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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1330884
審判番号 不服2016-13131  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-01 
確定日 2017-08-03 
事件の表示 特願2013-554100「エピタキシャルウェーハの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月25日国際公開、WO2013/108335〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年12月17日(優先権主張2012年1月19日、日本国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年 6月19日 審査請求
平成27年 9月 4日 拒絶理由通知(起案日)
平成27年11月 4日 意見書の提出
平成28年 6月10日 拒絶査定(起案日)
平成28年 9月 1日 審判請求


第2 本願発明に対する判断
1 本願発明
本願の請求項1ないし2に係る発明は、本願の願書に添付された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載される事項により特定されるとおりであって、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「ドーパントを含有するシリコン基板の裏面側に酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、該形成された酸化膜を一部除去する酸化膜除去工程と、その後シリコン基板上にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャル成長工程を有するエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
前記酸化膜除去工程を、少なくとも、前記シリコン基板の面取り部の酸化膜を除去するとともに、前記シリコン基板の裏面外周部の酸化膜を、前記シリコン基板裏面の最外周部から内側に0μm以上かつ30μm未満の幅で除去することにより行うことを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。」

2 引用例の記載事項と引用発明
(1)引用例の記載事項
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され、平成27年9月4日付けの拒絶理由通知において「引用文献1」として引用された刊行物である特開昭62-128520号公報(以下「引用例」という。)には、「半導体ウェーハ及びその製造方法」(発明の名称)に関して、第1図?第9図とともに、以下の事項が記載されている(下線は、参考のため当審において付したもの。)。
ア 「2.特許請求の範囲
……(中略)……
3.その周縁部を除く裏面にオートドープ防止用のブロッキング膜を備え、主面にはエピタキシャル層を成長せしめてなることを特徴とする半導体ウェーハ。
4.前記オートドープ防止用のブロッキング膜が、シリコンの酸化膜、窒化膜、又は酸化膜と窒化膜の複合二層構造よりなる膜である特許請求の範囲第3項記載の半導体ウェーハ。
5.半導体ウェーハの主面を除く、表面の一部にオートドープ防止用のブロッキング膜を形成した円盤状の半導体ウェーハを製造する方法において、少なくとも半導体ウェーハの主面と反対側の裏側の全面及び周面に亘ってブロッキング膜を形成する工程と、前記周面のブロッキング膜を除去する工程とを有することを特徴とする半導体ウェーハの製造方法。」(第1頁下左欄第4行?同頁下右欄第7行)

イ 「(従来技術)
通常エピタキシャルウェーハは不純物を高濃度にドープしてp型、或いはn型のいずれかの導電型を備えるよう構成されることが多い。
例えば、導電型をp型とする場合には不純物としてボロン(B)等が、またn型とする場合にはリン(P),アンチモン(Sb),ヒ素(As)等が夫々シリコンウェーハに高濃度にドープされる。しかしこのようなドープされたウェーハ上にシリコンをエピタキシャル成長させるべくウェーハを高温(1000?1200℃)に加熱したような場合、B,P,Sb,As等が基板ウェーハから飛び出し、エピタキシャル成長層中に入る、所謂オートドープ現象が発生して電気的特性を変化させてしまうことが知られている。
ウェーハからのB,P,Sb,As等の飛び出しは表面側はエピタキシャル成長層の形成によって抑制されるので、主としてウェーハの周面及び裏面側からである。そこで従来にあってはこの部分にオートドープを防止するためにブロッキング膜としてSiO_(2)及び/又はSi_(3)N_(4)等の膜を形成する方法が採られている。」(第1頁下右欄第13行?第2頁上左欄第14行)

ウ 「(発明が解決しようとする問題点)
ところで上述の如くして得たブロッキング膜2を有するウェーハ1を用いてその主面上にシリコンのエピタキシャル成長を行うと、たしかにウェーハ1の主面にエピタキシャル層3が形成されてゆく過程ではウェーハ1の周面及び裏面にはブロッキング膜2が形成されているため、ウェーハ1からエピタキシャル層3へのオートドープは著しく抑制され、エピタキシャル層3自体の品質の向上は図れる。
……(中略)……
しかし反面においては第7図(ニ)からも明らかなようにウェーハ1の主面へのエピタキシャル成長過程で、反応ガス中のシリコンがポリシリコンとしてブロッキング膜2、特にウェーハ1の周面部上に多数塊粒状に生成され、この塊粒状シリコン3aが半導体デバイス(製品)の製造過程でブロッキング膜の表面から脱落し、エピタキシャル層3表面等に付着して汚染の原因となり、歩留を低下させるという問題があった。」(第2頁上右欄第18行?同頁下右欄第5行)

エ 「(問題点を解決するための手段)
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところはSiの塊粒状物が周面のブロッキング膜上に形成されることに着目して、ウェーハの周面、更にはオートドープの影響が許容できる範囲内で裏面のブロッキング膜を可及的に広範囲に除去することによってSi塊粒状物の生成が殆どなく、これに起因する汚染を防止出来て、歩留の大幅な向上を図り得るようにした半導体ウェーハ及びその製造方法を提供するにある。
本発明に係る半導体ウェーハは、その周縁部を除く裏面にオートドープ防止用のブロッキング膜を有していることを特徴とする。」(第2頁下右欄第11行?第3頁上左欄第3行)

オ 「(実施例)
以下本発明をその実施例を示す図面に基づき具体的に説明する。第1図は本発明に係る半導体ウェーハ(以下本発明品という)の断面構造図であり、図中1はSi製の半導体ウェーハ(以下単にウェーハという)を示している。ウェーハ1の周面は上、下から周縁部の面取りをして傾斜面1a,1b及びこの両傾斜面1a,1bの外端縁を結ぶ略円弧状をなす弧状部1cからなり、また裏面には下側の傾斜面1bの端縁部から数mm(3mm程度)中心側に寄った位置までを除く裏側全面にブロッキング膜2が付着せしめられている。ブロッキング膜はSiO_(2)(又はSi_(3)N_(4))製であって厚さは0.1?1μm程度である。このブロッキング膜2の形成域は必ずしも上述の範囲に限るものではなく、Siの塊粒状物が形成され易いウェーハの周面、即ち傾斜面1a,1b及び弧状部1c、を除くウェーハ1の裏側であって、オートドープの影響が許容できる範囲であればよい。なおブロッキング膜2の領域を過小にするとオートドープ現象が発生して電気特性を変えてしまうことになるので好ましくない。
ブロッキング膜2の材質はSiO_(2)膜のみに限るものではなく、Si_(3)N_(4)膜、或いはSiO_(2),Si_(3)N_(4)夫々を材料とする2つの膜を積層形成して構成してもよい。」(第3頁上左欄第4行?同頁上右欄第8行)

カ 「第2図は上記した本発明品の製造工程を示す模式図であり、先ず第2図(イ)に示す如く、ウェーハ1はその周囲を面取りして傾斜面1a,1b及び弧状部1cを形成しておき、これに第2図(ロ),(ロ′)に示す如くブロッキング膜2を付着せしめる。例えば常圧CVD法に依る場合はウェーハ1の主面1dを下側にして反応炉内のパッド(図示せず)上に配置し、ウェーハ1を加熱して上側に向けた下面及び傾斜面1a,1b,弧状部1cを含む周面にSiO_(2)(及び/又はSi_(3)N_(4))を所要厚さ(0.1?1.0μm)に付着せしめる。常圧CVD法による場合はパッドとウェーハ1の主面1dとの間には僅かであるが、隙間が形成されるためブロッキング膜2は第2図(ロ)に示す如くウェーハ1の裏面,周面は勿論、主面1dにも薄く形成されることとなる。
なお、常圧CVD法に代えて熱酸化法によって形成してもよく、この場合は第2図(ロ′)に示す如くウェーハ1の全表面にわたって略均一にブロッキング膜2が形成されることとなる。
ブロッキング膜2の形成を終了した基板1は第2図(ハ),(ハ′)に示す如くウェーハ1の少なくとも傾斜面1a,1b及び弧状部1cを含む周面、又はこれを越えて更にウェーハ1の裏面の周縁部、即ち端縁部から中心側に0?5mm程度迄に形成されているブロッキング膜2を除去する。第3,4図は上述した部分のブロッキング膜2の除去方法を示す模式図であり、第3図は化学エッチング法、第4図は機械研磨法による場合を示している。
……(中略)……
次に裏面及び主面にブロッキング膜2を付着させた状態のウェーハ1の主面1d側に鏡面加工を施し、主面1dに形成されているブロッキング膜2を除去すると共に、主面1dを鏡面に仕上げて第1図に示す如き本発明品を得る。なお上述の実施例ではウェーハ1の周面に対するブロッキング膜の除去を行った後、主面1dに対する鏡面加工を行う場合につき説明したが、先に主面1dに対する鏡面加工を施すこととしてもよい。
第5図は上述の如くして得た第1図に示す如きウェーハ1の主面1d上にエピタキシャル層を積層形成した状態の模式的断面図であり、図中3はエピタキシャル層を示している。他の部分は第1図に示す実施例と同じであり、対応する部分には同じ番号を付して説明を省略する。」(第3頁上右欄第9行?第4頁上左欄第7行)

キ 「(効果)
以上の如く本発明品及び本発明方法にあってはブロッキング膜をウェーハの裏面にのみ形成してあるからエピタキシャル成長を行う過程で反応ガスがウェーハ周面と接触してもSi塊粒が生成されることがなく、従って半導体デバイスの製造工程において塊粒状シリコンがウェーハ表面から脱落しウェーハ主面に付着して汚染の原因となることがないという優れた効果を奏するものである。」(第4頁上左欄第18行?同頁上右欄第6行)

ク 第2図(ハ)には、ウェーハ1の裏面の、下側の傾斜面1bの端縁部から0?5mmだけ中心側に寄った位置までの領域には、ブロッキング膜2が付着していないことが記載されていると認められる。

(2)引用発明
以上の記載事項から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「不純物としてボロン(B),リン(P),アンチモン(Sb),ヒ素(As)等が高濃度にドープされたSi製のウェーハ1の周囲を面取りして、傾斜面1a,1b及び弧状部1cを形成する工程と、
常圧CVD法により、前記ウェーハ1の裏面及び前記傾斜面1a,1b及び前記弧状部1cを含む周面に、SiO_(2)製のブロッキング膜を付着せしめる工程と、
ブロッキング膜2の形成を終了した前記ウェーハ1の、少なくとも前記傾斜面1a,1b及び前記弧状部1cを含む周面と、下側の前記傾斜面1bの端縁部から0?5mm程度だけ中心側に寄った位置までの前記裏面の周縁部に形成されているブロッキング膜2を除去する工程と、
前記ウェーハ1の主面側に鏡面加工を施してから、前記ウェーハ1の主面上にエピタキシャル層3を積層形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体ウェーハの製造方法。」

3 対比
(1)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「常圧CVD法により」「不純物としてボロン(B),リン(P),アンチモン(Sb),ヒ素(As)等が高濃度にドープされたSi製のウェーハ1」の「裏面及び前記傾斜面1a,1b及び前記弧状部1cを含む周面に、SiO_(2)製のブロッキング膜を付着せしめる工程」は、本願発明の「ドーパントを含有するシリコン基板の裏面側に酸化膜を形成する酸化膜形成工程」に相当する。

イ 引用発明の「ブロッキング膜2の形成を終了した前記ウェーハ1の、少なくとも前記傾斜面1a,1b及び前記弧状部1cを含む周面と、下側の前記傾斜面1bの端縁部から0?5mm程度だけ中心側に寄った位置までの前記裏面の周縁部に形成されているブロッキング膜2を除去する工程」は、本願発明の「該形成された酸化膜を一部除去する酸化膜除去工程」に相当する。

ウ 引用例には、前記2(1)イ及びウで摘記したとおり、「このようなドープされたウェーハ上にシリコンをエピタキシャル成長させるべくウェーハを高温(1000?1200℃)に加熱したような場合」(第2頁上左欄第1?3行)に、「ウェーハ1の主面へのエピタキシャル成長過程で、反応ガス中のシリコンがポリシリコンとしてブロッキング膜2、特にウェーハ1の周面部上に多数塊粒状に生成され」る(第2頁下左欄第18行?同頁下右欄第1行)との問題があったところ、前記2(1)キで摘記したとおり、「エピタキシャル成長を行う過程で反応ガスがウェーハ周面と接触してもSi塊粒が生成されることがな」い(第4頁上右欄第1?3行)ようにした旨が記載されている。すなわち、引用例に記載のシリコンの「エピタキシャル成長」は、「ウェーハを高温(1000?1200℃)に加熱」し、「反応ガス」を「ウェーハ」に「接触」させて行うものであるから、気相成長によるものと解される。
したがって、引用発明の「前記ウェーハ1の主面上にエピタキシャル層3を積層形成する工程」は、本願発明の「その後シリコン基板上にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャル成長工程」に相当する。

エ 引用発明において、「ウェーハ1の周囲を面取りして」形成される「下側の前記傾斜面1b」の「端縁部」は、前記2(1)クから「ウェーハ1の裏面」と「前記傾斜面1b」との境界部であると認められるので、本願発明の「シリコン基板裏面の最外周部」に相当する。
したがって、引用発明の「ブロッキング膜2を除去する工程」において「ブロッキング膜2の形成を終了した前記ウェーハ1の、少なくとも前記傾斜面1a,1b及び前記弧状部1cを含む周面と、下側の前記傾斜面1bの端縁部から0?5mm程度だけ中心側に寄った位置までの前記裏面の周縁部に形成されているブロッキング膜2を除去する」ことと、本願発明の「前記酸化膜除去工程を、少なくとも、前記シリコン基板の面取り部の酸化膜を除去するとともに、前記シリコン基板の裏面外周部の酸化膜を、前記シリコン基板裏面の最外周部から内側に0μm以上かつ30μm未満の幅で除去することにより行う」こととは、「前記酸化膜除去工程を、少なくとも、前記シリコン基板の面取り部の酸化膜を除去するとともに、前記シリコン基板の裏面外周部の酸化膜を、前記シリコン基板裏面の最外周部から内側に」所定の「幅で除去することにより行う」点で共通する。

オ 引用発明の「Si製のウェーハ1」は、「主面上にエピタキシャル層3を積層形成する」ものであり、「主面上にエピタキシャル層3を積層形成」した「Si製のウェーハ1」からなる「半導体ウェーハ」は、エピタキシャルウェーハと言い得るものである。
したがって、引用発明の「半導体ウェーハの製造方法」は、以下の相違点を除き、本願発明の「エピタキシャルウェーハの製造方法」に相当する。

(2)一致点と相違点
そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致するとともに、以下の点で一応相違している。
《一致点》
「ドーパントを含有するシリコン基板の裏面側に酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、該形成された酸化膜を一部除去する酸化膜除去工程と、その後シリコン基板上にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャル成長工程を有するエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
前記酸化膜除去工程を、少なくとも、前記シリコン基板の面取り部の酸化膜を除去するとともに、前記シリコン基板の裏面外周部の酸化膜を、前記シリコン基板裏面の最外周部から内側に所定の幅で除去することにより行うことを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。」

《相違点》
シリコン基板の裏面外周部の酸化膜を、前記シリコン基板裏面の最外周部から内側に除去する幅が、本願発明は「0μm以上かつ30μm未満」であるのに対して、引用発明は「0?5mm程度」である点。

4 判断
(1)相違点について
ア 引用発明の「ブロッキング膜2を除去する工程」において、「下側の前記傾斜面1bの端縁部」から「0」mmだけ「中心側に寄った位置までの前記裏面の周縁部に形成されているブロッキング膜2を除去する」ことの意義について検討する。

イ この点について、引用例には以下の記載がある。
(ア)「所謂オートドープ現象が発生」する原因である「ウェーハからのB,P,Sb,As等の飛び出しは表面側はエピタキシャル成長層の形成によって抑制されるので、主としてウェーハの周面及び裏面側からである。」こと(前記2(1)イ参照)
(イ)このため、「ウェーハ1の主面にエピタキシャル層3が形成されてゆく過程」で「ウェーハ1の周面及び裏面にはブロッキング膜2が形成されている」ようにすると「ウェーハ1からエピタキシャル層3へのオートドープは著しく抑制され、エピタキシャル層3自体の品質の向上は図れる」が、反面「ウェーハ1の主面へのエピタキシャル成長過程で、反応ガス中のシリコンがポリシリコンとしてブロッキング膜2、特にウェーハ1の周面部上に多数塊粒状に生成され」てしまうこと(前記2(1)ウ参照)
(ウ)そこで、「ブロッキング膜2の形成域」を、「Siの塊粒状物が形成され易いウェーハの周面、即ち傾斜面1a,1b及び弧状部1c」を除き、「ウェーハ1の裏側であって、オートドープの影響が許容できる範囲」とすること、ブロッキング膜2を過剰に除去して「ブロッキング膜2の領域を過小にするとオートドープ現象が発生して電気特性を変えてしまうことになるので好ましくない。」こと(前記2(1)オ参照)

ウ 以上の(ア)?(ウ)から、引用例には、「Siの塊粒状物」は「ブロッキング膜2、特にウェーハ1の周面部上」に「生成され」ることから、「ブロッキング膜2の形成を終了した」後、「少なくとも前記傾斜面1a,1b及び前記弧状部1cを含む周面」の「ブロッキング膜2」はすべて除去するが、「裏面」の「ブロッキング膜2」は「オートドープの影響が許容できる範囲」内で除去すること、すなわち、オートドープ抑制の観点からは、「裏面」の「ブロッキング膜2」は除去しないか、除去するとしても「下側の前記傾斜面1bの端縁部から0?5mm程度だけ中心側に寄った」範囲内で必要最小限に抑えることが望ましい旨記載されているといえる。
加えて、前記2(1)アで摘記した特許請求の範囲の請求項5の「半導体ウェーハの主面を除く、表面の一部にオートドープ防止用のブロッキング膜を形成した円盤状の半導体ウェーハを製造する方法において、少なくとも半導体ウェーハの主面と反対側の裏側の全面及び周面に亘ってブロッキング膜を形成する工程と、前記周面のブロッキング膜を除去する工程とを有することを特徴とする半導体ウェーハの製造方法。」の記載を文言通りに読めば、「半導体ウェーハ」の「裏側の全面」に形成した「ブロッキング膜」は「除去」しないことが記載されていると認められる。

エ そうすると、引用発明において、「下側の前記傾斜面1bの端縁部」から「0」mmだけ「中心側に寄った位置までの前記裏面の周縁部に形成されているブロッキング膜2を除去する」とは、「ウェーハ1」の「裏面」に「形成されているブロッキング膜2」は「除去」しないことを意味すると解される。
そして、引用発明の「下側の前記傾斜面1bの端縁部から0?5mm程度だけ中心側に寄った位置までの前記裏面の周縁部に形成されているブロッキング膜2を除去する」には、「ウェーハ1」の「裏面」に「形成されているブロッキング膜2」を上記の範囲内で必要最小限だけ除去することが含まれると解されるから、本願発明のように「30μm未満の幅で除去する」ことも包含されると認められる。
したがって、本願発明の「前記シリコン基板の裏面外周部の酸化膜を、前記シリコン基板裏面の最外周部から内側に0μm以上かつ30μm未満の幅で除去する」は、引用発明の「下側の前記傾斜面1bの端縁部から0?5mm程度だけ中心側に寄った位置までの前記裏面の周縁部に形成されているブロッキング膜2を除去する」ことに包含されるということができる。

オ 以上のとおりであるから、本願発明と引用発明とは、「前記シリコン基板の裏面外周部の酸化膜を、前記シリコン基板裏面の最外周部から内側に0μm以上かつ30μm未満の幅で除去する」点で一致し、前記相違点は実質的な相違点ではない。
したがって、本願発明は引用例に記載された発明である。

(2)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は審判請求書において以下のように主張している。
(ア)「引用文献1においては、裏面酸化膜の除去は、ミリ単位で行うことが前提となっており、本発明における裏面酸化膜除去幅の値(0μm以上かつ30μm未満の幅)とは桁が全く異なります。
従って、引用文献1には「端縁部から中心側に0?5mm程迄に形成されているブロッキング膜2を除去する」の記載がありますが、当該記載は、本願請求項1及び請求項2のようなμm単位の除去幅(即ち、0μm以上かつ30μm未満の幅)を示しているものではありません。」
(イ)「本願請求項1及び請求項2における「0μm以上かつ30μm未満」の値には、臨界的意義が存在します。」

イ 前記4(1)エで指摘したように、引用発明において、「下側の前記傾斜面1bの端縁部」から「0」mmだけ「中心側に寄った位置までの前記裏面の周縁部に形成されているブロッキング膜2を除去する」とは、「ウェーハ1」の「裏面」に「形成されているブロッキング膜2」は「除去」しないことを意味すると解される。
すなわち、前記「ブロッキング膜2」の「除去」幅の小数点以下を丸めた結果、「0」mmと看做すことができたことを意味するものではない。
したがって、前記(ア)の主張は当を得ておらず、採用することはできない。

ウ 本願発明が引用発明に対して顕著な効果を有するかどうかは、本願発明の進歩性の判断で問題となる事項であるから、本願発明が引用例に記載された発明に該当するかどうかを検討する本審決において、前記(イ)の主張は採用することはできない。


第3.結言
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-02 
結審通知日 2017-06-06 
審決日 2017-06-19 
出願番号 特願2013-554100(P2013-554100)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 溝本 安展杢 哲次  
特許庁審判長 河口 雅英
特許庁審判官 加藤 浩一
鈴木 匡明
発明の名称 エピタキシャルウェーハの製造方法  
代理人 小林 俊弘  
代理人 好宮 幹夫  

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