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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1330601
審判番号 不服2016-14807  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-03 
確定日 2017-07-20 
事件の表示 特願2013-531729「化学気相成長法による低温での誘電体膜の作製」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月 5日国際公開,WO2012/044622,平成25年12月19日国内公表,特表2013-545275〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,2011年9月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年9月30日,アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,平成27年9月30日付けの拒絶理由の通知に対して,同年11月27日に意見書と手続補正書が提出され,平成28年6月30日付けで拒絶査定され,同年10月3日に拒絶査定不服審判が請求されると共に手続補正書が提出されたものである。

2 補正の適否
(1)補正の内容
平成28年10月3日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は,補正前の特許請求の範囲の請求項1-18を補正して,補正後の請求項1-17とするものであって,補正前後の請求項は各々次のとおりである。

<補正前>
「【請求項1】
基板上に誘電体膜を堆積する方法であって:
プロセスチャンバ内に複数の基板を設置する工程;
前記プロセスチャンバを400℃乃至650℃未満の堆積温度にまで加熱する工程;
前記プロセスチャンバへ水蒸気を含む第1プロセスガスを流入させる工程;
前記プロセスチャンバへジクロロシラン(DCS)を含む第2プロセスガスを流入させる工程;
ガス圧力を2Torr未満に設定する工程;及び,
前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスとを反応させて,非プラズマ化学気相成長によって前記複数の基板上にシリコン酸化膜を熱的に堆積する工程;
を有する方法。
【請求項2】
前記水蒸気を水素ガス(H_(2))と酸素ガス(O_(2))との燃焼によって前記プロセスチャンバの外部で生成する工程をさらに有する,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリコン酸化膜の生成後,窒素(N_(2)),一酸化窒素(NO),亜酸化窒素(N_(2)O),酸素(O_(2)),及び/又は水(H_(2)O)のうちの少なくとも1つを有する熱処理ガス内において上に前記シリコン酸化膜を有する前記基板を熱処理する工程をさらに有する,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記熱処理が,前記堆積温度よりも高い温度で実行される,請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記シリコン酸化膜の成長速度を制御するように前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスを流しながら,第1希釈ガスを前記プロセスチャンバへ流入させる工程をさらに有する,請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスを流しながら,一酸化窒素(NO)を含む第3プロセスガスを前記プロセスチャンバへ流入させる工程;及び
前記シリコン酸化膜と前記第3プロセスガスとを反応させることで,前記基板上にシリコン酸窒化膜を生成する工程;
をさらに有する,請求項1に記載の方法。
【請求項7】
NOを含む前記第3プロセスガスが,前記プロセスチャンバの外部で前記第1プロセスガスに加えられる,請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シリコン酸化膜の成長速度を制御するように前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスを流しながら,第1希釈ガスを前記プロセスチャンバへ流入させる工程;及び
前記シリコン酸化膜へのNの導入を制御するように前記第3プロセスガスを流しながら,第2希釈ガスを前記プロセスチャンバへ流入させる工程;
をさらに有する,請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記シリコン酸窒化膜の生成後,窒素(N_(2)),一酸化窒素(NO),亜酸化窒素(N_(2)O),酸素(O_(2)),及び/又は水(H_(2)O)のうちの少なくとも1つを有する熱処理ガス内において上に前記シリコン酸窒化膜を有する前記基板を熱処理する工程をさらに有する,請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記熱処理が,前記堆積温度よりも高い温度で実行される,請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記シリコン酸窒化膜は,前記シリコン酸化膜よりも低い界面トラップ密度(Dit)を有する,請求項6に記載の方法。
【請求項12】
基板上に誘電体膜を堆積する方法であって:
プロセスチャンバ内に複数の基板を設置する工程;
前記プロセスチャンバを400℃乃至650℃未満の堆積温度にまで加熱する工程;
前記プロセスチャンバへ水蒸気を含む第1プロセスガスを流入させる工程であって,前記水蒸気は水素ガス(H_(2))と酸素ガス(O_(2))との燃焼によって前記プロセスチャンバの外部で生成される,工程;
前記プロセスチャンバへジクロロシラン(DCS)を含む第2プロセスガスを流入させる工程;
前記プロセスチャンバ内でのガス圧力を2Torr未満に設定する工程;
前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスとを反応させて,非プラズマ化学気相成長によって前記複数の基板上にシリコン酸化膜を熱的に堆積する工程;並びに,
前記シリコン酸化膜の生成後,窒素(N_(2)),一酸化窒素(NO),亜酸化窒素(N_(2)O),酸素(O_(2)),及び/又は水(H_(2)O)のうちの少なくとも1つを有する熱処理ガス内において上に前記シリコン酸化膜を有する前記基板を熱処理する工程であって,前記熱処理は前記堆積温度よりも高い温度で実行される,工程;
を有する方法。
【請求項13】
前記シリコン酸化膜の成長速度を制御するように前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスを流しながら,第1希釈ガスを前記プロセスチャンバへ流入させる工程をさらに有する,請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基板上に誘電体膜を堆積する方法であって:
プロセスチャンバ内に複数の基板を設置する工程;
前記プロセスチャンバを400℃乃至650℃未満の堆積温度にまで加熱する工程;
前記プロセスチャンバへ水蒸気を含む第1プロセスガスを流入させる工程であって,前記水蒸気は水素ガス(H_(2))と酸素ガス(O_(2))との燃焼によって前記プロセスチャンバの外部で生成される,工程;
前記プロセスチャンバへジクロロシラン(DCS)を含む第2プロセスガスを流入させる工程;
前記プロセスチャンバへ一酸化窒素(NO)を含む第3プロセスガスを流入させる工程;
前記プロセスチャンバ内でのガス圧力を2Torr未満に設定する工程;
前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスとを反応させて前記複数の基板上にシリコン酸窒化膜を熱的に堆積する工程;並びに,
前記シリコン酸窒化膜の生成後,窒素(N_(2)),一酸化窒素(NO),亜酸化窒素(N_(2)O),酸素(O_(2)),及び/又は水(H_(2)O)のうちの少なくとも1つを有する熱処理ガス内において上に前記シリコン酸窒化膜を有する前記基板を熱処理する工程;
を有する方法。
【請求項15】
前記熱処理が,前記堆積温度よりも高い温度で実行される,請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記水蒸気を水素ガス(H_(2))と酸素ガス(O_(2))との燃焼によって前記プロセスチャンバの外部で生成する工程をさらに有する,請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記シリコン酸化膜の成長速度を制御するように前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスを流しながら,第1希釈ガスを前記プロセスチャンバへ流入させる工程;及び
前記シリコン酸化膜への窒素の導入を制御するように前記第3プロセスガスを流しながら,第2希釈ガスを前記プロセスチャンバへ流入させる工程;
をさらに有する,請求項14に記載の方法。
【請求項18】
NOを含む前記第3プロセスガスが,前記プロセスチャンバの外部で前記第1プロセスガスに加えられる,請求項14に記載の方法。」

<補正後>
「【請求項1】
基板上に誘電体膜を堆積する方法であって:
プロセスチャンバ内に複数の基板を設置する工程;
前記プロセスチャンバを400℃乃至650℃未満の堆積温度にまで加熱する工程;
前記プロセスチャンバへ水蒸気を含む第1プロセスガスを流入させる工程;
前記プロセスチャンバへジクロロシラン(DCS)を含む第2プロセスガスを流入させる工程;
前記プロセスチャンバ内でのガス圧力を2Torr未満に設定する工程;及び,
前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスとを反応させて,非プラズマ化学気相成長によって前記複数の基板上にシリコン酸化膜を熱的に堆積する工程;
を有する方法。
【請求項2】
前記水蒸気を水素ガス(H_(2))と酸素ガス(O_(2))との燃焼によって前記プロセスチャンバの外部で生成する工程をさらに有する,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリコン酸化膜の生成後,窒素(N_(2)),一酸化窒素(NO),亜酸化窒素(N_(2)O),酸素(O_(2)),及び/又は水(H_(2)O)のうちの少なくとも1つを有する熱処理ガス内において上に前記シリコン酸化膜を有する前記基板を熱処理する工程をさらに有する,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記熱処理が,前記堆積温度よりも高い温度で実行される,請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記シリコン酸化膜の成長速度を制御するように前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスを流しながら,第1希釈ガスを前記プロセスチャンバへ流入させる工程をさらに有する,請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスを流しながら,一酸化窒素(NO)ガスを含む第3プロセスガスを前記プロセスチャンバへ流入させる工程;及び
前記シリコン酸化膜と前記第3プロセスガスとを反応させることで,前記基板上にシリコン酸窒化膜を生成する工程;
をさらに有する,請求項1に記載の方法。
【請求項7】
NOガスを含む前記第3プロセスガスが,前記プロセスチャンバの外部で前記第1プロセスガスに加えられる,請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シリコン酸化膜の成長速度を制御するように前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスを流しながら,第1希釈ガスを前記プロセスチャンバへ流入させる工程;及び
前記シリコン酸化膜への窒素の導入を制御するように前記第3プロセスガスを流しながら,第2希釈ガスを前記プロセスチャンバへ流入させる工程;
をさらに有する,請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記シリコン酸窒化膜の生成後,窒素(N_(2)),一酸化窒素(NO),亜酸化窒素(N_(2)O),酸素(O_(2)),及び/又は水(H_(2)O)のうちの少なくとも1つを有する熱処理ガス内において上に前記シリコン酸窒化膜を有する前記基板を熱処理する工程をさらに有する,請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記熱処理が,前記堆積温度よりも高い温度で実行される,請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記シリコン酸窒化膜は,前記シリコン酸化膜よりも低い界面トラップ密度(Dit)を有する,請求項6に記載の方法。
【請求項12】
基板上に誘電体膜を堆積する方法であって:
プロセスチャンバ内に複数の基板を設置する工程;
前記プロセスチャンバを400℃乃至650℃未満の堆積温度にまで加熱する工程;
前記プロセスチャンバへ水蒸気を含む第1プロセスガスを流入させる工程であって,前記水蒸気は水素ガス(H_(2))と酸素ガス(O_(2))との燃焼によって前記プロセスチャンバの外部で生成される,工程;
前記プロセスチャンバへジクロロシラン(DCS)を含む第2プロセスガスを流入させる工程;
前記プロセスチャンバ内でのガス圧力を2Torr未満に設定する工程;
前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスとを反応させて,非プラズマ化学気相成長によって前記複数の基板上にシリコン酸化膜を熱的に堆積する工程;並びに,
前記シリコン酸化膜の生成後,窒素(N_(2)),一酸化窒素(NO),亜酸化窒素(N_(2)O),酸素(O_(2)),及び/又は水(H_(2)O)のうちの少なくとも1つを有する熱処理ガス内において上に前記シリコン酸化膜を有する前記基板を熱処理する工程であって,前記熱処理は前記堆積温度よりも高い温度で実行される,工程;
を有する方法。
【請求項13】
前記シリコン酸化膜の成長速度を制御するように前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスを流しながら,第1希釈ガスを前記プロセスチャンバへ流入させる工程をさらに有する,請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基板上に誘電体膜を堆積する方法であって:
プロセスチャンバ内に複数の基板を設置する工程;
前記プロセスチャンバを400℃乃至650℃未満の堆積温度にまで加熱する工程;
前記プロセスチャンバへ水蒸気を含む第1プロセスガスを流入させる工程であって,前記水蒸気は水素ガス(H_(2))と酸素ガス(O_(2))との燃焼によって前記プロセスチャンバの外部で生成される,工程;
前記プロセスチャンバへジクロロシラン(DCS)を含む第2プロセスガスを流入させる工程;
前記プロセスチャンバへ一酸化窒素(NO)を含む第3プロセスガスを流入させる工程;
前記プロセスチャンバ内でのガス圧力を2Torr未満に設定する工程;
前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスと前記第3プロセスガスとを反応させて前記複数の基板上にシリコン酸窒化膜を熱的に堆積する工程;並びに,
前記シリコン酸窒化膜の生成後,窒素(N_(2)),一酸化窒素(NO),亜酸化窒素(N_(2)O),酸素(O_(2)),及び/又は水(H_(2)O)のうちの少なくとも1つを有する熱処理ガス内において上に前記シリコン酸窒化膜を有する前記基板を熱処理する工程;
を有する方法。
【請求項15】
前記熱処理が,前記堆積温度よりも高い温度で実行される,請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記シリコン酸化膜の成長速度を制御するように前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスを流しながら,第1希釈ガスを前記プロセスチャンバへ流入させる工程;及び
前記シリコン酸化膜への窒素の導入を制御するように前記第3プロセスガスを流しながら,第2希釈ガスを前記プロセスチャンバへ流入させる工程;
をさらに有する,請求項14に記載の方法。
【請求項17】
NOガスを含む前記第3プロセスガスが,前記プロセスチャンバの外部で前記第1プロセスガスに加えられる,請求項14に記載の方法。」

(2)補正事項の整理
本件補正の補正事項を整理すると次のとおりである。
ア 補正事項1
補正前の請求項1の「ガス圧力を2Torr未満に設定する工程」を補正して,補正後の請求項1の「前記プロセスチャンバ内でのガス圧力を2Torr未満に設定する工程」とすること。

イ 補正事項2
補正前の請求項6の「一酸化窒素(NO)を含む第3プロセスガス」を補正して,補正後の請求項6の「一酸化窒素(NO)ガスを含む第3プロセスガス」とすること。

ウ 補正事項3
補正前の請求項7,18の「NOを含む前記第3プロセスガス」を補正して,補正後の請求項7,17の「NOガスを含む前記第3プロセスガス」とすること。

エ 補正事項4
補正前の請求項8の「前記シリコン酸化膜へのNの導入を制御する」を補正して,補正後の請求項8の「前記シリコン酸化膜への窒素の導入を制御する」とすること。

オ 補正事項5
補正前の請求項14の「前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスとを反応させて前記複数の基板上にシリコン酸窒化膜を熱的に堆積する工程」を補正して,補正後の請求項14の「前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスと前記第3プロセスガスとを反応させて前記複数の基板上にシリコン酸窒化膜を熱的に堆積する工程」とすること。

カ 補正事項6
補正前の請求項16を削除して,補正前の請求項17,18の請求項の番号を繰り上げルこと。

(3)補正の目的の適否,新規事項追加の有無,及び,発明の特別な技術的特徴の変更の有無についての検討
ア 補正前の請求項1の記載では,「ガス圧力」が,どこの圧力であるのかが特定されておらず,発明が明りょうでなかったところ,補正事項1によって,「前記プロセスチャンバ内でのガス圧力」であることが明確となった。
したがって,補正事項1は,特許法第17条の2第5項第4号に掲げる,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し,特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たす。

イ 補正事項2は,特許法第17条の2第5項第3号に掲げる,誤記の訂正を目的とするものに該当し,特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たす。

ウ 補正事項3は,特許法第17条の2第5項第3号に掲げる,誤記の訂正を目的とするものに該当し,特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たす。

エ 補正事項4は,特許法第17条の2第5項第4号に掲げる,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し,特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たす。

オ 補正前の請求項14には,「前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスとを反応させて前記複数の基板上にシリコン酸窒化膜を熱的に堆積する工程」と記載されている。
一方,補正前の請求項14によれば,前記「前記複数の基板上にシリコン酸窒化膜を熱的に堆積する工程」の前に,「複数の基板」が設置された「プロセスチャンバ」内へ,「水蒸気を含む第1プロセスガス」,「ジクロロシラン(DCS)を含む第2プロセスガス」,及び,「一酸化窒素(NO)を含む第3プロセスガス」を流入させる工程を有することが特定されている。
そして,このように,プロセスチャンバ内に,「水蒸気を含む第1プロセスガス」,「ジクロロシラン(DCS)を含む第2プロセスガス」,及び,「一酸化窒素(NO)を含む第3プロセスガス」が存在する状態で,前記複数の基板上にシリコン酸窒化膜を熱的に堆積する工程を実施した場合において,窒素を含有するガスである「一酸化窒素(NO)を含む第3プロセスガス」が,前記「シリコン酸窒化膜」を熱的に堆積する反応に全く関与せず,「水蒸気を含む第1プロセスガス」と「ジクロロシラン(DCS)を含む第2プロセスガス」のみが反応をして,窒素を含有する物質である「シリコン酸窒化膜」が堆積されるとすることは技術常識に照らして不合理といえる。
他方,本願の図3には,基板上に酸化膜を堆積する方法の一実施例に係るプロセスフローダイアグラムが表されているところ,前記表には,
「プロセスチャンバ内に複数の基板を設置する工程」;
「前記プロセスチャンバを400℃乃至650℃未満の堆積温度にまで加熱する工程」;
「前記プロセスチャンバへ水蒸気を含む第1プロセスガスを流入させる工程」;
「前記プロセスチャンバへジクロロシランを含む第2プロセスガスを流入させる工程」;
「前記プロセスチャンバへ一酸化窒素を含む第3プロセスガスを流入させる工程」;
「ガス圧力を2Torr未満に設定する工程」;
「前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスと前記第3プロセスガスとを反応させて前記複数の基板上にシリコン酸窒化膜を熱的に堆積する工程」が明記されている。
そうすると,補正前の請求項14に係る発明において,プロセスチャンバ内に,「水蒸気を含む第1プロセスガス」,「ジクロロシラン(DCS)を含む第2プロセスガス」,及び,「一酸化窒素(NO)を含む第3プロセスガス」を流入させた後の,「前記複数の基板上にシリコン酸窒化膜を熱的に堆積する工程」においては,本願の図3に記載された「前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスと前記第3プロセスガスとを反応させて前記複数の基板上にシリコン酸窒化膜を熱的に堆積する工程」に記載された反応が生じると理解することが技術常識に照らして妥当であるから,補正前の請求項14の「前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスとを反応させて前記複数の基板上にシリコン酸窒化膜を熱的に堆積する工程」との記載は,「前記第3プロセスガスと」の記載を欠いた誤記であったと認められる。
そうすると,補正事項5は,特許法第17条の2第5項第3号に掲げる,誤記の訂正を目的とするものに該当し,特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たす。

カ 補正事項6は,特許法第17条の2第5項第1号に掲げる,請求項の削除,及び,特許法第17条の2第5項第4号に掲げる,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し,特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たす。

キ さらに,補正事項1ないし6による補正は,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。また,本願の願書に最初に添付した明細書を「当初明細書」という。)に記載されているものと認められるから,補正事項1ないし6は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって,補正事項1ないし6は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

ク そして,補正事項1ないし6は,発明の特別な技術的特徴を変更するものではないと認められるから,特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものといえる。

ケ 以上検討したとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第3項,第4項,及び,第5項に規定する要件を満たす。

3 本願発明
上記2のとおり,審判請求時の補正は適法なものであるから,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は,平成28年10月3日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下,再掲する。)

「【請求項1】
基板上に誘電体膜を堆積する方法であって:
プロセスチャンバ内に複数の基板を設置する工程;
前記プロセスチャンバを400℃乃至650℃未満の堆積温度にまで加熱する工程;
前記プロセスチャンバへ水蒸気を含む第1プロセスガスを流入させる工程;
前記プロセスチャンバへジクロロシラン(DCS)を含む第2プロセスガスを流入させる工程;
前記プロセスチャンバ内でのガス圧力を2Torr未満に設定する工程;及び,
前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスとを反応させて,非プラズマ化学気相成長によって前記複数の基板上にシリコン酸化膜を熱的に堆積する工程;
を有する方法。」

4 引用例の記載と引用発明
(1)原査定の拒絶理由で引用した,本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2005-203730号公報(以下「引用例1」という。)には,「絶縁膜,半導体素子,電子デバイスおよび電子機器」(発明の名称)に関して,図1ないし図13と共に以下の記載がある。(下線は当審において付した。以下同じ。)

(引1a)「【0049】
<3> 次に,図5(b)に示すように,半導体基板2上に,ゲート絶縁膜3を形成する。
I:シリコン酸化膜
ゲート絶縁膜3として,シリコン酸化(SiO_(2))膜を形成する場合には,例えば熱酸化法,CVD法(化学蒸着法)等を用いることができる。
【0050】
I-1:熱酸化法
熱酸化法は,加熱したシリコン基板(半導体基板2)に,酸素原子を含むガスを供給することにより,シリコン基板の表面に,シリコン酸化膜を形成する方法である。
加熱の温度(加熱温度)は,300?1000℃程度であるのが好ましく,500?800℃程度であるのがより好ましい。
【0051】
加熱の時間(加熱時間)は,目的とするシリコン酸化膜の厚さに応じて適宜設定すればよく,特に限定されないが,例えば,加熱温度を前記範囲とする場合には,10?90分程度であるのが好ましく,20?60分程度であるのがより好ましい。
また,酸素原子を含むガスとしては,例えば,酸素(純酸素),オゾン,過酸化水素,水蒸気,一酸化窒素,二酸化窒素,酸化二窒素等が挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
I-2:CVD法
CVD法は,所定圧力のチャンバ内に,シリコン酸化物前駆体と酸素原子を含むガスとを導入し,シリコン基板(半導体基板2)を加熱することにより,シリコン基板の表面に,シリコン酸化膜を形成する方法である。
シリコン酸化物前駆体としては,例えば,ジクロロシラン,ヘキサクロロジシラン,テトラキス(ヒドロカルビルアミノ)シラン,トリス(ヒドロカルビルアミノ)シラン等が挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
酸素原子を含むガスとしては,例えば,酸素(純酸素),オゾン,過酸化水素,水蒸気,一酸化窒素,二酸化窒素,酸化二窒素等が挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
加熱の温度(加熱温度)は,300?1000℃程度であるのが好ましく,500?800℃程度であるのがより好ましい。
【0054】
加熱の時間(加熱時間)は,目的とするシリコン酸化膜の厚さに応じて適宜設定すればよく,特に限定されないが,例えば,加熱温度を前記範囲とする場合には,10?90分程度であるのが好ましく,20?60分程度であるのがより好ましい。
チャンバ内の圧力(真空度)は,0.05Torr?大気圧(760Torr)程度であるのが好ましく,0.1?500Torr程度であるのがより好ましい。
また,シリコン酸化物前駆体と酸素原子を含むガスとの混合比は,モル比で10:1?1:100程度であるのが好ましく,1:2?1:10程度であるのがより好ましい。」

(引1b)「【実施例】
【0081】
次に,本発明の具体的実施例について説明する。
1.絶縁膜の作製および評価
1-1.絶縁膜の作製
以下に示す各実施例および各比較例において,それぞれ,2つの絶縁膜を形成した。
(実施例1)
-1A- 面方位(100)のp型シリコン結晶基板を用意し,熱酸化処理によりシリコン酸化膜を形成した。
熱酸化処理は,相対湿度33%RHの水蒸気(H_(2)O)雰囲気中,750℃で行った。
得られたシリコン酸化膜は,4.2nmであった。」

(引1c)「(実施例3)
-1B- まず,面方位(100)のp型シリコン結晶基板を用意し,熱酸化処理を施した後,CVD法によりシリコン酸窒化膜を形成した。
熱酸化処理は,相対湿度33%RHの水蒸気(H_(2)O)雰囲気中,750℃で行った。
また,CVD法は,チャンバ内の圧力を0.02Paとし,ジクロロシランアンモニアのガスを供給しつつ,650℃×40分で行った。
得られたシリコン酸窒化膜の平均厚さは,3.7nmであった。」

・引用発明
上記記載に照らして,引用例1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「半導体基板上に,CVD法(化学蒸着法)を用いて,ゲート絶縁膜として,シリコン酸化(SiO_(2))膜を形成する方法であって,
前記CVD法は,所定圧力のチャンバ内に,シリコン酸化物前駆体と酸素原子を含むガスとを導入し,シリコン基板(半導体基板)を加熱することにより,シリコン基板の表面に,シリコン酸化膜を形成するものであり,
前記シリコン酸化物前駆体としては,例えば,ジクロロシラン,ヘキサクロロジシラン,テトラキス(ヒドロカルビルアミノ)シラン,トリス(ヒドロカルビルアミノ)シラン等が挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ,
前記酸素原子を含むガスとしては,例えば,酸素(純酸素),オゾン,過酸化水素,水蒸気,一酸化窒素,二酸化窒素,酸化二窒素等が挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ,
前記加熱の温度(加熱温度)は,300?1000℃程度であるのが好ましく,500?800℃程度であるのがより好ましく,
前記加熱の時間(加熱時間)は,目的とするシリコン酸化膜の厚さに応じて適宜設定すればよく,特に限定されないが,例えば,加熱温度を前記範囲とする場合には,10?90分程度であるのが好ましく,20?60分程度であるのがより好ましく,
前記チャンバ内の圧力(真空度)は,0.05Torr?大気圧(760Torr)程度であるのが好ましく,0.1?500Torr程度であるのがより好ましく,
また,前記シリコン酸化物前駆体と前記酸素原子を含むガスとの混合比は,モル比で10:1?1:100程度であるのが好ましく,1:2?1:10程度であるのがより好ましい,
シリコン酸化(SiO_(2))膜を形成する方法。」

5 当審の判断
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「半導体基板」,「シリコン酸化(SiO_(2))膜」,「チャンバ」,及び,「『CVD法(化学蒸着法)を用いて』『シリコン基板(半導体基板)を加熱することにより,シリコン基板の表面に,シリコン酸化膜を形成する』」は,それぞれ,本願発明1の「基板」,「誘電体膜」,「プロセスチャンバ」,及び,「『非プラズマ化学気相成長によって』『基板上にシリコン酸化膜を熱的に堆積する』」に相当する。

イ シリコン酸化物前駆体と酸素原子を含むガスは,シリコン基板の表面にシリコン酸化膜を形成するものであるから,引用発明の,「『例えば,ジクロロシラン,ヘキサクロロジシラン,テトラキス(ヒドロカルビルアミノ)シラン,トリス(ヒドロカルビルアミノ)シラン等が挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ』る『シリコン酸化物前駆体』」,及び,「『例えば,酸素(純酸素),オゾン,過酸化水素,水蒸気,一酸化窒素,二酸化窒素,酸化二窒素等が挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ』る『酸素原子を含むガス』」は,いずれも,シリコン酸化膜の形成における「プロセスガス」であるといえる。
そうすると,引用発明の「前記CVD法は,所定圧力のチャンバ内に,シリコン酸化物前駆体と酸素原子を含むガスとを導入し,シリコン基板(半導体基板)を加熱することにより,シリコン基板の表面に,シリコン酸化膜を形成するものであり,前記シリコン酸化物前駆体としては,例えば,ジクロロシラン,ヘキサクロロジシラン,テトラキス(ヒドロカルビルアミノ)シラン,トリス(ヒドロカルビルアミノ)シラン等が挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ,前記酸素原子を含むガスとしては,例えば,酸素(純酸素),オゾン,過酸化水素,水蒸気,一酸化窒素,二酸化窒素,酸化二窒素等が挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ」と,本願発明1の「『前記プロセスチャンバへ水蒸気を含む第1プロセスガスを流入させる工程;前記プロセスチャンバへジクロロシラン(DCS)を含む第2プロセスガスを流入させる工程;』『前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスとを反応させて,非プラズマ化学気相成長によって前記複数の基板上にシリコン酸化膜を熱的に堆積する工程』」とは,プロセスチャンバへ第1プロセスガスを流入させる工程,及び,プロセスチャンバへ第2プロセスガスを流入させる工程を含む,前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスとを反応させて,非プラズマ化学気相成長によって基板上にシリコン酸化膜を熱的に堆積する方法である点で一致する。

ウ 引用発明の「『前記CVD法は,所定圧力のチャンバ内に,シリコン酸化物前駆体と酸素原子を含むガスとを導入し,シリコン基板(半導体基板)を加熱することにより,シリコン基板の表面に,シリコン酸化膜を形成するものであり』『前記加熱の温度(加熱温度)は,300?1000℃程度であるのが好ましく,500?800℃程度であるのがより好ましく』『前記チャンバ内の圧力(真空度)は,0.05Torr?大気圧(760Torr)程度であるのが好ましく,0.1?500Torr程度であるのがより好ましく』」と,本願発明1の「『前記プロセスチャンバを400℃乃至650℃未満の堆積温度にまで加熱する工程』『前記プロセスチャンバ内でのガス圧力を2Torr未満に設定する工程』『前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスとを反応させて,非プラズマ化学気相成長によって前記複数の基板上にシリコン酸化膜を熱的に堆積する工程』」とは,所定の堆積温度にまで加熱する工程,及び,前記プロセスチャンバ内でのガス圧力を所定の圧力に設定する工程を含む,第1プロセスガスと第2プロセスガスとを反応させて,非プラズマ化学気相成長によって基板上にシリコン酸化膜を熱的に堆積する方法である点で一致する。

エ そうすると,本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>
「基板上に誘電体膜を堆積する方法であって:
プロセスチャンバ内に基板を設置する工程;
所定の堆積温度にまで加熱する工程;
前記プロセスチャンバへ第1プロセスガスを流入させる工程;
前記プロセスチャンバへ第2プロセスガスを流入させる工程;
前記プロセスチャンバ内でのガス圧力を所定の圧力に設定する工程;及び,
前記第1プロセスガスと前記第2プロセスガスとを反応させて,非プラズマ化学気相成長によって前記基板上にシリコン酸化膜を熱的に堆積する工程;
を有する方法。」

<相違点>
・相違点1:本願発明1では,プロセスチャンバ内に「複数」の基板を設置して,前記「複数」の基板上にシリコン酸化膜を堆積するのに対して,引用発明では,基板が「単数」であるか「複数」であるかについて特定されていない点。

・相違点2:本願発明1が,「プロセスチャンバ」を堆積温度にまで加熱するのに対して,引用発明では,チャンバを加熱することが特定されていない点。

・相違点3:一致点に係る構成である,第1プロセスガスと第2プロセスガスとを反応させて,非プラズマ化学気相成長によって基板上にシリコン酸化膜を熱的に堆積する方法において,本願発明1では,第1プロセスガスと第2プロセスガスとが,それぞれ,「水蒸気を含む第1プロセスガス」,及び,「ジクロロシラン(DCS)を含む第2プロセスガス」であるのに対して,引用発明では,「『例えば,酸素(純酸素),オゾン,過酸化水素,水蒸気,一酸化窒素,二酸化窒素,酸化二窒素等が挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ』る『酸素原子を含むガス』」,及び,「『例えば,ジクロロシラン,ヘキサクロロジシラン,テトラキス(ヒドロカルビルアミノ)シラン,トリス(ヒドロカルビルアミノ)シラン等が挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ』る『シリコン酸化物前駆体』『を含むガス』」である点。

・相違点4:一致点に係る構成である,第1プロセスガスと第2プロセスガスとを反応させて,非プラズマ化学気相成長によって基板上にシリコン酸化膜を熱的に堆積する方法において,本願発明1では,堆積温度が,「400℃乃至650℃未満」であって,プロセスチャンバ内でのガス圧力を「2Torr未満」に設定するのに対して,引用発明では,「加熱の温度(加熱温度)は,300?1000℃程度であるのが好ましく,500?800℃程度であるのがより好ましく」,「前記チャンバ内の圧力(真空度)は,0.05Torr?大気圧(760Torr)程度であるのが好ましく,0.1?500Torr程度であるのがより好まし」いとされている点。

(2)判断
・相違点1について
ア 以下の周知例1,2の記載から,本願の優先権の主張の日前において,プロセスチャンバ内に「複数」の基板を設置して,前記「複数」の基板上に減圧CVDを行う,いわゆる,バッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD装置が広く使用されていたことが認められる。

イ そして,引用発明を実施するにあたり,シリコン酸化(SiO_(2))膜を形成する装置として,前記バッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD装置を選択して用いること,すなわち,プロセスチャンバ内に「複数」の基板を設置して,前記「複数」の基板上にシリコン酸化膜を堆積することは,前記装置が広く使用されていたことに照らして,当業者が適宜なし得たことといえる。
すなわち,引用発明において,上記相違点1について本願発明1の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

・周知例1:特開2006-173157号公報(本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物)
(周1a)「【背景技術】
【0002】
ICの製造方法において,半導体素子を含む集積回路が作り込まれる半導体ウエハ(以下,ウエハという。)に窒化シリコン(Si_(3 )N_(4) )や酸化シリコンおよびポリシリコン等のCVD膜を形成するのに,バッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD装置が広く使用されている。
バッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD装置(以下,CVD装置という。)は,ウエハが搬入されるインナチューブおよびインナチューブを取り囲むアウタチューブから構成されて縦形に設置されたプロセスチューブと,プロセスチューブによって形成された処理室に処理ガスとしての成膜ガスを供給するガス供給管と,処理室を真空排気する排気管と,プロセスチューブ外に敷設されて処理室を加熱するヒータユニットと,ボートエレベータによって昇降されて処理室の炉口を開閉するシールキャップと,シールキャップの上に垂直に設置されて複数枚のウエハを保持するボートとを備えており,複数枚のウエハがボートによって垂直方向に整列されて保持された状態で処理室に下端の炉口から搬入(ボートローディング)され,シールキャップによって炉口が閉塞された状態で,処理室に成膜ガスがガス供給管から供給されるとともに,ヒータユニットによって処理室が加熱されることにより,ウエハの上にCVD膜が堆積するように構成されている。」

・周知例2:特開2009-260262号公報(本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物)
(周2a)「【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,本発明の熱処理装置,熱処理装置の温度調整方法,及び,プログラムを,図1に示すバッチ式の縦型の熱処理装置に適用した場合を例に本実施の形態を説明する。また,本実施の形態では,成膜用ガスとして,ジクロロシラン(SiH_(2)Cl_(2))と一酸化二窒素(N_(2)O)とを用いて,半導体ウエハにSiO_(2)膜を形成する場合を例に本発明を説明する。
【0017】
図1に示すように,本実施の形態の熱処理装置1は,略円筒状で有天井の反応管2を備えている。反応管2は,その長手方向が垂直方向に向くように配置されている。反応管2は,耐熱及び耐腐食性に優れた材料,例えば,石英により形成されている。
【0018】
反応管2の下側には,略円筒状のマニホールド3が設けられている。マニホールド3は,その上端と反応管2の下端とが気密に接合されている。マニホールド3には,反応管2内のガスを排気するための排気管4が気密に接続されている。排気管4には,バルブ,真空ポンプなどからなる圧力調整部5が設けられており,反応管2内を所望の圧力(真空度)に調整する。
【0019】
マニホールド3(反応管2)の下方には,蓋体6が配置されている。蓋体6は,ボートエレベータ7により上下動可能に構成され,ボートエレベータ7により蓋体6が上昇するとマニホールド3(反応管2)の下方側(炉口部分)が閉鎖され,ボートエレベータ7により蓋体6が下降すると反応管2の下方側(炉口部分)が開口されるように配置されている。
【0020】
蓋体6の上部には,保温筒(断熱体)8を介して,ウエハボート9が設けられている。ウエハボート9は,被処理体,例えば,半導体ウエハWを収容(保持)するウエハ保持具であり,本実施の形態では,半導体ウエハWが垂直方向に所定の間隔をおいて複数枚,例えば,150枚収容可能に構成されている。そして,ウエハボート9に半導体ウエハWを収容し,ボートエレベータ7により蓋体6を上昇させることにより,半導体ウエハWが反応管2内にロードされる。
【0021】
反応管2の周囲には,反応管2を取り囲むように,例えば,抵抗発熱体からなるヒータ部10が設けられている。このヒータ部10により反応管2の内部が所定の温度に加熱され,この結果,半導体ウエハWが所定の温度に加熱される。ヒータ部10は,例えば,5段に配置されたヒータ11?15から構成され,ヒータ11?15には,それぞれ電力コントローラ16?20が接続されている。このため,この電力コントローラ16?20にそれぞれ独立して電力を供給することにより,ヒータ11?15をそれぞれ独立に所望の温度に加熱することができる。このように,反応管2内は,このヒータ11?15により,後述する図3に示すような5つのゾーンに区分されている。」

・相違点2について
上記「相違点1について」で検討したように,引用発明を実施するにあたり,シリコン酸化(SiO_(2))膜を形成する装置として,いわゆるバッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD装置を選択して用いることは,当業者が適宜なし得たことといえる。
そして,バッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD装置は,ウエハと,当該ウエハを収容するプロセスチューブによって形成された処理室とを取り囲むように,その周囲に,ヒータユニットが敷設された構造を有し,前記ヒータユニットが,ウエハを所定の温度に加熱して,ウエハ上にSiO_(2)膜を形成するものである。
そうすると,前記ウエハを所定の温度に加熱する際に,当該ウエハを収容するプロセスチューブによって形成された処理室もまた,前記ヒータユニットによって加熱されることは明らかといえる。
したがって,引用発明において,所定圧力のチャンバ内に,シリコン酸化物前駆体と酸素原子を含むガスとを導入し,シリコン基板(半導体基板)を加熱することにより,シリコン基板の表面に,シリコン酸化膜を堆積するにあたり,前記チャンバを堆積温度にまで加熱すること,すなわち,引用発明において,相違点2について本願発明1の構成を採用することは当業者が適宜なし得たことである。

・相違点3について
引用例1の(引1b)に記載された「実施例1」,及び,(引1c)に記載された「実施例3」のいずれにおいても,「酸素原子を含むガス」として,水蒸気を含むガスが用いられていることに照らして,「酸素原子を含むガス」として,水蒸気を含むガスを用いることは格別のこととは認められない。
また,以下の周知例3,4の記載から,縦型熱処理装置に水蒸気を供給することも周知といえる。
さらに,「例えば,ジクロロシラン,ヘキサクロロジシラン,テトラキス(ヒドロカルビルアミノ)シラン,トリス(ヒドロカルビルアミノ)シラン等が挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ」るとされるシリコン酸化物前駆体の候補から,筆頭に例示されている材料を含むガスを選択することに困難は認められない。
そうすると,シリコン酸化物前駆体と酸素原子を含むガスとを導入し,シリコン基板(半導体基板)を加熱することにより,シリコン基板の表面に,シリコン酸化膜を形成する引用発明において,「例えば,酸素(純酸素),オゾン,過酸化水素,水蒸気,一酸化窒素,二酸化窒素,酸化二窒素等が挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ」ると例示される酸素原子を含むガスの候補から,水蒸気を含むガスを選択し,「例えば,ジクロロシラン,ヘキサクロロジシラン,テトラキス(ヒドロカルビルアミノ)シラン,トリス(ヒドロカルビルアミノ)シラン等が挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ」るとされるシリコン酸化物前駆体の候補から,ジクロロシランを含むガスを選択することは当業者が適宜なし得たことと認められる。
すなわち,引用発明において,上記相違点3について本願発明1の構成を採用することは当業者が適宜なし得たことである。

・周知例3:特開平4-206631号公報(本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物)
(周3a)「一般に,熱処理装置は半導体デバイスの製造工程における熱拡散工程や成膜工程で使用される。」(第1ページ左下欄第19-20行)

(周3b)「また,上記プロセスチューブ1の外側には,プロセスチューブ1を囲繞する如くヒータ5が配設されており,プロセスチューブ1内を所望の温度に加熱可能に構成されている。なお,プロセスチューブ1とヒータ5との間には必要に応じて図示しない均熱管が設けられ,ヒータ5の外側等には,図示しない断熱材等が設けられる。
また,プロセスチューブ1の下部には,図示しない駆動機構により上下動可能に構成されたボートエレベータ7が設けられている。
上記構成のこの実施例の縦型熱処理装置では,ヒータ5に通電することにより,予めプロセスチューブ1内を所定温度に加熱しておき,ポートエレべータ7上に多数枚(例えば150枚程度)の半導体ウェハ8を所定間隔例えば4.7mm間隔で配列した耐熱性材料例えば石英からなるウェハボード9を載置し,プロセスチューブ1内に,半導体ウェハ8をロードする。
そして,ガス導入配管2からプロセスチューブ1内に処理ガス(例えば酸素と水素を燃焼させる図示しない燃焼装置からの水蒸気)を供給し,排気配管3から排気を行うことにより,プロセスチューブ1内を所定の処理ガス雰囲気として,半導体ウェハ8に所定の処理(例えば酸化処理)を施す。」(第2ページ右下欄第12行-第3ページ左上欄第16行)

(周3c)「なお,上記実施例では,本発明を縦型熱処理装置に適用した例について説明したが,本発明はかかる実施例に限定されるものではなく,例えば横型の熱処理装置等にも適用することができる。また,熱交換部4の構造は,二重管構造に限らず,処理ガスと排気ガスとの熱交換が効率良く行われる構造であれば拡散装置やCVD装置やプラズマCVD装置等どのようなものでもよく,各種の変形が実施可能である。」(第3ページ左下欄第2-10行)

・周知例4:特開平7-29842号公報(本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物)
(周4a)「【0002】
【従来の技術】半導体装置の製造工程には,ウエハを加熱する様々な熱処理工程がある。例えば,ウエハ表面に酸化膜を成膜する方法の一つに,高温に保った反応炉中にウエハを収納しその反応炉に水蒸気を含むガスを供給することによって,ウエハ表面に酸化膜を成膜する方法がある。
【0003】以下,上記の酸化膜の成膜方法に用いる熱処理装置を,図2に基づいて説明する。この熱処理装置2は,内部に試料3となるウエハを収納する反応炉201と,反応ガスを生成する燃焼室202とを備えている。反応炉201は,内部石英管203と外部石英管204とを,ガス導入部205となる隙間を設けて二重に配置し,外部石英管204の外側にヒーター206を配置したものである。内部石英管203の上方には,ガス導入口207が開口しており,反応炉201の内部とガス導入部205とは,このガス導入口207で繋がっている。そして,ガス導入部205には,供給管208を介して上記の燃焼室202が連通している。また,排気ガスをドライエアと水分とに分離して排出するトラップ部209が,排気管210を介して反応炉201に連通している。」

(周4b)図2は,従来例の熱処理装置の構成図であって,上記(周4a)の記載を参照すれば,同図から,「従来例の熱処理装置」が,縦型熱処理装置であることを見て取ることができる。

・相違点4について
CVD法において,加熱温度,チャンバ内の圧力等の堆積条件の違いによって,薄膜の堆積速度や,薄膜の特性(膜質)が異なるものとなることは周知である。
一方,薄膜において,その用途に応じて,必要とされる特性(膜質)が異なることは明らかである。
そうすると,CVD法によって,薄膜を堆積するにあたり,その薄膜が用いられる用途に応じて,必要とされる特性(膜質)が得られるように,当該CVD法における,加熱温度,チャンバ内の圧力等の堆積条件を選択することは当業者が適宜なし得たことといえる。
そして,その際に,引用発明において「前記加熱の温度(加熱温度)は,300?1000℃程度であるのが好ましく,500?800℃程度であるのがより好ましく」,「前記チャンバ内の圧力(真空度)は,0.05Torr?大気圧(760Torr)程度であるのが好ましく,0.1?500Torr程度であるのがより好ましく」とされる堆積条件の中から,堆積温度が,「400℃乃至650℃未満」であって,プロセスチャンバ内でのガス圧力を「2Torr未満」の範囲に含まれる値を選択することは,格別のこととは認められない。
すなわち,引用発明において,上記相違点4について本願発明1の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

・効果について
引用発明において,相違点1ないし4を採用したことによる効果は,発明の詳細な説明の記載からは,格別のものとは認められない。

・審判請求人の審判請求の理由における主張について
ア 審判請求人は,審判請求の理由において,以下のように主張する。
「引用文献1は段落[0053]において『酸素原子を含むガスとしては,例えば,酸素(純酸素),オゾン,過酸化水素,水蒸気,一酸化窒素,二酸化窒素,酸化二窒素等が挙げられ』(下線は引用者による)と記載しております。一方,本願明細書の段落[0008]等によると,本願発明の実施形態は,基板上でのジクロロシラン(DCS)と亜酸化窒素(N_(2)O)との反応に依拠した業界標準の高温酸化(HTO)プロセスよりも低温を利用しながら,良好な材料及び電気特性を備える二酸化シリコン膜とシリコン酸窒化膜の高い堆積速度を実現しております。」

イ 本願の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
「【0023】
図4は,本発明の実施例によるシリコン酸化物の堆積速度をDCS流の関数として表している。成膜条件は,発熱性トーチ18及び水蒸気発生装置を流れる100sccmのH_(2)ガス流と100sccmのO_(2)ガス流を含んでいた。その条件により水蒸気が生成される。200sccmのN_(2)希釈ガス流が,水蒸気を含む第1プロセスガスの希釈に用いられた。0.2Torrの処理圧力がシリコン酸化膜の堆積中に設定された。堆積温度は450℃?600℃まで変化した。シリコン酸化膜の厚さは約100Å未満だった。DCSのガス流速は10sccm?20sccmまで変化した。図4は,DCS流速が増大する結果,450℃?500℃の堆積温度でのシリコン酸化物の堆積速度は約3-4Å/min?約9-10Å/minに増大し,600℃の堆積温度でのシリコン酸化物の堆積速度は約6Å/min?約11Å/minに増大することを示している。さらに比較のため,図4は,シリコン酸化膜の堆積速度が,基板表面上でDCSとN_(2)Oとを反応させる従来のHTOプロセスを用いることによって,810℃の堆積温度でわずか2Å/minであり,かつ,堆積速度はDCSの流速に対して実質的に独立していることを示している。」

そうすると,本願の発明の詳細な説明の記載からは,「発熱性トーチ18及び水蒸気発生装置を流れる100sccmのH_(2)ガス流と100sccmのO_(2)ガス流を含んでいた。その条件により水蒸気が生成される。200sccmのN_(2)希釈ガス流が,水蒸気を含む第1プロセスガスの希釈に用いられた。0.2Torrの処理圧力がシリコン酸化膜の堆積中に設定された。堆積温度は450℃?600℃まで変化した。」という成膜条件を満たす場合に,「DCSのガス流速」が「10sccm?20sccm」で,「450℃?500℃の堆積温度」,及び,「600℃の堆積温度」でのシリコン酸化物の堆積速度が,基板表面上でDCSとN_(2)Oとを反応させる従来のHTOプロセスを用いた場合よりも高い堆積速度を実現することが理解される。
しかしながら,本願の請求項1は,「プロセスチャンバ内でのガス圧力を2Torr未満に設定する」ことを発明特定事項とするから,本願発明1は,プロセスチャンバ内でのガス圧力が,発明の詳細な説明で用いられた堆積条件である,前記「0.2Torrの処理圧力」よりも遙かに小さい処理圧力である場合をも包含する発明といえる。
また,本願の請求項1は,「プロセスチャンバ内でのガス圧力」を特定するだけであって,「DCSのガス流速」を何ら特定するものではないから,本願発明1は,「DCSのガス流速」が,「10sccm」よりも小さい場合を包含する発明であるともいえる。
他方,プロセスチャンバ内でのガス圧力,及び,DCSのガス流速が小さくなると,シリコン酸化物の堆積速度が低くなることは明らかである。
そうすると,「プロセスチャンバ内でのガス圧力」の下限,「DCSのガス流速」等の条件が特定されていない本願発明1において,基板表面上でDCSとN_(2)Oとを反応させる従来のHTOプロセスを用いた場合よりも高い堆積速度が,常に実現するとは認めることはできない。
したがって,「本願発明の実施形態は,基板上でのジクロロシラン(DCS)と亜酸化窒素(N_(2)O)との反応に依拠した業界標準の高温酸化(HTO)プロセスよりも低温を利用しながら,・・・二酸化シリコン膜とシリコン酸窒化膜の高い堆積速度を実現しております。」との審判請求人の主張は,請求項の記載に基づかない主張であって採用することはできない。

ウ さらに,発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
「【0024】
図5は,本発明の実施例による様々なシリコン酸化膜の湿式エッチング速度をN_(2)堆積後温度の関数として表している。湿式エッチング速度はシリコン酸化膜の材料品質の指標である。高品質のシリコン酸化膜は,低品質のシリコン酸化膜よりも遅く湿式エッチングされる。続いて堆積されたシリコン酸化膜は,(堆積)プロセスチャンバ内で,0.5Torrの処理圧力かつN_(2)ガスの存在する状態において様々な温度にて1時間熱処理された。熱処理に続いて,二酸化シリコン膜には,希釈HF(H_(2)O:HF=200:1)で2.5分間の湿式エッチング処理が施される。エッチング速度は,50sccmの流速のDCSガスと100sccmの流速のN_(2)Oガス流を用いることによって,800℃で堆積された基本となるHTOシリコン酸化膜のエッチング速度に規格化される。図5は,そのまま堆積されたシリコン酸化膜については,堆積温度又はDCSガス流速が大きくなる結果,湿式エッチング速度が増大することを示している。さらに堆積後熱処理温度が増大すればするほど,10sccmのDCSガス流束を用いて堆積されたシリコン酸化膜の湿式エッチング速度は低下する。」
また,図5から,左端の「No Heattreating」の条件の場合,規格化されたエッチング速度が,いずれも2.0以上を示していることが読み取れる。

そうすると,本願の発明の詳細な説明の記載からは,堆積後に熱処理を行わない場合には,シリコン酸化膜の品質は,800℃で堆積された基本となるHTOシリコン酸化膜と比べて劣ることが理解される。
してみれば,審判請求人の前記「本願発明の実施形態は,基板上でのジクロロシラン(DCS)と亜酸化窒素(N_(2)O)との反応に依拠した業界標準の高温酸化(HTO)プロセスよりも低温を利用しながら,良好な材料及び電気特性を備える二酸化シリコン膜とシリコン酸窒化膜の高い堆積速度を実現しております。」との主張は,発明の詳細な説明の記載と整合しないから採用することはできない。

エ 審判請求人は,審判請求の理由において,さらに以下のように主張する。
「また,本願明細書の段落[0009]等によると,本願発明は,シリコン酸窒化膜を生成するため,N_(2)O酸化剤を水蒸気酸化剤と任意でNOガスに置き換えることで,基本的なHTOプロセスに匹敵する低い湿式エッチング速度を含む良好な材料特性をシリコン酸窒化膜に供しながら,堆積温度を100℃以上,200℃以上,またさらには300℃以上(たとえば350℃まで)低下させることを可能にしております。上記の亜酸化窒素(N_(2)O)は,引用文献1に記載の酸化二窒素(一酸化二窒素)の別名であると思料いたします。従って,拒絶理由通知において『引用文献1において,引用文献1に記載の範囲のガス圧力や堆積温度の条件を調整して,400?650℃かつ2Torr未満の条件で成膜しようとすることは,当業者にとって容易である』と記載されておりますが,本願発明によって達成される低下させられる堆積温度は,引用文献1が,シリコン酸化膜及びシリコン酸窒化膜を生成するために,酸素原子を含むガスとして酸化二窒素を使用した場合には達成することができません。従って,本願発明に想到するために,当業者が引用文献1を参考にすることはないと思料いたします。
従って,本願発明は,引用文献1及び2から容易に想到できるものではありません。」

オ しかしながら,上記「相違点3について」で検討したように,シリコン酸化物前駆体と酸素原子を含むガスとを導入し,シリコン基板(半導体基板)を加熱することにより,シリコン基板の表面に,シリコン酸化膜を形成する引用発明において,「例えば,酸素(純酸素),オゾン,過酸化水素,水蒸気,一酸化窒素,二酸化窒素,酸化二窒素等が挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ」ると例示される酸素原子を含むガスの候補から,水蒸気を含むガスを選択し,「例えば,ジクロロシラン,ヘキサクロロジシラン,テトラキス(ヒドロカルビルアミノ)シラン,トリス(ヒドロカルビルアミノ)シラン等が挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ」るとされるシリコン酸化物前駆体の候補から,ジクロロシランを含むガスを選択することは当業者が容易になし得たことと認められるものである。
一方,審判請求人の「本願発明によって達成される低下させられる堆積温度は,引用文献1が,シリコン酸化膜及びシリコン酸窒化膜を生成するために,酸素原子を含むガスとして酸化二窒素を使用した場合には達成することができません。」との主張は,「シリコン酸化膜及びシリコン酸窒化膜を生成するために,酸素原子を含むガスとして酸化二窒素を使用した場合」を前提としたものである。
そうすると,酸素原子を含むガスの候補から,水蒸気を含むガスを選択した場合においては,審判請求人の前記主張は前提を欠くものとなるから,審判請求人の前記主張は採用することがはできない。
また,「本願発明は,シリコン酸窒化膜を生成するため,N_(2)O酸化剤を水蒸気酸化剤と任意でNOガスに置き換えることで,基本的なHTOプロセスに匹敵する低い湿式エッチング速度を含む良好な材料特性をシリコン酸窒化膜に供しながら,堆積温度を100℃以上,200℃以上,またさらには300℃以上(たとえば350℃まで)低下させることを可能にしております。」との主張は,請求項1に記載された発明特定事項には基づかない主張であるから,採用することはできない。

(3)判断についてのまとめ
以上のとおりであるから,引用発明において,相違点1ないし4に係る本願発明1の構成を採用することは,当業者であれば容易になし得たことである。
したがって,本願発明1は,引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって,本願発明1は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6 むすび
以上のとおりであるから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-18 
結審通知日 2017-05-23 
審決日 2017-06-05 
出願番号 特願2013-531729(P2013-531729)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (H01L)
P 1 8・ 574- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 573- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 正山 旭  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 河口 雅英
加藤 浩一
発明の名称 化学気相成長法による低温での誘電体膜の作製  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
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