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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B41F
管理番号 1331186
異議申立番号 異議2016-700604  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-07-11 
確定日 2017-06-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5843435号発明「印刷胴、印刷ユニット、印刷機並びに印刷胴の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5843435号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1乃至9〕について訂正することを認める。 特許第5843435号の請求項8、9に係る特許を維持する。 特許第5843435号の請求項1乃至7に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判の請求に係る特許第5843435号(以下「本件特許」という。)の経緯は以下のとおりである。

平成22年10月18日 特願2010-234003号
平成27年10月16日 特許査定
平成27年11月27日 登録
平成28年 7月11日 特許異議申立人 笹倉康助により異議申立て
同年 8月23日 取消理由通知
同年10月24日 意見書・訂正請求書の提出
同年11月 9日 取消理由通知
平成29年 1月10日 意見書・訂正請求書の提出
同年 2月28日 訂正拒絶理由通知
同年 4月 3日 意見書・手続補正書の提出
同年 5月12日 特許異議申立人 笹倉康助より意見書の提出

第2 訂正の適否についての判断
1 手続補正について
平成29年1月10日付けの訂正請求書(以下「訂正請求書」という。)及びこれに添付した訂正特許請求の範囲は、平成29年4月3日付けの手続補正書(以下「手続補正書」という。)により補正されたので、まずは当該補正の適否について検討する。
なお、平成28年10月24日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

(1)手続補正の内容
(1-1)訂正請求書3頁1?21行に
「ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記印刷胴の外周面から前記凹部のエッジ部まで耐久性処理として施されるめっき部が設けられ、」とあるのを、「少なくとも前記印刷胴の外周面からエッジ部まで耐久性処理として施されるめっき部が設けられ、」に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記めっき部は、少なくとも前記エッジ部及び前記エッジ部に連続する前記印刷胴の外周面の一部を除く前記印刷胴の外周面の領域に所定の表面粗さとなるように表面粗度調整加工が施された粗度部を有する、」とあるのを、「前記エッジ部は、前記印刷胴の外周面と前記凹部における傾斜天井との交点から前記印刷胴の外周面側に5?10mm移行した領域を含み、前記めっき部は、少なくとも前記エッジ部を除く前記印刷胴の外周面の領域に前記印刷胴の外周面に巻きつけた部材のずれ防止用として少なくとも前記エッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする表面粗度調整加工が施された粗度部を有する、」に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

エ 訂正前後の請求項の対応を以下に示す。

」とあるのを、
「ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

ウ 訂正前後の請求項の対応を以下に示す。

」と補正する(以下「補正事項1」という。)

(1-2)訂正請求書3頁23行?7頁20行に
「ア 一群の請求項についての説明
訂正事項1?3に係る訂正前の請求項1,2については、請求項2が請求項1を引用しているから、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
イ 訂正事項が全て訂正要件に適合している事実の説明
(ア)訂正事項1
a 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る特許発明は、「めっき部」について「前記印刷胴の外周面から前記凹部のエッジ部まで耐久性処理として施されるめっき部」と特定している。
これに対して、訂正後の請求項1は、「少なくとも前記印刷胴の外周面からエッジ部まで耐久性処理として施されるめっき部」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明におけるめっき部を明確化するものである。すなわち、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aの理由から明らかなように、訂正事項1は、めっき部を明確化するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、特許掲載公報の明細書の実施例に基づいて導き出される構成である。この実施例に係る説明として、段落[0068]には、「本実施例では、版胴12は、素材としての炭素鋼を切削加工により形成し、外周面に耐久性処理としてクロムめっき加工を施すことで、めっき部48を形成する。この場合、このめっき部48は、外周面だけでなく、凹部33におけるエッジ部46,47、傾斜天#44,45、縦壁42,43、底面41の一部にまで形成されている。」との記載がなされ、めっき部が、印刷胴の外周面とエッジ部と凹部の一部、つまり、「少なくとも前記印刷胴の外周面からエッジ部まで耐久性処理として施される」ことが記載されていると言える。そのため、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(イ)訂正事項2
a 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る特許発明は、「エッジ部」について特に特定していない。
これに対して、訂正後の請求項1は、「前記エッジ部は、前記印刷胴の外周面と前記凹部における傾斜天井との交点から前記印刷胴の外周面側に5?10mm移行した領域を含み、」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明におけるエッジ部を明確化するものである。
また、訂正前の請求項1に係る特許発明は、「めっき部」について「前記めっき部は、少なくとも前記エッジ部及び前記エッジ部に連続する前記印刷胴の外周面の一部を除く前記印刷胴の外周面の領域に所定の表面粗さとなるように表面粗度調整加工が施された粗度部を有する、」と特定している。
これに対して、訂正後の請求項1は、「前記めっき部は、少なくとも前記エッジ部を除く前記印刷胴の外周面の領域に前記印刷胴の外周面に巻きつけた部材のずれ防止用として少なくとも前記エッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする表面粗度調整加工が施された粗度部を有する、」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明におけるめっき部を明確化するものである。
すなわち、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aの理由から明らかなように、訂正事項2は、エッジ部とめっき部を明確化するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、特許掲載公報の明細書の実施例に基づいて導き出される構成である。この実施例に係る説明として、段落[0072]には、「エッジ部46,47とは、外周面と傾斜天#44,45との交点の周辺部であり、この交点から外周面側に所定長さ(例えば、5?10mm)だけ移行した領域を含むものである。」との記載がなされていることから、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
また、実施例に係る説明として、段落[0059]には、「少なくとも外周面と凹部33との間のエッジ部を除く外周面の領域に表面粗度調整加工が施されている。」との記載がなされていることから、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、この実施例に係る説明として、段落[0004]には、「版胴は、外周面に刷版が装着され、特に、ブランケット胴との間に所定の圧力(印圧)が作用した状態で使用される。刷版は、版胴の外周面に巻きつけられた状態で、版胴における周方向の各端部が版胴の版締め装置により支持されているものの、版胴とブランケット胴との間の圧力により周方向にずれやすくなっている。また、ブランケット胴も同様であり、ブランケットがブランケット胴の外周面に巻きつけられた状態で、ブランケットにおける周方向の各端部がブランケットの版締め装置により支持されているものの、版胴とブランケット胴との間の圧力により周方向にずれやすくなっている。このように版胴に対して刷版がずれたり、ブランケット胴に対してブランケットがずれたりすると、印刷精度が低下してしまうという問題が発生する。」との記載がなされ、本発明の課題が明白となっている。また、段落[0059]には、「表面粗度調整加工は、好ましくは、表面粗さ(最大高さ粗さ)Rz(Rzは、日本規格協会の「JIS B 0601:2001製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語、定義及び表面性状パラメータ」で定義される「最大高さ粗さ」のこと)が、1.0μm≦Rz≦100μmに調整されている。」との記載がなされ、段落[0062]には、「版胴12の表面粗さを上述した範囲とすることで、刷版31と版胴12間の摩擦係数を増加させることができ、これにより版ずれトラブルが防止できる。この場合、Rzが大きい程、版ずれ防止効果も優れていることが推測される」との記載がなされていることから、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(ウ)訂正事項3
a 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項2を削除するものであるから、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aに記載したとおり、訂正事項3は、請求項2を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記aの理由から明らかなように、訂正事項3は、請求項2を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。」とあるのを、
「ア 一群の請求項についての説明
訂正事項1,2に係る訂正前の請求項1,2については、請求項2が請求項1を引用しているから、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
イ 訂正事項が全て訂正要件に適合している事実の説明
(ア)訂正事項1
a 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5条2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aに記載したとおり、訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記aの理由から明らかなように、訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(イ)訂正事項2
a 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aに記載したとおり、訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記aの理由から明らかなように、訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。」と補正する(以下「補正事項2」という。)

(1-3)訂正請求書7頁25行?8頁19行に
「ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3に「前記版胴の外周面から前記凹部のエッジ部まで耐久性処理として施されるめっき部が設けられ、」とあるのを、「少なくとも前記版胴の外周面からエッジ部まで耐久性処理として施されるめっき部が設けられ、」に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記めっき部は、少なくとも前記エッジ部及び前記エッジ部に連続する前記印刷胴の外周面の一部を除く前記版胴の外周面の領域に所定の表面粗さとなるように表面粗度調整加工が施された粗度部を有する、」とあるのを、「前記エッジ部は、前記版胴の外周面と前記凹部における傾斜天井との交点から前記版胴の外周面側に5?10mm移行した領域を含み、前記めっき部は、少なくとも前記エッジ部を除く前記版胴の外周面の領域に前記刷版のずれ防止用として少なくとも前記エッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする表面粗度調整加工が施された粗度部を有する、」に訂正する。

ウ 訂正前後の請求項の対応を以下に示す。

」とあるのを、
「ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求書3を削除する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

カ 訂正前後の請求項の対応を以下に示す。

」と補正する(以下「補正事項3」という。)

(1-4)訂正請求書8頁21行?12頁1行に
「ア 一群の請求項についての説明
訂正事項1,2に係る訂正前の請求項3?7については、請求項4?7がそれぞれ請求項3を引用しているから、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

イ 訂正事項が全て訂正要件に適合している事実の説明
(ア)訂正事項1
a 訂正の目的について
訂正前の請求項3に係る特許発明は、「めっき部」について「前記版胴の外周面から前記凹部のエッジ部まで耐久性処理として施されるめっき部」と特定している。
これに対して、訂正後の請求項3は、「少なくとも前記版胴の外周面からエッジ部まで耐久性処理として施されるめっき部」との記載により、訂正後の請求項3に係る発明におけるめっき部を明確化するものである。すなわち、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aの理由から明らかなように、訂正事項1は、めっき部を明確化するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、特許掲載公報の明細書の実施例に基づいて導き出される構成である。この実施例に係る説明として、段落[0068]には、「本実施例では、版胴12は、素材としての炭素鋼を切削加工により形成し、外周面に耐久性処理としてクロムめっき加工を施すことで、めっき部48を形成する。この場合、このめっき部48は、外周面だけでなく、凹部33におけるエッジ部46,47、傾斜天井44,45、縦壁42,43、底面41の一部にまで形成されている。」との記載がなされ、めっき部が、版胴の外周面とエッジ部と凹部の一部、つまり、「少なくとも前記版胴の外周面からエッジ部まで耐久性処理として施される」ことが記載されていると言える。そのため、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(イ)訂正事項2
a 訂正の目的について
訂正前の請求項3に係る特許発明は、「エッジ部」について特に特定していない。
これに対して、訂正後の請求項3は、「前記エッジ部は、前記版胴の外周面と前記凹部における傾斜天井との交点から前記版胴の外周面側に5?10mm移行した領域を合み、」との記載により、訂正後の請求項3に係る発明におけるエッジ部を明確化するものである。
また、訂正前の請求項3に係る特許発明は、「めっき部」について「前記めっき部は、少なくとも前記エッジ部及び前記エッジ部に連続する前記印刷胴の外周面の一部を除く前記版胴の外周面の領域に所定の表面粗さとなるように表面粗度調整加工が施された粗度部を有する、」と特定している。
これに対して、訂正後の請求項3は、「前記めっき部は、少なくとも前記エッジ部を除く前記版胴の外周面の領域に前記刷版のずれ防止用として少なくとも前記エッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする表面粗度調整加工が施された粗度部を有する、」との記載により、訂正後の請求項3に係る発明におけるめっき部を明確化するものである。
すなわち、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aの理由から明らかなように、訂正事項2は、エッジ部とめっき部を明確化するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、特許掲載公報の明細書の実施例に基づいて導き出される構成である。この実施例に係る説明として、段落[0072]には、「エッジ部46,47とは、外周面と傾斜天#44,45との交点の周辺部であり、この交点から外周面側に所定長さ(例えば、5?10mm)だけ移行した領域を含むものである。」との記載がなされていることから、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
また、実施例に係る説明として、段落[0059]には、「少なくとも外周面と凹部33との間のエッジ部を除く外周面の領域に表面粗度調整加工が施されている。」との記載がなされていることから、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
さらに、この実施例に係る説明として、段落[0004]には、「版胴は、外周面に刷版が装着され、特に、ブランケット胴との間に所定の圧力(印圧)が作用した状態で使用される。刷版は、版胴の外周面に巻きつけられた状態で、版胴における周方向の各端部が版胴の版締め装置により支持されているものの、版胴とブランケット胴との間の圧力により周方向にずれやすくなっている。また、ブランケット胴も同様であり、ブランケットがブランケット胴の外周面に巻きつけられた状態で、ブランケットにおける周方向の各端部がブランケットの版締め装置により支持されているものの、版胴とブランケット胴との間の圧力により周方向にずれやすくなっている。このように版胴に対して刷版がずれたり、ブランケット胴に対してブランケットがずれたりすると、印刷精度が低下してしまうという問題が発生する。」との記載がなされ、本発明の課題が明白となっている。また、段落[0059]には、「表面粗度調整加工は、好ましくは、表面粗さ(最大高さ粗さ)Rz(Rzは、日本規格協会の「JIS B 0601:2001製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語、定義及び表面性状パラメータ」で定義される「最大高さ粗さ」のこと)が、1.0μm≦Rz≦100μmに調整されている。」との記載がなされ、段落[0062]には、「版胴12の表面粗さを上述した範囲とすることで、刷版31と版胴12間の摩擦係数を増加させることができ、これにより版ずれトラブルが防止できる。この場合、Rzが大きい程、版ずれ防止効果も優れていることが推測される」との記載がなされていることから、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。」とあるのを、
「ア 一群の請求項についての説明
訂正事項1?5に係る訂正前の請求項3?7については、請求項4?7がそれぞれ請求項3を引用しているから、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

イ 訂正事項が全て訂正要件に適合している事実の説明
(ア)訂正事項1
a 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項3を削除するものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5条第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aに記載したとおり、訂正事項1は、請求項3を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記aの理由から明らかなように、訂正事項1は、請求項3を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(イ)訂正事項2
a 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項4を削除するものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aに記載したとおり、訂正事項2は、請求項4を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記aの理由から明らかなように、訂正事項2は、請求項4を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(ウ)訂正事項3
a 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項5を削除するものであるから、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項だたし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aに記載したとおり、訂正事項3は、請求項5を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記aの理由から明らかなように、訂正事項3は、請求項5を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(エ)訂正事項4
a 訂正の目的について
訂正事項4は、請求項6を削除するものであるから、当該訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡大し、又は変更する訂正ではないこと
上記aに記載したとおり、訂正事項4は、請求項6を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記aの理由から明らかなように、訂正事項4は、請求項6を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5条9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(オ)訂正事項5
a 訂正の目的について
訂正事項5は、請求項7を削除するものであるから、当該訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aに記載したとおり、訂正事項5は、請求項7を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記aの理由から明らかなように、訂正事項5は、請求項7を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。」と補正する(以下「補正事項4」という。)

(2)手続補正の適否
ア 補正事項1について
補正事項1は、請求項1の訂正事項を、当該請求項の削除という訂正事項に変更する補正であるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。

イ 補正事項2について
補正事項2は、補正事項1の補正と整合させるための訂正請求書の補正であるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。

ウ 補正事項3について
補正事項3は、請求項3乃至請求項7の訂正事項を、当該請求項3乃至請求項7の削除という訂正事項に変更する補正であるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。

エ 補正事項4について
補正事項4は、補正事項3の補正と整合させるための訂正請求書の補正であるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。

したがって、上記手続補正書による補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第131条の2第1項の規定に適合するので、当該補正を認める。

2 訂正請求について
2-1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。(注:下線部分は訂正箇所を示す。)
(1)一群の請求項1及び請求項2に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(2)一群の請求項3乃至請求項7に係る訂正
ア 訂正事項3
特許請求の範囲の請求書3を削除する。
イ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
ウ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
エ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
オ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

(3)一群の請求項8及び請求項9に係る訂正
ア 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「前記印刷胴における少なくとも外周面と前記凹部との間のエッジ部を被覆した状態で、表面粗度調整加工を行う」とあるのを、「前記印刷胴における少なくとも外周面と前記凹部との間のエッジ部を被覆した状態で、前記印刷胴の外周面に巻きつけた部材のずれ防止用として少なくとも前記エッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする表面粗度調整加工を行う」に訂正する。
イ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に「前記エッジ部を含む前記凹部を」とあるのを、「前記エッジ部と前記凹部を」に訂正する。

2-2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無の適否
(1)一群の請求項1及び請求項2に係る訂正について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、請求項1を削除する訂正であり、訂正事項2は、請求項2を削除する訂正であるから、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項1は、請求項1を削除する訂正であり、訂正事項2は、請求項2を削除する訂正であるから、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項追加の有無
訂正事項1は、請求項1を削除する訂正であり、訂正事項2は、請求項2を削除する訂正であるから、いずれも、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

エ 一群の請求項等について
訂正前の請求項1及び請求項2は,特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正後の請求項1及び請求項2は、一群の請求項である。

(2)一群の請求項3乃至請求項7に係る訂正について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、請求項3を削除する訂正であり、訂正事項4は、請求項4を削除する訂正であり、訂正事項5は、請求項5を削除する訂正であり、訂正事項6は、請求項6を削除する訂正であり、訂正事項7は、請求項7を削除する訂正であるから、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項3は、請求項3を削除する訂正であり、訂正事項4は、請求項4を削除する訂正であり、訂正事項5は、請求項5を削除する訂正であり、訂正事項6は、請求項6を削除する訂正であり、訂正事項7は、請求項7を削除する訂正であるから、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項追加の有無
訂正事項3は、請求項3を削除する訂正であり、訂正事項4は、請求項4を削除する訂正であり、訂正事項5は、請求項5を削除する訂正であり、訂正事項6は、請求項6を削除する訂正であり、訂正事項7は、請求項7を削除する訂正であるから、いずれも、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

エ 一群の請求項等について
訂正前の請求項3乃至請求項7は,特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正後の請求項3乃至請求項7は、一群の請求項である。

(3)一群の請求項8及び請求項9に係る訂正について
ア 訂正事項8について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項8は、訂正前の請求項8に記載の「表面粗度調整加工」について、「前記印刷胴の外周面に巻きつけた部材のずれ防止用として少なくとも前記エッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする」と具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
上記(ア)で述べたとおり、訂正事項8は、訂正前の請求項8に記載の「表面粗度調整加工」について、「前記印刷胴の外周面に巻きつけた部材のずれ防止用として少なくとも前記エッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする」と具体的に限定しようとするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(ウ)新規事項追加の有無
訂正事項8に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0059】には、「このように構成された版胴12(12a,12b,12c,12d)は、本実施例にて、少なくとも外周面と凹部33との間のエッジ部を除く外周面の領域に表面粗度調整加工が施されている。具体的に、版胴12(12a,12b,12c,12d)は、エッジ部及び凹部33を除く外周面に表面粗度調整加工が施されている。この場合、表面粗度調整加工は、好ましくは、表面粗さ(最大高さ粗さ)Rz(Rzは、日本規格協会の「JIS B 0601:2001 製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語、定義及び表面性状パラメータ」で定義される「最大高さ粗さ」のこと)が、 1.0μm≦Rz≦100μm に調整されている。」と、段落【0062】には、「版胴12の表面粗さを上述した範囲とすることで、刷版31と版胴12間の摩擦係数を増加させることができ、これにより版ずれトラブルが防止できる。この場合、Rzが大きい程、版ずれ防止効果も優れていることが推測されるが、Rzが100μm以上では、版胴の寸法精度や汚れ除去特性に影響が生じる場合も考えられるので、Rzの上限値を100μmとすることが好ましい。また、Rzが1.0μmより小さいと、従来の版胴に比べて版ずれ防止効果が小さくなるので、Rzは1.0μmより以上の方が好ましい。」と記載されていることから、印刷胴の外周面に巻きつけた部材のずれ防止用として少なくともエッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする表面粗度調整加工を行うことは、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものである。
したがって、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

イ 訂正事項9について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項9は、訂正前の請求項9に記載の「前記エッジ部を含む前記凹部」について、「前記エッジ部と前記凹部を」と、エッジ部と凹部との関係を明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
上記(ア)で述べたとおり、訂正事項9は、エッジ部と凹部との関係を明確化するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(ウ)新規事項追加の有無
訂正事項9に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0067】には、「この凹部33は、底面41の両側に縦壁42,43が連続して形成され、この各縦壁42,43の上端に傾斜天井44,45が連続して形成されて構成されている。そして、版胴12の外周面と凹部33、つまり、傾斜天井44,45との間にエッジ部46,47が形成されている。」と記載されており、訂正事項9に示されたエッジ部と凹部との関係が記載されていることから、訂正事項9は、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものである。
したがって、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

ウ 一群の請求項等について
訂正前の請求項8及び請求項9は,特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正後の請求項8及び請求項9は、一群の請求項である。

2-3 訂正の適否のむすび
以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号または第3号に掲げる事項を目的とし、同条4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1乃至請求項9について、訂正を認める。


第3 特許異議の申立てについての判断
1 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項8及び請求項9に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明8」及び「本件特許発明9」という。)は、その特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項8】
円柱形状をなして外周部に軸心方向に沿って刷版またはブランケット締結用の凹部が設けられる印刷胴において、
前記印刷胴における少なくとも外周面と前記凹部との間のエッジ部を被覆した状態で、前記印刷胴の外周面に巻きつけた部材のずれ防止用として少なくとも前記エッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする表面粗度調整加工を行うことを特徴とする印刷胴の製造方法。
【請求項9】
前記エッジ部と前記凹部をマスキングテープにより被覆した状態で、表面粗度調整加工を行うことを特徴とする請求項8に記載の印刷胴の製造方法。

2 取消理由及び異議申立て理由の概要
(1)平成28年8月23日付けで通知した取消理由の概要
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
請求項8の「前記印刷胴における少なくとも外周面と前記凹部との間のエッジ部を被覆した状態で、表面粗度調整加工を行うこと」は発明の詳細な説明に記載されたものでない。(以下「取消理由1」という。)

(2)平成28年11月9日付けで通知した取消理由の概要
ア この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(ア)請求項8の「印刷胴における少なくとも外周面と前記凹部との間のエッジ部を被覆した状態で、前記印刷胴の外周面に巻きつけた部材のずれ防止用として少なくとも前記エッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする表面粗度調整加工を行うこと」は発明の詳細な説明に記載されたものでない。(以下「取消理由2」という。)
(イ)請求項8の「印刷胴における少なくとも外周面と前記凹部との間のエッジ部」は発明の詳細な説明に記載されたものでない。(以下「取消理由3」という。)
イ この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項9の「エッジ部を含む前記凹部」は不明確である。(以下「取消理由4」という。)

(3)取消理由以外の申立理由の概要
ア 本件特許発明8は、甲3発明、又は、甲3発明、甲6発明及び甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。(以下「申立理由5」という。)
イ 本件特許発明9は、甲3発明と、甲8発明乃至甲14発明又は甲6発明乃至甲14発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。(以下「申立理由6」という。)
ウ 本件特許の発明の詳細な説明には、請求項8及び請求項9にて記載されている「エッジ部」との用語の通常の意味と矛盾又は異なる定義が置かれており、その結果、「凹部のエッジ部」の具体的な範囲及び「印刷胴の外周面」との境界が不明確となっている。(以下「申立理由7」という。)

3 取消理由1について
本件訂正請求により、本件特許発明8は、上記「1 本件特許発明 【請求項8】」となった。
そして、本件特許発明8は、印刷胴における外周面の表面粗さは、エッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする表面粗度調整加工がなされることが特定された。
そうすると、本件特許発明8により、本件特許明細書の【0009】に記載の「印刷胴と刷版またはブランケットとのずれを防止すると共に印刷胴に対する刷版またはブランケットの装着精度の向上を可能とする」という課題を解決するための手段が反映されたこととなるから、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものとはいえない。
よって、本件特許発明8が、発明の詳細な説明に記載されたものでないとすることはできない。

4 取消理由2について
本件訂正請求により、本件特許発明8は、上記「1 本件特許発明 【請求項8】」となり、「前記印刷胴における少なくとも外周面と前記凹部との間のエッジ部を被覆した状態で、」「表面粗度調整加工を行うこと」と記載されている。
そして本件特許明細書には、
「【0059】
このように構成された版胴12(12a,12b,12c,12d)は、本実施例にて、少なくとも外周面と凹部33との間のエッジ部を除く外周面の領域に表面粗度調整加工が施されている。」
「【0063】
このように構成された版胴12(12a,12b,12c,12d)は、本実施例にて、少なくとも外周面と凹部33との間のエッジ部を除く外周面の領域に表面粗度調整加工が施されている。」
「【0065】
また、版胴12(12a,12b,12c,12d)は、外周面と凹部33との間のエッジ部、または、エッジ部及び凹部33を被覆した状態で、表面粗度調整加工を行うことで、製造している。」
と記載されているように、表面粗度調整加工が、外周面と凹部33との間のエッジ部を除く外周面の領域に施されることが記載されている。
そうすると、本件特許発明8の「前記印刷胴における少なくとも外周面と前記凹部との間のエッジ部を被覆した状態で、表面粗度調整加工を行うこと」は、本件特許明細書に記載されたものであるから、本件特許発明8が、発明の詳細な説明に記載されたものでないとすることはできない。

5 取消理由3について
本件訂正請求により、本件特許発明8は、上記「1 本件特許発明 【請求項8】」となった。
そして、本件特許発明8の「印刷胴における少なくとも外周面と前記凹部との間のエッジ部を被覆した状態で、前記印刷胴の外周面に巻きつけた部材のずれ防止用として少なくとも前記エッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする表面粗度調整加工を行う」との記載から、「少なくとも前記エッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする表面粗度調整加工を行う」領域が、印刷胴における外周面全域であると解するのが、技術的に自然であるし、本件特許明細書にも、
「【0059】
このように構成された版胴12(12a,12b,12c,12d)は、本実施例にて、少なくとも外周面と凹部33との間のエッジ部を除く外周面の領域に表面粗度調整加工が施されている。」
「【0063】
このように構成された版胴12(12a,12b,12c,12d)は、本実施例にて、少なくとも外周面と凹部33との間のエッジ部を除く外周面の領域に表面粗度調整加工が施されている。」
「【0065】
また、版胴12(12a,12b,12c,12d)は、外周面と凹部33との間のエッジ部、または、エッジ部及び凹部33を被覆した状態で、表面粗度調整加工を行うことで、製造している。」
と記載されていることからも、明らかである。
そうすると、本件特許発明8により、本件特許明細書の【0009】に記載の「印刷胴と刷版またはブランケットとのずれを防止すると共に印刷胴に対する刷版またはブランケットの装着精度の向上を可能とする」という課題を解決するための手段が反映されたこととなるから、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものとはいえない。
よって、本件特許発明8が、発明の詳細な説明に記載されたものでないとすることはできない。

6 取消理由4について
本件訂正請求により、本件特許発明9は、上記「1 本件特許発明 【請求項9】」となり、「前記エッジ部を含む前記凹部」は、「前記エッジ部と前記凹部」と訂正された。
そうすると、「エッジ部」と「凹部」とは、別の構成であることが明らかとなったから、本件特許発明8における「エッジ部」と「凹部」との関係は、本件特許発明9における「エッジ部」と「凹部」との関係と矛盾しないものとなった。
よって、本件特許発明9が、不明確であるとすることはできない。

7 申立理由5について
(1)甲号証の記載
ア 甲第3号証
本件特許の出願日前の平成5年8月10日に頒布された特開平5-200970号公報には以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)
「【0002】
【従来の技術】従来のオフセツト輪転印刷機の版胴は、耐食性、耐摩耗性、汚れ除去性等の観点から、版胴の表面にCrメッキを施した後、研磨加工して、表面粗さをRmax<1.0に調整したものや、耐食材を肉盛溶接した後、研磨加工したものが使用されている。また版胴の表面粗さを調整することにより、版との摩擦係数を向上させるものもある。」
「【0004】このため、この接線力Fにより版2と版胴1との間に上記周長差に対応した微小滑りが発生し、印刷作業の進行とともにこの滑りが蓄積されて、版2と版胴1との相対位置が変化する、所謂、版ずれトラブルが発生していた。この版ずれトラブルの防止対策としては、(1)図5に示すように版2と版胴1との間にルミラーと呼ばれるプラスチックシート4を介装したり、(2)或いは図6に示すように版胴1と版2の端部との間に介装した版固定ばね5のばね力を強化したりしている。」
「【0008】
【実施例】次に本発明の印刷機用版胴の製造方法を図1に示す一実施例により説明すると、1が版胴、6がこの版胴1の表面に形成した中間メッキ層である。この中間メッキ層6を仕上げ加工して、その表面粗さRmaxを1.0μm≦100μmに調整する。また中間メッキ層6の無い版胴1については、版胴1の表面を仕上げ加工して、その表面粗さRmaxを1.0μm≦100μmに調整する。
【0009】次いで中間メッキ層6の表面(中間メッキ層6の無い版胴1については版胴1の表面)に最終メッキ層7を形成する。この最終メッキ層7については、研磨等の表面加工を加えることなく、そのまま使用する。なお表面粗さRmaxを1.0μm≦100μmにしたのは、加工精度を確保し易いためである。前記のように版胴1の表面粗さRmaxを1.0μm≦100μmに調整した後、最終メッキ層7を形成することにより、版2と版胴1との間の摩擦係数を増加させることができ、これにより、版ずれトラブルが解消されるとともに、耐食性に優れた版胴1が得られる。即ち、最終メッキ層7を形成する前の版胴1の下地表面に、1.0μm≦Rax≦100μm程度の微小凹凸を形成することにより、最終メッキ層7面にミクロ的な電着条件の差が生じて、最終メッキ層7の表面が微細なデインプル状になって、版2との摩擦係数が著しく向上する。また微小凹凸面におけるCrメッキ結晶の成長は、放射状になり、隣接結晶間で互いが干渉するので、その結果、最終メッキ層7中の欠陥が減少して、耐食性が向上する。
【0010】次に具体例(1)?(3)を説明する。(1)軟鋼製版胴1の表面に、厚さ100μmのCrメッキ層(中間メッキ層)を形成し、次いでサンドブラスト処理により、表面粗さRax≒3μmに調整し、次いで表面粗さRax≒30μmの再Crメッキ層(最終メッキ層)を形成したもの、(2)軟鋼製版胴1の表面に、厚さ70μmのCrメッキ層(中間メッキ層)を形成し、次いでサンドブラスト処理により、表面粗さRax≒6μmに調整し、次いで表面粗さRax≒30μmの再Crメッキ層(最終メッキ層)を形成したもの、(3)軟鋼製版胴1の表面に、中間メッキ層を形成することなく、サンドブラスト処理により、表面粗さRax≒6μmに調整し、次いで表面粗さRax≒30μmの再Crメッキ層(最終メッキ層)を形成したもの、を作製して、版2との摩擦係数を測定した。また従来のメッキ厚さ130μmのCrメッキ層を形成した後、研磨したものについても、版2との摩擦係数を測定して、それぞれの結果を図2に示した。また上記具体例(2)の耐食性と従来品の耐食性とを測定して、それぞれの結果を図3に示した。なお図3の耐食性は、塩水噴霧試験による発錆までの時間を従来品の発錆までの時間で基準化したものである。」
図6より、版胴1と版2の端部との間に介装した版固定ばね5を収容する凹部が外周部に軸心方向に沿って設けられる円柱形状をなした印刷機用版胴が看取できる。
以上の記載によれば、甲第3号証には以下の発明が記載されていると認められる。(以下[引用発明1」という。)
「版胴と版の端部との間に介装した版固定ばねを収容する凹部が外周部に軸心方向に沿って設けられる円柱形状をなした印刷機用版胴の製造方法であって、
版胴の表面に中間メッキ層を形成し、中間メッキ層を仕上げ加工して、その表面粗さRmaxを1.0μm≦100μmに調整し、中間メッキ層の表面に最終メッキ層を形成し、版と版胴との間の摩擦係数を増加させることができ、これにより、版ずれトラブルが解消される、印刷機用版胴の製造方法。」

イ 甲第6号証
本件特許の出願日前の平成10年1月28日に頒布された特許第2705900号公報には以下の記載がある。
「【請求項1】 印刷機械のシリンダー(4、5)を印刷機械に取り付けた状態で熱的溶射コーティングにより修理する方法であって、以下の段階を含む印刷機械のシリンダーの修理方法:
a)複式刃物台の支持ビーム(8)を修理すべきシリンダー(4、5)と平行に印刷機械に取り付ける段階;
b)前記シリンダーの表面を基本直径まで削り取る段階;
c)前記シリンダーの表面を脱脂する段階;
d)前記シリンダーの表面をブラスティングする段階;
e)前記シリンダーの表面を予熱する段階;
f)前記シリンダーの表面を熱的溶射によってコーティングする段階;
g)前記コーティングを仕上げる段階;
h)前記コーティングをシーリングする段階。」
「【請求項24】 前記シリンダー(4、5)のチャック溝(52)にはカバーが付いていることを特徴とする請求項16?23の何れかに記載の装置。」
「【0018】次に、削り落としたシリンダーの表面は、脱脂された後、ブラスティングによって荒らされる。ブラスティングのために特に砂吹き装置43が利用される。次に、シリンダーの火炎溶射によってシリンダーに新しい表面を与える。そのため吹き付け器53が複式刃物台の支持ビーム8の刃物台20に固定されている(図10)。コイル54から溶加材が繰り出され、吹き付け器53に供給される。この実施例においては、印刷シリンダー5にセラミックコーティングを施すものとしている。よって、溶加材として例えば酸化アルミニウム/二酸化チタンが利用される。しかし、修理すべきシリンダーに粉末冶金(cermet=サーメット)コーティング、あるいは単純な金属コーティングを与えることもできる。粉末冶金コーティングの溶加材としては、例えば、クロムカーバイト、ニッケルクロム合金およびニッケルを中心とする合金の混合物を吹き付けることもできる。酸化物セラミックコーティングの場合、セラミックコーティングが吹き付けられる前に金属コーティングを接着層として形成する。これらの全てのコーティングは、薄膜あるいは厚膜方法によって付着させることが可能である。厚膜方法において複数の層が吹き付けられる。通常の膜の厚さは、薄膜方法の場合(単層精密コーティング)数マイクロメーターから150マイクロメーターまでである。厚膜の方法の場合、塗りかぶせる膜の厚さが1ミリメーターの数10分の1から数ミリメーターまでである。両方の層を塗る前に印刷シリンダー5が予熱される。本実施例では特に、この予熱も吹き付け器53によって行われる。予熱によってシリンダーの表面の掃除効果が得られる。吹き付け器53の作用範囲は、図示されない吸引装置に接続されているカバー56に取り囲まれている。」
以上の記載によれば、甲第6号証には以下の発明が記載されていると認められる。(以下[引用発明2」という。)
「印刷機械のシリンダー(4、5)を印刷機械に取り付けた状態で熱的溶射コーティングにより修理する方法でであって、
シリンダーの表面を砂吹き装置43を利用してブラスティングする段階を含み、
シリンダー(4、5)のチャック溝(52)にはカバーが付いている、印刷機械のシリンダーの修理方法。」

ウ 甲第7号証
本件特許の出願日前の平成16年9月2日に頒布された特開2004-243658号公報には以下の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】
一般に、枚葉印刷機における版胴やブランケット胴には、軸線方向に沿って切欠溝部が形成されている。版胴には、その周面に刷版を巻き付けるために、刷版の周方向両端部を保持する機構が切欠溝部に設けられ、ブランケット胴には、その周面に巻き付けるブランケットを保持する機構が切欠溝部に設けられる(下記特許文献1参照)。
【0003】
このように切欠溝部が設けられることにより胴の周面は部分的に凹状となるため、例えば、図6に示すような着脱可能な切欠カバー51によって切欠溝部50を覆うように構成された胴も存在する。該切欠カバー51の長手方向両端部にはそれぞれ係合ピン52が突設され、両係合ピン52のうちの一方には、切欠カバー51の胴への取付状態を維持すべく切欠カバー51を一端部側から他端部側へと付勢するためのコイルバネ(図示省略)が装着されている。また、胴の軸線方向両端に設けられたベアラ53には、軸線方向に貫通する係合孔54が形成されている。そして、一方の係合ピン52を一方の係合孔54に係入してバネの付勢力に抗して切欠カバー51を一端部側に移動させ、他方の係合ピン52を他方の係合孔54に係入することにより、切欠カバー51を胴に取り付ける。
【0004】
このように切欠カバー51によって切欠溝部50を覆うことにより、例えば胴を清掃する際の安全性が確保される。例えば、ブランケットの表面に付着したゴミ等をウエスで拭き取ることが行われるが、その際、切欠溝部50が切欠カバー51で覆われているため、切欠溝部50に手が入ることが防止されて安全性が確保される。」
以上の記載によれば、甲第7号証には以下の発明が記載されていると認められる。(以下[引用発明3」という。)
「枚葉印刷機における版胴やブランケット胴であって、軸線方向に沿って切欠溝部が形成され、版胴には、その周面に刷版を巻き付けるために、刷版の周方向両端部を保持する機構が切欠溝部に設けられ、ブランケット胴には、その周面に巻き付けるブランケットを保持する機構が切欠溝部に設けられ、着脱可能な切欠カバーによって切欠溝部を覆う、枚葉印刷機における版胴やブランケット胴。」

エ 甲第8号証
本件特許の出願日前の昭和62年5月12日に頒布された特開昭62-101995号公報には以下の記載がある。
「2.特許請求の範囲
鉛被覆管の鉛被膜端部近傍の表面に鉛溶射被膜を形成させる第一工程と、同鉛被覆管と継手管を溶接接合する第2工程と、同溶接管の表面に鉛メッキ皮膜を形成する第3工程からなることを特徴とする鉛被覆管の接合方法。」(1頁左欄)4?9行)
「〔実施例〕
本発明の実施例を第1図および第2図に基づいて説明する。第1図は端面処理した電気めつき用鉛転造フイン・チユーブ継手を示し、第2図は鉛溶射法によるフイン・チユーブ端面の液シール手段を説明するための図である。
まず、第2図に示すように、予め製作しておいた鉛転造フイン・チユーブの管端に鉛溶射を実施する。この場合、前処理としてシヨツトブラストを鉛転造フイン・チユーブの母管1とその鉛部1nの根元及び周辺に対して行なう。ブラスト処理しない部分は予めマスキングテープ12を貼つておく。シヨツトブラストにより鉛は変形し母管1に押付けられるため、隙間15にコーキング部11が形成される。引き続いて鉛溶射を実施するが、この場合も予め溶射部以外にはマスキングテープ12を貼つておく。この例の場合、溶射材は3mmφの純鉛線材を用いて酸素-アセチレン溶射装置により0.3?1.0mm厚さの鉛溶射皮膜9を作る。尚凹部はこれをうめるように溶射膜厚は厚くしている。これにより鉛転造フイン・チユーブの端面の隙間13は液シールされると共に凹部におけるめつきつき囲りが改善される。」(2頁左下欄)8?右下欄11行)
「鉛被覆管」と、「鉛転造フイン・チユーブ」とは、同義であることは明らかである。
以上の記載によれば、甲第8号証には以下の発明が記載されていると認められる。(以下[引用発明4」という。)
「鉛被覆管の鉛被膜端部近傍の表面に鉛溶射被膜を形成させる第一工程と、同鉛被覆管と継手管を溶接接合する第2工程と、同溶接管の表面に鉛メッキ皮膜を形成する第3工程からなる鉛被覆管の接合方法であって、
前処理としてシヨツトブラストを鉛被覆管の母管とその鉛部の根元及び周辺に対して行ない、
ブラスト処理しない部分は予めマスキングテープを貼つておき、
予め溶射部以外にはマスキングテープを貼つておき、
引き続いて鉛溶射を実施する、鉛被覆管の接合方法。」

オ 甲第9号証
本件特許の出願日前の平成8年3月19日に頒布された特開平8-73094号公報には以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)
「【0018】更にまた、本発明の紙送りローラは、後に実施例で詳しく述べるように、金属の円筒体の外周面に、溶射材料を溶射するか、セラミックス粒子を接着した後、切削により平滑面を形成するか、あるいは、平滑面となる部分をマスキングした状態で溶射又は接着することにより製造できるので、エッチングにより凹凸面を形成する方法と比較して、製造コストが安く、経済的にも有利である。
【0030】なお、円筒体12の外周面に凹凸面13と、平滑面14とを形成する方法は、上記の方法に限定されず、例えば、円筒体の外周面の平滑面14となる部分をガラス繊維テープ等でマスキングした後、上記したような溶射材料を溶射して凹凸面13を形成し、マスキングをはずすことにより形成することもできる。この方法による場合、平滑面14が、凹凸面13の凸部よりも低く、凹部よりも高くなるようにするためには、予め、凹凸面13となる部分を所定高さ切削して溝加工し、その後、平滑面14となる部分をマスキングし、凸部が平滑面14より高くなるように溶射を行えばよい。」
以上の記載によれば、甲第9号証には以下の発明が記載されていると認められる。(以下[引用発明5」という。)
「円筒体の外周面に凹凸面と、平滑面とを形成する方法であって、円筒体の外周面の平滑面となる部分をガラス繊維テープ等でマスキングした後、溶射材料を溶射して凹凸面を形成し、マスキングをはずすことにより形成する、円筒体の外周面に凹凸面と、平滑面とを形成する方法。」

カ 甲第10号証
本件特許の出願日前の平成17年4月21日に頒布された特開2005-105339号公報には以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールの表面に溶射する際に、特定の部位への溶射皮膜の形成を防ぐマスキング機構を設けた溶射装置、該溶射装置により表面に、溶射材料の種類、皮膜の表面粗度、形状などを制御した溶射皮膜を形成したロールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被溶射材の特定の部位への溶射皮膜の形成を防ぐ一般的な方法の一つにマスキングという手法がある。これは、テープ状のマスキング材を被溶射材の表面に貼り付けたり、スリット状のマスキング材を溶射範囲に設けて、被溶射材の表面への溶射粒子の付着を遮る方法である。このマスキングによって、限定された部分のみに溶射皮膜を形成することが可能であり、更にその後、同様にして、溶射皮膜が形成されていない部分に異なった溶射条件で溶射皮膜を形成することもできる。
マスキングを行う際には、マスキング材に溶射粒子が堆積して溶射領域の寸法精度が低下するという問題があり、これに対して、溶射範囲にベルト状のマスキング材を走行させ、マスキング材に堆積した溶射粒子を除去しながら、連続して溶射を行う方法が提案されている(例えば特許文献1、2)。更に、溝の幅やピッチが小さい場合には、ワイヤ状のマスキング材を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献3?6)。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロールの表面の特定の部位に、種類、表面粗度、形状等を精度良く制御した溶射皮膜を形成することが可能になり、例えば、溶融亜鉛メッキラインの耐合金付着性に優れたシンクロールの提供によって、溶融亜鉛ポット内のシンクロールの交換周期を大幅に延長して、溶融亜鉛メッキラインの休止時間を短縮し、また、メッキ鋼鈑の品質、歩留まりが改善されるなど、産業上の果が極めて顕著である。」
以上の記載によれば、甲第10号証には以下の発明が記載されていると認められる。(以下[引用発明6」という。)
「ロールの表面に溶射する際に、特定の部位への溶射皮膜の形成を防ぐマスキング機構を設けた溶射装置、該溶射装置により表面に、溶射材料の種類、皮膜の表面粗度、形状などを制御した溶射皮膜を形成したロールの製造方法であって、
テープ状のマスキング材を被溶射材の表面に貼り付けたり、スリット状のマスキング材を溶射範囲に設けて、被溶射材の表面への溶射粒子の付着を遮る、ロールの製造方法。」

キ 甲第11号証
本件特許の出願日前の平成5年4月20日に頒布された特開平5-98411号公報には以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)
「【請求項1】パターン状に溶射膜を形成する溶射法であって、少なくとも、被溶射体に対して所望のパターン部以外をレジストでマスキングする工程と、粗面化する工程と、溶射を行なう工程と、前記レジストを除去する工程とから成ることを特徴とする溶射方法。
【請求項2】パターン状に溶射膜を形成する溶射法であって、少なくとも、被溶射体に対して所望のパターン部以外をレジストでマスキングする工程と、粗面化する工程と、前記レジストを除去する工程と、溶射を行なう工程とから成ることを特徴とする溶射方法。
【0003】従来のパターン状溶射膜の形成方法としては、例えば日本溶射協会編:溶射ハンドブックp266?p267に見られるように、例えばテープにより溶射部以外をマスキングした状態で溶射を行なっている。このマスキング状態を図4に示す。図4において、31は被溶射体、32はマスキングテープである。
【0004】以上のように構成された状態で、通常、サンドブラストによる表面粗面化工程、溶射膜形成工程およびマスキングの取り外し工程により、溶射膜のパターン状形成を行なう。」
以上の記載によれば、甲第11号証には以下の発明が記載されていると認められる。(以下[引用発明7」という。)
「パターン状に溶射膜を形成する溶射法であって、少なくとも、被溶射体に対して所望のパターン部以外をレジストでマスキングする工程と、粗面化する工程と、溶射を行なう工程と、前記レジストを除去する工程とから成る溶射方法。」

ク 甲第12号証
本件特許の出願日前の平成5年5月7日に頒布された特開平5-111666号公報には以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)
「【請求項1】 非溶射部に、耐溶射加工性を持ち且つ溶射後に除去可能な硬化膜を形成可能な液状の樹脂を塗布或いは印刷し、乾燥硬化,熱硬化または光硬化等の硬化法により前記樹脂を硬化させてマスキング用のレジスト膜を形成することを特徴とする溶射加工におけるマスキング方法。
【請求項2】 非溶射部に形成したレジスト膜を、溶射加工の前段階で溶射部分を粗面化するブラスト処理又はエッチング処理に対するマスキング層として使用し、その後の溶射加工の段階でも前記マスキング層を継続使用することを特徴とする請求項1記載の溶射加工におけるマスキング方法。」
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種の溶射加工において、溶射面以外の表面を保護し、更に溶射前の段階で溶射面を粗面化する際に非溶射面を保護するために施すマスキング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】表面改質技術として溶射加工が広く用いられている。この溶射加工では、被溶射体を部分的に溶射したり数種類の溶射材料を部位毎に区分けして溶射したりする場合、非溶射部分への溶射加工を防止するため、マスキングを施すことが必要である。このマスキングは、通常は耐熱性のテープ,シート,プレート等のマスキング材によって非溶射部分を覆い隠して溶射し、加工後にこのマスキング材を剥離又は除去するという手法がとられている。」
以上の記載によれば、甲第12号証には以下の発明が記載されていると認められる。(以下[引用発明8」という。)
「非溶射部に、耐溶射加工性を持ち且つ溶射後に除去可能な硬化膜を形成可能な液状の樹脂を塗布或いは印刷し、乾燥硬化,熱硬化または光硬化等の硬化法により前記樹脂を硬化させてマスキング用のレジスト膜を形成する溶射加工におけるマスキング方法であって、
非溶射部に形成したレジスト膜を、溶射加工の前段階で溶射部分を粗面化するブラスト処理又はエッチング処理に対するマスキング層として使用し、その後の溶射加工の段階でも前記マスキング層を継続使用する溶射加工におけるマスキング方法。」

ケ 甲第13号証
本件特許の出願日前の平成6年1月18日に頒布された特開平6-10111号公報には以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)
「【請求項2】 被溶射体のうち皮膜を形成すべき箇所の周囲を、金属板を密着させて覆って隠蔽し、かつその金属板の裏面側で該金属板が密着していない箇所を断熱材で覆い、前記金属板で隠蔽されていない箇所に溶射皮膜を形成することを特徴とする溶射用マスキング方法。
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は溶射によって皮膜を形成する際に皮膜を形成しない箇所を隠蔽するマスキング治具およびマスキング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】耐摩耗性や耐食性あるいは電気的もしくは化学的な特性を改善するための表面被覆法として溶射法が知られている。これは、セラミックや金属あるいはプラスチックなどの溶射材料を、ガス燃焼やプラズマあるいはアークなどの熱で溶融し、溶射材料を液体微粒子として被溶射体の表面に高速度で衝突させることにより皮膜を形成する方法である。この方法で皮膜を形成する場合、皮膜の厚さを均一にするために、被溶射体に向けた溶射ガンを一定範囲で相対的に往復動させ、しかも溶射ガンから噴射した溶射材料が拡散して飛翔するから、決められた範囲に皮膜を形成するには、被溶射体をマスキングする必要がある。
【0003】図2はセラミック基板1の従来のマスキング方法を説明するための模式図であって、従来ではセラミック基板1の表面のうち不要箇所を銅テープ2で隠蔽し、その状態で溶射ガン3から溶射材料をセラミック基板1に向けて吹き付けていた。」
以上の記載によれば、甲第13号証には以下の発明が記載されていると認められる。(以下[引用発明9」という。)
「被溶射体のうち皮膜を形成すべき箇所の周囲を、金属板を密着させて覆って隠蔽し、かつその金属板の裏面側で該金属板が密着していない箇所を断熱材で覆い、前記金属板で隠蔽されていない箇所に溶射皮膜を形成する溶射用マスキング方法。」

コ 甲第14号証
本件特許の出願日前の昭和53年3月1日に頒布された特開昭53-22130号公報には以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)
「2.特許請求の範囲
プラズマ溶射加工に際して、マスキングを要する部分にゴム状高分子物質を施すことを特徴とするプラズマ溶射用マスキング方法。」(1頁左欄4?7行)
以上の記載によれば、甲第14号証には以下の発明が記載されていると認められる。(以下[引用発明10」という。)
「プラズマ溶射加工に際して、マスキングを要する部分にゴム状高分子物質を施すプラズマ溶射用マスキング方法。」

(2)対比
本件特許発明8と引用発明1とを対比すると、
後者の「『外周部に軸心方向に沿って設けられる』『凹部』」、「版」、「『円柱形状をなし』た『印刷機用版胴』」、及び「印刷機用版胴の製造方法」は、それぞれ、前者の「『外周部に軸心方向に沿っ』た『凹部』」、「刷版」、「『円柱形状をなし』た『印刷胴』」、及び「印刷胴の製造方法」に相当する。
後者の「凹部」は「版固定ばねを収容する」ものであるから、「刷版締結用の凹部」といえる。
後者の「表面粗さRmaxを1.0μm≦100μmに調整」することにより、「版と版胴との間の摩擦係数を増加させることができ、これにより、版ずれトラブルが解消される」ものであるから、「印刷胴の外周面に巻きつけた部材のずれ防止用として表面粗さを大きくする表面粗度調整加工」といえる。
したがって、両者は、
「円柱形状をなして外周部に軸心方向に沿って刷版締結用の凹部が設けられる印刷胴において、
前記印刷胴の外周面に巻きつけた部材のずれ防止用として表面粗さを大きくする表面粗度調整加工を行う印刷胴の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
本件特許発明8が、「印刷胴における少なくとも外周面と凹部との間のエッジ部を被覆した状態で」、「エッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする」表面粗度調整加工を行うのに対し、引用発明1は、そのような表面粗度調整加工を備えていない点。

(3)判断
引用発明2の「印刷機械のシリンダー(4、5)」、及び「チャック溝(52)」は、それぞれ、本件特許発明8の「印刷胴」、及び「凹部」に相当する。
しかし、引用発明2の「カバー」は、チャック溝についているものであって、このチャック溝に沿ってフライス装置が移動するものであるから、「カバー」はチャック溝を覆うことまでは認められるが、本件特許発明8の「表面粗度調整加工」の際に用いることまでは認められないし、自明ともいえないから、引用発明2の「カバー」は、その用途からして、本件特許発明8の「被覆」とは異なるものである。
そうすると、引用発明2には、本件特許発明8の「印刷胴における少なくとも外周面と凹部との間のエッジ部を被覆した状態で」、「エッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする」表面粗度調整加工を行うことについては、記載も示唆もされていないし、設計的事項といえる理由もない。
また、引用発明3の「版胴やブランケット胴」、及び「軸線方向に沿って切欠溝部」は、それぞれ、本件特許発明8の「印刷胴」、及び「凹部」に相当する。
しかし、引用発明3には、本件特許発明8の「印刷胴における少なくとも外周面と凹部との間のエッジ部を被覆した状態で」、「エッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする」表面粗度調整加工を行うことについては、記載も示唆もされていないし、設計的事項といえる理由もない。
さらに、引用発明2及び引用発明3を勘案しても、上記相違点に係る本件特許発明8の発明特定事項が技術常識、もしくは周知技術であるとする理由もない。
したがって、本件特許発明8は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本件特許発明8は、引用発明1、引用発明2,及び引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

8 申立理由6について
本件特許発明9は、本件特許発明8の発明特定事項に加え、「前記エッジ部と前記凹部をマスキングテープにより被覆した状態で、表面粗度調整加工を行うこと」という発明特定事項を追加して限定を付したものである。
そうすると、本件特許発明9と引用発明1とを対比すると、上記「7 申立理由5について」における、上記[相違点]に加え、本件特許発明9が「前記エッジ部と前記凹部をマスキングテープにより被覆した状態で、表面粗度調整加工を行うこと」という事項を有する点でも相違する。
ここで、上記「7 申立理由5について (1)甲号証の記載 エ 甲第8号証」乃至「7 申立理由5について (1)甲号証の記載 コ 甲第14号証」から、本件特許発明9の「マスキングテープにより被覆した状態で、表面粗度調整加工を行うこと」は、引用発明4乃至引用発明10に記載されているといえる。
しかし、いずれの引用発明にも、本件特許発明9の「前記エッジ部と前記凹部をマスキングテープにより被覆した状態で、」表面粗度調整加工を行うことについては、記載も示唆もされていないし、設計的事項といえる理由もない。
そうすると、本件特許発明9は、本件特許発明8の発明特定事項に加え、さらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本件特許発明9は、上記「7 申立理由5について」の理由に加え、本件特許発明9の「前記エッジ部と前記凹部をマスキングテープにより被覆した状態で、」表面粗度調整加工を行うことが、当業者にとって容易に発明できるとはいえないものであることから、本件特許発明9は、引用発明1、及び引用発明4乃至引用発明10に基づいて、または、引用発明1乃至引用発明10に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

9 申立理由7について
本件訂正請求により、本件特許発明8は、上記「1 本件特許発明 【請求項8】」となり、「エッジ部」は、「外周面と凹部との間」と記載されているから、「エッジ部」と「外周面」及び「凹部」とは、別の構成であることが明らかである。
また、本件訂正請求により、本件特許発明9は、上記「1 本件特許発明 【請求項9】」となり、「前記エッジ部を含む前記凹部」は、「前記エッジ部と前記凹部」と訂正され、本件特許発明9においても、「エッジ部」と「凹部」とは、別の構成であることが明らかである。
そして、上記「6 取消理由4について」のとおり、本件特許発明8における「エッジ部」と「凹部」との関係は、本件特許発明9における「エッジ部」と「凹部」との関係と矛盾しない。
そうすると、本件特許発明8及び本件特許発明9のいずれにおいても、「エッジ部」、「外周面」及び「凹部」は、別々の構成であることが明らかである。
そして、本件特許発明8及び本件特許発明9における「エッジ部」、「外周面」及び「凹部」の上記関係は、本件特許明細書の【0072】の「エッジ部46,47とは、外周面と傾斜天井44,45との交点の周辺部であり、この交点から外周面側に所定長さ(例えば、5?10mm)だけ移行した領域を含むものである。」との記載と何ら矛盾するものでない。
よって、本件特許発明8及び本件特許発明9が、不明確であるとすることはできない。


第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立て理由によっては、本件特許発明8及び本件特許発明9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明8及び本件特許発明9を取り消すべき理由を発見することはできない。
本件請求項1乃至請求項7に係る特許は、本件訂正により削除されたため、本件請求項1乃至請求項7に係る特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】
円柱形状をなして外周部に軸心方向に沿って刷版またはブランケット締結用の凹部が設けられる印刷胴において、
前記印刷胴における少なくとも外周面と前記凹部との間のエッジ部を被覆した状態で、前記印刷胴の外周面に巻きつけた部材のずれ防止用として少なくとも前記エッジ部の表面粗さより表面粗さを大きくする表面粗度調整加工を行うことを特徴とする印刷胴の製造方法。
【請求項9】
前記エッジ部と前記凹部をマスキングテープにより被覆した状態で、表面粗度調整加工を行うことを特徴とする請求項8に記載の印刷胴の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-06-20 
出願番号 特願2010-234003(P2010-234003)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B41F)
P 1 651・ 537- YAA (B41F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 友子佐藤 史彬  
特許庁審判長 黒瀬雅一
特許庁審判官 吉村尚
藤本義仁
登録日 2015-11-27 
登録番号 特許第5843435号(P5843435)
権利者 三菱重工印刷紙工機械株式会社
発明の名称 印刷胴、印刷ユニット、印刷機並びに印刷胴の製造方法  
代理人 高村 順  
代理人 山田 哲也  
代理人 酒井 宏明  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 高村 順  
代理人 樺澤 聡  
代理人 樺澤 襄  
代理人 酒井 宏明  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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