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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1330885
審判番号 不服2016-14557  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-29 
確定日 2017-08-03 
事件の表示 特願2013-110624「情報処理システムおよび情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月 8日出願公開、特開2014-229234〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年5月27日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年 4月24日付け:拒絶理由の通知
平成27年 6月26日 :意見書,手続補正書の提出
平成27年12月25日付け:拒絶理由の通知
平成28年 2月19日 :意見書の提出
平成28年 7月 4日付け:拒絶査定
平成28年 7月12日 :同謄本の送達
平成28年 9月29日 :審判請求書,手続補正書の提出
平成28年11月 1日付け:特許法164条3項の規定に基づく報告(前置報告)


第2 平成28年9月29日付けの手続補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年9月29日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成28年9月29日付け手続補正書による手続補正(以下これを「本件補正」という。)により,平成27年6月26日付け手続補正書による手続補正により補正された特許請求の範囲,
「【請求項1】
第1の情報処理端末と、第2の情報処理端末とを有する情報処理システムであって、前記第1の情報処理端末は、前記第1の情報処理端末を操作している利用者の生体情報を測定する生体情報測定部と、情報を出力する第1の出力部と、前記生体情報測定部が測定した生体情報を該生体情報測定部から取得する生体情報取得部とを具備し、前記第1の情報処理端末または前記第2の情報処理端末は、前記生体情報取得部が取得した生体情報が、あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する条件判定部を具備し、前記第1の情報処理端末は、前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記第1の出力部が出力している情報の内容を示すコンテンツ情報を作成するコンテンツ情報作成部と、前記コンテンツ情報作成部が作成したコンテンツ情報を前記第2の情報処理端末へ提供するコンテンツ情報提供部とをさらに具備し、前記第2の情報処理端末は、前記コンテンツ情報提供部から提供されたコンテンツ情報が示す情報を出力する第2の出力部をさらに具備することを特徴とする情報処理システム。

【請求項2】
第1の情報処理端末と、第2の情報処理端末と、管理装置とを有する情報処理システムであって、前記第1の情報処理端末は、前記第1の情報処理端末を操作している利用者の生体情報を測定する生体情報測定部と、情報を出力する第1の出力部と、前記生体情報測定部が測定した生体情報を該生体情報測定部から取得する生体情報取得部とを具備し、前記第1の情報処理端末または前記管理装置は、前記生体情報取得部が取得した生体情報が、あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する条件判定部を具備し、前記第1の情報処理端末は、前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記第1の出力部が出力している情報の内容を示すコンテンツ情報を作成するコンテンツ情報作成部と、前記コンテンツ情報作成部が作成したコンテンツ情報を前記管理装置へ提供するコンテンツ情報提供部とをさらに具備し、前記第2の情報処理端末は、前記管理装置から送信されたコンテンツ情報が示す情報を出力する第2の出力部を具備することを特徴とする情報処理システム。

【請求項3】
請求項1または2に記載の情報処理システムにおいて、前記生体情報測定部は、前記第1の情報処理端末と分離された測定器内に設けられていることを特徴とする情報システム。

【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、前記条件判定部は、前記生体情報取得部が取得した生体情報があらかじめ設定された閾値を超えた場合、または、前記生体情報取得部が取得した生体情報があらかじめ設定された閾値を超えた状態が所定の時間以上続いた場合、前記条件を満たすと判定することを特徴とする情報処理システム。

【請求項5】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、前記第1の情報処理端末は、前記コンテンツ情報作成部が作成したコンテンツ情報を記憶する記憶部を有し、前記コンテンツ情報提供部は、前記第2の情報処理端末から前記コンテンツ情報の要求があった場合、前記記憶部が記憶しているコンテンツ情報を読み出して該第2の情報処理端末へ提供することを特徴とする情報処理システム。

【請求項6】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、前記第2の情報処理端末は、前記コンテンツ情報提供部から提供されたコンテンツ情報を記憶する記憶部を有し、前記第2の出力部は、前記第2の情報処理端末の外部から前記コンテンツ情報の出力の要求があった場合、前記記憶部が記憶しているコンテンツ情報を読み出して出力することを特徴とする情報処理システム。

【請求項7】
請求項2に記載の情報処理システムにおいて、前記管理装置は、前記コンテンツ情報作成部が作成したコンテンツ情報を記憶する記憶部を有し、前記管理装置は、前記第2の情報処理端末から前記コンテンツ情報の要求があった場合、前記記憶部が記憶しているコンテンツ情報を読み出して該第2の情報処理端末へ提供することを特徴とする情報処理システム。

【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、前記第1の出力部は、前記情報を表示すること、または、前記情報を音声として出力することを特徴とする情報処理システム。

【請求項9】
情報を出力する出力部と、生体情報を取得する生体情報取得部と、前記生体情報取得部が取得した生体情報が、あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する条件判定部と、前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記出力部が出力している情報の内容を示すコンテンツ情報を作成するコンテンツ情報作成部と、前記コンテンツ情報作成部が作成したコンテンツ情報を既定の装置へ提供するコンテンツ情報提供部とを有する情報処理端末。

【請求項10】
請求項9に記載の情報処理端末において、さらに、前記出力部と、前記生体情報取得部と、前記条件判定部と、前記コンテンツ情報作成部と、前記コンテンツ情報提供部とを内蔵する筐体と、前記筐体に付されて、前記筐体を利用者に装着する装着部とを具備し、前記筐体または前記装着部の利用者の肌側に前記生体情報を測定する生体情報測定部が設けられている腕時計型、もしくはリストバンド型であることを特徴とする情報処理端末。

【請求項11】
情報を出力する処理と、生体情報を取得する処理と、前記取得した生体情報が、あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する処理と、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記出力している情報の内容を示すコンテンツ情報を作成する処理と、前記作成したコンテンツ情報を既定の装置へ提供する処理とを行う情報処理方法。

【請求項12】
コンピュータに、情報を出力する手順と、生体情報を取得する手順と、前記取得した生体情報が、あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する手順と、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記出力している情報の内容を示すコンテンツ情報を作成する手順と、前記作成したコンテンツ情報を既定の装置へ提供する手順とを実行させるためのプログラム。」(以下,上記引用の請求項各項を「補正前の請求項」という。)は,

「【請求項1】
第1の情報処理端末と、第2の情報処理端末とを有する情報処理システムであって、前記第1の情報処理端末は、前記第1の情報処理端末を操作している利用者の生体情報を測定する生体情報測定部と、情報を出力する第1の出力部と、前記生体情報測定部が測定した生体情報を、該生体情報を測定した測定時刻とともに該生体情報測定部から取得する生体情報取得部とを具備し、前記第1の情報処理端末または前記第2の情報処理端末は、前記生体情報取得部が取得した生体情報が、あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する条件判定部を具備し、前記第1の情報処理端末は、前記第1の出力部が前記情報を出力した出力時刻とともに前記情報を記憶しておき、前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成するコンテンツ情報作成部と、前記コンテンツ情報作成部が作成したコンテンツ情報を前記第2の情報処理端末へ提供するコンテンツ情報提供部とをさらに具備し、前記第2の情報処理端末は、前記コンテンツ情報提供部から提供されたコンテンツ情報が示す情報を出力する第2の出力部をさらに具備することを特徴とする情報処理システム。

【請求項2】
第1の情報処理端末と、第2の情報処理端末と、管理装置とを有する情報処理システムであって、前記第1の情報処理端末は、前記第1の情報処理端末を操作している利用者の生体情報を測定する生体情報測定部と、情報を出力する第1の出力部と、前記生体情報測定部が測定した生体情報を、該生体情報を測定した測定時刻とともに該生体情報測定部から取得する生体情報取得部とを具備し、前記第1の情報処理端末または前記管理装置は、前記生体情報取得部が取得した生体情報が、あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する条件判定部を具備し、前記第1の情報処理端末は、前記第1の出力部が前記情報を出力した出力時刻とともに前記情報を記憶しておき、前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成するコンテンツ情報作成部と、前記コンテンツ情報作成部が作成したコンテンツ情報を前記管理装置へ提供するコンテンツ情報提供部とをさらに具備し、前記第2の情報処理端末は、前記管理装置から送信されたコンテンツ情報が示す情報を出力する第2の出力部を具備することを特徴とする情報処理システム。

【請求項3】
請求項1または2に記載の情報処理システムにおいて、前記生体情報測定部は、前記第1の情報処理端末と分離された測定器内に設けられていることを特徴とする情報処理システム。

【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、前記条件判定部は、前記生体情報取得部が取得した生体情報があらかじめ設定された閾値を超えた場合、または、前記生体情報取得部が取得した生体情報があらかじめ設定された閾値を超えた状態が所定の時間以上続いた場合、前記条件を満たすと判定することを特徴とする情報処理システム。

【請求項5】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、前記第1の情報処理端末は、前記コンテンツ情報作成部が作成したコンテンツ情報を記憶する記憶部を有し、前記コンテンツ情報提供部は、前記第2の情報処理端末から前記コンテンツ情報の要求があった場合、前記記憶部が記憶しているコンテンツ情報を読み出して該第2の情報処理端末へ提供することを特徴とする情報処理システム。

【請求項6】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、前記第2の情報処理端末は、前記コンテンツ情報提供部から提供されたコンテンツ情報を記憶する記憶部を有し、前記第2の出力部は、前記第2の情報処理端末の外部から前記コンテンツ情報の出力の要求があった場合、前記記憶部が記憶しているコンテンツ情報を読み出して出力することを特徴とする情報処理システム。

【請求項7】
請求項2に記載の情報処理システムにおいて、前記管理装置は、前記コンテンツ情報作成部が作成したコンテンツ情報を記憶する記憶部を有し、前記管理装置は、前記第2の情報処理端末から前記コンテンツ情報の要求があった場合、前記記憶部が記憶しているコンテンツ情報を読み出して該第2の情報処理端末へ提供することを特徴とする情報処理システム。

【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、前記第1の出力部は、前記情報を表示すること、または、前記情報を音声として出力することを特徴とする情報処理システム。

【請求項9】
情報を出力する処理と、生体情報を、該生体情報を測定した測定時刻とともに取得する処理と、前記取得した生体情報が、あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する処理と、前記情報を出力した出力時刻とともに前記情報を記憶しておき、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成する処理と、前記作成したコンテンツ情報を既定の装置へ提供する処理とを行う情報処理方法。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という。)に補正された。

2 補正事項
(1)補正事項1
補正前の請求項1の「前記生体情報測定部が測定した生体情報を該生体情報測定部から取得する生体情報取得部」を,補正後の請求項1の「前記生体情報測定部が測定した生体情報を、該生体情報を測定した測定時刻とともに該生体情報測定部から取得する生体情報取得部」とする補正。

(2)補正事項2
補正前の請求項1の「前記第1の情報処理端末は、前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記第1の出力部が出力している情報の内容を示すコンテンツ情報を作成するコンテンツ情報作成部」を,補正後の請求項1の「前記第1の情報処理端末は、前記第1の出力部が前記情報を出力した出力時刻とともに前記情報を記憶しておき、前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成するコンテンツ情報作成部」とする補正。

(3)補正事項3
補正前の請求項11の「生体情報を取得する処理」を,補正後の請求項9の「生体情報を、該生体情報を測定した測定時刻とともに取得する処理」とする補正。

(4)補正事項4
補正前の請求項11の「前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記出力している情報の内容を示すコンテンツ情報を作成する処理」を,補正後の請求項9の「前記情報を出力した出力時刻とともに前記情報を記憶しておき、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成する処理」とする補正。

(5)補正事項5
補正前の請求項2の「前記生体情報測定部が測定した生体情報を該生体情報測定部から取得する生体情報取得部」を,補正後の請求項2の「前記生体情報測定部が測定した生体情報を、該生体情報を測定した測定時刻とともに該生体情報測定部から取得する生体情報取得部」とする補正。

(6)補正事項6
補正前の請求項2の「前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記第1の出力部が出力している情報の内容を示すコンテンツ情報を作成するコンテンツ情報作成部」を,補正後の請求項2の「前記第1の出力部が前記情報を出力した出力時刻とともに前記情報を記憶しておき、前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成するコンテンツ情報作成部」とする補正。

(7)補正事項7
補正前の請求項3の「情報システム」を,補正後の請求項3の「情報処理システム」とする補正。

(8)補正事項8
補正前の請求項9,10及び12を削除し,番号を繰り上げて,補正前の請求項11を補正後の請求項9とする補正。


3 新規事項
本件補正が,特許法17条の2第3項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件補正が,願書に最初に添付された,明細書,特許請求の範囲,及び,図面(以下,これを「当初明細書等」という)に記載した事項の範囲内でなされたものであるかについて,以下に検討する。

(1)補正の根拠
請求人は平成28年9月29日付け審判請求書において,
「本書と同日に提出した手続補正書における請求項1の「前記生体情報測定部が測定した生体情報を、該生体情報を測定した測定時刻とともに該生体情報測定部から取得する生体情報取得部と」に関する補正は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の段落[0124]における、「そこで、生体情報取得部121は、生体情報測定部110が測定した生体情報を取得する際、測定時刻も取得して、通信端末200-3へ送信する。」の記載に基づくものであり(特許法第17条の2第3項)、平成27年6月26日付け提出の手続補正で補正した特許請求の範囲の請求項(以下、「拒絶査定時の請求項」という。)1に係る発明を特定するために必要な事項である「生体情報取得部」がどのようなものであるかについて限定することを目的とするものである(特許法第17条の2第5項第2号に相当)。
請求項1の「前記第1の情報処理端末は、前記第1の出力部が前記情報を出力した出力時刻とともに前記情報を記憶しておき、前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成するコンテンツ情報作成部と、」に関する補正は、当初明細書等の段落[0135]における、「まず、コンテンツ情報作成部162は、出力部150が表示中のコンテンツを出力時刻と対応付けて記憶部182に書き込んでおく。」の記載、段落[0136]における、「このとき、生体情報取得部121は、当該脈拍数を生体情報測定部110が測定した測定時刻も取得する。そして、・・・。このとき、生体情報取得部121は、取得した測定時刻も当該脈拍数とともに通信端末200-3へ送信する。」の記載、段落[0142]における、「なお、・・・。そのため、ある程度のマージンを確保して、コンテンツ情報作成部162は、通信端末200-3から送信されてきた測定時刻の前後数秒間や数分間に含まれる出力時刻のコンテンツを記憶部182から検索するものであっても良い。」の記載に基づくものであ」る旨を主張している。

(2)当審の判断
本件補正の前後において,特許請求の範囲の請求項1において特定されている「条件判定部」は,「前記第1の情報処理端末または前記第2の情報処理端末」に具備されるものと特定されていて変更はないものの,「第1の情報処理端末」が具備する「コンテンツ情報作成部」が作成する「コンテンツ情報」は,補正事項2により補正前の請求項1では「前記条件判定部が,前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合,前記第1の出力部が出力している情報の内容を示すコンテンツ情報を作成する」ものであったのに対し,補正後の請求項1では,「前記第1の出力部が前記情報を出力した出力時刻とともに前記情報を記憶しておき、前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成する」(下線は当審で付加。以下同様。)ものとなった。以下,特に「コンテンツ情報の作成」のタイミングについて検討を行う。

まず,補正後の請求項1の
「前記第1の情報処理端末または前記第2の情報処理端末は、前記生体情報取得部が取得した生体情報が、あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する条件判定部を具備し」
との特定事項については,「条件判定部」が具備されるものは,第1の情報処理端末「または」第2の情報処理端末である。これは,「第1の情報処理端末」に「条件判定部」が具備される態様,或いは,「第2の情報処理端末」に「条件判定部」が具備される態様の何れか一方であることを意味するものと解される。

してみれば,本件補正によって補正された請求項1に記載された事項は,次の2とおりの解釈ができる。

(解釈1)
「第1の情報処理端末と、第2の情報処理端末とを有する情報処理システムであって、
前記第1の情報処理端末は、
前記第1の情報処理端末を操作している利用者の生体情報を測定する生体情報測定部と、
情報を出力する第1の出力部と、
前記生体情報測定部が測定した生体情報を、該生体情報を測定した測定時刻とともに該生体情報測定部から取得する生体情報取得部と
を具備し、
前記第2の情報処理端末は、
前記生体情報取得部が取得した生体情報が、あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する条件判定部
を具備し、
前記第1の情報処理端末は、
前記第1の出力部が前記情報を出力した出力時刻とともに前記情報を記憶しておき、前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成するコンテンツ情報作成部と、
前記コンテンツ情報作成部が作成したコンテンツ情報を前記第2の情報処理端末へ提供するコンテンツ情報提供部と
をさらに具備し、
前記第2の情報処理端末は、
前記コンテンツ情報提供部から提供されたコンテンツ情報が示す情報を出力する第2の出力部
をさらに具備する
ことを特徴とする情報処理システム。」

(解釈2)
「第1の情報処理端末と、第2の情報処理端末とを有する情報処理システムであって、
前記第1の情報処理端末は、
前記第1の情報処理端末を操作している利用者の生体情報を測定する生体情報測定部と、
情報を出力する第1の出力部と、
前記生体情報測定部が測定した生体情報を、該生体情報を測定した測定時刻とともに該生体情報測定部から取得する生体情報取得部と
を具備し、
前記第1の情報処理端末は、
前記生体情報取得部が取得した生体情報が、あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する条件判定部
を具備し、
前記第1の情報処理端末は、
前記第1の出力部が前記情報を出力した出力時刻とともに前記情報を記憶しておき、前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成するコンテンツ情報作成部と、
前記コンテンツ情報作成部が作成したコンテンツ情報を前記第2の情報処理端末へ提供するコンテンツ情報提供部と
をさらに具備し、
前記第2の情報処理端末は、
前記コンテンツ情報提供部から提供されたコンテンツ情報が示す情報を出力する第2の出力部
をさらに具備する
ことを特徴とする情報処理システム。」

上記解釈1について検討する。
当初明細書等には,第4の実施の形態として,次のとおりの記載が認められる。

「(第4の実施の形態)
図22は、本発明の情報処理システムの第4の実施の形態を示す図である。
【0116】
本形態は図22に示すように、通信端末100-3,200-3と、コンテンツ配信サーバ400とが、互いに通信ネットワーク300を介して通信可能となっている。また、図22に示した形態においては、通信端末100-3が1台、通信端末200-3が1台、コンテンツ配信サーバ400が1台である場合を例に挙げて示しているが、その数は規定しない。第4の実施の形態では、測定された生体情報が条件を満たしているかどうかを通信端末200-3が判定する。
…(中略)…
【0118】
通信端末100-3は、閲覧者が操作する第1の情報処理端末である。
【0119】
図23は、図22に示した通信端末100-3の内部構成の一例を示す図である。
【0120】
図22に示した通信端末100-3には図23に示すように、生体情報測定部110と、生体情報取得部121と、通信部140と、出力部150と、コンテンツ情報作成部162と、コンテンツ情報提供部171と、記憶部182とが設けられている。なお、図23には、図22に示した通信端末100-3に設けられた構成要素のうち、本実施の形態に関わる主要な構成要素の一例を示す。
…(中略)…
【0122】
生体情報取得部121は、生体情報測定部110が測定した生体情報を取得する。また、取得した生体情報を、通信部140を用いて通信ネットワーク300を介して通信端末200-3へ送信する。
【0123】
コンテンツ情報作成部162は、通信端末200-3からコンテンツ情報の作成を要求されると、コンテンツ情報を作成する。ここで、所定の条件を満たす生体情報が測定された時点と、測定された生体情報を通信端末200-3へ送信し、その生体情報が条件を満たしているかどうかを通信端末200-3が判定し、通信端末200-3から送信されたコンテンツ情報の作成の要求を受信した時点とに、通信における伝搬遅延(タイムラグ)が発生する。この伝搬遅延により、コンテンツ情報の作成の要求を受信したときに出力部150が出力している情報の内容を示すコンテンツ情報を作成すると、測定された生体情報が条件を満たしたときに出力部150が出力している情報とは異なる内容のコンテンツ情報を作成してしまうおそれがある。
【0124】
そこで、生体情報取得部121は、生体情報測定部110が測定した生体情報を取得する際、測定時刻も取得して、通信端末200-3へ送信する。そして、通信端末200-3は、生体情報が条件を満たしていると判定した場合、その生体情報とともに送信されてきた測定時刻をコンテンツ情報の作成の要求とともに通信端末100-3へ送信する。一方、コンテンツ情報作成部162は、例えば、出力部150が出力しているコンテンツを数分間、出力時刻とともに記憶部182に記憶させておき、通信端末200-3からコンテンツ情報の作成の要求が送信されてきた場合、それとともに送信されてきた測定時刻と同じ出力時刻とともに記憶部180に記憶されているコンテンツを記憶部180から読み出し、読み出したコンテンツに基づいてコンテンツ情報を作成する。
…(中略)…
【0132】
条件判定部260は、通信端末100-3から送信されてきた生体情報が、記憶部251に記憶されている条件を満たすかどうかを判定する。ここで、条件判定部260は、通信端末100-3から送信されてきた生体情報が記憶部251に記憶されている閾値を超えた場合、当該生体情報が条件を満たしていると判定する。また、条件判定部260は、通信端末100-3から送信されてきた生体情報が記憶部251に記憶されている閾値を超えた状態が所定の時間以上続いた場合、当該生体情報が条件を満たしていると判定するものであっても良い。また、条件判定部260は、生体情報が条件を満たしていると判定した場合、通信部230を用いて通信ネットワーク300を介して通信端末100-3へコンテンツ情報の作成を要求する。この要求には、通信端末100-3にて、コンテンツ情報の作成の要求であることを認識できる要求信号を用いるもので良い。また、この要求信号には、生体情報とともに送信されてきた測定時刻を含む。
…(中略)…
【0136】
通信端末100-3を操作している閲覧者に装着された生体情報測定部110が、所定のタイミングで当該閲覧者の脈拍数を測定する(ステップS71)。続いて、生体情報取得部121は、生体情報測定部110が測定した脈拍数を、生体情報測定部110から取得する(ステップS72)。このとき、生体情報取得部121は、当該脈拍数を生体情報測定部110が測定した測定時刻も取得する。そして、生体情報取得部121は、取得した脈拍数を、通信部140を用いて、通信ネットワーク300を介して通信端末200-3へ送信する(ステップS73)。このとき、生体情報取得部121は、取得した測定時刻も当該脈拍数とともに通信端末200-3へ送信する。
【0137】
通信端末100-3から送信されてきた脈拍数と測定時刻とを通信端末200-3の通信部230が受信すると、条件判定部260は、通信部230が受信した脈拍数が、記憶部251の閾値テーブルにあらかじめ設定されている閾値を超えているかどうかを判定する(ステップS74)。条件判定部260が、通信部230が受信した脈拍数が、記憶部251の閾値テーブルにあらかじめ設定されている閾値を超えていると判定した場合、条件判定部260は、通信部230を用いて通信ネットワーク300を介して通信端末100-3へコンテンツ情報の作成を要求する(ステップS75)。このとき、条件判定部260は、通信端末100-3から送信されてきた測定時刻も通信端末100-3へ送信する。一方、条件判定部260が、通信部230が受信した脈拍数が、記憶部251の閾値テーブルにあらかじめ設定されている閾値を超えていないと判定した場合は、処理は終了する。
【0138】
続いて、通信端末200-3からのコンテンツ情報の作成の要求を通信端末100-3の通信部140が受信すると、コンテンツ情報作成部162は、当該要求とともに送信されてきた測定時刻と同じ時刻の出力時刻のコンテンツが記憶部182に記憶されているかどうかを判定する(ステップS76)。」

以上の記載から,第4の実施の形態においては,第2の情報処理端末に「条件判定部」が存在し,当該第2の情報処理端末の「条件判定部(260)」で生体情報が所定の条件を満たしていると判定した場合に,第1の情報処理端末で「前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成する」ことが記載されているといえ,上記解釈1については,当初明細書等に記載があったものといえる。

次に,上記解釈2について検討する。
第4の実施の形態においては,第1の情報処理端末に,「条件判定部」を設けることは記載されていない。
その余の実施の形態においては,第1の実施の形態として次のとおりの記載が認められる。

「(第1の実施の形態)
図1は、本発明の情報処理システムの第1の実施の形態を示す図である。
【0014】
本形態は図1に示すように、通信端末100-1,200-1と、コンテンツ配信サーバ400とが、互いに通信ネットワーク300を介して通信可能となっている。また、図1に示した形態においては、通信端末100-1が1台、通信端末200-1が1台、コンテンツ配信サーバ400が1台である場合を例に挙げて示しているが、その数は規定しない。
【0015】
通信端末100-1は、子供や生徒(児童)等のコンテンツ閲覧監視対象者(以下、閲覧者と称する)が操作する第1の情報処理端末である。
【0016】
図2は、図1に示した通信端末100-1の内部構成の一例を示す図である。
【0017】
図1に示した通信端末100-1には図2に示すように、生体情報測定部110と、生体情報取得部120と、条件判定部130と、通信部140と、出力部150と、コンテンツ情報作成部160と、コンテンツ情報提供部170と、記憶部180とが設けられている。なお、図2には、図1に示した通信端末100-1に設けられた構成要素のうち、本実施の形態に関わる主要な構成要素の一例を示す。
…(中略)…
【0020】
条件判定部130は、記憶部180に記憶されている生体情報が、あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する。この条件は、記憶部180にあらかじめ設定されている。ここで、条件判定部130は、記憶部180に記憶されている生体情報があらかじめ設定されている閾値を超えた場合、当該生体情報が条件を満たしていると判定する。また、条件判定部130は、記憶部180に記憶されている生体情報があらかじめ設定されている閾値を超えた状態が所定の時間以上続いた場合、当該生体情報が条件を満たしていると判定するものであっても良い。
…(中略)…
【0024】
コンテンツ情報作成部160は、条件判定部130が、生体情報が条件を満たしていると判定した場合、出力部150が出力している情報の内容を示すコンテンツ情報を作成する。このコンテンツ情報は、出力部150が現在表示している画面をキャプチャしたキャプチャ画面や、出力部150が現在表示している電子メールの本文のテキスト情報、出力部150が現在表示している動画データのファイルおよびファイル名、出力部150が現在表示している動画データのうちのいくつかの静止画データのファイルおよびファイル名、出力部150が現在表示している画面を取得するために接続されているサイトのURL(Uniform Resource Locator)を示す情報等であり、通信端末200-1にて、このコンテンツ情報に基づいて、通信端末100-1を操作してコンテンツを閲覧している閲覧者が、どのようなコンテンツを閲覧していたかを認識することができる情報である。また、コンテンツ情報作成部160は、作成したコンテンツ情報を記憶部180へ書き込む。また、出力部150が出力したコンテンツが既定時間分、一時的に記憶部180に記憶されている場合は、コンテンツ情報作成部160は、その一時的に記憶されているコンテンツの全てまたは一部から、コンテンツ情報を作成し、記憶部180へ書き込むようにしても良い。
…(中略)…
【0039】
通信端末200-1は、通信端末100-1が閲覧したコンテンツを監視する親や教員等の監視者(以下、確認者と称する)が操作する第2の情報処理端末である。
【0040】
図8は、図1に示した通信端末200-1の内部構成の一例を示す図である。
【0041】
図1に示した通信端末200-1には図8に示すように、入力部210と、制御部220と、通信部230と、出力部240とが設けられている。なお、図8には、図1に示した通信端末200-1に設けられた構成要素のうち、本実施の形態に関わる主要な構成要素の一例を示す。
【0042】
入力部210は、外部からの情報の入力を受け付ける。入力部210は、例えば、入力キーボタン等のハードウェアで構成された所定のキーや、タッチパネルを用いたものであっても良い。
【0043】
制御部220は、入力部210が所定の入力を受け付けた場合、通信部230を用いて、通信ネットワーク300を介して通信端末100-1へコンテンツ情報の取得を要求する。また、制御部220は、通信端末100-1から通信ネットワーク300を介してコンテンツ情報が提供(送信)されてきた場合、当該コンテンツ情報が示す情報を出力部240に出力させる。
【0044】
通信部230は、通信ネットワーク300との間で通信を行う通信インタフェース機能を有する。
【0045】
出力部240は、制御部220からの指示に従って情報を出力する(第2の出力部)。例えば、出力部240は、情報を表示することで出力するものであっても良いし、音声として出力するものであっても良い。
…(中略)…
【0048】
図9は、図1に示した通信端末100-1におけるコンテンツ情報の作成処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0049】
まず、通信端末100-1を操作している閲覧者に装着された生体情報測定部110が、所定の測定方法および所定のタイミングで当該閲覧者の脈拍数を測定する(ステップS1)。続いて、生体情報取得部120は、生体情報測定部110が測定した脈拍数を、生体情報測定部110から取得する(ステップS2)。そして、生体情報取得部120は、取得した脈拍数を、必要なら計算してから、記憶部180の生体情報テーブルに書き込んで記憶させる。
【0050】
すると、条件判定部130は、記憶部180の生体情報テーブルに記憶されている脈拍数が、記憶部180の閾値テーブルにあらかじめ設定されている閾値を超えているかどうかを判定する(ステップS3)。条件判定部130が、記憶部180の生体情報テーブルに記憶されている脈拍数が、記憶部180の閾値テーブルにあらかじめ設定されている閾値を超えていると判定した場合、コンテンツ情報作成部160は、出力部150がコンテンツを表示中であるかどうかを判定する(ステップS4)。
【0051】
コンテンツ情報作成部160が、出力部150がコンテンツを表示中であると判定した場合、コンテンツ情報作成部160は、表示中のコンテンツの内容を示すコンテンツ情報を作成し(ステップS5)、記憶部180のコンテンツ情報テーブルに書き込んで記憶させる(ステップS6)。
【0052】
一方、ステップS3にて、条件判定部130が、記憶部180の生体情報テーブルに記憶されている脈拍数が、記憶部180の閾値テーブルにあらかじめ設定されている閾値を超えていないと判定した場合や、ステップS4にて、コンテンツ情報作成部160が、出力部150がコンテンツを表示中ではないと判定した場合は、次のタイミングでステップS1の処理が行われる。
【0053】
また、ステップS1において、出力部150がコンテンツを表示中であるかどうかを判定し、コンテンツ情報作成部160が、出力部150がコンテンツを表示中であると判定した場合に、当該閲覧者の脈拍数を測定してもよい。その場合は、ステップS2,S3およびS5(ステップS4は行わない)において、条件判定部130が、記憶部180の生体情報テーブルに記憶されている脈拍数が、記憶部180の閾値テーブルにあらかじめ設定されている閾値を超えていると判定した場合、コンテンツ情報作成部160は、表示中のコンテンツの内容を示すコンテンツ情報を作成すれば良い。
…(中略)…
【0055】
次に、図1に示した通信端末200-1からコンテンツ情報が要求された場合の処理について説明する。
【0056】
図10は、図1に示した通信端末200-1からコンテンツ情報が要求された場合の処理の一例を説明するためのシーケンス図である。
【0057】
通信端末200-1の入力部210が所定の入力を受け付けた場合、制御部220は通信部230を用いて、通信ネットワーク300を介して通信端末100-1へコンテンツ情報の取得を要求する(ステップS11)。この要求には、通信端末100-1にて、コンテンツ情報の取得の要求がなされたことを認識することができる要求信号を用いるものでも良い。
【0058】
通信端末200-1からコンテンツ情報の取得が要求されると、コンテンツ情報提供部170は、記憶部180のコンテンツ情報テーブルに記憶されているコンテンツ情報を読み出す(ステップS12)。そして、コンテンツ情報提供部170は、読み出したコンテンツ情報を、通信部140を用いて通信ネットワーク300を介して通信端末200-1へ送信する(ステップS13)。」

以上の記載から,第1の実施の形態においては,第1の情報処理端末に「条件判定部」が存在し,当該第1の情報処理端末の「条件判定部(130)」で生体情報が所定の条件を満たしていると判定した場合に,第1の情報処理端末で「コンテンツ情報を作成」していることが読み取れる。そして,第1の情報処理端末で作成される「コンテンツ情報」は,出力部150がコンテンツを表示中であると判定した場合,または,出力部がコンテンツを表示中であると判定された場合に閲覧者の脈拍数を測定し当該脈拍数があらかじめ設定された条件を満たした場合に,作成されるものであることのみが記載されている。
当該第1の実施の形態においては,第2の情報処理端末に,「条件判定部」を設けることは記載されておらず,また,「コンテンツ情報」の作成が,生体情報の測定時間やコンテンツ(情報)の出力時間の関係において作成されること,すなわち,生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成することなどについては記載が認められない。
当初明細書等のその他の箇所を参酌しても,明細書段落185乃至199等に,第9の実施の形態として「条件判定部」が第2の情報処理端末に設けられ,第1の情報処理端末において,前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成することなどの,第4の実施の形態と同様な記載は認められるものの,当該箇所にも,第1の情報処理端末に「条件判定部」を設け,かつ,当該第1の情報処理端末において生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成することについては記載が認められない。
以上の検討から,上記解釈2の内容は,当初明細書等に記載が無い事項と認められる。

(3)新規事項のむすび
したがって,本件補正は,特許法17条の2第3項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

4 目的要件
上記「3 新規事項」において検討したとおり,本件補正は,特許法17条の2第3項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものであるが,仮に,本件補正が,当初明細書等の範囲内でなされたものであるとして,本件補正が,特許法17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件補正が,特許法17条の2第5項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法36条5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。

(1)補正事項1,3,5について
補正事項1は,補正前の請求項1の特定事項である「生体情報取得部」について,「生体情報を該生体情報測定部から取得する」に際して,「該生体情報を測定した測定時刻とともに」との限定事項を付加するものといえる。
そうすると,補正事項1の目的要件は,特許請求の範囲の減縮(特許法36条5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)(以下,「限定的減縮」という)に該当する。
また,補正事項3及び5についても,補正前の請求項11及び請求項2に関し同様の補正を行うものであって,補正事項1と同様,限定的減縮に該当する。

(2)補正事項2,4,6について
補正事項2は,補正前の請求項1の特定事項である「前記第1の出力部が出力している情報」について,「前記第1の出力部が前記情報を出力した出力時刻とともに前記情報を記憶しておき」との限定事項,及び,「前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の」との限定事項を付加するものといえる。
そうすると,補正事項2の目的要件は,限定的減縮に該当する。
また,補正事項4及び6についても,概ね補正前の請求項11及び請求項2に関し同様の補正を行うものであって,補正事項2と同様,限定的減縮に該当する。

(3)補正事項7について
補正事項7は,補正前の請求項3は,「請求項1または2に記載の情報処理システムであって」と記載されていることから,単に誤記を訂正したものと認められ,補正事項7の目的要件は,「誤記の訂正」に該当する。

(4)補正事項8について
補正事項8の目的要件は,請求項の削除に該当する。

(5)目的要件むすび
本件補正は,特許法17条の2第5項の規定を満たしている。


5 独立特許要件
(1)上記「3 新規事項」において検討したとおり,本件補正は,特許法17条の2第3項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものであるが,仮に本件補正が,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものであるとすると,上記「4 目的要件」において検討したとおり,本件補正は,特許法17条の2第5項の規定する「限定的減縮」を目的とする補正事項1乃至6を含むものであるので,仮に,本件補正が,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものとして,本件補正が,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,以下に検討する。

(2)補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,上記「1 補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,次の記載内容によって特定されるものである。

「【請求項1】
第1の情報処理端末と、第2の情報処理端末とを有する情報処理システムであって、
前記第1の情報処理端末は、前記第1の情報処理端末を操作している利用者の生体情報を測定する生体情報測定部と、情報を出力する第1の出力部と、前記生体情報測定部が測定した生体情報を、該生体情報を測定した測定時刻とともに該生体情報測定部から取得する生体情報取得部とを具備し、
前記第1の情報処理端末または前記第2の情報処理端末は、前記生体情報取得部が取得した生体情報が、あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する条件判定部を具備し、
前記第1の情報処理端末は、前記第1の出力部が前記情報を出力した出力時刻とともに前記情報を記憶しておき、前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成するコンテンツ情報作成部と、前記コンテンツ情報作成部が作成したコンテンツ情報を前記第2の情報処理端末へ提供するコンテンツ情報提供部とをさらに具備し、
前記第2の情報処理端末は、前記コンテンツ情報提供部から提供されたコンテンツ情報が示す情報を出力する第2の出力部をさらに具備することを特徴とする情報処理システム。」

(3)引用例に記載の事項
(3-1)引用例1
原審における平成27年12月25日付けの拒絶理由(以下,「原審拒絶理由」という。)に引用された,本願出願前に頒布され既に公知である,特開2005-150796号公報(平成17年6月9日公開。以下「引用例1」という。)には,関連する図面と共に次の事項が記載されている。

A 「【0001】
本発明は、例えば、心拍数等の生体情報に基づいて、コンテンツを出力する出力装置等に関する。
…(中略)…
【0003】
しかしながら、従来の受信装置において、例えば、出力するコンテンツの内容が、ホラー映画である場合、心臓に負担をかけられない高年齢者、心臓病患者、幼児等には、刺激が強く、身体的に悪影響を与えることになり問題である。また、最近のインターネット配信、TV放送等においても、アダルト系の刺激の強い内容のコンテンツが多数存在し、子供のいる家庭等では、児童育成上の問題、倫理問題として、大きな社会問題になっている。本発明は、かかる問題を解決するためになされたものである。本発明の出力装置は、コンテンツの内容が例えば、身体的に刺激が強いものである場合に、例えば、コンテンツの出力方法を変更することを目的にしている。」

B 「【0014】
(実施の形態1)
本実施の形態において、出力装置は、受け付けた生体情報に基づいて、コンテンツを出力する。以下に、出力装置の構成およびその動作について説明する。
図1は、本実施の形態における出力装置100の構成を示すブロック図である。出力装置100は、コンテンツ保持部101、生体情報受付部102、判断部103、出力部104を有する。」

C 「【0016】
生体情報受付部102は、視聴者の生体に関する情報である生体情報を受け付ける。「生体情報」とは、例えば、心拍数、発汗、体温、眼球の動き、脳波、血圧等の情報である。生体情報は、アナログの情報であっても良く、A/D変換してデジタル化した情報であっても良い。「受け付け」とは、心拍数、発汗、体温、眼球の動き、脳波、血圧等の情報を取得することである。心拍数の情報を受け付ける場合、生体情報受付部102は、例えば、心拍数計測手段等で実現されうる。
…(中略)…
【0017】
判断部103は、生体情報受付部102が受け付けた生体情報が一定の条件を満たすか否かを判断する。「一定の条件」とは、例えば、心拍数の場合、正常範囲の心拍数(以下、「基準値」という。)から、異常な範囲の心拍数になったこと等である。
…(中略)…
【0018】
出力部104は、判断部103の判断結果に基づいて、コンテンツを出力する。また、出力部104は、判断部の判断結果に基づいて、異なるコンテンツを出力しても良い。かかる場合、コンテンツ保持部101は、2以上のコンテンツを保持している。また、出力部104は、判断部103の判断結果に基づいて、コンテンツの出力を停止しても良い。また、出力部104は、判断部103の判断結果に基づいて、例えば、停止されていたコンテンツの出力を開始しても良い。また、出力部104は、判断部103の判断結果に基づいて、コンテンツにモザイク処理をして出力しても良い。また、出力部104は、判断部103の判断結果に基づいて、コンテンツに対するモザイク処理を解除してコンテンツを出力しても良い。「モザイク処理」または「モザイク処理を解除する処理」は、状来技術であり、詳細な説明は省略する。出力部104は、例えば、外部装置のモニター、PDP、液晶DP、映画用スクリーン、ホームシアター用スクリーン、PC、PDA、携帯電話等に出力する。出力部104は、送信手段とその制御ソフト等を有して実現されうる。また、判断結果に基づいて、コンテンツを出力する場合、出力部104は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。「判断結果に基づいて、コンテンツを出力する」ための処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。また、判断結果に基づいて、異なるコンテンツを出力する場合、出力部104は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。「判断結果に基づいて、異なるコンテンツを出力する」ための処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。」

D 図3

(3-2)引用例2
原審拒絶理由に引用された,本願出願前に頒布され既に公知である,特開2012-73818号公報(平成24年4月12日公開。以下「引用例2」という。)には,関連する図面と共に次の事項が記載されている。

E 「【0008】
図1によれば、未成年者が所持する監視対象用端末2は、アクセスネットワーク及びインターネットを介して複数のWebサーバ5に対して、自由にアクセスすることができる。Webサーバ5は、WWW(World Wide Web)サーバ機能を有し、監視対象用端末2へWebページを送信する。ここで、Webサーバ5として、塾の掲示板のような正当サイトのみならず、アダルトサイト、出会い系の掲示板、自殺サイトのような有害サイトも存在している。
…(中略)…
【0014】
このように、従来のフィルタリングサービスやアクセス履歴通知サービスは、必ずしも未成年者及び保護者にとって納得のいくものとはなっていない。いずれのサービスも、過剰且つ画一的にしか制限できないために、結局、未成年者の携帯電話機からの有害サイトへのアクセスを適切に管理することができなかった。
【0015】
そこで、本発明は、特に未成年者の携帯電話機からのWebサイトに対するアクセスを過剰に制限することなく、保護者の携帯電話機からのそのアクセス履歴の監視負担を軽減することができるアクセス履歴管理サーバ、プログラム及び方法を提供することを目的とする。」

F 「【0036】
[アクセス履歴蓄積部12]
アクセス履歴蓄積部12は、監視対象用端末毎(アドレス、電話番号又は識別番号の毎)に、アクセスされた複数のWebサイトのアドレスを蓄積する。アクセス履歴は、例えば[年月日]、[時刻]及び[URL]を単位とする。ここで、所定時間範囲内(例えば3秒程度)にアクセスされたとして記録された複数のURLについては、最初のURL以外は削除される。」

G 「【0044】
[統計値算出部14]
統計値算出部14は、アクセス履歴蓄積部12からアクセス履歴を入力し、監視対象用端末毎に、各カテゴリの所定統計値を算出する。ここで、アクセス履歴は、所定期間(例えば1ヶ月間)単位であることが好ましい。所定統計値とは、カテゴリ毎に算出された、閲覧回数であってもよい。また、当該監視対象用端末2からアクセスされた全アクセス数に対する各カテゴリの所属割合であってもよい。統計値算出部14は、所定統計値を、平均統計値算出部15及び統計値判定部17へ出力する。
【0045】
[閾値記憶部16]
閾値記憶部16は、監視対象用端末毎に、各カテゴリの所定統計値に対する閾値を予め設定し、記憶する。閾値は、例えば、出会い系、自殺又はアダルトといったカテゴリ毎に設定される。ここでの閾値は、所定統計値に対応する値であって、閲覧回数であってもよいし、全アクセス数に対する各カテゴリの所属割合であってもよい。閾値は、ネットワークを介して保護者の管理用端末3から設定されるものであってもよいし、アクセス履歴管理サーバ1内で予め設定されたものであってもよい。
【0046】
[統計値判定部17]
統計値判定部17は、統計値算出部14から所定統計値を入力し、カテゴリ毎に、所定統計値が閾値以上となったか否かを判定する。
【0047】
[警告情報送信部18]
警告情報送信部18は、統計値判定部17によって真と判定された場合、ネットワークを介して、当該監視対象用端末2に対応する管理用端末3へ、当該カテゴリについて閾値以上となった旨の警告情報を送信する。警告情報は、カテゴリ毎の閲覧回数、及び/又は、各カテゴリに所属する割合を含むものであってもよい。また、警告情報は、電子メール、ショートメール又はWebページによって、管理用端末3へ送信されるものであってもよい。」

(3-3)周知文献1
本願出願前に頒布され既に公知である,特開2010-16482号公報(平成22年1月21日公開。以下「周知例1」という。)には,関連する図面と共に次の事項が記載されている。

H 「【0039】
ハイライト抽出部130は、盛り上がり度取得部120が取得した盛り上がり度をもとに、番組コンテンツのハイライトを抽出するものである。
【0040】
また、ハイライト抽出部130は、盛り上がり度取得部120が取得した盛り上がり度と閾値記憶部140が記憶する閾値との比較を行うこととしてもよい。その場合には、ハイライト抽出部130は、盛り上がり度が閾値を超える時刻または閾値未満となる時刻と、番組コンテンツに付与された番組コンテンツ192を識別可能とする番組識別情報とを対応付けた情報を、ハイライト情報として番組情報記憶部150に記憶する。…(中略)…時刻とは、例えば、番組コンテンツの先頭からの再生経過時間であり、時刻が所定時間継続する場合には、その開始時刻および終了時刻と番組識別情報とを対応付けた情報を、ハイライト情報として番組情報記憶部150に記憶するとすればよい。このようにして、番組コンテンツのハイライトを抽出する。」

(3-4)周知文献2
本願出願前に頒布され既に公知である,特開2012-74773号公報(平成24年4月12日公開。以下「周知例2」という。)には,関連する図面と共に次の事項が記載されている。

I 「【0018】
本実施形態の編集装置100は、上記構成を有することで、コンテンツを視聴している視聴者の生体情報に所定の反応のあったシーンをそのコンテンツの中から特定することになるため、視聴者の嗜好に即したシーンを特定することができる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態の編集装置100について詳細に説明する。
…(中略)…
【0020】
本実施形態の編集装置100は、生体情報取得部1と、視聴者反応抽出部2と、シーン切換抽出部3と、シーン特定部4と、を有して構成する。
【0021】
生体情報取得部1は、映像コンテンツを視聴している時の視聴者の生体情報を取得するものである。本実施形態の生体情報取得部1は、マイク11と、カメラ12と、を有して構成する。マイク11は、視聴者の音声などを取得する。カメラ12は、視聴者の画像などを取得する。なお、生体情報取得部1は、視聴者の生体情報を取得することが可能であれば、あらゆるものが適用可能である。例えば、視聴者の体温を測定する温度センサや、視聴者の心拍数を測定する心拍数センサなどが挙げられる。
…(中略)…
【0029】
シーン切換抽出部3は、再生装置200で再生している映像コンテンツを解析し、映像コンテンツのシーン切換点を抽出する。シーン切換抽出部3は、コンテンツ解析部31と、シーン切換検出部32と、を有して構成する。
…(中略)…
【0042】
センシング部26は、ステップB3で算出した各感情の感情ポイントの中で、最も感情ポイントの高い感情が変わったか否かを判定し(ステップB4)、最も感情ポイントの高い感情が変わった場合は(ステップB4/Yes)、感情判定の切り替わりポイントとして検出する(ステップB5)。これにより、図6(b)に示すような感情判定の切り替わりポイントを検出することができる。なお、図6(b)に図示する感情判定の切り替わりポイントは、一部分であり、図6(a)に示す各感情の感情ポイントの中で、最も感情ポイントの高い感情が変わった部分は、全て感情判定の切り替わりポイントとして検出することになる。」

J 図6

(3-5)周知文献3
本願出願前に頒布され既に公知である,特開2012-58812号公報(平成24年3月22日公開。以下「周知例3」という。)には,関連する図面と共に次の事項が記載されている。

K 「【0013】
トレンドデータ取得部11は、監視対象の機器の動作に関する値を計測するコントローラから、予め設定された短時間周期、例えば0.1分周期で計測された計測値をトレンドデータとして取得する。このトレンドデータを取得する短時間周期を、第1時間周期とする。
【0014】
変化率判定部12は、トレンドデータ取得部11で取得された、最新のトレンドデータと、1つ前のトレンドデータとの間の変化率を算出し、この変化率が予め設定された閾値を超えるか否かを判定する第1判定を順次行う。
…(中略)…
【0017】
また、監視周期中に閾値を超えた変化率が検出されたときには、当該監視周期中はトレンドデータ取得部11から第1時間周期でトレンドデータを取得し、トレンドデータ保存部14に送出する。」

(3-6)周知文献4
本願出願前に頒布され既に公知である,特開2009-175993号公報(平成21年8月6日公開。以下「周知例4」という。)には,関連する図面と共に次の事項が記載されている。

L 「【0015】
トレンド保存処理6やイベント保存処理7は、プラントデータベース8からプラントのリアルタイムデータを読出してトレンドDB4及びイベントDB5に蓄積し、蓄積されたデータは、トレンドグラフ表示やイベント表示に利用される。トレンドDB4は、サイクリック方式で保存するため、一定期間分を常時蓄積して、古いデータから上書き消去される。
【0016】
トレンドDB4及びイベントDB5は、トリガ保存処理部11に接続され、トリガ保存処理部11は、トリガ設定画面10及び再表示用データファイル14に接続されている。トリガ設定画面10で故障信号や状態信号の変化を登録しておき、該当する信号が変化したときに、トレンドDB4とイベントDB5のデータを再表示用データファイル14に保存する。データ保存処理15では、トリガ発生後の一定期間分のデータをプラントデータベース8から読み出して、再表示用データファイル14に保存を行う。」

(4)引用例に記載の発明
(4-1)引用例1に記載の発明
ア 上記Aには「本発明は、例えば、心拍数等の生体情報に基づいて、コンテンツを出力する出力装置等に関する。」,「アダルト系の刺激の強い内容のコンテンツが多数存在し、子供のいる家庭等では、児童育成上の問題、倫理問題として、大きな社会問題になっている。本発明は、かかる問題を解決するためになされたものである。本発明の出力装置は、コンテンツの内容が例えば、身体的に刺激が強いものである場合に、例えば、コンテンツの出力方法を変更することを目的にしている。」と記載されていることから,引用例1には,“コンテンツの内容がアダルト系などの身体的に刺激の強い内容のものである場合に,コンテンツの出力方法を変更することを目的とする出力装置”が記載されているといえる。

イ 上記Bには,「出力装置は、受け付けた生体情報に基づいて、コンテンツを出力する。…(中略)…出力装置100は、コンテンツ保持部101、生体情報受付部102、判断部103、出力部104を有する。」と記載されていることから,引用例1には,“受け付けた生体情報に基づいて,コンテンツを出力する出力装置であって,前記出力装置は,コンテンツ保持部101,生体情報受付部102,判断部103,出力部104を有”することが記載されているといえる。

ウ 上記Cには,「生体情報受付部102は、視聴者の生体に関する情報である,生体情報を受け付ける。「生体情報」とは、例えば、心拍数、発汗、体温、眼球の動き、脳波、血圧等の情報である。…(中略)…心拍数の情報を受け付ける場合、生体情報受付部102は、例えば、心拍数計測手段等で実現されうる。」と記載されていることから,引用例1には,“視聴者の生体に関する情報である例えば心拍数などの生体情報を受け付けるものであって,心拍数計測手段等で実現される生体情報受付部102”が記載されているといえる。

エ 上記Cには,「生体情報受付部102は、視聴者の生体に関する情報である,生体情報を受け付ける。…(中略)…「受け付け」とは、心拍数、発汗、体温、眼球の動き、脳波、血圧等の情報を取得することである。」と記載されていることから,引用例1には,“生体情報受付部102は,心拍数等の生体情報を取得”することが記載されているといえる。

オ 上記Cには,「判断部103は、生体情報受付部102が受け付けた生体情報が一定の条件を満たすか否かを判断する。「一定の条件」とは、例えば、心拍数の場合、正常範囲の心拍数(以下、「基準値」という。)から、異常な範囲の心拍数になったこと等である。」と記載されていることから,引用例1には,“生体情報受付部102が受け付けた生体情報が心拍数の場合正常範囲の心拍数から異常な範囲の心拍数になったことの条件を満たすか否かを判断する判断部103”が記載されているといえる。

カ 上記Cには,「出力部104は、判断部103の判断結果に基づいて、コンテンツを出力する。また、出力部104は、判断部の判断結果に基づいて、異なるコンテンツを出力しても良い。…(中略)…また、出力部104は、判断部103の判断結果に基づいて、例えば、停止されていたコンテンツの出力を開始しても良い。また、出力部104は、判断部103の判断結果に基づいて、コンテンツにモザイク処理をして出力しても良い。また、出力部104は、判断部103の判断結果に基づいて、コンテンツに対するモザイク処理を解除してコンテンツを出力しても良い。」と記載されていることから,引用例1には,“判断部103の判断結果に基づいて,コンテンツを出力したり,異なるコンテンツを出力したり,停止されていたコンテンツの出力を開始したり,コンテンツにモザイク処理をして出力したり,コンテンツに対するモザイク処理を解除してコンテンツを出力したりする出力部104”が記載されているといえる。

キ 上記Cには,「判断結果に基づいて、コンテンツを出力する場合、出力部104は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。「判断結果に基づいて、コンテンツを出力する」ための処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され」ることが記載されていることから,引用例1には,“出力部104はMPUやメモリ等から実現され,判断結果に基づいて、コンテンツを出力するための処理はソフトウェアで実現”されることが記載されているといえる。

ク 上記Cには,「出力部104は、例えば、外部装置のモニター、PDP、液晶DP、映画用スクリーン、ホームシアター用スクリーン、PC、PDA、携帯電話等に出力する。」ことが記載され,また,上記Dの図3を参照すると,「出力装置100」は,「大型PDP」,「ブラウン管モニター」,「液晶DP」,「携帯電話」,「映画のスクリーン」,「ホームシアター用スクリーン」,「PC」及び「PDA」などの機器が矩形状の枠囲み内に描かれ,これらは「出力装置100」が接続される,コンテンツが出力される先の,「出力装置100」とは別体の何らかの装置群が例示されているものであることを読取ることができるから,これら「外部装置のモニター,PDP,液晶DP,映画用スクリーン,ホームシアター用スクリーン,PC,PDA,携帯電話等」は,「出力装置100」とは別体の装置であることを読取ることができ,したがって引用例1には,“出力部104は,当該出力部104とは別体の,外部装置のモニター,PDP,液晶DP,映画用スクリーン,ホームシアター用スクリーン,PC,PDA,携帯電話に出力”するものであることを読取ることができる。

ケ 以上,上記ア?クにおいて検討した事項から,引用例1には次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。

「受け付けた生体情報に基づいて,コンテンツを出力する出力装置であって,前記出力装置は,コンテンツ保持部101,生体情報受付部102,判断部103,出力部104を有し,
視聴者の生体に関する情報である例えば心拍数などの生体情報を受け付けるものであって,心拍数計測手段等で実現される前記生体情報受付部102と,
前記生体情報受付部102は,心拍数等の生体情報を取得し,
前記生体情報受付部102が受け付けた生体情報が心拍数の場合正常範囲の心拍数から異常な範囲の心拍数になったことの条件を満たすか否かを判断する前記判断部103と,
前記判断部103の判断結果に基づいて,コンテンツを出力したり,異なるコンテンツを出力したり,停止されていたコンテンツの出力を開始したり,コンテンツにモザイク処理をして出力したり,コンテンツに対するモザイク処理を解除してコンテンツを出力したりする前記出力部104と,を有し,
前記出力部104はMPUやメモリ等から実現され,判断結果に基づいて、コンテンツを出力するための処理はソフトウェアで実現され,
前記出力部104は,当該出力部104とは別体の,外部装置のモニター,PDP,液晶DP,映画用スクリーン,ホームシアター用スクリーン,PC,PDA,携帯電話に出力する,
コンテンツを出力する出力装置。」

(4-2)引用例2に記載された発明
コ 上記Eには,「未成年者が所持する監視対象用端末2は、アクセスネットワーク及びインターネットを介して複数のWebサーバ5に対して、自由にアクセスすることができる。Webサーバ5は、WWW(World Wide Web)サーバ機能を有し、監視対象用端末2へWebページを送信する。ここで、Webサーバ5として、塾の掲示板のような正当サイトのみならず、アダルトサイト、出会い系の掲示板、自殺サイトのような有害サイトも存在している。…(中略)…未成年者の携帯電話機からの有害サイトへのアクセスを適切に管理することができなかった。…(中略)…本発明は、…(中略)…アクセス履歴管理サーバ、プログラム及び方法を提供することを目的」と記載されていることから,引用例2には,“未成年者の携帯電話機である,監視対象用端末2からのアダルトサイトのような有害サイトへのアクセスを適切に管理することを目的とした,アクセス履歴管理方法”が記載されているといえる。

サ 上記Fには,「監視対象用端末毎(アドレス、電話番号又は識別番号の毎)に、アクセスされた複数のWebサイトのアドレスを蓄積する。アクセス履歴は、例えば[年月日]、[時刻]及び[URL]を単位とする」と記載されていることから,引用例2には,“監視対象用端末毎に,[時刻]及び[URL]を単位として,アクセスされた複数のWebサイトのアドレスを蓄積”することが記載されているといえる。

シ 上記Gには,「監視対象用端末毎に、各カテゴリの所定統計値を算出する。ここで、アクセス履歴は、所定期間(例えば1ヶ月間)単位であることが好ましい」と記載されていることから,引用例2には,“監視対象用端末毎に,各カテゴリの所定統計値を算出”すること,及び,“アクセス履歴は、所定期間単位であ”ることが記載されているといえる。

ス 上記Gには,「閾値は、例えば、出会い系、自殺又はアダルトといったカテゴリ毎に設定される。…(中略)…統計値判定部17は、統計値算出部14から所定統計値を入力し、カテゴリ毎に、所定統計値が閾値以上となったか否かを判定する。」ことが記載されていることから,引用例2には,“統計値判定部17は,統計値算出部14から所定統計値を入力し,カテゴリ毎に,所定統計値が閾値以上となったか否かを判定”することが記載されているといえる。

セ 上記Gには,「統計値判定部17によって真と判定された場合、ネットワークを介して、当該監視対象用端末2に対応する管理用端末3へ、当該カテゴリについて閾値以上となった旨の警告情報を送信する。…(中略)…警告情報は、電子メール、ショートメール又はWebページによって、管理用端末3へ送信されるものであってもよい。」ことが記載されていることから,引用例2には,“統計値判定部17によって真と判定された場合,ネットワークを介して、監視対象用端末2に対応する管理用端末3へ,当該カテゴリについて閾値以上となった旨の警告情報を電子メールによって,管理用端末3へ送信”されることが記載されているといえる。

ソ 以上,上記コ?セにおいて検討した事項から,引用例2には次の発明(以下,「引用例2記載発明」という。)が記載されているものと認める。

「未成年者の携帯電話機である,監視対象用端末2からのアダルトサイトのような有害サイトへのアクセスを適切に管理することを目的とした,アクセス履歴管理方法であって,
監視対象用端末毎に,[時刻]及び[URL]を単位として,アクセスされた複数のWebサイトのアドレスを蓄積し,
前記監視対象用端末毎に,各カテゴリの所定統計値を算出し,
アクセス履歴は、所定期間単位であり,
統計値判定部17は,統計値算出部14から所定統計値を入力し,カテゴリ毎に,所定統計値が閾値以上となったか否かを判定し,
統計値判定部17によって真と判定された場合,ネットワークを介して、前記監視対象用端末2に対応する管理用端末3へ,当該カテゴリについて閾値以上となった旨の警告情報を電子メールによって,前記管理用端末3へ送信する
アクセス履歴管理方法。」

(5)本件補正発明と引用発明との対比
(ア)引用発明の「出力装置は,コンテンツ保持部101,生体情報受付部102,判断部103,出力部104を有し,視聴者の生体に関する情報である例えば心拍数などの生体情報を受け付けるものであって,心拍数計測手段等で実現される前記生体情報受付部102」と本件補正発明の「第1の情報処理端末を操作している利用者の生体情報を測定する生体情報測定部と、情報を出力する第1の出力部と、前記生体情報測定部が測定した生体情報を、該生体情報を測定した測定時刻とともに該生体情報測定部から取得する生体情報取得部とを具備」とを対比すると,引用発明の「出力装置」は,本件補正発明の「情報処理システム」を構成する「第1の情報処理端末」に対応し得る。そして,引用発明の「視聴者の生体に関する情報である例えば心拍数などの生体情報を受け付けるものであって,心拍数計測手段等で実現される前記生体情報受付部102」は,本件補正発明の「第1の情報処理端末を操作している利用者の生体情報を測定する生体情報測定部」に対応するといえる。

(イ)引用発明の「出力部104」は,「コンテンツを出力する」ものであり,引用発明にいう「コンテンツ」は,本件補正発明の「情報」といい得るものであるから,引用発明の「出力部104」は,本件補正発明の「情報を出力する第1の出力部」に相当する。

(ウ)引用発明の「視聴者の生体に関する情報である例えば心拍数などの生体情報を受け付けるものであって,心拍数計測手段等で実現される生体情報受付部102」は,「心拍数等の生体情報を取得」するものでもあることから,本件補正発明の「前記生体情報測定部が測定した生体情報を、該生体情報を測定した測定時刻とともに該生体情報測定部から取得する生体情報取得部」とは,“前記生体情報測定部が測定した生体情報を,該生体情報測定部から取得する生体情報取得部”である点で一致する。

(エ)引用発明の「前記生体情報受付部102が受け付けた生体情報が心拍数の場合正常範囲の心拍数から異常な範囲の心拍数になったことの条件を満たすか否かを判断する判断部103」のうち,「正常範囲の心拍数から異常な範囲の心拍数になったことの条件」は,本件補正発明の「あらかじめ設定された条件」と対応し得るものであり,引用発明の「出力装置」(第1の情報処理端末)は「判断部103」を有していることから,引用発明の「前記生体情報受付部102が受け付けた生体情報が心拍数の場合正常範囲の心拍数から異常な範囲の心拍数になったことの条件を満たすか否かを判断する前記判断部103」は,本件補正発明の「第1の情報処理端末は、前記生体情報取得部が取得した生体情報が、あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する条件判定部」に相当するといえる。

(オ)引用発明の「前記判断部103の判断結果に基づいて,コンテンツを出力したり,異なるコンテンツを出力したり,停止されていたコンテンツの出力を開始したり,コンテンツにモザイク処理をして出力したり,コンテンツに対するモザイク処理を解除してコンテンツを出力したりする前記出力部104」と,本件補正発明の「前記第1の出力部が前記情報を出力した出力時刻とともに前記情報を記憶しておき、前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成する」ことと対比すると,引用発明では,「判断部103の判断結果に基づいて」,「コンテンツを出力したり,異なるコンテンツを出力したり,停止されていたコンテンツの出力を開始したり,コンテンツにモザイク処理をして出力したり,コンテンツに対するモザイク処理を解除してコンテンツを出力したり」といった様々な所定の処理を行っているといえ,引用発明の「出力装置」(第1の情報処理端末)は,「判断部103」を有していることから,本件補正発明の「前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成する」こととは,“第1の情報処理端末は,生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合,所定の処理を行う”点で共通するといえる。

(カ)引用発明の「出力装置」は,「出力部104」が「当該出力部104とは別体の,外部装置のモニター,PDP,液晶DP,映画用スクリーン,ホームシアター用スクリーン,PC,PDA,携帯電話に出力する」ものであるから,「出力装置」と「携帯電話」の2つの装置からなる,“システム”といい得る。そして,引用発明の「出力部104」は,「MPUやメモリ等から実現され,判断結果に基づいて、コンテンツを出力するための処理はソフトウェアで実現され」ることからして,両者とも“情報処理システム”といい得,引用発明の「携帯電話」は,“情報処理端末”といえるものであることから,上記(ア)で検討したことと併せて考慮するならば,引用発明と本件補正発明とは,“第1の情報処理端末と、第2の情報処理端末とを有する情報処理システム”で共通するといえる。

(キ)以上(ア)?(カ)において検討した事項を踏まえると,本件補正発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

(一致点)
「第1の情報処理端末と、第2の情報処理端末とを有する情報処理システムであって,
前記第1の情報処理端末は,前記第1の情報処理端末を操作している利用者の生体情報を測定する生体情報測定部と,情報を出力する第1の出力部と,前記生体情報測定部が測定した生体情報を,該生体情報測定部から取得する生体情報取得部とを具備し,
前記第1の情報処理端末は,前記生体情報取得部が取得した生体情報が,あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する条件判定部を具備し、
前記第1の情報処理端末は,前記条件判定部が,前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合,所定の処理を行う,
情報処理システム。」

(相違点1)
本件補正発明の「生体情報取得部」は,「生体情報測定部が測定した生体情報を、該生体情報を測定した測定時刻とともに該生体情報測定部から取得する」ものであるのに対し,引用発明では,単に生体情報を取得するものであって,該生体情報を測定した測定時刻とともに取得するものであるとは特定されていない点。

(相違点2)
本件補正発明は,「条件判定部」が,「第1の情報処理端末または前記第2の情報処理端末」に具備されるのに対し,引用発明は,条件判定部に相当する「判断部103」は「第1の情報処理端末」に対応する「出力装置」にのみ有するものである点。

(相違点3)
本件補正発明が,「前記第1の出力部が前記情報を出力した出力時刻とともに前記情報を記憶しておき、前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の前記情報の内容を示すコンテンツ情報を作成するコンテンツ情報作成部」を有するのに対し,引用発明はそのような構成を有しない点。

(相違点4)
本件補正発明が,「第1の情報処理端末」は「前記コンテンツ情報作成部が作成したコンテンツ情報を前記第2の情報処理端末へ提供するコンテンツ情報提供部」を具備し,「第2の情報処理端末」は,「前記コンテンツ情報提供部から提供されたコンテンツ情報が示す情報を出力する第2の出力部」を具備するのに対し,引用発明ではそのような構成を有しない点。

(6)当審の判断
(6-1)相違点1について
一般に,何らかの情報を取得するにあたり,当該情報を取得した「時刻」と共に記録することは,周知例1(上記H参照。)の段落40(「盛り上がり度が閾値を超える時刻または閾値未満となる時刻と、番組コンテンツに付与された番組コンテンツ192を識別可能とする番組識別情報とを対応付けた情報を、ハイライト情報として番組情報記憶部150に記憶する」の記載を参照。)や,周知例2(上記I参照。)の段落42(なお,上記Jの図6と共に参照すると,図6の(a)として,「喜怒哀楽」を縦に示しつつ,(b)として,「感情判定切り替わりポイント」であることを示しつつ,横方向に延びる矢印様の図形が図示されていて,この矢印様の図形の横方向への延びが,時間を示していることは当業者に明らかであることから,周知例2の段落42にいう,「感情判定の切り替わりポイント」は,時刻情報によって特定されているといえる。)などに散見されるとおり,周知技術に過ぎず,したがって引用発明において,生体情報測定部が測定した生体情報を、該生体情報を測定した測定時刻とともに該生体情報測定部から取得するよう構成することに特段の困難性は無く,したがって本相違は格別なものではない。

(6-2)相違点2について
本件補正発明は,「条件判定部」が,「第1の情報処理端末または前記第2の情報処理端末」に具備されるものであるから,少なくとも,「条件判定部」が「第1の情報処理端末」に設けられる態様の点で,引用発明とは一致している。
また,当該「条件判定部」は,「前記生体情報取得部が取得した生体情報が、あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する」機能をもつものであって,そのような機能をいずれの端末に設けるかは,単なる設計的事項に過ぎないことから,本相違は格別なものではない。

(6-3)相違点3について
上記(6-1)において判断したとおり,何らかの情報を取得するにあたり,当該情報を取得した「時刻」と共に記録すること,すなわち,第1の出力部が情報を出力した時刻とともに前記情報(コンテンツ)を記憶することは,周知例1(上記H参照。)の段落40や,周知例2(上記I参照。)の段落42などに散見されるとおり,周知技術に過ぎず,また一般に,測定した情報を,測定時刻の前後の時刻間に含まれる情報として一定期間記憶しておくことも,周知例3(上記K参照。)や周知例4(上記L参照。)に記載されているように,単なる周知技術に過ぎない。そして,当該一定期間記憶された情報(測定時刻の前後の時刻間に含まれる情報)を,後に参照するために「時刻」を用いて指定することも適宜なし得る程度のことに過ぎず,当該参照の際の情報(コンテンツ)の内容を示すコンテンツ情報を作成する程度のことに,特段の困難性は認められず,本相違は格別なものではない。

(6-4)相違点4について
一般に,未成年者などの携帯電話機で,アダルトサイトのような有害サイトにアクセスが行われた際,当該アクセスされたことを示す情報を,例えば当該未成年者の親などの保護者へ通知することは,引用例2記載発明において,“前記監視対象用端末2(第1の情報処理端末)に対応する管理用端末3(第2の情報処理端末)へ,当該カテゴリについて閾値以上となった旨の警告情報(コンテンツ情報が示す情報)を電子メールによって,前記管理用端末3へ送信(提供)する”ことにみられるように単なる周知技術に過ぎない。
すなわち,引用発明の出力装置(第1の情報処理端末)において,同様にアダルト系などの情報に接した際の対処方法としてコンテンツの出力方法を変更したりする処理に加えて,当該有害サイトに関する情報の内容を示すコンテンツ情報を通知(提供)するよう構成することに特段の困難性は無く,また,通知された情報が通知(提供)された先の端末(第2の情報処理端末)において表示(出力)されることも自明であるから,本相違は格別なものではない。

(6-5)小括
以上検討したとおり,相違点1乃至4はいずれも格別のものではなく,そして,本件補正発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。
よって,本件補正発明は,引用発明,引用例2記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法29条2項の規定により特許出願の際,独立して特許を受けることができない。

(7)独立特許要件むすび
したがって,本件補正補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

6 補正却下むすび
上記「3 新規事項」において検討したとおり,本件補正は,特許法17条の2第3項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものであり,
上記「5 独立特許要件」において検討したとおり,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
平成28年9月29日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成27年6月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,上記「第2 平成28年9月29日付けの手続補正の却下の決定」の「1 補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した,次のとおりのものである。

「第1の情報処理端末と、第2の情報処理端末とを有する情報処理システムであって、
前記第1の情報処理端末は、前記第1の情報処理端末を操作している利用者の生体情報を測定する生体情報測定部と、情報を出力する第1の出力部と、前記生体情報測定部が測定した生体情報を該生体情報測定部から取得する生体情報取得部とを具備し、
前記第1の情報処理端末または前記第2の情報処理端末は、前記生体情報取得部が取得した生体情報が、あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する条件判定部を具備し、
前記第1の情報処理端末は、前記条件判定部が、前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合、前記第1の出力部が出力している情報の内容を示すコンテンツ情報を作成するコンテンツ情報作成部と、前記コンテンツ情報作成部が作成したコンテンツ情報を前記第2の情報処理端末へ提供するコンテンツ情報提供部とをさらに具備し、
前記第2の情報処理端末は、前記コンテンツ情報提供部から提供されたコンテンツ情報が示す情報を出力する第2の出力部をさらに具備することを特徴とする情報処理システム。」


第4 引用例に記載の発明
上記「第2 平成28年9月29日付けの手続補正の却下の決定」の「5 独立特許要件」の「(3)引用例に記載の事項」において,引用例1として引用した,本願出願前に頒布され既に公知である,特開2005-150796号公報(平成17年6月9日公開。)には,上記「第2 平成28年9月29日付けの手続補正の却下の決定」の「5 独立特許要件」の「(4-1)引用例1に記載の発明」において認定した,次の引用発明が記載されている。

「受け付けた生体情報に基づいて,コンテンツを出力する出力装置であって,前記出力装置は,コンテンツ保持部101,生体情報受付部102,判断部103,出力部104を有し,
視聴者の生体に関する情報である例えば心拍数などの生体情報を受け付けるものであって,心拍数計測手段等で実現される前記生体情報受付部102と,
前記生体情報受付部102は,心拍数等の生体情報を取得し,
前記生体情報受付部102が受け付けた生体情報が心拍数の場合正常範囲の心拍数から異常な範囲の心拍数になったことの条件を満たすか否かを判断する前記判断部103と,
前記判断部103の判断結果に基づいて,コンテンツを出力したり,異なるコンテンツを出力したり,停止されていたコンテンツの出力を開始したり,コンテンツにモザイク処理をして出力したり,コンテンツに対するモザイク処理を解除してコンテンツを出力したりする前記出力部104と,を有し,
前記出力部104はMPUやメモリ等から実現され,判断結果に基づいて、コンテンツを出力するための処理はソフトウェアで実現され,
前記出力部104は,当該出力部104とは別体の,外部装置のモニター,PDP,液晶DP,映画用スクリーン,ホームシアター用スクリーン,PC,PDA,携帯電話に出力する,
コンテンツを出力する出力装置。」


第5 本願発明と引用発明との対比
本願発明は,上記「第2 平成28年9月29日付けの手続補正の却下の決定」の「2 補正事項」において検討した本件補正発明の構成において,「該生体情報を測定した測定時刻とともに」という限定事項,「前記第1の出力部が前記情報を出力した出力時刻とともに前記情報を記憶しておき」との限定事項,及び,「前記生体情報を測定した測定時刻の前後の時刻間に含まれる前記出力時刻の」との限定事項を削除したものであるから,本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,

(一致点)
「第1の情報処理端末と、第2の情報処理端末とを有する情報処理システムであって,
前記第1の情報処理端末は,前記第1の情報処理端末を操作している利用者の生体情報を測定する生体情報測定部と,情報を出力する第1の出力部と,前記生体情報測定部が測定した生体情報を,該生体情報測定部から取得する生体情報取得部とを具備し,
前記第1の情報処理端末は,前記生体情報取得部が取得した生体情報が,あらかじめ設定された条件を満たすかどうかを判定する条件判定部を具備し、
前記第1の情報処理端末は,前記条件判定部が,前記生体情報が前記条件を満たしていると判定した場合所定の処理を行う,
情報処理システム。」

(相違点a)
本願発明は,「条件判定部」が,「第1の情報処理端末または前記第2の情報処理端末」に具備されるのに対し,引用発明は,条件判定部に相当する「判断部103」は「第1の情報処理端末」に対応する「出力装置」にのみ有するものである点。

(相違点b)
本願発明が,「第1の情報処理端末」は「前記コンテンツ情報作成部が作成したコンテンツ情報を前記第2の情報処理端末へ提供するコンテンツ情報提供部」を具備し,「第2の情報処理端末」は,「前記コンテンツ情報提供部から提供されたコンテンツ情報が示す情報を出力する第2の出力部」を具備するのに対し,引用発明ではそのような構成を有しない点。


第6 相違点についての当審の判断
本願発明と,引用発明との相違点a及び相違点bは,本件補正発明と,引用発明との相違点2及び相違点4とそれぞれ同じものであるから,上記本願発明は,上記「第2 平成28年9月29日付けの手続補正の却下の決定」の「5 独立特許要件」の「(6)当審の判断」において検討したとおり,格別のものではない。
以上に検討したとおり,相違点a及び相違点bは格別のものではなく,そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。


第7 むすび
したがって,本願発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願は,その余の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-05 
結審通知日 2017-06-06 
審決日 2017-06-20 
出願番号 特願2013-110624(P2013-110624)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金沢 史明  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 石井 茂和
山崎 慎一
発明の名称 情報処理システムおよび情報処理方法  
代理人 緒方 雅昭  
代理人 宮崎 昭夫  
代理人 丸山 隆夫  

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