• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1331020
審判番号 不服2017-1324  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-31 
確定日 2017-08-29 
事件の表示 特願2013-176954「炭化珪素半導体装置およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月12日出願公開、特開2015- 46500、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年8月28日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年12月24日 審査請求
平成28年 7月21日 拒絶理由通知
平成28年 9月23日 意見書・手続補正
平成28年10月28日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年 1月31日 審判請求・手続補正
平成29年 5月10日 上申書

第2 原査定の概要
1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2.(拡大先願)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願の日前の特許出願であって,その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,またこの出願の時において,その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので,特許法第29条の2の規定により,特許を受けることができない。

●理由1(特許法第29条第2項)について
・請求項1
・引用文献等1?3
出願人は平成28年9月23日付け意見書において「引用文献2を考慮して引用発明1の構成を変更する場合,引用発明1の表面電極パッド(電極15)ではなくショットキー電極(バリア金属層13)の外周端を引用文献2で提案する範囲内に設計することについては示唆又は動機付けがありますが,引用文献2には表面電極パッド(電極15)の外周端をどのような位置に設けるべきかについては何ら開示されておりません。そのため,引用文献2を考慮しても,引用発明1において表面電極パッド(電極15)をガードリング領域上に設けるための示唆や動機付けは存在しません。よって,引用文献1乃至4に基づいて補正後の請求項1にかかる発明は容易に想到することができないものと思料いたします。」と主張している。
出願人の主張について検討する。
引用文献2の段落[0039]及び[0041]には,ショットキ電極2端部が外側になるにつれて絶縁膜4に加わる電界が強くなり,絶縁膜4の耐圧に起因した耐圧のバラツキが生じる旨が記載されてる。
そして,意見書における主張の通り,引用文献1に記載された発明において「ショットキー電極(バリア金属層13)の外周端を引用文献2で提案する範囲内に設計」した場合,「電極15」の外周端が「シリコン酸化膜12」に加える電界は強いままであり,「シリコン酸化膜12」のバラツキを抑制できないことは,当業者にとって明らかである。
したがって,引用文献1に記載された発明において,耐圧変動を抑制すること等のために,「電極15」の端部を「P型ガードリング14」上に設けることは当業者が容易になし得たことであるから,出願人の主張は,採用できない。
よって,先の拒絶理由が記載したとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用文献1?3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,依然として特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

●理由1(特許法第29条第2項)について
・請求項3
・引用文献等1?4
引用文献3には,フィールド絶縁膜16の開口部がテーパ形状となっている旨が図示されている(特に図2を参照されたい)。
また,引用文献4には半導体装置において,ショットキーメタル(4)の段切れを避けるために半導体領域(1)に堆積したSiO2膜(2)の開口部(3)の断面形状をテーパー状(6)とすることが記載されている(特に段落[従来技術],図4を参照されたい)。
したがって,先の拒絶理由が記載したとおり,引用文献1に記載された発明において,「バリア金属層13」の段切れを避けること等のために「シリコン酸化膜12」の断面形状をテーパ状とすることは,当業者が容易になし得たことである。
よって,本願の請求項3に係る発明は,引用文献1?4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

●理由2(特許法第29条の2)について
・請求項1,2
・引用文献等5
出願人は平成28年9月23日付け意見書において「補正後の請求項1に記載された発明は,「前記ガードリング領域は,前記ガードリング領域より高い不純物濃度を有する第2導電型の高濃度領域を有」するという特徴(構成F1)を有するものです。引用発明4は構成F1を有するものではない」と主張している。
出願人の主張について検討すると,先願5の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面の,段落[0025]には,「図4は,本発明におけるエッジ部の構造を詳細に説明する図であって,図3と同様に,第1の金属層のエッジ部は,終端構造用のp型領域3上に形成された,層間絶縁膜6の上に位置しており,第2の金属層12は,該第1の金属層上に形成されているが,第1の金属層11は,第2の金属層12で被覆されている。すなわち,本願発明の図4における構造では,ショットキーコンタクトは,表面電極となる第2の金属層12に完全に覆われているため,エッチング残渣およびプラズマによるダメージの影響を受けず,特性が良好な素子を得ることが出来る。図4に示すとおり,本発明において,前記第1の金属層及び第2の金属層の外周端部が,共に前記第2導電型の領域B内にあることが好ましい。」と記載されている。
また,先願5の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面の,図1,図4には,「領域B(3)」と「領域C(5)」とが連接して図示されている。
また,先願5の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面の,段落[0013]には,「第2導電型が配置された領域B及び該領域Bの周囲に配置された濃度の異なる第2導電型の領域Cとに囲まれている構造を有し,さらに該領域Bおよび該領域Cの上に絶縁膜を有する半導体基板上に,少なくとも前記領域Aを覆う第1の金属堆積膜とその上に形成された第2の金属堆積膜を有する半導体装置」と記載されている。
したがって,「領域B(3)」と「領域C(5)」とを合わせた領域は高い不純物濃度を有する第2導電型領域を有することから,本願の請求項1における「ガードリング領域」相当する。
よって,本願の請求項1?2に係る発明は,先願5の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,またこの出願の時において,その出願人が先願の出願人と同一でもないので,特許法第29条の2の規定により,特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2007-235064号公報
2.特開2009-224661号公報
3.国際公開第2012/157679号
4.特開平2-281757号公報
5.特願2012-082444号(特開2013-211503号)

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件を満たしている。
審判請求時の補正の内容は,(1)補正前の請求項1について、「ガードリング領域」は,「表面電極パッド下」に有するとする補正及び補正前の請求項2に記載されていた「ショットキー電極」と「パッド電極」との関係を請求項1に追加する補正、具体的には「ショットキー電極の外周部にはエッチング残渣が形成されており,表面電極パッドは,前記エッチング残渣を覆うように形成されている」とする内容を追加して補正後の請求項1とする補正(以下,「補正事項1」という。)は,いずれも請求項1に係る発明の発明特定事項となる「ガードリング領域」,「ショットキー電極」及び「パッド電極」の構成を限定する補正であるから,特許請求の範囲の減縮にあたる。
また,(2)補正前の請求項4について、ウエット処理により金属膜をエッチングすることで,外周端が前記フィールド酸化膜上に存在すると共に「外周端にエッチング残渣を有する」ショットキー電極を形成する工程,前記ショットキー電極上において,前記ショットキー電極の外周端を越えて前記フィールド酸化膜と接し,「前記エッチング残渣を覆うように」表面パッド電極を形成する工程,と補正して補正後の請求項3とする補正(以下,「補正事項2」という。)は,補正前の請求項4に係る発明の発明特定事項である「ショットキー電極を形成する工程」と「パッド電極を形成する工程」について限定を加える補正であるから,特許請求の範囲の減縮にあたる。
補正事項1及び2は,本願明細書の【0031】,【0032】,図2等に記載された内容であり,補正事項1及び2は,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであることは明らかであるので,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。また,補正事項1及び補正事項2は,特許請求の範囲を減縮したものであるから,特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかであり,同法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1ないし3に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。
また,審判請求時の補正によって,段落【0009】が補正されたが,当該補正事項は,新規事項を追加するものではない。

第4 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は,平成29年1月31日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりである。
「【請求項1】
第1導電型のドリフト層と,
前記ドリフト層の表面に形成された環状の第2導電型のガードリング領域と,
前記ドリフト層の表面上において,前記ガードリング領域を取り囲むように形成されたフィールド絶縁膜と,
前記ガードリング領域の内側において前記ドリフト層の表面を覆うように形成され,外周端が前記フィールド絶縁膜上に存在するショットキー電極と,
前記ショットキー電極上に形成され,前記ショットキー電極の外周端を越えて前記フィールド絶縁膜と接している表面電極パッドと,
を備え,
前記ガードリング領域は,前記ガードリング領域より高い不純物濃度を有する第2導電型の高濃度領域を前記表面電極パッド下に有し,
前記表面電極パッドの外周端は,前記ガードリング領域の上方に存在し,
前記ショットキー電極の外周端にはエッチング残渣が形成されており,
前記表面電極パッドは前記エッチング残渣を覆うように形成されていることを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記フィールド絶縁膜の開口部がテーパ形状となっていることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
第1導電型の基板層と前記基板層上に形成された第1導電型のドリフト層を有する炭化珪素基板を用意する工程と、
前記ドリフト層の表面に第2導電型のガードリング領域を形成する工程と、
前記前記ドリフト層の表面上の一部おいて前記ガードリング領域を取り囲むようにフィールド絶縁膜を形成する工程と、
前記フィールド絶縁膜上と前記ドリフト層上とに金属膜を形成した後、ウェット処理により前記金属膜をエッチングすることで、外周端が前記フィールド絶縁膜上に存在するとともに前記外周端にエッチング残渣を有するショットキー電極を形成する工程と、
前記ショットキー電極上において、前記ショットキー電極の外周端を越えて前記フィールド絶縁膜と接し、前記エッチング残渣を覆うように表面電極パッドを形成する工程と
を備えた炭化珪素半導体装置の製造方法。」

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-235064号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(当審注。下線は,当審で付加した。以下同じ。)

ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットキーバリア半導体装置及びその製造方法に関し、より特定的には、高濃度第一導電型(N型)半導体であるシリコン基板上において、金属膜がショットキー接合を形成しているショットキーバリア半導体装置の耐圧性能及び静電気サージ耐量を改善する技術に関する。」

イ「【0013】
図1において、本発明のショットキーバリアダイオードは、高濃度N型半導体基板10、低濃度N型エピタキシャル層11、低濃度P型ガードリング領域14aと高濃度P型ガードリング領域14bとからなるガードリング14、シリコン酸化膜12、バリア金属層13、電極15、及び電極16で構成される。この構成によるショットキーバリアダイオードは、図2A及び図2Bに示す工程の順序で製造される。
【0014】
まず、エピタキシャル成長法を用いて、シリコンからなる高濃度N型半導体基板10の上に低濃度N型エピタキシャル層11を積層する(図2A(a))。次に、ガードリング14の形成場所に対応した所定面積の開口部を持つ絶縁膜(シリコン酸化膜)17を、低濃度N型エピタキシャル層11の上に形成する(図2A(b))。次に、絶縁膜17を介したイオン注入法等を用いて、低濃度N型エピタキシャル層11の中にボロンを注入し、低濃度P型ガードリング領域14aを形成する(図2A(c))。次に、絶縁膜17をオーバーエッチングして、低濃度P型ガードリング領域14aを形成したときよりも開口部の面積を大きくする(図2A(d))。次に、開口部の面積を拡大させた絶縁膜17を介したイオン注入法及びアニール処理(熱処理)等を用いて、低濃度N型エピタキシャル層11の表面部分に、低濃度P型ガードリング領域14aを被覆しかつ低濃度P型ガードリング領域14aよりも浅い形状で高濃度P型ガードリング領域14bを形成する(図2A(e))。すなわち、この工程によって、低濃度P型ガードリング領域14aが「軸」で高濃度P型ガードリング領域14bが「傘」となるキノコ形状のガードリング14を形成することができる。
【0015】
例えば、低濃度P型ガードリング領域14aは、深さを1μm程度及び不純物濃度を1×10^(16)/cm^(3) ?6×10^(17)/cm^(3) とし、高濃度P型ガードリング領域14bは、深さを0.2μm程度及び不純物濃度を1×10^(18)/cm^(3) ?6×10^(21)/cm^(3) とすればよい。
【0016】
次に、低濃度N型エピタキシャル層11の表面に、高濃度P型ガードリング領域14bの一部と接するシリコン酸化膜12を形成する(図2B(f))。次に、ニッケル、チタン、又はモリブデン等からなるバリア金属層13を、このシリコン酸化膜12の一部を覆うように低濃度N型エピタキシャル層11の表面に蒸着させ、低濃度N型エピタキシャル層11とバリア金属層13とでショットキー接合を形成する(図2B(g))。次に、バリア金属層13の上に、オーミック接続されたアルミニウム、金、又は銀等からなる電極15を形成する(図2B(h))。また、高濃度N型半導体基板10の低濃度N型エピタキシャル層11と相対する側に、オーミック接続されたアルミニウム、金、又は銀等からなる電極16を形成する(図2B(i))。」

(2)引用装置発明1
「シリコン酸化膜12」は、N型エピタキシャル層11の表面上において、開口部に形成するバリア金属層13の基板表面上における外周部として機能しており、基板内部において当該バリア金属層13と炭化珪素基板の接合部の外周部として機能するガードリングと対応するように形成することは電極部構造の技術常識であるから、図1の断面図における「シリコン酸化膜12」とガードリング14の相対的な位置関係を考慮すると、「ガードリング領域の一部と接するシリコン酸化膜12」は、実質的には「前記ガードリングを取り囲むように形成されたシリコン酸化膜12」が記載されているものと解される。
したがって、前記「シリコン酸化膜12」の記載事項、前記ア,イ,及び図1を考慮すると,引用文献1には次の発明(以下,「引用装置発明1」という。)が記載されていると認められる。

「低濃度N型エピタキシャル層11と、
前記エピタキシャル層11の表面に形成された低濃度P型ガードリング領域14aと高濃度P型ガードリング領域14bとからなるガードリング14と、
前記N型エピタキシャル層11の表面上において、前記ガードリング14に一部が接するように形成されたシリコン酸化膜12と、
前記ガードリング14の内側において前記エピタキシャル層11の表面を覆うように形成され、外周端が前記シリコン酸化膜12上に存在するニッケル、チタン、又はモリブデン等からなるバリヤ金属層13と、前記バリア金属層13上に形成され、前記バリア金属層13の外周端を越えて、前記シリコン酸化膜12と接しているアルミニウム、金または銀等からなる電極15と、
を備え、
前記電極15の外周端は、前記ガードリング14の外側に存在している
シリコン基板10上のショットキーバリアダイオード。」

(3)引用製造方法発明1
前記(2)の「シリコン酸化膜12」の記載事項、前記ア,イ,及び図1,図2A,図2Bを考慮すると、引用文献1には次の発明(以下,「引用製造方法発明1」という。)が記載されていると認められる。

「シリコンからなる高濃度N型半導体基板10とその基板上に形成された低濃度N型エピタキシャル層11を有する当該シリコン基板を用意する工程と、
前記エピタキシャル層11の表面に低濃度P型ガードリング領域14aと高濃度P型ガードリング領域14bとからなるガードリング14を形成する工程と、
前記N型エピタキシャル層11の表面上の一部において、前記ガードリング14に一部が接するようにシリコン酸化膜12を形成する工程と、
前記シリコン酸化膜12上と前記エピタキシャル層11上とにニッケル、チタン、又はモリブデン等からなるバリヤ金属層13を全面に形成し、パターニングしてショットキー接合を形成する工程と、
バリア金属上13上にアルミニウム、金、または銀等から成る電極16を形成する工程を備えたシリコン半導体装置の製造方法。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された.特開2009-224661号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素ショットキダイオードに関するものである。」

イ「【0014】
本発明の炭化珪素ショットキダイオード10は、図2に示すようにn型の炭化珪素半導体基板1の表面に形成されるアノードのためのショットキ電極2と、該ショットキ電極2の周囲を取囲むべく、炭化珪素半導体基板1の表面にp型のガードリング3と、該ガードリング3上に延在すると共に当該ガードリング3の周囲を取囲むように炭化珪素半導体基板1の表面上に延在する絶縁膜4と、炭化珪素半導体基板1の裏面に形成されるカソードのための裏面電極5と、ショットキ電極2上に形成される半田とを備えており、ショットキ電極2は炭化珪素半導体基板1の表面上においてガードリング3に接し、かつ絶縁膜4上にも延在するように形成されている。
【0015】
炭化珪素半導体基板1は、窒素濃度5E18cm^(-3)で示される濃度のバルク基板11と、該バルク基板上に1E16cm^(-3)で示される濃度でエピタキシャル成長させて成るエピタキシャル層12とを有しており、バルク基板11は例えば350μmの厚さ寸法を有し、エピタキシャル層12は例えば10μmの厚さ寸法を有している。
【0016】
炭化珪素半導体基板1のエピタキシャル層12の表面近傍には、ガードリング3が形成されている。このガードリング3は、エピタキシャル層12の表面に所定形状のマスクを施した後、p型の不純物として例えばAlを30-400keVの条件で多段にイオン注入することで、平面から見て矩形を基調とするリング状に形成される。尚、前記した注入条件により、ガードリング3は、2E17cm^(-3)?5E17cm^(-3)の不純物濃度に設定される。
【0017】
ガードリング3は、そのリング内径が300μmを有するように形成されており、リングを成す線を断面で見ると、その形状は矩形状であり、例えば横幅寸法が100μmおよび表面からの深さ寸法が0.5μmとなるように形成されている。
【0018】
炭化珪素半導体基板1のエピタキシャル層12の表面には、ショットキ電極2が形成されている。詳細にはショットキ電極2はガードリング3によって規定されるリング形状の内側全面に亘って延在しており、その端部はガードリング3の内側において該ガードリング3の一部に接して更に絶縁膜4上に延在する。
【0019】
ところで、ショットキ電極2は、複数種類の金属を用いた積層構造であり、例えばチタンを0.5μmの厚さ寸法で蒸着させた後、その上に順にアルミを3μmの厚さ寸法で蒸着させて形成される。」

ウ「【0023】
前記した構造の絶縁膜4は、図2に示すようにガードリング3の周囲を取囲むように延在しており、またガードリング3の外周側、すなわちガードリング3外側の当該ガードリング3が形成されないエピタキシャル層12の表面上にも延在するように形成されている。その延在する長さ寸法は、ガードリング3の外周から例えば50μmに設定されている。
【0024】
また、ガードリング3の内側表面の例えば10μmには絶縁膜4が延在しておらず、この部位にはショットキ電極2の端部が延在している。ガードリング3の内側表面に延在するショットキ電極2により、ガードリング3およびショットキ電極2が電気的に接続される。
【0025】
ショットキ電極2は、ガードリング3の内側表面から該ガードリング3の表面上に形成された絶縁膜4上にも延在しており、絶縁膜4上に延在するショットキ電極2の先端からガードリングの外周端までの離間距離比をX、ショットキ電極2がガードリング3の内側表面において接する幅寸法比を1、ガードリングの横幅寸法比(リングを成す線の横幅寸法比)を10とするとき、離間距離比は3?9となるように設定されている。」

エ「【0039】
ショットキ電極2端部が外側になるにつれて絶縁膜4に加わる電界が強くなるが、絶縁膜4自体の耐圧に起因しているのではないかと考えた。これは、別途行った絶縁膜4自体の耐圧を求めた実験に基づいている。
?(中略)?
【0041】
そこで、ショットキ電極2端部が外側になるにつれ、すなわち離間距離比が3未満になるに従い、ショットキ電極2が絶縁膜4の影響を受け易く、もって耐圧がバラツキ易いのではないかと発明者は考えている。」

(2)引用発明2
前記アないしエ,及び図面を考慮すると,引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「n型の炭化珪素半導体基板1の表面に形成されるアノードのためのショットキ電極2と、該ショットキ電極2の周囲を取囲むべく、炭化珪素半導体基板1の表面にp型のガードリング3と、該ガードリング3上に延在すると共に当該ガードリング3の周囲を取囲むように炭化珪素半導体基板1の表面上に延在する絶縁膜4と、炭化珪素半導体基板1の裏面に形成されるカソードのための裏面電極5と、ショットキ電極2上に形成される半田とを備えており、ショットキ電極2は炭化珪素半導体基板1の表面上においてガードリング3に接し、かつ絶縁膜4上にも延在するように形成されている炭化珪素ショットキダイオード。」

3 引用文献3について
(1)引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2012/157679号(以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

ア「[0001]本発明は、ワイドバンドギャップ半導体からなるショットキーバリアダイオードを備える半導体装置およびその製造方法に関する。」

イ「[0033]ショットキーバリアダイオード1は、半導体層の一例としてのn^( + )型のSiCからなる基板2(SiC基板)を備えている。基板2の厚さは、たとえば、50μm?600μmである。また、基板2のオフ角は、4°以下であることが好ましい。なお、n型不純物としては、たとえば、N(窒素)、P(リン)、As(ひ素)などを使用できる。基板2の裏面3((000-1)C面)には、その全域を覆うようにオーミック電極としてのカソード電極4が形成されている。カソード電極4は、n型のSiCとオーミック接触する金属(たとえば、Ti/Ni/Ag、Ti/Ni/Au/Ag)からなる。
[0034]基板2の表面5((0001)Si面)には、半導体層の一例としてのn型SiCからなるエピタキシャル層6が形成されている。なお、基板2の表面5は、Si面((0001)面)以外の面方位であってもよい。エピタキシャル層6は、バッファ層7と、3層構造のドリフト層とが基板2の表面5からこの順に積層されて形成された構造を有している。3層構造のドリフト層は、ベースドリフト層8、低抵抗ドリフト層9および表面ドリフト層10を含む。バッファ層7は、エピタキシャル層6の裏面11((000-1)C面)を形成しており、基板2の表面5に接している。一方、表面ドリフト層10は、エピタキシャル層6の表面12((0001)Si面)を形成している。

ウ「[0043]フィールド絶縁膜16上には、アノード電極19が形成されている。アノード電極19は、ショットキー電極の一例としてのショットキーメタル20と、コンタクトメタル21との2層構造を有している。ショットキーメタル20は、フィールド絶縁膜16のコンタクトホール14内でエピタキシャル層6に接合されている。コンタクトメタル21は、ショットキーメタル20に積層されている。」

エ「[0046]コンタクトメタル21は、アノード電極19において、ショットキーバリアダイオード1の最表面に露出して、ボンディングワイヤなどが接合される部分である。コンタクトメタル21は、たとえば、Al(アルミニウム)からなる。また、コンタクトメタル21は、ショットキーメタル20(第2メタル23)と同様に、フィールド絶縁膜16におけるコンタクトホール14の周縁部を上から覆うように、当該コンタクトホール14の外方へフランジ状に張り出している。」

(2)引用発明3
前記アないしエ、及び図面を考慮すると,引用文献3には次の発明(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「コンタクトメタル21は、ショットキーメタル20(第2メタル23)と同様に、フィールド絶縁膜16におけるコンタクトホール14の周縁部を上から覆うように、当該コンタクトホール14の外方へフランジ状に張り出しているSiCショットキーバリアダイオード。」

4 引用文献4について
(1)引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-281757号公報(以下,「引用文献4」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

ア「〔産業上の利用分野〕
本発明は、半導体装置に関し、特に半導体領域に絶縁膜の開口部を通して被着される金属電極の被着面積の制御性及び段切れ防止を改善するものである。」(第1頁左欄9?13行)

イ「上述のGaAsショットキーダイオード(23)によれば、その絶縁膜(12)の開口部(19)の断面形状が上部でテーパー状(17)となされているので、絶縁膜(12)の開口部上端縁aの角度が大きくなりショットキーメタル(4)を含むメタル段切れを防止することができると共に、下部では円弧状(18)となされているので、ショットキーメタル(4)とGaAs基板(21)との接触部端縁bでの絶縁膜(12)の角度θが大きくなりGaAs基板(21)の面が臨む開口寸法即ち開口部幅Wの制御性が良く、その結果、ショットキー接合面積の制御性を上げることができる。」(第4頁左上欄8?18行)

(2)引用発明4
前記ア、イ、及び図面を考慮すると,引用文献4には次の発明(以下,「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

「絶縁膜(12)の開口部(19)の断面形状が上部でテーパー状(17)となされているので、絶縁膜(12)の開口部上端縁aの角度が大きくなりショットキーメタル(4)を含むメタル段切れを防止することができるGaAsショットキーダイオード(23)。」

5 先願5について
(1)先願5
原査定の拒絶の理由に引用された出願である特願2012-82444号(特開2013-211503号)(以下,「先願5」という。)の当初明細書には,図面とともに,次の記載がある。

ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、SiCを用いた半導体装置に関し、特にエッジ部のショットキーコンタクトメタルを表面電極メタルで完全に被覆することで、エッチング残渣の発生を防ぎ、信頼性の高い表面電極構造を有する半導体デバイスに関するものである。」

イ「【0016】
図2(1)の(a)に示すように、例えば5×10^(18)cm^(-3)の窒素がドーピングされた厚さ、例えば350μmの、例えば主面として(0001)面を有する高濃度n型基板を用意する。次いで、図2(1)の(b)に示すように、この炭化珪素基板1は、その主面上に例えば1.0×10^(16)cm^(-3)の窒素がドーピングされた、例えば厚さ10μmの低濃度n型ドリフト層2が堆積される。
【0017】
次いで、図2(2)に示すように、終端構造用のp型領域3とJunction Barrier Schottky(JBS)構造用のp型領域4とJunction Termination Extension(JTE)構造用のp型領域5を形成するために、アルミニウムを、例えばイオン注入装置で注入する。終端構造用のp型領域3とJBS構造用のp型領域4とJTE構造用のp型領域5を形成するために注入されたアルミニウムを活性化するために、例えば、Ar雰囲気中において1650℃で240秒間の活性化を行う。
該図2(2)図に示す第一実施形態においては、本発明の前記領域AないしCは、図1(b)に示されるものであって、領域Aは、イオン注入されていない低濃度n型ドリフト層2の領域2と、JBS構造用のp型領域4とからなり、前記領域Bは、終端構造用のp型領域3からなり、前記領域Cは、JTE構造用のp型領域5からなっている。」

ウ「【0022】
第2(4)に示す模式図では、第1の金属層11のエッジ部は、終端構造用のp型領域3上に位置しているが、本発明においては、第1の金属層11は、少なくとも前述の領域Aを覆うように形成されており(後述する図3参照)、該領域Aと第1の金属層の界面がショットキーコンタクトを形成するものである。
また、該第1の金属層の厚さは、20nm?200nmであることが好ましい。
また、第1の金属層には、前記のチタン以外に、チタン合金膜、ニッケル、ニッケル合金膜、或いはニッケルチタン合金が用いられ、第2の金属層には、前記のAl-Si以外に、アルミニウム又はその他のアルミニウム合金が用いられる。」

エ「【0024】
図3は、従来のショットキーバリアダイオードの製造工程において、エッジ部の構造を詳細に示す断面図である。
第1金属層は、窓部を形成された層間絶縁膜6の該窓部に形成されるが、第1の金属層の終端部と、層間関絶縁膜6の終端部とを完全に一致させることは、非常に困難であるため、通常は、該図に示すように、第1の金属層のエッジ部は、終端構造用のp型領域3上に形成された、層間絶縁膜6の上に位置しており、第2の金属層12は、該第1の金属層上に形成されている。
該図に示すように、ショットキーコンタクトをパターニング後に、表面電極となる第2の金属層12を全面に製膜する。次いで、該第2の金属層12上にレジスト層を所定の形状にパターン形成した後、最初に、濃度50%、液温60℃のリン硝酢酸溶液に5分間浸漬し、引き続き、ドライエッチング装置で、例えば、CF_(4)を45sccm、O_(2)を5sccm、圧力33Pa、バイアスパワー150Wの条件で30秒間処理を行う。その際にエッチング残渣が発生すると共に、ショットキーコンタクトもエッチングのプラズマに晒されることによりダメージを受ける。
【0025】
図4は、本発明におけるエッジ部の構造を詳細に説明する図であって、図3と同様に、第1の金属層のエッジ部は、終端構造用のp型領域3上に形成された、層間絶縁膜6の上に位置しており、第2の金属層12は、該第1の金属層上に形成されているが、第1の金属層11は、第2の金属層12で被覆されている。
すなわち、本願発明の図4における構造では、ショットキーコンタクトは、表面電極となる第2の金属層12に完全に覆われているため、エッチング残渣およびプラズマによるダメージの影響を受けず、特性が良好な素子を得ることが出来る。
図4に示すとおり、本発明において、前記第1の金属層及び第2の金属層の外周端部が,共に前記第2導電型の領域B内にあることが好ましい。」

(2)先願発明5
したがって,前記アないしエを考慮すると,先願5の当初明細書及び図面には次の発明(以下,「先願発明5」という。)が記載されていると認められる。

「低濃度n型ドリフト層2と、
前記ドリフト層2上に形成された終端構造用のp型領域3とJunction Termination Extension(JTE)構造用のp型領域5と、
前記ドリフト層2上の表面上において、前記p型領域3とp型領域5を取り囲むように形成された層間絶縁膜6と、
前記p型領域5の内側において前記ドリフト層の表面を覆うように形成され、外周端が前記層間絶縁膜6上に形成されるショットキーコンタクトとして機能する第1の金属層11と、前記第1の金属層11上に形成され、前記第1の金属層の外周端を越えて前記層間絶縁膜6と接している表面電極となる第2の金属層12とを備え、
前記p型領域3は、前記第2の金属層12下に有し、
前記第2の金属層12の外周端は、前記p型領域3上に存在する
炭化珪素ショットキーバリアダイオード。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)第29条第2項(進歩性)についての検討

ア 本願発明1と引用装置発明1との対比

(ア)引用装置発明1の「低濃度N型エピタキシャル層11」は、「N型」が「第1導電型」に対応し、縦型素子のショットキバリアダイオードにおいて、内部電界に従ってキャリアが縦方向に移動する層として機能するから、本願発明1の「第1導電型ドリフト層」に相当する。

(イ)引用装置発明1の「低濃度P型ガードリング領域14aと高濃度P型ガードリング領域14bとからなるガードリング14」は、低濃度N型エピタキシャル層11上に環状に形成され、「P型」が「第2導電型」に対応するので、前記(ア)を考慮すると、本願発明1の「ドリフト層の表面に形成された環状の第2導電型のガードリング」に相当する。

(ウ)引用装置発明1の「シリコン酸化膜12」は、N型エピタキシャル層11の表面上において、前記ガードリング14を取り囲むように形成されている絶縁膜なので、前記(ア)、(イ)を考慮すると、本願発明1の「ドリフト層の表面上において,前記ガードリング領域を取り囲むように形成されたフィールド絶縁膜」に相当する。

(エ)引用装置発明1の「ニッケル、チタン、又はモリブデン等からなるバリヤ金属層13」は、ガードリング14の内側においてエピタキシャル層11の表面を覆うように形成され、外周端がシリコン酸化膜12上に存在し、ニッケル、チタン、またはモリブデン等の金属は、低濃度N型エピタキシャル層11との接合面においてショットキー接合を形成する事から、前記(ア)ないし(ウ)を考慮とすると、本願発明1の「ガードリング領域の内側において前記ドリフト層の表面を覆うように形成され,外周端が前記フィールド絶縁膜上に存在するショットキー電極」に相当する。

(オ)引用装置発明1の「アルミニウム、金または銀等からなる電極15」は、バリア金属層13上に形成され、前記バリア金属層13の外周端を越えて、前記シリコン酸化膜12と接しており、ショットキーダイオードの表面に形成された金属側となるアノード電極のコンタクトパッドとして機能することから、本願発明1の「ショットキー電極上に形成され,前記ショットキー電極の外周端を越えて前記フィールド絶縁膜と接している表面電極パッド」に相当する。

(カ)引用装置発明1の「高濃度P型ガードリング領域14b」は、ガードリングを構成するもう一つの領域である低濃度P型ガードリング領域14aに比較して、相対的に高い不純物濃度を有することから、本願発明1の「ガードリング領域より高い不純物濃度を有する第2導電型の高濃度領域」に相当し、前記(イ)、(オ)を考慮すると、本願発明1の「ガードリング領域は,前記ガードリング領域より高い不純物濃度を有する第2導電型の高濃度領域を前記表面電極パッド下に有し」に相当する。

すると,本願発明1と引用装置発明1とは,下記(キ)の点で一致し,下記(ク)の点で相違すると認められる。

(キ)一致点
「 第1導電型のドリフト層と,
前記ドリフト層の表面に形成された環状の第2導電型のガードリング領域と,
前記ドリフト層の表面上において,前記ガードリング領域を取り囲むように形成されたフィールド絶縁膜と,
前記ガードリング領域の内側において前記ドリフト層の表面を覆うように形成され,外周端が前記フィールド絶縁膜上に存在するショットキー電極と,
前記ショットキー電極上に形成され,前記ショットキー電極の外周端を越えて前記フィールド絶縁膜と接している表面電極パッドと,
を備え,
前記ガードリング領域は,前記ガードリング領域より高い不純物濃度を有する第2導電型の高濃度領域を有する半導体装置。」

(ク)相違点

相違点(1)
本願発明1では、ショットキー電極の外周端にはエッチング残渣が形成されており,表面電極パッドはその下に第2導電型の高濃度領域を有し、前記エッチング残渣を覆うように形成されているのに対して、引用装置発明1では、ショットキー電極の外周端におけるエッチング残渣について考慮していない点。

相違点(2)
本願発明1では、「炭化珪素半導体装置」であるのに対して、引用装置発明1では、「シリコン基板上に形成された半導体装置」である点。

相違点(3)
本願発明1では、表面電極パッドの外周端は,ガードリング領域の上方に存在しているのに対して、引用装置発明1では、ガードリング領域の外側に存在している点。

イ 相違点についての判断
相違点(1)について検討する。
本願発明1は、従来のSBDで採用されているショットキー電極のオーバレイ構造において、ショットキー電極の外周端には、エッチングにより形成する際にエッチング残渣が先端の尖った形状で発生し、このような先端が尖ったショットキー電極の残渣が存在する状況で、SBDの高周波スイッチング動作を行うと、変移電流により発生する電界が上記残渣部で集中しやすくなり、それによりショットキー電極の外周端辺りでの不具合を招く可能性が懸念される(本願明細書【0007】)という技術的課題に対して、ショットキー電極の外周端に形成されるエッチング残渣に対して表面電極パッドにより前記エッチング残渣を覆うように形成するという解決策を講じた点に特徴を有しており、当該解決策の具体的な構成が相違点(1)に対応している。
ここで、引用文献1ないし4には、当該技術的課題について記載も示唆もされておらず、当該技術的課題は、本願発明1において独自に見いだされたものと認められる。また当然、その解決策となる構成についても引用文献1ないし4には、開示や示唆がされていない。当該技術的課題が認識されていない以上、その解決策を想到することは、当業者にとっても容易とは言えない。
さらに、本願発明1は、当該解決策を備えることによって、ショットキー電極の端部のエッチング残渣が導電性の表面電極パッドで覆われることとなるため、変移電流によりガードリング領域内発生した電界が形成する等電位面がエッチング残渣の周囲で湾曲することなく、この部分において電界集中を引き起こす恐れはなくなり、その結果として、高周波スイッチング動作においても信頼性の高い炭化珪素半導体装置が得られる、という格別な有利な効果を奏する。(本願明細書【0009】参照)

ウ まとめ
したがって、本願発明1は,他の相違点について検討するまでもなく、引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(2)第29条の2(拡大先願)についての検討

ア 本願発明1と先願発明5との対比

(ア)先願発明5の「低濃度n型ドリフト層2」は、「n型」を「第1導電型」に対応させると、本願発明1の「第1導電型のドリフト層」に相当する。

(イ)先願発明5の「層間絶縁膜6」は、ドリフト層2上に形成され、かつ窓部を有するので、本願発明1の「フィールド絶縁膜」に相当する。

(ウ)先願発明5の「第1の金属層11」は、チタン等のショットキー接合用金属からなることが明記されているので、本願発明1の「ショットキー電極」に相当する。

(エ)先願発明5の「第2の金属層12」は、Al-Si等の電極パッド用であることが明記されているので、本願発明1の「表面電極パッド」に相当する。

(オ)先願発明5の「終端構造用のp型領域3とJunction Termination Extension(JTE)構造用のp型領域5」は、電界集中を防止する機能を果たすという意味でガードリングと共通するので、「p型」を「第2導電型」に対応させると、下記相違点(2)を除いて、本願発明1の「第2導電型の電界集中防止用の半導体領域」という意味で共通する。

すると,本願発明1と先願発明5とは,下記(カ)の点で一致し,下記(キ)の点で相違すると認められる。

(カ)一致点
「第1導電型のドリフト層と,
前記ドリフト層の表面に形成された環状の第2導電型の電外集中防止用の半導体領域と,
前記ドリフト層の表面上において,前記電外集中防止用の半導体領域を取り囲むように形成されたフィールド絶縁膜と,
前記電界集中防止用の半導体領域の内側において前記ドリフト層の表面を覆うように形成され,外周端が前記フィールド絶縁膜上に存在するショットキー電極と,
前記ショットキー電極上に形成され,前記ショットキー電極の外周端を越えて前記フィールド絶縁膜と接している表面電極パッドと,
を備え,
前記表面電極パッドの外周端は,前記電界集中防止用の半導体領域の上方に存在していることを特徴とする炭化珪素半導体装置。」

(キ)相違点
相違点(1)
本願発明1では、ショットキー電極の外周端にはエッチング残渣が形成されており,表面電極パッドは前記エッチング残渣を覆うように形成されているのに対して、先願発明5では、ショットキー電極の外周端におけるエッチング残渣について考慮していない点。

相違点(2)
本願発明1では、ガードリング領域を有し,ガードリング領域は、前記ガードリング領域より高い不純物濃度を有する第2導電型の高濃度領域を前記表面電極パッド下に有するの対して、先願発明5では、ガードリング領域と同様の電界集中防止機能を果たす半導体領域として、終端構造用のp型領域3とJunction Termination Extension(JTE)構造用のp型領域5を備える点。

イ 相違点についての検討
相違点(1)について検討する。
前記(1)イの検討と同様に、本願発明は、従来のSBDで採用されているショットキー電極のオーバレイ構造において、ショットキー電極の外周端には、エッチングにより形成する際にエッチング残渣が先端の尖った形状で発生し、このような先端が尖ったショットキー電極の残渣が存在する状況で、SBDの高周波スイッチング動作を行うと、変移電流により発生する電界が上記残渣部で集中しやすくなり、それによりショットキー電極の外周端辺りでの不具合を招く可能性が懸念される(本願明細書【0007】)という技術的課題に対して、ショットキー電極の外周端に形成されるエッチング残渣に対して表面電極パッドにより前記エッチング残渣を覆うように形成するという解決策を講じた点に特徴を有しており、当該解決策の具体的な構成が相違点(1)に対応している。
ここで、先願5には、第2の金属層12(本願発明1の「表面電極パッド」に相当)をパターニング加工する際のエッチング工程におけるエッチング残渣の課題について言及はあるものの、本願発明1が対象としている第1の金属層(本願発明の「ショットキー電極」に対応)をパターニング加工する際のエッチング工程における外周端のエッチング残渣に関する技術的課題については、記載も示唆もされておらず、また、その解決策となる構成についても当然、開示も示唆もされていない。
以上の検討から、当該技術的課題及びその解決策は、本願発明1において独自に見いだされたものと解される。
さらに、本願発明1は、当該解決策を備えることによって、ショットキー電極の端部のエッチング残渣が導電性の表面電極パッドで覆われることとなるため、変移電流によりガードリング領域内発生した電界が形成する等電位面がエッチング残渣の周囲で湾曲することなく、この部分において電界集中を引き起こす恐れはなくなり、その結果として、高周波スイッチング動作においても信頼性の高い炭化珪素半導体装置が得られる、という格別な有利な効果を奏する。(本願明細書【0009】参照)
したがって、相違点(1)は、本願発明1と先願発明5における本質的な差異を意味するものであり、本願発明1と先願発明5は、実質的に同一ではない。

ウ まとめ
したがって、本願発明1は,他の相違点について検討するまでもなく、先願5に実質的に記載された発明と同一とは認められない

2 本願発明2について
本願発明2は,本願発明1の発明特定事項を全て含みさらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから,前記1のとおり,本願発明1が引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、先願5に記載された発明と実質的に同一ではない以上,請求項2に係る発明についても,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、先願5に記載された発明と実質的に同一でない。

3 本願発明3について
(1)第29条第2項(進歩性)についての検討

ア 本願発明3と引用製造方法発明1との対比

(ア)引用製造方法発明1の「シリコンからなる高濃度N型半導体基板10」は、「N型」が「第1導電型」に対応するので、基板材料に関する相違点(2)を除いて、「第1導電型の基板層」という点で共通し、「低濃度N型エピタキシャル層11」は、縦型素子のショットキバリアダイオードにおいて、内部電界に従ってキャリアが縦方向に移動する層として機能するから、本願発明3の「第1導電型ドリフト層」という点で共通する。

(イ)引用製造方法発明1の「エピタキシャル層11の表面に低濃度P型ガードリング領域14aと高濃度P型ガードリング領域14bとからなるガードリング14を形成する工程」は、「P型」が「第2導電型」に対応するので、前記(ア)を考慮すると、本願発明3の「ドリフト層の表面に形成された環状の第2導電型のガードリング領域を形成する工程」に相当する。

(ウ)引用製造方法発明1の「N型エピタキシャル層11の表面上の一部において、前記ガードリング14を取り囲むようにシリコン酸化膜12を形成する工程」は、「シリコン酸化膜12」が、N型エピタキシャル層11の表面上において、前記ガードリング14を取り囲むように形成されている絶縁膜なので本願発明3の「フィールド絶縁膜」に相当し、前記(ア)、(イ)を考慮すると、本願発明3の「前記ドリフト層の表面上の一部おいて前記ガードリング領域を取り囲むようにフィールド絶縁膜を形成する工程」に相当する。

(エ)引用製造方法発明1の「シリコン酸化膜12上と前記エピタキシャル層11上にニッケル、チタン、又はモリブデン等からなるバリヤ金属層13を全面に形成し、パターニングしてショットキー接合を形成する工程」は、「ニッケル、チタン、又はモリブデン等からなるバリヤ金属層13」が、低濃度N型エピタキシャル層11との接合面においてショットキー接合を形成する事から、前記(ア)ないし(ウ)を考慮とすると、下記相違点(1)を除いて、本願発明3の「前記フィールド絶縁膜上と前記ドリフト層上とに金属膜を形成した後した後、ショットキー電極を形成する工程」に相当する。

(オ)引用製造方法発明1の「バリア金属上13上にアルミニウム、金、または銀等から成る電極16を形成する工程」は、「アルミニウム、金、または銀等から成る電極16」は、バリア金属層13上に形成され、前記バリア金属層13の外周端を越えて、前記シリコン酸化膜12と接しており、ショットキーダイオードの表面に形成された金属側となるアノード電極のコンタクトパッドとして機能することから、下記相違点(1)を除いて、本願発明3の「ショットキー電極上に形成され,前記ショットキー電極の外周端を越えて前記フィールド絶縁膜と接している表面電極パッドを形成する工程」に相当する。

すると,本願発明3と引用製造方法発明1とは,下記(カ)の点で一致し,下記(キ)の点で相違すると認められる。

(カ)一致点
第1導電型の基板層と前記基板層上に形成された第1導電型のドリフト層を有する基板を用意する工程と、
前記ドリフト層の表面に第2導電型のガードリング領域を形成する工程と、
前記前記ドリフト層の表面上の一部おいて前記ガードリング領域を取り囲むようにフィールド絶縁膜を形成する工程と、
前記フィールド絶縁膜上と前記ドリフト層上とに金属膜を形成した後、外周端が前記フィールド絶縁膜上に存在するようにショットキー電極を形成する工程と、
前記ショットキー電極上において、前記ショットキー電極の外周端を越えて前記フィールド絶縁膜と接する表面電極パッドを形成する工程と
を備えた半導体装置の製造方法。

(キ)相違点
相違点(1)
本願発明3では、ウェット処理に起因してショットキー電極の外周端に存在するエッチング残渣に配慮して、ウェット処理により前記金属膜をエッチングすることで、外周端が前記フィールド絶縁膜上に存在するとともに前記外周端にエッチング残渣を有するショットキー電極を形成する工程と、前記ショットキー電極上において、前記ショットキー電極の外周端を越えて前記フィールド絶縁膜と接し、前記エッチング残渣を覆うように表面電極パッドを形成する工程を有するのに対して、引用製造方法発明1では、ショットキー電極の製造方法について明記されておらず、ウェット処理に起因してショットキー電極の外周端に存在するエッチング残渣について考慮していない点。

相違点(2)
本願発明3では、炭化珪素基板であるのに対して、引用製造方法発明1では、シリコン基板である点。

イ 相違点についての検討
相違点(1)について検討する。
本願発明3は、従来のSBDで採用されているショットキー電極のオーバレイ構造において、ショットキー電極の外周端には、エッチングにより形成する際にエッチング残渣が先端の尖った形状で発生し、このような先端が尖ったショットキー電極の残渣が存在する状況で、SBDの高周波スイッチング動作を行うと、変移電流により発生する電界が上記残渣部で集中しやすくなり、それによりショットキー電極の外周端辺りでの不具合を招く可能性が懸念される(本願明細書【0007】)という技術的課題に対して、ショットキー電極の外周端に形成されるエッチング残渣に対して表面電極パッドにより前記エッチング残渣を覆うように形成するという解決策を講じた点に特徴を有しており、当該解決策の具体的な製造方法が相違点(1)に対応している。
ここで、当該技術的課題は、本願発明3において独自に見いだされたものであり、引用文献1ないし4には、当該技術的課題が記載も示唆もされておらず、また当然、その解決策となる構成について開示も示唆もされていない。当該技術的課題が認識されていない以上、その解決策を想到することは、当業者にとっても容易とは言えない。
さらに、本願発明3は、当該解決策を備えることによって、ショットキー電極の端部のエッチング残渣が導電性の表面電極パッドで覆われることとなるため、変移電流によりガードリング領域内発生した電界が形成する等電位面がエッチング残渣の周囲で湾曲することなく、この部分において電界集中を引き起こす恐れはなくなり、その結果として、高周波スイッチング動作においても信頼性の高い炭化珪素半導体装置が得られる製造方法を提供するという格別な有利な効果を奏する(本願明細書【0009】参照)。

ウ まとめ
したがって、本願発明3は,他の相違点について検討するまでもなく、引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。


第7 原査定について
1 理由1(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により,本願発明1ないし3は、「ショットキー電極の外周端に存在するエッチング残渣」に関する事項を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1ないし4に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定の理由1を維持することはできない。

2 理由2(特許法第29条の2)について
審判請求時の補正により,本願発明1及び2は、「ショットキー電極の外周端に存在するエッチング残渣」に関する事項を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された先願5と実質的に同一とはいえない。
したがって,原査定の理由2を維持することはできない。

第8 むすび
前記第6の1ないし3のとおり,本願発明1ないし3は,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明1及び2は、先願5に記載された発明と実質的に同一とは認められない。

したがって,原査定の理由を維持することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-17 
出願番号 特願2013-176954(P2013-176954)
審決分類 P 1 8・ 161- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴垣 宙央綿引 隆  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 飯田 清司
大嶋 洋一
発明の名称 炭化珪素半導体装置およびその製造方法  
代理人 村上 加奈子  
代理人 伊達 研郎  
代理人 倉谷 泰孝  
代理人 松井 重明  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ