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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C07C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C07C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C07C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C07C
管理番号 1331206
異議申立番号 異議2016-700725  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-10 
確定日 2017-07-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5866051号発明「酢酸の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5866051号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?13〕,〔14?19〕について訂正することを認める。 特許第5866051号の請求項1?8,11,13?15,17?19に係る特許を維持する。 特許第5866051号の請求項9,10,12,16に係る特許についての特記異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5866051号の請求項1ないし19に係る特許についての出願は、平成27年9月2日に特許出願され、平成28年1月8日に特許権の設定登録がされ、同年2月17日に特許公報が発行され、その後、その特許に対し、同年8月10日に特許異議申立人 株式会社 ダイセル(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年10月3日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年1月4日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件第1訂正請求」という。)があり、その訂正請求に対して特許異議申立人から同年2月16日付けで意見書が提出され、同年3月1日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年5月30日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件第2訂正請求」という。)があったものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件第2訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1?8のとおりである(本件第1訂正請求は、本件第2訂正請求により取り下げられたものとみなされた。)。

(1)訂正事項1
請求項1の「水相である軽質液相」を「水相であり、40?80重量%の水を含む軽質液相」に訂正する。
(2)訂正事項2
請求項1の「を含む、酢酸を製造する方法」を「を含む、酢酸を製造する方法であって、該リサイクル率の制御が、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることを含み、」に訂正する。
(3)訂正事項3
請求項9、10、12を削除する。
(4)訂正事項4
請求項1の末尾に、「該第1の塔が、0.05?0.4である、該軽質液相の還流比で運転される」との記載を追加する。
(5)訂正事項5
請求項14において、「水相である軽質液相」を「水相であり、40?80重量%の水を含む軽質液相」に訂正する。
(6)訂正事項6
請求項14において、「を含む、酢酸を製造する方法」を「を含む、酢酸を製造する方法であって、該リサイクル率の制御が、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることを含み、」に訂正する。
(7)訂正事項7
請求項14の末尾に、「該第1の塔が、0.05?0.4である、該軽質液相の還流比で運転される」との記載を追加する。
(8)訂正事項8
請求項16を削除する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1,2,5,6について
ア 訂正の目的要件の適否
訂正事項1,5は、水相である軽質液相の水の重量%範囲を特定して限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2,6は、酢酸を製造する方法における、リサイクル率の制御の内容を特定して限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項1,2,5,6に関連する事項が、特許明細書の【0027】【0044】及び訂正前の請求項9、12に記載されていることから、訂正後の「40?80重量%の水を含む軽質液相」に係る発明特定事項、訂正後の「リサイクル率の制御が、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させること」に係る発明特定事項は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「願書に添付した明細書等」という。)に記載されているものと認められる。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1,2,5,6に関連する事項は、明細書に記載された事項の範囲内において軽質液相の水の濃度と、リサイクル率の制御に関して、側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることを特許請求の範囲においてさらに限定したものといえるから、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものとはいえない。

(2)訂正事項3,8について
ア 訂正の目的要件の適否
訂正事項3,8は、請求項9,10,12,16を削除したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

イ 新規事項の有無について
訂正事項3,8は、請求項を削除したもので、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
また、訂正事項3,8は、請求項を削除したもので、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものとはいえない。

(3)訂正事項4,7について
ア 訂正の目的要件の適否
訂正事項4,7は、酢酸の製造方法において、第1の塔が、0.05?0.4である、該軽質液相の還流比で運転されることを限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無について
訂正事項4,7に関連する事項が、特許明細書の【0025】及び訂正前の請求項10、16に記載されていることから、訂正後の「該第1の塔が、0.05?0.4である、該軽質液相の還流比で運転される」に係る発明特定事項は願書に添付した明細書等に記載されているものと認められる。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4,7に関連する事項は、明細書等に記載された事項の範囲内において、「該第1の塔が、0.05?0.4である、該軽質液相の還流比で運転される」ことを特許請求の範囲においてさらに限定したものといえるから、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものとはいえない。

3 一群の請求項について
訂正事項1?4に係る訂正前の請求項1?13について、請求項2?13はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1,2および4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?13に対応する訂正後の請求項1?13は、一群の請求項に対してなされたものである。
また、訂正事項5?8に係る訂正前の請求項14?19について、請求項15?19はそれぞれ請求項14を引用しているものであって、訂正事項5,6および8によって記載が訂正される請求項14に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項14?19に対応する訂正後の請求項14?19は、一群の請求項に対してなされたものである。

4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の[1?13],[14?19]についての訂正を認める。

第3 本件発明
本件第2訂正請求により訂正された訂正請求項1?8,11,13?15,17?19に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明8」,「本件発明11」,「本件発明13」?「本件発明15」,「本件発明17」?「本件発明19」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?8,11,13?15,17?19に記載された次のとおりのものである。

【請求項1】
反応器とフラッシュ容器を備える反応系を用意すること、
該反応器で、酢酸、酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルを含む反応媒体を形成すること、
該フラッシュ容器で該反応媒体を、酢酸、金属触媒及び腐食性金属を含む液体リサイクル流と、酢酸、酢酸メチル、水、ヨウ化水素、ヨウ化メチル及び過マンガン酸還元化合物(PRC)を含む蒸気生成物流に分離すること、
第1の塔で該蒸気生成物流の少なくとも一部を蒸留して、酢酸を含む側流と、酢酸メチル、ヨウ化メチル、PRC、及び5重量%超の水を含む低沸点オーバーヘッド蒸気流を得ること、
該低沸点オーバーヘッド流の少なくとも一部を凝縮し、かつ二相に分離して、有機相である重質液相と、水相であり、40?80重量%の水を含む軽質液相を形成すること、
該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して該側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること、及び
第2の塔で該側流の少なくとも一部を蒸留して精製酢酸生成物を得ることを含む、酢酸を製造する方法であって、該リサイクル率の制御が、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることを含み、
該第1塔が、0.05?0.4である、該軽質液相の還流比で運転される、前記方法。
【請求項2】
該反応媒体は酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該反応媒体は、0.5?30重量%の酢酸メチル、0.1?14重量%の水、200?3000wppmの金属触媒、1?25重量%のヨウ化物塩、及び1?25重量%のヨウ化メチルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該側流中の水濃度を1.1?2.5重量%に維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該側流のヨウ化水素濃度を0.1?50wppmに維持する、請求項1に記載の方法。【請求項6】
該側流は0.1?6重量%の1種以上のヨウ化C_(1)-C_(14)アルキルをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該側流は0.1?6重量%の酢酸メチルをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該側流中のヨウ化水素濃度を、滴定試薬として酢酸リチウムを用いた電位差滴定により求める、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
該重質液相、該軽質液相、またはこれらの混合物を該第1の塔に還流させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
該精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5wppm以下の場合には、該精製酢酸生成物をガード床に接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
反応器とフラッシュ容器を備える反応系を用意すること、
該反応器で、酢酸、酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルを含む反応媒体を形成すること、
該フラッシュ容器で該反応媒体を、酢酸、金属触媒及び腐食性金属を含む液体リサイクル流と、酢酸、酢酸メチル、水、ヨウ化水素、ヨウ化メチル及び過マンガン酸還元化合物(PRC)を含む蒸気生成物流に分離すること、
第1の塔で該蒸気生成物流の少なくとも一部を蒸留して、酢酸を含む側流と、水、酢酸メチル、ヨウ化メチル及びPRCを含む低沸点オーバーヘッド蒸気流を得ること、
該低沸点オーバーヘッド流の少なくとも一部を凝縮し、かつ二相に分離して、有機相である重質液相と、水相であり、40?80重量%の水を含む軽質液相を形成すること、
該側流中のヨウ化水素濃度を測定すること、
該測定されたヨウ化水素濃度に応じて該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること、及び
第2の塔で該側流の少なくとも一部を蒸留して精製酢酸生成物を得ることを含む、酢酸を製造する方法であって、該リサイクル率の制御が、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることを含み、
該第1の塔が、0.05?0.4である、該軽質液相の還流比で運転される、
前記方法。
【請求項15】
該側流中のヨウ化水素濃度を、滴定試薬として酢酸リチウムを用いた電位差滴定により測定する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
該側流中のヨウ化水素濃度を0.1?50wppmに維持する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
該側流中の水濃度を1?3重量%に維持する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
該精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5wppm以下の場合には、該精製酢酸生成物をガード床に接触させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。

第4 取消理由通知
1 特許異議申立人が申し立てた取消理由
特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要は以下のとおりである。
(1)訂正前の請求項1?12に係る特許は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された下記甲第1号証に記載された発明であり、特許法第第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)訂正前の請求項1?19に係る特許は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された下記甲第1号証に記載された発明、及び下記甲第2?3号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)訂正前の請求項1?19に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)訂正前の請求項1?19に係る特許は、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

甲第1号証:国際公開第2013/137236号
甲第2号証:社団法人化学工学会編「改訂六版 化学工学便覧」(平成11年2月25日発行)丸善、p.527
甲第3号証:特開平8-20555号公報

2 当審が通知した取消理由の概要
(1)訂正前の請求項1?19に係る特許に対して平成28年10月3日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1:請求項1?19に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

理由2:請求項1?19に係る特許は、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

理由3:請求項1,2,4?7,10?12,14,16?18に係る発明は、刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

理由4:請求項1?7,10?14,16?19に係る発明は、刊行物1に記載された発明、及び刊行物2?3に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

刊行物1:国際公開第2013/137236号(甲第1号証)
刊行物2:社団法人化学工学会編「改訂六版 化学工学便覧」(平成11年2月25日発行)丸善、p.527(甲第2号証)
刊行物3:特開平8-20555号公報(甲第3号証)
なお、刊行物2?3は、本件発明の優先日時点での技術常識を示すものである。
なお、取消理由1?4は、特許異議申立人が申し立てた取消理由と、理由3の請求項3,8,9,13,15,19、理由4の請求項8,9,15以外は同じである。

(2)本件の第1訂正後の請求項1?8,10,11,13?19に係る特許に対して平成29年3月1日付けで当審が特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。

理由1:本件の第1訂正後の請求項1?8,11,13?15,17?19に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

第5 当審の判断
当審は、本件発明1?8,11,13?15,17?19は、特許異議申立人が申し立てた取消理由及び当審の通知した取消理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。
さらに、訂正前の請求項9、10、12又は16に係る特許は、訂正により削除されているので、申立てを却下する。

1 理由1(特許法第36条第6項第1号)について
(1)サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)特許請求の範囲の記載
請求項1には、反応器とフラッシュ容器を備える反応系を用意すること、
該反応器で、酢酸、酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルを含む反応媒体を形成すること、
該フラッシュ容器で該反応媒体を、酢酸、金属触媒及び腐食性金属を含む液体リサイクル流と、酢酸、酢酸メチル、水、ヨウ化水素、ヨウ化メチル及び過マンガン酸還元化合物(PRC)を含む蒸気生成物流に分離すること、
第1の塔で該蒸気生成物流の少なくとも一部を蒸留して、酢酸を含む側流と、酢酸メチル、ヨウ化メチル、PRC、及び5重量%超の水を含む低沸点オーバーヘッド蒸気流を得ること、
該低沸点オーバーヘッド流の少なくとも一部を凝縮し、かつ二相に分離して、有機相である重質液相と、水相であり、40?80重量%の水を含む軽質液相を形成すること、
該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して該側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること、
第2の塔で該側流の少なくとも一部を蒸留して精製酢酸生成物を得ること、
該リサイクル率の制御が、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させること、
該第1塔が、0.05?0.4である、該軽質液相の還流比で運転されること
が特定された酢酸を製造する方法が記載されている。
そして、請求項2には、請求項1記載の酢酸を製造する方法において、反応媒体は酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルを含むことがさらに特定されたものが、請求項3には、請求項1記載の酢酸を製造する方法において、酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩、及びヨウ化メチルの濃度をさらに特定されたものが、それぞれ記載されている。
そして、請求項4,5には、請求項1記載の酢酸を製造する方法において、それぞれ、側流中の維持する水の濃度、ヨウ化水素の濃度をさらに特定したものが、請求項6,7には、請求項1記載の酢酸を製造する方法において、それぞれ、側流に含有される1種以上のヨウ化C_(1)-C_(14)アルキル、酢酸メチルの濃度を特定したものが記載されている。
さらに、請求項8には、請求項1記載の酢酸を製造する方法において、側流中のヨウ化水素濃度を、滴定試薬として酢酸リチウムを用いた電位差滴定により求めることをさらに特定したものが、請求項11,13には、請求項1記載の酢酸を製造する方法において、それぞれ、重質液相、軽質液相、またはこれらの混合物を第1の塔に還流させること、精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5wppm以下の場合には、該精製酢酸生成物をガード床に接触させることをさらに特定したものが記載されている。
また、請求項14には、請求項1記載の酢酸を製造する方法との対比において、側流中の水濃度を1?3重量%に維持するとの特定、及びオーバーヘッド蒸気流中の水の濃度が5重量%超であることの特定がなく、側流中のヨウ化水素濃度を測定すること、該測定されたヨウ化水素濃度に応じて該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持することが特定されたものが記載され、請求項15,17?19には、請求項14記載の酢酸を製造する方法において、それぞれ、側流中のヨウ化水素濃度を、滴定試薬として酢酸リチウムを用いた電位差滴定により求めること、側流中のヨウ化水素濃度の下限、側流中の水濃度、精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5wppm以下の場合には、該精製酢酸生成物をガード床に接触させることをさらに特定したものが記載されている。

(3)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、本件発明1?8,11,13?15,17?19の発明特定事項となっている酢酸を製造する方法において、40?80重量%の水を含む軽質液相の反応系へのリサイクル率を、側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させる制御し、第1の塔が、0.05?0.4の該軽質液相の還流比で運転し、該側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持する方法に関して、特許請求の範囲の記載の繰り返し記載を除くと、以下の記載がある。
ア 「【背景技術】
・・・
【0006】
・・・米国特許第7,884,241号には、ヨウ化水素と水を含み、蒸留系での水の含有量が5重量%以下(特に3重量%以下)である混合物を蒸留して蒸留系でのヨウ化水素の凝縮を防止することが開示されている。この混合物は、ヨウ化水素、水、メタノール、ヨウ化メチル、酢酸、酢酸メチルを含む場合がある。この混合物が重量換算で1?3000ppmの濃度のヨウ化水素を含んでいても、蒸留塔の塔頂からヨウ化水素を含む留分を取り出し、酢酸を側流または蒸留塔の底部からの流として取り出すことによりヨウ化水素濃度が50ppm以下の酢酸生成物を得ることができる。この蒸留法は、蒸留系でのヨウ化水素の凝縮と、蒸留系での腐食を抑制することができるが、エネルギー損失が大きい。水濃度を低く保つため、この方法は2.35という大きな還流比を必要とし、消費エネルギーが大きい。
・・・
【0010】
・・・このような観点から、酢酸の回収を制御するための酢酸製造の改良方法が求められている。」(下線は、当審にて追加した。以下同様。)

イ 「【0012】
・・・側流中のヨウ化水素濃度は、滴定試薬として酢酸リチウムを用いて電位差滴定により求めることができる。測定されたヨウ化水素濃度に応じて、測定されたヨウ化水素濃度が所定の閾値より大きい、例えば、50wppmを超える場合は、軽質液相のリサイクル率を増加させてもよい。」

ウ 「【0018】
・・・本発明は、水濃度を制御し、そして間接的に側流のヨウ化水素濃度を制御する方法を提供する。利点として、側流の水濃度は、第1の塔から反応器とフラッシュ容器を備える反応系に回収される軽質液相のリサイクル率を制御することにより、所望の範囲に維持することができる。一態様では、低沸点オーバーヘッド流から凝縮された軽質液相全体の0?20%をリサイクルする。残部を第1の塔の還流液として用いてもよく、あるいはPRC除去系に供給してもよい。ある態様では、軽質液相のリサイクル率は、0%であってもよいが、これは反応系へのリサイクルがなく、軽質液相は第1の塔での還流液として用いられるかPRC除去系へ供給されることを示している。軽質液相を第1の塔へ還流させることができるので、還流比の変化もまた反応器へのリサイクル率に影響を及ぼし、最終的には側流の水及びヨウ化水素含有量に影響を及ぼす。側流のヨウ化水素含有量を減少させると、第2の塔中、最終的には精製酢酸生成物中の総ヨウ化物含有量が減少する。精製酢酸生成物中の総ヨウ化物濃度が低い、例えば5wppm以下、例えば1wppm以下であると、ガード床を用いて残留ヨウ化物汚染物質を効果的に除去することができる。これにより、精製酢酸生成物の品質が大きく改善する。」

エ 「【0022】
・・・軽質液相のリサイクルを制御することにより、2基の塔の間の側流中の水濃度を所定の濃度限界以内に維持してもよい。側流は1?3重量%、例えば1?2.5重量%、より好ましくは1.1?2.1重量%の水を含んでいてもよい。この範囲内の水濃度であれば、側流中のヨウ化水素濃度は50wppm以下、例えば0.1?50wppm、あるいは5?30wppmに維持されることがわかった。ヨウ化水素は3?8重量%の水を含有する酢酸-水混合物に可溶であり、水濃度が低下するに従ってヨウ化水素の溶解性も低下する。この相関関係により、ヨウ化水素の揮発が促進され、その結果、塔のオーバーヘッドに回収されるヨウ化水素は減少する。ヨウ化水素はある状況下では腐食性を有することもあるが、所定量のヨウ化水素がある条件下では触媒として有益に作用する場合がある。・・・
【0023】
・・・軽質液相の反応系へのリサイクル率を制御することは、例えば米国特許第9,006,483号に記載の方法等、ヨウ化水素の含有量を制御するための他の方法に比べて改良されている。その理由として、本発明はヨウ化水素を、第1の塔に追加の成分を導入することなく、および/または第1の塔に送られる蒸気生成物供給における所定の濃度を維持することなく制御することができるという利点を有するからである。また、米国特許第9,006,483号に記載の方法は、反応系への軽質液相のリサイクルの制御を含んでおらず、よって側流の水及びヨウ化水素濃度を独立して制御することができない。」

オ 「【0042】
・・・一態様では、低沸点オーバーヘッド蒸気流122は5重量%超、例えば10重量%超、または25重量%超の水を含む。水の量は80重量%以下であってもよい。範囲に関していえば、水の量は5重量%?80重量%、例えば10重量%?70重量%、または25重量%?60重量%であってもよい。水濃度を5重量%より低くすると、反応系にリサイクルされる酢酸が増加し、精製系全体のリサイクル量が増加するので好ましくない。また低沸点オーバーヘッド蒸気流122は水に加えて酢酸メチルやヨウ化メチル、PRC等のカルボニル不純物を含んでいてもよい。これらをオーバーヘッドに濃縮させて側流123の酢酸から除去することが好ましい。」

カ 「【0045】
・・・側流123中の水及びヨウ化水素の濃度は、ライン136を経由する軽質液相133の反応系へのリサイクル率により制御される。ライン136を経由する軽質液相133の第1の塔への還流比(重質液相134(すべてリサイクルされるかどうかは問わない)と軽質液相133の両方を含む塔120の塔頂から送り出される総質量流量で除した、 還流液の質量流量)は0.05?0.4であることが好ましく、例えば0.1?0.35、または0.15?0.3である。一態様では、還流比を低下させるため、側流と第1の塔の塔頂との間の理論段数は、5より多く、例えば、10より多いことが好ましい。
【0046】
・・・一態様では、ライン136中の軽質液相の反応系へのリサイクル率は、第1の塔のオーバーヘッドから凝縮された軽質液相133の総量の約20%以下、例えば、約10%以下である。範囲に関していえば、ライン136中の軽質液相のリサイクル率は、第1の塔のオーバーヘッドから凝縮された軽質液相133の総量の0?20%、例えば0.5?20%、または1?10%であってもよい。残りの部分は軽質分留塔で還流液として用いてもよく、あるいはPRC除去系に供給してもよい。図1に示すように、ライン136中のリサイクル流を液体リサイクル流111と混合して反応器105に戻してもよい。一態様では、ライン136中のリサイクル流を、例えば反応器105やフラッシュ容器110等の反応系にリサイクルされている他の流と混合してもよい。乾燥塔125からの凝縮オーバーヘッド流138が水相と有機相に分離される場合、ライン136中のリサイクル流を水相と混合することが好ましい場合がある。あるいは、ライン136中のリサイクル流の全部または少なくとも一部を重質液相134および/またはオーバーヘッド流138からの有機相と混合してもよい。
【0047】
・・・本発明の目的のため、流量バルブ(図示されていない)および/または流量モニター(図示されていない)を用いてライン135中の還流液及びライン136中のリサイクル流を制御してもよい。一態様では、ライン135中の還流液及びライン136中のリサイクル流の制御装置はそれぞれ、オンライン分析計142と通信しており、オンライン分析計142によって、還流比と反応器へのリサイクルを制御するためのフィードバック情報を得ることができる。還流比を変化させると、反応器にリサイクルされる水の量に影響を及ぼすことがある。ある態様では、その量を、軽質液相133の反応器へのリサイクルがなくなるように変化させてもよい。還流液を減少させる(かつ反応器へのリサイクルを増加させる)と、側流の水含有量が減少する。還流液を増加させると側流の水濃度が増加し、かつ反応器へリサイクルされる水が減少する。還流比が0.4を超えると、側流の水濃度が3重量%を超え、第2の塔での分離、即ち、酢酸から水、酢酸メチル、及びヨウ化メチルを除去することが困難になる。その結果、第2の塔の底部流の酢酸中の総ヨウ化物濃度が過度に高くなり、ガード床による処理が効果的にできない場合がある。
【0048】
図示されていないが、軽質液相133の一部(好ましくは一定分量)を分離して、PRC除去系に投入してヨウ化メチルと酢酸メチルを回収してもよい。表1に示すように、軽質液相133はPRCを含有し、前記方法は酢酸生成物の品質を損なうアセトアルデヒド等のカルボニル不純物を除去することを含んでいてもよい。」

キ 「【実施例】
【0061】
・・・
比較例1-軽質液相をリサイクルしない場合
・・・典型的な例として、0.01Mの酢酸リチウムのアセトン(50ml)溶液で側流試料(0.2g)を滴定して側流のHI濃度を求めた。pH電極を滴定装置Metrohm 716 DMS Titrinoと共に用いてダイナミック当量点滴定モードで終点を求めた。酢酸リチウム滴定試薬の消費量に基づき、次の式からHI濃度を重量%で算出した。
【0062】
・・・
【0063】
・・・このHI滴定方法を用いて約1.9重量%の水を含む側流組成物試料を試験した。HI濃度は50wppmから300wppmまで様々であった。オーバーヘッド軽質留分由来の軽質液相は、反応器に全くリサイクルしていない。軽質液相をリサイクルしない場合、HI濃度は高くなる傾向がある。
実施例1-軽質液相をリサイクルする場合
・・・オーバーヘッド軽質留分由来の軽質液相の一部を反応器にリサイクルして側流の水含有量を低下させる。側流は1.5重量%の水と、25wppm未満のHIを含み、残部は酢酸、酢酸メチル及びヨウ化メチルである。HI濃度が低すぎて、直接滴定で測定することができなかった。HI濃度を直接測定することを困難にする他の陽イオンが存在する。無機ヨウ化物の総量、すなわち可能な限り最大のHI総量を直接測定する。これらの他の無機ヨウ化物は、ヨウ化リチウムに加えて腐食性金属ヨウ化物を含んでいることがある。」

(4) 対比判断
ア 課題
発明の詳細な説明の【技術分野】【0001】の「本発明は、酢酸の製造方法に関し、特に乾燥塔に供給する水及びヨウ化水素の濃度を制御するための改良方法に関する。」との記載、【0010】の 「酢酸の回収を制御するための酢酸製造の改良方法が求められている。」との記載、【0023】の「軽質液相の反応系へのリサイクル率を制御することは、例えば米国特許第9,006,483号に記載の方法等、ヨウ化水素の含有量を制御するための他の方法に比べて改良されている。その理由として、本発明はヨウ化水素を、第1の塔に追加の成分を導入することなく、および/または第1の塔に送られる蒸気生成物供給における所定の濃度を維持することなく制御することができるという利点を有するからである。また、米国特許第9,006,483号に記載の方法は、反応系への軽質液相のリサイクルの制御を含んでおらず、よって側流の水及びヨウ化水素濃度を独立して制御することができない。」との記載及び本願明細書全体の記載を参酌して、本件特許発明の課題は、第1の塔に追加の成分を導入することなく、および/または第1の塔に送られる蒸気生成物供給における所定の濃度を維持することなく乾燥塔に供給する水及びヨウ化水素の濃度を独立に制御する改良された酢酸の製造方法の提供にあるものと認める。

イ 対比判断
(ア)請求項1に係る発明について
a 前記(1)に記載されるように、請求項1には、反応器とフラッシュ容器を備える反応系を用意し、反応媒体を形成し、該フラッシュ容器で該反応媒体を、液体リサイクル流と、蒸気生成物流に分離し、第1の塔で該蒸気生成物流の少なくとも一部を蒸留して、酢酸を含む側流と、低沸点オーバーヘッド蒸気流を得て、該低沸点オーバーヘッド流の少なくとも一部を凝縮し、かつ二相に分離して、重質液相と、軽質液相を形成し、第1塔が、0.05?0.4である、該軽質液相の還流比で運転され、該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることで制御して該側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持する酢酸を製造する方法の発明が記載されている。
b 一方、発明の詳細な説明には、【0018】には、側流の水濃度は、第1の塔から反応器とフラッシュ容器を備える反応系に回収される軽質液相へのリサイクル率を制御することにより、所望の範囲に維持することができる旨の記載、【0022】には、軽質液相のリサイクルを制御することにより、2基の塔の間の側流中の水濃度を所定の濃度限界以内に維持してもよく、側流は1?3重量%の範囲内の水濃度であれば、側流中のヨウ化水素濃度は50wppm以下に維持されることがわかった旨の記載、【0045】には、側流123中の水及びヨウ化水素の濃度は、ライン136を経由する軽質液相133の反応系へのリサイクル率により制御される旨の記載が存在する。
c そして、【0018】の「軽質液相を第1の塔へ還流させることができるので、還流比の変化もまた反応器へのリサイクル率に影響を及ぼし、最終的には側流の水及びヨウ化水素含有量に影響を及ぼす。」との記載(摘記ウ)、【0045】の「ライン136を経由する軽質液相133の第1の塔への還流比・・・と軽質液相133の両方を含む塔120の塔頂から送り出される総質量流量で除した、還流液の質量流量・・・は0.05?0.4であることが好ましく」との記載(摘記カ)、【0047】の「本発明の目的のため、流量バルブ・・・を用いてライン135中の還流液及びライン136中のリサイクル流を制御してもよい。・・・還流比と反応器へのリサイクルを制御するためのフィードバック情報を得ることができる。還流比を変化させると、反応器にリサイクルされる水の量に影響を及ぼすことがある。ある態様では、その量を、軽質液相133の反応器へのリサイクルがなくなるように変化させてもよい。還流液を減少させる(かつ反応器へのリサイクルを増加させる)と、側流の水含有量が減少する。還流液を増加させると側流の水濃度が増加し、かつ反応器へリサイクルされる水が減少する。還流比が0.4を超えると、側流の水濃度が3重量%を超え、第2の塔での分離、即ち、酢酸から水、酢酸メチル、及びヨウ化メチルを除去することが困難になる。」との記載(摘記カ)からみて、発明の詳細な説明に記載された具体的記載としては、還流比と側流中の水の濃度との関係が技術的意義の記載を伴って記載されている。
d そして、具体例としての実施例、比較例の記載をみると、軽質液相をリサイクルしない場合の比較例1において、「HI滴定方法を用いて約1.9重量%の水を含む側流組成物試料を試験した。HI濃度は50wppmから300wppmまで様々であった。オーバーヘッド軽質留分由来の軽質液相は、反応器に全くリサイクルしていない。軽質液相をリサイクルしない場合、HI濃度は高くなる傾向がある。」との記載と、リサイクルする場合の実施例1において、「オーバーヘッド軽質留分由来の軽質液相の一部を反応器にリサイクルして側流の水含有量を低下させる。側流は1.5重量%の水と、25wppm未満のHIを含み、残部は酢酸、酢酸メチル及びヨウ化メチルである。HI濃度が低すぎて、直接滴定で測定することができなかった。」との記載がある。
e また、上記「還流液を減少させる(かつ反応器へのリサイクルを増加させる)と、側流の水含有量が減少する。還流液を増加させると側流の水濃度が増加し、かつ反応器へリサイクルされる水が減少する。還流比が0.4を超えると、側流の水濃度が3重量%を超え、第2の塔での分離、即ち、酢酸から水、酢酸メチル、及びヨウ化メチルを除去することが困難になる」との明細書中での還流比と側流の水濃度との数値を伴った技術的意義に関する説明が存在すること及び、系の中で側流の直前の空間であって、近接した位置にある、第1の塔の水分やヨウ化水素の組成が、反応器やフラッシュ容器等の反応系での組成以上に側流中の組成に影響を与えると理解することが技術常識であることを考慮すると、本件発明は、第1の塔への還流比を制御することを前提として、軽質液相の該反応系へのリサイクル率と第1の塔の還流比との両方によって、該側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持していると理解することができる。
側流中のヨウ化水素の濃度と側流中の水の濃度が関係していることや両者の濃度を制御するためには、反応器、スラッシュ容器、第1の塔内の水及びヨウ化水素を含めた成分組成が関連していることは当業者であれば理解できるのであるから、上記知見を理解した上であれば、第1の塔の還流比を0.05?0.4の範囲で運転するとの前提で、「該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させること」で「該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して」最終的に「該側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること」は、可能であるといえ、実際に実行できれば、前記課題が解決できると認識できる範囲であるといえる。
したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。

(イ)請求項2?8,11,13に係る発明について
請求項2?8,11,13に係る発明は、請求項1に係る発明において、反応媒体の含有成分、含有成分の組成、側流中の水濃度、ヨウ化水素濃度、ヨウ化アルキル含有濃度、酢酸メチル濃度、側流中のヨウ化水素濃度を酢酸リチウムを用いた電位差滴定で求める点、重質液相、軽質液相、これらの混合物を第1の塔に還流させる点をさらに限定したものであるが、それらの点が、【0033】に反応媒体の含有成分、含有成分の組成が、【0022】に側流中の水濃度、ヨウ化水素濃度が、【0025】に側流中のヨウ化アルキル含有濃度、酢酸メチル濃度が、【0026】に側流中のヨウ化水素濃度を酢酸リチウムを用いた電位差滴定で求めることに関する説明が、【0045】【0050】には、重質液相、軽質液相、これらの混合物を第1の塔に還流させる点に関する説明がそれぞれ存在し、これらの一般的説明も考慮すれば、請求項2?8,11,13に係る発明も、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。

(ウ)請求項14に係る発明について
a 前記(2)に記載されるように、請求項14は、反応器とフラッシュ容器を備える反応系を用意し、反応媒体を形成し、該フラッシュ容器で該反応媒体を、液体リサイクル流と、蒸気生成物流に分離し、第1の塔で該蒸気生成物流の少なくとも一部を蒸留して、酢酸を含む側流と、低沸点オーバーヘッド蒸気流を得て、該低沸点オーバーヘッド流の少なくとも一部を凝縮し、かつ二相に分離して、重質液相と、軽質液相を形成し、第1塔が、0.05?0.4である、該軽質液相の還流比で運転され、側流中のヨウ化水素濃度を測定した上で、該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることで制御して、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持する酢酸を製造する方法の発明が記載されている。
b 一方、発明の詳細な説明には、【0018】には、側流の水濃度は、第1の塔から反応器とフラッシュ容器を備える反応系に回収される軽質液相へのリサイクル率を制御することにより、所望の範囲に維持することができる旨の記載、【0022】には、軽質液相のリサイクルを制御することにより、2基の塔の間の側流中の水濃度を所定の濃度限界以内に維持してもよく、側流は1?3重量%の範囲内の水濃度であれば、側流中のヨウ化水素濃度は50wppm以下に維持されることがわかった旨の記載、【0045】には、側流123中の水及びヨウ化水素の濃度は、ライン136を経由する軽質液相133の反応系へのリサイクル率により制御される旨の記載が存在する。
c そして、【0018】の「軽質液相を第1の塔へ還流させることができるので、還流比の変化もまた反応器へのリサイクル率に影響を及ぼし、最終的には側流の水及びヨウ化水素含有量に影響を及ぼす。」との記載(摘記ウ)、【0045】の「ライン136を経由する軽質液相133の第1の塔への還流比・・・と軽質液相133の両方を含む塔120の塔頂から送り出される総質量流量で除した、還流液の質量流量・・・は0.05?0.4であることが好ましく」との記載(摘記カ)、【0047】の「本発明の目的のため、流量バルブ・・・を用いてライン135中の還流液及びライン136中のリサイクル流を制御してもよい。・・・還流比と反応器へのリサイクルを制御するためのフィードバック情報を得ることができる。還流比を変化させると、反応器にリサイクルされる水の量に影響を及ぼすことがある。ある態様では、その量を、軽質液相133の反応器へのリサイクルがなくなるように変化させてもよい。還流液を減少させる(かつ反応器へのリサイクルを増加させる)と、側流の水含有量が減少する。還流液を増加させると側流の水濃度が増加し、かつ反応器へリサイクルされる水が減少する。還流比が0.4を超えると、側流の水濃度が3重量%を超え、第2の塔での分離、即ち、酢酸から水、酢酸メチル、及びヨウ化メチルを除去することが困難になる。」との記載(摘記カ)からみて、発明の詳細な説明に記載された具体的記載としては、還流比と側流中の水の濃度との関係が技術的意義の記載を伴って記載されている。
d そして、具体例としての実施例、比較例の記載をみると、軽質液相をリサイクルしない場合の比較例1において、「HI滴定方法を用いて約1.9重量%の水を含む側流組成物試料を試験した。HI濃度は50wppmから300wppmまで様々であった。オーバーヘッド軽質留分由来の軽質液相は、反応器に全くリサイクルしていない。軽質液相をリサイクルしない場合、HI濃度は高くなる傾向がある。」との記載と、リサイクルする場合の実施例1において、「オーバーヘッド軽質留分由来の軽質液相の一部を反応器にリサイクルして側流の水含有量を低下させる。側流は1.5重量%の水と、25wppm未満のHIを含み、残部は酢酸、酢酸メチル及びヨウ化メチルである。HI濃度が低すぎて、直接滴定で測定することができなかった。」との記載がある。
e また、上記「還流液を減少させる(かつ反応器へのリサイクルを増加させる)と、側流の水含有量が減少する。還流液を増加させると側流の水濃度が増加し、かつ反応器へリサイクルされる水が減少する。還流比が0.4を超えると、側流の水濃度が3重量%を超え、第2の塔での分離、即ち、酢酸から水、酢酸メチル、及びヨウ化メチルを除去することが困難になる」との明細書中での還流比と側流の水濃度との数値を伴った技術的意義に関する説明が存在すること及び、系の中で側流の直前の空間であって、近接した位置にある、第1の塔の水分やヨウ化水素の組成が、反応器やフラッシュ容器等の反応系での組成以上に側流中の組成に影響を与えると理解することが技術常識であることを考慮すると、本件発明は、第1の塔への還流比を制御することを前提として、側流中のヨウ化水素濃度を検出しながら、軽質液相の該反応系へのリサイクル率と第1の塔の還流比との両方によって、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持していると理解することができる。
側流中のヨウ化水素の濃度と側流中の水の濃度が関係していることや両者の濃度を制御するためには、反応器、スラッシュ容器、第1の塔内の水及びヨウ化水素を含めた成分組成が関連していることは当業者であれば理解できるのであるから、上記知見を理解した上であれば、第1の塔の還流比を0.05?0.4の範囲で運転するとの前提で、「該側流中のヨウ化水素濃度を測定」し、「該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させること」で「該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して」最終的に「該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること」は、可能であるといえ、実際に実行できれば、前記課題が解決できると認識できる範囲であるといえる。
したがって、請求項14に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。

(エ)請求項15,17?19に係る発明について
請求項15,17?19に係る発明は、請求項14に係る発明において、側流中のヨウ化水素濃度を酢酸リチウムを用いた電位差滴定で求める点、側流中のヨウ化水素濃度の下限、水濃度、精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が一定以下の場合にガード床に接触させる点をさらに限定したものであるが、それらの点が、【0026】に側流中のヨウ化水素濃度を酢酸リチウムを用いた電位差滴定で求めることに関する説明が、【0022】に側流中のヨウ化水素濃度の下限、水濃度が、【0059】には、精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が一定以下の場合にガード床に接触させる点に関する説明がそれぞれ存在し、これらの一般的説明も考慮すれば、請求項15,17?19に係る発明も、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。

ウ 特許異議申立人の主張についての検討
特許異議申立人は、「該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること」は、達成すべき結果を規定しているに過ぎず、本件特許発明の課題である「酢酸中の不純物の含有量が少ないこと」及び最小限の蒸留操作で「省エネ」を実現することを解決するための手段が反映されていない旨主張している。
しかしながら、本件発明は、第1の塔への還流比を制御することを前提として、側流中のヨウ化水素濃度を検出しながら、軽質液相の該反応系へのリサイクル率と第1の塔の還流比との両方によって、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持していると理解することができるのであるから、解決手段は特許請求の範囲に反映されており、上記検討のとおり、第1の塔に追加の成分を導入することなく、および/または第1の塔に送られる蒸気生成物供給における所定の濃度を維持することなく乾燥塔に供給する水及びヨウ化水素の濃度を独立に制御する改良された酢酸の製造方法の提供という本件特許発明の課題を解決しており、結果として、異議申立人の主張する、酢酸中の不純物の含有量が少なくすることや、最小限の蒸留操作でエネルギーを最小とするとの課題も解決しているといえる。

2 理由2(特許法第36条第4項第1号)について
ア 前記1の理由1において、検討したように、請求項1?8,11,13?15,17?19に係る発明に関して、発明の詳細な説明の記載から、具体的記載として、還流比と側流中の水の濃度との関係が技術的意義の記載を伴って記載され、側流中のヨウ化水素の濃度と側流中の水の濃度が関係していることや両者の濃度を制御するためには、反応器、スラッシュ容器、第1の塔内の水及びヨウ化水素を含めた成分組成が関連していることは当業者であれば理解でき、上記知見を理解した上であれば、第1の塔の還流比を0.05?0.4の範囲で運転するとの前提で、「該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させること」で「該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して」最終的に「該側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること」は、当業者であれば実行可能な発明であるといえ、最終的に制御によって、側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持する又は該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持することは、過度な試行錯誤を経ることなく、条件設定することができるといえる。

イ よって、請求項1?8,11,13?15,17?19に係る発明に関しては、発明の詳細な説明は、当業者が容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

ウ 特許異議申立人の主張についての検討
特許異議申立人は、どのようにして、本件発明の成分組成を特定した低沸点オーバーヘッド流、軽質液相、側流を得るのか、反応媒体中の原料組成、反応条件、フラッシュ条件、蒸留条件、反応器へのリサイクル率によって影響を受けることが通常であるので、出願時の技術常識を参酌しても当業者が理解できない旨主張している。
しかしながら、上述のとおり、系の中で側流の直前の空間であって、近接した位置にある、第1の塔の水分やヨウ化水素の組成が、反応器やフラッシュ容器等の反応系での組成以上に側流中の組成に影響を与えると理解することが技術常識であることを考慮すると、本件発明は、第1の塔への還流比を制御することを前提として、側流中のヨウ化水素濃度を検出しながら、軽質液相の該反応系へのリサイクル率と第1の塔の還流比との両方によって、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持していると理解することができ、最終的に制御によって、側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持する又は該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持することは、過度な試行錯誤を経ることなく、条件設定することができるといえるのであるから、当業者にとって、容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

3 理由3(特許法第29条第1項第3号),理由4(特許法第29条第2項)について
(1)刊行物の記載
ア 刊行物1
本件優先日前に頒布された刊行物であると認められる刊行物1には以下の記載がある。

(1a)「図1に示すプロセス(又は製造装置)は、触媒又は触媒系及び水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続的に反応(メタノールのカルボニル化反応)させるための反応器(反応系)1と、反応混合物(反応液)をフラッシュ蒸留して、揮発相成分と低揮発相成分とに分離するためのフラッシャー又は蒸発槽(フラッシュ蒸発槽)2と、前記揮発相成分を蒸留して、塔頂からの第1のオーバーヘッドと塔底からの缶出流とサイドカット流(粗酢酸流)とに分離するための第1の蒸留塔(スプリッターカラム)3と、第1のオーバーヘッドをコンデンサC3で冷却して凝縮し、水相(上相又は軽質相)と有機相(下相又は重質相)とに分液するためのデカンタ4と、第1の蒸留塔3からのサイドカット流(粗酢酸流)を蒸留し、塔頂からの第2のオーバーヘッドと、塔底からの缶出流と、側部からのサイドカット流(精製酢酸流)とに分離するための第2の蒸留塔(脱水塔又は精製塔)5と、前記コンデンサC4の凝縮液(水相及び有機相)から不純物を除去するための不純物除去系(第3の蒸留塔6,水抽出塔(水抽出器)7及び第4の蒸留塔8)とを備えている。」([0032])

(1b)「反応混合物(反応粗液)中には、酢酸、酢酸よりも沸点の低い揮発性成分[低沸成分(助触媒としてのヨウ化メチル、酢酸とメタノールとの反応生成物である酢酸メチル、メタノール、水、ジメチルエーテルなど)又は低沸不純物(ヨウ化水素、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド)など]、及び酢酸よりも沸点の高い低揮発性成分[金属触媒成分(ロジウム触媒、及び助触媒としてのヨウ化リチウム)又は高沸不純物(プロピオン酸、2-エチルクロトンアルデヒドなどのアルデヒド縮合物、ヨウ化ヘキシル、ヨウ化デシルなどのヨウ化C_(6-12)アルキルなどの副反応生成物など)など]が含まれる。
・・・
そこで、反応混合物(反応混合物の一部)を、供給ライン11を通じて反応器1からフラッシャー又は蒸発槽(フラッシュ蒸発槽、フラッシュ蒸留塔)2に連続的に供給してフラッシュ蒸留し、フラッシュ蒸発槽2の塔頂部又は上段部からの揮発相成分(主に、生成した酢酸、メタノール、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、プロピオン酸、アセトアルデヒド、副生したヨウ化水素などを含む低沸点留分)と、低揮発相成分(主にロジウム触媒及びヨウ化リチウムなどの金属触媒成分(高沸成分)を含む高沸点留分)とに分離する。」([0035][0036])

(1c)「揮発相成分(又は揮発相)は、供給ライン22により、棚段塔などの第1の蒸留塔(スプリッターカラム)3の高さ方向の中央部よりも下部に供給され、第1の蒸留塔(スプリッターカラム)3は、供給ライン22を通じて供給された揮発相成分(又は揮発相)の一部を蒸留し、塔頂又は塔の上段部から留出する第1のオーバーヘッド(ヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド、水などを含む第1の低沸点成分)と、塔底から留出する缶出流(主に、水、酢酸、飛沫同伴などにより混入した触媒(ヨウ化リチウムなど)、プロピオン酸、ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化C_(6-12)アルキル、アルデヒド縮合物などの高沸不純物などの高沸点成分を含む流分)と、側部(供給ライン22による供給部よりも上部)からのサイドカット流(主に、酢酸を含む第1の液状流分(粗酢酸流分))とに分離する。この例では、サイドカット流(粗酢酸流)は供給ライン36を通じて第2の蒸留塔5に供給され、塔底からの缶出流はリサイクルライン31を通じて反応器1に与えられている。なお、塔底からの缶出流の一部又は全部は、ライン(図示せず)を通じて、蒸発槽2にリサイクルしてもよい。」([0039])

(1d)「コンデンサC3で凝縮した凝縮液の一部は、リサイクルライン41を通じて反応器1にリサイクルし、凝縮液分の一部は、還流ライン42を通じて第1の蒸留塔3にリサイクルして還流している。より詳細には、コンデンサC3で冷却して凝縮した第1のオーバーヘッドの凝縮液は、デカンタ4内で、水、酢酸、酢酸メチル、ヨウ化水素及びアセトアルデヒドなどを含む水相(上相又は軽質相)と、ヨウ化メチル、酢酸メチルなどを含む有機相(下相又は重質相)とに分液し、水相(上相)を還流ライン42により第1の蒸留塔3に供給して還流し、有機相(下相)をリサイクルライン41により反応器1へリサイクルしている。」([0046])

(1e)「第1の蒸留塔3からのサイドカット流(粗酢酸流)は、供給ライン36により第2の蒸留塔(脱水塔又は精製塔)5に供給されて蒸留され、塔頂からライン52を通じて留出する第2のオーバーヘッド(水などの低沸成分を含む第2の低沸点成分)と、塔底からライン51を通じて留出する缶出流(水、プロピオン酸などの高沸点カルボン酸、ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化C_(6-12)アルキル、アルデヒド縮合物などを含む高沸成分(高沸不純物))と、側部(塔底と供給ライン36による供給部との間)からライン55を通じて留出するサイドカット流(酢酸を含む第2の液状流分(精製した高純度の酢酸流))とに分離している。」([0048])

(1f)「周期表第8族金属触媒としては、例えば、ロジウム触媒、イリジウム触媒など(特に、ロジウム触媒)が例示できる。触媒は、ハロゲン化物(ヨウ化物など)、カルボン酸塩(酢酸塩など)、無機酸塩、錯体(特に、反応液中で可溶な形態、例えば、錯体)の形態で使用できる。このようなロジウム触媒としては、ロジウムヨウ素錯体(例えば、RhI_(3) 、RhI_(2) (CO)_(4) ]、[Rh(CO)_(2) I_(2) ]など)、ロジウムカルボニル錯体などが例示できる。このような金属触媒は一種で又は二種以上組み合わせて使用できる。金属触媒の濃度は、例えば、反応器内の液相全体に対して10?5000ppm(重量基準、以下同じ)、特に200?3000ppm(例えば、500?1500ppm)程度である。
・・・
助触媒又は促進剤としては、イオン性ヨウ化物又はヨウ化金属が使用され、低水分下でのロジウム触媒の安定化と副反応抑制のために有用である。イオン性ヨウ化物(又はヨウ化金属)は、反応液中で、ヨウ素イオンを発生可能であればよく、例えば、ヨウ化アルカリ金属(ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなど)などが挙げられる。なお、ヨウ化アルカリ金属(ヨウ化リチウムなど)は、カルボニル化触媒(例えば、ロジウム触媒など)の安定剤としても機能する。これらの助触媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの助触媒のうちヨウ化リチウムが好ましい。反応器の液相系(反応液)での助触媒(ヨウ化金属など)の濃度は、液相全体に対して、例えば、1?25重量%、好ましくは2?22重量%、さらに好ましくは3?20重量%程度である。
・・・
前記促進剤としては、ヨウ化メチルが利用される。反応器の液相系(反応液)でのヨウ化メチルの濃度は、液相全体に対して、例えば、1?20重量%、好ましくは5?20重量%、さらに好ましくは6?16重量%(例えば、8?14重量%)程度である。
・・・
反応混合液は、通常、酢酸とメタノールとの反応により生成した酢酸メチルを含んでいる。酢酸メチルの含有割合は、反応混合液全体の0.1?30重量%、好ましくは0.3?20重量%、さらに好ましくは0.5?10重量%(例えば、0.5?6重量%)程度の割合であってもよい。
・・・
反応は溶媒の非存在下で行ってもよいが、通常、溶媒の存在下で行われる。反応溶媒としては、通常、生成物である酢酸を用いる場合が多い。
・・・
反応系の水濃度は、低濃度であってもよい。反応系の水濃度は、反応系の液相全体に対して、例えば、15重量%以下(例えば、0.1?12重量%)、好ましくは10重量%以下(例えば、0.1?8重量%)、さらに好ましくは0.1?5重量%(例えば、0.5?3重量%)程度であり、通常1?15重量%(例えば、2?10重量%)程度であってもよい。」([0065]?[0070])

(1g)「なお、図示する例では、有機相(重質相)を反応器1へリサイクルし、水相(軽質相)を第1の蒸留塔3にリサイクルして還流しているが、有機相(重質相)及び/又は水相(軽質相)を反応器1へリサイクルしてもよく、第1の蒸留塔3にリサイクルしてもよい。」([0105])(下線は当審にて追加、以下同様)

(1h)「(比較例1) 図2に示す酢酸の連続製造プロセスにおいて、メタノールと一酸化炭素とをカルボニル化反応器で連続的に反応させ、前記反応器からの反応混合物をフラッシャーに連続的に供給し、フラッシュ蒸留により、低揮発相成分(ロジウム触媒、ヨウ化リチウム、酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、およびヨウ化水素を少なくとも含む缶出成分)と、揮発相成分(液化したガス状成分、液温135℃)とに分離し、この揮発相成分を第1の蒸留塔に供給した。なお、補給ライン34bおよび35bは利用しなかった。また、揮発相成分の組成は、ヨウ化メチル(MeI)38.2重量%、酢酸メチル(MA)0.3重量%、水(H2O)6.5重量%、ヨウ化水素(HI)5000ppm(重量基準)、酢酸54.5重量%を含んでいる(なお、酢酸の含有量は、100重量%から酢酸以外の成分組成の総和を減算することにより算出した。以下同じ)。
・・・
揮発相成分100重量部を第1の蒸留塔(実段:20段、仕込段:下から2段)に供給し、ゲージ圧150KPA、塔底温度140℃、塔頂温度115℃、軽質相還流比3で蒸留し、デカンタで分液した水相(軽質相)5重量部及び有機相(重質相)38重量部を反応器にリサイクルした。なお、第1の蒸留塔の塔頂組成(オーバーヘッドの組成)は、ヨウ化メチル(MeI)63.8重量%、酢酸メチル(MA)0.6重量%、水(H_(2)O)23.3重量%、ヨウ化水素(HI)440ppm、酢酸12.3重量%であり、水相(軽質相)の組成は、ヨウ化メチル(MeI)2.6重量%、酢酸メチル(MA)0.3重量%、水(H_(2)O)67.0重量%、ヨウ化水素(HI)900ppm、酢酸30.0重量%であり、有機相(重質相)の組成は、ヨウ化メチル(MeI)96重量%、酢酸メチル(MA)0.7重量%、水(H_(2)O)0.3重量%、ヨウ化水素(HI)200ppm、酢酸3.0重量%であった。
・・・
第1の蒸留塔のサイドカット(サイドカット段:下から4段)から酢酸を含むサイドカット流54重量部と、塔底から飛沫同伴で含有した触媒を含む缶出流3重量部との割合で抜取り、缶出流は反応系にリサイクルし、サイドカット流は第2の蒸留塔に供給して脱水精製した。なお、サイドカット流の組成は、MeIが2.9重量%、MAが0.03重量%、H_(2)O 5.3重量%、HIが970ppm、酢酸が90.8重量%であった。なお、揮発相成分、水相(軽質相)及び有機相(重質相)、サイドカット流及び缶出流などの流体の「重量部」は単位時間(1時間)当たりの流量を示す(以下、同じ)。
・・・
このような連続反応プロセスにおいて、第1蒸留塔の仕込段よりも1段上(3段)と仕込段よりも1段下のボトム、及び塔頂部(19段)に、以下のテストピースを入れて、100時間保持して腐食テストを行い、テスト前後のテストピースの重量を測定し、腐食量を求めた。測定した腐食量(減少した重量)及びテストピースの面積に基づいて、一年間あたりのテストピースの腐食速度(厚みの減肉量)を厚みmmに換算し、単位「mm/Y」で示した。
・・・
[テストピース]
HB2:小田鋼機(株)製、ハステロイB2(ニッケル基合金)
HC:小田鋼機(株)製、ハステロイC(ニッケル基合金)
SUS316L:ウメトク(株)製、サス316ローカーボン(ステンレス鋼)
(比較例2) 仕込み液(揮発相成分)中の水濃度を4重量%に調整して第1の蒸留塔に供給し、この水濃度に伴って、第1の蒸留塔での還流比、軽質相、重質相の反応系へのリサイクル量を変化させた以外は、比較例1と同様にして、腐食テストを行った。
・・・
なお、揮発相成分の組成は、MeIが38.5重量%、MAが0.3重量%、H_(2)Oが4.0重量%、HIが5000ppm、酢酸が56.7重量%であった。また、蒸留は、軽質相還流比5で行い、軽質相3.3重量部、重質相38.5重量部を反応系にリサイクルした。第1の蒸留塔の塔頂組成(オーバーヘッドの組成)は、MeIが64.3重量%、MAが0.6重量%、H_(2)Oが23.3重量%、HIが470ppm、酢酸11.8重量%であり、水相(軽質相)の組成は、MeIが2.6重量%、MAが0.3重量%、H_(2)Oが68.0重量%、HIが1200ppm、酢酸が29.0重量%であり、有機相(重質相)の組成は、MeIが96重量%、MAが0.7重量%、H_(2)Oが0.3重量%、HIが90ppm、酢酸が3.0重量%であった。第1の蒸留塔からは、酢酸を含むサイドカット流55.2重量部及び缶出流3重量部との割合で抜取った。サイドカット流の組成は、MeIが2.6重量%、MAが0.04重量%、H_(2)Oが2.8重量%、HIが820ppm、酢酸が93.6重量%であり、缶出流の組成は、MeIが0重量%、MAが0.03重量%、H_(2)Oが2.6重量%、HIが800ppm、酢酸が97.1重量%であった。なお、第1の蒸留塔での塔頂温度は115℃であり、塔底温度は比較例1と同じであった。
・・・
(比較例3)
仕込み液(揮発相成分)中の酢酸メチル濃度を10重量%に調整して第1の蒸留塔に供給し、この酢酸メチル濃度に伴って、第1の蒸留塔での還流比、軽質相、重質相の反応系へのリサイクル量を変化させた以外は、比較例1と同様にして、腐食テストを行った。しかし、上記仕込み液(揮発相成分)での運転では、軽質相と重質相との分液性が悪く、両相が混相となったり1相化現象が発生した結果、数時間運転後に不安定となり、長時間の運転が不可能であった。

(実施例1?4)
仕込み液(揮発相成分)中の酢酸メチル及び水濃度を変化させて第1の蒸留塔に供給し、これらの酢酸メチル及び水濃度の変化に伴って、第1の蒸留塔での還流比、軽質相、重質相の反応系へのリサイクル量を変化させた以外は、比較例1と同様にして、腐食テストを行った。

実施例及び比較例での各運転条件を表1に示し、腐食テストの結果を表2に示す。表2中の数値の単位は腐食速度「mm/Y」である。

[表1]

」([0115]?[0124])

イ 刊行物2
本件優先日前に頒布された刊行物であると認められる刊行物2には以下の記載がある。
(2a)「


図において、塔頂から凝縮液の一部を塔内に戻しているが、これを還流といい、還流液流量L[mol・h^(-1)]と留出液流量Dとの比R(=L/D)を還流比という。」(527頁図10・4及び左欄下から2行?右欄1行)

ウ 刊行物3
本件優先日前に頒布された刊行物であると認められる刊行物3には以下の記載がある。
(3a)「【請求項1】 ロジウム触媒、ヨウ化物塩およびヨウ化メチルの存在下、連続的にメタノール、酢酸メチル、ジメチルエーテルの内少なくとも一成分と一酸化炭素を反応させて酢酸および/または無水酢酸を製造する方法において、反応液中のアセトアルデヒド濃度を400ppm以下に保ち、反応を行い、得られる液体酢酸および/または液体無水酢酸を、活性部位の少なくとも1%が銀および/または水銀形に交換されている強酸性カチオン交換樹脂と接触させることを特徴とする高純度酢酸および/または高純度無水酢酸の製造法。」

(3b)「【0025】従って、本発明においては、カルボニル化反応液中のアセトアルデヒド濃度を400ppm以下に維持することで得られた液体酢酸および/または液体無水酢酸を、活性部位の少なくとも1%が銀および/または水銀形に交換されている強酸性カチオン交換樹脂と接触させる。強酸性カチオン交換樹脂と接触させる液は、酢酸および/または無水酢酸を主成分とする液であればどの様な液であってもかまわないが、樹脂の保護のためには可能な限り、ヨウ化メチル濃度の低いプロセス液を用いるのが好ましい。本発明においては、ライン17から蒸留など従来公知のプロセスを経て得た酢酸および/または無水酢酸を上記特定の強酸性カチオン交換樹脂40と接触させることで、そのまま蒸留など後工程を加えなくても高純度の酢酸および/または無水酢酸が得られる。また、蒸留など従来公知のプロセスを経る前に強酸性カチオン交換樹脂40と接触させてもよい。尚、必要に応じて、ライン17からの酢酸および/または無水酢酸は強酸性カチオン交換樹脂40と接触させた後に、蒸留等の操作を行なっても良い。」

(2)刊行物1に記載された発明
上記摘記(1a)には、プロセスとして、触媒及び水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続的に反応(メタノールのカルボニル化反応)させるための反応器(反応系)1と、反応混合物(反応液)をフラッシュ蒸留して、揮発相成分と低揮発相成分とに分離するためのフラッシャー又は蒸発槽(フラッシュ蒸発槽)2と、前記揮発相成分を蒸留して、塔頂からの第1のオーバーヘッドと塔底からの缶出流とサイドカット流(粗酢酸流)とに分離するための第1の蒸留塔(スプリッターカラム)3と、第1のオーバーヘッドをコンデンサC3で冷却して凝縮し、水相(上相又は軽質相)と有機相(下相又は重質相)とに分液するためのデカンタ4と、第1の蒸留塔3からのサイドカット流(粗酢酸流)を蒸留し、精製酢酸流を分離するものが記載されている。
上記摘記(1b)には、反応混合物(反応粗液)中には、酢酸、酢酸よりも沸点の低い揮発性成分[低沸成分(助触媒としてのヨウ化メチル、酢酸とメタノールとの反応生成物である酢酸メチル、メタノール、水、ジメチルエーテルなど)又は低沸不純物(ヨウ化水素、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド)など]、及び酢酸よりも沸点の高い低揮発性成分[金属触媒成分(ロジウム触媒、及び助触媒としてのヨウ化リチウム)又は高沸不純物(プロピオン酸、2-エチルクロトンアルデヒドなどのアルデヒド縮合物、ヨウ化ヘキシル、ヨウ化デシルなどのヨウ化C_(6-12)アルキルなどの副反応生成物など)など]が含まれること及び、フラッシュ蒸発槽2の塔頂部又は上段部からの揮発相成分(主に、生成した酢酸、メタノール、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、プロピオン酸、アセトアルデヒド、副生したヨウ化水素などを含む低沸点留分)と、低揮発相成分(主にロジウム触媒及びヨウ化リチウムなどの金属触媒成分(高沸成分)を含む高沸点留分)とに分離することが記載されている。
上記摘記(1c)には、第1の蒸留塔(スプリッターカラム)3の高さ方向の中央部よりも下部に供給され、第1の蒸留塔(スプリッターカラム)3で、供給された揮発相成分(又は揮発相)の一部を蒸留し、塔頂又は塔の上段部から留出する第1のオーバーヘッド(ヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド、水などを含む第1の低沸点成分)と、側部(供給ライン22による供給部よりも上部)からのサイドカット流(主に、酢酸を含む第1の液状流分(粗酢酸流分))とに分離することが記載されている。
上記摘記(1e)には、該サイドカット流は、第2の蒸留塔5に供給されて蒸留されることが記載され、上記摘記(1g)には、有機相(重質相)及び/又は水相(軽質相)を反応器1へリサイクルしてもよいことが記載され、上記摘記(1h)には、酢酸の連続製造プロセスにおいて、実施例4として、サイドカット流、塔頂流、還流、上相(軽質相)流、下層(重質相)流に関して、サイドカット流の水が1.2重量部、ヨウ化水素が5ppm、塔頂流の流量が62.2重量部、水が20.9重量部、還流の流量が16.8重量部、軽質相の流量が1.4重量部、水が69.1重量、重質相の流量が44重量部であることが示されている。

したがって、刊行物1には、
「触媒及び水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続的に反応(メタノールのカルボニル化反応)させるための反応器(反応系)1と、反応混合物(反応粗液)中には、酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、金属触媒成分、ヨウ化リチウム)が含まれ、反応混合物(反応液)をフラッシュ蒸留して、揮発相成分(主に、生成した酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、アセトアルデヒド、ヨウ化水素などを含む低沸点留分)と、低揮発相成分(主にロジウム触媒などの金属触媒成分(高沸成分)を含む高沸点留分)とに分離するためのフラッシャー又は蒸発槽(フラッシュ蒸発槽)2と、前記揮発相成分を蒸留して、塔頂からの第1のオーバーヘッド(ヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド、水などを含む第1の低沸点成分)と塔底からの缶出流とサイドカット流(粗酢酸流)とに分離するための第1の蒸留塔(スプリッターカラム)3と、第1のオーバーヘッドをコンデンサC3で冷却して凝縮し、水相(上相又は軽質相)と有機相(下相又は重質相)とに分液するためのデカンタ4とを用い、第1の蒸留塔3からのサイドカット流(粗酢酸流)を、第2の蒸留塔5において蒸留し、精製酢酸流を分離するもので、前記水相(軽質相)及び/又は前記有機相(重質相)を反応器1へリサイクルし、サイドカット流、塔頂流、還流、上相(軽質相)流、下層(重質相)流に関して、サイドカット流の水が1.2重量部、ヨウ化水素が5ppm、ヨウ化メチル2.3重量部、酢酸メチル1.6重量部を含み、塔頂流が、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、ヨウ化水素、アセトアルデヒドを含み、塔頂流の流量が62.2重量部、水が20.9重量部、還流の流量が16.8重量部、軽質相の流量が1.4重量部、水が69.1重量部、重質相の流量が44部である酢酸の連続製造プロセス」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。

(3)判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「触媒及び水の存在下、メタノールと一酸化炭素とを連続的に反応(メタノールのカルボニル化反応)させるための反応器(反応系)1と、・・・反応混合物(反応液)をフラッシュ蒸留して、揮発相成分・・・と、低揮発相成分・・・とに分離するためのフラッシャー又は蒸発槽(フラッシュ蒸発槽)2」「を用いて」は、本件発明1の、「反応器とフラッシュ容器を備える反応系を用意すること」に相当し、刊行物1発明の「反応混合物(反応粗液)中には、酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、金属触媒成分、ヨウ化リチウム)が含まれ」ることは、本件発明10の「反応器で、酢酸、酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルを含む反応媒体を形成すること」に相当する。
そして、刊行物1発明の「フラッシャー又は蒸発槽(フラッシュ蒸発槽)2」において、「反応混合物(反応液)をフラッシュ蒸留して、揮発相成分(主に、生成した酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、アセトアルデヒド、ヨウ化水素などを含む低沸点留分)と、低揮発相成分(主にロジウム触媒などの金属触媒成分(高沸成分)を含む高沸点留分)とに分離する」ことは、アセトアルデヒドは、本件発明における過マンガン酸還元化合物(PRC)であるので、本件発明1の「フラッシュ容器で該反応媒体を、酢酸、金属触媒及び腐食性金属を含む液体リサイクル流と、酢酸、酢酸メチル、水、ヨウ化水素、ヨウ化メチル及び過マンガン酸還元化合物(PRC)を含む蒸気生成物流に分離すること」に、液体リサイクル流に腐食性金属が含まれているとの特定を除いて相当している。
また、刊行物1発明の「第1の蒸留塔(スプリッターカラム)3」において、「前記揮発相成分を蒸留して、塔頂からの第1のオーバーヘッド(ヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド、水などを含む第1の低沸点成分)と塔底からの缶出流とサイドカット流(粗酢酸流)とに分離する」及び「塔頂流の水が20.9重量部」であることは、本件発明1の「第1の塔で該蒸気生成物流の少なくとも一部を蒸留して、酢酸を含む側流と、酢酸メチル、ヨウ化メチル、PRC、及び5重量%超の水を含む低沸点オーバーヘッド蒸気流を得ること」に該当する。
さらに、刊行物1発明の「デカンタ4」において、「第1のオーバーヘッドをコンデンサC3で冷却して凝縮し、水相(上相又は軽質相)と有機相(下相又は重質相)とに分液する」こと及び「軽質相の・・・水が69.1重量部」であることは、本件発明1の「低沸点オーバーヘッド流の少なくとも一部を凝縮し、かつ二相に分離して、有機相である重質液相と、水相であり、40?80重量%の水を含む軽質液相を形成すること」に該当する。
そして、刊行物1発明の「第1の蒸留塔3からのサイドカット流(粗酢酸流)を、第2の蒸留塔5において蒸留し、精製酢酸流を分離する」ことは、本件発明1の「第2の塔で該側流の少なくとも一部を蒸留して精製酢酸生成物を得ること」に相当する。

したがって、本件発明1と刊行物1発明とは、「反応器とフラッシュ容器を備える反応系を用意すること、
該反応器で、酢酸、酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルを含む反応媒体を形成すること、
該フラッシュ容器で該反応媒体を、酢酸、金属触媒を含む液体リサイクル流と、酢酸、酢酸メチル、水、ヨウ化水素、ヨウ化メチル及び過マンガン酸還元化合物(PRC)を含む蒸気生成物流に分離すること、
第1の塔で該蒸気生成物流の少なくとも一部を蒸留して、酢酸を含む側流と、酢酸メチル、ヨウ化メチル、PRC、及び5重量%超の水を含む低沸点オーバーヘッド蒸気流を得ること、
該低沸点オーバーヘッド流の少なくとも一部を凝縮し、かつ二相に分離して、有機相である重質液相と、水相であり、40?80重量%の水を含む軽質液相を形成すること、
該軽質液相の該反応系へのリサイクルを行うこと、
該側流中の水濃度を1?3重量%にし、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下にすること、及び
第2の塔で該側流の少なくとも一部を蒸留して精製酢酸生成物を得ることを含む、酢酸を製造する方法。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。

相違点1:本件発明1は、軽質液相の反応系へのリサイクル率を制御して側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること及び該リサイクル率の制御が、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることを含むことが特定されているのに対して、刊行物1発明は、軽質液相を反応系へリサイクルしており、側流中の水濃度がを1.2重量%で、側流中のヨウ化水素濃度が5ppmであるものの、軽質液相の反応系へのリサイクル率を制御して側流中の水濃度、ヨウ化水素濃度を特定範囲に維持しているとの特定及び該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させるとの制御内容の特定のない点

相違点2:本件発明1は、フラッシュ容器からの液体リサイクル流に腐食性金属が含まれることが特定されているのに対して、刊行物1発明は、腐食性金属が含まれるかどうか明らかでない点

相違点3:本件発明1は、第1の塔は0.05?0.4の還流比で運転されるとの特定があるのに対して、刊行物1発明では、塔頂流の流量が62.2重量部で、還流の流量が16.8重量部である点

(イ)相違点の判断
以下、相違点について検討する。
a 相違点1,3の判断について
刊行物1発明では、相違点1に関連して、軽質液相を反応系へ一部リサイクルしてはいるが、リサイクル率を制御して側流中の水濃度、ヨウ化水素濃度を維持していることや該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させるとの制御を行っているものではない。
したがって、相違点1は、実質的相違点であり、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、刊行物1に記載された発明とはいえない。

また、刊行物1発明では、相違点3に関連して、塔頂流の流量が62.2重量部、還流の流量が16.8重量部であることから留出液流量は45.4重量部であり(摘記(1h))、還流比は、L(還流の流量)/D(留出液流量)=16.8/(62.2-16.8)=0.37と計算できるため(刊行物2摘記(2a)参照)、還流比自体は本件発明1の0.05?0.4の還流比の範囲に該当してはいる。

ところで、本件発明1は、側流中の水濃度、ヨウ化水素濃度を、第1の塔が0.05?0.4の還流比で運転されることを前提として、側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させるとの制御内容によって、軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して該側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持する方法であって、本件明細書で記載するとおり、最終的な制御結果である側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持するためには、反応系へのリサイクル率のみではなく、第1の塔が0.05?0.4の還流比で運転される状態を保つ必要があるといえる。

したがって、本件発明1と刊行物1発明の対比において、相違点1及び相違点3は有機的関係をもつ相違点であることからから一体として検討する必要がある。

上記のとおり、刊行物1発明では、軽質液相を反応系へ一部リサイクルしてはいるが、一実施形態として、側流中の水濃度、ヨウ化水素濃度、塔頂流の流量、還流の流量が技術常識に基づき計算すると本件発明1の数値範囲に該当するといえるだけで、リサイクル率を制御して側流中の水濃度、ヨウ化水素濃度を維持していることや該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させるとの制御を行うものではなく、ましてや特定の還流比を前提とした上で、上記制御を行うものでもないことは明らかである。
また、その他の刊行物1の記載事項を考慮しても、軽質液相の該反応系へのリサイクル率に着目してヨウ化水素や水の濃度を制御する記載は一切なく、軽質液相の該反応系へのリサイクル率を、特定の第1の蒸留塔の還元率を特定範囲にすることを前提として、制御するという特定の制御を行うことを示唆するものではないので、刊行物1発明において、本件発明1の制御を行うように構成を変更することは当業者が容易になし得るものとはいえない。

また、本件発明1は、【0045】?【0047】の還流比を特定範囲とした上で、軽質液相の反応系へのリサイクル率を、側流でのヨウ化水素の濃度に基づいて変化させることで、新たな第1の塔への成分添加等を行うことなく、側流中の水とヨウ化水素の濃度を一定以下に維持するという顕著な効果を得ているといえる。

よって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、理由3,4に基づき、取り消すべきものとはいえない。

イ 本件発明2?8,11,13について
本件発明2?8,11,13は、本件発明1において、それぞれ、「該反応媒体は酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルを含む」こと、「該反応媒体は、0.5?30重量%の酢酸メチル、0.1?14重量%の水、200?3000wppmの金属触媒、1?25重量%のヨウ化物塩、及び1?25重量%のヨウ化メチルを含む」こと、「該側流中の水濃度を1.1?2.5重量%に維持する」こと、「該側流のヨウ化水素濃度を0.1?50wppmに維持する」こと、「該側流は0.1?6重量%の1種以上のヨウ化C_(1)-C_(14)アルキルをさらに含む」こと、「該側流は0.1?6重量%の酢酸メチルをさらに含む」こと、「該側流中のヨウ化水素濃度を、滴定試薬として酢酸リチウムを用いた電位差滴定により求める」こと、「該重質液相、該軽質液相、またはこれらの混合物を該第1の塔に還流させることをさらに含む」こと、「該精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5wppm以下の場合には、該精製酢酸生成物をガード床に接触させることをさらに含む」ことをさらに特定したものである。
したがって、本件発明1が、刊行物1に記載された発明に基いて、優先日時点の技術常識を考慮しても、優先日前に当業者が容易に発明することができたとはいえない以上、さらに特定事項を含んだ本件発明2?8,11,13は、刊行物1に記載された発明に基いて、優先日時点の技術常識を考慮しても、優先日前に当業者が容易に発明することができたとはいえない。

ウ 本件発明14について
(ア)対比
本件発明14は、本件発明1との関係で、該側流中のヨウ化水素濃度を測定することの特定をさらに加えるとともに、制御の結果として、側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持することとして、水の濃度を1?3重量%に維持するとの特定、低沸点オーバーヘッド蒸気流に含まれる水の5重量%超との特定を除いたものである。

本件発明14と刊行物1発明とを対比すると、「反応器とフラッシュ容器を備える反応系を用意すること、
該反応器で、酢酸、酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルを含む反応媒体を形成すること、
該フラッシュ容器で該反応媒体を、酢酸、金属触媒を含む液体リサイクル流と、酢酸、酢酸メチル、水、ヨウ化水素、ヨウ化メチル及び過マンガン酸還元化合物(PRC)を含む蒸気生成物流に分離すること、
第1の塔で該蒸気生成物流の少なくとも一部を蒸留して、酢酸を含む側流と、水、酢酸メチル、ヨウ化メチル及びPRCを含む低沸点オーバーヘッド蒸気流を得ること、
該低沸点オーバーヘッド流の少なくとも一部を凝縮し、かつ二相に分離して、有機相である重質液相と、水相であり、40?80重量%の水を含む軽質液相を形成すること、
該軽質液相の該反応系へのリサイクルを行うこと、
該側流中の水濃度を1?3重量%にし、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下にすること、及び
第2の塔で該側流の少なくとも一部を蒸留して精製酢酸生成物を得ることを含む、酢酸を製造する方法。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。

相違点1:本件発明14は、該側流中のヨウ化水素濃度を測定すること、
該測定されたヨウ化水素濃度に応じて該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること及び該リサイクル率の制御が、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることを含むことが特定されているのに対して、刊行物1発明は、軽質液相を反応系へリサイクルしており、側流中のヨウ化水素濃度が5ppmであるものの、該側流中のヨウ化水素濃度を測定すること、該測定されたヨウ化水素濃度に応じて該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持するとの特定及び該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させるとの制御内容の特定のない点

相違点2:本件発明14は、フラッシュ容器からの液体リサイクル流に腐食性金属が含まれることが特定されているのに対して、刊行物1発明は、腐食性金属が含まれるかどうか明らかでない点

相違点3:本件発明14は、第1の塔は0.05?0.4の還流比で運転されるとの特定があるのに対して、刊行物1発明では、塔頂流の流量が62.2重量部で、還流の流量が16.8重量部である点

(イ)相違点の判断
以下、相違点について検討する。
a 相違点1,3の判断について
刊行物1発明では、相違点1に関連して、軽質液相を反応系へ一部リサイクルしてはいるが、該側流中のヨウ化水素濃度を測定すること、該測定されたヨウ化水素濃度に応じて該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して、該側流中のヨウ化水素濃度を維持することや該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させるとの制御を行っているものではない。
したがって、相違点1は、実質的相違点であり、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明14は、刊行物1に記載された発明とはいえない。

また、刊行物1発明では、相違点3に関連して、塔頂流の流量が62.2重量部、還流の流量が16.8重量部であることから留出液流量は45.4重量部であり(摘記(1h))、還流比は、L(還流の流量)/D(留出液流量)=16.8/(62.2-16.8)=0.37と計算できるため(刊行物2摘記(2a)参照)、還流比自体は本件発明16の0.05?0.4の還流比の範囲に該当してはいる。

ところで、本件発明14は、側流中の水濃度、ヨウ化水素濃度を、第1の塔が0.05?0.4の還流比で運転されることを前提として、側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させるとの制御内容によって、該側流中のヨウ化水素濃度を測定すること、該測定されたヨウ化水素濃度に応じて該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持する方法であって、本件明細書で記載するとおり、最終的な制御結果である該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持するためには、反応系へのリサイクル率のみではなく、第1の塔が0.05?0.4の還流比で運転される状態を保つ必要があるといえる。

したがって、本件発明14と刊行物1発明の対比において、相違点1及び相違点3は有機的関係をもつ相違点であることからから一体として検討する必要がある。

上記のとおり、刊行物1発明では、軽質液相を反応系へ一部リサイクルしてはいるが、 一実施形態として、側流中の水濃度、ヨウ化水素濃度、塔頂流の流量、還流の流量が技術常識に基づき計算すると本件発明14の数値範囲に該当するといえるだけで、該側流中のヨウ化水素濃度を測定し、該測定されたヨウ化水素濃度に応じて該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して側流中のヨウ化水素濃度を維持するものでもないし、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させるとの制御を行うものでもなく、ましてや特定の還流比を前提とした上で、上記制御を行うものでもないことは明らかである。
また、その他の刊行物1の記載事項を考慮しても、側流中のヨウ化水素濃度を測定し、該測定されたヨウ化水素濃度に応じて軽質液相の該反応系へのリサイクル率に着目してヨウ化水素を制御する記載は一切なく、特定の第1の蒸留塔の還元率を特定範囲にすることを前提として、前記制御をするという特定の制御を行うことを示唆するものではないので、刊行物1発明において、本件発明14の制御を行うように構成を変更することは当業者が容易になし得るものとはいえない。

また、本件発明14は、【0045】?【0047】の還流比を特定範囲とした上で、側流中のヨウ化水素濃度を測定し、該測定されたヨウ化水素濃度に応じて軽質液相の反応系へのリサイクル率を、側流でのヨウ化水素の濃度に基づいて変化させることで、新たな第1の塔への成分添加等を行うことなく、側流中の水とヨウ化水素の濃度を一定以下に維持するという顕著な効果を得ているといえる。

よって、本件発明14も、相違点2について検討するまでもなく、取消理由3,4に基づき、取り消すべきものとはいえない。

エ 本件発明15,17?19について
本件発明15,17?19は、本件発明14において、それぞれ、「該側流中のヨウ化水素濃度を、滴定試薬として酢酸リチウムを用いた電位差滴定により測定する」こと、「該側流中のヨウ化水素濃度を0.1?50wppmに維持する」こと、「該側流中の水濃度を1?3重量%に維持する」こと、「該精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5wppm以下の場合には、該精製酢酸生成物をガード床に接触させることをさらに含む」ことを、さらに特定したものである。
したがって、本件発明14が、刊行物1に記載された発明に基いて、優先日時点の技術常識を考慮しても、優先日前に当業者が容易に発明することができたとはいえない以上、さらに特定事項を含んだ本件発明15,17?19は、刊行物1に記載された発明に基いて、優先日時点の技術常識を考慮しても、優先日前に当業者が容易に発明することができたとはいえない。

オ 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、甲第4号証(特許第4732743号公報)を新たに提出し、平成29年2月16日付け意見書において、甲第4号証には、蒸留塔内のヨウ化水素濃度を低くするために、水を多く含む軽質相の蒸留塔への還流量を減少させて蒸留塔内の水の量を低減させることが開示されているとして、甲第1号証に甲第4号証(以下「刊行物4」という。)を適用すれば、リサイクル率を増加させることになり、本件発明は当業者が極めて容易になし得る旨主張するが、刊行物1?4には、「第1の塔が0.05?0.4の還流比で運転されることを前提として」、「軽質液相の該反応系へのリサイクル率」に着目して、「側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させる」との制御手法によって、「制御して該側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること」、又は「第1の塔が0.05?0.4の還流比で運転されることを前提として」、「軽質液相の該反応系へのリサイクル率」に着目して、「該側流中のヨウ化水素濃度を測定すること、該測定されたヨウ化水素濃度に応じて該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御し」「側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させる」という制御手法で、「制御して該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること」が記載されているものと認められず、請求項1?8,11,13?15,17?19に係る発明が刊行物1に記載された発明及び刊行物2?4に記載された技術的事項に基いて容易に想到し得るものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本件発明1?8,11,13?15,17?19に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、取り消されるべきものとはいえない。
さらに、請求項9,10,12,16に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項9,10,12,16に係る特許に関する申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器とフラッシュ容器を備える反応系を用意すること、
該反応器で、酢酸、酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルを含む反応媒体を形成すること、
該フラッシュ容器で該反応媒体を、酢酸、金属触媒及び腐食性金属を含む液体リサイクル流と、酢酸、酢酸メチル、水、ヨウ化水素、ヨウ化メチル及び過マンガン酸還元化合物(PRC)を含む蒸気生成物流に分離すること、
第1の塔で該蒸気生成物流の少なくとも一部を蒸留して、酢酸を含む側流と、酢酸メチル、ヨウ化メチル、PRC、及び5重量%超の水を含む低沸点オーバーヘッド蒸気流を得ること、
該低沸点オーバーヘッド流の少なくとも一部を凝縮し、かつ二相に分離して、有機相である重質液相と、水相であり、40?80重量%の水を含む軽質液相を形成すること、
該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して該側流中の水濃度を1?3重量%に維持し、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること、及び
第2の塔で該側流の少なくとも一部を蒸留して精製酢酸生成物を得ることを含む、酢酸を製造する方法であって、
該リサイクル率の制御が、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることを含み、
該第1の塔が、0.05?0.4である、該軽質液相の還流比で運転される、前記方法。
【請求項2】
該反応媒体は酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該反応媒体は、0.5?30重量%の酢酸メチル、0.1?14重量%の水、200?3000wppmの金属触媒、1?25重量%のヨウ化物塩、及び1?25重量%のヨウ化メチルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該側流中の水濃度を1.1?2.5重量%に維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該側流のヨウ化水素濃度を0.1?50wppmに維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該側流は0.1?6重量%の1種以上のヨウ化C_(1)-C_(14)アルキルをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該側流は0.1?6重量%の酢酸メチルをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該側流中のヨウ化水素濃度を、滴定試薬として酢酸リチウムを用いた電位差滴定により求める、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
該重質液相、該軽質液相、またはこれらの混合物を該第1の塔に還流させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
該精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5wppm以下の場合には、該精製酢酸生成物をガード床に接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
反応器とフラッシュ容器を備える反応系を用意すること、
該反応器で、酢酸、酢酸メチル、水、金属触媒、ヨウ化物塩及びヨウ化メチルを含む反応媒体を形成すること、
該フラッシュ容器で該反応媒体を、酢酸、金属触媒及び腐食性金属を含む液体リサイクル流と、酢酸、酢酸メチル、水、ヨウ化水素、ヨウ化メチル及び過マンガン酸還元化合物(PRC)を含む蒸気生成物流に分離すること、
第1の塔で該蒸気生成物流の少なくとも一部を蒸留して、酢酸を含む側流と、水、酢酸メチル、ヨウ化メチル及びPRCを含む低沸点オーバーヘッド蒸気流を得ること、
該低沸点オーバーヘッド流の少なくとも一部を凝縮し、かつ二相に分離して、有機相である重質液相と、水相であり、40?80重量%の水を含む軽質液相を形成すること、
該側流中のヨウ化水素濃度を測定すること、
該測定されたヨウ化水素濃度に応じて該軽質液相の該反応系へのリサイクル率を制御して、該側流中のヨウ化水素濃度を50wppm以下に維持すること、及び
第2の塔で該側流の少なくとも一部を蒸留して精製酢酸生成物を得ることを含む、酢酸を製造する方法であって、
該リサイクル率の制御が、該側流中のヨウ化水素濃度が所定の閾値を超える場合は該リサイクル率を増加させることを含み、
該第1の塔が、0.05?0.4である、該軽質液相の還流比で運転される、前記方法。
【請求項15】
該側流中のヨウ化水素濃度を、滴定試薬として酢酸リチウムを用いた電位差滴定により測定する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(削除)
【請求項17】
該側流中のヨウ化水素濃度を0.1?50wppmに維持する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
該側流中の水濃度を1?3重量%に維持する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
該精製酢酸生成物の総ヨウ化物濃度が5wppm以下の場合には、該精製酢酸生成物をガード床に接触させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-06-29 
出願番号 特願2015-172680(P2015-172680)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C07C)
P 1 651・ 537- YAA (C07C)
P 1 651・ 536- YAA (C07C)
P 1 651・ 121- YAA (C07C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 水島 英一郎  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 木村 敏康
瀬良 聡機
登録日 2016-01-08 
登録番号 特許第5866051号(P5866051)
権利者 セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
発明の名称 酢酸の製造方法  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 梶田 剛  
代理人 小林 泰  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小野 新次郎  
代理人 梶田 剛  
代理人 小林 泰  
代理人 山本 修  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 山本 修  
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