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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07D
管理番号 1331095
審判番号 不服2015-3454  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-23 
確定日 2017-08-09 
事件の表示 特願2012-224888「小球形状のフェノチアジン材料を含む固体製品とその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年2月28日出願公開、特開2013-40188〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2000年12月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年12月3日(US)米国)を国際出願日とする特願2001-541893号の一部を平成18年12月27日に新たな特許出願とした特願2006-351282号の一部を、平成24年10月10日に新たな特許出願としたものであって、平成24年10月10日付けで上申書が提出され、平成26年1月10日付けで拒絶理由が通知され、同年4月15日に面接がされ、同年6月23日に意見書、物件提出書及び手続補正書が提出され、同年7月28日に上申書が提出され、同年10月15日付けで拒絶査定がされ、平成27年2月23日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。その後、平成28年6月3日に面接がされ、同年7月4日付けで上申書が提出され、同年7月25日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月26日に意見書、手続補正書及び上申書が提出されたものである。
なお、特願2006-351282号からは、平成22年5月10日に、特願2010-108354号も分割出願され、その出願から、平成24年7月11日に特願2012-155465号が分割出願されている。

第2 本願発明
この出願の発明は、平成29年1月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである(審決注:請求項1は補正されていない。)。
「フェノチアジンを含む固体製品であって、前記固体製品は、0.5mmないし2.3mmの平均直径を有する複数の一般的に球形の小球形状であり、6重量%未満の微粉(すなわち500μm未満の直径を有する粒子)を含む固体製品。」

第3 当審が通知した拒絶の理由
当審が通知した拒絶の理由は、理由1及び理由2からなり、そのうちの理由1の概要は、この出願の請求項1?3、5?9に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物1(有機合成化学協会編,「有機化合物辞典」,第2刷,講談社,1991年8月1日,p.810)、刊行物2(玉虫伶太,井上祥平,梅澤喜夫,小谷正博,鈴木紘一,務台潔編,「エッセンシャル化学辞典」,第1版第1刷,東京化学同人,1999年3月10日,p.464)、刊行物3(日本粉体工業協会編,「造粒便覧」,第1版第3刷,オーム社,昭和56年7月20日,p.4?11,84?85,199?207,404)記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。そして、請求項1に係る発明は、補正がされなかったから、当審が通知した拒絶の理由は、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

第4 当審の判断
当審は、当審が通知した拒絶の理由のとおり、本願発明は、上記刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。
その理由は、以下のとおりである。

(1)刊行物の記載事項

ア 刊行物1:有機合成化学協会編「有機化合物辞典」
(1a)「フェノチアジン Phenothiazine;10H-Phenothiazine;Dibenzothiazine.
CA[92-84-2].C_(12)H_(9)NS=199.26.

mp 184?185℃.bp 371℃.黄色板状晶.ベンゼン,エーテルに可溶,エタノールに難溶,水に不溶.空気中で光により酸化されやすい.[製法]ジフェニルアミンを硫黄とともに溶融する〔A. Bernthsen,Ann., 230, 73(1885)〕.[用途]殺虫剤,尿路感染症にも用いられる.」(810頁左欄「フェノチアジン」の項)

イ 刊行物2:玉虫伶太,井上祥平,梅澤喜夫,小谷正博,鈴木紘一,務台潔編「エッセンシャル化学辞典」
(2a)「フェノチアジン[phenothiazine]

C_(12)H_(9)NS,分子量199.28,黄色板状晶.融点182℃,沸点 290℃(40mmHg).昇華性がある.塩化鉄(III)のエタノール溶液を加えると緑色を呈する.亜鉛と加熱するとジフェニルアミンになり,銅と煮沸するとカルバゾールを生じる.殺菌,駆虫薬.暗所に密閉して蓄える.」(464頁右欄「フェノチアジン」の項)

ウ 刊行物3:日本粉体工業協会編,「造粒便覧」
(3a)「1・3 造粒の目的
造粒するためには当然コストがかかる.このコストに見合うメリットあるいは造粒の目的ないし効果として次の諸点があげられる.
(1)粒状の固体は粉体または塊状の固体と比較して流動性がよい.したがって,固体の輸送・供給・包装などの連続化,自動化,制御のためには粉体や塊を直接取り扱わず造粒工程を加えることが特定のプロセス,たとえば医薬や触媒などでの間接打錠では比較的古くから行われていたが,近年省力化の進行とともにこのような造粒の用途が著しく拡大している.・・・
(2)粉体は輸送,貯蔵,ふるい分けなどに伴い,微粉が飛散し周辺の環境を汚染する場合があるが,造粒すれば取扱いに当たっての発じんはほとんど防止できる.・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
(5)粉体,特に微細な粉体は凝集性が大きく,器壁への付着や塊状化のため装置の閉塞などのトラブルを伴うことがあるが,造粒されていれば,そのような現象はほとんど起こらず,取扱いが容易となる.
・・・・・・・・・・・・・・・
(9)造粒された製品は概して外観が美しく,心理的に商品への信頼性を高めることができる。・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・上記のような効果が製品の取扱いや使用に当たり有利であると判断される場合には,たとえ従来は造粒されていない製品(または中間製品)についても造粒工程を加えることを一応は検討する必要があろう.その際,特に主眼点のおかれる効果をあげるため最も望ましい粒の形状・大きさ・構造などが得られる造粒法を選定し,コストを考慮して造粒工程を加えることの可否が決定される.」(4頁12行?5頁右欄14行、「I編 造粒理論」の一部)
(3b)「1・4 造粒方法の分類
1・4・1 分類
・・・造粒には数多くの方法があり,同じような方法でも造粒機にはいくつもの種類がある.・・・
実際には原料が粉体である場合が最も多いが,溶融液,溶液・泥しょう・塊状固体・エマルジョンである場合もあり,当然原料状態によって適用可能な造粒方法は限定される.原理的に見れば粉体の凝集による造粒,すなわちsize enlargementとしての造粒と,溶融液・溶液またはスラリーの分散による造粒,すなわちsize reductionとしての造粒とに大別される^(12)).破砕造粒のように凝集-分散を伴う両者の組合せ方式もある.・・・
1・4・2 粉体の凝集による造粒
・・・・・・・・・・・・・・・
〔1〕転動型 ・・・
〔2〕振動型 ・・・
〔3〕圧縮成形型 ・・・
〔4〕焼結型 ・・・
〔5〕混合型 ・・・
〔6〕流動型 ・・・
〔7〕解砕型 ・・・
〔8〕押出し成形型 ・・・
1・4・3 溶融液の冷却固化による造粒
溶融液を分散し冷却固化するか,固化した後細分化すれば粒状の固体が得られる.・・・
〔1〕フレイカー型 ・・・ 溶融液に下端が浸漬する水冷金属ドラムを水平軸のまわりに低速度で回転し,溶融液をドラムに付着させ,固化した薄膜をナイフでかき取って薄片状の製品とする造粒方法である.・・・
薄片状の製品はフレイクとよばれ,溶解性は良好であるため化学製品,石けんなどに古くから応用されてはいるが,フレイクの流動性は粉末よりも劣るので造粒のメリットが低く,最近では他の造粒方法に切り換えられる傾向にある.
〔2〕噴射型 ・・・ 溶融液をノズルから噴射分散し,空冷あるいは液冷方式によって冷却固化し,球形に造粒する方法をいう.・・・
〔3〕板上滴下型 溶融液を水冷された金属板上に滴下し,冷却固化する方法をいい,製品は普通半球に近い形状になる.粒径は数mm程度が適当で,あまり小さい製品には適さない。・・・
〔4〕鋳造型 鋳造は機械工作の一つの方法であるが,型が比較的小さい場合,造粒方法の一種とも見ることができる.特に連続製造であるという条件も必要かもしれない.
1・4・4 溶液からの造粒
・・・・・・・・・・・・・・・
〔1〕流動乾燥型 ・・・
〔2〕晶析型 ・・・
〔3〕液相反応型 ・・・
〔4〕噴霧乾燥型 ・・・
1・4・5 その他の造粒法
〔1〕機械工作型 前述の鋳造も含め,たとえば線状の材料をほぼ一定の長さに切断して円筒型の粒を造る場合をいう.・・・
〔2〕粉砕型 ・・・原料が塊である場合をいう.一般の粉砕機でも粒度の比較的揃った破砕物が得られるならば造粒機と見なすことができる.・・・
〔3〕乳化型 ・・・」(6頁1行?11頁右欄6行、「I編 造粒理論」の一部)
(3c)「1・3 造粒方式の特徴
造粒機は化学プラントの一部であるために造粒品は同じでも造粒方式の選定いかんにより,化学プラント全体の経済性・操作性・保守性に大きく影響を及ぼすものである.各種の造粒法の特徴をよく認識して造粒機の選定に誤りのないようにすべきである.
以下,各種造粒法の特徴について述べる.
・・・・・・・・・・・・・・・
(9)フレーカー型 広範囲の無機・有機薬品の造粒に適し,操作・保守が簡単である.
(10)噴射型 溶融液・スラリー・高粘度の原液に対して,また熱変性を起こしやすい物質に対して造粒できる.
(11)板上滴下型 小さい設備で比較的大きな粒ができる.取扱いが容易で消費電力が少ない.
(12)鋳造型 粒状は型により一定となる.」(84頁下から12行?85頁左欄20行、「II編 技術編」の一部)
(3d)「5・1 まえがき
溶融造粒法は溶融状態にある物質を細分化または薄層状にして,空冷あるいは水冷して凝固させて,フレイク・球状粒子などに造粒する方法をいう.この造粒法には各種の装置があるが,その造粒の機構・冷却方法・製品粒子の形状により表2・5・1のように分類されている.
表2・5・1 溶融造粒法の分類
造粒型式 冷却方法 製品形状
フレイカー型 間接冷却 薄片状
鋳造型 〃 各種
板上滴下型 〃 半球状
噴射型 直接冷却 球状
噴流層型 〃 〃
プラズマ型 〃 〃
・・・・・・・・・・・・・・・
本章では溶融造粒法のうち,造粒製品の形状が球状に近い噴射型・噴流層型・板上滴下型を中心に,その造粒機構,造粒に影響を与える要素,造粒装置とそれによって得られる造粒品の特性,これらの問題点について述べる・・・.」(199頁2行?同頁右欄15行、「II編 技術編」の一部)
(3e)「5・2 溶融造粒の機構」の項に、「5・2・1 噴射型」、「5・2・2 噴流層型」、「5・2・3 板上滴下型」の各項目により、それぞれの装置の構造と造粒の原理が説明されている。
「5・3 溶融造粒に影響する諸要素」の項に、「5・3・1 粉体粒度」、「5・3・2 粉体強度」、「5・3・3 粉体空隙率」の各項目により、それぞれの事項が説明されている。
「5・4 溶融造粒装置の種類」の項に、「5・4・1 噴射型」、「5・4・2 噴流層型」、「5・4・3 板上滴下型」の各項目により、それぞれの装置が説明されている。
(199頁下から10行?206頁末行、「II編 技術編」の一部)
(3f)「5・5 溶融造粒装置の比較」の項に、「表2・5・2 造粒装置の比較」と題する表が記載され、噴射型の6型式(空気冷却向流式のプリル塔及び短塔型、空気冷却並流式の下降流式及び上昇流式、斜方噴射型、水冷却噴射型)、噴流層型、板上滴下型について、冷媒、冷却方式、製品形状、粒径、適用分野などが記載されている。
型式ごとに製品形状、粒径、適用分野を摘記すると、以下のとおりである。
空気冷却向流式
プリル塔 球状 1?2mm 尿素,硝安
短塔型 球状 300?500μ 尿素,脂肪酸ほか
空気冷却並流式
下降流式 球状 100?200μ 脂肪酸,ワックスほか
上昇流式 球状 100?500μ 脂肪酸,パラフィンほか
斜方噴射型 おおむね球状 1?6mm いおう,尿素-ドロマイト
水冷却噴射型 球状 2?5mm いおう
噴流層型 球状 1?6mm いおう,尿素,DMT
板上滴下型 扁平半球状 8?13mm 無水マレイン酸,か性ソーダほか
(207頁、「II編 技術編」の一部)
(3g)「1・3 造粒目的の解明
最適の造粒プロセスを選定するには,何よりもまず造粒の目的を明確に認識することが必要である.ただし,目的は単に“商品価値を高めるため”といったあいまいなものでなく,そのニーズの由来を十分わきまえ,“どんな物をねらって”,“何のために”造粒するのかを具体的に自覚していなければならない.
現在用いられている造粒の目的としておもなものをあげれば,以下のとおりである.
1・3・1 商品価値を高める目的
(1)外観 形状・粒径・粒度分布など消費者の嗜好調査を行い,商品形態のイメージを明らかにしておくことが必要である.
(2)定容量性 使用目的・合理性・使いやすさなどから単体の容量を決めておかなければならない.
(3)溶解性 溶解速度の期待値または目標対象物を決めておくのが望ましい.
(4)均一性 成分のフレの許容値を検定方法とともに調べておくのがよい.
(5)嗜好性 消費者または権威あるパネル検査などにより嗜好性の高い組成を調査しておくことが必要である.
(6)保存性 シェルフライフの期待値を決めておくとともに試験方法も検討しておくことが必要である.
(7)主剤の効果への影響 期待する効果の程度,効果の機構,試験方法などを調べておくことが必要である.
1・3・2 工程改善の目的
(1)粉体流動特性の改善 目標の流動性指数または対象機器類の適用性についての検査方法などを決めておくのがよい.
(2)定量供給化 対象自動計量供給機の機構および適用性の検査方法を調べておくことが望ましい.
(3)飛散性・付着性防止 対象機器の機構および適用性の検査方法を調べておくことが必要である.
(4)分級・偏析防止 対象混合機,貯槽などの機構および適用性の検査方法を調べておくことが望ましい.
(5)溶解性の改善 期待する溶解速度またはダマ防止効果など改善効果を明確にしておくことが必要であり,検査方法も決めておくのがよい.
(6)通気性の改善 期待する通気性向上効果を,明確にしておくことが必要である.
(7)乾燥性の改善 期待する乾燥特性の変化を,明確にしておくことが必要である.」(404頁1行?同頁右欄21行、「III編 造粒の応用」の一部)

(2)刊行物に記載された発明
刊行物1及び2には、フェノチアジンが、黄色板状晶であることが記載されている。
したがって、刊行物1及び2には、何れにも、
「黄色板状晶の形態であるフェノチアジン」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているということができる。

(3)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明のフェノチアジンは、結晶であるので固体製品といえるから、両者は、
「フェノチアジンを含む固体製品」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
フェノチアジンを含む固体製品が、本願発明は、0.5mmないし2.3mmの平均直径を有する複数の一般的に球形の小球形状であり、6重量%未満の微粉(すなわち500μm未満の直径を有する粒子)を含むと特定されているのに対し、引用発明は、黄色板状晶の形態であって、特定の粒径分布を有する小球形状の固体製品でない点

(4)相違点についての判断
「0.5mmないし2.3mmの平均直径を有する複数の一般的に球形の小球形状であり、6重量%未満の微粉(すなわち500μm未満の直径を有する粒子)を含む」とする点について検討する。
引用発明のフェノチアジンは、板状晶の形態であるから、流動性は、劣るものといえる。
一方、刊行物3には、造粒された粒状の固体は、一般に、流動性に優れ、微粉の飛散が抑えられ、凝集によるトラブルを防げること(摘示(3a))、そのような特性の改善を、造粒の目的として認識すべきこと(摘示(3g))が、記載されている。刊行物3には、造粒の効果が製品の取扱いや使用に当たり有利であると判断される場合には、たとえ従来は造粒されていない製品(または中間製品)についても造粒工程を加えることを一応は検討する必要があることも記載されている(摘示(3a))。
そして、刊行物3には、造粒方法には、大別すると、粉体の凝集による造粒、溶融液の冷却固化による造粒、溶液からの造粒、その他があり、それぞれに各種方式があることが記載されており、溶融液の冷却固化による造粒(溶融造粒法)にはフレイカー型、噴射型、板上滴下型、鋳造型があることが記載されている(摘示(3b)(3c))。さらに、溶融造粒法について、章を設けて記載され、噴流層型についても言及され、噴射型、噴流層型、板上滴下型について詳しく記載され(摘示(3d)?(3f))、噴射型又は噴流層型の装置を用いる場合についてではあるが、尿素、いおう、脂肪酸のような工業薬品について、1mm、2mm、5mm、6mmや、100μ、200μ、300μ、500μの球状粒子を得られることが記載されている(摘示(3d)?(3f))。
してみると、引用発明のフェノチアジンについても、流動性の改善や、微粉の抑制、凝集の防止を意図して、一般に用いられる造粒方法を適用して造粒物を得ることには、十分な動機付けがある。
具体的な手段についても、フェノチアジンは、刊行物1及び2により融点が知られ溶融温度において分解するともされていないから(摘示(1a)(2a))、特に工業薬品に用いられ1mm、2mm、5mm、6mmや、100μ、200μ、300μ、500μの球状粒子を得られることが知られている噴射型又は噴流層型の溶融造粒法を用い、0.5mm?2.3mmの平均直径とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。加えて、同じ溶融造粒法に属する鋳造型の造粒法も、型の形状寸法の調節により、その程度の大きさの球状粒子を得ることができることは明らかであるから、これを用いることも、当業者が容易に想到し得ることである。
500μm未満の直径を有する粒子の量を6重量%未満とすることについても、一般に、設計寸法未満の寸法の粒子の存在は望ましくないことや、微粉の存在自体が望ましくないこと(摘示(3a))から、造粒製品に含まれる小粒径の粒子の量を監視することは、当業者が当然に考慮する事項である。500μ未満、6重量%未満という数値についても、目的とする造粒品の寸法や性質との関係で、当業者が適宜設定し得る事項である。
以上によれば、本願発明は、フェノチアジンの、小球形状で特定の粒径分布を有する固体製品に係る発明であるところ、引用発明の黄色板状晶の形態であるフェノチアジンについて、球状の造粒物を得ることを意図し、溶融造粒法(噴射型又は噴流層型又は鋳造型)という当業者が通常採用する手法を採用して、相違点に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(5)効果について
本願発明の効果は、この出願の明細書(以下「本願明細書」という。発明の詳細な説明は補正されていない。)の段落【0043】の
「既述に基づいて、薄片状および粉末状のフェノチアジン特性に少なくとも比肩できる、しかも殆どの場合より優れた特性を示すフェノチアジンの小球が得られる。有利なことには、小球も実質的に一様な平均直径および狭い粒径分布を示し、さらに極めて低い微粉濃度を含有することを示した。そのような特性は塊まるおよび/または凝集の低下をもたらし、輸送および使用において改善した流動特性を示した。これらの小球を使用する事によって達成できるその他の顕著な利点は環境および作業現場安全性の改善、更に微粉の低濃度から生ずる製造コストの低下を含む。」
との記載によれば、一様な平均直径及び狭い粒径分布を有し、微粉が少なく、凝集しにくく、流動性に優れた、フェノチアジン球状固体を提供できるということであると認められる。
しかし、引用発明において、相違点に係る本願発明の構成を備えた固体製品とすることは、当業者が容易に想到し得ることは、上記(4)で述べたとおりであり、そして、流動性の改善や、微粉の抑制、凝集の防止は、造粒することの目的そのものであり通常期待される効果であるから(摘示(3a)(3g))、上記の本願発明の効果は、格別のものであるとすることはできない。

(6)まとめ
したがって、本願発明は、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余について検討するまでもなく、この出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-09 
結審通知日 2017-03-14 
審決日 2017-03-27 
出願番号 特願2012-224888(P2012-224888)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 春日 淳一  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 冨永 保
中田 とし子
発明の名称 小球形状のフェノチアジン材料を含む固体製品とその製造方法  
代理人 平田 忠雄  

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