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審決分類 審判 全部申し立て 1項2号公然実施  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1331229
異議申立番号 異議2017-700499  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-22 
確定日 2017-08-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第6029875号発明「コラーゲン産生促進剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6029875号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6029875号に係る発明は、平成24年7月2日に特許出願され、平成28年10月28日にその特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1に係る特許に対して特許異議申立人 吉久 悦子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。
【請求項1】
黒蝶貝の真珠または/および貝殻を由来とするコンキオリン加水分解物を含むコラーゲン産生促進剤。

3 申立ての理由の概要
申立人は、特許異議申立書において、本件発明1は、本件特許の特許出願前に公然実施されたものであるから特許法第29条第1項第2号に該当し(「理由1」という)、同出願前に頒布された甲第1号証に記載されたものであるから同法第29条第1項第3号に該当し(「理由2」という)、甲第3-5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易にすることができたものであるから同法第29条第2項の規定に違反するものであり(「理由3」という)、明細書の記載を本件発明1の全範囲まで一般化することはできないから本件特許に係る出願は同法第36条第6項第1号の規定に違反するものであるため(「理由4」という)、請求項1に係る特許は取り消されるべきものであると主張する。
<証拠方法>
甲第1号証:International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook, Twelfth Edition, 2008, カバー頁及び第1217頁
甲第2号証: 『International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook, Twelfth Edition』を販売しているamazon社のインターネットのページ
甲第3号証:株式会社成和化成のPromois BLACK PEARL Fの販売用技術資料(日本語版)
甲第3-2号証:株式会社成和化成のPromois BLACK PEARLの販売用技術資料(英語版)
甲第4号証:特開2009-67719号公報
甲第5号証:特開2006-290829号公報
甲第6号証:特許第3774166号公報
甲第7号証:特許第3541120号公報
(以下、「甲第1号証」-「甲第7号証」を、「甲1」-「甲7」という。)

(1)理由1について
ア 甲1に記載された事項
甲1には以下の内容が記載されている。なお、甲1は英語で記載されているところ、下記摘示は当合議体によるその訳である。
(ア)「第12版 2008」(カバー頁)
(イ)「加水分解コンキオリンタンパク質
・・・
日本語訳
加水分解コンキオリン
・・・
効用: 毛髪調整剤、皮膚調整剤
・・・
商品名:
Promois Black Pearl (Seiwa Kasei)」(第1217頁)

イ 本件特許の特許出願前に公然実施された発明
上記ア(ア)の摘記事項から、甲1は2008年に発行されたものと認められるが、甲2の記載からも、甲1は2008年に発行されたものと認められる。そして、上記ア(イ)の摘記事項には商品名が含まれていることから、当該商品が甲1の発行時に市販されているものと認められる。
そうすると、上記ア(イ)の摘記事項からみて、本件特許の特許出願前に以下の発明が公然実施されていたものと認められる(以下、「公然実施発明」という)。
「コンキオリン加水分解物を含むPromois Black Pearl (Seiwa Kasei)という名称の皮膚調整剤。」

ウ 本件発明1と公然実施発明との対比・判断
(ア)本件発明1と公然実施発明とを対比すると、両発明は、
「コンキオリン加水分解物を含む剤。」
という点で一致し、下記の点で相違する。
相違点1:コンキオリン加水分解物が、本件発明1では「黒蝶貝の真珠または/および貝殻を由来とする」のに対し、公然実施発明においてはその由来が明らかでない点。
相違点2:本件発明1は「コラーゲン産生促進剤」であるのに対し、公然実施発明ではその旨特定されていない点。
(イ)上記相違点について検討する。
相違点1に関し、株式会社成和化成の販売用技術資料である甲3にはPromois(商標) BLACK PEARL Fが黒蝶貝を使用し、その真珠層に含まれる硬タンパク質であるコンキオリンを加水分解して得たペプチド溶液であることが記載されている(第3頁)。ここで、甲1にはPromois(商標)Black Pearlとあるのに対し、甲3にはPromois(商標) BLACK PEARL Fと記載され、「F」の有無で両者は一見相違する。しかしながら、甲3の英語版技術資料である甲3-2にはPromois(商標) BLACK PEARLと記載され、日本語版技術資料である甲3に記載のアミノ酸組成や製品情報との対比から、「F」の有無に関わらず両者は同じ成分を同濃度で配合した商品であると認められる。すなわち、Promois(商標) BLACK PEARL Fは、Promois(商標) BLACK PEARLと同じものと解される。そうすると、甲1における「Promois Black Pearl (Seiwa Kasei)」も黒蝶貝の真珠由来のコンキオリン加水分解物を含むものと認められ、相違点1は実質的な相違点とはならない。
しかし、相違点2に関し、甲1-3の記載を参酌しても、黒蝶貝由来の加水分解コンキオリンやそれを含む商品がコラーゲン産生促進剤として本件特許の特許出願前に公然実施されていたとは認められないから、本件発明1は公然実施発明と相違する。
したがって、本件発明1は、特許法第29条第1項第2号に該当せず、この理由によって請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

(2)理由2について
ア 甲1に記載された発明
上記(1)ア(イ)からみて、甲1には、次の甲1発明が記載されている。
「コンキオリン加水分解物を含むPromois Black Pearl (Seiwa Kasei)という名称の皮膚調整剤。」

イ 本件発明1と甲1発明との対比・判断
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、両発明は、
「コンキオリン加水分解物を含む剤。」
という点で一致し、下記の点で相違する。
相違点1:コンキオリン加水分解物が、本件発明1では「黒蝶貝の真珠または/および貝殻を由来とする」のに対し、甲1発明においてはその由来が明らかでない点。
相違点2:本件発明1は「コラーゲン産生促進剤」であるのに対し、甲1発明ではその旨特定されていない点。
(イ)上記相違点について検討する。
相違点2に関し、甲1には加水分解コンキオリンをコラーゲン産生促進剤として使用することが開示されていないから、本件発明1は甲1発明と相違する。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は特許法第29条第1項第3号に該当せず、この理由によって請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

(3)理由3について
ア 甲5に記載された事項
甲5には以下の内容が記載されている。
(ア)「【請求項3】
トウキンセンカ、・・・又は加水分解コンキオリンのうちのいずれか1つ以上を有効成分として含んで成る細胞外マトリックス産生促進剤。
【請求項4】
産生促進される細胞外マトリックスの構成成分がラミニン5、IV型コラーゲン及びVII型コラーゲンから成る群から選択される一種又は二種以上である、請求項3に記載の細胞外マトリックス産生促進剤。
【請求項5】
ラミニン5、IV型コラーゲン及びVII型コラーゲンの全てを産生促進させることを特徴とする、請求項3又は4に記載の細胞外マトリックス産生促進剤。」
(イ)「【0027】
加水分解コンキオリン:真珠母貝であるアコヤガイ(学名Pinctada fucata)の真珠層に含まれる硬タンパク質コンキオリンを加水分解した水溶液。・・・」
(ウ)「【0035】
本発明において使用する上記抽出物等は、・・・コンキオリンの場合には、アコヤガイの真珠層に含まれる硬蛋白質であるコンキオリンを加水分解することにより得られる。」
(エ)「【0041】
皮膚外用剤
更に、本発明は上記抽出物等を含んで成る皮膚外用剤を提供する。ここで、本発明の皮膚外用剤は、抗炎症作用、創傷治癒促進作用、更には表皮水泡症改善作用を目的とするものである。しかしながら、本発明の皮膚外用剤はこれらの目的に限定されず、上記抽出物等の基底膜安定化作用、換言すると細胞外マトリックス産生促進作用によりもたらされる皮膚の諸症状の改善を意図した使用が考えられる。」
(オ)「【0055】
(実験方法-2)
IV型コラーゲン、VII型コラーゲン産生促進効果に関する試験方法
(1)ヒト線維芽細胞の培養
10%FBS含有DMEM培地で培養したヒト線維芽細胞を24穴プレートに播種し、細胞が接着した後、0.25%FBS及び250μMアスコルビン酸グルコシド含有DMEM培地に置換し、薬剤を添加した。1日後、培地上清を回収、遠心分離し、得られた上清中のIV型、VII型コラーゲン測定及び、細胞についてDNA量を測定し、細胞数の指標とした。
【0056】
(2)DNA定量
DNA量の測定はHoechst社のH33342を用いた蛍光測定法で実施した。
【0057】
(3)サンドイッチELISA法によるIV型、VII型コラーゲンの測定
IV型、VII型コラーゲンは、サンドイッチELISA法によって測定した。本実施例において使用した抗体は以下の通りである。
・IV型コラーゲン特異的抗体;モノクロナール抗体JK-199およびポリクロナール抗体MO-S-CLIV
・VII型コラーゲン特異的抗体;モノクロナール抗体NP-185およびモノクロナール抗体NP-32
【0058】
薬剤を添加していない試料(コントロール)のDNAあたりのIV型、VII型コラーゲン量を100としたときの、薬剤添加試料のDNAあたりのIV型、VII型コラーゲン量を、IV型、VII型コラーゲン産生促進率とした。以下の表2に、当該コラーゲンの産生促進率を要約する。
【0059】
【表2】

【0060】
(実験方法-3)
人工皮膚の製造方法
コラーゲンゲルは、ヒト真皮由来の線維芽細胞(1×10^(5)cells/ml)懸濁コラーゲン溶液を氷上にて作製後、60mmのペトリディッシュ内にて37℃でコラーゲンをゲル化した。その後シャーレ壁面からゲルを剥離し、コラーゲンゲルを金属の上にのせ、さらにガラスリング(内径12mm)をゲルの上にのせた。このガラスリング内に液漏れさせないようにヒト包皮由来表皮ケラチノサイト懸濁液を含むKGM-DMEM(1:1)混合培地を添加した。一晩インキュベートして表皮細胞を接着させ、翌日リングをはずした。上記培地を表皮層の境界まで満たし、表皮層を空気に曝しながら、角層形成を示す重層化した表皮を持つ皮膚モデルを作製した。
【0061】
表皮細胞を播種後4日目より、(1)薬剤無添加、(2)トウキンセンカエキス0.3%、・・・(23)加水分解コンキオリン((8)-(23)は各0.3%)を含む培地に換え、その後2-3日おきに同種・同濃度の薬剤を含有する培地と交換してさらに2週間培養した。
【0062】
形成された人工皮膚は、ヘマトキシリン-エオジン染色、並びに免疫染色(抗IV型コラーゲン抗体及び抗VII型コラーゲン抗体)により染色した。IV型及びVII型コラーゲンの染色度を低い方から高い方へ順に1-5の5段階でスコア化した。
【0063】
【表3】

【0064】
上記のように、対照(1)において、IV型コラーゲンは弱く染色されたが、VII型コラーゲンはほとんど観察されなかった。これに対し、ラミニン5・IV型コラーゲン・VII型コラーゲン産生促進作用を有する(2)-(23)の各薬剤はいずれもIV型・VII型コラーゲンの染色性を共に高めることが人工皮膚において確認された。・・・」

イ 甲5に記載された発明
上記ア(ア)-(オ)の摘記事項からみて、甲5には、次の甲5発明が記載されている。
「アコヤガイの真珠層を由来とするコンキオリン加水分解物を含む皮膚用コラーゲン産生促進剤。」

ウ 本件発明1と甲5発明との対比・判断
(ア)本件発明1と甲5発明とを対比する。
本件発明1は「真珠または/および貝殻を由来とする」という選択肢で特定されているところ、甲5発明はその前者を満たすものであるから、後者の発明特定事項の有無に関わらず相違点とはならない。
してみると、両発明は、
「貝の真珠または/および貝殻を由来とするコンキオリン加水分解物を含むコラーゲン産生促進剤。」
という点で一致し、下記の点で相違する。
相違点1:本件発明1が黒蝶貝の真珠または/および貝殻を由来とするのに対し、甲5発明においてはアコヤガイの真珠層を由来とする点。
(イ)上記相違点について検討する。
相違点1に関し、甲3には以下の記載がある。
「1.構造
Promois(R)BLACK PEARL F
タヒチ産の黒蝶貝(Pinctada margaritifera)を使用し、その真珠層に含まれる硬タンパク質であるコンキオリンを加水分解して得たペプチド溶液です。
・・・
3.肌ストレスの軽減効果
・・・
Promois BLACK PEARL Fは,肌の弾性成分であるエラスチンを分解するエラスターゼの働きを抑制します。
・・・
Promois BLACK PEARL Fは,シミの原因であるメラニンを生成するチロシナーゼの働きを抑制します。」(第3-10頁)
また、甲4には以下の記載がある。
「【請求項1】
下記一般式(1)で示される(A)分岐ポリグリセロール変性シリコーンと(B)貝、魚、絹、植物のいずれかより得られたペプチドもしくはタンパク質又はそれらの誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上とを含有することを特徴とするヘアコンディショニング組成物。
・・・
【請求項2】
(B)の成分が黒蝶貝より得られたコンキオリンの加水分解物であることを特徴とする請求項1記載のヘアコンディショニング組成物。
・・・
【0016】
本発明に用いられる成分(B)は・・・市販品として、プロモイスブラッ
クパール[成和化成社製](加水分解コンキオリン液)・・・などがある。
【0017】
成分(B)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、これらの成分のうち、貝類より得られたペプチドもしくはタンパク質又はそれらの誘導体が、毛髪内部への湿潤性の付与、水分保持力に優れ、中でも、黒蝶貝由来のコンキオリンの加水分解物が特に好ましい。さらに、アコヤ貝由来のコンキオリンの加水分解物と黒蝶貝由来のコンキオリンの加水分解物を組み合わせて用いることが、毛髪内部への湿潤性の付与という点から最も好ましい。
・・・
【0027】
実施例1?10、比較例1?5
【表1】

【0028】
表1より明らかなように、実施例1?10のヘアトリートメントは、毛髪のキューティクル剥離防止効果、水分保持力、うるおい、指通り、しなやかさ、しっとり感等の仕上がりにおいて、いずれも優れた性能を示していた。」
甲3、4の上記摘記事項より、黒蝶貝由来のコンキオリン加水分解物は、本件特許の特許出願前に公知である。
次に、本件発明1が奏する効果について検討する。
職権で調査したところによれば、本件の審査段階の平成28年7月22日に特許権者により提出された意見書には、クロチョウガイ貝殻由来のコンキオリン加水分解物が、同操作で製造されたアコヤガイ貝殻由来のコンキオリン加水分解物よりも強いコラーゲン産生促進作用を示したことが実験データをもって示されている。
そして、そのような効果は、甲3-5の記載から当業者が予測できない顕著なものである。
したがって、本件発明1は、甲5発明、及び甲3、4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件発明1は特許法第29条第2項の規定を満たすものであり、この理由によって請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

(4)理由4について
ア 本件特許明細書に記載された事項
(ア)「【0013】
次に実施例(製造例)を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0014】
製造例1
細断したクロチョウガイ貝殻1kgに水120kgを加え、ゆっくり撹拌しながら徐々に塩酸を1kg加え、1日放置した。さらに塩酸を1kg加え、2日放置した。さらに塩酸を200g加え、1日放置した。
これに水酸化ナトリウムを撹拌しながらゆっくりと加え、pH7.0になるように調整した。
これを遠心分離し、沈殿を得た。この沈殿に水2kgを加えよく撹拌した後遠心分離し、沈殿を得た。これをもう2回繰り返した。
この沈殿に水10kgを加えよく撹拌した後、1日放置後遠心分離し、沈殿を得た。(固形分として12.8g)
冷却器の付いたフラスコに入れ、水を100gと硫酸30gを加え、110℃に設定したマントルヒーターで加温しながら18時間加温した。
冷却後、撹拌しながら、水酸化カルシウムを25g徐々に加えて1時間撹拌した。
さらに徐々に水酸化カルシウムを加えてpHが7.0にした。
この液を遠心分離(3000rpm×15分間)し、上澄みを得た。これにエタノールをえ2倍量l加え撹拌した。
4℃で2日間静置した後、濾過し、濾液を得た。
これをエバポレートした後、凍結乾燥した。
【0015】
確認試験
線維芽細胞(クラボウ社製正常ヒト皮膚繊維芽細胞)を6穴プレートに7.5×10^(3)個
づつ播種し、48時間培養した。製造例1を加えた培地に変更後、4日間培養した。
Semi-Quantitative Collagen Assay Kit(Chondrex社製)にてコラーゲン量を測定し、コントロール(製造例1を添加していない培地で培養)と比較した。
結果を図1に示す。
【0016】
また、製造例1を配合した、外用剤を作成し、実際に使用してみた結果、シワ形成抑制、肌荒れ防止の改善がみられた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】製造例1の終濃度0.001%、0.01%、0.1%で線維芽細胞を培養後のコラーゲンの生成量を、製造例1を含まない培地で培養したコントロールと比較した図である。 縦軸は生成したコラーゲンの量である。」
(イ)「【図1】



イ 甲6に記載された事項
(ア)「【0011】
本発明において用いられる加水分解タンパクとしては、動植物由来のタンパクを酸性下、塩基性下又は酵素の使用により加水分解して得られるものであり、例えば、ケラチン、・・・コンキオリン、・・・酵母タンパク等を加水分解して得られる加水分解タンパクが挙げられる。」
(イ)「【0013】
・・・
用いられる加水分解タンパク又はその誘導体の分子量としては、平均分子量が1000以上のもが用いられ、好ましくは、平均分子量が1400以上、より好ましくは、4000以上のものである。更に好ましくは、平均分子量が4000?10000のものを用いる。この理由は、平均分子量が1000未満の場合には、毛髪表面上に十分に加水分解タンパク又はその誘導体が吸着しないために、好ましくないからである。」

ウ 甲7に記載された事項
「【0007】
・・・これらコーラゲン加水分解物及び/又はその誘導体の内、低分子量のコラーゲン加水分解物及び/又はその誘導体は皮膚乃至は毛髪に収着し、これらの損傷を回復させ、内部の水分含量を上昇させる効果を有する。又、高分子量のそれは皮膚乃至は毛髪表面に皮膜を形成し、これらを損傷から防ぎ、皮膚乃至は毛髪内の水分の損失を防ぐ作用を有する。」

エ 判断
上記ア(ア)及び(イ)のとおり、本件特許明細書には、コラーゲン産生促進作用を有するコンキオリン加水分解物を得ることができる製造例が具体的に開示されている。
一方、甲6及び甲7はともに、加水分解タンパク質の分子量の違いが毛髪への吸着又は皮膜形成に影響することを開示しているものの(上記イ(イ)及びウ)、これらの記載をもって、本件発明1のコンキオリン加水分解物の分子量とコラーゲン産生促進作用との相関を説明できるものではない。また、甲6には、加水分解するタンパクの一例としてコンキオリンが挙げられているが(上記イ(ア))、加水分解コンキオリンの分子量による影響について具体的に検討しておらず、コラーゲン産生促進作用との相関を説明できるものではない。
そして、異議申立書の全ての内容を参酌しても、上記製造例以外の条件で加水分解したコンキオリン加水分解物ではコラーゲン産生促進作用が認められないといった証拠が開示されているとはいえない。
したがって、本件特許明細書に開示された製造例以外の加水分解条件によって得られるコンキオリン加水分解物を包含する本件発明1の範囲まで、明細書に記載された内容を拡張ないし一般化することができないとはいえない。
よって、本件発明1は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものであり、この理由によって請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

4 むすび
以上のとおりであるから、異議申立ての理由によっては、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件発明1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-07-24 
出願番号 特願2012-148366(P2012-148366)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (A61K)
P 1 651・ 112- Y (A61K)
P 1 651・ 121- Y (A61K)
P 1 651・ 537- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩下 直人  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 小川 慶子
長谷川 茜
登録日 2016-10-28 
登録番号 特許第6029875号(P6029875)
権利者 御木本製薬株式会社
発明の名称 コラーゲン産生促進剤  
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