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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G09G
管理番号 1330831
審判番号 不服2016-15702  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-20 
確定日 2017-08-22 
事件の表示 特願2013-533142「画素の能動マトリックスを含む表示画面の輝度を制御するための方法、画素の能動マトリックスを含む表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月19日国際公開、WO2012/049000、平成25年12月19日国内公表、特表2013-545126、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成23年9月22日
(パリ条約による優先権主張(外国庁受理2010年10月15日(優先日)、仏国)を伴う国際出願)
拒絶査定: 平成28年6月22日(送達日:同年同月28日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成28年10月20日
手続補正: 平成28年10月20日


第2 原査定の概要
原査定(平成28年6月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



理由1(特許法第36条第6項第2号)について
請求項3の「それが前記発光ダイオードの前記共通電極」という記載について、前記記載以前には、「共通電極」についての記載がなされていないことから、前記記載は、「前記」により具体的にどのような事項を引用しているのか、明確でない。

理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項1-7
・引用文献等1
引用例1、特に段落0022,0026-0027,図6-7、に記載された発明では、「画面輝度を・・・可変調整することができる。」(段落0022)ことから、本願の上記各請求項に係る発明における「平均輝度の所望される減衰」が行われているといえる。

引用例1に記載された発明では、アノード(陽極)が、同一走査線上の各画素では共通接続されている一方、異なる走査線間では電気的に分離されているが、引用例1に記載された発明における、アノード電位の、「十分高い値」(第一の固定電位)と「十分低い電位」(第二の固定電位)の切換えは、「全画素」という「画面単位」で行われることにかんがみれば、アノードを、全画素に共通して接続するようにすることは、電極の接続に関し、当業者が、適宜選択、設計する事項であって、容易に想到できたものである。

一つのフレーム中に、フレーム・ブランキング及び行のブランキングを有することが、例示するまでもない慣用技術であることにかんがみれば、
引用例1に記載された発明における、アノード電位の切換えを、行のブランキング中、及び、フレーム・ブランキング(本願の請求項7)に行うことは、前記切換えのタイミングに関し、当業者が、適宜選択、設計する事項であって、容易に想到できたものである。
また、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、行のブランキング中等に切換えることによる、格別の効果もない。

<引用文献等一覧>
1.特開2001-60076号公報


第3 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、平成28年10月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
画素の能動マトリックスを含む表示画面の輝度を制御するための方法であって、各画素が、各々陽極(A)と陰極(K)である2つの電極を有する発光ダイオードを含み、前記陽極(A)と前記陰極(K)のうちの1つが前記マトリックスの全画素に共通であり、少なくとも1つの制御MOSトランジスタ(Qc)が、表示されるべき輝度に対する情報に従って、前記発光ダイオード内を流れる電流を制御可能であり、そしてそこに画像がフレームの持続時間の間にビデオ信号から行ごとに書き込まれ、フレーム・ブランキングと称される持続時間が、第一のフレームの最終行の書き込みと、次のフレームの最初の行の書き込みとの間に備えられ、行のブランキングと称される持続時間が、1つの行の書き込みと次の行の書き込みとの間に備えられる方法において、
平均輝度の所望される減衰を伴う、所定の画像を表示するため、所望される減衰に応じた可変の負荷サイクルで、前記発光ダイオードの共通電極に対して周期的に、前記発光ダイオードによる発光を可能にする第一の固定電位(VkM)が、発光を遮断する第二の固定電位(Vkoff)と交互に印加されることと、前記共通電極の電位の切換えが、前記行のブランキング中に実施されることとを特徴とする方法。
【請求項2】
同じフレームの過程で前記マトリックスの画素の書き込みの間に、それが前記第一の固定電位か前記第二の固定電位かに拘わらず、印加される前記固定電位が全画素に対して同じであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
画素の能動マトリックスを含む表示装置であって、各画素が、各々陽極(A)と陰極(K)である2つの電極を有する発光ダイオードを含み、陽極(A)と陰極(K)のうちの1つが前記マトリックスの全画素に共通であり、少なくとも1つの制御MOSトランジスタ(Qc)が、表示されるべき輝度に対する情報に従って、前記発光ダイオード内を流れる電流を制御可能であり、そしてそこに画像がフレームの持続時間の間にビデオ信号から行ごとに書き込まれ、フレーム・ブランキングと称される持続時間が、第一のフレームの最終行の書き込みと、次のフレームの最初の行の書き込みとの間に備えられ、行のブランキングと称される持続時間が、1つの行の書き込みと次の行の書き込みとの間に備えられる表示装置において、
それが前記発光ダイオードの共通電極を周期的に、前記発光ダイオードにより発光を可能にする第一の固定電位(VkM)と、この発光を遮断する第二の固定電位(Vkoff)に交互に接続するスイッチ(SW)を含む平均輝度の減衰回路と、所望される減衰に応じて可変の負荷サイクルを伴って切り換えるためのスイッチ制御回路(Cpwm)とを含むことと、前記スイッチ制御回路が、前記行のブランキング中に前記発光ダイオードの前記共通電極の電位を切り換えるための手段を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
表示される輝度に対する情報を表わす可変アナログ電圧を、画素書き込み段階の間に前記制御トランジスタのゲートへ印加するための、選択トランジスタを前記画素が備えることを特徴とする、請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記書き込み段階以外で前記トランジスタのゲート上のアナログ電圧を維持するための蓄積コンデンサ(Cst)を、前記画素が含むことを特徴とする、請求項3又は4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記発光ダイオードが有機発光ダイオードであることを特徴とする、請求項3?5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記スイッチ制御回路が、フレーム・ブランキングの間に電位を切り換える手段をさらに含むことを特徴とする、請求項3?6のいずれか一項に記載の表示装置。」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

「【0020】図2は、図1に示したPXLをマトリクス上に配列した画像表示装置の全体構成を示す回路図である。図示するように、走査線X1,X2,…,XNが行状に配列され、データ線Yが列状に配列されている。各走査線Xとデータ線Yの交差部に画素PXLが形成されている。又、走査線X1,X2,…,XNと平行に、停止制御線Z1,Z2,…,ZNが形成されている。走査線Xは走査線駆動回路21に接続されている。走査線駆動回路21はシフトレジスタを含んでおり、垂直クロックVCKに同期して垂直スタートパルスVSP1を順次転送することにより、走査線X1,X2,…,XNを一走査サイクル内で順次選択する。一方、停止制御線Zは停止制御線駆動回路23に接続されている。この駆動回路23もシフトレジスタを含んでおり、VCKに同期して垂直スタートパルスVSP2を順次転送することにより、停止制御線Zに制御信号を出力する。尚、VSP2は遅延回路24により所定時間だけVSP1から遅延処理されている。データ線Yはデータ線駆動回路22に接続されており、走査線Xの線順次走査に同期して、各データ線Yに輝度情報に対応した電気信号を出力する。この場合、データ線駆動回路22は、いわゆる線順次駆動を行ない、選択された画素の行に対して一斉に電気信号を供給する。或いは、データ線駆動回路22は、いわゆる点順次駆動を行ない、選択された画素の行に対して順次電気信号を供給しても良い。いずれにしても、本発明は、線順次駆動と点順次駆動の両者を包含している。」

「【0026】図6は、本発明にかかる画像表示装置の第四実施形態の一例を示す一画素分の等価回路図である。図10に示した従来例と対応する部分には対応する参照番号を付して理解を容易にしている。本実施形態では発光素子OLEDは整流作用を有する二端子素子からなり、一方の端子(カソードK)はTFT2に接続され、他方の端子(アノードA)は停止制御線Zに接続されている。同一走査線上の各画素では二端子素子のアノードAは停止制御線Zに共通接続され、異なる走査線間では電気的に分離されている。この場合、二端子素子の共通接続された他方の端子(アノードA)の電位を停止制御線Zにより制御して、各OLEDを消灯する。但し、OLEDのアノードAは従来のように一定電位のVddに接続されるのではなく、停止制御線Zを介して外部からその電位が制御される。アノード電位を十分高い値とすれば、OLEDにはTFT2によって制御される電流が流れるが、OLEDは二端子素子で整流作用があるため、アノード電位を十分低い電位(例えば接地電位)とすることにより、OLEDに流れる電流をオフすることができる。
【0027】図7は、図6に示した第四実施形態の制御例を示すタイミングチャートである。一走査サイクル(一フレーム)をTで表している。一走査サイクルTの先頭に位置する書き込み期間(RT)で、全画素に対する輝度情報の書き込みを線順次で行う。即ち、この例では、一走査サイクルの一部を利用して高速に輝度情報を全ての画素に書き込んでいる。書き込みが完了したあと、停止制御線Zを一斉に制御して、各画素に含まれるOLEDをオンする。これにより、各画素のOLEDは書き込まれた輝度情報に応じて夫々発光を開始する。そのあと所定の遅延時間τが経過すると、全ての停止制御線Zを介して全てのOLEDのアノードAを接地電位に落とす。これにより、発光がオフになる。以上のような制御により、全画素単位でデューティーτ/Tを調整可能である。尚、本発明はこれに限られるものではなく、少なくとも走査線単位で各画素のオン/オフを制御するようにしてもよい。以上のように、本制御例では、各画素に輝度情報が書き込まれたあと一走査サイクル内で、各画素に含まれる発光素子の点灯時点及び消灯時点を画面単位若しくは走査線単位で制御できる。」

上記の記載から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「各画素に含まれる発光素子の点灯時点及び消灯時点を画面単位で制御できる(【0027】参照。)方法であって、一画素において、一方の端子(カソードK)はTFT2に接続され、他方の端子(アノードA)は停止制御線Zに接続されている発光素子OLED(【0026】参照。)を含み、OLEDにはTFT2によって制御される電流が流れ(【0026】参照。)、一走査サイクルTの先頭に位置する書き込み期間(RT)で、全画素に対する輝度情報の書き込みが線順次で行われる(【0027】参照。)方法において、
書き込みが完了したあと、停止制御線Zを一斉に制御して、各画素に含まれるOLEDがオンされ、各画素のOLEDは書き込まれた輝度情報に応じて夫々発光を開始し、そのあと所定の遅延時間τが経過すると、全ての停止制御線Zを介して全てのOLEDのアノードAが接地電位に落とされ、発光がオフになる制御により、全画素単位でデューティーτ/Tが調整可能である(【0027】参照。)方法。」


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
まず、引用発明における「発光素子OLED」の「一方の端子(カソードK)」及び「他方の端子(アノードA)」が電極構造を有することは、技術常識からみて明らかといえる。また、引用発明においては、「一走査サイクルTの先頭に位置する書き込み期間(RT)で、全画素に対する輝度情報の書き込みが線順次で行われる」のであるから、本願発明1の「第一のフレームの最終行の書き込みと、次のフレームの最初の行の書き込みとの間に備えられ」る「フレーム・ブランキングと称される持続時間」と、「1つの行の書き込みと次の行の書き込みとの間に備えられる」、「行のブランキングと称される持続時間」とに相当する持続時間を備えることも明らかである。
そうすると、引用発明の「各画素に含まれる発光素子の点灯時点及び消灯時点を画面単位で制御できる方法であって、一画素において、一方の端子(カソードK)はTFT2に接続され、他方の端子(アノードA)は停止制御線Zに接続されている発光素子OLEDを含み、OLEDにはTFT2によって制御される電流が流れ、一走査サイクルTの先頭に位置する書き込み期間(RT)で、全画素に対する輝度情報の書き込みが線順次で行われる方法」と、本願発明1の「画素の能動マトリックスを含む表示画面の輝度を制御するための方法であって、各画素が、各々陽極(A)と陰極(K)である2つの電極を有する発光ダイオードを含み、前記陽極(A)と前記陰極(K)のうちの1つが前記マトリックスの全画素に共通であり、少なくとも1つの制御MOSトランジスタ(Qc)が、表示されるべき輝度に対する情報に従って、前記発光ダイオード内を流れる電流を制御可能であり、そしてそこに画像がフレームの持続時間の間にビデオ信号から行ごとに書き込まれ、フレーム・ブランキングと称される持続時間が、第一のフレームの最終行の書き込みと、次のフレームの最初の行の書き込みとの間に備えられ、行のブランキングと称される持続時間が、1つの行の書き込みと次の行の書き込みとの間に備えられる方法」とは、共に「画素の能動マトリックスを含む表示画面の輝度を制御するための方法であって、各画素が、各々陽極(A)と陰極(K)である2つの電極を有する発光ダイオードを含み、少なくとも1つの制御トランジスタが、表示されるべき輝度に対する情報に従って、前記発光ダイオード内を流れる電流を制御可能であり、そしてそこに画像がフレームの持続時間の間にビデオ信号から行ごとに書き込まれ、フレーム・ブランキングと称される持続時間が、第一のフレームの最終行の書き込みと、次のフレームの最初の行の書き込みとの間に備えられ、行のブランキングと称される持続時間が、1つの行の書き込みと次の行の書き込みとの間に備えられる方法」である点で共通するといえる。
次に、引用発明における「接地電位」、及び「各画素に含まれるOLEDがオンされ」る際の「停止制御線Z」の電位がそれぞれ、本願発明1の「発光を遮断する第二の固定電位(Vkoff)」及び「前記発光ダイオードによる発光を可能にする第一の固定電位(VkM)」に相当し、これらが「全画素単位でデューティーτ/Tが調整可能である」ように、少なくとも一走査サイクル(1フレーム)ごとに切替えられているのであるから、引用発明において「書き込みが完了したあと、停止制御線Zを一斉に制御して、各画素に含まれるOLEDがオンされ、各画素のOLEDは書き込まれた輝度情報に応じて夫々発光を開始し、そのあと所定の遅延時間τが経過すると、全ての停止制御線Zを介して全てのOLEDのアノードAが接地電位に落とされ、発光がオフになる制御により、全画素単位でデューティーτ/Tが調整可能である」ことと、本願発明1において「平均輝度の所望される減衰を伴う、所定の画像を表示するため、所望される減衰に応じた可変の負荷サイクルで、前記発光ダイオードの共通電極に対して周期的に、前記発光ダイオードによる発光を可能にする第一の固定電位(VkM)が、発光を遮断する第二の固定電位(Vkoff)と交互に印加されることと、前記共通電極の電位の切換えが、前記行のブランキング中に実施されること」とは、共に「平均輝度の所望される減衰を伴う、所定の画像を表示するため、前記発光ダイオードの共通電極に対して周期的に、前記発光ダイオードによる発光を可能にする第一の固定電位(VkM)が、発光を遮断する第二の固定電位(Vkoff)と交互に印加されること」である点で共通する。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「画素の能動マトリックスを含む表示画面の輝度を制御するための方法であって、各画素が、各々陽極(A)と陰極(K)である2つの電極を有する発光ダイオードを含み、少なくとも1つの制御トランジスタが、表示されるべき輝度に対する情報に従って、前記発光ダイオード内を流れる電流を制御可能であり、そしてそこに画像がフレームの持続時間の間にビデオ信号から行ごとに書き込まれ、フレーム・ブランキングと称される持続時間が、第一のフレームの最終行の書き込みと、次のフレームの最初の行の書き込みとの間に備えられ、行のブランキングと称される持続時間が、1つの行の書き込みと次の行の書き込みとの間に備えられる方法において、
平均輝度の所望される減衰を伴う、所定の画像を表示するため、前記発光ダイオードの電極に対して周期的に、前記発光ダイオードによる発光を可能にする第一の固定電位(VkM)が、発光を遮断する第二の固定電位(Vkoff)と交互に印加されることを特徴とする方法。」

(相違点)
相違点1:本願発明1においては、「前記陽極(A)と前記陰極(K)のうちの1つが前記マトリックスの全画素に共通であ」るのに対し、引用発明においては、「全ての停止制御線Zを介して全てのOLEDのアノードAが接地電位に落と」されるように制御されてはいるものの、端子(電極)が全画素に共通な構成であるか否かは不明である点。

相違点2:本願発明1においては、制御トランジスタが「制御MOSトランジスタ」であるのに対し、引用発明の「TFT2」はOLEDの電流を制御する制御トランジスタではあるものの、MOS型トランジスタであるか否かは不明である点。

相違点3:本願発明1は、「所望される減衰に応じた可変の負荷サイクルで、」2つの電位が「交互に印加される」のに対し、引用発明の電位切換えはフレームごとに周期的に行われるものの、「減衰に応じた可変の負荷サイクル」をとるとはされていない点。

相違点4:本願発明1においては、「共通電極の電位の切換えが、前記行のブランキング中に実施される」のに対し、引用発明においては電位の切換えが、行のブランキング中に実施されるとはされていない点。

(2)相違点についての判断
本願発明1の内容に鑑み、上記相違点4について検討する。
相違点4に係る本願発明1の「共通電極の電位の切換えが、前記行のブランキング中に実施される」という構成は、引用文献1には記載も示唆もされていない(そもそも引用文献1には、書き込み期間RT内において電位の切換を行うことが記載されていない。)。また「共通電極の電位の切換えが、前記行のブランキング中に実施される」という構成が本願の優先日前に周知であったとも認められない。
したがって、上記相違点1ないし3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明3について
本願発明3は、本願発明1に対応する装置(物)の発明であり、本願発明1の「共通電極の電位の切換えが、前記行のブランキング中に実施される」ことに対応する「前記スイッチ制御回路が、前記行のブランキング中に前記発光ダイオードの前記共通電極の電位を切り換えるための手段を含む」という構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明2、4-7について
本願請求項2、4-7は、同請求項1または3に従属する請求項であるから、本願発明2、4-7は、本願発明1の「共通電極の電位の切換えが、前記行のブランキング中に実施される」もしくはそれに対応する構成を備えるものである。したがって、本願発明2、4-7は、本願発明1または3と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について
1.理由1(特許法第36条第6項第2号)について
平成28年10月20日付けの審判請求時の補正により、請求項3の「それが前記発光ダイオードの前記共通電極」という記載は、「それが前記発光ダイオードの共通電極」と補正されており、原査定の理由1を維持することはできない。

2.理由2(特許法第29条第2項)について
本願発明1-7は「共通電極の電位の切換えが、前記行のブランキング中に実施される」もしくはそれに対応する事項を有しており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由2を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-31 
出願番号 特願2013-533142(P2013-533142)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G09G)
P 1 8・ 537- WY (G09G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 武田 悟  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 中塚 直樹
関根 洋之
発明の名称 画素の能動マトリックスを含む表示画面の輝度を制御するための方法、画素の能動マトリックスを含む表示装置  
代理人 木村 高久  

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