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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C12G 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C12G 審判 全部申し立て 2項進歩性 C12G 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C12G |
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管理番号 | 1331166 |
異議申立番号 | 異議2016-700454 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-05-18 |
確定日 | 2017-06-13 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5816711号発明「容器入りシャーベット状飲料用組成物、及び溶出性向上方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5816711号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕、7について訂正することを認める。 特許第5816711号の請求項1、2、5?7に係る特許を維持する。 特許第5816711号の請求項3及び4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第5816711号(以下「本件特許」という。)の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成27年10月2日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人田中遼太郎より特許異議の申立てがされ、平成28年7月6日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年9月8日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成28年10月21日に特許異議申立人より意見書の提出がされた。その後、平成28年12月21日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である平成29年3月3日に特許権者より意見書及び訂正の請求がされ、平成29年4月12日に特許異議申立人より意見書の提出がなされたものである。 なお、平成28年9月8日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の請求 1 訂正の内容 平成29年3月3日付け訂正請求書による訂正の請求は、「特許第5816711号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?7について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許に係る願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を、次のように訂正するものである(下線は、訂正箇所を示す)。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「アルコール度数が1.5?8.5%」と記載されているのを、「アルコール度数が3.0?7.0%」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、5、6も同様に訂正する)。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「アルコールの影響を除いた場合のBrixが15.0?25.0%である」と記載されているのを、「アルコールの影響を除いた場合のBrixが15.0?20.0%であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、5及び6も同様に訂正する)。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「・・・シャーベット状飲料用組成物。」と記載されているのを、「増粘安定剤を含有するシャーベット状飲料用組成物であり、前記増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないものであり、・・・シャーベット状飲料用組成物。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、5、6も同様に訂正する)。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に「・・・ことを特徴とするシャーベット状飲料用組成物。」と記載されているのを、「前記シャーベット状飲料用組成物が、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器に充填されていることを特徴とする容器入りシャーベット状飲料用組成物。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、5、6も同様に訂正する)。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項2に「・・・シャーベット状飲料用組成物。」と記載されているのを、「・・・容器入りシャーベット状飲料用組成物。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項5、6も同様に訂正する)。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から請求項4のいずれか1項」と記載されているのを、「請求項1又は請求項2」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する)。 (9) 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項5に「・・・シャーベット状飲料用組成物。」と記載されているのを、「・・・容器入りシャーベット状飲料用組成物。」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する)。 (10) 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項6に「・・・シャーベット状飲料用組成物が、プラスチック製の容器に充填されていることを特徴とする・・・」と記載されているのを、「前記容器がプラスチック製の容器であることを特徴とする・・・」に訂正する。 (11) 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の・・・」と記載されているのを、「請求項1、2、5のいずれか1項に記載の・・・」に訂正する。 (12) 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項6に「・・・容器入り組成物。」と記載されているのを、「・・・容器入りシャーベット状飲料用組成物。」に訂正する。 (13) 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項7に「プラスチック製の容器からのシャーベット状飲料の出し易さを示す溶出性を向上させる方法であって、」と記載されているのを、「プラスチック製の容器からのシャーベット状飲料の出し易さを示す溶出性を向上させる方法であって、前記容器は、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器であり、」に訂正する。 (14) 訂正事項14 特許請求の範囲の請求項7に「シャーベット状飲料用組成物について・・・」と記載されているのを、「増粘安定剤を含有するシャーベット状飲料用組成物について・・・前記増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しない・・・」に訂正する。 (15) 訂正事項15 特許請求の範囲の請求項7に「アルコール度数:1.5?8.5%」と記載されているのを、「アルコール度数:3.0?7.0%」に訂正する。 (16) 訂正事項16 特許請求の範囲の請求項7に「アルコールの影響を除いた場合のBrix:15.0?25.0%」と記載されているのを、「アルコールの影響を除いた場合のBrix:15.0?20.0%」に訂正する。 (17) 訂正事項17 願書に添付した明細書の[発明の名称]に「シャーベット状飲料用組成物、容器入り組成物、及び溶出性向上方法」と記載されているのを、「容器入りシャーベット状飲料用組成物、及び溶出性向上方法」に訂正する。 (18) 訂正事項18 願書に添付した明細書に「・・・シャーベット状飲料用組成物、容器入り組成物、及び溶出性向上方法・・・」(【0001】)と記載されているのを、「・・・容器入りシャーベット状飲料用組成物、及び溶出性向上方法・・・」に訂正する。 (19) 訂正事項19 願書に添付した明細書に「・・・シャーベット状飲料用組成物、容器入り組成物、及び溶出性向上方法・・・」(【0008】)と記載されているのを、「・・・容器入りシャーベット状飲料用組成物、及び溶出性向上方法・・・」に訂正する。 (20) 訂正事項20 願書に添付した明細書に、 「 前記課題は、以下の手段により解決することができる。 (1)アルコール度数が1.5?8.5%であり、アルコールの影響を除いた場合のBrixが15.0?25.0%であることを特徴とするシャーベッ卜状飲料用組成物。 (2)砂糖を含有することを特徴とする前記(1)に記載のシャーベット状飲料用組成物。 (3)増粘安定剤を含有することを特徴とする前記(1)又は前記(2)に記載のシャーベット状飲料用組成物。 (4)前記増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないことを特徴とする前記(3)に記載のシャーベット状飲料用組成物。 (5)果汁を含有することを特徴とする前記(1)から前記(4)のいずれか1つに記載のシャーベット状飲料用組成物。 (6)前記(1)から前記(5)のいずれか1つに記載のシャーベット状飲料用組成物が、プラスチック製の容器に充填されていることを特徴とする容器入り組成物。」(【0009】) と記載されているのを、 「 前記課題は、以下の手段により解決することができる。 (1)アルコール度数が3.0?7.0%であり、アルコールの影響を除いた場合のBrixが15.0?20.0%であり、増粘安定剤を含有するシャーベット状飲料用組成物であり、前記増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないものであり、前記シャーベット状飲料用組成物が、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器に充填されていることを特徴とする容器入りシャーベット状飲料用組成物。 (2)砂糖を含有することを特徴とする前記(1)に記載の容器入りシャーベット状飲料用組成物。 (3)(削除) (4)(削除) (5)果汁を含有することを特徴とする前記(1)又は前記(2)に記載の容器入りシャーベット状飲料用組成物。 (6)前記容器がプラスチック製の容器であることを特徴とする前記(1)、前記(2)、前記(5)のいずれか1つに記載の容器入りシャーベット状飲料用組成物。」 に訂正する。 (21) 訂正事項21 願書に添付した明細書に、 「(7)プラスチック製の容器からのシャーベット状飲料の出し易さを示す溶出性を向上させる方法であって、シャーベット状飲料用組成物について、アルコール度数と、アルコールの影響を除いた場合のBrixと、を以下の範囲に調整することを特徴とする溶出性向上方法。(1)アルコール度数:1.5?8.5%、(2)アルコールの影響を除いた場合のBrix:15.0?25.0%」(【0009】) と記載されているのを、 「(7)プラスチック製の容器からのシャーベット状飲料の出し易さを示す溶出性を向上させる方法であって、前記容器は、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器であり、増粘安定剤を含有するシャーベッド状飲料用組成物について、アルコール度数と、アルコールの影響を除いた場合のBrixと、を以下の範囲に調整し、前記増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないことを特徴とする溶出性向上方法。(1)アルコール度数:3.0?7.0%、(2)アルコールの影響を除いた場合のBrix:15.0?20.0%」 に訂正する。 (22) 訂正事項22 願書に添付した明細書に、「本発明に係るシャーベット状飲料用組成物、及び容器入り組成物によると、」(【0010】)と記載されているのを、「本発明に係る容器入りシャーベット状飲料用組成物によると、」に訂正する。 2 訂正の適否 (1) 訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1「アルコール度数が1.5?8.5%」としていたものを、訂正後の請求項1の「アルコール度数が3.0?7.0%」とすることで、アルコール度数の範囲を減縮しようとするものであり、訂正後の請求項1を引用する請求項2、5及び6についても「アルコール度数が3.0?7.0%」であることに減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、アルコール度数の範囲を減縮するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2、5及び6に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。 よって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること 訂正事項1は、願書に添付した明細書の「アルコール度数は、・・・3.0%以上が特に好ましい。・・・アルコール度数は、・・・7.0%以下がさらに好ましい。」(【0015】)との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (2) 訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項1の「アルコールの影響を除いた場合のBrixが15.0?25.0%である」としていたものを、訂正後の請求項1の「アルコールの影響を除いた場合のBrixが15.0?20.0%であり、」とすることで、アルコールの影響を除いた場合のBrixの範囲を減縮しようとするものであり、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2、5及び6についても「アルコールの影響を除いた場合のBrixが15.0?20.0%」であることに減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、アルコールの影響を除いた場合のBrixの範囲を減縮するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2、5及び6に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。 よって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること 訂正事項2は、願書に添付した明細書の「アルコールの影響を除いた場合のBrixは、・・・20.0%以下がさらに好ましい。」(【0018】)との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。 (3) 訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項1の「シャーベット状飲料用組成物」について、訂正後の請求項1の「増粘安定剤を含有するシャーベット状飲料用組成物であり、前記増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないものであり、・・・シャーベット状飲料用組成物。」とすることで、シャーベット状飲料用組成物には、2種以上で構成されゲルを形成しない増粘安定剤が含有されることを特定しようとするものであり、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2、5及び6についても「増粘安定剤を含有するシャーベット状飲料用組成物であり、前記増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないものであり、・・・シャーベット状飲料用組成物。」であることに特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項3は、シャーベット状飲料用組成物が2種以上で構成されゲルを形成しない増粘安定剤を含有することを特定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2、5及び6に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。 よって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること 訂正事項3は、願書に添付した明細書の「組成物に含有される増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないことが好ましい。」(【0025】)との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (4) 訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の請求項1の「シャーベット状飲料用組成物。」について、訂正後の請求項1の「前記シャーベット状飲料用組成物が、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器に充填されている」「容器入りシャーベット状飲料用組成物。」とすることで、シャーベット状飲料用組成物が特定の容器に充填されたものであることを特定しようとするものであり、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2、5及び6についても「前記シャーベット状飲料用組成物が、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器に充填されている」「容器入りシャーベット状飲料用組成物。」であることに特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、シャーベット状飲料用組成物が、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器に充填されている容器入りシャーベット状飲料用組成物であることを特定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2、5及び6に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。 よって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること 訂正事項4は、願書に添付した明細書の「前記したシャーベット状飲料用組成物が、・・・容器に充填されている」(【0033】)との記載及び「容器とは、詳細には、対象物を内部に保持する本体部と、当該本体部の内部と外部とを連通する飲みロ部とを有するとともに、本体部に外側から圧力が加えられることにより、飲み口部から対象物を放出する容器である。」(【0034】)との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (5) 訂正事項5について ア 訂正の目的について 訂正事項5は、訂正前の請求項2の「シャーベット状飲料用組成物。」について、訂正後の請求項1が「容器入りシャーベット状飲料用組成物。」に特定されたことに伴って、訂正後の請求項2の「容器入りシャーペット状飲料用組成物。」に特定しようとするものであり、訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項5及び6についても「容器入りシャーベット状飲料用組成物。」であることに特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項5は、シャーベット状飲料用組成物が容器入りであることを特定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項5及び6に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。 よって、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること 訂正事項5は、願書に添付した明細書の「本実施形態に係る容器入り組成物は、前記したシャーベット状飲料用組成物が、…容器に充填されている」(【0033】)との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (6) 訂正事項6及び7について ア 訂正の目的について 訂正事項6は、訂正前の請求項3を削除するものである。また、訂正事項7は、訂正前の請求項4を削除するものである。 したがって、訂正事項6及び7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項6及び7は、訂正前の請求項3及び4の記載を削除するのみであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものには該当しない。 よって、訂正事項6及び7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること 訂正事項6及び7は、訂正前の請求項3及び4の記載を削除するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (7) 訂正事項8及び9について ア 訂正の目的について 訂正事項8は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1?4のいずれか1項を引用する記載であったものを、訂正前の請求項3及び4に記載された事項が訂正後の請求項1に加入され、当該訂正前の請求項3及び4が削除されたのに際して、訂正後の請求項1又は2を引用する記載にするものである。 ここで、訂正前の請求項5は、訂正前の請求項1?4のいずれか1項を引用するものであったところ、訂正事項8によって、訂正後の請求項5は、訂正後の請求項1又は2を引用するものとなったため、訂正後の請求項5及び訂正後の請求項5を引用する訂正後の請求項6は、訂正前の請求項5には含まれていた、訂正前の請求項1又は2のみ、及び訂正前の請求項1を引用する請求項2を引用する訂正前の請求項5に係る事項を含まないこととなった。 よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項9は、上記訂正事項5と同様であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項8は、訂正前の請求項1又は2のみ、及び訂正前の請求項1を引用する請求項2を引用する訂正前の請求項5に係る事項を含まないこととするものであるところ、訂正前の請求項5に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものとはなく、訂正前の請求項5を引用する訂正前の請求項6に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。 また、訂正事項9は、上記訂正事項5と同様であり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、訂正後の請求項5を引用する訂正後の請求項6に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。 よって、訂正事項8及び9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること 訂正事項8は、訂正前の請求項1又は2のみ、及び訂正前の請求項1を引用する請求項2を引用する訂正前の請求項5に係る事項を含まないこととするのみであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 また、訂正事項9は、上記訂正事項5と同様に、願書に添付した明細書の「本実施形態に係る容器入り組成物は、前記したシャーベット状飲料用組成物が、…容器に充填されている」(【0033】)との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (8) 訂正事項10?12について ア 訂正の目的について 訂正事項10?12は、訂正前の請求項6の「請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシャーベット状飲料用組成物が、プラスチック製の容器に充填されていることを特徴とする容器入り組成物。」としていたものを、訂正後の請求項6の「前記容器がプラスチック製の容器であることを特徴とする請求項1、2、5のいずれか1項に記載の容器入りシャーベット状飲料用組成物。」とすることで、上記訂正事項4において訂正後の請求項1に「容器」が規定されたことに伴い、当該「容器」と訂正後の請求項6の「容器」との関係を明らかにしつつ、容器入り組成物が容器入りシャーベット状飲料用であることを特定しようとするものであって、かつ上記訂正事項6及び7において訂正後の請求項3及び4が削除されたことに伴い、訂正前の請求項6の引用請求項の数を減少させるものである。 よって、訂正事項10?12は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするもの及び特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項10?12は、請求項6の「容器」と訂正後の請求項1の「容器」の関係を明らかにしつつ、容器入り組成物が容器入りシャーベット状飲料用であることを特定し、かつ訂正前の請求項6の引用請求項の数を減少させるものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 よって、訂正事項10?12は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許 法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること 訂正事項10?12は、願書に添付した明細書の「容器入り組成物は、前記したシャーベット状飲料用組成物が、プラスチック製の容器に充填されていることを特徴とする。」(【0033】)との記載に基づくものであって、訂正前の請求項6の引用請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (9) 訂正事項13?16について ア 訂正の目的について 訂正事項13?16は、訂正前の請求項7の 「プラスチック製の容器からのシャーベット状飲料の出し易さを示す溶出性を向上させる方法であって、 シャーベット状飲料用組成物について、アルコール度数と、アルコールの影響を除いた場合のBrixと、を以下の範囲に調整することを特徴とする溶出性向上方法。 (1)アルコール度数:1.5?8.5% (2)アルコールの影響を除いた場合のBrix:15.0?25.0%」 としていたものを、訂正後の請求項7の 「プラスチック製の容器からのシャーベット状飲料の出し易さを示す溶出性を向上させる方法であって、 前記容器は、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器であり、 増粘安定剤を含有するシャーベット状飲料用組成物について、アルコール度数と、アルコールの影響を除いた場合のBrixと、を以下の範囲に調整し、 前記増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないことを特徴とする溶出性向上方法。 (1)アルコール度数:3.0?7.0% (2)アルコールの影響を除いた場合のBrix:15.0?20.0%」 とすることで、「容器」が「対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器」であることを特定し、「シャーベット状飲料用組成物」には「2種以上」で構成され「ゲルを形成しない増粘安定剤」を含有することを特定し、かつ、「アルコール度数」及び「アルコールの影響を除いた場合のBrix」の範囲を、それぞれ「3.0?7.0%」及び「15.0?20.0%」に減縮しようとするものである。 よって、当該訂正事項13?16は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項13?16は、容器の具体的構成、シャーベット状飲料用組成物の具体的内容物、「アルコール度数」及び「アルコールの影響を除いた場合のBrix」の数値範囲を限定するものであり、発明のカテコリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること 訂正事項13?16は、願書に添付した明細書の「容器入り組成物は、前記したシャーベット状飲料用組成物が、プラスチック製の容器に充填されていることを特徴とする。」(【0033】)との記載、「・・・容器とは、詳細には、対象物を内部に保持する本体部と、当該本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、本体部に外側から圧力が加えられることにより、飲み口部から対象物を放出する容器である。」(【0034】)との記載、「・・・組成物に含有される増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないことが好ましい。」(【0025】)との記載、「・・・アルコール度数は、・・・3.0%以上が特に好ましい。・・・アルコール度数は、・・・7.0%以下がさらに好ましい。」(【0015】)との記載、及び、「・・・アルコールの影響を除いた場合のBrixは、・・・20.0%以下がさらに好ましい。」(【0018】)との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (10) 訂正事項17?22について ア 訂正の目的について 訂正事項17?22は、上記訂正事項1?16に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性を図るための訂正事項であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項17?22は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性を図るための訂正事項であるところ、訂正前の請求項〔1?6〕及び7に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること 訂正事項17?22は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性を図るための訂正であり、上記訂正事項1?16において示したとおり、明細書の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 3 まとめ したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とし、同法同条第9項の規定によって準用する第126条第5項及び第6項に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕、7について訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1?7に係る発明(以下「本件発明1?7」という。また、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 【請求項1】 アルコール度数が3.0?7.0%であり、 アルコールの影響を除いた場合のBrixが15.0?20.0%であり、 増粘安定剤を含有するシャーベット状飲料用組成物であり、 前記増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないものであり、 前記シャーベット状飲料用組成物が、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器に充填されていることを特徴とする容器入りシャーベット状飲料用組成物。 【請求項2】 砂糖を含有することを特徴とする請求項1に記載の容器入りシャーベット状飲料用組成物。 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】 果汁を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の容器入りシャーベット状飲料用組成物。 【請求項6】 前記容器がプラスチック製の容器であることを特徴とする請求項1、2、5のいずれか1項に記載の容器入りシャーベット状飲料用組成物。 【請求項7】 プラスチック製の容器からのシャーベット状飲料の出し易さを示す溶出性を向上させる方法であって、 前記容器は、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器であり、 増粘安定剤を含有するシャーベット状飲料用組成物について、アルコール度数と、アルコールの影響を除いた場合のBrixと、を以下の範囲に調整し、 前記増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないことを特徴とする溶出性向上方法。 (1)アルコール度数:3.0?7.0% (2)アルコールの影響を除いた場合のBrix:15.0?20.0% 第4 当審の判断 1 取消理由通知に記載した取消理由について (1) 取消理由の概要 [理由1] 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 ・請求項1?7に対して ・引用文献 1.特表平9-508027号公報(甲第1号証) 2.特開平11-32689号公報(甲第2号証) 3.特公平7-40884号公報(甲第3号証) [理由2] 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項1?7に対して ・引用文献 1.特表平9-508027号公報(甲第1号証) 2.特開平11-32689号公報(甲第2号証) 3.特公平7-40884号公報(甲第3号証) 4.特公平4-61632号公報(甲第4号証) 5.特開2010-259335号公報(甲第5号証) 6.特開2000-201625号公報(甲第6号証) (2) 取消理由についての判断 (2-1) 理由1について (2-1-1) 引用文献1記載の発明に基づく新規性 ア 引用文献1には、以下の記載がある。 ア-1 「1.次のa?eを含み、約3.0ないし約5.0のpH値と約6度ないし約28度のアルコール強度を有することを特徴とする簡易冷凍アルコール飲料。 a.飲用アルコール、 b.ルーカストビームガムとグアルガムとを混合してなる安定剤混合物、 c.香味料、 d.少なくとも1種類の糖、及び e.脱イオン水。」(【特許請求の範囲】) ア-2 「8.請求項1に記載されている簡易冷凍アルコール飲料において、 上記糖が、サッカロース、果糖およびぶどう糖を含んでなることを特徴とする簡易冷凍アルコール飲料。」(【特許請求の範囲】) ア-3 「本発明は、簡易冷凍アルコール飲料、(または「アルコール入り簡易冷凍飲料」)に関する。さらに具体的には、本発明は、液体状での棚積み保存に耐え、バーやレストランで見られるミキサーや市販用砕氷機で作られたフローズンカクテルのような砕氷状の固さになるまでの間、冷凍庫内、好ましくは一般消費者の冷凍庫内に貯蔵されるよう構成されたアルコール飲料に関する。 また、本発明は、上記飲料を詰める容器に関する。」(8頁8?13行) ア-4 「上記飲料に使用される水は脱イオン水である。 上記飲料の糖分のバランスは最適の味と質感を実現するのに重要であることが試食会での評価からわかっている。このことを実現するため、上記飲料は、サッカロース、果糖及びぶどう糖のうちの少なくとも1種類以上の甘味料を含んでいる。あるいは、上記飲料は、好ましくは、ぶどう糖、果糖、麦芽糖および高級糖類を含む高果糖コーンシロップとサッカロースとの混合物を含んでいてもよい。上記飲料の最終製品は、ブリックス計による測定では約12度ないし約19度の総糖分を含んでいる。」(13頁7?14行) ア-5 「本簡易冷凍アルコール飲料は、約6度ないし約28度のアルコール強度、好ましくは約7度ないし約28度(約3.5重量%ないし約14重量%のエチルアルコール含有量に相当)のアルコール強度、より好ましくは約8度ないし約14度(約4重量%ないし約7重量%のエチルアルコール含有量に相当)のアルコール強度、さらに好ましくは約11度ないし約13度(約5.5重量%ないし約6.5重量%のエチルアルコール含有量に相当)のアルコール強度を有している。本簡易冷凍アルコール飲料のアルコール含有量は、飲料の凍結能力に大きな影響を及ぼしている。飲用アルコール量が少なければ、飲料の凍結抵抗力が下がって望ましくない早期に固く凍結する製品を製造することになる。アルコール度を増やせば、凍結しにくくなって凍結温度を低下させる必要が生じることになる。 本発明のアルコール飲料配合物のその他の成分の含有量は、飲料が所定期間冷凍庫環境内に置かれたとき砕氷状のフローズンカクテル製品になるように調整することが可能である。「砕氷状フローズンカクテル製品」とは、その製品が容器に自由に注ぎ込むことはできないが角氷のように固くはない、部分的に溶けた半凍結状の軟らかい氷の固さを有することを意味する。この製品は、例えば指圧を加えるだけで比較的容易に変形可能であり、スプーンなどの用具を使って簡単に取り扱ったり容器から取り出すこともできる。このような砕氷状フローズンカクテルのよく知られた例として、フローズンマルガリータとピーニャコラーダがある。本発明は、いかなる消費者の冷凍庫内でも、特に従来技術の許容範囲以上の広い温度範囲、すなわち華氏約-5度ないし約20度の温度範囲で砕氷状のフローズンカクテルになるよう凍結する飲料品を提供する。」(14頁15行?15頁7行) ア-6 「一の実施形態では、グアルガムとルーカストビームガムとを組み合わせたもの(または混合させたもの)から成る安定剤が本発明のアルコール飲料に優れた特性をもたらしている。この成分の組合せによれば、よく凍結し優れた質感と微細な氷結晶を有し、望ましくないシート状の氷結晶をほとんど有さない飲料品を作ることができるとともに、このアルコール飲料品が冷凍庫から取り出された後も約20ないし30分間は室温で凍結または半凍結状態を維持することができるという予想外の利点がもたらされる。上記の質感をさらに向上させるため、他の実施形態では、上記グアルガムとルーカストビームガムの安定剤混合物に対して少量のペクチンが加えられる。ペクチンは、適切な割合であれば、砕けたような砕氷の量をさらに増大させる(シート状の氷結晶がほとんど存在しない状態は維持される)とともに、ミキサー製のフローズンドリンクとほぼ同じ飲料品を提供するという点で予想外の有益な効果をもたらす。」(15頁11?22行) ア-7 「好ましい一の実施形態では、1種類以上の市販の香味料を穀類中性スピリッツ等の飲用アルコール源、クエン酸及び水に加えることにより、風味が作り出される。飲用アルコール源の量は、最終的なアルコール入り簡易冷凍飲料が既述のアルコール強度を有するように決定されるが、必要に応じてさらに追加される飲用アルコールを含む場合がある。クエン酸の量は、本発明の飲料が最終的に既述のpHを有するように決定されるが、クエン酸や既述の他の酸味料をさらに追加することは可能である。適切な市販の香味料としては、1種類以上の少量の芳香油や、天然または人工香味料の単独利用または組合せや、濃縮果汁が含まれる。使用される香味料の種類や量は、ピーニャコラーダ、フローズンマルガリータ等の飲料の所望の風味を得ることができるように決められる。」(18頁19?最終行) ア-8 「配合されたアルコール飲料は、ガラス、剛性プラスチック、柔軟性プラスチック製袋、金属、ラミネートされた板紙あるいはこれらいくつかの組合せ等の適切な容器に販売用に収められる。好ましい1つの方法では、200mlないし240mlのアルコール飲料品が入る8.125インチ×4.75インチのサイズのラミネートされた柔軟性プラスチック製袋状容器で上記飲料品を包装するようにしている。」(19頁25行?20頁1行) ア-9 「凍結された飲料は、冷凍庫から取り出された後、消費者がその容器をやさしく揉んでフローズンカクテル用グラス等の適切な容器に注ぎ込まれる。容器からスプーンですくい取ることもできる。一旦凍らされると、砕氷状のカクテルを何時でも冷凍庫から取り出して味わうことが可能である。」(21頁19?22行) ア-10 「以下の実施例では、本発明の主要な特徴がさらに説明されている。しかしながら、当該分野の技術者にとって明らかなように、以下の実施例で使用される具体的な反応物および反応条件は本発明の範囲を限定するものではない。なお、実施例において、アルコール飲料の重量%、またはアルコールの重量%は、飲料中におけるエチルアルコールの重量%を示す。 例1AからpH値3.5、アルコール量5.432重量%の飲料ができる。例1BからpH値3.4のアルコール量5.819重量%の飲料ができる。 例1Aの飲料はパイナップルの風味を持たせ、例1Bの飲料はフローズンマルガリータの風味を持たせた。 例1Aおよび1Bの安定剤混合物は、0.05重量%のルーカストビームガムと、0.018重量%のグアルガムと、0.005重量%のペクチンとを有し、残部は糖、塩、乳漿等の充填剤である。さらに、他の成分として、乳化剤と、安息香酸ナトリウム及びソルビン酸カリウムという保存料とを含む。上記香味料は、好ましい実施の形態として上述したように、1種類以上の市販の香味料に穀類中性スピリッツ、クエン酸および水を加えることにより製造されている。それ故、上記表の香味料の量は、上記市販香味料、穀類中性スピリッツ、クエン酸および水を混合した結果物の量のことである。」(21頁23行?23頁9行) ア-11 「例2Aおよび2B(本発明の飲料) 香味料添加フローズンカクテルを例1A、1Bとほぼ同じ工程に従いほぼ同じ成分を用いて製造した。但し、飲用アルコールは80度のものを使用した。従って、安定剤混合物、香味料、乳化剤は例1A、1Bと同じものを同じ相対量で使用した。飲料は以下の組成を持つ。 例2Aから、パイナップル風味を持ちpH値3.5、アルコール量6.3重量%の飲料ができた。例2Bから、フローズンマルガリータ風昧でpH値3.4、アルコール6.65重量%の飲料ができた。 香味料は、好ましい実施の形態として上述したように、1種類以上の市販の香味料に穀類中性スピリッツ、クエン酸および水を加えることにより製造した。それ故、上記表の香味料の量は、上記市販香味料、穀類中性スピリッツ、クエン酸および水を混合した結果物の量に基づく。 製品は、微細結晶構造を持つ清涼フローズンカクテルの外観と味を呈した。」(23頁22行?25頁2行) イ ここで、上記記載事項「ア-11」に示されている例2Aのパイナップル風味を持ちpH値3.5、アルコール量6.3重量%の飲料(以下「例2A飲料」という。)に着目すると、当該例2A飲料は、微細結晶構造を持つ清涼フローズンカクテルの外観と味を呈する飲料であって、そのアルコール度数、安定剤及びアルコールの影響を除いた場合のBrixは、以下のようなものであることが理解できる。 a アルコール度数 例2A飲料は、アルコール量が6.3重量%であるところ、これを技術常識(甲第13号証「比重とエタノールの換算表」)にしたがって容量%[v/v%]に換算すると、約8.0容量%のものである。 b 安定剤 例2A飲料は、安定剤混合物を0.089重量%含有しており、当該安定剤混合物は例1Aの飲料と同じものを使用したものであるところ、具体的には、0.05重量%のルーカストビームガムと、0.018重量%のグアルガムと、0.005重量%のペクチンとを有し、残部は糖、塩、乳漿等の充填剤からなるものである。(上記記載事項「ア-10」参照)。当該ルーカストビームガム、グアルガム及びペクチンは、増粘安定剤として広く知られている一般的なものである。 c アルコールの影響を除いた場合のBrix 例2A飲料について、まず、飲用アルコール及び香味料を除いた場合のBrixを算出すると、 当該飲用アルコール及び香味料を除いた場合のBrix=サッカロース7.90+高果糖コーンシロップ8.64+クエン酸0.255+クエン酸ナトリウム0.16+安定剤混合物0.089+乾燥着色料0.00036+乳化剤0.018+保存料(ソルビン酸カリウム及び安息香酸ナトリウム)0.047=17.11 となる。 一方、例2A飲料は、香味料を5.49重量%含有しており、当該香味料は、1種類以上の市販の香味料に穀類中性スピリッツ、クエン酸および水を加えることにより製造されたものであるが、それぞれの成分比は必ずしも明らかでない。しかしながら、当該香味料は、例1Aと同じものを同じ相対量で使用したものであるから、アルコールの重量比については1.293重量%であることがわかる(上記記載事項「ア-10」参照)。そうすると、アルコールの影響を除いた場合の上記香味料のBrixは、最大でも5.49-1.293=4.197より小さいことが理解される。 よって、香味料のBrixを加味して、例2A飲料のアルコールの影響を除いた場合のBrixについてみると、あとは香味料中の水分がきわめて少量である場合から、ほとんどが水分である場合の幅を考慮すれば、当該Brixは、少なくとも17.11より大きく、17.11+4.197=21.307より小さいものであるということができる。 また、例2A飲料は、微細結晶構造を持つ清涼フローズンカクテルの外観と味を呈する飲料であるところ、当該フローズンカクテル製品は、柔軟性プラスチック製袋状容器で包装されることが記載されている(上記記載事項「ア-8」)。 ウ 以上を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「アルコール度数が約8.0容量%であり、 アルコールの影響を除いた場合のBrixが17.11より大きく、21.307より小さいものであり、 サッカロース、香味料を含有し、 ルーカストビームガム、グアルガム及びペクチンからなる安定剤を含有し、 ガラス、剛性プラスチック、柔軟性プラスチック製袋、金属、ラミネートされた板紙あるいはこれらいくつかの組合せ等の適切な容器で包装される、 微細結晶構造を持つ清涼フローズンカクテルの外観と味を呈する飲料。」 そこで、本件発明1と引用発明1を対比すると、両者は以下の点で相違し、その余の点で一致する。 [相違点A-1] 本件発明1は、アルコール度数が3.0?7.0%であり、アルコールの影響を除いた場合のBrixが15.0?20.0%であるのに対して、引用発明1は、アルコール度数が約8.0容量%であり、アルコールの影響を除いた場合のBrixが17.11より大きく、21.307より小さいものである点。 [相違点A-2] 飲料用組成物が充填される容器について、本件発明1は、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器であるのに対して、引用発明1は、ガラス、剛性プラスチック、柔軟性プラスチック製袋、金属、ラミネートされた板紙あるいはこれらいくつかの組合せ等の適切な容器であるが、その具体的構造は明らかでない点。 そして、上記[相違点A-1]及び[相違点A-2]は、単なる設計的事項ということはできない実質的な相違点であると認められるから、本件発明1は、引用発明1ではない。 また、本件発明2、5及び6は、本件発明1を引用する発明であるから、引用発明1とは少なくとも上記[相違点A-1]及び[相違点A-2]において相違する。 よって、本件発明2、5及び6は、引用発明1ではない。 エ また、引用文献1には、「本発明は、いかなる消費者の冷凍庫内でも、特に従来技術の許容範囲以上の広い温度範囲、すなわち華氏約-5度ないし約20度の温度範囲で砕氷状のフローズンカクテルになるよう凍結する飲料品を提供する。」、「「砕氷状フローズンカクテル製品」とは、その製品が容器に自由に注ぎ込むことはできないが角氷のように固くはない、部分的に溶けた半凍結状の軟らかい氷の固さを有することを意味する。この製品は、例えば指圧を加えるだけで比較的容易に変形可能であり、スプーンなどの用具を使って簡単に取り扱ったり容器から取り出すこともできる。」(上記記載事項「ア-5」)、「凍結された飲料は、冷凍庫から取り出された後、消費者がその容器をやさしく揉んでフローズンカクテル用グラス等の適切な容器に注ぎ込まれる。容器からスプーンですくい取ることもできる。一旦凍らされると、砕氷状のカクテルを何時でも冷凍庫から取り出して味わうことが可能である。」(上記記載事項「ア-9」)との記載があり、引用文献1には、フローズンカクテル製品を容器から取り出し易くする方法が記載されているものと理解できる。また、当該フローズンカクテル製品は、ガラス、剛性プラスチック、柔軟性プラスチック製袋、金属、ラミネートされた板紙あるいはこれらいくつかの組合せ等の適切な容器で包装されることが記載されている(上記記載事項「ア-8」)。 そして、例2A飲料は、微細結晶構造を持つ清涼フローズンカクテルの外観と味を呈する飲料であるところ、上記「フローズンカクテル製品」に該当する。 よって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1’」という。)も記載されている。 「ガラス、剛性プラスチック、柔軟性プラスチック製袋、金属、ラミネートされた板紙あるいはこれらいくつかの組合せ等の適切な容器で包装された微細結晶構造を持つ清涼フローズンカクテルの外観と味を呈する飲料を、容器から出し易くする方法であって、 サッカロース、香味料を含有し、ルーカストビームガム、グアルガム及びペクチンからなる安定剤を含有する上記飲料について、アルコール度数が約8.0容量%に調整され、アルコールの影響を除いた場合のBrixが17.11より大きく、21.307より小さいものに調整される、方法。」 そこで、本件発明7と引用発明1’を対比すると、両者は以下の点で相違し、その余の点で一致する。 [相違点A’-1] 本件発明7は、アルコール度数が3.0?7.0%、アルコールの影響を除いた場合のBrixが15.0?20.0%に調整されるのに対して、引用発明1は、アルコール度数が約8.0容量%、アルコールの影響を除いた場合のBrixが17.11より大きく、21.307より小さいものに調整される点。 [相違点A’-2] 溶出性を向上させる対象の容器について、本件発明7は、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器としているのに対して、引用発明1は、ガラス、剛性プラスチック、柔軟性プラスチック製袋、金属、ラミネートされた板紙あるいはこれらいくつかの組合せ等の適切な容器であるが、その具体的構造は明らかでない点。 そして、上記[相違点A’-1]及び[相違点A’-2]は、単なる設計的事項ということはできない実質的な相違点であると認められるから、本件発明7は、引用発明1’ではない。 (2-1-2) 引用文献2記載の発明に基づく新規性 引用文献2には、【特許請求の範囲】、【0019】【表1】?【0020】の実施例1に関する記載等を参酌すると、 「エチルアルコール濃度が8.0v/v%、糖濃度が13.4w/v%、Brixが16.3であり、香料を含有し、安定剤及び/又は食感改善剤を含有しない、アルコール含有氷菓用種液を凍結してなる、パウチ容器に充填された、アルコール含有氷菓。」 が記載されているといえる。 ここで、上記Brix16.3は、アルコール含有氷菓全体に対するものであり、当該氷菓の成分である95v/v%エチルアルコールのBrixは0であるとしても、当該氷菓に0.13%含まれる香料にはアルコールを含み得ることを考慮すれば、上記氷菓におけるアルコールの影響を除いた場合のBrixは、16.3-0.13=16.17より大きく、16.3以下であるということができる。 よって、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 「エチルアルコール濃度が8.0v/v%、糖濃度が13.4w/v%、アルコールの影響を除いた場合のBrixが16.17より大きく、16.3以下であり、香料を含有し、安定剤及び/又は食感改善剤を含有しない、アルコール含有氷菓用種液を凍結してなる、パウチ容器に充填された、アルコール含有氷菓。」 よって、本件発明1と引用発明2を対比すると、引用発明2の「安定剤」は「カラギーナン、タマリンド種子粘出物、タラビーズ粘出物、ペクチン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム等」(【0008】)であり、「食感改善剤」は「還元でん粉加水分解物、デキストリン、可溶性でん粉、寒天、カラギーナン、タマリンドガム、ペクチン、キサンタンガム、カードラン等の天然高分子系のもの、CMC、メチルセルロース、結晶セルロース等の天然高分子誘導体のもの」(【0008】)であるから、引用発明2の「安定剤及び/又は食感改善剤」は、本件発明1の「増粘安定剤」に相当し、両者は以下の点で相違し、その余の点で一致する。 [相違点B-1] 本件発明1は、アルコール度数が3.0?7.0%であるのに対して、引用発明2は、アルコール度数が8.0v/v%である点。 [相違点B-2] 本件発明1は、増粘安定剤を含有するのに対して、引用発明2は、安定剤及び/又は食感改善剤を含有しない点。 [相違点B-3] 飲料用組成物が充填される容器について、本件発明1は、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器であるのに対して、引用発明2は、パウチ容器であるが、その具体的構造は明らかでない点。 そして、上記[相違点B-1]?[相違点B-3]は、単なる設計的事項ということはできない実質的な相違点であると認められるから、本件発明1は、引用発明2ではない。 また、本件発明2、5及び6は、本件発明1を引用する発明であるから、引用発明2とは少なくとも上記[相違点B-1]?[相違点B-3]において相違する。よって、本件発明2、5及び6は、引用発明2ではない。 また、本件発明7との対比においても、少なくとも、上記[相違点B-1]?[相違点B-3]において相違する。よって、本件発明7は、引用発明2ではない。 (2-1-3) 引用文献3記載の発明に基づく新規性 ア 引用文献3には、以下の記載がある。 ア-1 「【請求項1】安定剤と糖類を水に混合し、加熱溶解して冷却した後、リキュール類を混和し、レトルト殺菌することを特徴とするリキュール類を主成分とするシャーベットの製造方法。 【請求項2】全量に対して0.05?0.35%の安定剤を使用する請求項1記載の製造方法。 【請求項3】リキュール類を全量に対して9?16%含有する請求項1または2記載の製造方法。 【請求項4】請求項1、2または3記載の製造方法により得られたリキュール類を主成分とするシャーベット。」(【特許請求の範囲】) ア-2 「本発明で使用する安定剤としては、カラギーナン、ローカストビーンガム等のガム類を含むものが使用され、安定剤の製品に対する含量は0.05?0.35%が良好な組織を与えるので好ましい。 ・・・ 安定剤として、例えば、カラギーナン30%、ローカストビーンガム20%、結晶ブドウ糖39%を製品の0.3重量%添加すると良好な組織となる。安定剤としては、前記ガムのほかに、カラギーナン、ローカストビーンガム、タマリンド種子粘出物、タラビーズ粘出物、ペクチン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム等を使用できる。」(2頁左欄24?36行) ア-3 「本発明では、安定剤、糖類の他に、果汁類、クエン酸、乳酸等の酸味料、香味料、ゲル化剤等をを必要に応じて添加することができる。」(2頁左欄37?39行) ア-4 「本発明は、安定剤と糖類を水に混合し、加熱溶解後、アルコール蒸発を抑える温度まで冷却し、リキュール原料を容器に充填後、レトルト殺菌の際に、ゲル状の安定剤が劣化してゲル上でなくなることに特徴がある。」(2頁左欄45?48行) ア-5 「本発明のリキュール類を含んだシャーベットは、食前に冷凍してシャーベット状にした後に供する。本製品は-20℃前後の冷凍室においても硬くならず、シャーベット状の良好な組織が得られる。」(2頁左欄49行?右欄2行) ア-6 「実施例1 一次仕込みでカラギーナン30%、ローカストビーンガム20%、結晶ブドウ糖39%を含有する安定剤270g、水30l、グラニュー糖270gを混合し、60℃まで加熱し、二次仕込みでグラニュー糖8,790g、粉末水飴5,430g、異性化糖9,060g、カラメル30gを混合し、三次仕込みで水32.92lを加水し、80℃まで加熱し、四次仕込みで60℃に冷却し、ブランデーv.s.o.p(43%)9,500g、クエン酸50g、香料60gを混合し、容器に充填し、95℃、30分間レトルト殺菌した。 実施例2 一次仕込みで、ローカストビーンガム29.8%、カラギーナン27.2%、結晶ブドウ糖29%を含有する安定剤130g、水30l、グラニュー糖130gを混合し、55℃まで加熱し、二次仕込みでグラニュー糖10,120g、粉末水飴3,420g、異性化糖9,390gを混合し、三次仕込みで水32.83lを加水し80℃まで加熱し、四次仕込みで60℃に冷却し、清酒(15.5%)14,200g、原料用アルコール(95.5%)1,700g、香料80gを混合し、容器に充填し、95℃、30分間レトルト殺菌した。 実施例3 カラギーナン30%、ローカストビーンガム20%、結晶ブドウ糖39%を含有する安定剤270g、グラニュー糖9,060g、粉末水飴5,430g、異性化糖9,060g、カラメル30g、グレープ果汁3,620g、水62.92lを混合し、80℃まで加熱した後、60℃に冷却し、ブランデー(43%)9,500g、クエン酸50g、香料60gを混合し、容器に充填し、95℃、30分間レトルト殺菌した。」(2頁右欄14?41行) ア-7 「比較例1 レトルト殺菌を行わない以外は実施例1と同様にブランデーをベースとした製品を製造し、容器を充填後、冷凍した。製品は、ゲル化してしまい、シャーベット状のものは得られなかった。 比較例2 レトルト殺菌を行わない以外は実施例2と同様に清酒をベースとした製品を製造し、容器を充填後、冷凍した。製品は、ゲル化してしてしまい、シャーベット状のものは得られなかった。 比較例3 レトルト殺菌を行わない以外は実施例3と同様にブランデーをベースとした製品を製造し、容器を充填後、冷凍した。製品は、ゲル化してしまい、シャーベット状のものは得られなかった。」(2頁右欄42行?3頁左欄6行) イ 上記記載事項「ア-6」から、実施例1は、エチルアルコール(アルコール度数4.24%)、砂糖(グラニュー糖)、増粘安定剤(カラギーナン、ローカストビーンガム)及び香料を含有する容器入りのレトルト殺菌済シャーベット原料であること、実施例2は、エチルアルコール(アルコール度数3.75%)、砂糖(グラニュー糖)、増粘安定剤(カラギーナン、ローカストビーンガム)及び香料を含有する容器入りのレトルト殺菌済シャーベット原料であること、そして、実施例3は、エチルアルコール(アルコール度数4.09%)、砂糖(グラニュー糖)、増粘安定剤(カラギーナン、ローカストビーンガム)及び果汁(グレープ果汁)を含有する容器入りのレトルト殺菌済シャーベット原料であることが理解される。また、実施例1?3のものは、レトルト容器に充填され、食前に冷凍してシャーベット状にした後に供されることは明らかである(上記記載事項「ア-5」?「ア-7」参照)。 そして、実施例1?3に用いられている各材料の成分組成についての技術常識(「五訂 日本食品標準成分表」甲第7号証)に基づくと、実施例1?3について、アルコールの影響を除いた場合のBrixを算出すると、実施例1は22.28、実施例2は20.89、実施例3は22.02であるということができる(甲第8号証「3.」参照)。 ウ 以上を踏まえると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。 「アルコール度数が3.75?4.24%であり、アルコールの影響を除いた場合のBrixが20.89?22.28であり、砂糖、カラギーナン及びローカストビーンガムからなる増粘安定剤、並びに、香料又は果汁を含有し、レトルト殺菌した、リキュール類を含んだレトルト容器入りシャーベット。」 そこで、本件発明1と引用発明3を対比すると、両者は以下の点で相違し、その余の点で一致する。 [相違点C-1] アルコールの影響を除いた場合のBrixが、本件発明1は、15.0?20.0%であるのに対して、引用発明3は、20.89?22.28である点。 [相違点C-2] 組成物が充填される容器について、本件発明1は、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器であるのに対して、引用発明2は、レトルト容器であるが、その具体的構造は明らかでない点。 そして、上記[相違点C-1]及び[相違点C-2]は、単なる設計的事項ということはできない実質的な相違点であると認められるから、本件発明1は、引用発明3ではない。 また、本件発明2、5及び6は、本件発明1を引用する発明であるから、引用発明3とは少なくとも上記[相違点C-1]及び[相違点C-2]において相違する。よって、本件発明2、5及び6は、引用発明3ではない。 また、本件発明7との対比においても、少なくとも、上記上記[相違点C-1]及び[相違点C-2]において相違する。よって、本件発明7は、引用発明3ではない。 (2-1-4) 小括 以上のとおり、本件発明1、2、5?7は、引用発明1、引用発明1’、引用発明2、引用発明3のいずれでもないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないとすることはできない。 したがって、本件発明1、2、5?7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。 (2-2) 理由2について (2-2-1) 引用文献1記載の発明に基づく進歩性 ア 本件発明1について 引用文献1には、上記「(2-1-1)」に示したとおりの事項並びに引用発明1及び引用発明1’が記載されている。 そして、本件発明1と引用発明1とは、上記[相違点A-1]及び[相違点A-2]において相違し、その余の点においては一致する。 そこで、上記[相違点A-1]及び[相違点A-2]について検討する。 上記[相違点A-1]について検討すると、引用発明1のアルコール度数約8.0容量%及びアルコールの影響を除いた場合のBrix値の上限(21.307)は、いずれも本件発明1のアルコール度数の上限(7.0%)及びアルコールの影響を除いた場合のBrixの上限(20.0)の範囲外ではあるものの、その程度はわずかなものであるといえ、通常、飲料の味の調整に際して、アルコール度数及び甘さや香りは消費者の嗜好に合わせて適宜に調整され得ることが一般的であることを考慮すれば、引用発明1においても、単に、アルコール度数を微調整して、3.0?7.0%に収まる程度のものとし、糖類や香味料等の配合を微調整して、アルコールの影響を除いた場合のBrixが20.0以内に収まる程度のものとすることは、当業者が通常なし得る範囲の設計的事項であって、格段の困難性は認められない。 一方、上記[相違点A-2]について検討すると、本件発明1は、「対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器」という特定の構造を有する容器を前提に、「アルコール度数が3.0?7.0%」、「アルコールの影響を除いた場合のBrixが15.0?20.0%」であって、そのほか特定の増粘安定剤を含有するシャーベット状飲料用組成物とすることで、当該特定の構造を有する容器からの溶出性に優れるシャーベット状飲料用組成物を得るものであるのに対して、引用発明1は、「ガラス、剛性プラスチック、柔軟性プラスチック製袋、金属、ラミネートされた板紙あるいはこれらいくつかの組合せ等の適切な容器」ではあるものの、その具体的構造として、本件発明1の上記特定の構造に着目するものではない。 そして、引用発明1においては、容器に充填された飲料は、専ら、フローズンカクテル用グラス等の適切な容器へと、注ぎ込まれたり、スプーンですくい取られたりするものであるところ(上記記載事項(2-1-1)ア-8?ア-9)、「対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器」自体が、例えば引用文献5(【0018】スパウト付パウチ)、平成29年4月12日付け意見書に添付された甲第19号証[特開2012-131523号公報](【請求項1】、【図1】凍結飲料用容器)にみられるように本願出願前周知であったとしても、フローズンカクテルなどの凍結アルコール飲料をそのような飲み口部から放出する容器により飲用することまで周知であったとか、普通に行われていたとは認められないし、他にそのようなことを示す証拠もない。 そうすると、上記特定の構造を有する容器を前提としておらず、また、上記特定の構造を有する容器に合わせて飲料の成分組成を調整したものでもない引用発明1において、上記[相違点A-2]に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そして、本件発明1は、上記[相違点A-1]及び[相違点A-2]に係る構成を備えることにより、溶出性に優れた容器入りシャーベット状飲料用組成物(【0010】)を得ることができるという明細書記載の効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2、5及び6について 本件発明2、5及び6は、本件発明1を引用する発明であるから、引用発明1とは少なくとも上記[相違点A-2]において相違する。 よって、上記「ア」の判断を踏まえれば、本件発明1を引用する本件発明2、5及び6は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件発明7について 本件発明7と引用発明1’とは、上記上記[相違点A’-1]及び[相違点A’-2]において相違する。 そこで、上記[相違点A’-2]について検討する。 本件発明7は、「対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器」という特定の構造を有する容器を前提に、当該「容器からのシャーベット状飲料の出し易さを示す溶出性を向上させる方法」であるのに対して、引用発明1’は、「ガラス、剛性プラスチック、柔軟性プラスチック製袋、金属、ラミネートされた板紙あるいはこれらいくつかの組合せ等の適切な容器」を用いるものではあるが、その具体的構造として、本件発明7の上記特定の構造に着目するものではない。 そして、引用発明1’においては、容器に充填された飲料は、専ら、フローズンカクテル用グラス等の適切な容器へと、注ぎ込まれたり、スプーンですくい取られたりするものであるところ(上記記載事項(2-1-1)ア-8?ア-9)、「対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器」自体が、例えば引用文献5(【0018】スパウト付パウチ)、甲第19号証[特開2012-131523号公報](【請求項1】、【図1】凍結飲料用容器)にみられるように本願出願前周知であったとしても、フローズンカクテルなどの凍結アルコール飲料をそのような飲み口部から放出する容器により飲用することまで周知であったとか、普通に行われていたとは認められないし、他にそのようなことを示す証拠もない。 そうすると、上記特定の構造を有する容器を前提としておらず、また、上記特定の構造を有する容器に合わせて飲料の成分組成を調整したものでもない引用発明1’において、上記[相違点A’-2]に係る本件発明7の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そして、本件発明1は、上記[相違点A’-1]及び[相違点A’-2]に係る構成を備えることにより、一定レベルの香味や食感を有するシャーベット状飲料用組成物の溶出性を向上させることができる(【0010】)という明細書記載の効果を奏するものである。 よって、本件発明7は、引用発明1’に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2-2-2) 引用文献2記載の発明に基づく進歩性 ア 本件発明1について 引用文献2には、上記「(2-1-2)」に示したとおりの事項並びに引用発明2が記載されている。 そして、本件発明1と引用発明2とは、上記[相違点B-1]?[相違点B-3]において相違し、その余の点においては一致する。 そこで、上記[相違点B-2]について検討すると、引用発明2は、安定剤及び/又は食感改善剤を含有しないことにより、当該発明の課題を解決するものであり、引用発明2の「安定剤及び/又は食感改善剤」は、本件発明1の「増粘安定剤」に相当するものであるところ、引用発明2に増粘安定剤を含有させることは、安定剤及び/又は食感改善剤を含有しないとする発明の課題解決に反することであり、引用文献2に接した当業者にとってそのようにする動機付けはなく、発明の課題を解決しないものとなる増粘安定剤の適用には、阻害要因があるといえる。 また、引用発明2においてエチルアルコール濃度(8.0v/v%)、糖濃度(13.4w/v%)などの成分の組成比は、増粘安定剤を含有しないことを前提とする組成比であるところ、仮に、増粘安定剤を含有させたとしても、どの程度の量の増粘安定剤を含有させるか、その他の成分の組成比をどのように調整するかは容易ではなく、したがって、アルコールの影響を除いた場合のBrixがどのような値になるかも分からない。 よって、引用発明2において上記[相違点B-2]に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者が容易になし得ることではない。 そして、本件発明1は、上記[相違点B-1]?[相違点B-3]に係る構成を備えることにより、溶出性に優れた容器入りシャーベット状飲料用組成物(【0010】)を得ることができるという明細書記載の効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2、5?7について 本件発明2、5及び6は、本件発明1を引用する発明であるから、引用発明2とは少なくとも上記[相違点B-2]において相違する。 よって、本件発明2、5及び6は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本件発明7との対比においても、少なくとも上記[相違点B-2]において相違する。 よって、本件発明7は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2-2-3) 引用文献3記載の発明に基づく進歩性 ア 本件発明1について 引用文献3には、上記「(2-1-3)」に示したとおりの事項並びに引用発明3が記載されている。 そして、本件発明1と引用発明3とは、上記[相違点C-1]及び[相違点C-2]において相違し、その余の点においては一致する。 そこで、上記[相違点C-2]について検討すると、当該[相違点C-2]についての判断は、実質的に、本件発明1と引用発明1との上記[相違点A-2]についての判断と同様であるといい得るところ、上記「(2-2-1)ア」を踏まえると、本件発明1は、引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2、5?7について 本件発明2、5及び6は、本件発明1を引用する発明であるから、引用発明3とは少なくとも上記[相違点C-1]及び[相違点C-2]において相違する。 よって、本件発明2、5及び6は、引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本件発明7との対比においても、少なくとも上記[相違点C-1]及び[相違点C-2]において相違する。 よって、本件発明7は、引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2-2-4) 引用文献4記載の発明に基づく進歩性 ア 本件発明1について 引用文献4には、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の実施例1?5に関する記載等を参酌すると、 「エタノールの含有量が4.6?8.0wt%であり、水の含有量が45.5?64.0wt%であり、アルコールの影響を除いた場合のBrixが31.2?49.5であり、食感改善剤、乳分、甘味剤及び香味料を含有する、均一に凍らせて氷の結晶が微細であり均一に分散しているプラスチック容器入りアルコール飲料。」の発明(以下「引用発明4」という。) が記載されている。 そこで、本件発明1と引用発明4を対比すると、少なくとも、両者は以下の点で相違する。 [相違点D] アルコールの影響を除いた場合のBrixが、本件発明1は、15.0?20.0%であるのに対して、引用発明4は、31.2?49.5である点。 上記[相違点D]について検討すると、引用発明4のアルコールの影響を除いた場合のBrix値(31.2?49.5)は、本件発明1のBrixの上限(20.0)を相当程度上回る範囲となっており、本件特許明細書【0018】、【0073】【表2】の記載等からみて、当該Brix値において、本件発明1のBrixの範囲のものと同等の効果を奏するとまではいうことはできず、通常、飲料の味の調整に際して、甘さや香りは消費者の嗜好に合わせて適宜に調整され得ることが一般的であるとしても、引用発明4において、糖類や香味料等の配合を調整して、アルコールの影響を除いた場合のBrixが20.0以下にまですることは、当業者が通常なし得る設計的事項の範囲内とはいえない。 よって、本件発明1は、引用発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2、5?7について 本件発明2、5及び6は、本件発明1を引用する発明であるから、引用発明4とは少なくとも上記[相違点D]において相違する。 よって、本件発明2、5及び6は、引用発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本件発明7との対比においても、少なくとも上記[相違点D]において相違する。 よって、本件発明7は、引用発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2-2-5) 引用文献5及び6記載の発明に基づく進歩性 ア 本件発明1について 引用文献5には、【特許請求の範囲】、【0018】及び【0028】?【0034】【表1】の実施例1(特に、シャーベット性状の評価基準が「1」である、実施例1-3、1-5ないし1-7、1-9、1-11)に関する記載等を参酌すると、 「ショ糖及びトレハロースを含み、pHが2.0?4.0であり、増粘剤及び安定剤を含有し、アルコールを含有しない、可溶性固形分が15.0?15.1質量%である、スパウト付パウチ容器入りシャーベット状飲料組成物。」の発明(以下「引用発明5」という。) が記載されている。 そこで、本件発明1と引用発明5を対比すると、少なくとも、両者は以下の点で相違する。 [相違点E] 本件発明1は、アルコール度数が3.0?7.0%となる量のアルコールを含有し、アルコールの影響を除いた場合のBrixが15.0?20.0%であるのに対して、引用発明5は、アルコールを含有しないものである点。 上記[相違点E]について検討する。 引用文献6には、【特許請求の範囲】及び【発明の詳細な説明】の【0006】?【0013】【表1】の実施例1に関する記載等を参酌すると、「糖類及び安定剤を含有し、アルコール又はアルコール類を0.2?5重量%含有する、ソフトスクープ性を有するチューブ入り冷菓。」の発明(以下「引用発明6」という。)が記載されており、ブランデー又はリキュール等の酒類を0.1?5重量%添加し得ることの示唆もなされている(【0008】)。 しかし、引用発明5は、アルコールを含有しないシャーベット状飲料組成物について、ショ糖及びトレハロースを含み、pHを2.0?4.0とすることにより、当該発明の課題を解決するものであるところ、引用発明5にアルコールを添加して、アルコール含有飲料組成物にしようとする動機付けを見出すことはできない。仮に、引用発明5にアルコールを含有させたとしても、アルコールは飲料の味や風味に大きな影響を与える成分であるところ、どの程度の量のアルコールを含有させるか、その他の含有成分の組成比をどのように調整するかは容易ではなく、したがって、アルコールの影響を除いた場合のBrixがどのような値になるかも分からない。 そうすると、引用発明5に引用発明6を適用したとしても、上記[相違点E]に係る本件発明1の構成を得ることは当業者が容易になし得ることではない。 よって、本件発明1は、引用発明5及び6に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2、5?7について 本件発明2、5及び6は、本件発明1を引用する発明であるから、引用発明5とは少なくとも上記[相違点E]において相違する。 よって、本件発明2、5及び6は、引用発明5及び6に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本件発明7との対比においても、少なくとも上記[相違点E]において相違する。 よって、本件発明7は、引用発明5及び6に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2-2-6) 引用文献5及び6記載の可溶性固形分やアルコール類の溶出性に関する効果を加味した、引用文献1?6記載の発明に基づく進歩性 ア 引用文献5及び6記載の可溶性固形分やアルコール類の溶出性に関する効果 引用文献5には、アルコールを含有しないシャーベット状飲料組成物について、ショ糖及びトレハロースを含み、pHを2.0?4.0とするという事項により、なめらかな食感のシャーベット状飲料組成物が得られることが記載されている。また、引用文献5には、「本発明のシャーベット状飲料用飲料/組成物の可溶性固形分量にも限定はなく、例えば、5?30質量%や10?25質量%とすることができる。可溶性固形分量が大きいほど、半凍結してシャーベット状にしたときの氷結晶が小さくなる傾向にある。」という事項が記載されている(【0012】)。 引用文献6は、糖類及び安定剤を含有し、アルコール又はアルコール類を0.2?5重量%含有するという事項により、ソフトスクープ性を有する冷菓が得られることが記載されている。 引用文献5及び6に記載された上記事項は、本件特許明細書記載の「溶出性」を向上させるという効果に相当するものである。 イ 引用文献1又は引用文献3に記載された発明に基づく進歩性 上記(2-2-1)、(2-2-3)に示したとおり、本件発明1は、「対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器」という特定の構造を有する容器を前提に、特定の成分組成のシャーベット状飲料用組成物とすることで、当該特定の構造を有する容器からの溶出性に優れるシャーベット状飲料用組成物を得るものであるところ、引用文献5及び6記載の可溶性固形分やアルコール類の溶出性に関する効果を加味しても、引用発明1において上記[相違点A-2]に係る本件発明1の構成、引用発明1’において上記[相違点A’-2]に係る本件発明7の構成、及び引用発明3において上記[相違点C-2]に係る本件発明1又は7の構成を得ることは、当業者が容易になし得ることではない。 ウ 引用文献2、4、5及び6に記載された発明に基づく進歩性 上記(2-2-2)に示したとおり、引用発明2に増粘安定剤を含有させる動機付けはなく、また、増粘安定剤を適用することには阻害要因があるところ、引用文献5及び6記載の可溶性固形分やアルコール類の溶出性に関する効果を加味しても、引用発明2において、少なくとも上記[相違点B-2]に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者が容易になし得ることではない。 また、上記(2-2-4)に示したとおり、引用発明4のアルコールの影響を除いた場合のBrix値(31.2?49.5)は、本件発明1のBrixの上限(20.0)を相当程度上回る範囲となっているところ、それを20.0以下に低下させることは、上記引用文献5記載の「可溶性固形分量が大きいほど、半凍結してシャーベット状にしたときの氷結晶が小さくなる傾向にある。」という示唆とは整合しない処理を行うものであるから、やはり引用発明4において上記[相違点D]に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。 また、上記(2-2-5)に示したとおり、本件発明1は、引用発明5及び6に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないものであるところ、引用文献5及び6記載の可溶性固形分やアルコール類の溶出性に関する効果を加味しても当該判断が異なることはない。 (2-2-7) 小括 以上のとおり、本件発明1、2、5?7は、引用発明1、引用発明1’、引用発明2、引用発明3、引用発明4又は引用発明5及び6に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、本件発明1、2、5?7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。 2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1) 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要 [理由3] 特許法第36条第6項第2号違反 ・請求項4?6について 請求項4に記載の「ゲルを形成しない」とは、本件特許明細書の発明の詳細な説明をみても不明であり、請求項4に係る発明の範囲を明確に特定することができないため、発明が不明確になっている。請求項4を引用する請求項5及び6についても同様である。 [理由4] 特許法第36条第4項第1号違反 ・請求項4?6について 上記「理由3」のとおり、請求項4?6に係る発明の「ゲルを形成しない」という発明特定事項は不明確であり、発明の詳細な説明をみても、当該発明特定事項について詳細な説明はない。よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項4?6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 なお、平成29年4月12日に提出された意見書における、甲第17号証(特開平10-117763号公報)に基づく特許異議申立人の主張は、特許異議の申立て期間経過後に提出された新たな証拠に基づくものであり、訂正の請求に付随して生じたものとも認められないから、当該主張は採用しない。 (2) 上記特許異議申立理由についての判断 (2-1) 理由3について 上記第2のとおり、本件訂正が認められることにより、請求項4は削除され、「前記増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しない」という記載は、請求項1及び7に加入されたが、当該記載は、その記載のとおりに意味内容を明確に理解することができるから、特許を受けようとする発明は、明確に特定されているものと認められる。 よって、本件発明は、不明確であるとはいえない。 (2-2) 理由4について 上記(2-1)のとおり、「前記増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しない」という記載は、その記載のとおりに意味内容を明確に理解することができ、当該記載により特定される発明特定事項も明確に把握することができる。 そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、 「そして、本実施形態に係る組成物に含有される増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないことが好ましい。2種以上の増粘安定剤を用いることにより、均質性や食感の向上という効果を確実なものとすることができる。そして、増粘安定剤がゲルを形成しないことにより、後記する製造工程におけるハンドリングを極めて容易なものとすることができる。 なお、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないものとしては、例えば、κ-カラギナンとキサンタンガムとの組み合わせなどが挙げられる。一方、ゲルを形成するものとしては、例えば、ローカストビーンガムとキサンタムガムとの組み合せなどが挙げられる。」(【0025】) と記載されており、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載がされているといえる。 (2-3) 小括 以上のとおり、本件特許の請求項1、2、5?7の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえず、また、本件発明についての発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。 したがって、本件発明1、2、5?7に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。 第5 本件特許の請求項3及び4に係る特許異議の申立について 上記第2のとおり、本件訂正が認められることにより、請求項3及び4は削除され、本件特許の請求項3及び4についての本件特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。 よって、本件特許の請求項3及び4についての本件特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1、2、5?7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1、2、5?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 容器入りシャーベット状飲料用組成物、及び溶出性向上方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、容器入りシャーベット状飲料用組成物、及び溶出性向上方法に関する。 【背景技術】 【0002】 果実(果汁入り)飲料、スポーツ飲料、機能性飲料といった様々な清涼飲料水について、液体のままではなく、一旦、冷凍又は半冷凍した後、解凍することにより、シャーベット状飲料として食する方法が知られている。 【0003】 そして、シャーベット状飲料に関する技術について、次のような技術が存在する。 例えば、特許文献1には、ぶどう糖、麦芽糖、デキストリン、及び糖アルコールから選ばれる1種以上の糖類と、ペクチン、及び大豆多糖類の両者を含む多糖類系安定剤とを含有し、糖類の配合量A(重量%)、ペクチンの配合量B(重量%)、大豆多糖類の配合量C(重量%)が所定の関係式で示される条件を満足し、0?30℃で液状化可能であり、かつ0℃未満で凍結可能であるシャーベット状飲料用組成物という技術が開示されている。 【0004】 また、特許文献2には、ぶどう糖、麦芽糖、デキストリン、及びオリゴから選ばれる1種以上の澱粉糖を含む糖類を含有し、糖類のDE値A%、飲料の可溶性固形分B%、液温26℃における飲料の粘度CmPa・sが所定の関係式で示される条件を満足し、0?30℃で液状化可能であり、かつ0℃未満で凍結可能であるシャーベット状飲料用組成物という技術が開示されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】特許第4072178号公報 【特許文献2】特許第3930532号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 通常、シャーベット状飲料用組成物は、PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルなどのプラスチック製の容器に充填された状態で市場に流通している。このように容器に充填されたシャーベット状飲料用組成物をシャーベット状飲料として食する場合、容器ごと冷凍又は半冷凍した後、解凍し、容器を外側から手で押すことにより、容器内部のシャーベット状飲料を比較的小さな飲み口部から押し出す必要がある。 したがって、シャーベット状飲料用組成物は、香味、食感といった評価と同様、プラスチック製の容器からのシャーベット状飲料の出し易さ(以下、適宜「溶出性」という)という評価も非常に重要視される。 【0007】 ここで、特許文献1、2に開示された技術は、ぶどう糖、麦芽糖、デキストリンといった澱粉糖を必須の構成要素とするだけでなく、各原料の含有量又は性状について関係式を用いて詳細に規定することにより、味、食感、シャーベット性状などの評価結果を良好なものとさせている。 しかし、シャーベット状飲料用組成物に関する技術として、特許文献1、2に開示された技術とは異なるとともに、これまでに全く無かったアプローチにより、溶出性を向上させる技術が望まれている。 【0008】 そこで、本発明は、シャーベット状飲料に要求されるレベルの香味や食感を有するとともに、溶出性に優れる容器入りシャーベット状飲料用組成物、及び溶出性向上方法を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 前記課題は、以下の手段により解決することができる。 (1)アルコール度数が3.0?7.0%であり、アルコールの影響を除いた場合のBrixが15.0?20.0%であり、増粘安定剤を含有するシャーベット状飲料用組成物であり、前記増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないものであり、前記シャーベット状飲料用組成物が、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器に充填されていることを特徴とする容器入りシャーベット状飲料用組成物。 (2)砂糖を含有することを特徴とする前記(1)に記載の容器入りシャーベット状飲料用組成物。 (3)(削除) (4)(削除) (5)果汁を含有することを特徴とする前記(1)又は前記(2)に記載の容器入りシャーベット状飲料用組成物。 (6)前記容器がプラスチック製の容器であることを特徴とする前記(1)、前記(2)、前記(5)のいずれか1つに記載の容器入りシャーベット状飲料用組成物。 (7)プラスチック製の容器からのシャーベット状飲料の出し易さを示す溶出性を向上させる方法であって、前記容器は、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器であり、増粘安定剤を含有するシャーベット状飲料用組成物について、アルコール度数と、アルコールの影響を除いた場合のBrixと、を以下の範囲に調整し、前記増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないことを特徴とする溶出性向上方法。(1)アルコール度数:3.0?7.0%、(2)アルコールの影響を除いた場合のBrix:15.0?20.0% 【発明の効果】 【0010】 本発明に係る容器入りシャーベット状飲料用組成物によると、アルコール度数が所定範囲内であり、アルコールの影響を除いた場合のBrixが所定範囲内であることから、シャーベット状飲料に要求されるレベルの香味や食感を有するとともに、溶出性に優れたものとなる。 また、本発明に係る溶出性向上方法によると、Brixの値が所定範囲内の組成物にアルコールを添加することから、一定のレベルの香味や食感を有するシャーベット状飲料用組成物の溶出性を向上させることができる。 【図面の簡単な説明】 【0011】 【図1】本発明の一実施形態に係るシャーベット状飲料用組成物の製造方法の内容を説明するフローチャートである。 【図2】本発明の他の実施形態に係るシャーベット状飲料用組成物の製造方法の内容を説明するフローチャートである。 【図3】本発明の他の実施形態に係るシャーベット状飲料用組成物の製造方法の内容を説明するフローチャートである。 【発明を実施するための形態】 【0012】 以下、本発明に係るシャーベット状飲料用組成物、容器入り組成物、溶出性向上方法、及び飲料用組成物を実施するための形態(実施形態)について説明する。 【0013】 [シャーベット状飲料用組成物] 本実施形態に係るシャーベット状飲料用組成物(以下、適宜「組成物」という)は、アルコール度数が所定範囲内であり、アルコールの影響を除いた場合のBrixが所定範囲内であることを特徴とし、0℃未満で凍結可能である。 そして、本実施形態に係る組成物は、凍結させる前の0℃以上の温度条件下では、液体状又はゼリー状(ゲル状)であり、0℃未満で凍結させた後、解凍することにより、「シャーベット状飲料」として食することができる。 なお、シャーベット状飲料用組成物とは、「シャーベット状飲料用」という用途に用いる組成物であり、最終的にシャーベット状飲料として消費される可能性のある組成物であればよい。 本実施形態に係る飲料用組成物は、液体状又はゼリー状(ゲル状)を呈する。なお、本実施形態に係る飲料用組成物の構成は、本実施形態に係るシャーベット状飲料用組成物と同じであるので、以下ではその説明を省略する。 【0014】 (アルコール度数) 本実施形態に係る組成物は、アルコール度数が1.5?8.5%(「v/v%」とも表される)である。 そして、アルコールは、シャーベット状飲料の香味を変化(アルコール感を付与)させたり食感を向上させたりできるだけでなく、容器からのシャーベット状飲料の出し易さを示す「溶出性」を向上させる。 【0015】 アルコール度数が1.5%以上であることにより、溶出性の向上という効果を得ることができる。加えて、シャーベット状飲料の食感や、シャーベット状飲料の状態の均一性(以下、適宜「均質性」という)を向上させることができる。そして、これらの効果(特に、溶出性の向上という効果)をより確実なものとするため、アルコール度数は、2.0%以上が好ましく、2.5%以上がさらに好ましく、3.0%以上が特に好ましい。 一方、アルコール度数が8.5%以下であることにより、アルコール感が強すぎてしまってシャーベット状飲料の香味として適さなくなるような事態を回避することができる。そして、シャーベット状飲料としてより好適な香味とするため、アルコール度数は、8.0%以下が好ましく、7.0%以下がさらに好ましい。 【0016】 そして、アルコール度数は、アルコールを添加することによって調節することができる。添加するアルコールは、飲用アルコールであればよく、種類、製法、原料などは限定されない。例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカなどの各種スピリッツ、原料用アルコールなどを1種又は2種以上を組み合わせて添加することができる。 なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。 【0017】 (Brix) 本実施形態に係る組成物は、アルコールの影響を除いた場合のBrixが9.0?25.0%である。 ここで、Brixとは、屈折率計で測定した屈折率を、国際砂糖分析法統一委員会(ICUMSA)で定められた換算式により、ショ糖液100g中に含まれるショ糖のグラム数に換算した値であり、いわゆる可溶性固形分濃度である。ただし、組成物にアルコールが含まれる場合、アルコールが屈折率に影響を及ぼすため、Brixの値は、アルコールによっても左右されてしまう。したがって、本発明では「アルコールの影響を除いた場合のBrix」の値を基準として採用している。なお、「アルコールの影響を除いた場合」とは「アルコールを同量の水に置き換えた場合」と言い換えることもできる。ここで、同量とは、詳細には、同じ容積のことである。 そして、「アルコールの影響を除いた場合のBrix」は、シャーベット状飲料に要求される香味(甘さ)を調節したり食感を向上させたりできるだけでなく、容器からのシャーベット状飲料の出し易さを示す「溶出性」を向上させる。 【0018】 アルコールの影響を除いた場合のBrixが9.0%以上であることにより、シャーベット状飲料の香味(甘さ)や食感を向上させることができるとともに、溶出性の向上という効果を得ることができる。そして、これらの効果(特に、溶出性の向上という効果)をより確実なものとするため、アルコールの影響を除いた場合のBrixは、13.0%以上が好ましく、15.0%以上がさらに好ましい。 一方、アルコールの影響を除いた場合のBrixが25.0%以下であることにより、甘さが強すぎてしまってシャーベット状飲料の香味として適さなくなるような事態を回避することができる。そして、シャーベット状飲料としてより好適な香味とするため、アルコールの影響を除いた場合のBrixは、23.0%以下が好ましく、20.0%以下がさらに好ましい。 【0019】 組成物全体のBrixの値は、従来公知の屈折率計で測定することができる。したがって、「アルコールの影響を除いた場合」のBrixの値は、例えば、アルコール度数が5%の組成物の場合、アルコールを同量の水に置き換えた以外は同一である組成物を調製し、屈折率計で測定することで、概算することができる。 また、例えば、アルコール度数が5%の組成物の場合、組成物のBrixの値を屈折率計で測定し、別途、アルコール度数が5%となるように調整した水溶液のBrixの値を屈折率計で測定し、前者のBrixの値から後者のBrixの値を減算するという方法で求めてもよい。 【0020】 (砂糖) 本実施形態に係る組成物は、砂糖を含有しているのが好ましい。 ここで、砂糖とは、ショ糖(スクロース)を主成分とする甘味調味料であり、例えば、上白糖、グラニュー糖、白双糖、三温糖、中双糖、角砂糖、氷砂糖、液糖、和三盆、黒砂糖などを挙げることができる。そして、砂糖として、これらの中から1種又は2種以上を使用することができる。 なお、砂糖の含有量については、特に限定されないが、シャーベット状飲料として好適な香味(甘さ)とするために、例えば、70.0g/L以上が好ましく、110g/L以上がより好ましく、120g/L以上がさらに好ましく、130g/L以上が特に好ましく、140g/L以上が非常に好ましい。また、甘さが強すぎてしまってシャーベット状飲料の香味として適さなくなるような事態を回避するため、例えば、400g/L以下、300g/L以下が好ましく、230g/L以下がより好ましく、200g/L以下がさらに好ましく、180g/L以下が特に好ましく、170g/L以下が非常に好ましい。 【0021】 なお、前記のとおり、特許文献1、2に開示された技術は、澱粉糖を必須の構成要素として設けており、澱粉糖の代わりに砂糖を用いた場合には、シャーベット性状(溶出性)などの評価について好ましい結果が得られていなかった(特許文献2の表1の比較例2などを参照)。つまり、甘味料の中でも砂糖を用いた場合に、シャーベット状飲料用組成物の溶出性などを向上させる必要があるという課題が明確に現れることとなる。 そこで、本発明者は、特許文献1、2に開示された技術とは異なり、組成物に用いる甘味料を限定することなく、言い換えると、前記した「砂糖」を含有する場合であっても、効果(香味、食感、及び溶出性の向上)が得られるような構成である本発明を創出した。 【0022】 (増粘安定剤) 本実施形態に係る組成物は、増粘安定剤を含有しているのが好ましい。 ここで、増粘安定剤とは、飲食品に粘性などを付与する食品添加剤であり、用途に応じて、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊料とも呼ばれる。そして、増粘安定剤は、例えば、アルギン酸、カシアガム、カードラン、カラギナン、カラヤガム、キサンタンガム、グァーガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、タラガム、プルラン、ペクチン、ローカストビーンガムなどが挙げられる。そして、増粘安定剤として、これらの中から1種又は2種以上を使用することができる。 【0023】 本実施形態に係る組成物が増粘安定剤を含有する場合、当該増粘安定剤は組成物中において網目構造を呈することから、組成物を構成する各物質が均一に分散することとなる。その結果、本実施形態に係る組成物を凍結させた場合、各物質が均一に分散した状態で凍結することから、解凍した際に微細な氷の結晶を含んだシャーベット状飲料となり、液体と固体とに分離してしまうような状況を回避することができる。 したがって、本実施形態に係る組成物は増粘安定剤を含有することにより、シャーベット状飲料の均質性を向上させることができるとともに、舌触りが良く、滑らかな状態となることから、食感も向上させることができる。 【0024】 なお、凍結させる前の0℃以上の温度条件下において、本実施形態に係る組成物が、液体状、ゼリー状(ゲル状)のいずれになるのかは、増粘安定剤の添加の有無、並びに含有する増粘安定剤の種類及び含有量により決定される。 【0025】 そして、本実施形態に係る組成物に含有される増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないことが好ましい。2種以上の増粘安定剤を用いることにより、均質性や食感の向上という効果を確実なものとすることができる。そして、増粘安定剤がゲルを形成しないことにより、後記する製造工程におけるハンドリングを極めて容易なものとすることができる。 なお、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないものとしては、例えば、κ-カラギナンとキサンタンガムとの組み合わせなどが挙げられる。一方、ゲルを形成するものとしては、例えば、ローカストビーンガムとキサンタムガムとの組み合せなどが挙げられる。 【0026】 増粘安定剤の含有量については、特に限定されないが、0.005?2.00w/v%が好ましく、0.01?1.00w/v%が特に好ましい。 【0027】 (果汁) 本実施形態に係る組成物は、果汁を含有しているのが好ましい。 ここで、果汁とは、果実の搾汁であり、濃縮果汁、還元果汁、ストレート果汁といった各種果汁だけでなく、果実ピューレ(火を通した果実あるいは生の果実をすりつぶしたり裏ごししたりした半液体状のもの)も含まれ、これらの希釈液、濃縮液、混合液なども含まれる。さらに、果汁は、1種類の果実を原料としてもよいし、2種類以上の果実を原料としてもよい。 なお、本実施形態に係る組成物は果汁を含有することにより、シャーベット状飲料に様々な果実の香味を付与することができる。 【0028】 そして、本発明において使用する果汁の原料となる果実としては、特に限定されず、食用のものであれば、いずれの果実も使用できる。 例えば、果実としては、オレンジ、ミカン、温州ミカン、夏ミカン、ハッサク、ユズ、イヨカン、ポンカン、カボス、シイクワシャー、レモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘類果実、パイナップル、グアバ、バナナ、マンゴー、キウイ、アセロラ、パパイヤ、パッションフルーツなどの熱帯果実、ナシ(日本ナシ、西洋ナシなど)、リンゴなどの仁果類果実、梅、桃、スモモ、アンズなどの核果類果実、ラズベリー、クランベリー、ブルーベリー、カシス、チェリー、ブドウ、メロン、カキなどが挙げられる。 【0029】 なお、果汁の含有量については、特に限定されないが、前記した「アルコールの影響を除いた場合のBrix」の値が所定範囲内になるように含有量を調節すればよい。 【0030】 (その他) 本実施形態に係る組成物は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される着色料、酸味料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料など(以下、単に添加剤という。)を添加することもできる。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素などを用いることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸、コハク酸などを用いることができる。甘味料としては、前記した砂糖以外にも、例えば、グルコース(ブドウ糖)、マルトース(麦芽糖)、デキストリンといった澱粉糖(澱粉を原料にして加水分解などにより作られた糖)などを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、アセスルファムK、スクラロース、アスパルテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンEなどを用いることができる。 【0031】 なお、前記のとおり、本実施形態に係る組成物は、澱粉糖を含有してもよいが、本発明において、澱粉糖は必須の構成要素ではない。 そして、前記したアルコール、砂糖、増粘安定剤、果汁、添加剤は、一般に市販されているものを使用することができる。 【0032】 以上説明したように、本実施形態に係る組成物によれば、アルコール度数が所定範囲内であるとともに、アルコールの影響を除いた場合のBrixが所定範囲内であることから、シャーベット状飲料に要求されるレベルの香味や食感を有するとともに、溶出性に優れたものとなる。 【0033】 [容器入り組成物] 本実施形態に係る容器入り組成物は、前記したシャーベット状飲料用組成物が、プラスチック製の容器に充填されていることを特徴とする。 なお、シャーベット状飲料用組成物については、既に説明しているので、以下ではその説明を省略する。 【0034】 (容器) 本実施形態に係る容器とは、プラスチック製の容器である。そして、本実施形態に係る容器とは、詳細には、対象物を内部に保持する本体部と、当該本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、本体部に外側から圧力が加えられることにより、飲み口部から対象物を放出する容器である。 【0035】 そして、本実施形態に係る容器は、プラスチック製であればよく、PET(ポリエチレンテレフタレート)容器、PP(ポリプロピレン)容器、PE(ポリエチレン)容器、ナイロン容器、PPや金属箔を積層加工したフィルムで構成される容器などが該当する。具体的には、ペットボトル、パウチ容器などが該当する。 【0036】 [シャーベット状飲料用組成物の製造方法] 次に、本実施形態に係るシャーベット状飲料用組成物の製造方法を説明する。 本実施形態に係るシャーベット状飲料用組成物の製造方法は、混合工程S1と、後処理工程S2と、を含む。そして、シャーベット状飲料用組成物に増粘安定剤を含有させる場合は、さらに、溶解工程S3を含む。 【0037】 なお、各工程の順序について、シャーベット状飲料用組成物に増粘安定剤を含有させない場合は、図1に示す「(1)混合工程S1→後処理工程S2」、シャーベット状飲料用組成物に増粘安定剤を含有させる場合は、図2に示す「(2)混合工程S1→溶解工程S3→後処理工程S2」、又は図3に示す「(3)溶解工程S3→混合工程S1→後処理工程S2」、と様々な順序が考えられるため、場合を分けて説明する。 【0038】 (1)の場合 混合工程S1では、混合タンクに、水、アルコール、砂糖、果汁、添加剤などを投入して混合後液を製造する。 そして、後処理工程S2では、混合後液のろ過(いわゆる一次ろ過に相当)、混合後液の精密ろ過(いわゆる二次ろ過に相当)、容器への充填、加熱殺菌、冷却などの処理を必要に応じて選択的に行う。 【0039】 なお、混合工程S1及び後処理工程S2にて行われる各処理は、Ready To Drink(RTD)飲料などを製造するために一般的に用いられている設備にて行うことができる。 【0040】 (2)の場合 混合工程S1では、混合タンクに、(1)の場合に例示したものに加えて、増粘安定剤を投入して混合後液を製造する。 そして、溶解工程S3では、増粘安定剤を混合後液中に溶解させる。なお、溶解工程S3では、通常、加熱することにより増粘安定剤を溶解させるが、加熱温度や加熱時間については、使用する増粘安定剤の溶解度に応じて適宜設定すればよい。 そして、後処理工程S2では、(1)の場合と同様の処理を必要に応じて選択的に行う。 【0041】 なお、増粘安定剤としてゲル化するものを使用する場合、混合後液がゲル化することにより容器への充填などの処理が困難になってしまうのを防止するため、溶解工程S3後の各処理は、混合後液を所定温度以上(ゲル化する温度以上)に保ちながら行う必要がある。 そして、混合後液を所定温度以上に保つ処理や、溶解工程S3における加熱処理において、混合液中のアルコールが揮発してしまう可能性がある。よって、アルコールの揮発が発生した場合(又は予想される場合)は、後処理工程S2においてアルコールを再度添加するか、混合工程S1においてアルコールを多めに投入するのが好ましい。 【0042】 (3)の場合 溶解工程S3では、まず、少量の溶媒(水など)に増粘安定剤を溶解させる。 そして、混合工程S1では、混合タンクに、(1)の場合に例示したものに加えて、増粘安定剤を溶解させた溶液を投入して混同後液を製造する。 そして、後処理工程S2では、(1)の場合と同様の処理を必要に応じて選択的に行う。 【0043】 なお、(3)の場合は、アルコールを含有した混合後液に対して溶解工程S3を行う(2)の場合と比較すると、溶解工程S3での加熱によるアルコールの揮発を防止することができる。さらに、増粘安定剤としてゲル化しないものを使用する場合、溶解工程S3の後は、加熱殺菌時を除き、常温(又は低温)で作業が可能である。 したがって、シャーベット状飲料用組成物に増粘安定剤を含有させる場合は、増粘安定剤としてゲル化しないものを選択するとともに、「(3)溶解工程S3→混合工程S1→後処理工程S2」を採用することにより、極めて効率的にシャーベット状飲料用組成物を製造することができる。 【0044】 [溶出性向上方法] 次に、本実施形態に係る溶出性向上方法について説明する。 本実施形態に係る溶出性向上方法は、Brixが所定範囲内であるシャーベット状飲料用組成物にアルコールを添加することを特徴とする。 【0045】 アルコールは、前記のとおり、シャーベット状飲料の香味を変化(アルコール感を付与)させたり食感を向上させたりできるだけでなく、容器からのシャーベット状飲料の出し易さを示す「溶出性」を向上させる。 そして、本実施形態に係る溶出性向上方法は、溶出性の向上という効果を確実なものとするため、組成物のアルコール度数が1.5%以上となるように添加するのが好ましく、2.0%以上、2.5%以上となるように添加するのがさらに好ましく、3.0%以上となるように添加するのが特に好ましい。 一方、アルコールの添加量が多すぎると、アルコール感が強すぎてしまってシャーベット状飲料の香味として適さなくなるため、組成物のアルコール度数が8.5%以下となるように添加するのが好ましく、8.0%以下となるように添加するのがさらに好ましく、7.0%以下となるように添加するのが特に好ましい。 【0046】 なお、アルコールの添加対象であるシャーベット状飲料用組成物は、Brixが9.0?25.0%である。組成物のBrixが9.0?25.0%であることにより、アルコールの添加による溶出性の向上という効果を確実なものとすることができるとともに、シャーベット状飲料の香味として好適なものとなる。 【0047】 以上説明したように、本実施形態に係る溶出性向上方法によれば、Brixの値が所定範囲内の組成物にアルコールを添加することから、一定のレベルの香味や食感を有するシャーベット状飲料用組成物の溶出性を向上させることができる。 【0048】 なお、本発明の実施形態に係るシャーベット状飲料用組成物、容器入り組成物、溶出性向上方法、及び飲料用組成物において、明示していない特性や条件については、従来公知のものであればよく、前記特性や条件によって得られる効果を奏する限りにおいて、限定されないことは言うまでもない。 【実施例1】 【0049】 次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明に係るシャーベット状飲料用組成物、容器入り組成物、溶出性向上方法、及び飲料用組成物について説明する。 まず、実施例1では、アルコール添加の有無が、溶出性、香味、食感などに与える影響について確認する。 【0050】 [サンプルの準備] 表1に示す配合量となるように、飲料アルコール、グラニュー糖、桃果汁、酸味料、ビタミンC、香料、水を混合してサンプル液を準備した。そして、ペットボトルに容器詰めすることで、サンプル1-1、1-2を製造した。 なお、ペットボトルは、容量が280ml、サイズ(外寸)がφ66.0mm×136.0mm(h)、キャップが28mmφフラップキャップ、であるものを使用し、このペットボトルにサンプル液を280ml充填した。 【0051】 [Brixの測定] 各サンプルのBrix及びアルコールの影響を除いた場合のBrixの値については、デジタル屈折計(RX-5000α:ATAGO社製)を用いて測定及び概算した。 なお、各サンプルのBrixの測定は、サンプルを冷凍する前の状態(液体状態)で行った。 【0052】 [官能試験:実施例1] 前記の方法により準備した各サンプルを冷凍(-20℃、48時間)した後、解凍(25℃、60分放置)し、下記の各官能試験に供した。 【0053】 (食感評価:評価方法) 前記の方法により準備したサンプルの食感について、訓練された専門のパネル7名が下記評価基準に則って0?4点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。 【0054】 (食感評価:評価基準) 4点:舌触りが極めて良く、極めて滑らかである。 3点:舌触りがかなり良く、かなり滑らかである。 2点:舌触りが良く、滑らかである。 1点:舌触りが若干悪く、滑らかさがあまり感じられない。 0点:舌触りが悪く、滑らかさが感じられない。 【0055】 (甘さ評価:評価方法) 前記の方法により準備したサンプルの甘さについて、訓練された専門のパネル7名が下記評価基準に則って0?4点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。 【0056】 (甘さ評価:評価基準) 4点:甘さが極めて強い。 3点:甘さが強い。 2点:甘さがある。 1点:甘さが若干ある。 0点:甘さは感じられない。 【0057】 (均質性評価:評価方法) 前記の方法により準備したサンプルの均質性について、訓練された専門のパネル7名が下記評価基準に則って0?4点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。 なお、均質性については、サンプルを1口、2口、3口、食した際、香味が均一か否かで評価した。 【0058】 (均質性評価:評価基準) 4点:香味が完全に均一である。 3点:香味が均一である。 2点:香味がほぼ均一である。 1点:香味が若干均一でない。 0点:香味が均一でない。 【0059】 (総合評価:評価方法) 前記の方法により準備したサンプルの総合評価について、訓練された専門のパネル7名が下記評価基準に則って0?4点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。 なお、総合評価については、シャーベット状飲料として、好適な香味(香り及び味)であるか否かを総合的に評価した。 【0060】 (総合評価:評価基準) 4点:シャーベット状飲料として非常に好適な香味である。 3点:シャーベット状飲料としてかなり好適な香味である。 2点:シャーベット状飲料として好適な香味である。 1点:シャーベット状飲料として許容できる香味である。 0点:シャーベット状飲料として不適な香味である。 【0061】 (溶出性評価:評価方法) 前記の方法により準備したサンプルの溶出性について、訓練された専門のパネル7名が下記評価基準に則って0?4点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。 なお、溶出性評価については、前記した容器の外側を手で押した際、容器からサンプル(シャーベット状飲料)が出し易いか否かで評価した。 【0062】 (溶出性評価:評価基準) 4点:容器からサンプルが非常に出し易い。 3点:容器からサンプルがかなり出し易い。 2点:容器からサンプルが出し易い。 1点:容器からサンプルが少し出し難い。 0点:容器からサンプルが出し難い。 【0063】 [機械試験:実施例1] 前記の官能試験と同様、各サンプルを冷凍(-20℃、48時間)した後、解凍(23℃、75分放置)し、下記の機械試験に供した。 【0064】 (機械試験:評価方法) 溶出性評価について、より定量的な評価を行うために、圧縮試験機(材料試験機)を用いて機械試験を行った。 ここで、圧縮試験機(RTF-1350:オリエンテック社製)は、ペットボトルを横に寝かせた状態で載置できる載置部と、載置部に載置されたペットボトルを上方から押圧するように載置部の真上から降下する押圧部と、を備える。そして、載置部と押圧部とには、クッション材が設けられており、このクッション材を介してペットボトルの両側面に圧力が加えられるようになっている。 なお、圧縮試験機の詳細な条件は、人の手でペットボトルを押圧する状況を模擬し、以下のように設定した。 押圧部により負荷される圧力:250N、500mm/min 載置部のクッション材とペットボトルとの接触面積:70×95mm 押圧部のクッション材とペットボトルとの接触面積:50×75mm 【0065】 (機械試験:評価基準) 各サンプルを前記方法によって2回ずつ試験を行い、ペットボトルの飲み口から押し出されたシャーベット状飲料の量(g)を測定した。 そして、各サンプルについて、ペットボトルの飲み口から押し出されたシャーベット状飲料の量(g)の平均値を算出し、当該量が多ければ多いほど、溶出性が良いと評価した。 【0066】 以下、表1には、各サンプルの規格を示すとともに、官能試験、及び機械試験の結果を示す。 なお、表中、及び後記する「Brix(アルコールの影響を除いた場合)」とは、「アルコールの影響を除いた場合のBrix」を示している。 【0067】 【表1】 【0068】 [試験結果の検討:実施例1] アルコールを添加したサンプル1-1について、アルコールを添加させていないサンプル1-2と比較すると、「溶出性」において、官能試験では「0」→「4」、機械試験では「21.2(g)」→「48.2(g)」と大幅に向上したことが確認できた。 また、サンプル1-1について、サンプル1-2と比較すると、「食感」については、「1.0」→「2.9」、「均質性」については、「1.3」→「2.3」、「総合評価」については、「1.4」→「2.7」と、それぞれ向上したことが確認できた。 以上より、実施例1の結果によると、シャーベット状飲料組成物にアルコールを添加することにより、「溶出性」を大幅に向上させることができるとともに、「食感」、「均質性」、「総合評価」を良好にできることが確認できた。 【実施例2】 【0069】 次に、実施例2では、Brixの値が、溶出性、香味、食感などに与える影響について確認する。 【0070】 [サンプルの準備] 表2に示す配合量となるように、飲料アルコール、グラニュー糖、桃果汁、酸味料、ビタミンC、香料、増粘安定剤(κ-カラギナンとキサンタンガム)、水を混合してサンプル液を準備した。なお、増粘安定剤は、事前に少量の水に加熱(90℃、10min)しながら溶解させて溶解液を作成した後、混合した。そして、実施例1と同様のペットボトルに容器詰めすることで、サンプル2-1?2-5を製造した。 また、「Brixの測定」については実施例1と同様であるので、説明を省略する。 【0071】 [官能試験:実施例2] 前記の方法により準備した各サンプルを冷凍(-20℃、48時間)した後、解凍(25℃、60分放置)し、各官能試験に供した。 なお、各官能試験の評価方法、及び評価基準については実施例1と同様であるので、説明を省略する。 【0072】 以下、表2には、各サンプルの規格を示すとともに、官能試験の結果を示す。 【0073】 【表2】 【0074】 [試験結果の検討:実施例2] サンプル2-1?2-5の溶出性の評価を確認すると、「Brix(アルコールの影響を除いた場合)」の値が13.0%(9.0%以上)であるサンプル2-2が「3.0:かなり出し易い」というかなり好ましい評価が得られることが確認できた。特に、「Brix(アルコールの影響を除いた場合)」の値が15.0%以上のサンプル2-3?2-5については、「4.0:非常に出し易い」という非常に好ましい評価が得られることが確認できた。 また、「Brix(アルコールの影響を除いた場合)」の値が9.0?25.0%の範囲内であるサンプル2-2?2-5については、全ての官能試験において、おおむね良好な結果が得られることが確認できた。ただ、Brixの値が高すぎると、若干甘さが際立つことにより「総合評価」が低下することも確認できた。 【0075】 以上より、実施例2の結果によると、「Brix(アルコールの影響を除いた場合)」の値が9.0%以上であるシャーベット状飲料組成物は、「溶出性」の向上という効果を確実に得ることができることがわかった。また、「Brix(アルコールの影響を除いた場合)」の値が9.0?25.0%であるシャーベット状飲料組成物は、「食感」、「甘さ」、「均質性」、「総合評価」について、おおむね良好な結果が得られることもわかった。 【実施例3】 【0076】 次に、実施例3では、アルコール度数が、溶出性、香味、食感などに与える影響について確認する。 【0077】 [サンプルの準備] 表3に示す配合量となるように、飲料アルコール、グラニュー糖、桃果汁、酸味料、ビタミンC、香料、増粘安定剤(κ-カラギナンとキサンタンガム)、水を混合してサンプル液を準備した。なお、増粘安定剤は、事前に少量の水に加熱(90℃、10min)しながら溶解させて溶解液を作成した後、混合した。そして、実施例1と同様のペットボトルに容器詰めすることで、サンプル3-1?3-6を製造した。 また、「Brixの測定」については実施例1と同様であるので、説明を省略する。 【0078】 [官能試験:実施例3] 前記の方法により準備した各サンプルを冷凍(-20℃、48時間)した後、解凍(25℃、60分放置)し、各官能試験に供した。 なお、各官能試験の評価方法、及び評価基準については実施例1と同様であるので、説明を省略する。 【0079】 以下、表3には、各サンプルの規格を示すとともに、官能試験の結果を示す。 【0080】 【表3】 【0081】 [試験結果の検討:実施例3] サンプル3-1?3-6の溶出性の評価を確認すると、アルコール度数が2.0%(1.5%以上)であるサンプル3-3が「2.0:出し易い」という好ましい評価が得られることが確認できた。特にアルコール度数が4.0%以上のサンプル3-4?3-6については、「4.0:非常に出し易い」という非常に好ましい評価が得られることが確認できた。 また、アルコール度数が1.5?8.5%の範囲内であるサンプル3-3?3-6については、全ての官能試験において、おおむね良好な結果が得られることが確認できた。ただ、アルコール度数が高すぎると若干苦みが際立つことにより「総合評価」が低下することも確認できた。 【0082】 以上より、実施例3の結果によると、アルコール度数が1.5%以上であるシャーベット状飲料組成物は、「溶出性」の向上という効果を確実に得ることができることがわかった。また、アルコール度数が1.5?8.5%であるシャーベット状飲料組成物は、「食感」、「甘さ」、「均質性」、「総合評価」において、おおむね良好な結果が得られることもわかった。 【実施例4】 【0083】 次に、実施例4では、増粘安定剤が、溶出性、香味、食感などに与える影響について確認する。 【0084】 [サンプルの準備] 表4に示す配合量となるように、飲料アルコール、グラニュー糖、桃果汁、酸味料、ビタミンC、香料、増粘安定剤(κ-カラギナンとキサンタンガム)、水を混合してサンプル液を準備した。なお、増粘安定剤は、事前に少量の水に加熱(90℃、10min)しながら溶解させて溶解液を作成した後、混合した。そして、実施例1と同様のペットボトルに容器詰めすることで、サンプル4-1、4-2を製造した。 また、「Brixの測定」については実施例1と同様であるので、説明を省略する。 【0085】 [官能試験:実施例4] 前記の方法により準備した各サンプルを冷凍(-20℃、48時間)した後、解凍(25℃、60分放置)し、各官能試験に供した。 なお、各官能試験の評価方法、及び評価基準については実施例1と同様であるので、説明を省略する。 【0086】 以下、表4には、各サンプルの規格を示すとともに、官能試験の結果を示す。 【0087】 【表4】 【0088】 [試験結果の検討:実施例4] 増粘安定剤を添加したサンプル4-1について、増粘安定剤を添加させていない4-2と比較すると、「食感」については、「2.9」→「3.3」、「均質性」については、「2.3」→「3.3」、総合評価については「2.7」→「3.4」と、それぞれ向上したことが確認できた。 以上より、実施例4の結果によると、シャーベット状飲料組成物に増粘安定剤を添加することにより、「食感」、「均質性」、「総合評価」を良好にできることがわかった。 【符号の説明】 【0089】 S1 混合工程 S2 後処理工程 S3 溶解工程 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 アルコール度数が3.0?7.0%であり、 アルコールの影響を除いた場合のBrixが15.0?20.0%であり、 増粘安定剤を含有するシャーベット状飲料用組成物であり、 前記増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないものであり、 前記シャーベット状飲料用組成物が、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器に充填されていることを特徴とする容器入りシャーベット状飲料用組成物。 【請求項2】 砂糖を含有することを特徴とする請求項1に記載の容器入りシャーベット状飲料用組成物。 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】 果汁を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の容器入りシャーベット状飲料用組成物。 【請求項6】 前記容器がプラスチック製の容器であることを特徴とする請求項1、2、5のいずれか1項に記載の容器入りシャーベット状飲料用組成物。 【請求項7】 プラスチック製の容器からのシャーベット状飲料の出し易さを示す溶出性を向上させる方法であって、 前記容器は、対象物を内部に保持する本体部と、前記本体部の内部と外部とを連通する飲み口部とを有するとともに、前記本体部に外側から圧力が加えられることにより、前記飲み口部から前記対象物を放出する容器であり、 増粘安定剤を含有するシャーベット状飲料用組成物について、アルコール度数と、アルコールの影響を除いた場合のBrixと、を以下の範囲に調整し、 前記増粘安定剤は、2種以上の増粘安定剤で構成されるとともに、ゲルを形成しないことを特徴とする溶出性向上方法。 (1)アルコール度数:3.0?7.0% (2)アルコールの影響を除いた場合のBrix:15.0?20.0% |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-06-02 |
出願番号 | 特願2014-48068(P2014-48068) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YAA
(C12G)
P 1 651・ 537- YAA (C12G) P 1 651・ 113- YAA (C12G) P 1 651・ 121- YAA (C12G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 柴原 直司 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
千壽 哲郎 山崎 勝司 |
登録日 | 2015-10-02 |
登録番号 | 特許第5816711号(P5816711) |
権利者 | サッポロビール株式会社 |
発明の名称 | 容器入りシャーベット状飲料用組成物、及び溶出性向上方法 |
代理人 | 多田 悦夫 |
代理人 | 特許業務法人磯野国際特許商標事務所 |
代理人 | 特許業務法人磯野国際特許商標事務所 |
代理人 | 多田 悦夫 |