は道路標識,工事用標識,車両マーク,屋外看板,ステツカー,デスプレーワツペンなどの多くの用途に用いられる再帰性反射体に関する。」(1ページ右下欄2?6行))

イ 「素材11の上面には第3図に示す如きスクリーンSを用いて反射面Aを形成するために塗刷料12を塗刷する。第3図において,20はスクリーンSの線径であり,22はオープニングである。スクリーン印刷において塗刷料12は線径20に対応した部分は厚く素材11面に付着し,オープニング22に対応する部分は印圧によって薄く付着するため,第4図に示すように線径20に対応してエンボス21が網目状に形成され,オープニング22に対応して凹部23が形成される。従つて,網目状のエンボス21の側部から凹部23にかけてゆるやかな曲面が形成される。
この塗刷料12には反射性の材料を用い,反射効率を良くするためには,例えば比重の重い銀粉又はパール粉と,蒸着銀とを混合して用いると,比重の軽い蒸着銀が上部に位置するようになる。また少量の白インクを加えると一層反射効率が良くなる。
この反射面Aの上面にはガラスビーズなどの透光性微小球体を混合した透光性の塗刷料14を塗刷する。この塗刷は例えば第3図に示したスクリーンS上から行なう。なお微小球体13と塗刷料14との混合比は微小球体13が均一に散布され,微小球体13の上面に塗刷料14が薄い皮膜をなす程度に定める。またスクリーン印刷による反射面Aのエンボス21の高さ及びエンボス21に囲まれた一区画の広さと微小球体13の大きさとの関係は一区画内に微小球体13が2個はいるような関係にするのが良い。
微小球体13は塗刷料14内で比重差により沈降して第5図に示すように反射面Aに接する。しかして反射面Aはエンボス21と凹部23とによって曲面が形成されているため,上記した従来技術の如き点接触の代りに広い面積にわたつて微小球体13と面接触する。
なお微小球体13の焦点距離は後述する塗刷料15との関係により反射面Aにて光が焦点を結んで反射するような焦点距離のものを選定する。
微小球体13を薄く被覆した塗刷料14の上面には透光性塗刷料15によりさらにコーティングが施される。このコーティングは微小球体13の剥離防止の目的及び入射光線が反射面Aで反射されるように屈折調整する目的のためである。
なお前記塗刷料14及び15にはいずれも透光性インクで着色することができる。」(2ページ左上欄9行?同ページ左下欄13行)

ウ 「




第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明とを比較すると,以下のとおりとなる。
ア 基材シート
引用発明の「裏打部材(21)」は,本願発明1の「基材シート」に相当する。

イ 反射フィルム
引用発明の,「反射素子(12)」,「透明介在層(14)」,「結合樹脂(18)の硬化層」及び「ビーズ(16)」からなる「完成品」は,「裏打部材(21)」に「支持されて補強され」る。また,当該「完成品」において,「ビーズ」は,「透明介在層」により「反射素子」から「適当に分離」した位置に,「結合樹脂の硬化層の表面から露出し」て「固定され」ている。当該構造について,引用例1の3ページ右下欄18行?4ページ左上欄1行には,「合成樹脂層(14)は透明ガラスビーズ(16)の層を反射器(12)から適当な距離に維持して入射光を高輝度に再帰反射させるようにする。」と記載されている(上記第3 1(1)イを参照。)。当該記載より,引用発明の「ビーズ」は,再帰反射機能を有することが明らかであるから,当該「ビーズ」は,「反射ビーズ」であるということができる。
そうしてみると,引用発明の「完成品」と,本願発明1の「反射フィルム」は,「基材シートの上に形成され」ている点,「反射」機能を有する点,及び,「反射ビーズが突出した構造で埋め込まれて固定され」ている点で共通する。

ウ インク接着層
引用発明の「透明固体表面層であるところの被染層(110)」は,「前記結合樹脂の硬化層の表面から露出した前記ビーズの領域の輪郭に従ってい」る。したがって,引用発明の「被染層」は,「ビーズ」が露出した面に形成されたものといえる。また,「ビーズ」は「完成品」の一部であるから,「被染層」が「完成品」の上に形成されていることは明らかである。そして,上記イで検討したように,引用発明の「完成品」は,本願発明1の「反射フィルム」に対応づけられるものである。
したがって,引用発明の「透明固体表面層であるところの被染層」と,本願発明1の「インク接着層」は,「前記反射フィルム上に形成され,前記反射ビーズが突出した面に形成された」層である点で共通する。

エ 印刷層
引用発明の「無色・透明化被覆(122)」は,「前記基体の透明表面に接着して前記無色領域を覆っている」。ここで,「基体」は,「少くとも一つの着色領域と,少くとも一つの無色領域とを有する着色可能な樹脂物質からなる透明固体表面層を支持し」ているから,前記記載における「前記基体の透明表面」とは,「少くとも一つの着色領域と,少くとも一つの無色領域とを有する着色可能な樹脂物質からなる透明固体表面層」の表面であるといえる。すなわち,「無色・透明化被覆(122)」は,「透明固体表面層」の表面に「接着して」いる。そうしてみると,引用発明の「無色・透明化被覆(122)」と,本願発明1の「印刷層」は,「前記反射フィルム上に形成され,前記反射ビーズが突出した面に形成された」層の上に形成された層である点で共通する。

オ 透明保護層
引用発明の「耐候性樹脂透明被覆」は,本願発明1の「透明保護層」に相当する。また,引用発明の「耐候性樹脂透明被覆」は,「最後に,全面に」「形成」されるものであるから,「無色・透明化被覆」の上に形成されることは明らかである。

カ 印刷反射シート
引用発明の「着色再帰反射装置」は,本願発明1の「印刷反射シート」と,「反射シート」である点で共通する。

(2)一致点及び相違点
ア 一致点
上記(1)を踏まえると,本願発明1と引用発明は,次の構成で一致する。
「反射シートであって,
基材シートと,
前記基材シートの上に形成され,反射ビーズが突出した構造で埋め込まれて固定される反射フィルムと,
前記反射フィルム上に形成され,前記反射ビーズが突出した面に形成された第一の層と,
前記第一の層の上に形成された第二の層と,
前記第二の層の上に形成された透明保護層とを備えた
ことを特徴とする反射シート」
(層を区別する便宜上,上記ウで検討した層を「第一の層」と称し,また,上記エで検討した,前記「第一の層」の上に形成された層を「第二の層」と称した。)

イ 相違点
本願発明1と引用発明とは,以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1は,「基材シート」と「反射フィルム」の間に「接着層」が設けられているのに対して,引用発明は,「裏打部材」と「完成品」が,どのような手段により固定されているのか,明らかでないため,それらの間に,接着層が設けられているかどうか明らかでない点。

(相違点2)
本願発明1の「反射フィルム上に形成され,前記反射ビーズが突出した面に形成された」層は,「インクを安着させるためのインク接着層」であり,「前記インク接着層は,シリコン樹脂,ポリウレタン(PU),メラミン樹脂,ポリ塩化ビニル(PVC),ポリビニルアルコール(PVA)及びアクリル(acrylic)樹脂から選択された一つ以上のベース樹脂と,湿潤剤及び界面活性剤を含むインクプライマーと,を含み,前記ベース樹脂100重量部に対して前記湿潤剤は0.05?30重量部,前記界面活性剤は0.05?20重量部であ」るのに対して,引用発明は,「透明固体表面層であるところの被染層」とインクの関係や,該被染層の材料が明らかでない点。

(相違点3)
第二の層が,本願発明1においては,「インクを含む印刷層」であり,「UVオフセット印刷された層であ」るのに対して,引用発明においては,「無色・透明化被覆」であり,また,インクを含み,UVオフセット印刷された層であるとは特定されていない点。

(相違点4)
本願発明1は,「前記インク接着層,印刷層及び透明保護層が,前記反射ビーズの突出構造に対応する屈曲構造で形成され,光が入射する表面が凸部と凹部で構成された表面屈曲構造を持ち,前記インク接着層,印刷層,及び透明保護層の厚さは,T_(30)を前記インク接着層の厚さ,T_(40)を前記印刷層の厚さ,T_(50)を前記透明保護層の厚さ,Hを前記反射フィルムの表面に突出した前記反射ビーズの高さ,としたとき,
T_(30)≦H/3
T_(40)≦H/3
T_(50)≦H/3を満たす」のに対して,引用発明は,「被染層(110)は,前記結合樹脂の硬化層の表面から露出した前記ビーズの領域の輪郭に従ってい」るが,「被染層」の上に形成される「無色・透明化被覆」の形状が明らかでなく,また,「被染層」及び「無色・透明化被覆」の厚さと,突出した「ビーズ」の高さの関係が,明らかでない点。

(3)相違点についての判断
上記相違点2及び相違点3をまとめて判断する。
ア 引用発明の「透明固体表面層であるところの被染層(110)」と,当該「被染層」の上に形成される「無色・透明化被覆(122)」について,引用例1には,引用発明に係る実施例(第5図に係る実施例)とは別の実施例ではあるものの,多くの構成を共有する実施例に関して,以下のような記載がある。
「第2図を参照すると,この図には色染可能な層(10)の露出表面のうち選択された領域をそれぞれに覆つた2つの被覆(22)を有する同様な品物が描かれている。・・・(略)・・・被覆は広範囲なさまざまの技術,たとえばオフセツト,凹版および文字印刷技術や,随意に,あるいは型板(ステンシル)を透しての吹きつけまたは刷毛塗り,さらには凹凸基材の浮出パターンの上にローラー被覆を施すことなどによつて達せられる。」(上記第3 1(1)ウを参照。下線は当合議体が,参考のために付与した。以下も同様。)「被覆(22)は被染層(10)に固く接合されて,それらの成層が製品の全表面に加えられるどのようなバツクグラウンド染剤溶液の浸入をも阻止しなければならないが,その被覆は透明,半透明又は非透明のいずれでもよい。・・・(略)・・・種々の目的のために,被覆(22)は被染層(10)に重合される前に,その被覆用物質中に適当な染剤又はインクを混入して透明ではあるが着色されていることが望まれる場合も多い。」(上記第3 1(1)カを参照。)ここで,「色染可能な層(10)」及び「被染層(10)」は,引用発明の「被染層(110)」と同等の機能を備えた層であり,また,「被覆(22)」は,引用発明の「無色・透明化被覆(122)」と同等の機能を備えた層である。すなわち,引用例1には,被染層の上に,インクを混入して着色した被覆を,さまざまな印刷技術により形成してもよいことが記載されている。また,被覆を被染層に固く接合することも記載されていて,このことは,被覆に含まれるインクを,被染層に安定的に付着させる,すなわち,安着させることと,解される。
したがって,引用発明において,「無色・透明化被覆(122)」を,「インクを含む印刷層」とすること,並びに,「被染層(110)」を「無色・透明化被覆(122)」に含まれる「インクを安着させるためのインク接着層」とすることは,引用例1の記載が示唆する範囲内の事項にすぎない。

イ 上記アの検討を踏まえて,「無色・透明化被覆(122)」を固く接合させるために,引用発明の「被染層(110)」に,「湿潤剤及び界面活性剤を含むインクプライマー」を含ませることが,当業者が容易に想到し得たかどうか,検討する。
(ア)なお,原査定では,引用例2?4(原査定では,引用文献3?5として引用された。)の記載事項から,「インクによる染色が行われることが想定される層に,当該染色が適切に行われるようにするため,樹脂に加え,湿潤剤や界面活性剤を添加することは,当業者が適宜なす設計的事項である」と指摘した上で,液体着色剤により着色される,引用発明の「被染層(110)」について,「樹脂と湿潤剤及び/又は界面活性剤を含む構成とすることは,当業者であれば容易である」と判断している。

(イ)引用例2?4には,水性インクを吸収し,定着するインク定着層に,界面活性剤や,グリセリンなどの可塑剤を添加することが記載されている(上記第3 2(1)?(3)を参照。)。ここで,グリセリンは,湿潤剤としても機能するものといえる(本願明細書の段落【0040】を参照。)。更に,引用例2?4には,界面活性剤や可塑剤の含有比率に関して,相違点2に係る,本願発明1の「湿潤剤」及び「界面活性剤」の含有比率と同程度の値が記載されている。したがって,水溶性インクを受容するインク定着層に,界面活性剤を含ませることは,周知技術であるといえる。ここで,当該周知技術における界面活性剤の機能は,インク定着層の親水性を向上させ,水性インクに対する濡れ性の向上に起因するものといえる(上記第3 2(1)ウ,第3 2(2)イを参照。)。

(ウ)オフセット印刷では,版上の撥水性の領域に疎水性のインクを付着させて,被印刷体にインクを転写することが一般的である(例えば,特開2010-270186号公報の段落【0002】を参照。)。したがって,引用発明において,「無色・透明化被覆」を,周知の印刷技術の1つであるUVオフセット印刷により形成する場合には,当業者であれば,上記の技術常識に従って,疎水性の材料を選択するものといえる。
一方で,上記(イ)に記したように,界面活性剤は水溶性塗料に対する濡れ性を向上させる作用を有するから,反対に,疎水性塗料に対しては濡れ性を低下させる作用があるといえる。
そうすると,引用発明において,「無色・透明化被覆」をUVオフセット印刷で形成するのであれば,当業者が,「無色・透明化被覆」を構成するインクを安着させるために,「被染層」に界面活性剤を添加することは,容易には想到し得ないものといえる。

(エ)オフセット印刷において,水溶性のインクを用いることもあり得るので,引用発明において,「無色・透明化被覆」を水溶性の材料とした上で,UVオフセット印刷で形成する場合について検討する。
この場合には,「被染層」に界面活性剤を添加することにより,「被染層」自体の,水溶性着色剤に対する染色性を向上させるとともに,水溶性である「無色・透明化被覆」の密着性を向上させることが期待できる。しかし,水溶性の「無色・透明化被覆」は,耐水性が低いものといえるから,「被染層」を染色させる際の,水溶性着色剤に対する耐性が低下するものと考えられる。したがって,引用発明において,「無色・透明化被覆」を水溶性として,「被染層」に界面活性剤を添加すると,「無色・透明化被覆」の「液体着色剤に対して防染力を有する」という特性によって,「無色・透明化被覆」の下側に「無色領域」を設けるという,引用発明の目的に反することになる。したがって,当業者にとって,このような選択を想到することが,容易であるとはいえない。

ウ 以上ア及びイから,上記相違点1及び相違点4について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,並びに,引用例2?4に記載された技術的事項に基づいて,容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2?本願発明6について
本願発明2?本願発明6は,本願発明1の構成を全て有するから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,並びに,引用例2?4に記載された技術的事項に基づいて,容易に発明できたものであるとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1 原査定の概要
本件出願の特許請求の範囲の請求項1?請求項8に係る発明は,以下の引用文献1又は2,並びに,引用文献3?5に記載される周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開昭55-166602号公報
2.特開昭50-54680号公報
3.特開2012-40788号公報
4.特開平5-221112号公報
5.特開平9-263042号公報

2 引用例1に記載された発明に基づく容易推考について
(1)本件補正により請求項1は,「印刷層はUVオフセット印刷された層であり」という構成を有するものに補正された。そして,本願発明1は,上記第4で判断したように,引用例1に記載された発明,並びに,引用例2?4に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。

(2)原査定の拒絶の理由である,平成27年10月28日付け拒絶理由通知書に記載された理由1では,引用例1の「被染層110」のうち,着色が施された領域が「印刷層」に相当する,との判断もなされている。当該判断は,本願発明1の「インク接着層」及び「印刷層」の両方を,引用例1の「被染層110」に対応づけるものである。しかし,上記(1)で記載したように,本件補正により,「印刷層はUVオフセット印刷された層」とされたから,「インク接着層」と「印刷層」とを,同一層と考えることはできない。
したがって,本願発明1と引用例1に記載された発明を,上記のように対比したとしても,本願発明1が,引用例1に記載された発明,並びに,引用例2?4に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたということはできない。

(3)本願発明2?本願発明6についても,同様に,引用例1に記載された発明,並びに,引用例2?4に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたということはできない。

3 引用例5に記載された発明に基づく容易推考について
(1)引用例5には,「この反射面Aの上面にはガラスビーズなどの透光性微小球体を混合した透光性の塗刷料14を塗刷する。この塗刷は例えば第3図に示したスクリーンS上から行なう。なお微小球体13と塗刷料14との混合比は微小球体13が均一に散布され,微小球体13の上面に塗刷料14が薄い皮膜をなす程度に定める。」(上記第3 2(4)イを参照。)と記載されている。すなわち,「塗刷料14」に埋め込まれた「透光性微小球体」は,「塗刷料14」から突出していない。

(2)仮に,引用例5に記載された発明において,「透光性微小球体」を「塗刷料14」から突出させることが,当業者が容易にできたことであったとする。この場合には,「塗刷料14」は「透光性微小球体」の上には存在しないから,「塗刷料14」を,本願発明1の「反射ビーズが突出した面に形成されたインクを安着させるためのインク接着層」に対応づけることはできない。
また,「塗刷料14」及び「透光性微小球体」の上部に形成された「塗刷料15」を,本願発明1の「インク接着層」に対応づけると,引用例5には,本願発明1の「インク接着層の上に形成されたインクを含む印刷層」に対応づけられる層が存在しない。

(3)引用例2?4は,上記(1)及び(2)で指摘した,本願発明1と引用例5に記載された発明との相違点について,開示するものではない。
したがって,本願発明1は,引用例5に記載された発明,並びに,引用例2?4に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。
また,本願発明2?本願発明6についても同様に,当業者が容易に発明できたものではない。

4 以上2及び3から,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では,本件補正前の請求項1に,「等」という表現が用いられているため,発明の範囲が不明確であり,したがって,本件出願は,特許請求の範囲の記載が,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない旨の,拒絶の理由を通知した。これに対して,本件補正により,「等」という記載が削除された結果,この拒絶の理由は解消した。

第7 まとめ
以上のとおり,本願発明1?本願発明6は,当業者が,引用例1又は引用例5に記載された発明,並びに,引用例2?4に記載された技術的事項に基づいて,容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-21 
出願番号 特願2015-505660(P2015-505660)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 清水 康司
佐藤 秀樹
発明の名称 オープンタイプのビーズ製造方式を利用した印刷反射シート  
代理人 加藤 公延  
代理人 加藤 公延  
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