• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1331180
異議申立番号 異議2017-700164  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-23 
確定日 2017-07-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5974655号発明「アミド化合物の結晶を微細化する方法を含むポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法、該製造方法により得られるポリプロピレン系樹脂成形体、及びその二次加工成形品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5974655号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第5974655号の請求項2ないし17に係る特許を維持する。 特許第5974655号の請求項1に係る特許についての特許異議申し立てを却下する。 
理由 第1 主な手続の経緯等

特許第5974655号(設定登録時の請求項の数17。以下、「本件特許」という。)は、平成24年6月13日に出願された特願2012-134297号に係るものであって、平成28年7月29日に設定登録された。
特許異議申立人 大竹紀子(以下、単に「異議申立人」という。)は、平成29年2月23日付けで、本件特許の請求項1ないし17に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。
当審において、平成29年4月14日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、同年6月9日付け(受理日:同月12日)で、訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)及び意見書を提出した。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容
本件訂正による訂正の内容は以下のとおりである。なお、訂正箇所を表示するために下線を当審において付与した。

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に
「アミド化合物の微細な針状結晶を含有するポリプロピレン系樹脂組成物が、(i)ポリプロピレン系樹脂及びアミド化合物を含む未混練原料を加熱し、溶融したポリプロピレン系樹脂中にアミド化合物を溶解させる工程、及び(ii)前記工程(i)で得られた溶融状態のポリプロピレン系樹脂組成物を冷却して、アミド化合物の微細な針状結晶を析出させる工程を具備する製造方法で得られる組成物であり、
前記工程(i)におけるポリプロピレン系樹脂組成物の溶融温度が、T_(dis)以上、T_(dis)+50℃以下(T_(dis)はポリプロピレン系樹脂にアミド化合物が溶解する温度を表す)の範囲であり、かつ、
前記工程(ii)において、冷却固化時のストランドの直径を0.5mm以上、2.0mm以下の範囲に調整することを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。」
とあるのを、
「下記一般式(1)で表される少なくとも1種のアミド化合物の微細な針状結晶を含有するポリプロピレン系樹脂組成物を成形する工程を含むポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法であって、
該ポリプロピレン系樹脂組成物の形状が短径0.5mm以上、2.0mm以下であるペレット状であり、かつ成形時に該アミド化合物の微細な針状結晶が溶融状態のポリプロピレン系樹脂中に存在していることを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法であり、かつ、
前記アミド化合物の微細な針状結晶を含有するポリプロピレン系樹脂組成物が、(i)ポリプロピレン系樹脂及びアミド化合物を含む未混練原料を加熱し、溶融したポリプロピレン系樹脂中にアミド化合物を溶解させる工程、及び(ii)前記工程(i)で得られた溶融状態のポリプロピレン系樹脂組成物を冷却して、アミド化合物の微細な針状結晶を析出させる工程を具備する製造方法で得られる組成物であり、
前記工程(i)におけるポリプロピレン系樹脂組成物の溶融温度が、T_(dis)以上、T_(dis)+50℃以下(T_(dis)はポリプロピレン系樹脂にアミド化合物が溶解する温度を表す)の範囲であり、かつ、
前記工程(ii)において、冷却固化時のストランドの直径を0.5mm以上、2.0mm以下の範囲に調整することを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
一般式(1):
【化1】

[式(1)中、R^(1)は、炭素数1?24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4?28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6?28の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R^(2)及びR^(3)は、同一又は異なって、それぞれ炭素数3?18のシクロアルキル基、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す
【化2】

(式(a)?(d)中、R^(4)は水素原子、炭素数1?12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6?10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、R^(5)は炭素数1?12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、R^(6)は、炭素数1?4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表し、R^(7)は、炭素数1?4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す)。]」
に訂正する。
請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3ないし10についても同様の訂正を行う。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3ないし10の請求項1からそれぞれの直前の請求項までを引用する形式を、請求項2からそれぞれの直前の請求項までを引用する形式に訂正する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

ア 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項に改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
そして、当該訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
そして、当該訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項2において請求項1が削除されたことに伴い、訂正前の請求項3ないし10における引用請求項において請求項1を引用しないようにするものであって、引用する請求項の一部を削除することになるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
そして、当該訂正事項3は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 訂正事項1ないし3に係る訂正前の請求項1ないし10について、請求項2ないし10は請求項1を引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第4項、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1ないし10]について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり、本件訂正は適法であるので、本件特許の請求項1ないし17に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明17」という。)は、平成29年6月9日付け訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
下記一般式(1)で表される少なくとも1種のアミド化合物の微細な針状結晶を含有するポリプロピレン系樹脂組成物を成形する工程を含むポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法であって、
該ポリプロピレン系樹脂組成物の形状が短径0.5mm以上、2.0mm以下であるペレット状であり、かつ成形時に該アミド化合物の微細な針状結晶が溶融状態のポリプロピレン系樹脂中に存在していることを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法であり、かつ、
前記アミド化合物の微細な針状結晶を含有するポリプロピレン系樹脂組成物が、(i)ポリプロピレン系樹脂及びアミド化合物を含む未混練原料を加熱し、溶融したポリプロピレン系樹脂中にアミド化合物を溶解させる工程、及び(ii)前記工程(i)で得られた溶融状態のポリプロピレン系樹脂組成物を冷却して、アミド化合物の微細な針状結晶を析出させる工程を具備する製造方法で得られる組成物であり、
前記工程(i)におけるポリプロピレン系樹脂組成物の溶融温度が、T_(dis)以上、T_(dis)+50℃以下(T_(dis)はポリプロピレン系樹脂にアミド化合物が溶解する温度を表す)の範囲であり、かつ、
前記工程(ii)において、冷却固化時のストランドの直径を0.5mm以上、2.0mm以下の範囲に調整することを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
一般式(1):
【化1】

[式(1)中、R^(1)は、炭素数1?24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4?28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6?28の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R^(2)及びR^(3)は、同一又は異なって、それぞれ炭素数3?18のシクロアルキル基、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す
【化2】

(式(a)?(d)中、R^(4)は水素原子、炭素数1?12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6?10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、R^(5)は炭素数1?12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、R^(6)は、炭素数1?4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表し、R^(7)は、炭素数1?4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す)。]
【請求項3】
一般式(1)において、R^(1)が炭素数1?12の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6?10の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6?20の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R^(2)及びR^(3)が、同一又は異なって、それぞれ炭素数3?12のシクロアルキル基、又は一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す請求項2に記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
一般式(1)において、R^(1)が炭素数4?8の飽和脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6?8の飽和脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6?20の芳香族ジカルボン酸残基であり、R^(2)及びR^(3)が、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1?4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基又はフェニル基である請求項2又は3の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
一般式(1)において、R^(1)が、一般式(e)、又は一般式(f)
【化3】

で表される芳香族ジカルボン酸残基であり、R^(2)及びR^(3)が、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1?4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である請求項2?4の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項6】
アミド化合物が、N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミドである請求項2?5の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項7】
アミド化合物が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.03?0.5重量部含有する請求項2?6の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項8】
ポリプロピレン系樹脂組成物中に、前記アミド化合物と、飽和又は不飽和の脂肪酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が共存している請求項2?7の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項9】
ポリプロピレン系樹脂の230℃、荷重2160gにおけるメルトフローレートが0.5?60.0g/10分である請求項2?8の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項10】
ポリプロピレン系樹脂組成物の示差走査熱量計(DSC)で測定した135℃での等温結晶化における結晶化完了時間(Tend)が1.2分以下である請求項2?9の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項11】
ポリプロピレン系樹脂組成物中に含有される下記一般式(1)で表される少なくとも1種のアミド化合物の針状結晶を微細化する方法であって、
(i)ポリプロピレン系樹脂及びアミド化合物を含む未混練原料を加熱し、溶融したポリプロピレン系樹脂中にアミド化合物を溶解させる工程、及び(ii)前記工程(i)で得られた溶融状態のポリプロピレン系樹脂組成物を冷却して、アミド化合物の針状結晶を析出させる工程を具備する方法であり、かつ、
前記工程(ii)において、冷却固化時のストランドの直径を0.5mm以上、2.0mm以下の範囲に調整することを特徴とする方法。
一般式(1):
【化4】

[式(1)中、R^(1)は、炭素数1?24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4?28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6?28の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R^(2)及びR^(3)は、同一又は異なって、それぞれ炭素数3?18のシクロアルキル基、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す
【化5】

(式(a)?(d)中、R^(4)は水素原子、炭素数1?12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6?10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、R^(5)は炭素数1?12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、R^(6)は、炭素数1?4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表し、R^(7)は、炭素数1?4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す)。]
【請求項12】
一般式(1)において、R^(1)が、炭素数1?12の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6?10の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6?20の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R^(2)及びR^(3)が、同一又は異なって、それぞれ炭素数3?12のシクロアルキル基、又は一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す請求項11に記載の方法。
【請求項13】
一般式(1)において、R^(1)が炭素数4?8の飽和脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6?8の飽和脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6?20の芳香族ジカルボン酸残基であり、R^(2)及びR^(3)が、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1?4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基又はフェニル基である請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
一般式(1)において、R^(1)が一般式(e)、又は一般式(f)
【化6】

で表される芳香族ジカルボン酸残基であり、R^(2)及びR^(3)が、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1?4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である請求項11?13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
アミド化合物が、N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミドである請求項13?14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
(i)ポリプロピレン系樹脂、下記一般式(1)で表される少なくとも1種のアミド化合物を含む未混練原料を加熱し、溶融したポリプロピレン系樹脂中にアミド化合物を溶解させる工程、
(ii)前記工程(i)で得られた溶融状態のポリプロピレン系樹脂組成物を冷却して、アミド化合物の微細な針状結晶を析出させる工程、及び
(iii)前記工程(ii)で得られたアミド化合物の微細な針状結晶を析出させたポリプロピレン系樹脂組成物を、T_(m)+10℃以上、T_(dis)-10℃未満(T_(m)は、ポリプロピレン系樹脂の融点を表す)の温度範囲で溶融させ、成形する工程を含むポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法であって、
前記工程(ii)で得られたアミド系化合物の針状結晶を含有するポリプロピレン系樹脂組成物がペレット形状であり、その短径が0.5mm以上、2.0mm以下の範囲であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
一般式(1):
【化7】

[式(1)中、R^(1)は一般式(e)、又は一般式(f)
【化8】

で表される芳香族ジカルボン酸残基を表し、R^(2)及びR^(3)は、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1?4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基を表す]
【請求項17】
アミド化合物が、N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミドである請求項16に記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。」

第4 取消理由

平成29年4月14日付けで通知した取消理由は、本件特許の請求項1、3ないし10についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、取り消すべきであるというものである。

第5 上記取消理由についての当審の判断

当審は、上記取消理由に係る請求項は、本件訂正により削除されたので、当該取消理由を採用する余地はないから、訂正後の請求項2ないし10に係る発明についての特許は、第4の取消理由によっては、いずれも取り消すべきものでなく、また、訂正後の請求項1については、削除されたことにより、請求項1についての特許異議の申立ては、不適法なものとして却下すべきもの、と判断する。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立ての理由について

1 特許異議申立書に添付された甲第1号証(特開平8-197640号公報)を主たる文献とし、従たる文献として甲第2号証(特開2006-233379号公報)及び甲第3号証(特開2012-12595号公報)に基づく特許法第29条第2項(進歩性)について

甲第1号証には、ペレットの短径(ストランドの直径)についての記載はない。
一方、甲第2号証及び甲第3号証には、ペレットの短径(ストランドの直径)が0.5?2.0mmであるものが示されていて、当該数値範囲のペレット自体は周知であるといえる。
しかしながら、甲第1号証に記載された発明において、ペレットの短径を当該数値範囲とする動機がなく、本件明細書において具体的に確認されている、当該数値範囲の短径をもつペレットを選択することにより、成形体の耐熱性向上、剛性の向上の程度がより上昇するとの有利な効果は、当業者においても予測できない。
そうすると、少なくともこの点において、想到容易とはいえない。

第7 むすび

以上のとおりであるから、当審において通知した取消理由によっては、本件特許の請求項2ないし10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項2ないし17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項1は、本件訂正により削除されたので、本件特許の請求項1に係る特許についての特許異議の申立ては不適法なものであり、却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
下記一般式(1)で表される少なくとも1種のアミド化合物の微細な針状結晶を含有するポリプロピレン系樹脂組成物を成形する工程を含むポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法であって、
該ポリプロピレン系樹脂組成物の形状が短径0.5mm以上、2.0mm以下であるペレット状であり、かつ成形時に該アミド化合物の微細な針状結晶が溶融状態のポリプロピレン系樹脂中に存在していることを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法であり、かつ、
前記ポリプロピレン系樹脂組成物が、(i)ポリプロピレン系樹脂及びアミド化合物を含む未混練原料を加熱し、溶融したポリプロピレン系樹脂中にアミド化合物を溶解させる工程、及び(ii)前記工程(i)で得られた溶融状態のポリプロピレン系樹脂組成物を冷却して、アミド化合物の微細な針状結晶を析出させる工程を具備する製造方法で得られる組成物であり、
前記工程(i)におけるポリプロピレン系樹脂組成物の溶融温度が、T_(dis)以上、T_(dis)+50℃以下(T_(dis)はポリプロピレン系樹脂にアミド化合物が溶解する温度を表す)の範囲であり、かつ、
前記工程(ii)において、冷却固化時のストランドの直径を0.5mm以上、2.0mm以下の範囲に調整することを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
一般式(1):
【化1】

[式(1)中、R^(1)は、炭素数1?24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4?28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6?28の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R^(2)及びR^(3)は、同一又は異なって、それぞれ炭素数3?18のシクロアルキル基、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す
【化2】

(式(a)?(d)中、R^(4)は水素原子、炭素数1?12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6?10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、R^(5)は炭素数1?12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、R^(6)は、炭素数1?4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表し、R^(7)は、炭素数1?4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す)。]
【請求項3】
一般式(1)において、R^(1)が炭素数1?12の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6?10の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6?20の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R^(2)及びR^(3)が、同一又は異なって、それぞれ炭素数3?12のシクロアルキル基、又は一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す請求項2に記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
一般式(1)において、R^(1)が炭素数4?8の飽和脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6?8の飽和脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6?20の芳香族ジカルボン酸残基であり、R^(2)及びR
^(3)が、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1?4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基又はフェニル基である請求項2又は3に記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
一般式(1)において、R^(1)が、一般式(e)、又は一般式(f)
【化3】

で表される芳香族ジカルボン酸残基であり、R^(2)及びR^(3)が、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1?4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である請求項2?4の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項6】
アミド化合物が、N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミドである請求項2?5の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項7】
アミド化合物が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.03?0.5重量部含有する請求項2?6の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項8】
ポリプロピレン系樹脂組成物中に、前記アミド化合物と、飽和又は不飽和の脂肪酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が共存している請求項2?7の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項9】
ポリプロピレン系樹脂の230℃、荷重2160gにおけるメルトフローレートが0.5?60.0g/10分である請求項2?8の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項10】
ポリプロピレン系樹脂組成物の示差走査熱量計(DSC)で測定した135℃での等温結晶化における結晶化完了時間(T_(end))が1.2分以下である請求項2?9の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
【請求項11】
ポリプロピレン系樹脂組成物中に含有される下記一般式(1)で表される少なくとも1種のアミド化合物の針状結晶を微細化する方法であって、
(i)ポリプロピレン系樹脂及びアミド化合物を含む未混練原料を加熱し、溶融したポリプロピレン系樹脂中にアミド化合物を溶解させる工程、及び
(ii)前記工程(i)で得られた溶融状態のポリプロピレン系樹脂組成物を冷却して、アミド化合物の針状結晶を析出させる工程を具備する方法であり、かつ、
前記工程(ii)において、冷却固化時のストランドの直径を0.5mm以上、2.0mm以下の範囲に調整することを特徴とする方法。
一般式(1):
【化4】

[式(1)中、R^(1)は、炭素数1?24の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4?28の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6?28の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R^(2)及びR^(3)は、同一又は異なって、それぞれ炭素数3?18のシクロアルキル基、下記の一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す
【化5】

(式(a)?(d)中、R^(4)は水素原子、炭素数1?12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6?10のシクロアルキル基又はフェニル基を表し、R^(5)は炭素数1?12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、R^(6)は、炭素数1?4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表し、R7は、炭素数1?4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す)。]
【請求項12】
一般式(1)において、R^(1)が、炭素数1?12の飽和若しくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6?10の飽和若しくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6?20の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R^(2)及びR^(3)が、同一又は異なって、それぞれ炭素数3?12のシクロアルキル基、又は一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)又は一般式(d)で示される基を表す請求項11に記載の方法。
【請求項13】
一般式(1)において、R^(1)が炭素数4?8の飽和脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数6?8の飽和脂環族ジカルボン酸残基、又は炭素数6?20の芳香族ジカルボン酸残基であり、R^(2)及びR^(3)が、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1?4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基又はフェニル基である請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
一般式(1)において、R^(1)が一般式(e)、又は一般式(f)
【化6】

で表される芳香族ジカルボン酸残基であり、R^(2)及びR^(3)が、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1?4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である請求項11?13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
アミド化合物が、N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミドである請求項13?14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
(i)ポリプロピレン系樹脂、下記一般式(1)で表される少なくとも1種のアミド化合物を含む未混練原料を加熱し、溶融したポリプロピレン系樹脂中にアミド化合物を溶解させる工程、
(ii)前記工程(i)で得られた溶融状態のポリプロピレン系樹脂組成物を冷却して、アミド化合物の微細な針状結晶を析出させる工程、及び
(iii)前記工程(ii)で得られたアミド化合物の微細な針状結晶を析出させたポリプロピレン系樹脂組成物を、T_(m)+10℃以上、T_(dis)-10℃未満(T_(m)は、ポリプロピレン系樹脂の融点を表す)の温度範囲で溶融させ、成形する工程を含むポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法であって、
前記工程(ii)で得られたアミド系化合物の針状結晶を含有するポリプロピレン系樹脂組成物がペレット形状であり、その短径が0.5mm以上、2.0mm以下の範囲であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
一般式(1)
【化7】

[式(1)中、R^(1)は一般式(e)、又は一般式(f)
【化8】

で表される芳香族ジカルボン酸残基を表し、R^(2)及びR^(3)は、同一又は異なって、それぞれ1個の炭素数1?4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基を表す]
【請求項17】
アミド化合物が、N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミドである請求項16に記載のポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-06-23 
出願番号 特願2012-134297(P2012-134297)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08L)
P 1 651・ 121- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 井上 政志  
特許庁審判長 原田 隆興
特許庁審判官 大島 祥吾
守安 智
登録日 2016-07-29 
登録番号 特許第5974655号(P5974655)
権利者 新日本理化株式会社
発明の名称 アミド化合物の結晶を微細化する方法を含むポリプロピレン系樹脂成形体の製造方法、該製造方法により得られるポリプロピレン系樹脂成形体、及びその二次加工成形品  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ