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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特17条の2、3項新規事項追加の補正  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1331237
異議申立番号 異議2017-700526  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-29 
確定日 2017-08-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6033020号発明「容器入り冷凍食品組成物」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6033020号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6033020号(以下「本件特許」という。)に係る経緯は,概ね次のとおりである。
平成24年 9月21日 出願(特願2012-208559号)
平成27年10月19日 拒絶理由通知書
平成27年12月24日 意見書(甲第6号証),手続補正書(甲第7号
証)
平成28年 4月25日 拒絶理由通知書
平成28年 9月 9日 意見書(甲第8号証),手続補正書(甲第9号
証)
平成28年11月 4日 特許権の設定登録(特許第6033020号)
平成28年11月30日 公報発行(甲第10号証)
平成29年 5月29日 特許異議の申立て(特許異議申立人奥谷宏邦)

第2 本件特許に係る発明
本件特許の請求項1及び2に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。以下,本件特許に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明1」などといい,総称して「本件発明」という。
【請求項1】
α化していない澱粉,糖質,油脂,及び水を含有する容器入り冷凍食品組成物であって,水分量が40重量%以下であり,水分に対する糖質の割合が30重量%以上であることを特徴とする,容器入り冷凍食品組成物。
【請求項2】
水分量が15?35重量%であることを特徴とする,請求項1に記載の容器入り冷凍食品組成物。

第3 異議申立ての理由の概要
異議申立人は,下記の甲第1号証?甲第10号証(以下,証拠の番号に従って「甲1」などという。)を提出し,本件特許は下記の理由により取り消すべき旨主張している。

1 本件発明1及び2は,本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の甲1及び2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
2 平成28年9月9日付けの手続補正書による補正は,新規事項を追加するものであるから,本件特許は特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
3 本件発明1及び2は,発明の詳細な説明に記載されたものではないから,本件特許は特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(証拠方法)
甲1:特開2003-32917号公報
甲2:特開2004-65179号公報
甲3:日本食品標準成分表2015年版(7訂)「4豆類」
甲4:日本食品標準成分表2015年版(7訂)「3砂糖及び甘味類」
甲5:日本食品標準成分表2015年版(7訂)「17調味料及び香辛料類」
甲6:平成27年12月24日付けの意見書
甲7:平成27年12月24日付けの手続補正書
甲8:平成28年9月9日付けの意見書
甲9:平成28年9月9日付けの手続補正書
甲10:特許第6033020号公報(本件特許公報)

第4 異議申立ての理由について
1 理由1(29条2項)について
(1) 甲1について
ア 甲1には,以下の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。以下同様。)。
・「【請求項1】 常温で液状を呈する食用油脂を0.1?25重量%含有させて不凍結化したことを特徴とする餡。
【請求項2】 乳化剤及び/又は安定剤を,0.05?1重量%含有することを特徴とする請求項1記載の餡。
【請求項3】 請求項1又は2記載の不凍結化した餡で冷菓を被覆したことを特徴とする外層が餡からなる複合冷菓。
【請求項4】 請求項1又は2記載の不凍結化した餡を冷菓で被覆したことを特徴とする内層が餡からなる複合冷菓。
【請求項5】 請求項1又は2記載の不凍結化した餡を,容器詰め冷菓の上層,中間層及び下層のうち1層または2以上の層に配置したことを特徴とする容器詰めされた複合冷菓。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,常温で液状を呈する食用油脂を含有させて不凍結化した餡およびそれを用いた複合冷菓に関する。本発明の不凍結化した餡は,冷凍下での保存が可能で冷菓と好適に複合でき,複合された冷菓は,冷凍庫から取り出した直後であっても餡が柔らかいものである。」
・「【0002】
【従来の技術】餡は,従来から和菓子や冷菓あるいは料理等の原材料として種々利用されている。例えば,和菓子においては,草餅,最中,羊羹等の原料として用いられ,冷菓においては,冷菓の表面を被覆して外層を形成させたり,冷菓で被覆して内層を形成させる等に利用されている。
・・・
【0004】一方,上記したように冷菓に利用した場合には,冷凍することが必須であるが,従来の冷菓に利用されていた餡は,和菓子等に利用されていた餡とほとんど同じ成分組成のものであるため,冷菓と複合させて冷凍保存すると,餡の水分が凍結し,冷凍庫から取り出した直後では固化していて,摂取するには常温下に一定時間放置して軟化させなければならず,外層が冷菓で形成されているものでは,冷菓が先に融解してしまうといった問題がある。このように,餡を冷凍下に保存したり,冷菓に利用すると,凍結固化して解凍や軟化させることが必須で,原料として利用する場合には生産性の低下を招き,また冷菓に利用して摂取する場合には面倒であるといった欠点を有している。
【0005】餡を冷凍下に保存した場合には上記のような欠点があるため,凍結しない餡や冷菓に用いられる餡について種々検討がなされている。・・・
・・・
【0011】本発明は,上記の問題点に鑑みて創出されたもので,餡を不凍結化し,その餡を利用して冷菓を調製することを目的とする。本発明者らは,常温で液状を呈する特定量の油脂を餡に配合することにより,餡を冷凍下に保存したり,冷菓と複合させた際に生ずる問題点を解決できることを見出し,本発明を完成させた。すなわち,本発明は,餡と冷菓を複合させた際に成形機の成形型への付着を防止し,かつ保形性が良好で,冷凍下に保存しても凍結しない餡と,それを利用した複合冷菓を提供することを課題とするものである。」
・「【0012】
【課題を解決するための手段】すなわち,本発明は,常温で液状を呈する食用油脂を0.1?25重量%含有させて不凍結化した餡,さらに,乳化剤及び/又は安定剤を0.05?1重量%含有する前記不凍結化した餡,前記不凍結化した餡で冷菓を被覆するか,または不凍結化した餡を冷菓で被覆した外層または内層が前記不凍結化した餡からなる複合冷菓,または前記不凍結化した餡を容器詰め冷菓の上層,中間層及び下層のうち1層または2以上の層に配置した複合冷菓である。」
・「【0013】
・・・本発明において使用可能な糖類や人工甘味料の例としては,蔗糖,ぶどう糖,果糖,麦芽糖,水飴,あるいはエリスリトール,ソルビトール,マルチトール,ステビア,キシリトール,ラクチトール,パラチノース,アスパルテーム等が挙げられ,これらの糖類や人工甘味料の中から選択された一種以上が配合される。糖類や人工甘味料の添加量は,添加する糖類や人工甘味料の種類,あるいは嗜好性等によって異なるが,蔗糖であれば,通常,和菓子等に用いられる量とほぼ同量でよく,餡に対して約25?100重量%程度が好ましい。・・・
【0014】本発明では上記のようにして調製された餡に対して,常温(25℃前後)で液状を呈する油脂を0.1?25重量%,好ましくは3?15重量%の範囲で添加し,混合機等で餡を練りながら均一に混合して不凍結餡を調製する。常温で液状を呈する油脂としては,オリーブ油,紅花油,コーン油,ヒマワリ油,大豆油,ナタネ油,パーム油,綿実油,ごま油,こめ油,ヤシ油,魚油等の動植物油脂が挙げられ,またこれらのエステル交換油であっても分別油や混合油であっても好適に用いることができる。
・・・
【0016】このようにして調製された不凍結餡は,そのまま-18℃以下の冷凍下に保存されても凍結固化することがなく,冷凍庫から取り出した直後であっても柔らかさを維持し,和菓子等の原料として,あるいは冷菓に利用できるものである。」
・「【0021】また,本発明の餡を,容器詰めされた冷菓の上面にトッピングしたり,中間層あるいは下層に配置させることにより,本発明の容器入り複合冷菓を調製することができるが,餡は,冷菓の上層,中間層及び下層のうち1層または2以上の複数の層に配置することができる。・・・
【0022】本発明の不凍結化された餡には,常温で液状を呈する食用油脂が特定量配合されているため,餡の粘性が低く,しかも食用油脂が潤滑油として作用することから付着性も低いために成形機の成形型への付着がなく,目的とするデコレーション形状を容易に形成させることができる。また形成されたデコレーション形状は,不凍結化された餡の保形性が良いため,製造工程中や流通段階で形崩れすることがない。このようにして調製された本発明の複合冷菓は,従来の餡と冷菓を複合した複合冷菓と比較して,餡が凍結固化していないために冷凍庫から取り出した直後であっても柔らかく,風味も食感も,また外観的にも優れたものである。」
・「【0024】(実施例1)
不凍結餡の調製;小豆を用いて常法に従って調製した生小豆餡30Kg,蔗糖60Kg及び水30Kgを混合して沸騰させ,これに生小豆餡70Kgを加えて攪拌しながら火詰めを行った。この火詰めを行った生小豆餡に水飴20Kgを加えて,さらに若干火詰めを行った後,麦芽糖16Kgを添加して良く攪拌混合しながら,所定の硬さになるまで火詰めを行った。次に,この生小豆餡にサラダ油20Kgを加えて,所定の硬さになるまで火詰めをした後,常温になるまで冷却して不凍結餡を調製した。尚,この餡の油脂の含有量は約10重量%であった。
【0025】冷菓の調製;・・・
【0026】不凍結餡で被覆した冷菓の調製;上記のように調製した不凍結餡と冷菓を包餡機(コバード社製 型式AR-8)に供給し,不凍結餡で被覆されたアイスクリームを得た。このアイスクリームを-18℃の急凍室に入れ冷凍保存した。
【0027】(実施例2)
不凍結餡の調製;実施例1と同じ量と同じ方法によって調製した生小豆餡に,サラダ油14Kgを加え,所定の硬さになるまで火詰めをした後,常温になるまで冷却して不凍結餡を調製した。尚,この餡の油脂の含有量は約7重量%であった。
【0028】不凍結餡で被覆した冷菓の調製;上記で調製した不凍結餡と実施例1と全く同じ方法で調製した冷菓を包餡機(コバード社製 型式AR-8)に供給し,不凍結餡で被覆されたアイスクリームを得た。このアイスクリームを-18℃の急凍室に入れ冷凍保存した。
【0029】(実施例3)
不凍結餡の調製;実施例1と同じ量と同じ方法によって調製した生小豆餡に,サラダ油10Kgを加え,所定の硬さになるまで火詰めをした後,常温になるまで冷却して不凍結餡を調製した。尚,この餡の油脂の含有量は約5重量%であった。
【0030】不凍結餡で被覆した冷菓の調製;上記で調製した不凍結餡と実施例1と全く同じ方法で調製した冷菓を包餡機(コバード社製 型式AR-8)に供給し,不凍結餡で被覆されたアイスクリームを得た。このアイスクリームを-18℃の急凍室に入れ冷凍保存した。
【0031】(実施例4)
不凍結餡の調製;実施例1と同じ量と同じ方法によって調製した生小豆餡に,あらかじめ乳化剤(蔗糖脂肪酸エステル)0.3Kgと安定剤(ローカストビーンガム)0.3Kgを添加したサラダ油45Kgを加え,所定の硬さになるまで火詰めをした後,常温になるまで冷却して不凍結餡を調製した。尚,この餡の油脂の含有量は約18重量%であった。
【0032】不凍結餡をトッピングした冷菓の調製;実施例1と全く同じ方法で調製した冷菓を,150ml容の円形カップ型容器に100ml充填し,その上面に上記で調製した不凍結餡をトッピングしてカップ入りアイスクリームを得た。このアイスクリームを-18℃の急凍室に入れ冷凍保存した。」
・「【0037】表1から明らかなように,実施例1?4で得られた不凍結餡と比較例の餡の測定刃の切断圧力を比較すると,各実施例の餡の切断圧力の方が,比較例に比べてはるかに小さかった。特に,冷凍保存温度が低くなるにつれて,その効果が顕著になり,また食用油脂(サラダ油)の配合量に比例して効果も大きくなっていることが明らかとなった。これらの結果から,本発明の各実施例で得られた不凍結餡は,冷凍庫から出した直後でも柔らかく,使用や摂取にあたって解凍したり,また軟化させる必要がなく,冷菓のような凍結温度下で保存しなければならない製品と複合させることによって,その効果を十分に発揮させることができるものであることが判明した。」
・「【0038】
【発明の効果】本発明の不凍結餡は,餡に常温で液状を呈する食用油脂を配合しているため,冷凍下に保存しても凍結固化することがなく,冷凍庫から出した直後でも柔らかさを保持し,和菓子や料理の原材料として解凍や軟化させることを要せずに使用できるものである。また,本発明では,不凍結餡の特徴を生かして冷菓に利用するものであるが,冷菓の保存温度である-18℃以下の冷凍下に保存しても,餡特有の柔らかさと食感を失うことがない冷菓とすることができる。この冷菓は,冷凍庫から取り出した直後であっても餡の軟化を要せずに摂取が可能なものである。さらに,本発明の不凍結餡は,食用油脂を含有しているので,成形機の成形型への付着がなく,かつ保形性も良好であるため,他の食品と複合させた際には,装飾的形状(デコレーション)を形成させることができる上,製造工程や流通過程で型崩れすることがないといった効果を奏する。」
イ 上記の「実施例1」に関する記載からすると,次のことがわかる。
(ア) 配合原料のトータル重量は246kgとなるが,「この生小豆餡にサラダ油20Kgを加えて,・・・火詰めをした後,・・・不凍結餡を調製した。尚,この餡の油脂の含有量は約10重量%であった。」(【0024】)ことからすると,火詰めにより水分が蒸発して全量が約200kgになったものと考えられる。
(イ) 「つぶしあん」,「みずあめ」の水分からすると(甲3,4),水分以外の固形分は合計173.7kg,水分は26.3kgとなるから,水分は13.2重量%である。
(ウ) 蔗糖,麦芽糖,水飴の固形分の合計が93kgであるから,水分に対する糖質の割合は354重量%となる。
ウ 同様に,上記の「実施例2」?「実施例4」の不凍結餡について,水分含量と水分に対する糖質の割合を算出すると,それぞれ,16.2重量%と288重量%(実施例2),18.2重量%と256重量%(実施例3),20.5重量%と181重量%(実施例4),となる。
エ 以上のことからすると,甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(甲1発明)
「糖質,油脂,及び水を含有する不凍結餡を含む容器入り冷菓であって,水分量が13.2?20.5重量%であり,水分に対する糖質の割合が181?354重量%である,不凍結餡を含む容器入り冷菓。」

(2) 甲2について
ア 甲2には,以下の事項が記載されている。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造工程において加熱,冷却後にでん粉を添加することを特徴とするα化されていないでん粉,調味料,水等を含み,水を加えて加熱調理するか熱水を加えることによりとろみを付与することができるペースト状調味ソースの製造方法。
・・・
【請求項4】
請求項1又は2又は3記載の製造方法を使ったペースト状調味ソース。」
・「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は,あんかけ,たれ,スープ等とろみの付与された食品を簡単に調理するための素材であるペースト状調味ソースの製造方法に関するものである。」
・「【0002】
【従来の技術】
従来一般的であった調味ソースは製造工程中の加熱により一部もしくは全部のでん粉がα化されているため,水を加えて加熱調理するか熱水を加えて調理をしても十分なとろみ,良好な風味を付与できていなかった。さらに製造工程中の加熱によりでん粉がα化された場合,調味ソースの粘度が高くなりすぎて攪拌,容器への充填等製造工程において支障がでるため,十分な量のでん粉を配合できなかった。また製造工程において加熱殺菌を目的として,加熱処理温度よりもα化温度が高いでん粉を使用した調味ソースでは,でん粉のα化は防ぐことができるが,調理時に所定のとろみを付与するには高い温度で長時間加熱する必要がある為,簡単に短時間で調理することができない。」
・「【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は,このような従来の問題点の解決を目的として創出されたものであり,水を加えて加熱調理するか熱水を加えることにより簡単にとろみを付与することができるペースト状調味ソースの製造方法を提供することを目的とする。」
・「【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明において調味ソースの製造工程において加熱混合して炊き上げた後冷却し,でん粉を加えることでα化されていないでん粉を十分量含ませることができ,上記目的を達成した。」
・「【0006】
本発明においてペースト状調味ソースとは水を加えて攪拌しながら加熱するか又は熱水を加えて攪拌することにより粘度がでてあんかけ,たれ,スープやこれらの類似品等とろみの付与された食品を調理するための素材である。
【0007】
本発明に使用されるでん粉はα化されていないものであればいかなるものでも良いが,製造において加熱混合(殺菌処理)して炊き上げた後冷却し,でん粉を加える為,乾燥処理した減菌でん粉や加工でん粉等の菌数の低いでん粉を用いることが望ましい。・・・
【0008】
製造工程においてでん粉を添加する温度はでん粉のα化温度より低ければいかなる温度でもよいが,一般的に用いられるでん粉のα化温度は未加工のでん粉で60℃?70℃,加工でん粉で50℃?80℃である。従って,本発明においては80℃以下,より好ましくは50℃以下が望ましい。ここで加工でん粉としては,架橋でん粉,エーテル化でん粉,エステル化でん粉などがあげられる。」
・「【0011】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば製造工程の攪拌,容器への充填が容易にでき,調理時に水を加えて加熱するか熱水を加えることにより簡単に短時間でとろみを付与することができるペースト状調味ソースが得られる。」
・「【0013】
(実施例1)
淡口醤油35重量部(以下部と略称する),グラニュー糖15部,畜肉エキス13部,食塩1.5部,調味料2部,キサンタンガム0.3部を十分攪拌後90℃で10分間加熱混合し50℃まで冷却後,α化していないリン酸架橋タピオカでん粉25部を添加し攪拌混合し,袋状容器に充填しあんかけソースを得た。このあんかけソースは粘度300ポイズ,Aw0.84であった。水150mlに得たあんかけソース30gを加えて攪拌しながら3分間加熱して得たあんかけはなめらかなで安定したとろみと良好な風味・香りを有するものであった。
【0014】
(実施例2)
コーンペースト35部,グラニュー糖13部,食塩6部,乳製品9部,乳糖4部,粉末調味料5部,オニオンエキス3部,ビーフエキス2.0部,ジェランガム0.1部を混合後95℃で10分間加熱攪拌し冷却後,減菌処理したコーンスターチ20部を添加し攪拌混合し,袋状容器に充填しコーンスープソースを得た。このソースは粘度200ポイズ,Aw0.80であった。コーンスープソース20gに熱湯150mlを注ぎよくかき混ぜて得たコーンスープはなめらかで安定したとろみと良好な風味・香りを有するものであった。」
イ 以上のような甲2の記載からすると,甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
(甲2発明)
「α化していないでん粉,糖質,油脂,及び水を含有するペースト状の調味ソース。」

(3) 本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明とを,その有する機能に照らして対比すると,甲1発明の「糖質」,「油脂」,「水」は,それぞれ,本件発明1の「糖質」,「油脂」,「水」に相当する。
また,甲1発明は「水分量が13.2?20.5重量%であり,水分に対する糖質の割合が181?354重量%である」が,いずれも,本件発明1の水分量,水分に対する糖質の割合の範囲に含まれる。
そして,甲1発明は「不凍結餡を含む容器入り冷菓」であるから,本件発明1と同様に,「容器入り冷凍食品組成物」ということができる。
そうすると,本件発明1と甲1発明の1とは,以下の点で一致し,相違する。
(一致点)
「糖質,油脂,及び水を含有する容器入り冷凍食品組成物であって,水分量が40重量%以下であり,水分に対する糖質の割合が30重量%以上である,容器入り冷凍食品組成物。」
(相違点)
本件発明1は,「α化していない澱粉」を含有するのに対し,甲1発明はα化していない澱粉を含有しない点。
イ 上記相違点について検討する。
甲2には,「ペースト状調味ソース」に係る発明である甲2発明が記載されているが(前記(2)イ),甲2発明はα化していないでん粉を含有することにより,「製造工程の攪拌,容器への充填が容易にでき,調理時に水を加えて加熱するか熱水を加えることにより簡単に短時間でとろみを付与することができるペースト状調味ソースが得られる」(甲2【0011】),といった効果を奏するものである。
これに対し,甲1発明は「不凍結餡を含む容器入り冷菓」に係る発明であって,「冷凍下に保存しても凍結固化することがなく,冷凍庫から出した直後でも柔らかさを保持し,和菓子や料理の原材料として解凍や軟化させることを要せずに使用できる」(甲1【0037】)ものであるところ,甲1発明に係る不凍結餡について,とろみを付与するといった課題は特段認められない。
また,「餡は,従来から和菓子や冷菓あるいは料理等の原材料として種々利用され」(甲1【0002】),「本発明の不凍結餡は,・・・和菓子や料理の原材料として・・・使用できるものである。」(同【0038】)が,甲1において具体的に開示されているのは当該不凍結餡を利用した冷菓のみであって,「ペースト状調味ソース」との関連を示唆する記載はない。他方,甲2には冷凍に関する記載は特段なく,「不凍結餡」や「不凍結餡を含む容器入り冷菓」との関連を示唆する記載もない。
このように,甲1発明と甲2発明とは,いずれも食品組成物に係る発明であるとはいえ,具体的な物としては技術的に異なる上,課題に共通性も認められないから,甲1発明において,甲2発明を適用し,α化していない澱粉を含有させることの動機付けは認められない。
そして,本件発明1は,請求項1に記載された事項を備えることにより,「冷凍状態においても,完全に硬化することなく,且つ,加えられた湯や水に速やかに且つ均一に分散することができ,また,加熱調理され最終食品に粘性を付与する用途で用いられる,冷凍食品組成物を提供することができる。かかる特徴を有する冷凍食品組成物は解凍することなく,収容されていた容器に付着することなく取り出すことができ,且つ,必要量のみを取り分け・取り出してそのまま湯や水に加えて使用することができ,使い勝手が非常に良い。」(甲10【0011】,【0012】)といった,格別な効果を奏するものである。
そうすると,甲1発明において甲2発明を適用し,上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到できた事項とは認められない。
ウ この点に関し,異議申立人は,本件発明1と甲1発明の作用効果は一致し,甲2発明の「ペースト状調味ソース」と本件発明1の「食品組成物」とは,あんかけが含まれている点で一致し,甲1発明の「不凍結餡」における「餡」も本件発明1の食品組成物と一致するから,甲1発明において,とろみを付与する場合に,甲2発明におけるα化していないでん粉を用いることは,当業者にとって容易に想到し得たことである,などと主張している(異議申立書12?13頁)。
しかしながら,甲1発明においてとろみを付与するとの課題はなく,甲1発明と甲2発明は具体的な物として異なる上,課題に共通性も認められないから,甲1発明において,甲2発明におけるα化していないでん粉を用いることは,当業者にとって容易に想到し得たものとは認められない。
エ よって,本件発明1は,甲1発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

(4) 本件発明2について
既に述べたとおり,本件発明1は,甲1発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないから,本件発明1を特定するための事項をすべて含む本件発明2は,その余の事項を検討するまでもなく,同様に,甲1発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

(5) まとめ
以上のとおりであるから,本件発明は,甲1発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

2 理由2(17条の2第3項)について
本件発明は,「油脂・・・を含有する」ものであるところ(前記第2),この点は,平成28年9月9日付けの手続補正書(甲9)による手続補正(以下「本件補正」という。)により,特定されたものである。
この点に関し,本件特許明細書(甲10)の発明の詳細な説明には,
・「本発明の食品組成物は,α化していない澱粉を含む。・・・ただし,不溶性固形物や油脂等の分離を抑制する目的で,α化した澱粉を一部含んでいてもよい。」(【0018】)
・「本発明の食品組成物中の澱粉の量の測定は,・・・により測定することができる。なお,ここで,本発明の食品組成物が油脂を含有するものである場合には,あらかじめ脱脂処理を行うことが好ましい。」(【0021】)
・「本発明の食品組成物には,必要に応じて,油脂を含めることができる。本発明の食品組成物に用いられる油脂としては,牛脂,豚脂,魚油,バター,ギー等の動物油脂,大豆油,コーン油,パーム油,菜種油,オリーブオイル等の植物油脂,ジアシルグリセロール,マーガリン等の加工油脂が挙げられる。本発明の食品組成物は,油脂の分離安定性のために,乳化剤を更に含有しても良い。」(【0028】)
などの記載があり,食品組成物が油脂を含有することが想定され,具体的な油脂の開示もなされている。
また,開示された実施例1?10は油脂を含有しているものと認められ,いずれも,冷凍状態において完全に硬化することなく,適度な柔軟性を保持していたために,容器からの取り出し,取り分け,水等への分散性が全て良好であり,使い勝手が良いものであった,との評価がなされている(【0039】?【0102】)。
そして,平成27年12月24日付けの手続補正書(甲7)による手続補正及び本件補正により,発明の詳細な説明は補正されていないから,上記のような記載は願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載されていたものであると認められる。
以上の点に照らすと,本件特許の当初明細書等には,必須である旨の明示はないものの,当該「容器入り冷凍食品組成物」に「油脂」を含有させる点について明記され,含有させる「油脂」の具体例が示されるとともに,「油脂」を含有する実施例が具体的に開示され,当該実施例が所望の作用効果を奏することが記載されていることがわかる。
このように,当該「容器入り冷凍食品組成物」に「油脂」を含有させる点は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,本件補正は,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものである。
この点に関し,異議申立人は,当初明細書等には「油脂」が存在していなくとも所望の作用効果が得られるとの記載であったものが,本件補正により「油脂」が存在しないと所望の作用効果が得られないとの記載に変更されており,これは新規事項の追加に該当する旨主張しているが(異議申立書15?17頁),当初明細書等には「油脂」を含有させる点が記載されており,「油脂」を含有する実施例が開示され,当該実施例が所望の作用効果を奏することが記載されているのであるから,新規事項の追加に該当するものとは認められない。
よって,本件補正は,新規事項を追加するものであるとは認められない。

3 理由3(36条6項1号)について
本件発明は,「油脂・・・を含有する」ものであるところ(前記第2),本件特許明細書には,当該「容器入り冷凍食品組成物」に「油脂」を含有させる点について明記され,含有させる「油脂」の具体例が示されるとともに,「油脂」を含有する実施例が具体的に開示され,当該実施例が所望の作用効果を奏することが記載されている(前記2)。
異議申立人は,本件特許明細書には,「油脂」が必須の構成要件であるとの記載はないから,「油脂」を必須構成要件とする本件発明は,発明の詳細な説明に記載されたものではない旨主張しているが,本件特許明細書には,必須である旨の明示はないものの,その記載に照らせば,当該「容器入り冷凍食品組成物」に「油脂」を含有させる点について明記されているから,本件発明が発明の詳細な説明に記載されたものであることは明らかである。
よって,本件発明は発明の詳細な説明に記載されたものでないとは認められない。

4 むすび
以上によれば,前記異議申立ての理由1?3によっては,本件特許(請求項1及び2に係る特許)を取り消すことはできない。
また,他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-07-28 
出願番号 特願2012-208559(P2012-208559)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A23L)
P 1 651・ 561- Y (A23L)
P 1 651・ 121- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 柴原 直司  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 窪田 治彦
井上 哲男
登録日 2016-11-04 
登録番号 特許第6033020号(P6033020)
権利者 ハウス食品グループ本社株式会社
発明の名称 容器入り冷凍食品組成物  
代理人 藤田 節  
代理人 平木 祐輔  
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