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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1330699
審判番号 不服2015-21840  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-09 
確定日 2017-07-27 
事件の表示 特願2011- 58573「光電気混載基板およびその製法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月11日出願公開、特開2012-194401〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
平成23年 3月16日 特許出願
平成26年10月29日 拒絶理由通知(同年11月4日発送)
平成26年12月15日 意見書・手続補正書
平成27年 3月20日 拒絶理由通知(最後、同年3月24日発送)
平成27年 5月21日 意見書・手続補正書
平成27年 9月10日 補正の却下の決定(平成27年5月21日付け
手続補正)、拒絶査定(同年10月6日送達)
平成27年12月 9日 審判請求書・手続補正書
平成28年 4月19日 上申書
平成28年 4月25日 上申書
平成28年12月 2日 拒絶理由通知(同年12月6日発送、以下「当
審拒絶理由通知」という。)
平成29年 2月 2日 意見書・手続補正書

2 本願発明
本願の請求項1-4に係る発明は、平成29年2月2日付け手続補正により補正された請求項1-4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1は以下のとおりである。
「光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを結合させてなる光電気混載基板であって、上記光導波路ユニットが、アンダークラッド層と、このアンダークラッド層の表面に形成された光路用のコアと、このコアを被覆するオーバークラッド層と、このオーバークラッド層の表面に形成された電気回路ユニット位置決め用の嵌合穴とを備え、上記電気回路ユニットが、基板と、この基板上に形成された電気回路と、この電気回路の所定部分に実装された光学素子とを備え、上記基板の一部分が、上記嵌合穴に嵌合する突起部に形成されており、上記光導波路ユニットの上記嵌合穴が、上記コアの端面に対して所定位置に位置決め形成されているとともに、円柱状に形成され、上記電気回路ユニットの上記突起部が、上記光学素子の実装側と反対側の所定位置に位置決め形成されているとともに、円錐台状に形成され、上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとの結合が、上記光導波路ユニットの上記嵌合穴に、上記電気回路ユニットの上記突起部を嵌合させ、その突起部の先端面が上記嵌合穴内に位置した状態でなされていることを特徴とする光電気混載基板。」(以下「本願発明」という。)

3 当審拒絶理由通知
当審拒絶理由通知で通知した拒絶理由の概要は、本件出願の特許請求の範囲の請求項1(注:平成27年12月9日付け手続補正により補正された請求項1である。)に係る発明は、下記の刊行物1に記載された発明と下記の刊行物2?4に記載された周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。



・特開2005-292379号公報(以下「刊行物1」という。)
・特開平5-333251号公報(以下「刊行物2」という。)
・特開2004-279439号公報(以下「刊行物3」という。)
・特開2008-89879号公報(以下「刊行物4」という。)

4 引用発明
(1)刊行物1の記載事項
当審拒絶理由通知に引用した刊行物1には、図面とともに以下の事項が記載されている(当審注:下線は、当審が付加した。以下同様である。)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路が支持体に対して凹凸嵌合によって位置固定され、前記光導波路と他の光部品との光結合を行うための位置合わせ手段を有する、光結合装置。

【請求項5】
前記支持体に前記光導波路と共に前記他の光部品が実装され、この他の光部品が前記支持体に対し凹凸嵌合によって位置固定され、前記光導波路の光路と前記他の光部品の光路との位置合わせが行われている、請求項1に記載した光結合装置。」

イ 「【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明は、光導波路が支持体に対して凹凸嵌合によって位置固定され、前記光導波路と他の光部品との光結合を行うための位置合わせ手段を有する、光結合装置に係わり、また、前記光結合装置の製造方法であって、転写用基板に凹部又は凸部を形成する工程と、この凹部又は凸部を有する転写用基板面に光導波路材料を被着する工程と、前記光導波路を前記転写用基板から分離する工程と、前記支持体に対し前記光導波路を凹凸嵌合によって位置固定する工程とを有する、光結合装置の製造方法に係わるものである。」

ウ 「【発明の効果】
【0014】
本発明の光結合装置によれば、前記光導波路が前記支持体に対して前記凹凸嵌合によって位置固定され、前記光導波路と前記他の光部品との光結合を行うための位置合わせ手段が存在する。この際、前記光導波路が有する凸部又は凹部によって前記凹凸嵌合が行われるので、前記光導波路は、セルフアレンジメントで前記支持体の所定の位置に正しく位置固定され、前記支持体を介して他の光部品と正確に位置合わせされる。このため、マーカなどを用いる位置合わせに比べ大幅に手間が軽減され、生産性が向上し、光結合装置の低コスト化が実現される。前記凹凸嵌合において前記光導波路の基板はなくてもよいから、基板のないフィルム状の光導波路によるフレキシブルな光配線構造を実現することも可能になる。」

エ 「【0036】
実施の形態1
実施の形態1は、前記他の光部品として発光素子または受光素子である光素子が実装された、前記支持体としてのシリコンからなる実装基板に対し、フィルム状に形成された光導波路シートを、着脱可能な光コネクタの形態で結合させ、光素子の発光または受光部分と光導波路コアとの正確な光結合を実現する光結合装置である。光導波路シートと実装基板との位置合わせは、光導波路シートに形成された凸部と実装基板に形成された凹部との凹凸嵌合によって行われる。
【0037】
図1は、実施の形態1に基づく光結合装置の上面図であり、図2は、図1のA-A線の位置における断面図(a)と、B-B線の位置における断面図(b)とである。但し、図1の上面図では、下部の構造を分かりやすくするため、上蓋18と光導波路用サブマウント11とを点線で示している。
【0038】
図1と図2に示すように、光結合装置の一方である実装基板側部分では、実装基板3がプラスチック材またはセラミック材からなる実装基板用サブマウント1に保持されている。実装基板用サブマウント1には、光導波路シート13の側のガイドピン12と嵌め合わせるためのガイド孔2と、実装基板3の外形に合わせた浅い凹部とが設けられている。実装基板3は、この凹部に嵌め込んで接着することによって、ガイド孔2との相対位置が±50μm程度の精度で位置合わせされている。
【0039】
実装基板3としては、例えば、結晶方位(100)の単結晶シリコンウエハを用いる。この場合、0.05Ωcm以下の低抵抗シリコン基板を用いれば、基板全体を電気的なグラウンド(接地電極)にすることが可能となり、信号ラインへの雑音を低減でき、高周波動作が可能となる。
【0040】
実装基板3には、光導波路シート13との嵌合用の凹部4と光素子搭載用の凹部5とが設けられ、光素子搭載用凹部5には光素子アレイ7との電気的接続のための電極パッド6が形成されている。嵌合用凹部4と光素子搭載用凹部5とは、断面がほぼ逆台形状で、後述する異方性エッチングによって同時に形成されているため、高い相対位置精度を有している。このため、光素子アレイ7は、実装基板3の上に形成されたマーカ(図示省略)を目印にして、嵌合用凹部4に対して±2μm程度の高精度で光素子搭載用凹部5に実装されている。

【0042】
光結合装置の他方である光導波路シート側部分では、光導波路シート13が、プラスチック材またはセラミック材からなる光導波路用サブマウント11に保持されている。光導波路用サブマウント11には、実装基板3側のガイド孔2と嵌め合わせるためのガイドピン12と、光導波路シート13の横幅にあわせた浅い溝が設けられている。光導波路シート13は、この溝に嵌め込んで接着することによって、ガイドピン13との相対位置が±50μm程度の精度で位置合わせされている。
【0043】
光導波路シート13は、コア15とクラッド16との接合体からなり、導光路であるコア15が下部クラッドと上部クラッドとの間に挟持され、複数本並置されている。接合体は、フィルム状の平面光導波路になっており、光導波路シート13によるフレキシブルな光配線が可能になると共に、後述するように、熟成された半導体製造技術を用いて光導波路自体に嵌合のための凸部又は凹部を設けることができる。
【0044】
光導波路シート13の下部クラッド、コアおよび上部クラッドの各層は、屈折率のそれぞれ異なる公知の高分子材料を順次積層し、コア材料をパターニングすることによって形成されるが、コア15の屈折率はクラッド16の屈折率よりも大きい。各コア15は、それぞれ例えば40?50μm幅に形成され、光導波路シート13全体の厚さは、例えば100μm程度である。
【0045】
光導波路シート13の端部には、光反射面として、おおよそ45度に傾斜した傾斜端面17が形成されており、この傾斜端面17に対向して光素子アレイ7が配置されている。傾斜端面17の中心線の直下に光素子7の発光又は受光部8が配置されているのが、光導波路シート13と光素子7とが適性に光結合されている状態である。このとき、光素子7が発光素子であれば、発光素子の発光部8から傾斜端面17に入射した光が、傾斜端面17で反射され、コア15の内部へ導かれる。また、光素子7が受光素子である場合には、コア15の内部を伝播してきた光が、傾斜端面17で反射され、受光素子の受光部8へと導かれる。このように傾斜端面17による反射を利用すると、上面に発光部をもつ、上記VCSELなどの安価な面型発光素子(発光領域の大きさは、例えば10μm)を用いることができる利点がある。

【0070】
次に、図6(f)に示すように、下部クラッド層16aおよびコア層15の上に、下部クラッド層16aと同じ高分子有機材料を塗布し、紫外線照射や熱により硬化させ、上部クラッド層16bを形成する。

【0076】
なお、前記嵌合用凸部および凹部の形成方法は、単結晶シリコン基板の異方性エッチングによる方法に限るものではなく、例えば、高精度ダイング加工等によって基板を加工することにより、同様の構造を形成する場合もある。この場合、基板は単結晶シリコン基板に限らず、例えば、プラスチック基板、ガラス基板またはセラミック基板などを用いることができる。
【0077】
また、本実施の形態では、光導波路シート13に凸部14を形成し、実装基板3に凹部4を形成しているが、逆に、光導波路シート13に凹部を形成し、実装基板3に凸部を形成してもよい。」

ウ 図1、図2は、以下のとおりである。
【図1】

【図2】

(2)引用発明の認定
以下、刊行物1の特許請求の範囲の記載と、実施の形態1(【0036】?【0077】)の記載を参酌し、刊行物1に記載された発明を認定する。
ア 特許請求の範囲の【請求項1】、【請求項5】の記載によれば、
「光導波路が支持体に対して凹凸嵌合によって位置固定され、前記光導波路と他の光部品との光結合を行うための位置合わせ手段を有する、光結合装置であって、
前記支持体に前記光導波路と共に前記他の光部品が実装され、この他の光部品が前記支持体に対し凹凸嵌合によって位置固定され、前記光導波路の光路と前記他の光部品の光路との位置合わせが行われている、光結合装置。」
が開示されている。

イ 実施の形態1の【0036】の記載によれば、
「発光素子または受光素子である光素子が実装された、支持体としてのシリコンからなる実装基板に対し、フィルム状に形成された光導波路シートを、着脱可能な光コネクタの形態で結合させ、光素子の発光または受光部分と光導波路コアとの正確な光結合を実現する光結合装置であって、
光導波路シートと実装基板との位置合わせは、光導波路シートに形成された凸部と実装基板に形成された凹部との凹凸嵌合によって行われる、
光結合装置。」
が開示されている。

ウ 実施の形態1の【0077】の記載によれば、光導波路シートと実装基板に形成する凸部と凹部を逆にし、光導波路シートに凹部を形成し、実装基板に凸部を形成してもよい。

エ 実施の形態1の【0076】の記載によれば、実装基板は、単結晶シリコン基板に限らず、プラスチック基板、ガラス基板又はセラミック基板などを用いることができる。

オ 実施の形態1の【0043】の記載によれば、光導波路シートは、導光路であるコアが下部クラッドと上部クラッドとの間に挟持された接合体である。また、実施形態1の【0070】の記載によれば、上部クラッドと下部クラッドは、同じ高分子有機材料を硬化させたものである。

カ 実施の形態1の【0040】の記載によれば、実装基板には、光素子搭載用の凹部が設けられ、光素子搭載用凹部には、光素子との電気的接続のための電極パッドが形成されている。

キ 実施の形態1の【0045】の記載によれば、光導波路シートの端部には、光反射面として、おおよそ45度に傾斜した傾斜端面が形成されており、この傾斜端面に対向して光素子が配置され、傾斜端面の中心線の直下に光素子の発光又は受光部が配置されて、光導波路シートと光素子とが適性に光結合され、このとき、光素子が発光素子であれば、発光素子の発光部から傾斜端面に入射した光が、傾斜端面で反射され、コアの内部へ導かれ、また、光素子が受光素子である場合には、コアの内部を伝播してきた光が、傾斜端面で反射され、受光素子の受光部へと導かれる。

ク 上記(1)イの記載を踏まえて図1,図2を見ると、光導波路シートとの嵌合用の凹部と光素子搭載用の凹部は、実装基板の同じ面に設けられていることが看て取れる。

上記アの【請求項1】、【請求項5】に記載された「光導波路」、「他の光部品」は、それぞれ、上記イ?キの実施の形態1では「光導波路シート」、「光素子」である。してみると、刊行物1には、以下の発明が記載されている。
「フィルム状に形成された光導波路シートが支持体に対して凹凸嵌合によって位置固定され、前記光導波路シートと光素子との光結合を行うための位置合わせ手段を有する、光結合装置であって、
前記支持体に前記光導波路シートと共に前記光素子が実装され、この光素子が前記支持体に対し凹凸嵌合によって位置固定され、前記光導波路シートの光路と前記光素子の光路との位置合わせが行われており、
前記光素子は、発光素子または受光素子であり、
前記支持体は、単結晶シリコン基板、プラスチック基板、ガラス基板又はセラミック基板などからなる実装基板であり、
光導波路シートと実装基板との位置合わせは、光導波路シートに形成された凹部と実装基板に形成された凸部との凹凸嵌合によって行われ、
光導波路シートは、導光路であるコアが下部クラッドと上部クラッドとの間に挟持された接合体であり、上部クラッドと下部クラッドは同じ高分子有機材料を硬化させたものであり、
実装基板には、光素子搭載用の凹部が設けられ、光素子搭載用凹部には、光素子との電気的接続のための電極パッドが形成され、
光導波路シートとの嵌合用の凸部と光素子搭載用の凹部は、実装基板の同じ面に設けられ、
光導波路シートの端部には、光反射面として、おおよそ45度に傾斜した傾斜端面が形成されており、この傾斜端面に対向して光素子が配置され、傾斜端面の中心線の直下に光素子の発光又は受光部が配置されて、光導波路シートと光素子とが適性に光結合され、このとき、光素子が発光素子であれば、発光素子の発光部から傾斜端面に入射した光が、傾斜端面で反射され、コアの内部へ導かれ、また、光素子が受光素子である場合には、コアの内部を伝播してきた光が、傾斜端面で反射され、受光素子の受光部へと導かれる、
光結合装置。」(以下「引用発明」という。)

5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
ア 本願発明の「光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを結合させてなる光電気混載基板」と、引用発明の「フィルム状に形成された光導波路シートが支持体に対して凹凸嵌合によって位置固定され、前記光導波路シートと光素子との光結合を行うための位置合わせ手段を有する、光結合装置」であって、「前記支持体は、…実装基板であり、」「前記支持体に…前記光素子が実装され」、「実装基板には、光素子搭載用の凹部が設けられ、光素子搭載用凹部には、光素子との電気的接続のための電極パッドが形成され」ている「光結合装置」を対比する。
(ア)引用発明の「光導波路シート」は本願発明の「光導波路ユニット」に相当し、以下同様に、「光素子」は「光学素子」に、「光結合装置」は「光電気混載基板」に、それぞれ相当する。
(イ)引用発明は、光素子との電気的接続のための「電極パッド」を実装基板の光搭載用凹部に形成し、光素子と電気的に接続しているから、実装基板には、電極パッドに電気信号を印加する電気配線等も形成されているものと認められる。そうすると、引用発明の「電極パッド」や電極パッドに電気信号を印加する電気配線等は、本願発明の「電気回路」に相当する。してみると、引用発明の光素子が実装され、素子との電気的接続のための電極パッドが形成されている「実装基板」である「支持体」は、本願発明の「光学素子が実装された電気回路ユニット」に相当する。
(ウ)したがって、両者は、相当関係にある。

イ 本願発明の「上記光導波路ユニットが、アンダークラッド層と、このアンダークラッド層の表面に形成された光路用のコアと、このコアを被覆するオーバークラッド層と、このオーバークラッド層の表面に形成された電気回路ユニット位置決め用の嵌合穴とを備え」ることと、引用発明の「光導波路シートは、導光路であるコアが下部クラッドと上部クラッドとの間に挟持された接合体であり」、光導波路シートには、「実装基板に形成された凸部」と凹凸嵌合する「凹部」が形成されていることを対比する。
(ア)引用発明の「光導波路シート」は本願発明の「光導波路ユニット」に相当し、以下同様に、「下部クラッド」は「アンダークラッド層」に、「コア」は「コア」に、「上部クラッド」は「オーバークラッド層」に、光導波路シートに形成されている「凹部」は「嵌合穴」に、それぞれ相当する
(イ)引用発明の光導波路シートに形成されている「凹部」は、実装基板に形成された凸部と凹凸嵌合するものであるから、前記「凹部」は、光導波路シートの表面、すなわちクラッドに形成されるものである。
(ウ)してみると、両者は、「上記光導波路ユニットが、アンダークラッド層と、このアンダークラッド層の表面に形成された光路用のコアと、このコアを被覆するオーバークラッド層と、クラッド層の表面に形成された電気回路ユニット位置決め用の嵌合穴とを備え」る点で一致する。

ウ 本願発明の「上記電気回路ユニットが、基板と、この基板上に形成された電気回路と、この電気回路の所定部分に実装された光学素子とを備え」ることと、引用発明の「前記支持体は、…実装基板であり」、前記「実装基板には、光素子搭載用の凹部が設けられ、光素子搭載用凹部には、光素子との電気的接続のための電極パッドが形成され」、前記「支持体に…前記光素子が実装され」ることを対比する。
(ア)上記ア(イ)に記載したとおり、引用発明の、光素子が実装され、素子との電気的接続のための電極パッドが形成されている「実装基板」である「支持体」は、本願発明の「光学素子が実装された電気回路ユニット」に相当する。また、引用発明の「実装基板」は、本願発明の「基板」に相当する。
(イ )してみると、両者は、相当関係にある。

エ 本願発明の「上記基板の一部分が、上記嵌合穴に嵌合する突起部に形成されて」いることと、引用発明の「実装基板に」「凸部」が形成されており、前記「凸部」が「光導波路シートに形成された凹部」と「凹凸嵌合」することを対比する。
(ア)引用発明の「実装基板」が本願発明の「基板」に相当し、以下同様に、「凸部」が「突起部」に、「凹部」が「嵌合穴」に、「凹凸嵌合」することが「嵌合する」ことに、それぞれ相当する。
(イ)してみると、両者は、相当関係にある。

オ 本願発明の「上記光導波路ユニットの上記嵌合穴が、上記コアの端面に対して所定位置に位置決め形成されているとともに、円柱状に形成され」ていることと、引用発明の「光導波路シートに形成された凹部」であって、「光導波路シートの端部には、光反射面として、おおよそ45度に傾斜した傾斜端面が形成されており、この傾斜端面に対向して光素子が配置され、傾斜端面の中心線の直下に光素子の発光又は受光部が配置されて、光導波路シートと光素子とが適性に光結合され、このとき、光素子が発光素子であれば、発光素子の発光部から傾斜端面に入射した光が、傾斜端面で反射され、コアの内部へ導かれ、また、光素子が受光素子である場合には、コアの内部を伝播してきた光が、傾斜端面で反射され、受光素子の受光部へと導かれ」、「光導波路シートと実装基板との位置合わせは、光導波路シートに形成された凹部と実装基板に形成された凸部との凹凸嵌合によって行われ」ることを対比する。
(ア)引用発明の光導波路シートの端部に形成された傾斜端面は、傾斜端面の中心線の直下に光素子が配置されて、光導波路シートと光素子とが適性に光結合されるものであるところ、「光導波路シートと実装基板との位置合わせは、光導波路シートに形成された凹部と実装基板に形成された凸部との凹凸嵌合によって行われ」、光素子は実装基板である支持体に実装されていることを踏まえると、光導波路シートに形成された凹部は、傾斜端面に対して正確に位置決め形成されていると言える。
(イ)してみると、両者は、「上記光導波路ユニットの上記嵌合穴が、上記コアの端面に対して所定位置に位置決め形成されている」点で一致する。

カ 本願発明の「上記電気回路ユニットの上記突起部が、上記光学素子の実装側と反対側の所定位置に位置決め形成されているとともに、円錐台状に形成され」ていることと、引用発明の「凸部」が「実装基板に形成され」、「光導波路シートに形成された凹部と」「の凹凸嵌合によって」「光導波路シートと実装基板との位置合わせ」が行われることを対比する。
(ア)上記オで検討したとおり、引用発明の光導波路シートの端部に形成された傾斜端面は、傾斜端面の中心線の直下に光素子が配置されて、光導波路シートと光素子とが適性に光結合されるものであるところ、「光導波路シートと実装基板との位置合わせは、光導波路シートに形成された凹部と実装基板に形成された凸部との凹凸嵌合によって行われ」、光素子は実装基板である支持体に実装されている。そうすると、引用発明の実装基板に形成された凸部は、正確に位置決め形成されているものである。
(イ)してみると、両者は、「上記電気回路ユニットの上記突起部が、所定位置に位置決め形成され」ている点で一致する。

キ 本願発明の「上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとの結合が、上記光導波路ユニットの上記嵌合穴に、上記電気回路ユニットの上記突起部を嵌合させ、その突起部の先端面が上記嵌合穴内に位置した状態でなされている」ことと、引用発明の「光導波路シートと実装基板との位置合わせは、光導波路シートに形成された凹部と実装基板に形成された凸部との凹凸嵌合によって行われ」ることを対比する。
(ア)引用発明の「凹部と…凸部との凹凸嵌合」は、本願発明の「嵌合穴に、…上記突起部を嵌合させ…た状態」に相当する。
(イ)してみると、両者は、「上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとの結合が、上記光導波路ユニットの上記嵌合穴に、上記電気回路ユニットの上記突起部を嵌合させた状態でなされている」点で一致する。

ク 以上によれば、本願発明と引用発明は、
「光導波路ユニットと、光学素子が実装された電気回路ユニットとを結合させてなる光電気混載基板であって、
上記光導波路ユニットが、アンダークラッド層と、このアンダークラッド層の表面に形成された光路用のコアと、このコアを被覆するオーバークラッド層と、クラッド層の表面に形成された電気回路ユニット位置決め用の嵌合穴とを備え、
上記電気回路ユニットが、基板と、この基板上に形成された電気回路と、この電気回路の所定部分に実装された光学素子とを備え、
上記基板の一部分が、上記嵌合穴に嵌合する突起部に形成されており、
上記光導波路ユニットの上記嵌合穴が、上記コアの端面に対して所定位置に位置決め形成されているとともに、
上記電気回路ユニットの上記突起部が、上記光学素子に対して所定位置に位置決め形成されているとともに、
上記光導波路ユニットと上記電気回路ユニットとの結合が、上記光導波路ユニットの上記嵌合穴に、上記電気回路ユニットの上記突起部を嵌合させた状態でなされている、
光電気混載基板。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:嵌合穴が表面に形成される「クラッド層」に関し、本願発明は、「オーバークラッド層」と特定されているのに対し、引用発明は、「上部クラッド」と「下部クラッド」の何れであるのか明らかではない点。

相違点2:電気回路ユニットの突起部が位置決め形成される所定位置が、本願発明では、「光学素子の実装側と反対側」であるのに対し、引用発明では、実装基板の光学素子搭載用凹部が設けられた側と同じ側である点。

相違点3:「嵌合穴」と「突起部」の嵌合に関し、本願発明1は、嵌合穴が「円柱状に形成され」、突起部が「円錐台状に形成され」、光導波路ユニットと電気回路ユニットとの結合が「突起部の先端面が上記嵌合穴内に位置した状態でなされている」のに対し、引用発明はそのようなものなのか否か明らかではない点。

6 判断
(1)相違点1、2について
相違点1、相違点2は、何れも、光導波路ユニットと電気回路ユニットを結合させる態様に起因する相違点であるから、まとめて検討する。
ア 光導波路ユニットと、電気回路ユニットを結合する態様として、電気回路ユニットの光学素子実装面とは反対の面側に光導波路を結合させる態様と、電気回路ユニットの光学素子実装面側に光導波路を結合させる態様は、何れも、本願出願時点において周知の結合態様である(例えば、電気回路ユニットの光学素子実装面とは反対の面側に光導波路を結合させる態様については下記(ア)、(イ)を、電気回路ユニットの光学素子実装面側に光導波路を結合させる態様については下記(ウ)、(エ)を参照されたい。)。
(ア)特開2010-107558号公報
a 「【0013】
図1は、本発明の光電気混載モジュールの製造方法によって得られた光電気混載モジュールの一実施の形態を示している。この光電気混載モジュールは、電気回路基板24,34と光導波路10,20,30とを備えていて…。」
b 「【0015】
…。上記端部コア22の他端面は、上記発光素子23および光伝播用の貫通孔25aの下方に位置決めされ、上記電気回路基板24に対して45°傾斜した傾斜面に形成されている。この傾斜面は、光反射面22bになっており、上記発光素子23からの光L(図1参照)を反射して上記端部コア22の一端面(接続面22a)の方向に向ける作用をする。」
c 図1は以下のとおりである。


(イ)特開2002-189137号公報
a 「【0022】また、面発光素子11bの出力光は、透明な封止樹脂11fを透過し、マイクロレンズ17によってコリメートされ、出力光ビーム12となって光パッケージ11から出射されている。
【0023】プリント基板14aには、貫通孔16が形成されており、このコリメートされた出力光ビーム12は、この貫通孔16内を通過し、光導波路部品15に光結合される。光導波路部品15は、透明基板15aと、ミラー15b、光導波路コア15c、光導波路クラッド15dおよびマイクロレンズ15eから構成されており、光ビーム12はマイクロレンズ15eによって集光されたのち、ミラー15bによって90度の光路変換がなされ、コア15cに光結合される。…」
b 図1は以下のとおりである。

(ウ)特開2008-89879号公報(刊行物4)
a 「【0024】
また、導波路シート31Aは、各コア32が交差する他方の端部に傾斜端面35を備える。傾斜端面35は、導波路シート31Aの平面に対して約45度の傾斜を有し、各コア32の端面が露出して反射面35aが形成される。
【0025】
反射面35aは、導波路シート31Aの下面から入射した光を空気との境界で全反射させて、コア32に入射させる。また、反射面35aは、コア32を伝搬される光を空気との境界で全反射させて、導波路シート31Aの下面から出射させる。
【0026】
本例では、実装部50に位置合わせしてレーザアレイ2Aが実装された実装基板5Aの表面に、マーカー等を利用して導波路シート31Aを位置合わせして実装すると、レーザアレイ2Aの各発光素子の真上に、導波路シート31Aの各コア32の反射面35aが対向して位置合わせされる。」
b 図1は、以下のとおりである。


(エ)特開2006-209068号公報
a 「【0037】
第1の実施の形態の光導波路モジュール1Aは、平面型の光導波路を構成する導波路シート2と、導波路シート2を支持する実装基板3を備える。導波路シート2は、例えば高分子材料で構成され、第1のコア4a及び第2のコア4bと、下部クラッド5a及び上部クラッド5bを備えて、コア・クラッド構造を有する。」
b 「【0055】
更に、実装基板3は、導波路シート2の第1の反射面9aに対向させて面型発光素子12を実装するために第1の実装凹部15aを備える…」
c 図1は、以下のとおりである。


イ 引用発明は、光導波路と光素子との正確な位置合わせを、実装基板を介した凹凸嵌合により行う光結合装置であるところ、上記周知の結合態様を踏まえると、光導波路と実装基板を凹凸嵌合させる態様として、実装基板の光部品を搭載する面に光導波路を結合させる態様と、実装基板の光部品を搭載する面と反対側の面に光導波路を結合させる態様の何れの態様にも構成可能であろうことは、当業者が容易に予測できるものである。
そうすると、上記アの周知の結合態様を踏まえ、引用発明における光導波路と実装基板を結合する態様として、実装基板の光素子を搭載する面とは反対の面側に光導波路を結合させる態様を採用し、光導波路の上部クラッドに凹部を形成するとともに、光素子を搭載する実装基板の面と反対の面に凸部を形成して上記相違点1、2に係る本願発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点3について
嵌合穴と突起部を嵌合させて位置決めする際、嵌合穴を円柱状に形成すると共に、突起部を円錐台状に形成し、その突起部の先端面が上記嵌合穴内に位置した状態で位置決めすることは、周知の技術手段である。例えば、刊行物2には、「【0045】そして、それぞれの光ファイバ45の出射端面を軸心として、基板41の出射端面側に並列して円錐台形突部48を設けている。70は、ガラスよりなる横方向に細長い直方体状のブロックである。ブロック70には受光素子アレイ50の受光素子55の並列ピッチに等しいピッチで、横一列にブロック70を水平に貫通する孔71を穿孔し、それぞれの孔71の内壁に金属等を蒸着して遮光膜Pを設けている。…【0047】そして、図3に図示したように、回路基板50を基台5に搭載し、受光素子アレイ50側にブロック70を配置して、ブロック70を受光素子アレイ50側に押しつけてそれぞれの孔71を円錐台形突部58に嵌め、その後基台5上に光ファイバアレイ40を載せ、ブロック70に押しつけて、それぞれの円錐台形突部48を対応するブロック70の孔71に嵌めた状態で光ファイバアレイ40を基台5に固着している。」と記載され、図3は以下のとおりである。

また、刊行物3には、「【0049】図6において、8は光コネクタフェルール、8aは位置決め用ガイド孔、8bは光ファイバ挿入孔、9は光ファイバ、9´は光ファイバコアである。…、ガイド孔8aが凸部5に嵌合するよう形成する。…【0067】なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、嵌合のための凸部(凹部)は円柱形に限られるものではなく、四角柱などの多角柱であってもよい。また、円錐形のようなテーパー形状が含まれていてもよい。…」と記載され、図6は、以下のとおりである。

ここで、ガイド光8aが凸部5に嵌合すると、凸部5の上面がガイド孔8aの孔内に位置するであろうことは図6より明らかである。
そして、引用発明は、「光導波路シートと実装基板との位置合わせは、光導波路シートに形成された凹部と実装基板に形成された凸部との凹凸嵌合によって行われ」ているところ、嵌合による位置決めを容易にする等の目的で上記周知の技術手段を採用し、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

(3)作用効果について
本願発明が奏する作用効果は、引用発明と上記周知の技術手段に基づいて当業者が予測しうる程度のものであって、格別のものとは認められない。

(4)小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明、上記周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、上記周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-23 
結審通知日 2017-05-30 
審決日 2017-06-12 
出願番号 特願2011-58573(P2011-58573)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹野口 晃一河原 正佐藤 宙子  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 近藤 幸浩
小松 徹三
発明の名称 光電気混載基板およびその製法  
代理人 井▲崎▼ 愛佳  
代理人 西藤 征彦  
代理人 西藤 優子  

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