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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1331016
審判番号 不服2016-9670  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-29 
確定日 2017-08-09 
事件の表示 特願2014- 70746「宣伝配信装置及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 4日出願公開、特開2014-160480〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年12月6日に出願された特許出願である特願2011-266894号の一部を平成26年3月31日に新たな特許出願としたものであって、平成27年7月8日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年10月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年3月16日付けで拒絶査定がなされ、同拒絶査定の謄本は同年4月12日に請求人に発送されて送達された。
これに対して、同年6月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年6月29日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年6月29日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲等を変更するものであり、平成27年10月1日に提出された手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1(下記(1))を平成28年6月29日に提出された手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1(下記(2))に記載されたとおりに補正すること(以下、「請求項1の補正」といい、(1)(2)をそれぞれ「補正前の請求項1」、「補正後の請求項1」という。)をその一部に含むものである。(補正箇所に下線を付した。)

(1)補正前の請求項1
出力装置に対して宣伝データを配信する宣伝配信装置であって、
複数の店舗毎に、その店舗での集客のための複数の宣伝データを記憶する宣伝記憶手段と、
前記複数の店舗の内で、現時点で至急の集客を必要とする店舗の端末から、その店舗の宣伝を要求する配信要求指示が送信されてきたか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段で前記配信指示要求を判別した際は、その店舗の位置と、登録記憶手段に記憶された複数の顧客の登録位置とに基づいて、前記店舗の近傍位置が顧客の登録位置の顧客をその時点で直ぐに集客できる見込みのある顧客として絞り込むと共に、その店舗に対応して記憶される複数の宣伝データの内で当該配信指示要求の中で指示された宣伝データを選択し、前記絞り込まれた顧客の出力装置に対して前記選択の宣伝データを配信する配信手段と、
を具備したことを特徴とする宣伝配信装置。

(2)補正後の請求項1
出力装置に対して宣伝データを配信する宣伝配信装置であって、
複数の店舗毎に、その店舗での集客のための複数の宣伝データを記憶する宣伝記憶手段と、
前記複数の店舗の内で、現時点で至急の集客を必要とする店舗の端末から、その店舗の宣伝を要求する配信指示要求が送信されてきたか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段で前記配信指示要求が送信されてきたことを判別した際は、その店舗の位置と、登録記憶手段に記憶された複数の顧客の登録位置とに基づいて、前記店舗の近傍位置が顧客の登録位置の顧客を、前記配信指示要求が送信された時点で直ぐに集客できる見込みのある顧客として絞り込むと共に、その店舗に対応して前記宣伝記憶手段に記憶される複数の宣伝データの内で当該配信指示要求の中で指示された宣伝データを選択し、その選択された宣伝データを、前記配信指示要求が送信判別後において前記絞り込まれた顧客の出力装置に対して直ちに配信する配信手段と、
を具備したことを特徴とする宣伝配信装置。

(3) 請求項1の補正の内容について
請求項1の補正は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である、「前記絞り込まれた顧客の出力装置に対して」「配信指示要求の中で指示され」て「選択」された「宣伝データ」を「配信する」「配信手段」について、これを「配信指示要求が送信判別後において」「直ちに」配信するものに限定するものであるから、補正前の請求項1に係る発明を減縮するものである。そして、その産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではない。
よって、請求項1の補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項が規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)を満たすものであるか否かについて検討する。

2 独立特許要件違反についての検討
(1) 本願補正発明について
本願補正発明は、1(2)において上述した、平成28年6月29日に提出された手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1の記載のとおりのものである。

(2) 引用文献
原査定の拒絶の理由において引用された、特開2002-15208号公報(以下、「引用文献」という。)は、平成14年1月18日に出願公開がなされた特許公報であり、次の事項が記載されている。(下線は当審で付与。)


「【0003】・・・
【発明が解決しようとする課題】従来のシステムでは、即時性を要する広告、例えば、百貨店の鮮魚店が午後5時からの割引サービスを午後4時に利用者に広告したい場合、百貨店のWEBページに掲載したり、また別のWEBページに広告を掲載することは時間的にできないかもしくは効果がない。また、電子メールを利用して広告を無条件に配信する企業に依頼しても、即時に配信できない。また、チラシを印刷して配ることもできない。
・・・
【0005】そこで、本願の発明の目的は、広告発信者が運営組織体のWEBページやファクシミリまたは電子メールを通じて広告とともに広告配信条件を運営組織体に送信すると運営組織体は、即時に該当する広告受信者を抽出し、広告受信者に電子メールで広告を配信することで、広告発信者は目的とする利用者にほぼリアルタイムに広告を配信でき、また、広告受信者にとっても望む情報がリアルタイムに受信できるので、双方に利益がある。特に携帯電話メールに配信すれば、広告発信者の近くにいる利用者に効率よく広告ができ、売上を増加させることができる。
【0006】さらに、広告受信者が広告を希望する広告発信者を指名した場合、広告発信者の配信希望外であっても広告が配信されることとなり、広告受信者や広告発信者にとって広告はより効果的なものとなる。また、広告配信条件において広告発信者の所在地を中心に指定された距離内に住居または勤務先がある広告受信者に広告を配信することにより、広告発信者にとって木目細かい配信が可能となる。」


「【0009】【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、電子メールアドレスを持ったインターネット利用者が運営組織体20の提供するWEBページにアクセスし、所定の個人情報を登録することにより広告受信者会員になる。このとき利用者は、細分化された情報のジャンルから欲しい広告のジャンルを選択することができる。また、広告発信者も同様に運営組織体20の提供するWEBページにアクセスし、所定の企業情報を登録することにより広告発信者会員になる。広告発信者が運営組織体20の提供するWEBページから広告情報とともに広告のジャンルおよび発信地域等を入力する。運営組織体20は、該当する広告受信者を抽出し、広告受信者に広告の電子メールをほぼリアルタイムまたは指定日時に配信することにした。
・・・
【0012】また、この発明の第2の観点に係る広告情報の配信システムは、オープンネットワーク14を通じて双方向に接続された運営組織体20と広告を受信する会員が有する広告受信者会員端末13と広告を提供する会員が有する広告発信者会員端末12により構成される広告情報の配信システムであって、前記運営組織体20には、広告受信者会員IDを元に電子メールアドレスを含む広告受信者の情報を記憶管理する広告受信者会員データベース手段24と、広告発信者会員IDを元に広告発信者の情報を記憶管理する広告発信者会員データベース手段23と、WEBページに掲載すると共に広告受信者会員端末13に配信する広告情報を記憶管理する広告情報データベース手段25と、前記広告受信者会員端末13および前記広告発信者会員端末12および一般ユーザ端末11からアクセスされて広告受信者会員端末13および広告発信者会員端末12および非会員端末に前記広告情報データベース手段25に記憶管理されている広告情報を提供すると共に前記広告受信者会員端末13および広告発信者会員端末12および一般ユーザ端末11からの情報を受信するWWWサーバ手段21と、電子メールによって前記広告情報を配信するメールサーバ手段22と、郵便番号を元に住所と経度・緯度情報を記憶管理する郵便番号データベース手段と、中心地の経度・緯度情報と中心地からの距離を元に前記郵便番号データベース手段からその範囲内に存在する郵便番号を抽出する郵便番号抽出手段と、広告発信者会員による前記広告発信者会員端末12からオープンネットワーク14を経由して前記WWWサーバ手段21に接続されて、広告情報が入力されるとともに広告配信条件が設定される際、配信地域を前記広告発信者会員の所在地から一定の距離内に配信する広告受信者会員と設定された場合、前記郵便番号抽出手段により該当する郵便番号を抽出し、その他の広告配信条件に該当する前記広告受信者会員の中から、さらに前記広告受信者会員の配信地が抽出した郵便番号に該当するものを抽出し、前記広告情報データベース手段25に登録するとともに前記メールサーバ手段22により広告配信条件に該当する前記広告受信者会員に電子メールで広告情報を配信する制御手段とを具備することを特徴としている。
【0013】本発明はこの様な構成を有しているので、特に地元に根ざした広告発信者会員にとって郵便番号単位の地域で配信会員を絞り込むことが可能になり、無駄な広告を配信しなくてよい。例えば、果物店がそこを中心に3Km四方に存在する町(現実的には存在する郵便番号単位)の広告受信者会員に広告を配信することが可能になり、来店の可能性の極めて低い地域に配信しないため、無駄な費用がかからないし、受信者会員にとっても無駄なメールを受信しなくてよい。電子メールを受信した近くの広告受信者会員がその果物店に買い物に行くという仕組みである。」


「【0020】図1は本発明の第1の一実施形態を示す広告情報の配信システムを示す構成図である。図1に示す様に広告情報の配信システムは、非会員一般ユーザ端末11、広告発信者会員端末12、広告受信者会員パソコン端末13(以下、広告受信者会員PC端末13という)、オープンネットワーク14、携帯電話会社のメールサーバ15、広告受信者会員携帯電話端末16(以下、広告受信者会員携帯端末16という)、運営組織体のシステム20で構成されており、利用者のアクセスにより利用画面を提供するWWWサーバ手段21が備えられており、入力された検索条件等のパラメータを解析するパラメータ解析手段31、各種データベースにアクセスしデータを検索したり更新・登録する、各種データベースのデータ検索更新手段32、表示データを作成するhtml文書作成手段33があり、付随するデータベースである広告受信者会員ID・パスワード・自宅郵便番号等の個人毎の個別の情報からなる広告受信者会員データベース手段24(図ではデータベースをDBと略している)および広告発信者会員ID・パスワード・会社名等の企業または個人毎の個別の情報からなる広告発信者会員データベース手段23、広告発信者会員から発信された、広告ID・広告発信者会員ID・配信指定日時等からなる広告情報データベース手段25、郵便番号・住所・経度・緯度等からなる郵便番号データベース手段26が存在する。また、広告受信者会員に広告を配信したり広告発信者会員と運営組織体のシステム20間で電子メールをやりとりするためのメールサーバ手段22、送信する電子メールを作成する手段34、広告受信者会員からの注文内容を広告発信者会員が有するファクシミリに送信するFAXモデムのような公衆回線変換手段28がある。
・・・
【0022】図2の(1)は広告受信者会員データベース手段24に記憶されている広告受信者会員テーブルのレコードの内容を示している。受信者ID・パスワード・自宅郵便番号・勤務先郵便番号・性別・生年月日・受信拒否時間帯・パソコン電子メールアドレス・携帯電話電子メールアドレス等の個人情報が記憶されている。受信者IDは広告受信者会員を特定するために使用される。各電子メールアドレスは、広告を配信したり運営組織体20から通知事項の電子メールを送るために使用される。受信拒否時間帯を設けない場合は、0時から0時で記憶する。
・・・
【0027】図3は広告発信者会員データベース手段23に記憶されている広告発信者会員テーブルのレコードの内容を示している。発信者ID・パスワード・会社名・所在地・担当者・電話番号・FAX番号・電子メールアドレス・携帯電話電子メールアドレス等の企業または個人毎の個別の情報が記憶されている。発信者IDは広告発信者会員を特定するために使用される。電子メールアドレスは、運営組織体20から通知事項の電子メールを送るために使用される。
【0028】図4の(1)は広告情報データベース手段25に記憶されている広告情報テーブルのレコードの内容を示している。広告ID・発信者ID・配信指定日時・有効期限・配信電子メール先(PCメールか携帯メールまたはその両方)・配信対象性別(男性か女性またはその両方)・配信対象地域(自宅か勤務先またはその両方)・広告内容等の広告毎の個別の情報が記憶されている。広告IDは広告を特定するために使用される。配信指定日時は、広告の配信を開始する日時を記憶する。有効期限は、WWWサーバ手段21でインターネット利用者端末に表示する期限を記憶する。配信電子メール先は、広告をPCメールか携帯メールまたはその両方のいずれに配信するかを記憶する。配信対象性別は、男か女またはその両方のいずれに配信するかを記憶する。配信対象地域は、自宅か勤務先またはその両方のいずれに配信するかを記憶する。自宅か勤務先を指定することによりタイムサービスのような即時性を要する広告を昼間に携帯メールに配信する場合、勤務先の地域を指定するほうがその店舗に近いことが予想され、広告効果が高まる。」


「【0044】図10はWEBページ上で広告情報登録を示す画面であり、広告発信者会員が運営組織体20のWWWサーバ手段21に接続し、広告情報登録を選択するとこの画面が表示される。広告発信者会員は、広告発信者ID・パスワード・配信種類・件名・メッセージ・添付ファイル名・配信指定日時・広告有効期限や受注処理を行なう選択や配信する対象を地域・ジャンル・性別・年齢層・配信先(自宅または勤務先またはその両方)等を入力するようになっている。配信する対象はそれぞれ複数選択することもできる。また、広告配信条件に基づいたすべての配信数または広告発信者会員が定めた配信数または広告発信者会員が定めた料金内の配信数を選択できる。これらの入力完了後、人数チェックボタンをクリックすることによりWWWサーバ手段21に広告発信者ID・パスワード等や広告配信条件が送られる。この受信データに基づき、該当する広告受信者会員数や配信対象人数や広告料が広告発信者会員の端末に表示される。広告発信者会員は、この内容で了承すれば、この内容で申し込むボタンをクリックする。このことによりWWWサーバ手段21に再び広告発信者ID・パスワード等や広告配信条件が送られる。このデータは広告情報データベース手段25に登録される。
【0045】図10で配信対象地域の変更ボタンは、都道府県を指定してこのボタンをクリックすると指定された都道府県の市や町名がその下に表示されて広告発信者会員の配信地域入力をしやすくする。また、「広告発信者からの距離で指定」を選択すると広告発信者会員の所在地から一定の距離内に存在する郵便番号を抽出して広告を配信する。」


「【0049】図12のフローチャートに基づいて広告情報登録においてこの内容で申し込むボタンをクリックされたときの処理を説明する。広告発信者会員は図10の広告情報登録画面により広告発信者ID・パスワード・配信種類等や広告配信条件の入力を行い、人数チェックボタンをクリックし、配信数および広告料金を確認し了承すれば、この内容で申し込むボタンをクリックする。運営組織体のシステム20では、入力パラメータ解析手段31により入力内容が解析され、入力形式が正しいかがチェックされる(ステップS401)。
【0050】入力形式が不正であれば、html文書作成手段33により入力不正メッセージが出力されて広告発信者会員端末12に表示させる(ステップS402)。入力形式が正しければ、広告発信者会員データベース手段23の検索を行い、発信者IDとパスワードで登録済みの広告発信者会員かどうかをチェックする(ステップS403)。未登録のユーザであれば未登録会員メッセージをユーザ端末11に表示させる(ステップS404)。受信した広告内容を広告情報データベース手段25に登録する(ステップS405)。広告発信者会員が電子メールアドレスを所有しているかチェックし(ステップS406)、所有していればメール作成手段34にて、登録完了のメールを作成し、メールサーバ手段22に入れて広告発信者会員の電子メールアドレスに電子メールでその旨を送信する(ステップS407)。次いで、html文書作成手段33により登録完了メッセージが出力されて広告発信者会員端末12に表示させる(ステップS408)。」


「【0059】次に図18のフローチャートに基づいて前記広告情報登録画面において「広告発信者からの距離で指定」を選択されたときにおいて、広告発信者会員からの距離で広告受信者会員を抽出する処理を説明する。
【0060】最初に郵便番号データベース手段26を検索し(ステップS801)、広告発信者の郵便番号の登録の有無をチェックする(ステップS802)。郵便番号が存在しなければ、html文書作成手段33により郵便番号該当なしメッセージが出力されて広告受信者会員端末13に表示させる(ステップS803)。郵便番号が存在すれば、広告発信者の郵便番号の緯度・経度情報を記憶し、その度数をAとする(ステップS804)。前記広告情報登録画面で指示された距離を緯度・経度の度数に変換し、その度数をBとする(ステップS805)。郵便番号データベース手段26から度数A+-Bの緯度・経度を持つ郵便番号を検索する(ステップS806)。検索された郵便番号を持つ広告受信者会員を広告受信者会員データベース手段24の検索を行い抽出する(ステップS807)。抽出された広告受信者会員により対象者数を確定する(ステップS808)。」


「【0067】次に図22のフローチャートに基づいて広告を配信する処理を説明する。運営組織体のシステム20は、広告情報データベース手段25を検索し(ステップS1101)、現在時刻に配信する広告はあるかチェックする(ステップS1102)。該当する広告があればメール作成手段34にて、広告メッセージを作成する(ステップS1103)。次に広告受信者会員データベース手段24を検索し、広告配信条件に該当する広告受信者会員を抽出する(ステップS1104)。抽出した結果、対象受信者はいるかチェックする(ステップS1105)。対象受信者がいない場合は終了する。対象受信者がいる場合は、ステップS1103で作成した広告メッセージをメールサーバ手段22に入れて抽出した広告発信者会員の電子メールアドレスに送信する(ステップS1106)。広告受信者会員データベース手段24の配信履歴テーブルを更新する(ステップS1107)。次の配信対象者を抽出するためにステップS1104へジャンプする。」


「【0070】また、本実施例において広告発信者会員が広告情報登録を行うとき、過去の広告メッセージ等を表示させて、その中から選択させる手段を用いてもよい。」


「【0072】【発明の効果】以上説明したように本発明の広告情報の配信システムは、広告発信者にとれば、チラシを印刷して不特定多数の消費者に配ったり、電子メールを利用して広告を無条件に配信するよりも、すばやく的が絞れた広告を行うことができ、地球にも優しい。特に、即時性を要する広告、例えば、百貨店の鮮魚店が午後5時からの割引サービスを午後4時に利用者に広告したい場合など、本発明の広告情報の配信システムにより、運営組織体20のWEBページから広告を申し込めば、即座に広告を配信することができ売上増加につながる。また、インターネット環境がない企業・個人商店においても、運営組織体20にファクシミリで広告配信を申し込み、注文画面を運営組織体が提供し、受注情報はファクシミリで送信されるので、簡単に電子商取引が可能になる。
【0073】また、広告受信者にとっても、自分の希望する広告情報が得られ、無駄な紙広告や電子メール広告が少なくなる。しかもタイムリーに情報が得られるため非常に有益である。また、非常に狭い地域を指定できるので、的を絞った広告配信が可能になる。」

(3) 引用発明について
ア (2)ウによれば、引用文献には、広告受信者会員PC端末等のような広告受信者の端末に対する広告情報の配信システムが記載されており、(2)ア及びケによれば、この配信システムは、例えば、百貨店の鮮魚店が午後5時からの割引サービスを午後4時に利用者に広告したい場合に即座に広告を配信することができ、非常に狭い地域を指定できるものである。
この配信システムは、運営組織体のシステムを含んで構成されている。

イ (2)ウ及び引用文献の図1によれば、アの運営組織体のシステムは、複数の広告発信者の発信者IDと広告内容を含む個別の情報が記憶された、広告情報テーブルを記憶する広告情報データベース手段を具備する。

ウ (2)エ、(2)オ及び引用文献の図10によれば、アの運営組織体のシステムは、WWWサーバ手段21として、広告発信者の端末に表示された広告情報登録画面において、広告発信者IDやメッセージ等とともに配信指定日時が入力され、さらに、「広告発信者からの距離で指定」の選択及び距離等の広告配信条件が入力された上で「この内容で申し込むボタン」がクリックされた場合に送られた広告発信者IDやメッセージ等と広告配信条件のデータを受けてこのデータを広告情報データベース手段に登録する手段とを具備する。

エ (2)キによれば、アの運営組織体のシステムにおいては、この広告情報データベース手段を検索して現在時刻に配信する広告があれば、広告メッセージを作成して、広告配信条件に該当する広告受信者会員を抽出して、対象受信者のメールアドレスに広告メッセージを送信する、手段を具備する。
また、(2)カによれば、広告配信条件として「広告発信者からの距離で指定」が選択されている場合には、広告発信者の郵便番号の緯度・経度の度数A+-広告情報登録画面で指示された距離を変換した緯度・経度の度数Bの緯度・経度を持つ郵便番号を検索して、検索された郵便番号を持つ広告受信者会員が抽出される。
ここで、広告受信者が郵便番号を持つとは、(2)ウによれば、広告受信者の自宅郵便番号や勤務先郵便番号等が広告受信者会員データベース手段に記憶されていることである。

オ 以上によれば、引用文献には、(2)で示した各記載と関連する図示からみて、運営組織体のシステムについての次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>
例えば、百貨店の鮮魚店が午後5時からの割引サービスを午後4時に利用者に広告したい場合に即座に広告を配信することができ、非常に狭い地域を指定できる、広告受信者の端末に対する広告情報の配信システムにおける運営組織体のシステムであって、
複数の広告発信者の発信者IDと広告内容を含む個別の情報が記憶された、広告情報テーブルを記憶する広告情報データベース手段と、
広告発信者の端末に表示された広告情報登録画面において、広告発信者IDやメッセージ等とともに配信指定日時が入力され、さらに「広告発信者からの距離で指定」の選択及び距離等の広告配信条件が入力された上で「この内容で申し込むボタン」がクリックされた場合に送られた広告発信者IDやメッセージ等と広告配信条件のデータを受けてこのデータを広告情報データベース手段に登録する手段と、
この広告情報データベース手段を検索して現在時刻に配信する広告があれば、広告メッセージを作成し、「広告発信者からの距離で指定」が選択されている場合には、広告発信者の郵便番号の緯度・経度の度数A+-広告情報登録画面で指示された距離を変換した緯度・経度の度数Bの緯度・経度を持つ郵便番号を検索して、検索された郵便番号を持つ広告受信者会員を抽出して、対象受信者のメールアドレスに広告メッセージを送信する、手段と、
を具備する、運営組織体のシステム。

(4) 対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア) 引用発明が例示する「割引サービス」を広告したい「広告発信者」及び「割引サービス」の利用者である「広告受信者」は、本願補正発明の「店舗」及び「顧客」に相当する。
引用発明の「割引サービス」に係る「広告情報」は、入力されて広告内容として記憶されたメッセージ等が広告メッセージとして送信されて配信されるものであり、本願補正発明の「その店舗での集客のため」の「宣伝データ」に相当する。
引用発明の「広告受信者の端末」は、本願補正発明の「顧客の出力装置」である「出力装置」に相当する。

(イ) 引用発明では、広告発信者の端末に表示された広告情報登録画面において、広告発信者IDやメッセージ等とともに配信指定日時を入力し、さらに「広告発信者からの距離で指定」の選択及び距離等の広告配信条件が入力された上で「この内容で申し込むボタン」がクリックされたことを契機として、運営組織体のシステムに対して広告情報となるメッセージを含む日時指定配信の指示でもある登録のための信号が発せられ、運営組織体のシステムがこの信号を受けて登録がなされることにより日時指定配信がなされるところ、この信号は、配信が日時指定配信であるものの、配信される宣伝データの指示を含む運営組織体のシステムへの配信の指示要求である点で、本願補正発明の「店舗の宣伝を要求する配信指示要求」に対応する。
そして、引用発明の、「広告発信者の端末に表示された広告情報登録画面において、広告発信者IDやメッセージ等とともに配信指定日時が入力され、さらに「広告発信者からの距離で指定」の選択及び距離等の広告配信条件が入力された上で「この内容で申し込むボタン」がクリックされた場合」とは、このような配信の指示要求が複数の店舗の内で現時点で至急の集客を必要とする店舗の端末からのものである旨は明示されていないものの、運営組織体のシステムが受けた指示要求がこのような配信の指示要求であると判別された場合であるから、本願補正発明の「配信指示要求が送信されてきたことを判別した際」に対応しており、このような判別を行う手段である点で、引用発明の「広告配信条件のデータを登録する手段」は、本願発明の「判別手段」に対応する。

(ウ) 引用発明は、「広告発信者からの距離で指定」が選択されている場合には、広告発信者の郵便番号の緯度・経度の度数A+-広告情報登録画面で指示された距離を変換した緯度・経度の度数Bの緯度・経度を持つ郵便番号を検索して、検索された郵便番号を持つ広告受信者会員を抽出するものであるところ、このような抽出は、本願発明の「店舗の近傍位置」の「顧客」の「絞り込」みに相当し、引用発明の「対象受信者」は、本願補正発明の「絞り込まれた顧客」に相当する。
そして、引用発明の「対象受信者のメールアドレスに広告メッセージを送信する、手段」は、(イ)で示した配信の指示要求の中で指示された宣伝データを「絞り込まれた顧客」の「対象受信者メールアドレス」で示される顧客の出力装置に対して送信して配信する手段であるから、配信が「前記配信指示要求が送信判別後において」「直ちに」なされる旨は明示されていないものの、本願発明の「宣伝データ」を「前記絞り込まれた顧客の出力装置に対して」「配信する」「配信手段」に対応する。

(エ) 引用発明の「運営組織体のシステム」は、ウで後述する相違点を除いて、本願補正発明の「宣伝配信装置」に対応する。

イ してみると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
出力装置に対して宣伝データを配信する宣伝配信装置であって、
店舗の端末から、その店舗の宣伝を要求する配信の指示要求が送信されてきたか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段で前記配信の指示要求が送信されてきたことを判別した際は、前記店舗の近傍位置の顧客を絞り込むと共に、当該配信の指示要求の中で指示された宣伝データを、前記絞り込まれた顧客の出力装置に対して配信する配信手段と、
を具備したことを特徴とする宣伝配信装置。

ウ そして、本願補正発明と引用発明とは、次の相違点1乃至相違点5において、相違する。
<相違点1>
本願補正発明では、複数の店舗毎に、その店舗での集客のための複数の宣伝データを記憶する宣伝記憶手段を具備するのに対し、引用発明では、その旨が明示されていない点

<相違点2>
配信の指示要求を行う店舗が、本願補正発明では、「複数の店舗の内で、現時点で至急の集客を必要とする店舗」であるのに対し、引用発明では、その旨が明示されていない点

<相違点3>
店舗の近傍位置の顧客を絞り込むにあたって、本願補正発明では、「店舗の位置と、登録記憶手段に記憶された複数の顧客の登録位置とに基づいて、店舗の近傍位置が顧客の登録位置の顧客を、前記配信指示要求が送信された時点で直ぐに集客できる見込みのある顧客として」絞り込むのに対し、引用発明では、広告発信者の郵便番号の緯度・経度の度数A+-広告情報登録画面で指示された距離を変換した緯度・経度の度数Bの緯度・経度を持つ郵便番号を検索して、検索された郵便番号を持つ広告受信者会員を抽出して、絞り込む点

<相違点4>
配信の指示要求の中で配信すべく指示される宣伝データが、本願補正発明では、「その店舗に対応して前記宣伝記憶手段に記憶される複数の宣伝データの内」で「選択された」ものであるのに対し、引用発明では、その旨が明示されていない点

<相違点5>
指示要求される配信が、本願補正発明では、「配信指示要求が送信判別後」「直ちに」なされるのに対し、引用発明では、日時指定配信であり、「配信指示要求が送信判別後」「直ちに」なされることが明示されていない点

(5) 相違点の判断
ア 相違点1及び相違点4について
引用文献には、「広告発信者会員が広告情報登録を行うとき、過去の広告メッセージ等を表示させて、その中から選択させる手段を用いてもよい」旨が示され((2)ク)、店舗である広告発信者の、過去の広告メッセージを、広告情報データベース手段や他の記憶手段を用いて当該店舗による「選択」の対象となるように複数記憶しておき、このうちから配信すべき広告情報を選択させるように構成することが示唆されている。
してみると、この示唆に従って、引用発明において、複数の店舗毎に、その店舗での集客のための複数の宣伝データを記憶する宣伝記憶手段を具備し、その店舗に対応して前記宣伝記憶手段に記憶される複数の宣伝データの内で当該配信指示要求の中で指示されて選択されたものを配信するように構成することは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2,相違点3及び相違点5について
引用発明は、即座に非常に狭い地域を指定した広告配信を可能とするものであり、そのために、「広告発信者」の「所在地」や広告受信者の「住居又は勤務先」((2)ア、【0006】)の位置を示すものとして、「広告発信者」の「所在地」と広告受信者会員データベース手段に記憶された「広告受信者」の「郵便番号」を用いた検索を行っている。このことから、引用発明も、店舗の近傍位置となる郵便番号が登録記憶手段に記憶された顧客の登録位置である郵便番号であるような顧客を絞り込んでいるものといえる。
また、引用発明は、百貨店の鮮魚店が午後5時からの割引サービスを午後4時に利用者に広告したい場合等に、配信指定日時を入力した上で「この内容で申し込む」ボタンがクリックされることによる日時指定配信を可能とするものであるところ、引用文献には、「運営組織体20は、該当する広告受信者に広告の電子メールをほぼリアルタイムまたは指定日時に配信することにした。」((2)イ、【0009】)との記載がある。この記載によれば、「現時点で至急の集客を必要とする」店舗である広告発信者により配信指定日時が入力されることなく「この内容で申し込む」ボタンがクリックされた場合に配信日時の指定によらない「ほぼリアルタイム」での、すなわち、「配信指示要求が送信判別後」「直ちに」、配信を行う旨、又は、「現時点で至急の集客を必要とする」店舗である広告発信者が「配信指示要求が送信判別後」「直ちに」配信されるように配信日時が指定入力された上で「この内容で申し込む」ボタンがクリックされた場合の「ほぼリアルタイム」での日時指定配信を行う旨、が示唆されているものである。この点、百貨店の鮮魚店が午後5時からの割引サービスを午後4時に広告配信する例も、午後5時の割引サービスの実施を決定した鮮魚店において午後4時の直前の配信日時の指定によらない広告配信又は配信日時として午後4時を指定した広告配信のいずれかにより可能であることを示す例であって、日時指定配信の登録にあたって登録直後の時刻を指定することができない旨を示すものではない。
さらに、配信のための絞り込みは、配信前に行われる必要があるものの、配信の指示要求が送信されて絞り込みのための距離等の広告配信条件が決まるまでは行われ得ないから、「ほぼリアルタイム」の配信を行うための絞り込みは、配信要求から「ほぼリアルタイム」の配信が行われるまでの時点、すなわち、配信の指示要求が送信された時点、で行われることになる。
してみると、この示唆に従って、引用発明において、配信指示要求を行う店舗を「複数の店舗の内で、現時点で至急の集客を必要とする店舗」とし、店舗の位置と登録記憶手段に記憶された複数の顧客の登録位置とに基づいて店舗の近傍位置が顧客の登録位置の顧客を前記配信指示要求が送信された時点で直ぐに集客できる見込みのある顧客として絞り込み、配信指示要求が送信判別後直ちに配信するように構成することは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 本願補正発明の効果について
本願補正発明の効果は、引用文献に記載された事項に照らして当業者が予測し得ることであり、格別なものでない。

(6) 小括
してみると、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。

3 補正却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、その請求項1の補正につき特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記第2の補正却下の決定により、本件補正は却下された。よって、本願の特許請求の範囲の記載は、平成27年10月1日に提出された手続補正書による補正後の特許請求の範囲のとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、第2 1(1)において示したとおりのものである。

2 引用文献及び引用発明について
引用文献及び引用発明については、それぞれ、第2 2(2)及び同(3)に上記したとおりである。

3 判断
本願発明は、本願補正発明における、「前記絞り込まれた顧客の出力装置に対して」「配信指示要求の中で指示され」て「選択」された「宣伝データ」を「配信する」「配信手段」について「配信指示要求が送信判別後において」「直ちに」配信するものである旨の限定を除くものである。
そして、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記の限定がなされたものに相当する本願補正発明は、上記第2 2(4)及び同(5)において説示したように、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
してみると、これと同様の理由により、本願発明も、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-24 
結審通知日 2017-05-23 
審決日 2017-06-05 
出願番号 特願2014-70746(P2014-70746)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 剛史  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 相崎 裕恒
貝塚 涼
発明の名称 宣伝配信装置及びプログラム  

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