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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1330949 |
審判番号 | 不服2015-15885 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-08-27 |
確定日 | 2017-08-01 |
事件の表示 | 特願2010-103659「有機ケイ素化合物を使用する毛髪処理ステップを含む毛髪染色方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月18日出願公開、特開2010-260862〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯 本願は、平成22年4月28日(パリ条約による優先権主張 平成21年4月30日 フランス(FR))を出願日とする特許出願であって、平成26年5月29日付けで拒絶理由が通知され、同年12月2日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲が補正され,平成27年4月21日付けで拒絶査定がされたところ、これに対して、同年8月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲が補正されたので、特許法162条所定の審査がされた結果、同年10月19日付けで同法164条3項の規定による報告がされたものである。 第2 補正却下の決定 [結論] 平成27年8月27日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 平成27年8月27日付け手続補正(以下「本件補正」という。)の内容 本件補正は特許請求の範囲の全文を変更する補正事項からなるものであるところ、特許請求の範囲全体の記載のうち、本件補正前の請求項15並びに当該請求項に対応する本件補正後の請求項14の記載は、それぞれ以下のとおりである。 ・本件補正前(平成26年12月2日付けの手続補正書) 「1種または複数種の染料前駆体を含む染色組成物に続く、毛髪への、有機ケイ素化合物を含む組成物の使用であって、 前記有機ケイ素化合物が、式(I) 【化4】 (式中、 R_(4)は、ハロゲンまたはOR’基もしくはR’_(1)基を表し、 R_(5)は、ハロゲンまたはOR’’基もしくはR’_(2)基を表し、 R_(6)は、ハロゲンまたはOR’’’基もしくはR’_(3)基を表し R_(1)、R_(2)、R_(3)、R’、R’’、R’’’、R’_(1)、R’_(2)およびR’_(3)は、互いに独立して、追加の化学基を有していてもよい飽和または不飽和の直鎖または分枝炭化水素系基を表し、R_(1)、R_(2)、R’、R’’およびR’’’は、水素をさらに示すことができ、R_(4)基、R_(5)基およびR_(6)基の少なくとも2個は、OR’、OR’’およびOR’’’をそれぞれ示し、R’基、R’’基およびR’’’基の少なくとも2個は水素以外である) および 【化5】 (式中、 R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(5)およびR_(6)は、上記で定義されており、 R’_(4)は、ハロゲン原子またはOR_(11)基を表し、 R_(7)は、ハロゲン原子またはOR_(10)基もしくはR’’_(1)基を表し、 R_(9)は、ハロゲン原子またはOR_(8)基、R’’_(2)基もしくはR_(3)NR_(1)R_(2)基を表し、 R’’_(1)、R’’_(2)、R_(8)、R_(10)およびR_(11)は、追加の化学基を有していてもよい飽和または不飽和の直鎖または分枝炭化水素系基を表し、R_(11)基、R_(10)基およびR_(8)基は、水素原子をさらに表すことができ、R_(6)基、R_(7)基およびR_(9)基の少なくとも1つは、ハロゲン原子またはOR’’’基、OR_(10)基もしくはOR_(8)基を示す) の化合物から選択される、使用。」 ・本件補正後 「1種または複数種の染料前駆体を含む染色組成物に続く、毛髪への、有機ケイ素化合物を含む組成物の使用であって、 前記有機ケイ素化合物が、式(I) 【化4】 (式中、 R_(4)は、ハロゲンまたはOR’基もしくはR’_(1)基を表し、 R_(5)は、ハロゲンまたはOR’’基もしくはR’_(2)基を表し、 R_(6)は、ハロゲンまたはOR’’’基もしくはR’_(3)基を表し R_(1)、R_(2)、R_(3)、R’、R’’、R’’’、R’_(1)、R’_(2)およびR’_(3)は、互いに独立して、追加の化学基を有していてもよい飽和または不飽和の直鎖または分枝炭化水素系基を表し、R_(1)、R_(2)、R’、R’’およびR’’’は、水素をさらに示すことができ、R_(4)基、R_(5)基およびR_(6)基の少なくとも2個は、OR’、OR’’およびOR’’’をそれぞれ示し、R’基、R’’基およびR’’’基の少なくとも2個は水素以外である) および 【化5】 (式中、 R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(5)およびR_(6)は、上記で定義されており、 R’_(4)は、ハロゲン原子またはOR_(11)基を表し、 R_(7)は、ハロゲン原子またはOR_(10)基もしくはR’’_(1)基を表し、 R_(9)は、ハロゲン原子またはOR_(8)基、R’’_(2)基もしくはR_(3)NR_(1)R_(2)基を表し、 R’’_(1)、R’’_(2)、R_(8)、R_(10)およびR_(11)は、追加の化学基を有していてもよい飽和または不飽和の直鎖または分枝炭化水素系基を表し、R_(11)基、R_(10)基およびR_(8)基は、水素原子をさらに表すことができ、R_(6)基、R_(7)基およびR_(9)基の少なくとも1つは、ハロゲン原子またはOR’’’基、OR_(10)基もしくはOR_(8)基を示す) の化合物から選択され、前記染料前駆体が、さらにカチオン電荷密度が4meq/g以上である1個または複数個のカチオン性ポリマーを含む、使用。」(なお、下線は、補正書のとおりである。) ところで、本願明細書、特に【0077】の「好ましい一実施形態によると、染色組成物は、カチオン電荷密度が1グラム当たり4ミリ当量(meq/g)以上・・・の範囲である1種または複数種のカチオン性ポリマーも含む。」との記載から、カチオン性ポリマーは染料前駆体に含まれるのではなく、(染料前駆体を含む)染色組成物に含まれると解される。そもそも、染料前駆体とは、その記載からみて、染料に関連する物質であるところ、カチオン性ポリマーが染料に関連する物質でないことは技術常識であるから、上記請求項14における「前記染料前駆体」は「前記染色組成物」の誤りであると認められる。よって、本件補正後の【請求項14】の記載は、次のとおりのものと認める。 ・「1種または複数種の染料前駆体を含む染色組成物に続く、毛髪への、有機ケイ素化合物を含む組成物の使用であって、 前記有機ケイ素化合物が、式(I) 【化4】 (式中、 R_(4)は、ハロゲンまたはOR’基もしくはR’_(1)基を表し、 R_(5)は、ハロゲンまたはOR’’基もしくはR’_(2)基を表し、 R_(6)は、ハロゲンまたはOR’’’基もしくはR’_(3)基を表し R_(1)、R_(2)、R_(3)、R’、R’’、R’’’、R’_(1)、R’_(2)およびR’_(3)は、互いに独立して、追加の化学基を有していてもよい飽和または不飽和の直鎖または分枝炭化水素系基を表し、R_(1)、R_(2)、R’、R’’およびR’’’は、水素をさらに示すことができ、R_(4)基、R_(5)基およびR_(6)基の少なくとも2個は、OR’、OR’’およびOR’’’をそれぞれ示し、R’基、R’’基およびR’’’基の少なくとも2個は水素以外である) および 【化5】 (式中、 R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(5)およびR_(6)は、上記で定義されており、 R’_(4)は、ハロゲン原子またはOR_(11)基を表し、 R_(7)は、ハロゲン原子またはOR_(10)基もしくはR’’_(1)基を表し、 R_(9)は、ハロゲン原子またはOR_(8)基、R’’_(2)基もしくはR_(3)NR_(1)R_(2)基を表し、 R’’_(1)、R’’_(2)、R_(8)、R_(10)およびR_(11)は、追加の化学基を有していてもよい飽和または不飽和の直鎖または分枝炭化水素系基を表し、R_(11)基、R_(10)基およびR_(8)基は、水素原子をさらに表すことができ、R_(6)基、R_(7)基およびR_(9)基の少なくとも1つは、ハロゲン原子またはOR’’’基、OR_(10)基もしくはOR_(8)基を示す) の化合物から選択され、前記染色組成物が、さらにカチオン電荷密度が4meq/g以上である1個または複数個のカチオン性ポリマーを含む、使用。」 2 本件補正の目的 本件補正は、請求項14に係る発明を特定するために必要な事項である「染色組成物」について、補正前は「1種または複数種の染料前駆体を含む」と特定していたものを、「1種または複数種の染料前駆体を含む」に加えて、「さらに、カチオン電荷密度が4meq/g以上である1個または複数個のカチオン性ポリマーを含む」と特定することで、本件補正前の発明の特定事項を限定するものである。そして、本件補正の前後で、請求項14の記載に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は変わらない。 よって、本件補正は、請求項14についてする補正については、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認める。 なお、本件補正は、本願明細書の【0077】の記載からみて、新規事項を追加するものではないと判断される。 3 独立特許要件違反の有無について 上記2のとおりであるから、本件補正後の請求項14に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか、要するに、本件補正が特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に適合するものであるか(いわゆる独立特許要件違反の有無)について検討するところ、以下のとおり、本件補正は当該要件に違反すると判断される。 すなわち、本願補正発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である下記引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから29条2項の規定により特許を受けることができない(なお、引用文献1は、原査定の理由で引用された「引用文献1」と同じである。)。 ・引用文献1:特表2005-535683号公報 4 本願補正発明 本願補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項14に記載された事項により特定されるべきところではあるが、上記1で述べたとおり、その記載には誤りがあるため、本願補正発明の要旨は、以下のとおり認定されるべきである。 「1種または複数種の染料前駆体を含む染色組成物に続く、毛髪への、有機ケイ素化合物を含む組成物の使用であって、 前記有機ケイ素化合物が、式(I) 【化4】 (式中、 R_(4)は、ハロゲンまたはOR’基もしくはR’_(1)基を表し、 R_(5)は、ハロゲンまたはOR’’基もしくはR’_(2)基を表し、 R_(6)は、ハロゲンまたはOR’’’基もしくはR’_(3)基を表し R_(1)、R_(2)、R_(3)、R’、R’’、R’’’、R’_(1)、R’_(2)およびR’_(3)は、互いに独立して、追加の化学基を有していてもよい飽和または不飽和の直鎖または分枝炭化水素系基を表し、R_(1)、R_(2)、R’、R’’およびR’’’は、水素をさらに示すことができ、R_(4)基、R_(5)基およびR_(6)基の少なくとも2個は、OR’、OR’’およびOR’’’をそれぞれ示し、R’基、R’’基およびR’’’基の少なくとも2個は水素以外である) および 【化5】 (式中、 R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(5)およびR_(6)は、上記で定義されており、 R’_(4)は、ハロゲン原子またはOR_(11)基を表し、 R_(7)は、ハロゲン原子またはOR_(10)基もしくはR’’_(1)基を表し、 R_(9)は、ハロゲン原子またはOR_(8)基、R’’_(2)基もしくはR_(3)NR_(1)R_(2)基を表し、 R’’_(1)、R’’_(2)、R_(8)、R_(10)およびR_(11)は、追加の化学基を有していてもよい飽和または不飽和の直鎖または分枝炭化水素系基を表し、R_(11)基、R_(10)基およびR_(8)基は、水素原子をさらに表すことができ、R_(6)基、R_(7)基およびR_(9)基の少なくとも1つは、ハロゲン原子またはOR’’’基、OR_(10)基もしくはOR_(8)基を示す) の化合物から選択され、前記染色組成物が、さらにカチオン電荷密度が4meq/g以上である1個または複数個のカチオン性ポリマーを含む、使用。」(以下、「本願補正発明」という。) 5 本願補正発明が特許を受けることができない理由 (1)引用発明 ア 引用文献1には、以下のとおり記載されている。(以下、下線は当審によるものである。) (ア)「【請求項1】 式 (I) R_(m)SiX_(4-m) [式中、mは0?4の整数であり、Rは非加水分解性有機基であり、およびXは加水分解性基を意味する]のシランの少なくとも1種の、毛髪の状態の改善のための化粧剤における使用。 ・・・ 【請求項7】 シランが、以下の化合物から選択されることに特徴づけられる、請求項1?3のいずれか1項に記載の使用: ・・・NH_(2)(CH_(2))_(3)Si(OCH_(2)CH_(3))_(3)、・・・。 ・・・ 【請求項21】 ヒトの毛髪の染色および、同時にその状態の改善のための、以下の事項に特徴づけられる使用: (a)直接染色性毛髪染色剤または酸化毛髪染色剤と5?40分間接触させ、 (b)前記毛髪染色剤を場合により、水で洗浄すること、および毛髪を場合により乾かすこと、 (c)次いで、先の請求項1?18の使用の後、1?40分間、シランを含有している薬剤と毛髪を接触させること、 (d)毛髪を場合により、水で洗浄し、次いで乾かすこと。」 (イ)「【0039】 ・・・。酸化染色に関しては、毛髪を、顕色剤-カップラー剤-の組合せに基づく特定の染色物質担体と特定の酸化剤調製物含有毛髪染色剤との混合によるものを用いて、処理する。 第1の成分は、染色物質担体と名付けられ、染色物質を含むものである。これは、希釈剤、ジェルまたはエマルジョンとしても存在することができる。第2の成分は、水溶液、溶液、クリーム状または粉末状酸化剤調製物である。 【0040】 ・・・。染色を実施するにつき、塗布前に、過酸化水素水溶液、エマルジョンまたはクリーム(成分B)と染料担体(成分A)を、例えば、1:1?1:2の混合比で混合するが、ここで、染料担体と過酸化水素水との混合は、例えば塗布容器-これを用いて、即時使用可能な酸化毛髪染色剤を、混合後、染色される毛髪に塗布する-中でなすことができる。 【0041】 成分(A)の染料担体は、酸化毛髪染色物質として、少なくとも一種のカップラー剤、および少なくとも1種の顕色剤ならびに場合によっては追加的に、自己カップリング性染色前駆物質および場合により、色調整のための、直接毛髪上に顕色する染色物質を追加的に含む。・・・。」 (ウ)「【0052】 場合により、成分(A)には、特定の手入れ剤および/または作用剤、例えば、・・・カチオン性ポリマー;単独またはこれらの組合せにて、成分(A)中、これらの化合物が好ましくは0.01?5重量%、特に0.01?1重量%となるよう追加することができる。」 イ 特に、特許請求の範囲の記載(摘示(ア(ア))のうち、請求項1を引用する請求項7を引用する請求項21の記載から、引用文献1には次のとおりの発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。 「ヒトの毛髪の染色および、同時にその状態の改善のための、以下の事項に特徴づけられるシランの使用: (a)直接染色性毛髪染色剤または酸化毛髪染色剤と5?40分間接触させ、 (b)前記毛髪染色剤を場合により、水で洗浄すること、および毛髪を場合により乾かすこと、 (c)次いで、NH_(2)(CH_(2))_(3)Si(OCH_(2)CH_(3))_(3)の化合物であるシランの、毛髪の状態の改善のための化粧剤における使用の後、1?40分間、シランを含有している薬剤と毛髪を接触させること、 (d)毛髪を場合により、水で洗浄し、次いで乾かすこと。」 (2)対比 ア 本願補正発明と引用発明を対比する。 (ア)本願補正発明の「有機ケイ素化合物」は、本願明細書の【0027】の記載を参酌すると、具体的一例として「(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン」を含むものと解される。 一方、引用発明の「NH_(2)(CH_(2))_(3)Si(OCH_(2)CH_(3))_(3)」は、「(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン」に他ならないから、引用発明の「NH_(2)(CH_(2))_(3)Si(OCH_(2)CH_(3))_(3)」は、本願補正発明の「有機ケイ素化合物」のうちの式(I)の化合物に相当する。 (イ)引用発明の「酸化毛髪染色剤」は、本願補正発明の「染料前駆体を含む染色組成物」に相当する。 (ウ)引用発明の「NH_(2)(CH_(2))_(3)Si(OCH_(2)CH_(3))_(3)の化合物であるシランの、毛髪の状態の改善のための化粧剤における使用の後、1?40分間、シランを含有している薬剤と毛髪を接触させる」工程は、「NH_(2)(CH_(2))_(3)Si(OCH_(2)CH_(3))_(3)」が、本願補正発明の「有機ケイ素化合物」のうちの式(I)の化合物に相当すること(上記(ア))、及び「直接染色性毛髪染色剤または酸化毛髪染色剤と5?40分間接触させ」る工程の後段に位置していることを踏まえれば、本願補正発明の「1種または複数種の染料前駆体を含む染色組成物に続く、毛髪への、有機ケイ素化合物を含む組成物の使用」に相当する。 イ(ア)したがって、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。 ・一致点 「1種または複数種の染料前駆体を含む染色組成物に続く、毛髪への、有機ケイ素化合物含む組成物の使用であって、 前記有機ケイ素化合物が、式(I) の化合物から選択される、使用。」 ・相違点 本願補正発明は、染色組成物が、さらにカチオン電荷密度が4meq/g以上である1個または複数個のカチオン性ポリマーを含むのに対し、引用発明は、そのような特定事項を有しない点。 (3)相違点についての判断 ア 引用文献1には、引用発明の酸化毛髪染色剤について、カチオン性ポリマーを含有させることができる旨の示唆がある(上記摘示ア(イ)(ウ))。 してみれば、引用文献1の記載に基づいて、引用発明の酸化毛髪染色剤に、カチオン性ポリマーを含有させることは、当業者が容易に想到し得るものであり、その際、毛髪染色剤に含有させるカチオン性ポリマーとして、本願優先日から知られているカチオン電荷密度が4meq/g以上のものを採用することに格別な困難性を見いだすことはできない(要すれば、下記文献A、Bを参照のこと。) ○文献A:特開2003-104854号公報 「【請求項1】 化粧品的に許容可能な媒体に、本質的にメタクリル酸とアクリル酸C_(1)-C_(4)アルキルからなる少なくとも1つの架橋した又は架橋していないコポリマー、カチオン電荷密度が3.5meq/g以上の少なくとも1つのカチオン性又は両性ポリマー、及びジメチルシラノール末端基を有するポリジアルキルシロキサン類から選択される少なくとも1つのシリコーンを含有せしめてなることを特徴とする化粧品用組成物。 ・・・ 【請求項30】 シャンプー、コンディショナー、毛髪のパーマネントウエーブ処理、ストレート化、染色又は脱色用の組成物、又は毛髪のパーマネントウエーブ又はストレート化施術の2つの工程の間に適用されてすすがれる組成物、又はボディの洗浄用組成物の形態であることを特徴とする請求項1ないし29のいずれか1項に記載の組成物。」 ○文献B:特表2008-543938号公報 「【0017】 本発明による製品放出システムは、毛髪トリートメントに使用することができる。組成物は、例えばリーブオン、又はリンスオフ製品として適用できる、例えば毛髪コンディショナー、又は毛髪リンスなど、毛髪のケア用の剤;例えば、ヘアスプレー噴霧、ヘアラッカー、ヘアジェル、ヘアワックス、スタイリングクリームなど、ヘアスタイルの一時的な再形成及び/又は安定化のための剤(スタイリング剤);永続的、半永続的、又は一時的染毛剤、例えば、酸化染毛剤又は非酸化毛髪着色剤、又は毛髪漂白剤;例えば、還元剤を含有する弱アルカリ性又は酸性のパーマネントウェーブ又は直毛化剤(hair straightening agents)の形態、又は酸化剤を含有するパーマネントウェーブ定着剤の形態の、永続的毛髪再構成剤であることができる。」 「【0040】 一実施形態では、本発明による剤は、毛髪コンディショニング又は毛髪セッティング添加剤として、少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含有する。カチオン性ポリマーは、本発明にしたがって使用されるべき組成物中に、好ましくは0.01?20重量%、又は0.05?10重量%の量で含有され、0.1?5重量%が特に好ましい。・・・。 【0041】 カチオン性ポリマーは、カチオン性基又はアミン基、特に、一級、二級、三級、又は四級アミン基をもつポリマーである。カチオン電荷密度は、好ましくは1?7meq/gである。」 また、カチオン性ポリマーとして、カチオン電荷密度が4meq/g以上のものを採用したことにより、格別顕著な効果が奏されるものでもない。 (4)まとめ 以上のとおり、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 6 むすび 以上、本願補正発明は特許出願の際、独立して特許を受けることができないから、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明について 上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項15に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年12月2日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「1種または複数種の染料前駆体を含む染色組成物に続く、毛髪への、有機ケイ素化合物を含む組成物の使用であって、 前記有機ケイ素化合物が、式(I) 【化4】 (式中、 R_(4)は、ハロゲンまたはOR’基もしくはR’_(1)基を表し、 R_(5)は、ハロゲンまたはOR’’基もしくはR’_(2)基を表し、 R_(6)は、ハロゲンまたはOR’’’基もしくはR’_(3)基を表し R_(1)、R_(2)、R_(3)、R’、R’’、R’’’、R’_(1)、R’_(2)およびR’_(3)は、互いに独立して、追加の化学基を有していてもよい飽和または不飽和の直鎖または分枝炭化水素系基を表し、R_(1)、R_(2)、R’、R’’およびR’’’は、水素をさらに示すことができ、R_(4)基、R_(5)基およびR_(6)基の少なくとも2個は、OR’、OR’’およびOR’’’をそれぞれ示し、R’基、R’’基およびR’’’基の少なくとも2個は水素以外である) および 【化5】 (式中、 R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(5)およびR_(6)は、上記で定義されており、 R’_(4)は、ハロゲン原子またはOR_(11)基を表し、 R_(7)は、ハロゲン原子またはOR_(10)基もしくはR’’_(1)基を表し、 R_(9)は、ハロゲン原子またはOR_(8)基、R’’_(2)基もしくはR_(3)NR_(1)R_(2)基を表し、 R’’_(1)、R’’_(2)、R_(8)、R_(10)およびR_(11)は、追加の化学基を有していてもよい飽和または不飽和の直鎖または分枝炭化水素系基を表し、R_(11)基、R_(10)基およびR_(8)基は、水素原子をさらに表すことができ、R_(6)基、R_(7)基およびR_(9)基の少なくとも1つは、ハロゲン原子またはOR’’’基、OR_(10)基もしくはOR_(8)基を示す) の化合物から選択される、使用。」 2 原査定の理由 原査定の理由は、要するに、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるので特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないという理由を含むものである。 3 引用発明 引用発明は、上記第2 5(1)イにおいて認定したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本願補正発明との対比において、「染色組成物が、さらにカチオン電荷密度が4meq/g以上である1個または複数個のカチオン性ポリマーを含む」との限定を有しないもの、すなわち引用発明との相違点の構成を有しないものである。 したがって、引用発明との相違点を有しない本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものである。 第4 むすび 以上のとり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるので、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない。 そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-02-28 |
結審通知日 | 2017-03-06 |
審決日 | 2017-03-21 |
出願番号 | 特願2010-103659(P2010-103659) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61K)
P 1 8・ 113- Z (A61K) P 1 8・ 121- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 手島 理 |
特許庁審判長 |
須藤 康洋 |
特許庁審判官 |
齊藤 光子 関 美祝 |
発明の名称 | 有機ケイ素化合物を使用する毛髪処理ステップを含む毛髪染色方法 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 阿部 達彦 |