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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 1項1号公知  A23L
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  A23L
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  A23L
管理番号 1331158
異議申立番号 異議2016-700898  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-21 
確定日 2017-06-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5893267号発明「ふわとろすり身製品及びその製法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5893267号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕、〔6?10〕について訂正することを認める。 特許第5893267号の請求項1、2、4、6、7、9に係る特許を維持する。 特許第5893267号の請求項3、5、8、10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5893267号(以下「本件特許」という。)の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成23年6月2日に出願され、平成28年3月4日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人都吹株式会社及び矢部陽子により特許異議の申立てがされ、平成28年12月13日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年3月3日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)があり、本件訂正請求に対して特許異議申立人矢部陽子から平成29年5月1日付けで意見書が提出され、特許異議申立人都吹株式会社から平成29年5月2日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正について
1 訂正の内容
本件訂正請求は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?10について訂正することを求めるものであり、具体的な訂正事項は以下のとおりである。

(1)請求項1?5からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正前の請求項1に
「すり身、豆腐、タピオカ由来α化澱粉、豆乳および油が配合されてなるすり身製品。」
とあるのを、
「すり身、豆腐、タピオカ由来α化澱粉、豆乳および油が配合されてなるすり身製品であって、タピオカ由来α化澱粉の配合量が2?10%、油の配合量が10?20%である、上記すり身製品。」
と訂正する(下線は訂正箇所を示す。以下同じ。)。

イ 請求項3を削除する。

ウ 訂正前の請求項4に「請求項1?3のいずれか1項」とあるのを、「請求項1または2」と訂正する。

エ 請求項5を削除する。

(2)請求項6?10からなる一群の請求項に係る訂正
ア 訂正前の請求項6に
「すり身に豆腐を混入し、タピオカ由来α化澱粉を添加して、それをベースにして豆乳、油を添加し、その後再度タピオカ由来α化澱粉を添加した後、蒸し加工し冷凍及び/又は衣付けして油ちょうすることを特徴とするすり身製品の製造方法。」
とあるのを
「すり身に豆腐を混入し、タピオカ由来α化澱粉を添加して、それをベースにして豆乳、油を添加し、その後再度タピオカ由来α化澱粉を添加した後、蒸し加工し冷凍及び/又は衣付けして油ちょうすることを特徴とするすり身製品の製造方法であって、タピオカ由来α化澱粉の全添加量が2?10%、油の添加量が10?20%である、上記すり身製品の製造方法。」
と訂正する。

イ 請求項8を削除する。

ウ 訂正前の請求項9に「請求項6?8のいずれか1項」とあるのを、「請求項6または7」と訂正する。

エ 請求項10を削除する。

2 訂正の適否
(1)請求項1?5からなる一群の請求項に係る訂正について
請求項1に係る訂正は、タピオカ由来α化澱粉の配合量を「2?10%」と特定し、油の配合量を「10?20%」と特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、請求項1を直接又は間接に引用する請求項2、4についても、同様に特許請求の範囲を減縮するものである。
また、特許明細書に、「加工澱粉としては、α化澱粉を用いることが好ましい。α化澱粉はタピオカ由来、馬鈴薯由来、コーン由来等があるが、本発明のようなふわとろ感を出すためには、タピオカ由来のマツノリン340(登録商標、松谷化学工業(株)製)が効果的である。・・・(中略)・・・加工澱粉は、特に1?30%程度の配合量で使うのが好ましく、さらに好ましくは、2?15%、より好ましくは3?10%くらいを用いることが好ましい。」(【0012】)、「また、油としては、透明で液状の油であることが好ましく、植物由来の油が特に好ましい。例えば、大豆、菜種、コーン由来の白絞油、サラダ油等が利用しやすい。油分の量が多いほどトロッとした食感にはなるものの、加工澱粉の量と合わせたものでないと油分が分離し、表面から油分が漏出する。そのため、マツノリン340を使った場合には5?30%くらいの油の量が好ましく、さらに好ましくは10?20%、より好ましくは10?15%程度が望ましい。」(【0013】)と記載されていることから、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
なお、特許異議申立人都吹株式会社は、タピオカ由来α化澱粉の配合量について「2?10%」との範囲は、特許明細書に記載された範囲外の事項である旨を主張するが(平成29年5月2日付け意見書「4(2)ア.」)、特許明細書には、「1?30%」の範囲が記載され、下限値として「2%」、上限値として「10%」の数値もそれぞれ記載されているから、上記「1?30%」の範囲内の「2?10%」と特定することは、新たな技術的事項を導入するものとはいえず、上記主張は採用できない。
請求項3及び5に係る訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項4に係る訂正は、訂正前の請求項4が「請求項1?3のいずれか1項」を引用していたところ、請求項3の削除に伴い、「請求項1または2」を引用するように訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)請求項6?10からなる一群の請求項に係る訂正について
請求項6に係る訂正は、タピオカ由来α化澱粉の全添加量を「2?10%」と特定し、油の添加量を「10?20%」と特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、請求項6を直接又は間接に引用する請求項7、9についても、同様に特許請求の範囲を減縮するものである。
また、上記(1)にて検討したのと同様に、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項8及び10に係る訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項9に係る訂正は、訂正前の請求項9が「請求項6?8のいずれか1項」を引用していたところ、請求項8の削除に伴い、「請求項6または7」を引用するように訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?5〕、〔6?10〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
上記訂正請求により訂正された請求項1、2、4、6、7、9に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1、2、4、6、7、9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
すり身、豆腐、タピオカ由来α化澱粉、豆乳および油が配合されてなるすり身製品であって、タピオカ由来α化澱粉の配合量が2?10%、油の配合量が10?20%である、上記すり身製品。
【請求項2】
すり身が魚肉すり身であることを特徴とする請求項1記載のすり身製品。
【請求項4】
油が植物油であることを特徴とする請求項1または2に記載のすり身製品。
【請求項6】
すり身に豆腐を混入し、タピオカ由来α化澱粉を添加して、それをベースにして豆乳、油を添加し、その後再度タピオカ由来α化澱粉を添加した後、蒸し加工し冷凍及び/又は衣付けして油ちょうすることを特徴とするすり身製品の製造方法であって、タピオカ由来α化澱粉の全添加量が2?10%、油の添加量が10?20%である、上記すり身製品の製造方法。
【請求項7】
すり身が魚肉すり身であることを特徴とする請求項6記載のすり身製品の製造方法。
【請求項9】
油が植物油であることを特徴とする請求項6または7に記載のすり身製品の製造方法。

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1?10に係る特許に対して平成28年12月13日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。

(1)本件特許の請求項1?10に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記刊行物1?7に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
刊行物1:特開平9-271361号公報(両特許異議申立人が提出した甲第1号証)
刊行物2:「食品化学新聞」、2008年8月21日(同甲第2号証)
刊行物3:特開平2-255062号公報(特許異議申立人矢部陽子が提出した甲第3号証)
刊行物4:特開平11-32732号公報(同甲第4号証)
刊行物5:岡田稔、「かまぼこの科学」、株式会社成山堂書店、平成12年7月18日、p.203-204(同甲第5号証)
刊行物6:特開2002-85014号公報(同甲第6号証)(当審注:取消理由通知書の「特開2002-58014号公報」は誤記である。)
刊行物7:特開2004-254633号公報(同甲第7号証)

(2)本件特許の請求項1?5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において公然知られた又は公然実施をされた下記製品1又は製品2に係る発明であって、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
製品1:揚げ豆腐(野菜入)75g冷凍(特許異議申立人都吹株式会社が提出した甲第4号証、同甲第4号証-1)
製品2:ふんわり豆腐ハンバーグ(同甲第5号証、同甲第5号証-1)

3 判断
(1)特許法第29条第2項について
ア 刊行物の記載
(ア)刊行物1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】魚肉のすり身、コーンスターチ、タピオカ澱粉、調味料、天然蛋白質エキス、食塩、焼酎、菜種油、ごま油、卵白、豆乳を混合撹拌した後、所定形状に成型して油で揚げてなる薩摩揚げ様食材。
【請求項2】前記薩摩揚げ様食材において混合される前記各素材は、魚肉のすり身35重量%、コーンスターチ3重量%、タピオカ澱粉5重量%、調味料0.3重量%、天然蛋白質エキス0.2重量%、食塩0.9重量%、焼酎4重量%、菜種油6重量%、ごま油1重量%、卵白10重量%、豆乳34.6重量%の割合で混合したことを特徴とする請求項1記載の食材。」
「【0004】前述の食品はいずれも動物性蛋白質を主成分とするものであるが、植物性蛋白質を主成分とする食品として代表的なものは豆腐、納豆、扶などが良く知られている。ところで、動物性蛋白質、植物性蛋白質のいずれも栄養の点でも、食味の点でも、また風味の点でもそれぞれ長所、短所を有しているため、これに対応して両者にたいする人々の好みもさまざまに別れているのが現状である。本願発明者は、このような従来の事情に鑑みて研究した結果、動物性蛋白質、植物性蛋白質の双方の長所を備え、風味、食味も良好な全く新しい食材の開発に成功した。」
「【0006】
【実施の態様】次にこの発明に係る豆乳および魚肉を主成分とする食材の好ましい実施の態様説明をする。この発明に係る豆乳および魚肉を主成分とする食材の実施態様の一つとして薩摩揚げ様食材の説明をする。この薩摩揚げ様食材は、魚肉として南鱈のすり身を33ないし37重量%、コーンスターチを約3重量%、タピオカ澱粉を約5重量%、調味料を約0.3重量%、天然蛋白質エキスを約0.2重量%、食塩を約0.9重量%、焼酎を約4重量%、菜種油を約6重量、ごま油を約1重量%、卵白を8ないし12重量%、そして豆乳を32ないし36重量%の割合で混合撹拌して、所定の形状に形成したうえで食用油で揚げて生成する。」
以上によれば、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。

「魚肉のすり身35重量%、コーンスターチ3重量%、タピオカ澱粉5重量%、調味料0.3重量%、天然蛋白質エキス0.2重量%、食塩0.9重量%、焼酎4重量%、菜種油6重量%、ごま油1重量%、卵白10重量%、豆乳34.6重量%の割合で混合撹拌した後、所定形状に成型して油で揚げてなる薩摩揚げ様食材。」(以下「引用発明1」という。)

「魚肉のすり身35重量%、コーンスターチ3重量%、タピオカ澱粉5重量%、調味料0.3重量%、天然蛋白質エキス0.2重量%、食塩0.9重量%、焼酎4重量%、菜種油6重量%、ごま油1重量%、卵白10重量%、豆乳34.6重量%の割合で混合撹拌した後、所定形状に成型して油で揚げる薩摩揚げ様食材の製造方法。」(以下「引用発明2」という。)

(イ)刊行物2には、松谷化学工業のα化でん粉「マツノリン」シリーズが、「すり身に添加すると、分散性がよくベタつかず、食感に影響なく、保水・保形性を発揮し、すり身の一部を代替してコストダウンが図れる」ものであることが記載されている。

(ウ)刊行物3には、「魚肉又は魚肉すり身と、水と、食塩と、α化澱粉とを主原料とする、ペースト状水産練製品。」(特許請求の範囲)、「α化澱粉又は澱粉糊化液を添加した場合、著しく製品の弾性を低下させる」(2頁右下欄8?9行)との記載があり、α化澱粉として「α-タピオカ澱粉」が例示されている(3頁左上欄1?7行)。

(エ)刊行物4には、「魚肉すり身、油脂、大豆加工品及び大根粉砕物を含有する原料混合物を成形し、油ちょうしてなることを特徴とするさつま揚げ。」(【請求項1】)、「大豆加工品としては、豆腐が最も好ましいが、大豆蛋白質と油脂と水とを混合した大豆蛋白ペーストや、豆乳、ご汁等を用いることもできる。」(【0018】)、「魚肉すり身に豆腐や油脂を混合して油ちょうすることにより、豆腐のようなソフトな食感を有する」(【0004】)との記載がある。

(オ)刊行物5には、「豆腐は大豆タンパク質濃縮物であり、江戸時代から堅く絞った豆腐をねり製品に混ぜることが行われてきた。」(203頁4?5行)との記載がある。

(カ)刊行物6には、「豆腐及び又は豆乳を蒲鉾、半ぺんなどの魚肉練り製品原材料と練り合わせ後、蒸し又は湯浴中加温もしくは燻蒸して製造される新規な食感で、優れた食味の豆腐入り魚肉練り製品」(【請求項1】)との記載がある。

(キ)刊行物7には、「このα化澱粉は、水に対して非常に溶解性が高く、大量にしかも一度に混和すると水中で塊状物(以下、ダマということがある)になり易い欠点があり、多数の小さなボール状のダマとなる。・・・(中略)・・・そこで、通常は油に溶解した後に水性調味液と混和するか、あるいは、他の水性調味液に少しづつ時間をかけて混和することを余儀なくされていた。」(【0009】)との記載がある。

イ 請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1とを対比すると、両者は、「すり身、タピオカ由来澱粉、豆乳および油が配合されてなるすり身製品」の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1は、「タピオカ由来α化澱粉」が配合されているのに対し、引用発明1は、タピオカ澱粉が配合されているものの、「タピオカ由来α化澱粉」は配合されていない点。
(相違点2)
本件発明1は、「豆腐」が配合されているのに対し、引用発明1は、「豆腐」が配合されていない点。
(相違点3)
本件発明1は、「タピオカ由来α化澱粉の配合量が2?10%、油の配合量が10?20%である」のに対し、引用発明1は、「タピオカ澱粉5重量%」、「菜種油6重量%、ごま油1重量%」を配合したものである点。

(イ)判断
本件発明1は、上記相違点1?3に係る構成を備えることにより、「ふわふわし、かつ、とろっとした食感」のすり身製品を提供するものである。よって、上記相違点1?3に係る本件発明1の構成は相互に関連しているので、以下、これら相違点をまとめて容易想到性を検討する。
刊行物1?7には、引用発明1に「タピオカ由来α化澱粉」と「豆腐」を配合することや、それによって、ふわふわし、かつ、とろっとした食感を得ることを動機付けるような記載は見当たらない。
刊行物2には、α化でん粉「マツノリン」シリーズをすり身に添加する旨の記載があることから、引用発明1の「タピオカ澱粉」を、α化でん粉「マツノリン」シリーズに変更することを着想し得たとしても、刊行物2には、タピオカ由来であることや豆腐とともに配合することの記載がなく、ふわふわし、かつ、とろっとした食感に関する示唆もないから、刊行物2を参照しても、上記相違点1?3に係る本件発明1の構成を、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、刊行物3には、α化澱粉を添加すると製品の弾性が低下する旨の記載があるものの、得られる製品がペースト状であるから、引用発明1の薩摩揚げ様食材に適用する動機付けは認められないし、豆腐を配合することの記載もない。刊行物4?6には、すり身製品に豆腐を配合することが記載されているものの、タピオカ由来α化澱粉については記載がなく、刊行物7には、豆腐もタピオカ由来α化澱粉も記載されていない。よって、刊行物3?7を参照しても、上記相違点1?3に係る本件発明1の構成を、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
そして、本件発明1の、ふわふわし、かつ、とろっとした食感のすり身製品が得られるという効果は、引用発明1及び刊行物2?7の記載事項から当業者が予測できたものではない。
なお、特許異議申立人矢部陽子は、刊行物3より、通常の練製品においても、α化タピオカ澱粉を加えれば、ペーストのようなとろっとした食感が付加されることは、当業者が予測し得たことである旨主張する(平成29年5月1日付け意見書2頁)。しかし、ペーストのようなとろっとした食感は、本件発明1の、ふわふわし、かつ、とろっとした食感とは異なるから、本件発明1の効果を当業者が予測し得たとはいえない。
また、特許異議申立人都吹株式会社は、特開昭63-133966号公報(甲第3号証)を提出し、引用発明1において、豆乳を豆腐と豆乳に変更することは、単なる材料変換または均等物置換である旨主張するが(特許異議申立書8頁)、固形物である豆腐が、液状物である豆乳と均等物であるとはいえず、豆腐を配合することは、本件発明1のふわふわし、かつ、とろっとした食感を得ることに寄与すると認められるから、豆乳を豆腐と豆乳に変更することが、単なる材料変換または均等物置換であるということはできない。さらに、特許異議申立人都吹株式会社は、引用発明1のタピオカ澱粉をタピオカ由来α化澱粉に置換し、配合量を適宜に設定すれば、ふわふわし、かつ、とろっとした食感を容易に得られる旨主張するが(平成29年5月2日付け意見書5頁)、そのような事実を認めるに足る証拠はない。よって、上記主張はいずれも理由がない。
したがって、本件発明1は、刊行物1?7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 請求項2、4に係る発明について
請求項2、4に係る発明は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当する。
そうすると、請求項2、4に係る発明は、本件発明1と同様に、刊行物1?7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 請求項6に係る発明(以下「本件発明6」という。)について
(ア)対比
本件発明6と引用発明2とを対比すると、両者は、「すり身にタピオカ由来澱粉、豆乳、油を添加した後、油ちょうするすり身製品の製造方法」の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点4)
本件発明6は、「タピオカ由来α化澱粉」を添加するのに対し、引用発明2は、タピオカ澱粉を添加するものの、「タピオカ由来α化澱粉」を添加しない点。
(相違点5)
本件発明6は、すり身に「豆腐」を混入するのに対し、引用発明2は、「豆腐」を混入しない点。
(相違点6)
本件発明6は、「タピオカ由来α化澱粉の全添加量が2?10%、油の添加量が10?20%である」のに対し、引用発明2は、「タピオカ澱粉5重量%」、「菜種油6重量%、ごま油1重量%」を添加するものである点。
(相違点7)
本件発明6は、豆乳、油を添加した後に「再度タピオカ由来α化澱粉を添加」する工程、その後に「蒸し加工し冷凍及び/又は衣付け」する工程を備えるのに対し、引用発明2はこのような工程を備えない点。

(イ)判断
上記相違点4?6は、前記イで検討した相違点1?3と実質的に同じであり、その判断についても同様である。
よって、本件発明6は、刊行物1?7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ 請求項7、9に係る発明について
請求項7、9に係る発明は、本件発明6の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当する。
そうすると、請求項7、9に係る発明は、本件発明6と同様に、刊行物1?7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)特許法第29条第1項第1号、第2号について
ア 製品1との対比
製品1に係る発明は、以下のとおりのものと認められる。
「魚肉すり身、豆腐、マツノリン340(1.49%)、植物油脂(8.37%)、粉末植物油脂、揚げ油(大豆油)が配合されてなる揚げ豆腐。」
本件発明1と製品1に係る発明を対比すると、少なくとも、本件発明1は、「豆乳」が配合されているのに対し、製品1に係る発明は、「豆乳」が配合されていない点、及び、本件発明1は、「タピオカ由来α化澱粉の配合量が2?10%」であるのに対し、製品1に係る発明は、「マツノリン340」の配合量が「1.49%」である点で相違する。
よって、本件発明1は製品1に係る発明であるとはいえない。
また、請求項2、4に係る発明も、同様に、製品1に係る発明であるとはいえない。

イ 製品2との対比
製品2に係る発明は、以下のとおりのものと認められる。
「魚肉すり身、豆腐、マツノリン340(1.61%)、豆乳、植物油脂(15.47%)が配合されてなる豆腐ハンバーグ。」
本件発明1と製品2に係る発明を対比すると、少なくとも、本件発明1は、「タピオカ由来α化澱粉の配合量が2?10%」であるのに対し、製品2に係る発明は、「マツノリン340」の配合量が「1.61%」である点で相違する。
よって、本件発明1は製品2に係る発明であるとはいえない。
また、請求項2、4に係る発明も、同様に、製品2に係る発明であるとはいえない。

なお、特許異議申立人都吹株式会社は、請求項6、7、9に係る発明も、製品1又は製品2に係る発明である旨を主張する(特許異議申立書12頁)。しかし、製品1、2の製造方法は明らかではなく、また、少なくとも、請求項6、7、9に係る発明と製品1又は製品2の製造方法とは、上記本件発明1と製品1又は製品2との相違点と同様の点で相違するから、上記主張は理由がない。

第4 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1、2、4、6、7、9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2、4、6、7、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項3、5、8、10に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項3、5、8、10に対して、特許異議申立人都吹株式会社及び矢部陽子がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
すり身、豆腐、タピオカ由来α化澱粉、豆乳および油が配合されてなるすり身製品であって、タピオカ由来α化澱粉の配合量が2?10%、油の配合量が10?20%である、上記すり身製品。
【請求項2】
すり身が魚肉すり身であることを特徴とする請求項1記載のすり身製品。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
油が植物油であることを特徴とする請求項1または2に記載のすり身製品。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
すり身に豆腐を混入し、タピオカ由来α化澱粉を添加して、それをベースにして豆乳、油を添加し、その後再度タピオカ由来α化澱粉を添加した後、蒸し加工し冷凍及び/又は衣付けして油ちょうすることを特徴とするすり身製品の製造方法であって、タピオカ由来α化澱粉の全添加量が2?10%、油の添加量が10?20%である、上記すり身製品の製造方法。
【請求項7】
すり身が魚肉すり身であることを特徴とする請求項6記載のすり身製品の製造方法。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
油が植物油であることを特徴とする請求項6または7に記載のすり身製品の製造方法。
【請求項10】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-06-06 
出願番号 特願2011-124476(P2011-124476)
審決分類 P 1 651・ 111- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 112- YAA (A23L)
P 1 651・ 841- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 野村 英雄  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 井上 哲男
紀本 孝
登録日 2016-03-04 
登録番号 特許第5893267号(P5893267)
権利者 テーブルマーク株式会社
発明の名称 ふわとろすり身製品及びその製法  
代理人 藤田 節  
代理人 深見 伸子  
代理人 平木 祐輔  
代理人 安田 徹夫  
代理人 深見 伸子  
代理人 安田 徹夫  
代理人 平木 祐輔  
代理人 藤田 節  
代理人 近島 一夫  
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