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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07C
管理番号 1331127
審判番号 不服2016-13096  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-31 
確定日 2017-08-10 
事件の表示 特願2012-164660「β-ケトカルボン酸銀の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月24日出願公開、特開2013-216647〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成24年7月25日(優先権主張 平成24年3月14日)の出願であって、平成27年10月16日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月19日に意見書が提出され、同年5月30日付けで拒絶査定され、同年8月31日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年8月31日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年8月31日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
平成28年8月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1である
「【請求項1】
下記一般式(II)で表されるβ-ケトカルボン酸塩を生成させる工程と、
生成させた前記β-ケトカルボン酸塩を含む水溶液と硝酸とを混合して、前記水溶液を酸性にする工程と、
酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合して、下記一般式(I)で表されるβ-ケトカルボン酸銀を生成させる工程と、
生成させた前記β-ケトカルボン酸銀を取り出す工程と、
を有するβ-ケトカルボン酸銀の製造方法であって、
前記水溶液を酸性にする工程後、前記β-ケトカルボン酸銀を取り出す工程までの間に、前記β-ケトカルボン酸銀の種結晶を投入する工程を有することを特徴とするβ-ケトカルボン酸銀の製造方法。
【化1】

(式中、R^(a)は炭素数1?20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基又はフェニル基であり;X^(a)は水素原子又は炭素数1?20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基であり、二つのX^(a)は互いに同一でも異なっていてもよく;M^(+)はナトリウムイオン、カリウムイオン又はリチウムイオンである。)」

「【請求項1】
下記一般式(II)で表されるβ-ケトカルボン酸塩を生成させる工程と、
生成させた前記β-ケトカルボン酸塩を含む水溶液と硝酸とを混合して、前記水溶液を酸性にする工程と、
酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合して、下記一般式(I)で表されるβ-ケトカルボン酸銀を生成させる工程と、
生成させた前記β-ケトカルボン酸銀を取り出す工程と、
を有するβ-ケトカルボン酸銀の製造方法であって、
前記水溶液を酸性にする工程後、前記β-ケトカルボン酸銀を取り出す工程までの間に、前記β-ケトカルボン酸銀の種結晶を投入する工程を有し、
前記β-ケトカルボン酸塩を生成させる工程が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムを使用して、下記一般式(III)で表されるβ-ケトカルボン酸エステルを加水分解する工程を有し、
前記β-ケトカルボン酸銀を生成させる工程における、前記硝酸銀の使用量が、前記β-ケトカルボン酸エステル1モルに対して、0.7?1.5モルであることを特徴とするβ-ケトカルボン酸銀の製造方法。
【化1】

(式中、R^(a)は炭素数1?20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基又はフェニル基であり;X^(a)は水素原子又は炭素数1?20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基であり、二つのX^(a)は互いに同一でも異なっていてもよく;M^(+)はナトリウムイオン、カリウムイオン又はリチウムイオンであり、R^(b)は炭素数1?5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はベンジル基である。)」
とする補正を含むものである。

2 補正の適否
上記補正は、発明を特定する事項である本件補正前の請求項1の「β-ケトカルボン酸塩を生成させる工程」を一般式(III)を定義した上で、「水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムを使用して、下記一般式(III)で表されるβ-ケトカルボン酸エステルを加水分解する工程を有」する工程に限定するものであり、また、発明を特定する事項である本件補正前の請求項1の「β-ケトカルボン酸銀を生成させる工程」を「β-ケトカルボン酸銀を生成させる工程における、前記硝酸銀の使用量が、前記β-ケトカルボン酸エステル1モルに対して、0.7?1.5モルである」と限定するもので、補正前後で、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか否か)について検討する。

(1)引用刊行物
刊行物1:国際公開第2012/014933号(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1)
刊行物2:国際公開第2002/018322号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2)
刊行物3:特開2002-187873号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3)
刊行物4:特開平7-224052号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4)
刊行物5:社団法人 日本化学会編「第5版 実験化学講座 5 -化学実験のための基礎技術-」平成17年2月28日、丸善、26頁
刊行物6:緒方 章 外2名著「化学実験操作法」昭和52年6月20日、南江堂、訂正第36版、524頁
刊行物7:特開2005-192449号公報
刊行物8:特開2006-201347号公報
刊行物9:特開平4-108608号公報
刊行物10:特開2006-147457号公報

なお、刊行物2?10は本願優先日時点の技術常識を示す文献である。

(2)刊行物の記載事項
ア 刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2012/014933号には、以下の記載がある。
(1a)「【0020】
β-ケトカルボン酸銀は、例えば、β-ケトカルボン酸と銀化合物とを、水の含有量が好ましくは55質量%以下である反応液中で反応させることにより、β-ケトカルボン酸銀を生成させる工程を含む方法で製造できる。より具体的な製造方法は、以下の通りである。
【0021】
まず、β-ケトカルボン酸エステルを加水分解することによって、β-ケトカルボン酸塩を調製する。エステルの加水分解は、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)等の塩基を使用して行うことが好ましい。前記塩基は、水溶液として使用することが好ましく、この時の濃度は、1mol/リットル(以下、Lと略称する)以上であることが好ましく、2?5mol/Lであることがより好ましい。
前記塩基の使用量は特に限定されないが、β-ケトカルボン酸エステル1モルに対して0.8?2モルであることが好ましく、0.9?1.2モルであることがより好ましい。
反応液中におけるβ-ケトカルボン酸エステルの濃度は、0.5?6.25mol/Lであることが好ましく、1?5.6mol/Lであることがより好ましい。
【0022】
反応温度は、特に限定されないが、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、20?40℃であることが特に好ましい。
反応時間は、0.5?48時間であることが好ましく、1?4時間であることがより好ましい。
【0023】
なお、この工程において、反応終了後の反応液における前記塩基の残存量を十分に低減させるためには、前記塩基の使用量をβ-ケトカルボン酸エステル使用量よりも少なく設定することが好ましく、β-ケトカルボン酸エステル1モルに対して0.8?1モルとすることが好ましく、0.8?0.9モルとすることがより好ましい。この条件は、β-ケトカルボン酸塩を一度単離してから次工程で使用する場合に好ましい。他方、この工程で生成したβ-ケトカルボン酸塩を単離することなく、そのまま次工程で使用する場合には、前記塩基の使用量を、β-ケトカルボン酸エステル1モルに対して、1?1.3モルとすることが好ましく、1.1?1.2モルとすることがより好ましい。そして、次工程において、使用した塩基と当量の酸(後述する硫酸等)を添加すれば良い。
【0024】
β-ケトカルボン酸エステルは、所望のβ-ケトカルボン酸銀の構造に応じて適宜選択できる。例えば、エステルを構成するアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ベンジル基等が例示できる。具体的な化合物としては、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸ベンジル、イソブチリル酢酸イソプロピル、ベンゾイル酢酸エチル、プロピオニル酢酸メチル、アセト酢酸メチル、2-メチルアセト酢酸エチル、2-エチルアセト酢酸エチル等が例示できる。
【0025】
また、原料は、β-ケトカルボン酸エステルに限定されず、例えば、開環によって前記エステルとなる環状化合物も使用できる。
【0026】
得られるβ-ケトカルボン酸塩は、例えば、使用する塩基の種類によって決定され、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が例示できる。具体的な化合物としては、イソブチリル酢酸ナトリウム、イソブチリル酢酸カリウム、イソブチリル酢酸アンモニウム、ベンゾイル酢酸ナトリウム、ベンゾイル酢酸カリウム、ベンゾイル酢酸アンモニウム、プロピオニル酢酸ナトリウム、プロピオニル酢酸カリウム、プロピオニル酢酸アンモニウム、アセト酢酸ナトリウム、アセト酢酸カリウム、アセト酢酸アンモニウム、2-メチルアセト酢酸ナトリウム、2-メチルアセト酢酸カリウム、2-メチルアセト酢酸アンモニウム、2-エチルアセト酢酸ナトリウム、2-エチルアセト酢酸カリウム、2-エチルアセト酢酸アンモニウム等が例示できる。
【0027】
前記β-ケトカルボン酸塩は、例えば、β-ケトカルボン酸エステルの加水分解によって調製できる。得られたβ-ケトカルボン酸塩は、常法により単離しても良いし、後述する次工程における銀化合物使用時に、単離せずにそのまま使用しても良い。
【0028】
次いで、β-ケトカルボン酸塩と銀化合物とを使用して、β-ケトカルボン酸銀を生成させる。このような方法として、第一及び第二の方法を以下に示す。」

(1b)「【0042】
また、上記の方法以外にも、例えば、β-ケトカルボン酸塩を生成させた後、これを含む水溶液と硝酸とを混合して、水溶液を酸性にし、この酸性水溶液から副生成物を抽出除去することなく、酸性水溶液と硝酸銀とを混合してβ-ケトカルボン酸銀を生成させる方法でも、β-ケトカルボン酸銀を製造できる。」

(1c)「【0087】
[製造例4]
(アセト酢酸銀の合成)
水冷下、水酸化ナトリウム(NaOH)(15.8g)を水(213.8g)に溶解させ、得られた水酸化ナトリウム水溶液の温度を室温に調節し、これを20℃のアセト酢酸エチル(井上香料製造所社製、51.5g)に20分間かけて全量滴下して、さらに引き続き20℃で一晩撹拌し、加水分解を行った。
次いで、得られたアセト酢酸ナトリウムを含む溶液を5?10℃に冷却しながら、ここに69%硝酸(HNO_(3))水溶液(1.73g)を5分間かけて滴下して、さらに約10分間撹拌した。この時、得られた反応液のpHは5であった。
次いで、硝酸銀(AgNO_(3))(47.8g)を水(47.8g)に溶解させ、これを5?10℃に冷却しながら、ここに上記のpH5の反応液を15分間かけて全量滴下して、さらに約10分間撹拌することにより、アセト酢酸銀を生成させた。
次いで、得られた反応液を遠心濾過して結晶をろ別し、この結晶を水(40mL)で1回洗浄した後、適量のエタノールで3回洗浄した。これを乾燥させることにより、目的物であるアセト酢酸銀の結晶(白色結晶)を得た(収量41.2g、収率70%)。
得られたアセト酢酸銀の赤外線吸収スペクトル(IR)を図4に示す。
IR:1705cm^(-1)、1538cm^(-1)。
【0088】
また、得られたアセト酢酸銀のNMR(使用溶媒:重DMSO)スペクトルのデータを以下に示す。
NMR:2.17ppm 3H s, 3.25ppm 2H s」

イ 刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第02/18322号には、以下の記載がある。
(2a)「再結晶の方法は特に限定されず、通常の再結晶操作によりおこなえばよい。
・・・原料の結晶をエタノール-水混合物を調製して、目的物を晶析させてもよい。目的物を効率的に晶析させるため、種結晶を添加しても良い。」(5頁9?15行)

ウ 刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-187873号公報には、以下の記載がある。
(3a)「【0030】本発明の再結晶操作においては、種結晶を添加することにより、円滑に且つ効率良く結晶を析出させることができる。」

エ 刊行物4
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平7-224052号公報には、以下の記載がある。
(4a)「【0016】・・・再結晶化をより効率的に行うため、種結晶の添加や、繰り返し再結晶化の際に種結晶を残しておくなどの方法が好適に採られ得る。」

オ 刊行物5
本願の優先日前に頒布された刊行物5には、以下の記載がある。
(5a)「(3)結晶化
・・・
一般に,溶質が低融点のもの,分子量の大きなもの,分子対称性の小さいものは結晶化しにくい傾向がある。結晶化しない場合には,(1)徐冷・・・(2)結晶の種を入れる。・・・(5)混合溶媒にして溶解度を下げる。・・・などを試みる。」(26頁4?18行)

カ 刊行物6
本願の優先日前に頒布された刊行物6には、以下の記載がある。
(6a)「過飽和溶液から結晶を速く析出させる仕方
・・・
(1)器壁をガラス棒で摩擦する
・・・
(2)結晶の種を加える 過飽和液を,適当な温度に冷やしながら,そのものの結晶の一小片を加えると,それが核・・・となって,結晶を析出し・・・始める。」(524頁13行?525頁2行)

キ 刊行物7
本願の優先日前に頒布された刊行物7には、以下の記載がある。
(7a)「【0028】
酵素反応工程において、イソマルチュロースが生成されるにつれて溶液中のイソマルチュロース濃度が高くなり、やがて過飽和状態となる。本発明においては、溶液中のイソマルチュロースが過飽和状態となった時点でイソマルチュロースの晶析を開始することによって、イソマルチュロース結晶が晶出するが、この間も酵素反応が継続して行われることから、イソマルチュロースの生成と晶析が同時に行われることとなる。
【0029】
イソマルチュロースの晶析を効率的に開始するためには、種結晶としてイソマルチュロース結晶を添加するのがよい。種結晶として用いるイソマルチュロース結晶は、緩やかな撹拌によって溶液中に容易に分散するものであれば、その粒子径は特に限定されないが、例えば50?300μm程度のものを用いるのが好ましい。種結晶の添加量は添加するイソマルチュロース結晶の粒子径によっても異なるが、溶液中0.1?10重量%となるように添加するのがよい。種結晶はイソマルチュロースが飽和状態である時点で添加するのがよい。
【0030】
イソマルチュロースの生成および晶析工程は、晶析開始後、ショ糖がほぼ無くなるまで行なえばよい。工程の温度や酵素の添加量および種結晶の添加量にもよるが、通常30時間以内で行なう。
【0031】
晶析によって晶出したイソマルチュロース結晶を含む反応溶液は、次いで回収工程に供せられ、イソマルチュロース結晶を母液から分離し回収する。イソマルチュロース結晶を母液から分離する手段としては、リーフフィルターやフィルタープレス等の濾過機、あるいは遠心脱水機等が採用可能であるが、高純度のイソマルチュロース結晶を効率的に分離回収するためには遠心脱水機を用いるのが好ましい。遠心脱水機としては、結晶回収用のバケット型遠心機が好ましく、500?1500Gで3?5分間程度の条件下で遠心脱水を行うのがよい。」

ク 刊行物8
本願の優先日前に頒布された刊行物8には、以下の記載がある。
(8a)「【0022】
本発明に用いる銀イオン含有溶液は、銀イオンを含有する溶液であれば特に制限されないが、中でも硝酸銀の水溶液が好ましい。硝酸銀の水溶液をpH調節のため、酸およびアルカリを加えることができる。酸およびアルカリの種類は特に制限されない。銀イオン含有溶液は、工程1において、反応容器内に、水、有機溶媒、又は水と有機溶剤の混合物に添加して、反応容器内の液のpAgを2.5?3.8とするが、添加量としては0.1?2.0質量%が好ましい。
【0023】
本発明の非感光性有機銀塩の製造方法においては、該銀イオンを含有する水溶液の総添加量のpAgが2.5?3.8、好ましくは2.8?3.1になる量を脂肪酸アルカリ金属塩の水溶液を添加開始前に添加することを特徴とする。pAgが低くすぎると銀化初期の残存銀イオンが多くなり予期せぬカブリ核を生じるためである。また、脂肪酸アルカリ金属塩を先行添加してしまうと同時添加した初期のpHが高くなり酸化銀が生じやすくカブリの原因となる。
【0024】
また、本発明の製造方法では反応容器内のpHを4?8、好ましくは4?6に調整することを特徴とする。有機銀塩の銀形成時のpHを調整することにより銀化の反応速度をコントロールするためである。pHが低すぎると脂肪酸の析出が多く、逆に高すぎると酸化銀が生じやすいからである。pHの調整方法としては酸、アルカリの補正液、あるいは脂肪酸アルカリ金属塩の添加流量を調整することで可能にすることができる。」

ケ 刊行物9
本願の優先日前に頒布された刊行物9には、以下の記載がある。
(9a)「合成ゼオライトの分散液はpH約10以上のアルカリ性を示す。pH11以上の強いアルカリ性を示すこともしばしばある。このような高いpH条件下では、イオン交換されるべき金属の不溶性化合物の沈澱が生じることかある。例えば、銀イオンを含有する溶液のpHを約9.5以上とすると、Ag_(2)Oが沈澱する。」(2頁左上欄3?9行)

ケ 刊行物10
本願の優先日前に頒布された刊行物10には、以下の記載がある。
(10a)「【0028】
塩基溶液は、銀塩溶液のpHを7以上、好ましくは9以上に調整して酸化銀粉末を析出させるものであり、限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化カルシウム、アンモニア、尿素等の公知のものを用いることができる。溶媒としては、水及び/又はアルコールを好適に用いることができる。塩基の濃度も限定されないが、通常0.25?3mol/Lの範囲で適宜選択される。」

(3)刊行物1記載の発明
摘記(1a)には、β-ケトカルボン酸銀の具体的な製造方法として、β-ケトカルボン酸エステルを水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)等の塩基を使用して加水分解することによって、β-ケトカルボン酸塩を調製することが好ましいこと、β-ケトカルボン酸エステルは、所望のβ-ケトカルボン酸銀の構造に応じて適宜選択できる、例えば、エステルを構成するアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ベンジル基等が例示でき、具体的な化合物としては、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸ベンジル、イソブチリル酢酸イソプロピル、ベンゾイル酢酸エチル、プロピオニル酢酸メチル、アセト酢酸メチル、2-メチルアセト酢酸エチル、2-エチルアセト酢酸エチル等が例示できることが記載され、得られるβ-ケトカルボン酸塩は、例えば、使用する塩基の種類によって決定され、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が例示できることが記載され、摘記(1b)には、β-ケトカルボン酸塩と銀化合物とを使用して、β-ケトカルボン酸銀を生成させる方法としてβ-ケトカルボン酸塩を生成させた後、これを含む水溶液と硝酸とを混合して、水溶液を酸性にし、この酸性水溶液から副生成物を抽出除去することなく、酸性水溶液と硝酸銀とを混合してβ-ケトカルボン酸銀を生成させる方法でβ-ケトカルボン酸銀を製造できることが記載されている。
そして、摘記(1c)には、その具体的実施例である[製造例4]として、水冷下、水酸化ナトリウム(NaOH)を水に溶解させ、得られた水酸化ナトリウム水溶液の温度を室温に調節し、これを20℃のアセト酢酸エチル51.5gに20分間かけて全量滴下して、加水分解を行い、得られたアセト酢酸ナトリウムを含む溶液を5?10℃に冷却しながら、ここに69%硝酸(HNO_(3))水溶液(1.73g)を5分間かけて滴下して、さらに約10分間撹拌し、得られた反応液のpHは5であり、次いで、硝酸銀(AgNO_(3))(47.8g)を水(47.8g)に溶解させ、これを5?10℃に冷却しながら、ここに上記のpH5の反応液を15分間かけて全量滴下して、さらに約10分間撹拌することにより、アセト酢酸銀を生成させ、得られた反応液を遠心濾過して結晶をろ別し、この結晶を水(40mL)で1回洗浄した後、適量のエタノールで3回洗浄し、乾燥させることにより、目的物であるアセト酢酸銀の結晶(白色結晶)を収率70%で得たことが記載されている。
したがって、刊行物1には、実施例の発明として、以下の発明が記載されているといえる(以下「刊行物1発明」という。)。

「水酸化ナトリウム水溶液をアセト酢酸エチル51.5gに全量滴下して、加水分解を行いアセト酢酸ナトリウムを得て、得られたアセト酢酸ナトリウムを含む溶液を5?10℃に冷却しながら、ここに69%硝酸(HNO_(3))水溶液(1.73g)を5分間かけて滴下して、さらに約10分間撹拌し、得られた反応液のpHは5であり、次いで、硝酸銀(AgNO_(3))(47.8g)を水(47.8g)に溶解させ、これを5?10℃に冷却しながら、ここに上記のpH5の反応液を全量滴下して、さらに約10分間撹拌することにより、アセト酢酸銀を生成させ、得られた反応液をろ別、洗浄、乾燥し、アセト酢酸銀の結晶(白色結晶)を収率70%で得るアセト酢酸銀の製造方法」

(4)対比・判断
ア 対比
刊行物1発明の「水酸化ナトリウム水溶液をアセト酢酸エチル51.5gに全量滴下して、加水分解を行いアセト酢酸ナトリウムを得て」は、本願補正発明の「下記一般式(II)で表されるβ-ケトカルボン酸塩を生成させる工程」及び「前記β-ケトカルボン酸塩を生成させる工程が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムを使用して、下記一般式(III)で表されるβ-ケトカルボン酸エステルを加水分解する工程を有し」に該当する。
次に、刊行物1発明の「得られたアセト酢酸ナトリウムを含む溶液を5?10℃に冷却しながら、ここに69%硝酸(HNO_(3))水溶液(1.73g)を5分間かけて滴下して、さらに約10分間撹拌し、得られた反応液のpHは5であり」は、本願補正発明の「生成させた前記β-ケトカルボン酸塩を含む水溶液と硝酸とを混合して、前記水溶液を酸性にする工程」に相当する。
そして、刊行物1発明の「次いで、硝酸銀(AgNO_(3))(47.8g)を水(47.8g)に溶解させ、これを5?10℃に冷却しながら、ここに上記のpH5の反応液を15分間かけて全量滴下して、さらに約10分間撹拌することにより、アセト酢酸銀を生成させ」は、本願補正発明の「酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合して、下記一般式(I)で表されるβ-ケトカルボン酸銀を生成させる工程」に該当する。
また、刊行物1発明において、添加されたアセト酢酸エチルは、51.5/130.14=0.395molであり、添加された硝酸銀は、47.8/169.8=0.281molであり、β-ケトカルボン酸エステルであるアセト酢酸エチル1モルに対して、添加された硝酸銀は、0.711モルということになり、本願補正発明の「前記β-ケトカルボン酸銀を生成させる工程における、前記硝酸銀の使用量が、前記β-ケトカルボン酸エステル1モルに対して、0.7?1.5モルである」ことに該当する。
さらに、刊行物1発明の「得られた反応液をろ別、洗浄、乾燥し、アセト酢酸銀の結晶(白色結晶)を収率70%で得る」「アセト酢酸銀の製造方法」は、それぞれ、本願補正発明の「生成させた前記β-ケトカルボン酸銀を取り出す工程」「β-ケトカルボン酸銀の製造方法」に相当する。

そうすると、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「下記一般式(II)で表されるβ-ケトカルボン酸塩を生成させる工程と、
生成させた前記β-ケトカルボン酸塩を含む水溶液と硝酸とを混合して、前記水溶液を酸性にする工程と、
酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合して、下記一般式(I)で表されるβ-ケトカルボン酸銀を生成させる工程と、
生成させた前記β-ケトカルボン酸銀を取り出す工程と、
を有するβ-ケトカルボン酸銀の製造方法であって、
前記β-ケトカルボン酸塩を生成させる工程が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムを使用して、下記一般式(III)で表されるβ-ケトカルボン酸エステルを加水分解する工程を有し、
前記β-ケトカルボン酸銀を生成させる工程における、前記硝酸銀の使用量が、前記β-ケトカルボン酸エステル1モルに対して、0.7?1.5モルであるβ-ケトカルボン酸銀の製造方法。
【化1】

(式中、R^(a)は炭素数1?20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基又はフェニル基であり;X^(a)は水素原子又は炭素数1?20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基であり、二つのX^(a)は互いに同一でも異なっていてもよく;M^(+)はナトリウムイオン、カリウムイオン又はリチウムイオンであり、R^(b)は炭素数1?5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はベンジル基である。)」
である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:本願補正発明は、水溶液を酸性にする工程後、β-ケトカルボン酸銀を取り出す工程までの間に、前記β-ケトカルボン酸銀の種結晶を投入する工程を有することが特定されているのに対して、刊行物1発明はそのような工程を有していない点

相違点の判断
上記相違点について検討する。

(ア)β-ケトカルボン酸銀の種結晶を投入することに関して
刊行物2の摘記(2a)、刊行物3の摘記(3a)、刊行物4の摘記(4a)、刊行物5の摘記(5a)、刊行物6の摘記(6a)、刊行物7の摘記(7a)に記載されるように、化合物の再結晶化技術又は反応晶析において、化合物が生成した溶液に種結晶を添加することにより円滑且つ効率良くその結晶を析出させることは、本願優先日時点で技術常識であったことが理解できる。
そして、刊行物1発明において、「次いで、硝酸銀(AgNO_(3))(47.8g)を水(47.8g)に溶解させ、これを5?10℃に冷却しながら、ここに上記のpH5の反応液を全量滴下して、さらに約10分間撹拌」した溶液では、すでにアセト酢酸銀が形成されていることは当業者に明らかであるから、この溶液にアセト酢酸銀の種結晶を添加して、円滑且つ効率良く結晶析出させることは、当業者であれば容易に想到し得たものといえる。

(イ)種結晶を水溶液を酸性にする工程後、β-ケトカルボン酸銀を取り出す工程までの間に添加することに関して
刊行物8の摘記(8a)、刊行物9の摘記(9a)、刊行物10の摘記(10a)にも記載されるように、銀の析出を抑制したい場面や銀を積極的に析出させたい場面のいずれにおいても、銀イオンを含んだ溶液のpHがアルカリ性になった場合に酸化銀が析出することは、当業者の技術常識であり、結晶析出促進のために添加した銀イオンを発生するβ-ケトカルボン酸銀の種結晶が酸化銀として析出しないように水溶液を酸性にする工程後に種結晶を添加することは当然の選択である。そもそも、アセト酢酸銀が形成されている工程に当たることが明らかな「次いで硝酸銀(AgNO_(3))(47.8g)を水(47.8g)に溶解させ、これを5?10℃に冷却しながら、ここに上記のpH5の反応液を全量滴下して、さらに約10分間攪拌」した溶液(上記(ア)参照)は、「水溶液を酸性にする工程後」に得られるものである。
また、刊行物1発明は、β-ケトカルボン酸銀を結晶としてを得ることを目的とする方法であるのだから、β-ケトカルボン酸銀を取り出すまでには、種結晶を添加しなければ意味がないことになる。

したがって、刊行物1発明において、円滑且つ効率良く結晶析出させるための種結晶を、水溶液を酸性にする工程後、β-ケトカルボン酸銀を取り出す工程までの間に添加することは、当業者であれば容易に想起できるものといえる。

ウ 本願補正発明の効果について
本願明細書には、実施例1?5と参考例1との比較により、水酸化ナトリウムや硝酸水溶液の濃度を高くすることで収率が向上したこと(表1)、β-ケトカルボン酸エステル(III)に対する硝酸銀のモル比を変化させることで、実施例6?10の比較により、収率が等モル(1:1)の場合に一番高くなっていることが確認できる(表2)。
表1は、β-ケトカルボン酸エステル(III)に対しての水酸化ナトリウム、硝酸、及び硝酸銀の濃度や、硝酸添加後のpHが、収率を変化させたことは理解できるが、それらがβ-ケトカルボン酸銀(I)の生成に影響を与えることは当然であるから、変化したからといって当業者の予測を超える効果であるとはいえない。
また、表2においても、実施例6?10において、β-ケトカルボン酸エステル(III)に対して硝酸銀を等モル添加したものが相対的に収率が高いからといって、化学量論的にはβ-ケトカルボン酸エステル(III)からアルカリ塩を経て当モルのβ-ケトカルボン酸銀(I)を生成する関係にあるのであるから、一方の成分が過剰になった場合の副生成物の生成等の影響も考慮すると、そのように変化したからといって当業者の予測を超える効果であるとはいえない。
また、本願明細書においては、β-ケトカルボン酸銀(I)として2-メチルアセト酢酸銀の実施例において、一定の収率を得ているが、刊行物1発明においても70%の収率を得ており、本願補正発明が、特許請求の範囲全体において、格別顕著な効果を奏しているとはいえない。
さらに、刊行物1発明において、種結晶を添加した場合に、円滑且つ効率良く結晶析出させることができることは、種結晶の機能からみて、当業者の予測の範囲である。

エ 審判請求人の主張の検討
請求人は、審判請求書において、β-ケトカルボン酸エステル(III)1モルに対して、硝酸銀の使用量を0.7?1.5モルに限定することで、収率向上の顕著な効果が得られ、範囲外では大きく低下すると認識できる旨主張している(7頁)。
しかしながら、上述のとおり、β-ケトカルボン酸エステル(III)1モルに対する硝酸銀の使用量は、刊行物1発明との間で相違していないので、相違点に基づく効果の主張ではないし、明細書【0043】には、0.5?1.7モルが好ましいとの記載があり、範囲外では大きく低下すると認識できるとの主張とも整合していない。
よって請求人の主張は採用できない。

したがって、本願補正発明の効果は、刊行物1記載の発明及び刊行物2?10の本願優先日時点の技術常識からみて、当業者の予測を超える顕著なものとはいえない。

オ 小括
以上のとおり、本願補正発明は、刊行物1発明及び本願の優先日時点の技術常識に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正却下のまとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明の認定
第2で検討したとおり、平成28年8月31日付け手続補正は却下されたので、この出願の請求項1に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の記載からみて、請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「【請求項1】
下記一般式(II)で表されるβ-ケトカルボン酸塩を生成させる工程と、
生成させた前記β-ケトカルボン酸塩を含む水溶液と硝酸とを混合して、前記水溶液を酸性にする工程と、
酸性にした前記水溶液と硝酸銀とを混合して、下記一般式(I)で表されるβ-ケトカルボン酸銀を生成させる工程と、
生成させた前記β-ケトカルボン酸銀を取り出す工程と、
を有するβ-ケトカルボン酸銀の製造方法であって、
前記水溶液を酸性にする工程後、前記β-ケトカルボン酸銀を取り出す工程までの間に、前記β-ケトカルボン酸銀の種結晶を投入する工程を有することを特徴とするβ-ケトカルボン酸銀の製造方法。
【化1】

(式中、R^(a)は炭素数1?20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基又はフェニル基であり;X^(a)は水素原子又は炭素数1?20の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基であり、二つのX^(a)は互いに同一でも異なっていてもよく;M^(+)はナトリウムイオン、カリウムイオン又はリチウムイオンである。)」

第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の1つは、概略、以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である「国際公開第2012/014933号」に記載された発明及び技術常識に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」

第5 当審の判断
当審は、原査定の拒絶の理由のとおり、本願発明は、前記刊行物1に記載された発明及び本願の優先日時点の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,と判断する。
理由は以下のとおりである。

1 引用刊行物
刊行物1:国際公開第2012/014933号(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1)
刊行物2:国際公開第2002/018322号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2)
刊行物3:特開2002-187873号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3)
刊行物4:特開平7-224052号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4)
刊行物5:社団法人 日本化学会編「第5版 実験化学講座 5 -化学実験のための基礎技術-」平成17年2月28日、丸善、26頁
刊行物6:緒方 章 外2名著「化学実験操作法」昭和52年6月20日、南江堂、訂正第36版、524頁
刊行物7:特開2005-192449号公報
刊行物8:特開2006-201347号公報
刊行物9:特開平4-108608号公報
刊行物10:特開2006-147457号公報

なお、刊行物2?10は本願優先日時点の技術常識を示す文献である。

2 引用刊行物の記載
各刊行物には、第2 2(2)に記載のとおりの記載がある。

3 刊行物1に記載された発明について
第2 2(3)に記載のとおり刊行物1には、刊行物1発明が記載されているといえる。

「水酸化ナトリウム水溶液をアセト酢酸エチル51.5gに全量滴下して、加水分解を行いアセト酢酸ナトリウムを得て、得られたアセト酢酸ナトリウムを含む溶液を5?10℃に冷却しながら、ここに69%硝酸(HNO_(3))水溶液(1.73g)を5分間かけて滴下して、さらに約10分間撹拌し、得られた反応液のpHは5であり、次いで、硝酸銀(AgNO_(3))(47.8g)を水(47.8g)に溶解させ、これを5?10℃に冷却しながら、ここに上記のpH5の反応液を全量滴下して、さらに約10分間撹拌することにより、アセト酢酸銀を生成させ、得られた反応液をろ別、洗浄、乾燥し、アセト酢酸銀の結晶(白色結晶)を収率70%で得るアセト酢酸銀の製造方法」

4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明の発明特定事項のうち、「前記β-ケトカルボン酸塩を生成させる工程が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムを使用して、下記一般式(III)で表されるβ-ケトカルボン酸エステルを加水分解する工程を有し、
前記β-ケトカルボン酸銀を生成させる工程における、前記硝酸銀の使用量が、前記β-ケトカルボン酸エステル1モルに対して、0.7?1.5モルである」、β-ケトカルボン酸エステルの一般式(III)の化学構造式、該一般式(III)中の記号の定義となる「Rbは炭素数1?5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はベンジル基である」との各特定事項を削除したもので、本願補正発明をすべて包含するものであるので、前記「第2 2(4)」において検討したとおり、本願補正発明が、刊行物1発明及び本願優先日時点の技術常識に基いて、当業者が容易に発明することができたものといえるのであるから、同様に本願発明は、刊行物1発明及び本願優先日時点の技術常識に基いて、当業者が容易に発明することができたものといえる。

5 請求人の主張について
請求人は、平成28年1月19日付け意見書において、2-メチルアセト酢酸銀の種結晶を入れた硝酸銀をエステルを加水分解した塩を含む液に滴下した実験例1、エステルを加水分解した塩を含む液を酸性にした液に2-メチルアセト酢酸銀の種結晶を入れ、硝酸銀水溶液に滴下した実験例2、水酸化ナトリウムでエステルを加水分解する前の溶液に2-メチルアセト硝酸銀の種結晶を入れた実験例3を比較して、得られた2-メチルアセト酢酸銀のIRスペクトルを比較し、実験例3では、種結晶の一部がアルカリ性条件下で酸化銀になったことを推測し、種結晶の投入タイミングが重要である旨主張している。
しかしながら、種結晶の投入のタイミングとしては、少なくとも2-メチルアセト酢酸銀が合成される状況においてその溶液に投入するのが通常であり、アルカリ性条件下で銀イオンが酸化銀を生じてしまうことは技術常識であるのだから、水酸化ナトリウムでエステルを加水分解する前の溶液に2-メチルアセト硝酸銀の種結晶を入れた実験例3を比較して優れた結果が実験例1,2において得られたからといって、当業者の予測を超える顕著なものとはいえない。
よって、請求人の主張は採用できない。

6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び本願の優先日時点の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-07 
結審通知日 2017-06-13 
審決日 2017-06-26 
出願番号 特願2012-164660(P2012-164660)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C07C)
P 1 8・ 121- Z (C07C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土橋 敬介  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 瀬良 聡機
加藤 幹
発明の名称 β-ケトカルボン酸銀の製造方法  
代理人 飯田 雅人  
代理人 志賀 正武  
代理人 大浪 一徳  
代理人 森 隆一郎  
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