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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G04C
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  G04C
管理番号 1331216
異議申立番号 異議2017-700302  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-27 
確定日 2017-07-31 
異議申立件数
事件の表示 特許第6010930号発明「電子時計」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6010930号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6010930号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成24年3月2日に特許出願され、平成28年9月30日にその特許権の設定登録がされ、その後、請求項1?7に係る特許に対し、特許異議申立人土屋篤志によりそれぞれ特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第6010930号の請求項1?7の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3 申立理由の概要
特許異議申立人土屋篤志は、
(1)証拠として特開平11-304968号公報(以下、「刊行物1」という。)を提出し、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、請求項1、2に係る特許は取り消すべきものである旨主張し、
(2)証拠として刊行物1及び特開平3-269281号公報(以下、「刊行物2」という。)を提出し、請求項3、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項3、4に係る特許は取り消すべきものである旨主張し、
(3)証拠として刊行物1及び特開昭58-113880号公報(以下、「刊行物3」という。)を提出し、請求項5,7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項5、7に係る特許は取り消すべきものである旨主張し、
(4)証拠として刊行物1及び特開2006-311771号公報(以下、「刊行物4」という。)を提出し、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項6に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。

4 刊行物の記載
(1)刊行物1には、「電池よりなる電源と、発振回路と、当該発振回路より出力された信号を分周する分周回路と、該分周回路で作られた出力信号を時計信号に変換する計時回路と、電源電圧情報を前記計時回路に伝達する電圧検出回路と、計時以外の機能を有する重負荷手段の情報と前記計時回路の情報を表示する表示手段により構成される電子時計において、前記表示手段は前記重負荷手段の使用可否情報を複数の状態に分けて表示することを特徴とする電子時計。」の発明が記載されている(請求項1)。

(2)刊行物2には、バッテリーチェックスイッチで、バッテリーチェックモードに設定するという技術的事項、及びバッテリーチェックモードに設定されると、検出されたバッテリー残容量を秒針の移動した角度で表示するという技術的事項が記載されている(第2頁右上欄第16行?第19行、及び第3頁左上欄第16行?同右上欄第1行)。

(3)刊行物3には、アラーム装置等の付加装置の動作中に基準電圧を切り換えることにより、付加装置作動時の負荷電流による一時的な電池端子電圧降下によって電池寿命の予告なしにいきなり時計が停止することがないようにするという技術的事項が記載されている(第3頁左上欄第7行?第11行)。

(4)刊行物4には、電池電圧の変化が少ない動作モードでは、電池電圧を測定する測定周期を長くし、電池電圧の変化が大きい動作モードでは、電池電圧を測定する測定周期を短くするという技術的事項が記載されている(段落【0038】)。

5 判断
(1)請求項1に係る発明について
ア 請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1には、「制御手段」が「前記二次電池の電圧が前記第一電圧よりも低い第二電圧未満に低下した場合は、前記計時手段の停止が近づいていることを予告する第二制御モードを実行する」こと(相違点)が記載されていない。
したがって、請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明ではない。
なお、上記相違点は刊行物2?4のいずれにも記載されていないから、請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明、及び刊行物2?4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易になし得るものでもない。

イ 特許異議申立人土屋篤志は、刊行物1に記載された「1.3V」、「1.25V」が、それぞれ請求項1に係る発明の「第一電圧」、「第二電圧」に相当する旨主張する(特許異議申立書第6頁第13行?第14行、同第19行?第20行)。
しかしながら、刊行物1において、図1及び2に記載された、発明の実施形態の電子時計の電圧検出回路は、電池電圧が1.5V以上、1.3V以上1.5V未満、1.3V未満のいずれであるかを検出するものであるのに対し、図3及び4に記載された、従来例の電子時計の電圧検出回路は、電池電圧が1.25V以上か1.25V未満であるかを検出するものであって、いずれにも同じ「7」という参照番号が付されているものの、別の電圧検出回路であり、また、両電圧検出回路を組み合わせることについての示唆はないから、電池電圧が1.3V以上か1.3V未満であるかを検出し、かつ、電池電圧が1.25V以上か1.25V未満であるかを検出する電子時計の電圧検出回路が刊行物1に記載されているとは認められない。
また、刊行物1の図3及び4に記載された電子時計において、電圧検出回路は、電池電圧が1.25V未満になると電圧低下信号を出力し、電子時計の計時回路は秒針に2秒運針を行わせ、水深センサーを動作させないようにするものであるから、「1.25V」は「計時手段の停止が近づいていることを予告する」ための電圧であるとはいえない。
そうすると、刊行物1に記載された「1.25V」が、請求項1に係る発明の「第二電圧」に相当するという主張には理由がない。

ウ なお仮に、図3及び4に記載された電子時計の電圧検出回路に係る技術的事項を図1及び2に記載された電子時計の電圧検出回路に適用したとしても、「1.25V」は、それ未満になると水深センサーを動作させないようにする電圧であるから、図1及び2に記載された電子時計の電圧検出回路の(水深計測モードに移行しなくなる電圧である)「1.3V」が「1.25V」となるだけであり、請求項1に係る発明の「前記二次電池の電圧が前記第一電圧よりも低い第二電圧未満に低下した場合は、前記計時手段の停止が近づいていることを予告する第二制御モードを実行する制御手段」という構成を得ることはできない。
そうすると、請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易になし得るものでもない。

(2)請求項2に係る発明について
請求項2は請求項1を引用するから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、請求項2に係る発明は、刊行物1に記載された発明ではない。

(3)請求項3?7に係る発明について
請求項3?7は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用するから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、請求項3?7に係る発明は、刊行物1に記載された発明、及び刊行物2?4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易になし得るものではない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-07-19 
出願番号 特願2012-47251(P2012-47251)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (G04C)
P 1 652・ 113- Y (G04C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岡田 卓弥  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 関根 洋之
須原 宏光
登録日 2016-09-30 
登録番号 特許第6010930号(P6010930)
権利者 セイコーエプソン株式会社
発明の名称 電子時計  
代理人 廣田 浩一  

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