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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1330933
審判番号 不服2016-11938  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-08 
確定日 2017-08-22 
事件の表示 特願2012- 48810「基板温度制御方法及びプラズマ処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月18日出願公開,特開2012-199535,請求項の数(9)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年3月6日(国内優先権主張平成23年3月8日)の出願であって,平成27年9月11日付けで拒絶理由通知がされ,同年11月6日に意見書と手続補正書が提出され,平成28年5月23日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年8月8日に拒絶査定不服審判の請求がされ,平成29年3月30日付けで拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)がされ,同年4月28日に意見書と手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年5月23日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願については,平成27年 9月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって,拒絶をすべきものです。
なお,意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
●理由2(特許法第29条第2項)について

・請求項 1?10
・引用文献等 1,2

引用文献1には,図8,図10とともに以下の記載がある。
「本実施の形態に係るプラズマ処理装置は,ウエーハ3の温度を調節するための温度調節機構50を備えている。この温度調節機構50は,静電チャック30’に,Heなどの不活性ガス(温度調節ガス)を供給する。具体的には,温度調節機構50は,He流量を調整するためのマスフローコントローラ13,Heの供給圧力をモニターするための圧力計14を有している。Heの圧力は,マスフローコントローラ13と圧力計14によって調整される。この温度調節機構50は,試料台1に設けられたHe供給口12に,Heを供給する。この機構によって,ウエーハ3と誘電体2の間にはHeが充填され,ウエーハ3と試料台1や誘電体2との熱伝導が高くなる。これにより,ウエーハ3の温度が調節される。」(段落60)
「そこで,本実施の形態によれば,図10に示される制御が行われる。・・・温度調節機構50は,各ステップにおいて,He圧力を第1の圧力に設定し,また,ステップとステップの間(ステップ間)において,He圧力を第1の圧力より小さい第2の圧力に設定する。あるいは,温度調節機構50は,各ステップの終了時にHeの供給を停止し,また,各ステップの開始時にHeの供給を開始する。」(段落63)
引用文献1に記載の「試料台1」,「ウエーハ3」,「Heなどの不活性ガス(温度調節ガス)」が,請求項1に係る発明の「載置台」,「基板」,「伝熱ガス」に相当する。
引用文献1の図8において,試料台1は,プラズマ反応させるための密閉容器に入れられており,この密閉容器が,請求項1に係る発明の「真空処理チャンバー」に相当する。
引用文献1の発明は,温度調節機構50として,Heの圧力を,マスフローコントローラ13と圧力計14によって調整し,ウエーハ3の温度を調節しているので,伝熱ガスの圧力を検出し,検出された圧力検出値と圧力設定値とを比較して,前記圧力検出値が前記圧力設定値となるように前記伝熱ガスの供給を制御し,前記基板の温度を制御している。
また,引用文献1,第2の実施の形態(段落59?段落64)において,図10に記載されている様に,温度調節機構50は,各ステップの終了時にHeの供給を停止し,また,各ステップの開始時に,8Torr(1064Pa)の圧力でHeの供給を開始する動作を繰り返すことが記載されており,Heの供給を開始したときの圧力が請求項1に係る発明の第1圧力設定値に相当し,Heの供給を停止したときの圧力が,請求項1に係る発明の第2圧力設定値に相当する。

相違点
請求項1に係る発明と,引用文献1に記載された発明とを比較すると,第1圧力設定値の値が,請求項1に係る発明では,1330Paであるのに対し,引用文献1の発明では,8Torr(1064Pa)である点で相違する。

相違点についての検討
しかしながら,本願発明の第1圧力設定値の値は,低い圧力設定値では,安定した圧力制御を行うことが困難となる(段落41)ので,安定した圧力制御を行える圧力値を適宜選定したものであって,引用文献1の発明において,装置の性能等に合わせて適宜設定し,1330Paとすることは当業者が容易になし得ることである。
出願人は意見書にて,引例1は,伝熱ガス(Heガス)の圧力を,プラズマ(高周波電力)をオフしている間,低くすることでウエハの離脱を防止するようにしたものでありるのに対し,本願発明は,伝熱ガスの圧力が低い領域では伝熱ガスの圧力を精度良く制御することが困難となり,基板の温度制御を精度良く行うことができず,実質的に温度制御範囲が限定される,という問題を解決することを目的としておりますから,本願発明と引例1は,その目的が全く相違しておりますと主張している。
しかしながら,引用文献1の発明においても,ウエーハ3の温度を調節するためHeなどの不活性ガス(温度調節ガス)を供給している。このHeなどの不活性ガス(温度調節ガス)は,図10に記載されている様に,Heの供給を開始したとき(第1圧力設定値)と,Heの供給を停止したとき(第2圧力設定値)とを交互に繰り返してウエーハ3の温度を調節する目的を果たしており,圧力設定範囲もほぼ同じ範囲であるので,出願人の主張は採用できない。
よって,請求項1に係る発明は,引用文献1に記載の発明に基づいて容易になし得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また,請求項2?10に係る発明について,ガス供給時間を設定することは適宜なし得ることである。ヘリウムガスを供給することは引用文献1に記載(段落60)されている。ガスの圧力で変形する隔膜を用いることは引用文献2に記載(段落33,ダイアフラムが,本願の隔膜に相当する。)されている。
よって,請求項2?10に係る発明についても同様の理由により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2006-269556号公報(先の拒絶理由通知書における引用文献1)
2.特開2005-039120号公報(先の拒絶理由通知書における引用文献2)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

第1 この出願は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第1号,第2号,及び,第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について(その1)
(1)特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である(知財高判平成17年11月11日(平成17年(行ケ)10042号)「偏光フィルムの製造法」大合議判決を参照。) 。
以下,上記の観点に立って,本願のサポート要件について検討する。

(2)前提となる事実関係等
ア 本願の特許請求の範囲の記載
本願の請求項1ないし10に記載された発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明10」という。また,これらを併せて「本願発明」ということがある。)は,以下のとおりのものである。
「【請求項1】
真空処理チャンバー内に設置され,冷却又は加温される載置台の基板載置面に基板を載置し,当該基板の裏面と前記載置台の前記基板載置面との間に伝熱ガスを供給し,かつ,前記伝熱ガスの圧力を検出し,検出された圧力検出値と圧力設定値とを比較して,前記圧力検出値が前記圧力設定値となるように前記伝熱ガスの供給を制御し,前記基板の温度を制御する基板温度制御方法であって,
前記伝熱ガスの圧力を1330Pa未満の低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う際に,
プラズマ処理の最中に,前記圧力設定値を,1330Pa以上の第1圧力設定値とする第1期間と,前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の基板温度制御方法であって,
前記第1圧力設定値が1330Paから13300Paの範囲であり,前記第2圧力設定値が0Paから665Paの範囲である
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の基板温度制御方法であって,
前記第1期間及び前記第2期間は,0.01秒から10秒の範囲である
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項4】
請求項1?3いずれか1項記載の基板温度制御方法であって,
前記伝熱ガスが,ヘリウムガス,アルゴンガス,窒素ガス,酸素ガスのいずれかである
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項5】
請求項1?3いずれか1項記載の基板温度制御方法であって,
前記伝熱ガスが,ヘリウムガス,アルゴンガス,窒素ガス,酸素ガスのうちのいずれか2種のガスであり,前記第1期間と前記第2期間では,当該2種のガスを交互に供給する
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項6】
請求項1?5いずれか1項記載の基板温度制御方法であって,
前記載置台に設けられ前記伝熱ガスの圧力に応じて変形する隔膜と,当該隔膜の変形量を検出する検出機構とを具備した圧力計で前記伝熱ガスの圧力を検出する
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項7】
請求項1?6いずれか1項記載の基板温度制御方法であって,
前記伝熱ガスの圧力を予め定めた下限圧力値未満の低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う際に,
前記第1期間と,前記第2期間と,前記第1圧力設定値より低く前記第2圧力設定値より高い第3圧力設定値とする第3期間とを順次繰り返す
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項8】
請求項7記載の基板温度制御方法であって,
前記伝熱ガスが,ヘリウムガス,アルゴンガス,窒素ガス,酸素ガスのうちのいずれか3種のガスであり,前記第1期間と前記第2期間と前記第3期間では,当該3種のガスを順次供給する
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項9】
真空処理チャンバー内に設置され,冷却又は加温される載置台の基板載置面に基板を載置し,当該基板の裏面と前記載置台の前記基板載置面との間に伝熱ガスを供給して前記基板の温度を制御しつつ,前記基板にプラズマを作用させてプラズマ処理するプラズマ処理装置であって,
前記伝熱ガスの圧力を検出する圧力検出機構と,
前記圧力検出機構で検出された圧力検出値と圧力設定値とを比較し,前記圧力検出値が前記圧力設定値となるように前記伝熱ガスの供給を制御する伝熱ガス供給制御機構と
を具備し,前記伝熱ガス供給制御機構は,
前記伝熱ガスの圧力を1330Pa未満の低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う際に,
プラズマ処理の最中に,前記圧力設定値を,1330Pa以上の第1圧力設定値とする第1期間と,前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項10】
請求項9記載のプラズマ処理装置であって,
前記圧力検出機構は,
前記載置台に設けられ前記伝熱ガスの圧力に応じて変形する隔膜と,
当該隔膜の変形量を検出する検出機構と
を具備することを特徴とするプラズマ処理装置。」

イ 本願明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には,以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は,基板温度制御方法及びプラズマ処理装置に関する。」

(イ)「【背景技術】
【0002】
従来から,半導体装置の製造工程においては,真空処理チャンバー内に配置した基板(例えば,半導体ウエハ)にプラズマを作用させてエッチング処理や成膜処理を行うプラズマ処理が用いられている。
【0003】
このようなプラズマ処理装置では,基板を載置する載置台に温調機構を設けて加熱又は冷却するとともに,載置台の基板載置面と,基板の裏面との間にヘリウム(He)ガス等の熱媒体となる伝熱ガス(所謂バックサイドガス)を供給して,載置台と基板との熱交換を促進する構成となっているものが知られている。
【0004】
また,このようなプラズマ処理装置において,バックサイドガスとして熱伝導率の異なるガス,例えば,ヘリウム(He)ガスとアルゴン(Ar)ガスの流量を個別に制御して供給する技術が知られている(例えば,特許文献1)。
【0005】
また,伝熱ガスの流量を間欠的に調整して,伝熱ガスの圧力を制御する技術が知られている(例えば,特許文献2参照。)。」

(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のプラズマ処理装置のうち,載置台に高周波電力を印加する構造のプラズマ処理装置では,ヘリウム(He)ガス等の伝熱ガスの供給ライン内で放電が発生する虞がある。このため,伝熱ガスの供給ラインを絶縁体で覆うとともに,伝熱ガスの供給ラインの距離を長く細くし,あるいは邪魔板を挿入する等してコンダクタンスや電界強度を下げることが行われている。このようにコンダクタンスを低下させた結果,ヘリウム(He)ガス等の伝熱ガスを供給し難くなり,特に伝熱ガスの圧力が低い領域,例えば1330Pa(10Torr)以下の領域では,伝熱ガスの圧力を精度良く制御することが困難になり,このような伝熱ガスの低い圧力領域における基板の温度制御を精度良く行うことができず,実質的に温度制御範囲が限定されるという問題がある。
【0008】
本発明は,かかる従来の事情に対処してなされたもので,伝熱ガスの低い圧力領域における基板の温度制御を精度良く行うことができ,温度制御範囲を拡張してプロセスマージンの拡大を図ることのできる基板温度制御方法及びプラズマ処理装置を提供することを目的とする。」

(エ)「【発明の効果】
【0011】
本発明によれば,伝熱ガスの低い圧力領域における基板の温度制御を精度良く行うことができ,温度制御範囲を拡張してプロセスマージンの拡大を図ることができる。」

ウ 本願発明の課題
本願明細書の記載(前記イ)によれば,次のとおりである。
(ア)本願発明は,基板温度制御方法及びプラズマ処理装置に関するものである。(【0001】)

(イ)プラズマ処理装置のうち,載置台に高周波電力を印加する構造のプラズマ処理装置では,ヘリウム(He)ガス等の伝熱ガスの供給ライン内で放電が発生する虞があるため,伝熱ガスの供給ラインを絶縁体で覆うとともに,伝熱ガスの供給ラインの距離を長く細くし,あるいは邪魔板を挿入する等してコンダクタンスや電界強度を下げることが行われているが,このようにコンダクタンスを低下させた結果,ヘリウム(He)ガス等の伝熱ガスを供給し難くなり,特に伝熱ガスの圧力が低い領域,例えば1330Pa(10Torr)以下の領域では,伝熱ガスの圧力を精度良く制御することが困難になり,このような伝熱ガスの低い圧力領域における基板の温度制御を精度良く行うことができず,実質的に温度制御範囲が限定されるという問題がある。(【0007】)

(ウ)本願発明の課題は,伝熱ガスの低い圧力領域における基板の温度制御を精度良く行うことができ,温度制御範囲を拡張してプロセスマージンの拡大を図ることのできる基板温度制御方法及びプラズマ処理装置を提供することを目的とする。(【0008】)

(3)検討
ア 前記(2)アのとおり,本願発明1ないし10は,「伝熱ガスの圧力を1330Pa未満の低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う際に,プラズマ処理の最中に,前記圧力設定値を,1330Pa以上の第1圧力設定値とする第1期間と,前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す」ことを発明特定事項とする発明である。
すなわち,本願発明1ないし10は,伝熱ガスの圧力を低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う際の,前記低圧力値の値として,「1330Pa未満」の圧力の全てを,また,第1圧力設定値としては,「1330Pa以上」の圧力の全てを包含しているといえる。

イ そこで,本願発明1ないし10について,低圧力値の値が,「1330Pa未満」であり,第1圧力設定値が,「1330Pa以上」であれば,常に,本願発明の課題を解決できると当業者が認識できるか否かについて検討する。

ウ 本願明細書には次の記載が認められる。
・「伝熱ガスの供給ラインを絶縁体で覆うとともに,伝熱ガスの供給ラインの距離を長く細くし,あるいは邪魔板を挿入する等してコンダクタンスや電界強度を下げることが行われている。このようにコンダクタンスを低下させた結果,ヘリウム(He)ガス等の伝熱ガスを供給し難くなり,特に伝熱ガスの圧力が低い領域,例えば1330Pa(10Torr)以下の領域では,伝熱ガスの圧力を精度良く制御することが困難になり,このような伝熱ガスの低い圧力領域における基板の温度制御を精度良く行うことができず,実質的に温度制御範囲が限定されるという問題がある。」(【0007】)

エ 上記記載からみて,本願明細書の記載から,当業者は,ガスが,ヘリウムであって,伝熱ガスの供給ラインを絶縁体で覆うとともに,伝熱ガスの供給ラインの距離を長く細くし,あるいは邪魔板を挿入する等してコンダクタンスや電界強度を下げることが行われた特定の構造を備えたプラズマ処理装置において,「例えば」1330Pa(10Torr)以下の領域では,伝熱ガスの圧力を精度良く制御することが困難になり,このような伝熱ガスの低い圧力領域における基板の温度制御を精度良く行うことができず,実質的に温度制御範囲が限定されるという問題が生じることがあること,及び,1330Pa(10Torr)以下の領域で,伝熱ガスであるヘリウムの圧力を精度良く制御することが困難となる前記特定の構造を備えたプラズマ処理装置において,プラズマ処理の最中に,前記圧力設定値を,1330Pa以上の第1圧力設定値とする第1期間と,前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返すことによって,基板の温度制御を精度良く行うことができないという,本願発明の課題を解決することができると認識するものと認められる。

オ 一方,上記記載における「例えば」との説明,及び,技術常識に照らして,プラズマ処理装置の伝熱ガスの供給ラインの距離を長さ,細さ,伝熱ガスの種類,あるいは,圧力制御系の具体的な構造等の違いによって,ガスの圧力を精度良く制御することが困難となる臨界的な圧力の値が異なることは明らかといえる。

カ すなわち,全てのプラズマ処理装置において,伝熱ガスの圧力が,1330Pa(10Torr)を境として,この値以下となると,圧力を精度良く制御することが困難となることが,本願の発明の詳細な説明には記載されておらず,また,技術常識であるとも認められない。

キ してみれば,例えば,1500Paを境として,この値以下となると,圧力を精度良く制御することが困難となるプラズマ処理装置も存在するものと解されるところ,当該プラズマ処理装置においては,当業者は,圧力を1330Pa以上の圧力に含まれる1330Paの第1圧力設定値とする第1期間と,前記低圧力値である1500Paより低い1320Paを第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返すことによっては,本願発明の課題を解決することができないと予測するといえる。

ク したがって,本願明細書の記載(ないし示唆)はもとより,本願出願当時の技術常識に照らしても,本願発明1ないし10について,当業者が,「伝熱ガスの圧力を1330Pa未満の低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う際に,プラズマ処理の最中に,前記圧力設定値を,1330Pa以上の第1圧力設定値とする第1期間と,前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す」ことによっては,本願発明の課題を解決できると認識することはできないというべきである。
そうすると,本願の特許請求の範囲の記載は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願の出願当時の技術常識に照らして,当業者が本願明細書に記載された本願発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えており,サポート要件に適合しないものというべきである。

3 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について(その2)
請求項2に「前記第1圧力設定値が1330Paから13300Paの範囲」とあるが,発明の詳細な説明には,第1圧力設定値の範囲の上限が,「13300Pa」であることについて,記載も示唆もされていない。
したがって,請求項2に記載された発明は,発明の詳細な説明に記載された発明ではない。

2 特許法第36条第6項第2号(発明の明確性)について
(1)請求項1の「プラズマ処理」が,どのようなものであるか,請求項1の記載からは,明確に把握することができない。
請求項1の前半を,請求項9の記載にならって,以下のように補正することを検討されたい。
「真空処理チャンバー内に設置され,冷却又は加温される載置台の基板載置面に基板を載置し,当該基板の裏面と前記載置台の前記基板載置面との間に伝熱ガスを供給し,かつ,前記伝熱ガスの圧力を検出し,検出された圧力検出値と圧力設定値とを比較して,前記圧力検出値が前記圧力設定値となるように前記伝熱ガスの供給を制御し,前記基板の温度を制御しつつ,前記基板にプラズマを作用させてプラズマ処理するプラズマ処理装置における基板温度制御方法であって,
・・・
前記プラズマ処理の最中に・・・」

(3)第36条第4項第1号(実施可能要件)について
請求項7に「前記伝熱ガスの圧力を予め定めた下限圧力値未満の低圧力値とし」とあるが,当該「予め定めた下限圧力値」を,どのようにして「予め定める」のか,発明の詳細な説明には記載も示唆もされておらず,また,技術常識から明らかであるとも認められない。
すなわち,伝熱ガスの圧力を精度よく制御することが困難となる「下限圧力値」は,装置が備える制御系の特性,供給ラインの長さ及び細さ,ガスの種類によって異なる物性値等によって,装置毎に異なるものと認められる。しかしながら,本願の発明の詳細な説明には,当該「下限圧力値」を,どのようにして特定の一つの値に決定することができるのか,その方法(判断基準)が示されていない。
したがって,本願の発明の詳細な説明の記載は,当業者が,本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは認められない。

第2 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項 1-4,6,9,10
・引用文献 1.特開2000-232098号公報
2.特開平7-86382号公報
3.特開2005-39120号公報

・備考
・引例1の図9,及び,【0034】-【0035】の記載を参照されたい。伝熱ガスの圧力制御において,伝熱ガスの圧力を,目標値(例えばP1)に制御する際に,目標値よりも大きい上限値と,目標値よりも小さい下限値を設定し,圧力値を,前記上限値とする期間と,前記下限値とする期間とを交互に繰り返して制御することで試料の温度を制御する方法は周知である。
一方,引例2の【0023】には,冷却ガス(本願発明の,伝熱ガスに相当)の圧力は,2Torr以上必要で,例えば10Torr前後の制御となることが記載されている。
そうすると,引例1に記載された発明において,圧力の目標値として,引例2に記載された圧力の範囲のうちから,10Torr(約1330Pa)よりも少し小さい圧力を選択し,かつ,上限値として,1330Pa以上の値を設定することは,当業者が適宜なし得たことである。
そして,圧力の制御が困難となる値は,装置の構造等によって異なり,1330Paという値に臨界的な意義を見いだすことはできないから,引例1に記載された発明において,圧力の目標値として,1330Pa未満の値を選択し,かつ,上限値として,1330Pa以上の値を設定したことによる効果として,格別のものを認めることはできない。

・圧力の検出については,引例3の【0033】,図6等の記載を参照されたい。

第4 当審拒絶理由についての判断
1 記載要件について
(1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について (その1)
当審では,補正前の請求項1ないし10に係る発明について,当業者が,「伝熱ガスの圧力を1330Pa未満の低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う際に,プラズマ処理の最中に,前記圧力設定値を,1330Pa以上の第1圧力設定値とする第1期間と,前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す」ことによっては,本願発明の課題を解決できると認識することはできないから,本願の特許請求の範囲の記載は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願の出願当時の技術常識に照らして,当業者が本願明細書に記載された本願発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えており,サポート要件に適合しない,との拒絶の理由を通知しているが,平成29年4月28日付けの補正において,「伝熱ガスの圧力を前記プラズマ処理装置において安定した圧力制御ができる下限圧力値未満の低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う際に,前記プラズマ処理の最中に,前記圧力設定値を,前記下限圧力値以上の第1圧力設定値とする第1期間と,前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す」ことに補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

(2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について(その2)
当審では,補正前の請求項2に「前記第1圧力設定値が1330Paから13300Paの範囲」とあるが,発明の詳細な説明には,第1圧力設定値の範囲の上限が,「13300Pa」であることについて,記載も示唆もされていないから,当該請求項2に記載された発明は,発明の詳細な説明に記載された発明ではない,との拒絶の理由を通知しているが,平成29年4月28日付けの補正において,補正前の請求項2が削除された結果,この拒絶の理由は解消した。

(3)特許法第36条第6項第2号(発明の明確性)について
当審では,補正前の請求項1の「プラズマ処理」が,どのようなものであるか,当該請求項1の記載からは,明確に把握することができない,との拒絶の理由を通知しているが,平成29年4月28日付けの補正において,「前記基板にプラズマを作用させてプラズマ処理する」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

(4)第36条第4項第1号(実施可能要件)について
当審では,補正前の請求項7に「前記伝熱ガスの圧力を予め定めた下限圧力値未満の低圧力値とし」とあるが,当該「予め定めた下限圧力値」を,どのようにして「予め定める」のか,発明の詳細な説明には記載も示唆もされておらず,また,技術常識から明らかであるとも認められないから,本願の発明の詳細な説明の記載は,当業者が,本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは認められない,との拒絶の理由を通知しているが,平成29年4月28日付けの補正において,補正前の「予め定めた下限圧力値」を,補正後の「前記下限圧力値」と補正することによって,請求項7の「下限圧力値」が,請求項7が引用する請求項1ないし5のいずれか1項記載の「下限圧力値」を引用するものであることが明確となった結果,この拒絶の理由は解消した。

2 進歩性について
(1)本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は,平成29年4月28日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1ないし9は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
真空処理チャンバー内に設置され,冷却又は加温される載置台の基板載置面に基板を載置し,当該基板の裏面と前記載置台の前記基板載置面との間に伝熱ガスを供給し,かつ,前記伝熱ガスの圧力を検出し,検出された圧力検出値と圧力設定値とを比較して,前記圧力検出値が前記圧力設定値となるように前記伝熱ガスの供給を制御しつつ,前記基板にプラズマを作用させてプラズマ処理するプラズマ処理装置における基板温度制御方法であって,
前記伝熱ガスの圧力を前記プラズマ処理装置において安定した圧力制御ができる下限圧力値未満の低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う際に,
前記プラズマ処理の最中に,前記圧力設定値を,前記下限圧力値以上の第1圧力設定値とする第1期間と,前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の基板温度制御方法であって,
前記第1期間及び前記第2期間は,0.01秒から10秒の範囲である
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の基板温度制御方法であって,
前記伝熱ガスが,ヘリウムガス,アルゴンガス,窒素ガス,酸素ガスのいずれかである ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の基板温度制御方法であって,
前記伝熱ガスが,ヘリウムガス,アルゴンガス,窒素ガス,酸素ガスのうちのいずれか2種のガスであり,前記第1期間と前記第2期間では,当該2種のガスを交互に供給する ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項5】
請求項1?4いずれか1項記載の基板温度制御方法であって,
前記載置台に設けられ前記伝熱ガスの圧力に応じて変形する隔膜と,当該隔膜の変形量を検出する検出機構とを具備した圧力計で前記伝熱ガスの圧力を検出する
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項6】
請求項1?5いずれか1項記載の基板温度制御方法であって,
前記伝熱ガスの圧力を前記下限圧力値未満の低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う際に,
前記第1期間と,前記第2期間と,前記第1圧力設定値より低く前記第2圧力設定値より高い第3圧力設定値とする第3期間とを順次繰り返す
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項7】
請求項6記載の基板温度制御方法であって,
前記伝熱ガスが,ヘリウムガス,アルゴンガス,窒素ガス,酸素ガスのうちのいずれか3種のガスであり,前記第1期間と前記第2期間と前記第3期間では,当該3種のガスを順次供給する
ことを特徴とする基板温度制御方法。
【請求項8】
真空処理チャンバー内に設置され,冷却又は加温される載置台の基板載置面に基板を載置し,当該基板の裏面と前記載置台の前記基板載置面との間に伝熱ガスを供給して前記基板の温度を制御しつつ,前記基板にプラズマを作用させてプラズマ処理するプラズマ処理装置であって,
前記伝熱ガスの圧力を検出する圧力検出機構と,
前記圧力検出機構で検出された圧力検出値と圧力設定値とを比較し,前記圧力検出値が前記圧力設定値となるように前記伝熱ガスの供給を制御する伝熱ガス供給制御機構と
を具備し,前記伝熱ガス供給制御機構は,
前記伝熱ガスの圧力を前記プラズマ処理装置において安定した圧力制御ができる下限圧力値未満の低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う際に,
前記プラズマ処理の最中に,前記圧力設定値を,前記下限圧力値以上の第1圧力設定値とする第1期間と,前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項9】
請求項8記載のプラズマ処理装置であって,
前記圧力検出機構は,
前記載置台に設けられ前記伝熱ガスの圧力に応じて変形する隔膜と,
当該隔膜の変形量を検出する検出機構と
を具備することを特徴とするプラズマ処理装置。」

(2)引用文献記載事項,及び,引用発明
平成29年3月30日付けの当審拒絶理由通知に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。以下同じ。)
・「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,試料温度制御方法及び真空処理装置に係り,特に半導体素子基板等の試料を真空下で温度制御して処理するのに好適な試料温度制御方法及び真空処理装置に関するものである。」

・「【0012】
【発明の実施の形態】
試料台は,その試料設置面を減圧排気される処理室内に有している。試料台は,冷却もしくは加温される。試料が,このような試料台の試料設置面に設置される。伝熱用ガスが,試料台の試料設置面と該試料設置面に設置された試料の試料設置面を対向する裏面との間に導入される。試料台の試料設置面と試料の裏面との間のガス圧力が検出される。該検出ガス圧力値は制御目標ガス圧力値と比較され,導入される伝熱用ガスの供給を間歇的に供給・制御して,該制御目標ガス圧力に調節される。例えば,試料の裏面と試料台の試料設置面との間の距離の変化等の何等かの原因により試料の温度が変化しようとした場合,該変化は,試料台の試料設置面と試料の裏面との間のガス圧力の変化として現われる。該ガス圧力の変化は検知され,そして,制御目標ガス圧力に調節される。これにより,試料の温度は,所定温度に制御されて維持される。また,このようなことで,処理室で真空処理される試料の温度は,所定処理温度に制御されて維持される。従って,試料の温度の変化により生じる真空処理の不都合が排除されて試料の真空処理が良好に実施される。
【0013】
以下,本発明の一実施例を図1?図7により説明する。
【0014】
図1は,本発明を適用した有磁場型のマイクロ波プラズマエッチング装置の装置構成図であり,図2?図7は,図1の装置での試料裏面と試料台試料設置面との間の伝熱ガスの圧力(以下,裏面圧力と略)の制御例の模式図である。
【0015】
図1で,真空容器10の頂壁11には,開口12が形成されている。放電管20は,この場合,その形状が略半球形状でる。放電管20の開放端の形状,寸法は,開口12に略一致している。放電管20は,その開放端を開口12に略一致させて真空容器10の頂壁11に気密を保持し設けられている。放電管20の外側には,その内部に放電管20を含み導波管30が設けられている。マイクロ波発振手段であるマグネトロン40と導波管30とは,導波管31で連結されている。導波管30の外周には,磁場発生手段であるソレノイドコイル50が,この場合,上下方向に2段環装さている。ソレノイドコイル50は,通電量調節手段(図示省略)を介して電源(図示省略)に接続されている。試料台軸60は,その下部を真空容器10外に突出して真空容器10の底壁13に気密を程持し,かつ,底壁13と絶縁されて設けられている。試料台軸60の軸心は,この場合,開口12の中心を略通り放電管20の軸心と略一致させられている。試料台軸60の形状は,この場合,円柱である。試料台61の形状は,この場合,略平板であり,その寸法は,試料70より大きく,また。開口12よりも小さくなっている。試料台61は,その中心を試料台軸60の軸心に略一致させ試料台軸60の上端部に略水平に設けられている。試料台61の上面は,試料設置面となっている。この場合,試料台61の試料設置面は,開口12の下方に位置させられている。試料台61の試料設置面には,この場合,絶縁膜80がコーティングされている。真空容器10の頂壁11内には,ガス導入路90が形成さている。ガス導入路90のガス導出端は,真空容器10内と放電管20内とで形成された空間100に開口させられている。ガス導入路90のガス導入端には,ガス導管(図示省略)の一端が連結されている。ガス導管の他端は,エッチングガス源(図示省略)に連結されている。ガス導管には,ガス流量制御器(図示省略),開閉弁(図示省略)等が設けられている。排気管110の一端は,真空容器10内に連通して真空容器10の底壁13に連結されている。排気管110の他端は,真空ポンプ111の吸気口に連結されている。排気管110には,排気抵抗可変弁(図示省略),開閉弁(図示省略)等が設けられている。バイアス用電源である高周波電源120が試料台軸60に接続されている。試料台軸60と試料台61とは電気的に導通状態にある。」

・「【0034】
本発明の第2の実施例を図8?図10により説明する。
図8で,上記一実施例を説明する図1と異なる点は,排気管147に流量制御器149が設けられ,該流量制御器149が制御装置145に電気的に接続された点である。なお,図8で,その他図1と同一装置,部品等は同一符号で示し説明を省略する。
【0035】
図8?図10で,この場合の試料70の温度制御について説明する。なお,この場合,試料70の被エッチング面は,2段エッチング処理され,1段目のエッチング処理時の試料70の温度と2段目のエッチング処理時の試料70の温度とは異なり,2段目のエッチング処理時の試料70の温度が低い温度である。この場合,1段目のエッチング処理時の試料70の温度に対応する裏面圧力をP_(1),2段目のエッチング処理時の試料70の温度に対応する裏面圧力をp_(2)とすれば,試料70の温度制御における制御目標圧力は,1段目のエッチング処理時においてはP_(1),2段目のエッチング処理時においては,p_(2)となる。制御装置145には,目標値P_(1),P_(2)が入力されると共に,それらの上限値,下限値がそれぞれ入力される。図8?図10で,制御装置145からの信号により流量制御器143の流量設定値は,まず,流量制御器143における最大流量Q_(1)に設定される。開閉弁144を開放することで,試料70の裏面と絶縁膜80面との間の隙間には,流量Q_(1)で伝熱ガスが供給される。これにより,裏面圧力は0から,この場合,目標値P_(1)の上限値に向って上昇する。該裏面圧力は,圧力計146により検出され,該検出値は信号化されて制御装置145に入力される。制御装置145では,予め入力された目標値P_(1)の上限値と圧力計146での検出値との比較との比較演算が実施される。これにより,圧力計146での検出値が目標値P_(1)の上限値に達する(図9ではa点)と制御装置145から流量制御器143,149にそれぞれ信号が出力される。流量制御器143の流量設定値は,図10に示すように制御装置145からの信号により,この場合,流量0に変更される。また,これと共に,流量制御器149の流量設定値は,図10に示すように制御装置145からの信号により,この場合,流量0から流量Q_(6)に変更される。これにより,試料70の裏面と絶縁膜80との間の隙間への伝熱ガスの供給は停止され,逆に該隙間の伝熱ガスは,流量Q_(6)で排気される。これにより,裏面圧力は目標値P_(1)の上限値からその下限値に向って降下する。該裏面圧力は,圧力計146により検出されて制御装置145に入力される。圧力計146での検出値が目標値P_(1)の下限値に達する(図9ではb点)と制御装置145から流量制御器143,149にそれぞれ信号が出力される。流量制御器143の流量設定値は,図10に示すように制御装置145からの信号により,流量0から,この場合,流量Q_(7)に変更される。また,これと共に,流量制御器149の流量設定値は,図10に示すように制御装置145からの信号により流量Q_(6)から再び流量0に変更される。これにより,試料70の裏面と絶縁膜80との間の隙間には,伝熱ガスが流量Q_(7)で供給されるようになり,また,該隙間の伝熱ガスの排気は停止される。このようにして1段目のエッチング処理時の試料70の温度は,所定処理温度に制御されて維持される。その後,2段目のエッチング処理時の試料70の温度も上記操作と同様に図9,図10に示すようにして所定処理温度に制御されて維持される。なお,図9でC点に達した時点でプラズマは一旦消滅させられる。」

・図9は,図8の装置での裏面圧力の制御例の模式図であって,同図から,プラズマが一旦消滅させられるc点よりも前の時間,すなわち,プラズマ処理の最中に,「裏面圧力」が,「目標値P_(1)」以上の「目標値P_(1)の上限値」に達する「a点」と,「目標値P_(1)」以下の「目標値P_(1)の下限値」に達する「b点」との間で,交互に繰り返されることが理解される。

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「有磁場型のマイクロ波プラズマエッチング装置に適用される,半導体素子基板等の試料の温度を所定温度に制御して維持する方法であって,
前記マイクロ波プラズマエッチング装置の真空容器の頂壁には,開口が形成され,放電管の開放端が前記開口に気密を保持し設けられており,
前記開口の下方には,試料設置面となっている試料台の上面が位置するように,試料台が設けられており,
前記試料台は,冷却もしくは加温されるものであって,伝熱用ガスが,試料台の試料設置面と該試料設置面に設置された試料の試料設置面を対向する裏面との間に導入され,試料台の試料設置面と試料の裏面との間のガス圧力が検出され,該検出ガス圧力値は制御目標ガス圧力値と比較され,導入される伝熱用ガスの供給を間歇的に供給・制御して,該制御目標ガス圧力に調節され,これにより,試料の温度は,所定温度に制御されて維持されるものであり,
1段目のエッチング処理時の試料の温度に対応する裏面圧力をP_(1)とすれば,試料の温度制御における制御目標圧力は,1段目のエッチング処理時においてはP_(1)となるから,制御装置には,目標値P_(1)を入力すると共に,それらの上限値,下限値をそれぞれ入力する工程と,
裏面圧力は,圧力計により検出され,該検出値は信号化されて制御装置に入力されるものであり,圧力計での検出値が目標値P_(1)の上限値に達する(図9ではa点)と,試料の裏面への伝熱ガスの供給は停止され,これにより,裏面圧力は目標値P_(1)の上限値からその下限値に向って降下し,圧力計での検出値が目標値P_(1)の下限値に達する(図9ではb点)と試料の裏面には,伝熱ガスが流量Q_(7)で供給されるようになり,
このようにして,プラズマ処理の最中に,「裏面圧力」が,「目標値P_(1)」以上の「目標値P_(1)の上限値」に達する「a点」と,「目標値P_(1)」以下の「目標値P_(1)の下限値」に達する「b点」との間で,交互に繰り返されることで,1段目のエッチング処理時の試料の温度は,所定処理温度に制御されて維持される工程と,
を含む,半導体素子基板等の試料の温度を所定温度に制御して維持する方法。」

(3)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
引用発明における「マイクロ波プラズマエッチング装置の真空容器」および「放電管」からなる気密を保持する部材は,本願発明1における「真空処理チャンバー」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「真空処理チャンバー内に設置され,冷却又は加温される載置台の基板載置面に基板を載置し,当該基板の裏面と前記載置台の前記基板載置面との間に伝熱ガスを供給し,かつ,前記伝熱ガスの圧力を検出し,検出された圧力検出値と圧力設定値とを比較して,前記圧力検出値が前記圧力設定値となるように前記伝熱ガスの供給を制御しつつ,前記基板にプラズマを作用させてプラズマ処理するプラズマ処理装置における基板温度制御方法。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は,「伝熱ガスの圧力を前記プラズマ処理装置において安定した圧力制御ができる下限圧力値未満の低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う」ものであるのに対して,引用発明は,「1段目のエッチング処理時の試料の温度に対応する裏面圧力をP_(1)とすれば,試料の温度制御における制御目標圧力は,1段目のエッチング処理時においてはP_(1)となるから,制御装置には,目標値P_(1)を入力」して制御する点。

(相違点2)本願発明1は,「プラズマ処理の最中に,前記圧力設定値を,前記下限圧力値以上の第1圧力設定値とする第1期間と,前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す」ものであるのに対して,引用発明は,プラズマ処理の最中に,「『裏面圧力』が,『目標値P_(1)』以上の『目標値P_(1)の上限値』に達する『a点』と,『目標値P_(1)』以下の『目標値P_(1)の下限値』に達する『b点』との間で,交互に繰り返されることで,1段目のエッチング処理時の試料の温度は,所定処理温度に制御されて維持される」点。

イ 相違点についての判断
相違点1に係る本願発明1の「伝熱ガスの圧力を前記プラズマ処理装置において安定した圧力制御ができる下限圧力値未満の低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う」,及び,相違点2に係る本願発明1の「プラズマ処理の最中に,前記圧力設定値を,前記下限圧力値以上の第1圧力設定値とする第1期間と,前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す」という構成は,いずれも上記引用文献2,3には記載されておらず,本願の優先権主張の日前において周知技術であるともいえない。
そして,本願発明1は,これらの構成を備えることによって,伝熱ガスの圧力を,プラズマ処理装置において安定した圧力制御ができる下限圧力値未満の低圧力値において制御して,基板と載置台との熱交換を抑制した温度制御を行うことができるという格別の効果を奏するものと認められる。
したがって,本願発明1は,引用発明,引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(4)本願発明2,3,5について
本願発明2,3,5も,本願発明1の「伝熱ガスの圧力を前記プラズマ処理装置において安定した圧力制御ができる下限圧力値未満の低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う」,及び,「プラズマ処理の最中に,前記圧力設定値を,前記下限圧力値以上の第1圧力設定値とする第1期間と,前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(5)請求項8,9について
本願発明8,9は,本願発明1,5に対応する装置の発明であり,本願発明1の「伝熱ガスの圧力を前記プラズマ処理装置において安定した圧力制御ができる下限圧力値未満の低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う」,及び,「プラズマ処理の最中に,前記圧力設定値を,前記下限圧力値以上の第1圧力設定値とする第1期間と,前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第5 原査定についての判断
平成29年4月28日付けの補正により,補正後の請求項1ないし9は,「伝熱ガスの圧力を前記プラズマ処理装置において安定した圧力制御ができる下限圧力値未満の低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う」,及び,「プラズマ処理の最中に,前記圧力設定値を,前記下限圧力値以上の第1圧力設定値とする第1期間と,前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す」という技術的事項を有することとなった。
当該「伝熱ガスの圧力を前記プラズマ処理装置において安定した圧力制御ができる下限圧力値未満の低圧力値とし,前記基板と前記載置台との熱交換を抑制して前記基板の温度制御を行う」,及び,「プラズマ処理の最中に,前記圧力設定値を,前記下限圧力値以上の第1圧力設定値とする第1期間と,前記低圧力値より低い第2圧力設定値とする第2期間とを交互に繰り返す」は,原査定における引用文献1,2には記載されておらず,本願優先日前における周知技術でもないので,本願発明1ないし9は当業者であっても,原査定における引用文献1,2に基づいて容易に発明をすることはできない。したがって。原査定を維持することはできない。

第6 むすび
以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-07 
出願番号 特願2012-48810(P2012-48810)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 杢 哲次溝本 安展  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 矢頭 尚之
加藤 浩一
発明の名称 基板温度制御方法及びプラズマ処理装置  
代理人 特許業務法人サクラ国際特許事務所  
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