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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H04N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04N
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H04N
管理番号 1331173
異議申立番号 異議2016-701149  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-15 
確定日 2017-06-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5935738号発明「画像読取装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5935738号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、9について訂正することを認める。 特許第5935738号の請求項1-3、6-9に係る特許を維持する。 特許第5935738号の請求項4、5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5935738号の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成25年3月29日に特許出願され、平成28年5月20日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人椎名彊により特許異議の申立てがされ、平成29年1月24日付けで取消理由が通知され、平成29年3月31日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人椎名彊から平成29年5月19日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)、(2)のとおりである。
(1)請求項1?8に係る訂正
ア 請求項1に係る訂正
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「第2ケーブルとを備え、前記第1ケーブルは、」を、「第2ケーブルとを備え、前記第1コネクタは、前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され、前記第1ケーブルは、」に訂正する。

(イ)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1における「前記第1ケーブルは、前記第1コネクタと」を、「前記第1ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであり、前記第1コネクタと」に訂正する。

(ウ)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1における「前記第3コネクタとの間で、前記第1読取部を前記駆動源側に迂回する」を、「前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向における前記第2読取部に対する前記第1読取部側から対向する位置で前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている」に訂正する。

イ 請求項4に係る訂正(訂正事項4)
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

ウ 請求項5に係る訂正(訂正事項5)
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

エ 請求項6に係る訂正
(ア)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6における「前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向に延びる壁部を備え、」を、「前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向に延び、前記幅方向の一方側の端縁が前記第1ケーブルに対して前記幅方向の一方側に位置する壁部を備え、」に訂正する。

(イ)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6における「壁部を備え、前記第1ケーブルは、」を、「壁部を備え、前記壁部は、前記駆動源に対して前記直交方向の一方側の位置と前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側の位置との間を延びる第1壁部と、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側の位置と前記駆動源に対して前記直交方向の他方側の位置との間を延びる第2壁部とを含み、前記第1ケーブルは、」に訂正する。

オ 請求項7に係る訂正
(ア)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7における「第3ケーブルとを備え、前記第3ケーブルは、」を、「第3ケーブルとを備え、前記第6コネクタは、前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され、前記第3ケーブルは、」に訂正する。

(イ)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項7における「前記第3ケーブルは、前記第5コネクタ」を、「前記第3ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであり、前記第5コネクタ」に訂正する。

(ウ)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項7における「前記第6コネクタとの間で、前記第1読取部を前記駆動源側に迂回する」を、「前記第6コネクタとの間で、前記第6コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記直交方向における前記読み取り部に対する前記第1読取部側から対向する位置で、前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている」に訂正する。

(エ)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項7における「請求項1?6のいずれか」を、「請求項1?3、6のいずれか」に訂正する。

(2)請求項9に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項9における「前記第1ケーブルは、前記第1コネクタと」を、「前記第1ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであり、前記第1コネクタと」に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9における「前記第3コネクタとの間で、前記第1読取部を前記駆動源側に迂回し」を、「前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して上側から対向する位置で下側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を下側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延び」に訂正する。
なお、訂正請求書19頁「(b)訂正事項2」の記載は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項9の記載から、誤記と認められる。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1?8に係る訂正
ア 請求項1に係る訂正
(ア)訂正事項1
明細書の発明の詳細な説明の段落【0043】?【0044】には、
「操作部9は、図4に示されるように、第1読取部35および第2読取部36の上側に配置されている。第1読取部35は、第2読取部36の上側に配置されている。そして、画像読取装置1は、基板の一例としてのメイン基板50を備えている。メイン基板50は、第2読取部36の下側に配置されている。
第1読取部35は、図5および図6に示されるように、ユニット基板51を備えている。ユニット基板51は、第1読取部35の上端に配置されている。第1読取部35は、非図示のLED光源およびイメージセンサなどの電子部品を備えている。これらの電子部品は、ユニット基板51の下面に実装されている。また、第1読取部35は、第1コネクタ52を備えている。第1コネクタ52は、ユニット基板51の上面の右前端部に、差込口53をシートSの搬送方向の下流側、つまり前側に向けて配置されている。また、第1コネクタ52は、上フレーム6の第1収容部41の右端部に形成された切欠54内に配置されている。切欠54は、前側に開放されている。」
と記載され、図4を参酌すると、「第1コネクタは、第1読取部に対して第2読取部と反対側に配置され」ていることが記載されていると認められる。
訂正事項1の訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において「第1コネクタ」の配置を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(イ)訂正事項2
明細書の発明の詳細な説明の段落【0048】には、
「そして、画像読取装置1は、第1ケーブル66、第2ケーブル67および第3ケーブル68を備えている。第1ケーブル66、第2ケーブル67および第3ケーブル68は、それぞれFFC(Flexible Flat Cable:フレキシブルフラットケーブル)からなる。」
と記載され、「フレキシブルフラットケーブル」が「面および厚みを有する」ことは明らかであって、図4、図5には、「面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブル66」が示されているから、「第1ケーブルが、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであ」ることが、明細書に記載されていると認められる。
訂正事項2の訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において「第1ケーブル」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)訂正事項3
明細書の発明の詳細な説明の段落【0060】?【0062】には、
「第1ケーブル66は、図4に示されるように、第1折返し部114、第2折返し部115、第1延部116、第3折返し部117、第2延部118、第4折返し部119および第3延部120を形成している。
第1折返し部114は、第1コネクタ52から前側に延びて上側に折り返された後、後側に折り返されて形成されている。第2折返し部115は、第1折返し部114から後側に延びた後、左側に折り返されて形成されている。第1延部116は、第2折返し部115から左側に延びている。第3折返し部117は、第1延部116の端部を前側に折り返されて形成されている。第2延部118は、第3折返し部117から前側に延び、下側に湾曲しつつ延び、後側にさらに延びている。第4折返し部119は、第2延部118の端部を右側に折り返されて形成されている。第3延部120は、第4折返し部119から右側に延びて、第3コネクタ59に接続されている。
第1延部116は、第1読取部35の上側に位置する上フレーム6の上側を第1読取部35に沿って第1読取部35の右端部から左側に延びている。第3折返し部117は、上フレーム6の前上壁部111の上側に位置している。第2延部118は、上フレーム6の前上壁部111の上側、前縦壁部113の前側、左フレーム4の内周前壁部78の前側および内周下壁部79の下側に配置され、この順に沿って引き回されている。第4折返し部119は、左フレーム4の内周下壁部79の下側に位置している。第2延部118は、内周前壁部78の前側および内周下壁部79の下側で、内周壁部71の外周面に当接している。」
と記載され、図4を参酌すると、第1ケーブルは、第1コネクタと第3コネクタとの間で、「前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向における前記第2読取部に対する前記第1読取部側から対向する位置で前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている」ことが、明細書に記載されていると認められる。
訂正事項3の訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において「第1ケーブル」が「第1コネクタと第3コネクタとの間で」、どのように配策されているかを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 請求項4に係る訂正(訂正事項4)
訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 請求項5に係る訂正(訂正事項5)
訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 請求項6に係る訂正
(ア)訂正事項6
明細書の発明の詳細な説明の段落【0052】?【0054】には、
「図5および図11に示されるように、左フレーム4は、内壁部70および内周壁部71を備えている。
内壁部70は、第1読取部35および第2読取部36の左側に位置している。内壁部70は、前後方向および上下方向に延びている。内壁部70の上端縁73は、前後方向に延び、途中で屈曲して、その屈曲部分から前下側に傾斜して延びている。内壁部70の前端縁74は、上下方向に延びている。内壁部70の後端縁75は、上下方向に延びている。内壁部70の下端縁76は、前後方向に延びている。
内周壁部71は、内壁部70から左側に延びている。内周壁部71は、内周上壁部77、壁部の一例としての内周前壁部78、内周下壁部79および内周後壁部80を備えている。内周上壁部77は、内壁部70の上端縁73の全体および前端縁74の上部に沿って形成されている。内周前壁部78は、内壁部70の前端縁74の下部に沿って形成されている。内周上壁部77の前端と内周前壁部78の上端との間には、隙間が生じている。内周下壁部79は、内壁部70の下端縁76に沿って形成されている。内周下壁部79の前端は、内周前壁部78の下端に接続されている。内周後壁部80は、内壁部70の後端縁75に沿って形成されている。内周後壁部80には、穴81が前後方向に貫通して形成されている。内周後壁部80の下端は、内周下壁部79の後端に接続されている。内周後壁部80の上端は、内周上壁部77の後端に接続されている。」
と記載され、段落【0062】には、
「第1延部116は、第1読取部35の上側に位置する上フレーム6の上側を第1読取部35に沿って第1読取部35の右端部から左側に延びている。第3折返し部117は、上フレーム6の前上壁部111の上側に位置している。第2延部118は、上フレーム6の前上壁部111の上側、前縦壁部113の前側、左フレーム4の内周前壁部78の前側および内周下壁部79の下側に配置され、この順に沿って引き回されている。第4折返し部119は、左フレーム4の内周下壁部79の下側に位置している。第2延部118は、内周前壁部78の前側および内周下壁部79の下側で、内周壁部71の外周面に当接している。」
と記載され、図5、図11を参酌すると、「前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向に延び、前記幅方向の一方側の端縁が前記第1ケーブルに対して前記幅方向の一方側に位置する壁部を備え」ることが明細書に記載されていると認められる。
訂正事項6の訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において「壁部」が「前記幅方向の一方側の端縁が前記第1ケーブルに対して前記幅方向の一方側に位置する」ことを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(イ)訂正事項7
明細書の発明の詳細な説明の段落【0052】?【0054】、【0062】の記載は、上記(ア)のとおりであり、図5、図11を参酌すると、「前記壁部は、前記駆動源に対して前記直交方向の一方側の位置と前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側の位置との間を延びる第1壁部と、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側の位置と前記駆動源に対して前記直交方向の他方側の位置との間を延びる第2壁部とを含」むことが記載されていると認められる。
訂正事項7の訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において「壁部」が「前記駆動源に対して前記直交方向の一方側の位置と前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側の位置との間を延びる第1壁部と、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側の位置と前記駆動源に対して前記直交方向の他方側の位置との間を延びる第2壁部とを含」むことを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

オ 請求項7に係る訂正
(ア)訂正事項8
明細書の発明の詳細な説明の段落【0047】には、
「第6コネクタ63は、パネル制御基板62の下面の前端部に、差込口65を前側に向けて配置されている。第6コネクタ63は、パネル制御基板62に形成されている回路と電気的に接続されている。」
と記載され、図4を参酌すると、「前記第6コネクタは、前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され」ることが記載されていると認められる。
訂正事項8の訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において「第6コネクタ」が「前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され」ることを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(イ)訂正事項9
明細書の発明の詳細な説明の段落【0048】には、
「第1ケーブル66、第2ケーブル67および第3ケーブル68は、それぞれFFC(Flexible Flat Cable : フレキシブルフラットケーブル)からなる。」
と記載され、「フレキシブルフラットケーブル」が「面および厚みを有する」ことは明らかであって、図4には、「面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブル68」が示されているから、「第3ケーブルが、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであ」ることが、明細書に記載されていると認められる。
訂正事項9の訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において「第3ケーブル」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)訂正事項10
明細書の発明の詳細な説明の段落【0066】?【0068】には、
「第3ケーブル68は、図10に示されるように、第1折返し部126、第2折返し部127、第1延部128、第3折返し部129、第2延部130、第4折返し部131、第3延部132、第5折返し部133、第4延部134、第6折返し部135および第5延部136を形成している。
第1折返し部126は、第6コネクタ63から前側に延びて下側に折り返された後、後側に折り返されて形成されている。第2折返し部127は、第1折返し部126から後側に延びた後、左側に折り返されて形成されている。第1延部128は、第2折返し部127から左側に延びている。第3折返し部129は、第1延部128の端部を前側に折り返されて形成されている。第2延部130は、第3折返し部129から前側に延び、下側に湾曲しつつ延び、後側に延びている。第4折返し部131は、第2延部130の端部を右側に折り返されて形成されている。第3延部132は、第4折返し部131から右側に延びている。第5折返し部133は、第3延部132の端部を後側に折り返されて形成されている。第4延部134は、第5折返し部133から後側に延びている。第6折返し部135は、第4延部134の端部を右側に折り返されて形成されている。第5延部136は、第6折返し部135から右側に延びて、第5コネクタ61に接続されている。
第3ケーブル68の第3折返し部129は、図4に示されるように、第1ケーブル66の第3折返し部117の上側に位置している。第2延部130は、内周壁部71に対して第1ケーブル66の第2延部118の外側を、第1ケーブル66の第2延部118に沿って引き回されている。第3ケーブル68の第2延部130は、図11に示されるように、内周前壁部78の前側の下端部において、ケーブル挿通部89により、第1ケーブル66の第2延部118と間隔を空けて保持されている。これにより、第3ケーブル68の第2延部130は、内周上壁部77の上側および内周前壁部78の前側において、第1ケーブル66の第2延部118と間隔が空けられている。」
と記載され、図4を参酌すると、「第3ケーブル」が、「前記第6コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記直交方向における前記読み取り部に対する前記第1読取部側から対向する位置で、前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている」ることが、明細書に記載されていると認められる。
訂正事項10の訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において「第3ケーブル」が「第5コネクタと第6コネクタとの間で」、どのように配策されているかを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(エ)訂正事項11
訂正事項11は、訂正前の請求項7が請求項1?6の記載を引用する記載であるところ、請求項4、5を引用しないものとするための訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項11は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

カ 一群の請求項
上記訂正事項1?11は、一群の請求項に対して請求されたものである。

(2)請求項9に係る訂正
ア 訂正事項1
明細書の発明の詳細な説明の段落【0048】には、
「そして、画像読取装置1は、第1ケーブル66、第2ケーブル67および第3ケーブル68を備えている。第1ケーブル66、第2ケーブル67および第3ケーブル68は、それぞれFFC(Flexible Flat Cable:フレキシブルフラットケーブル)からなる。」
と記載され、「フレキシブルフラットケーブル」が「面および厚みを有する」ことは明らかであって、図4、図5には、「面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブル66」が示されているから、「第1ケーブルが、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであ」ることが、明細書に記載されていると認められる。
訂正事項1の訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において「第1ケーブル」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項2
明細書の発明の詳細な説明の段落【0060】?【0062】には、
「第1ケーブル66は、図4に示されるように、第1折返し部114、第2折返し部115、第1延部116、第3折返し部117、第2延部118、第4折返し部119および第3延部120を形成している。
第1折返し部114は、第1コネクタ52から前側に延びて上側に折り返された後、後側に折り返されて形成されている。第2折返し部115は、第1折返し部114から後側に延びた後、左側に折り返されて形成されている。第1延部116は、第2折返し部115から左側に延びている。第3折返し部117は、第1延部116の端部を前側に折り返されて形成されている。第2延部118は、第3折返し部117から前側に延び、下側に湾曲しつつ延び、後側にさらに延びている。第4折返し部119は、第2延部118の端部を右側に折り返されて形成されている。第3延部120は、第4折返し部119から右側に延びて、第3コネクタ59に接続されている。
第1延部116は、第1読取部35の上側に位置する上フレーム6の上側を第1読取部35に沿って第1読取部35の右端部から左側に延びている。第3折返し部117は、上フレーム6の前上壁部111の上側に位置している。第2延部118は、上フレーム6の前上壁部111の上側、前縦壁部113の前側、左フレーム4の内周前壁部78の前側および内周下壁部79の下側に配置され、この順に沿って引き回されている。第4折返し部119は、左フレーム4の内周下壁部79の下側に位置している。第2延部118は、内周前壁部78の前側および内周下壁部79の下側で、内周壁部71の外周面に当接している。」
と記載され、図4を参酌すると、「第1ケーブル」が、「前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して上側から対向する位置で下側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を下側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延び」ることが、明細書に記載されていると認められる。
訂正事項2の訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において「第1ケーブル」が「第1コネクタと第3コネクタとの間で」、どのように配策されているかを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1?9について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?9(以下「本件発明1」?「本件発明9」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
ただし、(1A)?(9K)は当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件1A」等という。
なお、請求項4及び請求項5は削除された。

(本件発明1)
(1A)第1コネクタを有し、搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成された第1読取部と、
(1B)前記搬送路に対して前記第1読取部と反対側に配置され、第2コネクタを有し、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成された第2読取部と、
(1C)前記第1読取部および前記第2読取部に対して前記搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され、前記シートを搬送するための駆動力を発生する駆動源と、
(1D)前記第1読取部に対して前記第2読取部側に配置され、第3コネクタおよび第4コネクタを有する基板と、
(1E)前記第1コネクタに一端が接続され、前記第3コネクタに他端が接続された第1ケーブルと、
(1F)前記第2コネクタに一端が接続され、前記第4コネクタに他端が接続された第2ケーブルとを備え、
(1G)前記第1コネクタは、前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され、
(1H)前記第1ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであり、前記第1コネクタと前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向における前記第2読取部に対する前記第1読取部側から対向する位置で前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている、
(1I)画像読取装置。

(本件発明2)
(2A)前記基板は、前記第2読取部に対して前記第1読取部と反対側に配置され、
(2B)前記第2コネクタは、前記第2読取部における前記基板側に設けられ、
(2C)前記第2ケーブルは、前記第2コネクタと前記第4コネクタとの間で前記幅方向に延びる、
(2D)請求項1に記載の画像読取装置。

(本件発明3)
(3A)前記第1コネクタは、前記第1読取部における前記幅方向の他方側の端部に配置され、
(3B)前記第2コネクタは、前記第2読取部における前記幅方向の一方側の端部に配置され、
(3C)前記第3コネクタは、前記基板における前記幅方向の一方側の端部に配置され、
(3D)前記第4コネクタは、前記基板における前記幅方向の他方側の端部に配置されている、
(3E)請求項2に記載の画像読取装置。

(本件発明6)
(6A)前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側に設けられ、前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向に延び、前記幅方向の一方側の端縁が前記第1ケーブルに対して前記幅方向の一方側に位置する壁部を備え、
(6B)前記壁部は、前記駆動源に対して前記直交方向の一方側の位置と前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側の位置との間を延びる第1壁部と、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側の位置と前記駆動源に対して前記直交方向の他方側の位置との間を延びる第2壁部とを含み、
(6C)前記第1ケーブルは、前記壁部に対して前記搬送方向の下流側を前記壁部に沿って延びる、
(6D)請求項1?3のいずれか一項に記載の画像読取装置。

(本件発明7)
(7A)前記基板は、第5コネクタを有し、
(7B)前記第2読取部に対して前記第1読取部側に配置され、第6コネクタを有し、各種操作を受け付けるように構成される操作部と、
(7C)前記第5コネクタに一端が接続され、前記第6コネクタに他端が接続された第3ケーブルとを備え、
(7D)前記第6コネクタは、前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され、
(7E)前記第3ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであり、前記第5コネクタと前記第6コネクタとの間で、前記第6コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記直交方向における前記読み取り部に対する前記第1読取部側から対向する位置で、前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている、
(7F)請求項1?3、6のいずれか一項に記載の画像読取装置。

(本件発明8)
(8A)前記第1ケーブルと前記第3ケーブルとの間に介在されるフイルムを備える、
(8B)請求項7に記載の画像読取装置。

(本件発明9)
(9A)シートが搬送される搬送路の上側に配置され、第1コネクタを有し、前記搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成された第1読取部と、
(9B)前記搬送路の下側に配置され、第2コネクタを有し、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成された第2読取部と、
(9C)前記第1読取部および前記第2読取部に対して前記搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され、前記シートを搬送するための駆動力を発生する駆動源と、
(9D)前記第2読取部の下側に配置され、第3コネクタおよび第4コネクタをそれぞれ前記幅方向の一方側および他方側の端部に有する基板と、
(9E)前記第1コネクタに一端が接続され、前記第3コネクタに他端が接続された第1ケーブルと、
(9F)前記第2コネクタに一端が接続され、前記第4コネクタに他端が接続された第2ケーブルとを備え、
(9G)前記第1コネクタは、前記第1読取部の上側における前記幅方向の他方側の端部に、前記第1ケーブルが前記搬送方向の下流側から接続されるように配置され、
(9H)前記第2コネクタは、前記第2読取部の下側における前記幅方向の一方側の端部に、前記第2ケーブルが前記搬送方向の下流側から接続されるように配置され、
(9I)前記第1ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであり、前記第1コネクタと前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して上側から対向する位置で下側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を上下方向における下側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延び、
(9J)前記第2ケーブルは、前記第2コネクタと前記第4コネクタとの間で、前記幅方向に延びる、
(9K)画像読取装置。

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1?9に係る特許に対して平成29年1月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)請求項1?3に係る特許は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明に基づき、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?3に係る特許は、取り消されるべきものである。
請求項4?5に係る特許は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明、及び周知技術に基づき、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項4?5に係る特許は、取り消されるべきものである。

(2)請求項1?9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

ア 請求項1に係る特許では、「駆動源」側にケーブルを迂回させることで幅方向に小型化を図れる理由が不明であり、実施可能要件違反、サポート要件違反、明確性違反がある。請求項1を引用する請求項2乃至請求項8、同様の記載を含む請求項9に係る特許も同じである。

イ 請求項1に係る特許では、「第1ケーブル」と「第2読取部」の位置関係が規定されておらず、実施可能要件違反、サポート要件違反、明確性違反がある。

ウ 請求項4、5に係る特許は、構成が不明確であり、実施可能要件違反、サポート要件違反、明確性違反がある。

エ 請求項6に係る特許は、構成が不明確であり、実施可能要件違反、サポート要件違反、明確性違反がある。

オ 請求項7に係る特許は、「駆動源」側に第3ケーブルを迂回させることで幅方向の小型化を図れる理由が不明であり、実施可能要件違反、サポート要件違反、明確性違反がある。

カ 請求項1、7、9における「ケーブルは、・・・前記第1読取部を前記駆動源側に迂回する」が明確でない。

3 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明
(1)甲第1号証
甲第1号証(特開2011-211595号公報。以下「甲1」という。)には、「画像読取装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。

「【0001】
本発明は、画像読取装置に関する。」

「【0032】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
[複合機の構造]
図1(a)?同図(c)に示す複合機1は、画像読取装置としての機能(スキャン機能)に加え、その他の機能(例えば、プリント機能、コピー機能、ファクシミリ送受信機能など)を兼ね備えたものである。なお、以下の説明においては、複合機1が備える各部の相対的な位置関係をわかりやすく説明するため、図中に併記した上下左右前後の各方向を利用する。また、図1(a)?同図(c)には、複合機1の外観に加えて、複合機1が内蔵する構成の一部も併記してある。」

「【0038】
スキャナユニット3は、第一イメージセンサ11及び第二イメージセンサ12(本発明でいう読取手段の一例に相当。)を備えている。本実施形態において、第一イメージセンサ11及び第二イメージセンサ12は、双方とも密着イメージセンサ(Contact Image Sensor)が利用されている。」

「【0042】
さらに、スキャナユニット3は、動力源から伝達される動力で駆動されるローラとして、供給ローラ31、分離ローラ32、中継搬送ローラ33、メイン搬送ローラ34、及び排出ローラ35を備えている。また、これらのローラ31?35と協働して原稿をニップしつつ、駆動されるローラ又は搬送される原稿に追従して回転するローラとして、第一ニップローラ36、第二ニップローラ37、第三ニップローラ38、第四ニップローラ39
を備えている。
【0043】
スキャナユニット3がADFスキャナとして利用される場合、上述のローラ群が駆動される。その際、原稿台41に載せられた原稿は、図2に破線で示した搬送経路に沿って搬送される。具体的には、原稿台41に載せられた原稿は、供給ローラ31によって搬送方向下流側へと送り出され、その原稿が分離ローラ32によって一枚ずつに分離される。」

「【0046】
上述のローラ群によって搬送される原稿は、中継搬送ローラ33によって送り出された後、メイン搬送ローラ34に到達するまでに、第二ADFガラス22と第二押さえ部材24との間を通過する。その際、第二イメージセンサ12は、複合機1の前後方向を主走査方向、搬送方向を副走査方向として、副走査方向へ移動する原稿から、主走査方向に並ぶ複数の画素を繰り返し読み取ることで、原稿の裏面側から画像を読み取る。
【0047】
また、上記原稿は、メイン搬送ローラ34によって送り出された後、排出ローラ35に到達するまでに、第一ADFガラス21と第一押さえ部材23との間を通過する。その際、第一イメージセンサ11は、複合機1の前後方向を主走査方向、搬送方向を副走査方向として、副走査方向へ移動する原稿から、主走査方向に並ぶ複数の画素を繰り返し読み取ることで、原稿の表面側から画像を読み取る。
【0048】
[複合機1が備えるケーブル及びハーネスの配線経路]
次に、複合機1が備えるハーネス及びケーブルの配線経路について説明する。
この複合機1には、すでに説明した構成に加え、図1(a)?同図(c)に併記した通り、ADF駆動用モータ45、制御基板47(本発明でいう制御手段の一例に相当。)などが内蔵されている。
【0049】
そして、制御基板47と第一イメージセンサ11は、第一フレキシブルフラットケーブル51(以下、第一FFC51と称する。)を介して接続されている。また、制御基板47と第二イメージセンサ12は、第二フレキシブルフラットケーブル52(以下、第二FFC52と称する。)を介して接続されている。さらに、制御基板47とADF駆動用モータ45は、ワイヤハーネス53を介して接続されている。」

「【0073】
ただし、この並走区間の大部分には、第一FFC51及び第二FFC52が互いに接触するのを防止するFFCスペーサ71(本発明でいう接触防止部材の一例に相当。)が設けられている。本実施形態において、FFCスペーサ71は、近傍にある樹脂製筐体の一部として一体成形された厚さ1mmの板状のものである。このようなFFCスペーサ71が配設されていれば、第一FFC51及び第二FFC52が過剰に接近したり接触したりすることがないので、一方の信号電流が他方のノイズ源となりにく、制御基板47への入力信号の品質が向上する。」

「【0092】
また、上記実施形態においては、スキャナユニット3が、複合機1に組み込まれる事例を示したが、単機能のイメージスキャナ装置として構成されていてもよい。」

「【図1】



甲1には、「画像読取装置」(段落【0001】)が記載され、「画像読取装置」は、「第一イメージセンサ」、「第二イメージセンサ」(段落【0038】)、「ADF駆動モータ」、「制御基板」(段落【0048】)を備えている。
「第二イメージセンサ」は、「搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成され」(段落【0046】)、「第一イメージセンサ」は、「搬送路に対して第二イメージセンサと反対側に配置され、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成され」ている(段落【0047】、図1(c))。
「ADF駆動モータ」は、第一イメージセンサおよび第二イメージセンサに対して搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され(図1)、シートを搬送するための駆動力を発生するものである(段落【0042】?【0043】)。
「制御基板」は、第二イメージセンサに対して第一イメージセンサ側に配置される(図1(c))。
「制御基板」と「第一イメージセンサ」は「第一フレキシブルフラットケーブル」を介し接続され、「制御基板」と「第二イメージセンサ」は「第二フレキシブルフラットケーブル」を介し接続されている(段落【0049】、図1)。第一フレキシブルフラットケーブルと第一イメージセンサ、制御基板とは接続点があり、当該接続点はそれぞれ「第2接続点」、「第4接続点」といい得る。また、第二フレキシブルフラットケーブルと第二イメージセンサ、制御基板とは接続点があり、当該接続点はそれぞれ「第1接続点」、「第3接続点」といい得る。
第二フレキシブルフラットケーブルは、第二イメージセンサをADF駆動モータ側に迂回しているといえる(図1(c))。

以上より、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲1発明)
(1a)第1接続点を有し、搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成された第二イメージセンサと、
(1b)前記搬送路に対して前記第二イメージセンサと反対側に配置され、第2接続点を有し、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成された第一イメージセンサと、
(1c)前記第一イメージセンサよび前記第二イメージセンサに対して前記搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され、前記シートを搬送するための駆動力を発生するADF駆動モータと、
(1d)前記第二イメージセンサに対して前記第一イメージセンサ側に配置され、第3接続点および第4接続点を有する制御基板と、
(1e)前記第1接続点に一端が接続され、前記第3接続点に他端が接続された第二フレキシブルフラットケーブルと、
(1f)前記第2接続点に一端が接続され、前記第4接続点に他端が接続された第一フレキシブルフラットケーブルとを備え、
(1g)第二フレキシブルフラットケーブルは、第二イメージセンサをADF駆動モータ側に迂回する
(1h)画像読取装置。

なお、(1a)?(1h)は、構成を識別するために付与した。以下各構成を「構成1a」等という。

(2)甲第2号証
甲第2号証(特開2011-205335号公報。以下「甲2」という。)には、「画像読取装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。

「【0001】
本発明は画像読取装置に関するものである。」

「【0026】
(実施例)
図1に示すように、本実施例の複合機10は、原稿の画像を読み取って電子データ化する画像読取処理、その読み取った電子データに基づいて、被記録媒体(例えば、用紙やOHPシート)に画像を形成する画像形成処理、及び外部と電子データの送受信を行う通信処理等の複数の処理を実行可能なものである。画像読取処理に着目すれば、複合機10は画像読取装置であるとも言える。図1では、複合機10の操作パネル3側を装置の前側と規定し、操作パネル3の反対側を装置の後側(背面側)と規定する。また、装置を前側から見た場合に左手に来る側(操作パネル3に向かって左側)を左側と規定し、その反対側を右側と規定して、前後、左右及び上下の各方向を表示する。そして、図2以降に示す各方向は、全て図1に示す各方向に対応させて表示する。以下、図1等に基づいて、複合機10が備える各構成要素について説明する。」

「【0032】
図7のブロック図に示すように、本体部20の内部には、ADF11内の構成要素、操作パネル3及び画像形成部29等の各種制御を行う処理部としての制御基板201、各構成要素に給電する電源部202、及びLAN回線や公衆電話回線を介して外部と通信する通信部203等が設けられている。
【0033】
図2及び図3に示すように、制御基板201は、本体部20の内部であって、本体部20の左側の側面20Bに対して略平行となるように配設されている。装置の小型化のため、制御基板201と、本体部20の左側の側面20Bとの間隔が狭くされている。本体部20の左側の側面20Bは、後述する読取部24に近い側の側面である。なお、電源部202から電磁ノイズが発生する場合があるため、電源部202は、電磁ノイズをある程度遮蔽する対策が施された上で、制御基板201及び通信部203等から離れた箇所に配設される。」

「【0035】
2.1.本体部側読取部
図7及び図8に示すように、本体部20の内部において、コンタクトガラス22の下方には、本体部側読取部25が設けられている。本体部側読取部25としては、密着型イメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)やCCD(Charge Coupled Device)等の周知の画像読取センサを採用できるが、本実施例では密着型イメージセンサを採用している。図8に示すように、本体部20の筐体の内側側面には、左右方向に延在するスライド軸78が固定されている。本体部側読取部25は、スライド軸78にスライド自在に支持されており、待機状態では、移動読取用ガラス80の左端縁の下方に位置している。そして、本体部側読取部25は、制御基板201からの制御信号によりプーリー・ベルト機構(図示省略)が駆動されることにより、スライド軸78に沿って左右方向(本体部側読取部25の副走査方向)にスライドする。」

「【0037】
ユーザが移動読取用ガラス80上に1枚の原稿又は書籍を載置して、それらの表面(移動読取用ガラス80と対向する面)の画像読取を行おうとする場合、すなわち、ADF11の自動原稿搬送機能を使用しない場合、本体部側読取部25は、移動読取用ガラス80の左端縁の下方から右端縁の下方に移動しつつ、上記原稿又は書籍の表面に形成された画像を読み取る。そして、本体部側読取部25の出力信号(画像データを含む)は、図7に示すように、本体部20において、本体部側読取部25と制御基板201とを電気的に接続する本体部側フレキシブルフラットケーブル7B(詳細は後述する。)を介して、制御基板201に伝達される。そして、制御基板201は、本体部側読取部25の出力信号に基づいて、原稿の画像の印刷データを作成し、又は、画像形成部29を制御し、被記録媒体に画像を形成するための各種制御を行う。」

「【0039】
また、ADF11は、原稿トレイ12に載置される複数枚のシート9を1枚ずつ取り出して搬送経路16に沿って自動的に搬送し、排出トレイ14へ排出する搬送手段42と、搬送経路16の途中でシート9の第1面9Aの画像を読み取る読取部24とを備える(シート9が原稿トレイ12に載置された状態において、下方を向く面を第1面9Aとし、第1面9Aとは反対側の面を第2面9Bとする。)。」

「【0049】
分離ローラ54は、本体フレーム30に前端及び後端が回転可能に支持された第1回転軸56の中央に設けられている。第1回転軸56は、電動モータや多数のギヤからなる駆動源99(図2、図3、図4及び図7に示す。)に駆動されて所定の回転方向(図8において時計まわり)に回転する。それに伴って、分離ローラ54も第1回転軸56と一体回転する。」

「【0053】
3.1.2.搬送ユニット
搬送ユニット60は、供給ユニット50により原稿トレイ12から1枚ずつ取り出されるシートを第1搬送路26、湾曲搬送路27及び第2搬送路28に沿って搬送するものである。搬送ユニット60は、分離ローラ54より左側(第1搬送路26の途中において分離ローラ54よりも搬送方向下流側)に設けられた搬送ローラ61と、搬送ローラ61に対向するピンチローラ65とを有している。また、搬送ユニット60は、湾曲搬送路27に設けられた主ローラ64と、主ローラ64に対向するピンチローラ62、63とを有している。
【0054】
搬送ローラ61は、本体フレーム30に自己の前端及び後端が回転可能に支持された第2回転軸66の中央に設けられている。第2回転軸66は、第1回転軸56と同様に、駆動源99に駆動されて所定の回転方向(図8において時計まわり)に回転する。それに伴って、搬送ローラ61も第2回転軸66と一体回転する。
【0055】
そして、分離ローラ54により搬送されるシートは、搬送ローラ61及びピンチローラ65によりニップされる。そして、搬送ローラ61は、搬送されるシートの第2面9Bに当接しつつ回転することにより、シートに搬送力を付与する。つまり、搬送ローラ61及びピンチローラ65も第1搬送路26を構成している。
【0056】
主ローラ64は、本体フレーム30に自己の前端及び後端が回転可能に支持された第3回転軸67に設けられている。第3回転軸67は、第1、2回転軸56、66と同様に、駆動源99に駆動されて所定の回転方向(図8において反時計まわり)に回転する。それに伴って、主ローラ64も第3回転軸67と一体回転する。
【0057】
搬送ローラ61により搬送されるシートは、後述する読取部24の上方を通過した後、主ローラ64及びピンチローラ62によりニップされ、さらに、シートの搬送方向下流側で、主ローラ64及びピンチローラ63によりニップされる。そして、主ローラ64は、シートの第1面9Aに当接しつつ回転することにより、シートに搬送力を付与して、第2搬送路28の下流側に送り出す。つまり、主ローラ64、ピンチローラ62及びピンチローラ63は、本体フレーム30の左端側内壁面及び上部カバー32の各補強リブ191、192の左端部と協働して、湾曲搬送路27を構成している。」

「【0059】
3.2.読取部
読取部24は、上述の本体部側読取部25と同様に、密着側イメージセンサが採用される。読取部24は、搬送ローラ61よりもシート搬送方向下流側であって、第1搬送路26の下方において、その読取面が第1搬送路26に面するように配置される。すなわち、読取部24は、第1搬送路26の途中において、搬送ローラ61よりも下流側、かつ、主ローラ64よりも上流側に配設されており、第1搬送路26を搬送されるシートの第1面9Aが読取部24の上面側を通過するようになっている。上記のように配設された読取部24は、その主走査方向が、本体部20の左側の側面20Bと平行で、かつ左右方向に近接配置されている。
【0060】
読取部24の上方には、白部材76が設けられている。白部材76は、コイルバネにより、読取部24側へ弾性的に付勢されている。搬送ローラ61から搬送されるシートは、白部材76により、読取部24側に押し付けられながら、読取部24の上面側を通過する。これにより、読取部24は、シートの第1面9Aに形成された画像を読み取る。つまり、白部材76と読取部24の上面(イメージセンサの上方を覆うガラス部材)も第1搬送路26を構成している。そして、読取部24の出力信号(画像データを含む)は、図7に示すように、ADF11と本体部20との間に設けられたフレキシブルフラットケーブル7A(詳細は後述する。)を介して、制御基板201に伝達される。そして、制御基板201は、読取部24の出力信号に基づいて、シートの第1面9Aの画像の印刷データを作成し、又は、画像形成部29を制御し、被記録媒体に画像を形成するための各種制御を行う。」

「【0063】
3.4.ADFの自動原稿読み取り動作
図8に示すように、ユーザが1枚又は複数枚のシート9を原稿トレイ12上に載置し、シートの先端部を供給ユニット50に挿入する。そして、ユーザが操作パネル3を操作して、ADF11による自動原稿読み取り処理の開始を入力すると、制御基板201は、ADF11内の搬送手段42、及び読取部24を制御して自動原稿読み取り処理を開始する。そうすると、原稿トレイ12上のシートは、1枚ずつ取り出されて、搬送経路16に沿って搬送される。その途中の第1搬送路26で、第1面9Aに形成された画像が読取部24により読み取られる。このシートは、さらに搬送経路16に沿って送られ、湾曲搬送路27を通過する際に表裏反転される。そして、シートの第2面9Bに形成された画像が本体部側読取部25によって読み取られる。その後、このシートは、第2搬送路28で第2面9Bを下にして排出トレイ14上に排出される。この一連の動作は、原稿トレイ12上のシートがなくなるまで、自動的に繰り返される。
【0064】
4.フレキシブルフラットケーブル及び本体部側フレキシブルフラットケーブル
図2、図3及び図7に示すように、複合機10は、ADF11側の読取部24と、本体部20側の制御基板201とを電気的に接続し、読取部24の出力信号を制御基板201に伝達するフレキシブルフラットケーブル7Aと、本体部20において、本体部側読取部25と制御基板201とを電気的に接続し、本体部側読取部25の出力信号を制御基板201に伝達する本体部側フレキシブルフラットケーブル7Bとを備えている。」

「【0077】
なお、ガイド部300は、本体部20と別部品であり、図14に二点鎖線で図示するように、予めリブ301にフレキシブルフラットケーブル7Aが両面テープ301Bにより固定された状態で、ADF11と一体化される。この際、ガイド部300は、回動軸R1方向から見た場合、リブ301及び間隔保持部302を挟んで側壁部308と反対側の側面が開放されているので、その開放された側面からガイド部300内にフレキシブルフラットケーブル7Aを容易に挿入できる。このため、フレキシブルフラットケーブル7Aを間隔保持部302及びリブ301に沿って配線し、リブ301の前面に両面テープ301Bで固定する作業を容易に行える。そして、ADF11を本体部20に取り付ける際、ヒンジ部49R、49Lの下方の柱状部分(図6参照)を各ガイド穴20Aに挿入しながら、フレキシブルフラットケーブル7Aの下端側を開口部20Cを介してケーブル収容部20Dに通し、次に、ガイド部300をADF11の開放側(前側)から開口部20Cに向けて挿入し、嵌め込む。こうして、ガイド部300を開口部20Cに容易に組み付けることができ、組み付け作業の簡素化を実現できる。また、フレキシブルフラットケーブル7Aを交換する必要がある場合、ガイド部300を開口部20Cから取り外すことで、容易にフレキシブルフラットケーブル7Aの交換を行なうことができる。」

「【0083】
そして、図15に示すように、フレキシブルフラットケーブル7Aは、第1のフェライトコア121に挿通される。第1のフェライトコア121は、フレキシブルフラットケーブル7Aにより伝達される電気信号に含まれるノイズを減衰させるためのものである。その後、フレキシブルフラットケーブル7Aは、制御基板201の上方まで延びた後、下方に向きを変える。制御基板201の左側を向く面の上方には、フレキシブルフラットケーブル用の扁平な第1のコネクタ131が配設されている。フレキシブルフラットケーブル7Aは、この第1のコネクタ131に対して上方から差し込まれることにより電気的に接続される。」

「【0088】
その後、本体部側フレキシブルフラットケーブル7Bは、制御基板201の上方まで延びた後、下方に向きを変える。制御基板201の左側を向く面の上方には、本体部フレキシブルフラットケーブル7B用の扁平な第2のコネクタ132が第1のコネクタ131に対して下方に間隔を有して配設されている。本体部側フレキシブルフラットケーブル7Bは、略L字状に湾曲しつつ、この第2のコネクタ132に対して横方向から差し込まれることにより電気的に接続される。なお、本体部側フレキシブルフラットケーブル7Bを第2のコネクタ132に差し込む方向としては、横方向だけでなく、例えば、下から上に向けて差し込むようにしてもよい。」

「【0099】
また、この複合機(画像読取装置)10では、ガイド部300のリブ301により、フレキシブルフラットケーブル7Aの途中に略U字状の撓み部分700が保持される。このため、本体部20に対するADF11の回動又は昇降に伴って、フレキシブルフラットケーブル7Aが引っ張られる場合でも、略U字状の撓み部分700がフレキシブルフラットケーブル7Aの引き回し経路の変化を吸収し、フレキシブルフラットケーブル7Aに過度の引っ張り力が作用することを防止できる。また。フレキシブルフラットケーブル7Aに過度の捩れや屈曲が生じ難くなる。これにより、フレキシブルフラットケーブル7AがADF11の回動又は昇降に良好に追従できる。その結果、フレキシブルフラットケーブル7Aの断線や、フレキシブルフラットケーブル7Aにより伝達される信号にノイズが発生する不具合が生じ難くなり、その結果、読取部24により読み取った原稿の画像データに乱れが生じることを抑制できる。」

「【図2】



「【図8】



甲2には、「画像読取装置」(段落【0001】)が記載され、「画像読取装置」は、「読取部」(段落【0059】)、「本体部側読取部」(段落【0035】)、「駆動源」(段落【0049】)、「制御基板」(段落【0037】、【0060】)を備えている。
「読取部」は、「搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成され」(段落【0063】)、「本体部側読取部」は、「搬送路に対して読取部と反対側に配置され、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成され」ている(段落【0063】、図8)。
「駆動源」は、読取部および本体部側読取部に対して搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され(図2)、シートを搬送するための駆動力を発生するものである(段落【0054】?【0055】)。
「制御基板」は、読取部に対して本体部側読取部側に配置され(図2)、第1のコネクタ、第2のコネクタを有する(段落【0083】、【0088】)。
「制御基板」と「読取部」は「フレキシブルフラットケーブル7A」を介し接続され、「制御基板」と「本体部側読取部」は「フレキシブルフラットケーブル7B」を介し接続されている(段落【0064】、図2)。フレキシブルフラットケーブル7Aと制御基板とは第1のコネクタで接続され(段落【0083】)、フレキシブルフラットケーブル7Bと制御基板とは第2のコネクタで接続される(段落【0088】)。
フレキシブルフラットケーブル7Aと読取部とは接続点があり(図2)、当該接続点は第1接続点といい得、フレキシブルフラットケーブル7Bと本体部側読取部とは接続点が有り(図2),当該接続点は第2接続点といい得る。
フレキシブルフラットケーブル7Aは、読取部を駆動源側に迂回しているといえる(図2)。

以上より、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲2発明)
(2a)第1接続点を有し、搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成された読取部と、
(2b)前記搬送路に対して前記読取部と反対側に配置され、第2接続点を有し、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成された本体部側読取部と、
(2c)前記読取部よび前記本体部側読取部に対して前記搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され、前記シートを搬送するための駆動力を発生する駆動源と、
(2d)前記読取部に対して前記本体部側読取部側に配置され、第1のコネクタおよび第2のコネクタを有する制御基板と、
(2e)前記第1接続点に一端が接続され、前記第1のコネクタに他端が接続されたフレキシブルフラットケーブル7Aと、
(2f)前記第2接続点に一端が接続され、前記第2のコネクタに他端が接続されたフレキシブルフラットケーブル7Bとを備え、
(2g)フレキシブルフラットケーブル7Aは、読取部を駆動源側に迂回する
(2h)画像読取装置。

なお、(2a)?(2h)は、構成を識別するために付与した。以下各構成を「構成2a」等という。

(3)周知技術
ア 甲第3号証
甲第3号証(特開2011-77840号公報。以下「甲3」という。)には、「シート処理装置、及び、画像読取装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。

「【0055】
図6は、実施例3の画像読取装置の読取ユニット7及び下部読取ユニット8付近を図1の表面から見た状態を示す概略断面図であり、図5と同一のものには同一の符号を付してある。
【0056】
図6に示すように、実施例2では、上部ケーブル配置スペース17aに、上部読取ユニット7の副走査方向にフラットケーブル11aを配置し、一箇所の折り返し部を設けた構成である。22aは、フラットケーブル11aを上部読取ユニット嵌込部15の側面に形成した孔形状部で、フラットケーブル11aの折り返し部を格納する。
【0057】
同様に、下部ケーブル配置スペース17bにも、下部読取ユニット8の副走査方向にフラットケーブル11bを配置し、一箇所の折り返し部を設けた構成である。22bは、フラットケーブル11bを下部読取ユニット嵌込部16の側面に形成した孔形状部で、フラットケーブル11bの折り返し部を格納する。」

「【0061】
また、これまで示した図中にあるように、上部読取ユニット7、下部読取ユニット8とフラットケーブル11a、11bとを接続するコネクタ部19a、19bを、上部読取ユニット7,下部読取ユニット8の背面に設けることで、上部読取ユニット嵌込部15、及び下部読取ユニット嵌込部16の外側でフラットケーブル11a、11bの着脱作業が行なえるため、作業性が良い。」

「【図6】



イ 甲第4号証
甲第4号証(特開2007-150541号公報。以下「甲4」という。)には、「画像読取装置およびその製造方法」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。

「 【0018】
次に、本発明に係る画像読取装置の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の画像読取装置10が組み込まれた複合機1の外観図であり、図2はその断面図である。複合機1は例えば、FAX機能、スキャナ機能、コピー機能を備えた装置として構成される。複合機1は、ADF(オートドキュメントフィーダ)原稿セットトレイ3、原稿ガイド5、紙送りローラ7、ADF原稿排紙トレイ9、コンタクトガラス11と、フレーム49に収められた密着型イメージセンサ21からなるADF読み取り機構を備えている。また、これに加えて、FB(フラットベッド)押さえ板17とガラス製のFB原稿台19と、前述の密着型イメージセンサ21を含むFB読み取り機構をも備えている。
【0019】
ADF読み取り機構によって画像を読み取る場合は、図2Aに示すように、ADF原稿セットトレイ3上に原稿Aをセットして読み取り開始を指令することにより、紙送りローラ7が回転して原稿Aをコンタクトガラス11上を通過させる。すると、コンタクトガラス11の直下にある密着型イメージセンサ21が、コンタクトガラス11を介して原稿Aの画像を読み取る。これに対し、FB読み取り機構によって画像を読み取る場合は、図2Bに示すように、FB原稿台19の上に原稿Bを置き、FB押さえ板17で原稿BをFB原稿台19に押し当てた状態として読み取り開始を指令することにより、密着型イメージセンサ21が図示矢印のように移動しつつ、原稿Bの画像の読み取りを実行する。
【0020】
図4示すように、密着型イメージセンサ21は、受光素子20が直線状に形成されたセンサICチップ2を基板14上に複数個配置した構造となっている。受光素子20は、主走査方向(図2の紙面と直行する方向)に一定間隔を隔てて列状に配置されている。そして、密着型イメージセンサ21はフレーム49(図5、6)に保持されている。また、図6に示すようにフレーム49の内部にはLED等からなる光源15と、導光部46と、レンズアレイ47と、カバーガラス48が設けられている。光源15は赤、緑、青の光をそれぞれ発する発光素子15R,15G,15Bからなり、白色光を取り出せるようになっている。光源15から放射した光は導光部46、カバーガラス48、FB原稿台19を通り、原稿Aを照射する。原稿Aによって反射した光はFB原稿台19、カバーガラス48、レンズアレイ47を通り受光素子20に到る。受光素子20は光電変換をすることで、受光した光を画像信号として出力する。その画像信号はコネクタ18、フレキシブルフラットケーブル39を通って複合機本体1へ送信される。」

「【図2】



ウ 周知技術
甲3の図6、甲4の図2に開示されているように、「読取部のコネクタを搬送方向の下流側からケーブルが接続するように構成すること」は、周知技術であると認められる。

(4)甲5号証
甲第5号証(特開平8-293937号公報。以下「甲5」という。)には、「ファクシミリ装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ファクシミリ装置に関し、特に、ワイヤハーネスの配置構造に特徴づけられたファクシミリ装置に関するものである。」

「【0019】原稿読み取り機構12は、本体上カバー11aの上部に形成された原稿台20にセットされた原稿を分離ローラ21によって一枚ずつ内部に引き込み、これを送りローラ22,22によってさらに送る間に、原稿下面の画像が1ラインずつ読み取られる。読み取りを終えた原稿は、排紙ローラ23,23によって排出される。上記送りローラ22と排紙ローラ23との間には、透明な原稿支持板24が設けられており、LEDアレイなどの光源25から発せられた光の原稿下面からの反射光が複数枚のミラー26,27,28およびレンズ29を介してCCD等の読み取り素子30に集光させられる。分離ローラ21、送りローラ22、排紙ローラ23は、ステップモータ31を駆動源として、図示しないギヤトレインやベルト伝動機構を介して制御・駆動される。原稿台20の先端部には、図示しない原稿有無センサが設けられ、原稿搬送経路途中には、図示しない原稿先端位置検知センサが設けられている。
【0020】この原稿読み取り機構12に関していえば、光源25駆動用ケーブル、読み取り素子30からの読み取り画像データ信号を制御部17aに送るためのケーブル、原稿有無センサからの信号を制御部17aに送るためのケーブル、原稿先端位置検出センサからの信号を制御部17aに送りためのケーブル等を、装置後方に配置される制御部まで配線する必要がある。ステップモータ31を制御・駆動するためのケーブルもまた、上記制御部17aまで配線する必要がある。なお、図示例の場合、上記ステップモータ31は、後記するプリント機構13の各ローラ類やインクリボンを駆動させるための駆動源として兼用される。
【0021】操作パネル19には、テンキーやファンクションキー、短縮ダイヤルキーのほか、コピーモード選択キー、ストップキー、スタートキーなどの操作キーや、各種の表示を行うLCDなどで構成されるディスプレイなどが設けられている。
【0022】この操作パネル19に関していえば、操作キーによる入力信号を制御部17aに送るためのケーブル、あるいは、ディスプレイを制御・駆動するためのケーブルが、上記制御部との間に配線される。」

「【0029】さて、前述したように、上記制御部17aと装置各部との間には、種々のケーブルが配線される。とくに、上記制御部17aは装置後方部に配置される一方、上記原稿読み取り機構17、操作パネル19および動力駆動源としてのステップモータ31は装置前方部に配置されており、これらと制御部17aとの間の距離は比較的長い。本実施例では、上記原稿読み取り機構12に関するケーブルと、操作パネル19に関するケーブルと、上記ステップモータ31に関するケーブルを、次のように配線している。
【0030】すなわち、図2および図5に示すように、本体下カバー11bの底面における上記給紙カセット14を収容する領域に隣接するようにして、前後方向に延びる下開放状のハーネス保持溝55を形成し、上記各ケーブルをまとめて構成したハーネス56の中間部を、このハーネス保持溝55に収容保持させた上で、ハーネスを構成する各ケーブルの一端部に取付けたコネクタ57を上記制御基板17に接続するとともに、各ケーブルの他端部に取付けたコネクタ58を、上記原稿読み取り機構12、操作パネル19およびステップモータ31にそれぞれ接続する。また、上記ハーネス56は、その中間部適部をバンド51によって括られて一体化されており、このバンド51の適部が上記ハーネス保持溝55の内面に形成された凹部55aに係合させられるようになっており、これにより、ハーネス56の保持溝55方向の位置が決定される。なお、ハーネス56を構成する場合、原稿読み取り部用ハーネス、ステップモータ用ハーネス、および操作パネル用ハーネスを別個に作成して上記バンド59によって一体化してもよいし、すべてのケーブルを当初から束ねて一体化してもよい。」

「【図2】



「【図5】



以上より、甲5には、「操作パネルや原稿読み取り機構のケーブルを、装置の一側部を経由して制御部へ配策する技術」が記載されている。

(5)甲第6号証
甲第6号証(特開2008-256889号公報。以下「甲6」という。)には、「駆動装置、給送装置及び画像形成装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。

「【0001】
本発明は、記録シートに電子写真方式で画像を形成する画像形成装置、これに用いられる駆動装置、給送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式で画像を形成する画像形成装置は、シート収納手段から記録シートを1枚ずつに分離搬送するシート分離搬送手段を有している。シート分離搬送手段はモータによって駆動されている。
【0003】
モータは動作時に電磁放射ノイズや動作音を発生する。電磁放射ノイズは、電波障害を引き起こしたり、他の電子機器を誤動作させたりする危険性を有している。動作音は、人にとって騒音となり不快感を与えたりする。
【0004】
このため、電磁放射ノイズや動作音を装置外に出さないような対策がとられる。例えば、電磁放射ノイズ対策としては、金属板で電磁放射ノイズの発生源であるモータを覆う対策がとられている。騒音対策としては、スポンジ状の吸音材を外装カバーの内側に貼る対策がとられている(特許文献1参照)。」

「【0063】
モータカバー1154は、ステッピングモータ1151を覆い、ステッピングモータ1151が回転時に発生する電磁放射ノイズや回転音を遮蔽するカバー部材である。」

以上より、甲6には、「モータからのノイズを遮蔽するためにカバー部材を設ける技術」が記載されている。

(6)甲第7号証
甲第7号証(特開2011-254213号公報。以下「甲7」という。)には、「画像読取装置及びそれを備えた画像形成装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。

「【0074】
原稿移動読取構成では、自動原稿送り装置300で原稿読取ガラス(第1の透明板の一例)206上を通過するように副走査方向(図中矢印Y方向)の一方側Y1(搬送方向Y3)に搬送される原稿Gに対して片面読み取りでは第2読取ユニット220にて、また両面読み取りでは第2読取ユニット220及び読取位置(ここでは初期位置)に位置する第1読取ユニット210にて原稿読取ガラス206を介して主走査方向(図中矢印X方向)に走査してCCD(Charge Coupled Device)等の縮小型光電変換素子(ここではCCD205)で原稿画像を読み取る。また、原稿固定読取構成では、光学系駆動部530(図4及び図5参照)で第1読取ユニット210を副走査方向Yの他方側Y2に移動させつつ原稿台ガラス(第2の透明板の一例)207を介して原稿台ガラス207上に載置された原稿Gに対して主走査方向Xに走査してCCD205で原稿画像を読み取る。」

「【0102】
なお、上流側搬送ローラ対304a,304b、下流側搬送ローラ対305a,305b、排出ローラ対310等の搬送系ローラは、図示しない搬送系の駆動部にて駆動されるようになっている。」

「【0105】
画像読取装置100は、さらに、原稿移動読取モードにおいて、第2読取ユニット220で一方の面(表面)を読み取り可能とされている。
【0106】
詳しくは、画像読取装置100は、前記の構成に加えて、第2読取ユニット220を備えている。第2読取ユニット220は、読取位置が第1読取ユニット210の読取位置よりも搬送方向Y3の上流側に位置しており、自動原稿送り装置300内に固定されて支持されている。第2読取ユニット220は、第1読取ユニット210と同じ構成のベースユニット400を有しており、同じ構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。」

「【0112】
なお、原稿Gの一方の面と他方の面との両面を読み取る場合には、第2読取ユニット220と共に読取位置に静止させた第1読取ユニット210を用いるが、この読み取り動作については前述した第2読取ユニット220と同様であり、ここでは説明を省略する。」

「【図3】



段落【0074】によると、甲7に記載された「画像読取装置」は、
「原稿が搬送される搬送路の上側に配置され、前記搬送路を搬送される方向に搬送される原稿の一方の面を読み取る第2読取ユニット」、「前記搬送路の下側に配置され、前記搬送路を搬送される方向に搬送される原稿の他方の面を読み取る第1読取ユニット」を備えている。
また、段落【0102】によると、甲7に記載された「画像読取装置」は、「原稿を搬送するための駆動部」を備えている。

以上より、甲7には、
「原稿が搬送される搬送路の上側に配置され、前記搬送路を搬送される方向に搬送される原稿の一方の面を読み取る第2読取ユニットと、
前記搬送路の下側に配置され、前記搬送路を搬送される方向に搬送される原稿の他方の面を読み取る第1読取ユニットと、
原稿を搬送するための駆動部とを備えた画像読取装置」
が記載されている。

4 判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 特許法第29条第2項について
(ア)本件発明1
a 甲1発明に基づく容易想到性
(a)本件発明1、甲1発明
本件発明1と甲1発明とを対比するにあたり、本件発明1と甲1発明とを再掲する。

(本件発明1)
(1A)第1コネクタを有し、搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成された第1読取部と、
(1B)前記搬送路に対して前記第1読取部と反対側に配置され、第2コネクタを有し、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成された第2読取部と、
(1C)前記第1読取部および前記第2読取部に対して前記搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され、前記シートを搬送するための駆動力を発生する駆動源と、
(1D)前記第1読取部に対して前記第2読取部側に配置され、第3コネクタおよび第4コネクタを有する基板と、
(1E)前記第1コネクタに一端が接続され、前記第3コネクタに他端が接続された第1ケーブルと、
(1F)前記第2コネクタに一端が接続され、前記第4コネクタに他端が接続された第2ケーブルとを備え、
(1G)前記第1コネクタは、前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され、
(1H)前記第1ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであり、前記第1コネクタと前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向における前記第2読取部に対する前記第1読取部側から対向する位置で前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている、
(1I)画像読取装置。

(甲1発明)
(1a)第1接続点を有し、搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成された第二イメージセンサと、
(1b)前記搬送路に対して前記第二イメージセンサと反対側に配置され、第2接続点を有し、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成された第一イメージセンサと、
(1c)前記第一イメージセンサよび前記第二イメージセンサに対して前記搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され、前記シートを搬送するための駆動力を発生するADF駆動モータと、
(1d)前記第二イメージセンサに対して前記第一イメージセンサ側に配置され、第3接続点および第4接続点を有する制御基板と、
(1e)前記第1接続点に一端が接続され、前記第3接続点に他端が接続された第二フレキシブルフラットケーブルと、
(1f)前記第2接続点に一端が接続され、前記第4接続点に他端が接続された第一フレキシブルフラットケーブルとを備え、
(1g)第二フレキシブルフラットケーブルは、第二イメージセンサをADF駆動モータ側に迂回する
(1h)画像読取装置。

(b)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。

構成要件1A?1Fと構成1a?1fとを対比する。
甲1発明の「第二イメージセンサ」、「第一イメージセンサ」、「ADF駆動モータ」、「制御基板」、「第二フレキシブルフラットケーブル」、「第一フレキシブルフラットケーブル」は、それぞれ、本件発明1の「第1読取部」、「第2読取部」、「駆動源」、「基板」、「第1ケーブル」、「第2ケーブル」に相当する。
甲1発明の「第1接続点」、「第2接続点」、「第3接続点」、「第4接続点」は、それぞれ、本件発明1の「第1コネクタ」、「第2コネクタ」、「第3コネクタ」、「第4コネクタ」に対応するものの、甲1発明の「接続点」が「コネクタ」ではない点で、本件発明1と相違する。

構成要件1Gは、「前記第1コネクタは、前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され」であるが、甲1発明においては、「第1コネクタ」がないから、「第1コネクタ」の配置が特定されていない点で相違する。

構成要件1Hと構成1gとを対比する。
甲1発明の「第二フレキシブルフラットケーブル」は、上記のとおり、本件発明1の「第1ケーブル」に相当するから、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであ」る点で一致する。
しかしながら、「前記第1ケーブル」が、本件発明1においては、「前記第1コネクタと前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向における前記第2読取部に対する前記第1読取部側から対向する位置で前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている」のに対し、甲1発明においては、そのような構成になっていない点で相違する。

構成要件1Iと構成1hとを対比すると、「画像読取装置」として一致する。

(c)一致点、相違点
以上より、一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
第1接続点を有し、搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成された第1読取部と、
前記搬送路に対して前記第1読取部と反対側に配置され、第2接続点を有し、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成された第2読取部と、
前記第1読取部および前記第2読取部に対して前記搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され、前記シートを搬送するための駆動力を発生する駆動源と、
前記第1読取部に対して前記第2読取部側に配置され、第3接続点および第4接続点を有する基板と、
前記第1接続点に一端が接続され、前記第3接続点に他端が接続された第1ケーブルと、
前記第2接続点に一端が接続され、前記第4接続点に他端が接続された第2ケーブルとを備え、
前記第1ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルである、
画像読取装置。

(相違点1)
「第1接続点」、「第2接続点」、「第3接続点」、「第4接続点」が、
本件発明1においては、「第1コネクタ」、「第2コネクタ」、「第3コネクタ」、「第4コネクタ」であるのに対し、
甲1発明においては、「第1コネクタ」、「第2コネクタ」、「第3コネクタ」、「第4コネクタ」ではない点

(相違点2)
本件発明1においては、「前記第1コネクタは、前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され」るのに対し、
甲1発明においては、「第1コネクタ」がないから、「前記第1コネクタは、前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され」るものではない点

(相違点3)
「第1ケーブル」が、
本件発明1においては、
「前記第1コネクタと前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向における前記第2読取部に対する前記第1読取部側から対向する位置で前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている」のに対し、
甲1発明においては、そのような構成になっていない点

(d)判断
相違点3について検討する。
甲1をみても、甲1発明において、「第1ケーブル」に相当する「第二フレキシブルフラットケーブル」を「前記第1コネクタと前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向における前記第2読取部に対する前記第1読取部側から対向する位置で前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている」ようにする理由はない。
また、甲2?甲7をみても、甲1発明において、「第1ケーブル」に相当する「第二フレキシブルフラットケーブル」を、相違点3に係る構成にする理由はない。
したがって、本件発明1は、当業者が、甲1発明及び甲2?甲7に記載された技術に基づいて容易になし得るものではない。

b 甲2発明に基づく容易想到性
(a)本件発明1、甲2発明
本件発明1と甲2発明とを対比するにあたり、本件発明1と甲2発明とを再掲する。

(本件発明1)
(1A)第1コネクタを有し、搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成された第1読取部と、
(1B)前記搬送路に対して前記第1読取部と反対側に配置され、第2コネクタを有し、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成された第2読取部と、
(1C)前記第1読取部および前記第2読取部に対して前記搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され、前記シートを搬送するための駆動力を発生する駆動源と、
(1D)前記第1読取部に対して前記第2読取部側に配置され、第3コネクタおよび第4コネクタを有する基板と、
(1E)前記第1コネクタに一端が接続され、前記第3コネクタに他端が接続された第1ケーブルと、
(1F)前記第2コネクタに一端が接続され、前記第4コネクタに他端が接続された第2ケーブルとを備え、
(1G)前記第1コネクタは、前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され、
(1H)前記第1ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであり、前記第1コネクタと前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向における前記第2読取部に対する前記第1読取部側から対向する位置で前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている、
(1I)画像読取装置。

(甲2発明)
(2a)第1接続点を有し、搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成された読取部と、
(2b)前記搬送路に対して前記読取部と反対側に配置され、第2接続点を有し、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成された本体部側読取部と、
(2c)前記読取部よび前記本体部側読取部に対して前記搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され、前記シートを搬送するための駆動力を発生する駆動源と、
(2d)前記読取部に対して前記本体部側読取部側に配置され、第1のコネクタおよび第2のコネクタを有する制御基板と、
(2e)前記第1接続点に一端が接続され、前記第1のコネクタに他端が接続されたフレキシブルフラットケーブル7Aと、
(2f)前記第2接続点に一端が接続され、前記第2のコネクタに他端が接続されたフレキシブルフラットケーブル7Bとを備え、
(2g)フレキシブルフラットケーブル7Aは、読取部を駆動源側に迂回する
(2h)画像読取装置。

(b)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。

構成要件1A?1Fと構成2a?2fとを対比する。
甲2発明の「読取部」、「本体部側読取部」、「駆動源」、「制御基板」、「フレキシブルフラットケーブル7A」、「フレキシブルフラットケーブル7B」、「第1のコネクタ」、「第2のコネクタ」は、それぞれ、本件特許発明1の「第1読取部」、「第2読取部」、「駆動源」、「基板」、「第1ケーブル」、「第2ケーブル」、「第3コネクタ」、「第4コネクタ」に相当する。
甲2発明の「第1接続点」、「第2接続点」は、それぞれ、本件特許発明1の「第1コネクタ」、「第2コネクタ」に対応するものの、甲2発明の「接続点」が「コネクタ」ではない点で、本件発明1と相違する。

構成要件1Gは、「前記第1コネクタは、前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され」であるが、甲2発明においては、「第1コネクタ」がないから、「第1コネクタ」の配置が特定されていない点で相違する。

構成要件1Hと構成2gとを対比する。
甲2発明の「フレキシブルフラットケーブル7A」は、上記のとおり、本件発明1の「第1ケーブル」に相当するから、本件発明1と甲2発明とは、「前記第1ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであ」る点で一致する。
しかしながら、「前記第1ケーブル」が、本件発明1においては、「前記第1コネクタと前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向における前記第2読取部に対する前記第1読取部側から対向する位置で前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている」のに対し、甲2発明においては、そのような構成になっていない点で相違する。

構成要件1Iと構成2hとを対比すると、「画像読取装置」として一致する。

(c)一致点、相違点
以上より、一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
第1接続点を有し、搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成された第1読取部と、
前記搬送路に対して前記第1読取部と反対側に配置され、第2接続点を有し、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成された第2読取部と、
前記第1読取部および前記第2読取部に対して前記搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され、前記シートを搬送するための駆動力を発生する駆動源と、
前記第1読取部に対して前記第2読取部側に配置され、第3コネクタおよび第4コネクタを有する基板と、
前記第1接続点に一端が接続され、前記第3コネクタに他端が接続された第1ケーブルと、
前記第2接続点に一端が接続され、前記第4コネクタに他端が接続された第2ケーブルとを備え、
前記第1ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルである、
画像読取装置。

(相違点1)
「第1接続点」、「第2接続点」が、
本件発明1においては、「第1コネクタ」、「第2コネクタ」であるのに対し、
甲2発明においては、「第1コネクタ」、「第2コネクタ」ではない点

(相違点2)
本件発明1においては、「前記第1コネクタは、前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され」るのに対し、
甲2発明においては、「第1コネクタ」がないから、「前記第1コネクタは、前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され」るものではない点

(相違点3)
「第1ケーブル」が、
本件発明1においては、
「前記第1コネクタと前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向における前記第2読取部に対する前記第1読取部側から対向する位置で前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている」のに対し、
甲2発明においては、そのような構成になっていない点

(d)判断
相違点3について検討する。
甲2をみても、甲2発明において、「第1ケーブル」に相当する「フレキシブルフラットケーブル7A」を「前記第1コネクタと前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向における前記第2読取部に対する前記第1読取部側から対向する位置で前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている」ようにする理由はない。
また、甲1、甲3?甲7をみても、甲2発明において、「第1ケーブル」に相当する「フレキシブルフラットケーブル7A」を、相違点3に係る構成にする理由はない。
したがって、本件発明1は、当業者が、甲2発明及び甲1、甲3?甲7に記載された技術に基づいて容易になし得るものではない。

(イ)本件発明2?3
本件発明2?3は、請求項1の記載(本件発明1)を直接又は間接的に引用するから、本件発明1と同じ理由により、当業者が、甲1発明及び甲2?甲7に記載された技術に基づいて容易になし得るものではなく、甲2発明及び甲1、甲3?甲7に記載された技術に基づいて容易になし得るものではない。

(ウ)本件発明4?5
本件発明4?5は、削除された。

イ 特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、第6項第2号
(ア)本件発明1においては、「第1ケーブル」が、「前記第1コネクタと前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向における前記第2読取部に対する前記第1読取部側から対向する位置で前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている」ことが規定され、明確である。このように構成されることにより、幅方向に小型化が図れることは明らかである。
また、上記第2の2(1)ア(ウ)のとおり、発明の詳細な説明に記載されており、発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明1を実施できる程度に明確かつ十分に記載されている。
上記2(2)アの本件発明1?8に対する取消理由及び上記2(2)イ、カの取消理由は解消した。

(イ)本件発明4、5は、削除されたから、上記2(2)ウの取消理由は、理由がない。

(ウ)本件発明6は、
「前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側に設けられ、前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向に延び、前記幅方向の一方側の端縁が前記第1ケーブルに対して前記幅方向の一方側に位置する壁部を備え、
前記壁部は、前記駆動源に対して前記直交方向の一方側の位置と前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側の位置との間を延びる第1壁部と、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側の位置と前記駆動源に対して前記直交方向の他方側の位置との間を延びる第2壁部とを含み、
前記第1ケーブルは、前記壁部に対して前記搬送方向の下流側を前記壁部に沿って延びる、請求項1?3のいずれか一項に記載の画像読取装置。」
であり、第1ケーブル、駆動源、壁部の関係が明確であり、本件発明6は明確である。
また、上記第2の2(1)エのとおり、発明の詳細な説明に記載されており、発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明6を実施できる程度に明確かつ十分に記載されている。
上記2(2)エの取消理由は解消した。

(エ)本件発明7は、
「前記基板は、第5コネクタを有し、
前記第2読取部に対して前記第1読取部側に配置され、第6コネクタを有し、各種操作を受け付けるように構成される操作部と、
前記第5コネクタに一端が接続され、前記第6コネクタに他端が接続された第3ケーブルとを備え、
前記第6コネクタは、前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され、
前記第3ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであり、前記第5コネクタと前記第6コネクタとの間で、前記第6コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記直交方向における前記読み取り部に対する前記第1読取部側から対向する位置で、前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている、請求項1?3、6のいずれか一項に記載の画像読取装置。」
であって、「第3ケーブル」の「前記第5コネクタと前記第6コネクタとの間」の構成が明確であり、本件発明7は明確である。このように構成されることにより、幅方向に小型化が図れることは明らかである。
また、上記第2の2(1)オのとおり、発明の詳細な説明に記載されており、発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明7を実施できる程度に明確かつ十分に記載されている。
上記2(2)オ、カの取消理由は解消した。

(オ)本件発明9においては、「第1ケーブル」が、「前記第1コネクタと前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して上側から対向する位置で下側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を上下方向における下側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延び」ることが規定され、明確である。このように構成されることにより、幅方向に小型化が図れることは明らかである。
また、上記第2の2(2)のとおり、発明の詳細な説明に記載されており、発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明9を実施できる程度に明確かつ十分に記載されている。
上記2(2)アの本件発明9に対する取消理由及び上記2(2)オ、カの取消理由は解消した。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 特許法第29条第1項第3号
特許異議申立人は、本件発明1、2は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明であると主張する。
しかしながら、本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、上記(1)ア(ア)a(b)のとおり、相違点があり、本件発明1と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、上記(1)ア(ア)b(b)のとおり、相違点があるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明でなく、甲第2号証に記載された発明でもない。
したがって、上記主張に理由はない。

イ 特許法第29条第2項
(ア)本件発明6?8について
特許異議申立人は、本件発明6?8は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明、及び周知技術から、容易になし得た発明であると主張する。
しかしながら、本件発明6?8は、請求項1の記載(本件発明1)を直接又は間接的に引用しており、本件発明1が、甲1発明及び甲2?7に記載された技術、又は甲2発明及び甲1、甲3?7に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものではないことは、上記(1)ア(ア)のとおりであるから、本件発明6?8は、甲1発明及び甲2?7に記載された技術、又は甲2発明及び甲1、甲3?7に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、上記主張に理由はない。

(イ)本件発明9について
特許異議申立人は、本件発明9は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明、及び周知技術から、容易になし得た発明であると主張する。
しかしながら、上記主張に理由はない。
詳細は以下のとおりである。

a 本件発明9
本件発明9を再掲すると次のとおりである。

(本件発明9)
(9A)シートが搬送される搬送路の上側に配置され、第1コネクタを有し、前記搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成された第1読取部と、
(9B)前記搬送路の下側に配置され、第2コネクタを有し、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成された第2読取部と、
(9C)前記第1読取部および前記第2読取部に対して前記搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され、前記シートを搬送するための駆動力を発生する駆動源と、
(9D)前記第2読取部の下側に配置され、第3コネクタおよび第4コネクタをそれぞれ前記幅方向の一方側および他方側の端部に有する基板と、
(9E)前記第1コネクタに一端が接続され、前記第3コネクタに他端が接続された第1ケーブルと、
(9F)前記第2コネクタに一端が接続され、前記第4コネクタに他端が接続された第2ケーブルとを備え、
(9G)前記第1コネクタは、前記第1読取部の上側における前記幅方向の他方側の端部に、前記第1ケーブルが前記搬送方向の下流側から接続されるように配置され、
(9H)前記第2コネクタは、前記第2読取部の下側における前記幅方向の一方側の端部に、前記第2ケーブルが前記搬送方向の下流側から接続されるように配置され、
(9I)前記第1ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであり、前記第1コネクタと前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して上側から対向する位置で下側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を上下方向における下側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延び、
(9J)前記第2ケーブルは、前記第2コネクタと前記第4コネクタとの間で、前記幅方向に延びる、
(9K)画像読取装置。

b 甲1発明に基づく容易想到性
(a)甲1発明
甲1発明を再掲すると次のとおりである。

(甲1発明)
(1a)第1接続点を有し、搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成された第二イメージセンサと、
(1b)前記搬送路に対して前記第二イメージセンサと反対側に配置され、第2接続点を有し、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成された第一イメージセンサと、
(1c)前記第一イメージセンサよび前記第二イメージセンサに対して前記搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され、前記シートを搬送するための駆動力を発生するADF駆動モータと、
(1d)前記第二イメージセンサに対して前記第一イメージセンサ側に配置され、第3接続点および第4接続点を有する制御基板と、
(1e)前記第1接続点に一端が接続され、前記第3接続点に他端が接続された第二フレキシブルフラットケーブルと、
(1f)前記第2接続点に一端が接続され、前記第4接続点に他端が接続された第一フレキシブルフラットケーブルとを備え、
(1g)第二フレキシブルフラットケーブルは、第二イメージセンサをADF駆動モータ側に迂回する
(1h)画像読取装置。

(b)対比・判断
構成要件9Aと構成1aとを対比する。
甲1発明の「第二イメージセンサ」は、本件発明9の「第1読取部」に対応する。
しかしながら、甲1発明の「第二イメージセンサ」は、「シートが搬送される搬送路の上側に配置され」るものでなく、本件発明9と相違する。
本件発明9と甲1発明とを全体的にみると、ともに、第1読取部、第2読取部を備える画像読取装置といえるものの、第1読取部の配置が異なり、構造が相違するものである。
甲1発明において、「第1読取部」に相当する「第二イメージセンサ」を「シートが搬送される搬送路の上側に配置され」るようにする理由は、甲1にはなく、甲2?甲7をみても、当該理由はない。
したがって、本件発明9は、甲1発明及び甲第2号証?甲第7号証に記載された技術に基づいて容易になし得たものではない。

c 甲2発明に基づく容易想到性
(a)甲2発明
甲2発明を再掲すると次のとおりである。

(甲2発明)
(2a)第1接続点を有し、搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成された読取部と、
(2b)前記搬送路に対して前記読取部と反対側に配置され、第2接続点を有し、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成された本体部側読取部と、
(2c)前記読取部よび前記本体部側読取部に対して前記搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され、前記シートを搬送するための駆動力を発生する駆動源と、
(2d)前記読取部に対して前記本体部側読取部側に配置され、第1のコネクタおよび第2のコネクタを有する制御基板と、
(2e)前記第1接続点に一端が接続され、前記第1のコネクタに他端が接続されたフレキシブルフラットケーブル7Aと、
(2f)前記第2接続点に一端が接続され、前記第2のコネクタに他端が接続されたフレキシブルフラットケーブル7Bとを備え、
(2g)フレキシブルフラットケーブル7Aは、読取部を駆動源側に迂回する
(2h)画像読取装置。

(b)対比・判断
構成要件9Aと構成2aとを対比する。
甲2発明の「読取部」は、本件発明9の「第1読取部」に対応する。
しかしながら、甲2発明の「読取部」は、「シートが搬送される搬送路の上側に配置され」るものでなく、本件発明9と相違する。
本件発明9と甲2発明とを全体的にみると、ともに、第1読取部、第2読取部を備える画像読取装置といえるものの、第1読取部の配置が異なり、構造が相違するものである。
甲2発明において、「第1読取部」に相当する「読取部」を「シートが搬送される搬送路の上側に配置され」るようにする理由は、甲2にはなく、甲1、甲3?甲7をみても、当該理由はない。
したがって、本件発明9は、甲2発明及び甲第1号証、甲第3号証?甲第7号証に記載された技術に基づいて容易になし得たものではない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?3、6?9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?3、6?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項4、5に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項4、5に対して、特許異議申立人がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コネクタを有し、搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成された第1読取部と、
前記搬送路に対して前記第1読取部と反対側に配置され、第2コネクタを有し、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成された第2読取部と、
前記第1読取部および前記第2読取部に対して前記搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され、前記シートを搬送するための駆動力を発生する駆動源と、
前記第1読取部に対して前記第2読取部側に配置され、第3コネクタおよび第4コネクタを有する基板と、
前記第1コネクタに一端が接続され、前記第3コネクタに他端が接続された第1ケーブルと、
前記第2コネクタに一端が接続され、前記第4コネクタに他端が接続された第2ケーブルとを備え、
前記第1コネクタは、前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され、
前記第1ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであり、前記第1コネクタと前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向における前記第2読取部に対する前記第1読取部側から対向する位置で前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている、画像読取装置。
【請求項2】
前記基板は、前記第2読取部に対して前記第1読取部と反対側に配置され、
前記第2コネクタは、前記第2読取部における前記基板側に設けられ、
前記第2ケーブルは、前記第2コネクタと前記第4コネクタとの間で前記幅方向に延びる、請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記第1コネクタは、前記第1読取部における前記幅方向の他方側の端部に配置され、
前記第2コネクタは、前記第2読取部における前記幅方向の一方側の端部に配置され、
前記第3コネクタは、前記基板における前記幅方向の一方側の端部に配置され、
前記第4コネクタは、前記基板における前記幅方向の他方側の端部に配置されている、請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側に設けられ、前記搬送方向および前記幅方向の両方向と直交する直交方向に延び、前記幅方向の一方側の端縁が前記第1ケーブルに対して前記幅方向の一方側に位置する壁部を備え、
前記壁部は、前記駆動源に対して前記直交方向の一方側の位置と前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側の位置との間を延びる第1壁部と、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側の位置と前記駆動源に対して前記直交方向の他方側の位置との間を延びる第2壁部とを含み、
前記第1ケーブルは、前記壁部に対して前記搬送方向の下流側を前記壁部に沿って延びる、請求項1?3のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記基板は、第5コネクタを有し、
前記第2読取部に対して前記第1読取部側に配置され、第6コネクタを有し、各種操作を受け付けるように構成される操作部と、
前記第5コネクタに一端が接続され、前記第6コネクタに他端が接続された第3ケーブルとを備え、
前記第6コネクタは、前記第1読取部に対して前記第2読取部と反対側に配置され、
前記第3ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであり、前記第5コネクタと前記第6コネクタとの間で、前記第6コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して前記直交方向における前記読み取り部に対する前記第1読取部側から対向する位置で、前記第2読取部側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を前記直交方向における前記第1読取部側と反対側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延びている、請求項1?3、6のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記第1ケーブルと前記第3ケーブルとの間に介在されるフィルムを備える、請求項7に記載の画像読取装置。
【請求項9】
シートが搬送される搬送路の上側に配置され、第1コネクタを有し、前記搬送路を搬送方向に搬送されるシートの画像を読み取るように構成された第1読取部と、
前記搬送路の下側に配置され、第2コネクタを有し、前記搬送路を前記搬送方向に搬送される前記シートの画像を読み取るように構成された第2読取部と、
前記第1読取部および前記第2読取部に対して前記搬送方向と直交する幅方向の一方側に配置され、前記シートを搬送するための駆動力を発生する駆動源と、
前記第2読取部の下側に配置され、第3コネクタおよび第4コネクタをそれぞれ前記幅方向の一方側および他方側の端部に有する基板と、
前記第1コネクタに一端が接続され、前記第3コネクタに他端が接続された第1ケーブルと、
前記第2コネクタに一端が接続され、前記第4コネクタに他端が接続された第2ケーブルとを備え、
前記第1コネクタは、前記第1読取部の上側における前記幅方向の他方側の端部に、前記第1ケーブルが前記搬送方向の下流側から接続されるように配置され、
前記第2コネクタは、前記第2読取部の下側における前記幅方向の一方側の端部に、前記第2ケーブルが前記搬送方向の下流側から接続されるように配置され、
前記第1ケーブルは、面および厚みを有するフレキシブルフラットケーブルであり、前記第1コネクタと前記第3コネクタとの間で、前記第1コネクタから前記第1読取部を前記駆動源側に越える位置まで、前記面を前記第1読取部に向けて延び、前記第1読取部を前記駆動源側に越えて、前記駆動源に対して上側から対向する位置で下側に屈曲し、前記駆動源に対して前記搬送方向の下流側から対向する位置において、前記第2読取部を上下方向における下側に越える位置まで、前記面を前記駆動源に向けて延び、
前記第2ケーブルは、前記第2コネクタと前記第4コネクタとの間で、前記幅方向に延びる、画像読取装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-06-13 
出願番号 特願2013-71216(P2013-71216)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (H04N)
P 1 651・ 121- YAA (H04N)
P 1 651・ 537- YAA (H04N)
P 1 651・ 113- YAA (H04N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 豊田 好一  
特許庁審判長 篠原 功一
特許庁審判官 冨田 高史
小池 正彦
登録日 2016-05-20 
登録番号 特許第5935738号(P5935738)
権利者 ブラザー工業株式会社
発明の名称 画像読取装置  
代理人 皆川 祐一  
代理人 皆川 祐一  

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