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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) E03F
管理番号 1331270
判定請求番号 判定2017-600014  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 判定 
判定請求日 2017-03-14 
確定日 2017-08-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第4104197号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号説明書及びイ号図面に示す「災害用トイレシステム」は、特許第4104197号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、イ号説明書及びイ号図面(図1?図3)に示す「災害用トイレシステム」(以下「イ号物件」という。)は、特許第4104197号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものと認める。
なお、判定請求書において、「請求の趣旨」には判定の対象となる請求項の記載はないものの、「請求の理由」において、「(3)本件特許発明の説明」として「本件特許発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された通りであり、以下のとおりのものである。」と記載され、イ号物件との対比を行っていることから、判定を求める請求項は請求項1であることは明らかである。


第2 手続の経緯
平成10年 1月29日 特許出願(特願平10-17108号)
平成20年 4月 4日 特許登録
平成29年 3月14日 本件判定請求書の提出
同 年 4月26日 判定請求答弁書の提出(被請求人)
同 年 6月 9日 弁駁書の提出(請求人)


第3 本件特許発明
本件特許発明は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、当該特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(当審において、構成要件ごとに分説し、AないしFを付した。以下、分説した構成要件を「構成要件A」などという。)。

「A 横方向に沿って地中に埋設された排水管と、
B 排水管の上部に、軸方向に適当な間隔をあけてそれぞれの下端部が接続されるように、それぞれが縦方向に沿って配置されており、地表に据え付けられる便器と連結され得るように、上端面がそれぞれ地表に開口している複数の縦管と、
C 前記排水管の一方の端部が接続されたマンホールと、
D このマンホールと既設の下水管とを連結する流出管と、
E 前記排水管の内部に流体が貯留されるように排水管の端部を開閉し得るように配置されており、排水管の端部が開放されることによって排水管内の流体をマンホール内に流出させるようになった貯水ゲートと、
F を具備することを特徴とする仮設トイレ用配管構造。」


第4 イ号物件
1 請求人の主張
(1) イ号物件について
請求人の主張するイ号物件の構成は、次のとおりである。
「a:横方向に沿って地中に埋設された本管と、
b:本管の上部に、軸方向に適当な間隔をあけてそれぞれの下端部が接続されるように、それぞれが縦方向に沿って配置されており、地表に据え付けられる便器と連結され得るように、上端面がそれぞれ地表に開口している複数の支管と、
c:前記本管の一方の端部が接続された汚水桝と、
d:この汚水桝と既設の下水本管とを連結する既設接続管と、
e:前記本管の内部に流体が貯留されるように本管の端部を開閉し得るように配置されており、本管の端部が開放されることによって本管内の流体を汚水桝内に流出させるようになった止水ゲートと、
f:を具備することを特徴とする災害用トイレシステム。」(請求書4頁24行から5頁7行)

(2) イ号物件の実施について
請求人は、判定請求書において、「判定被請求人であるダイカポリマー株式会社は、イ号説明書およびイ号図面(図1?図3)に示すイ号製品を実施している。」と主張している。
また、請求人は「設計事務所がイ号図面の図2の「流入管」を「汚水桝」で接続したイ号図面の図1を作成することを被請求人は当然に想定していたと思われる。」(弁駁書2頁20?22行)と主張している。

(3) マンホールについて
請求人は、「「汚水桝」と「マンホール」は、いずれも維持管理のうえで必要な個所、管きょの起点及び方向又はこう配が著しく変化する個所、などに設けられるものであり、「汚水桝」は立ち上がり部の内径が150mmから350mmの大きさであり(日本下水道協会規格「JSWAS K-7」)、「マンホール」は立ち上がり部の内径が750mmから2200mmの大きさであるが、(同規格「JSWAS A-11」)、「小型マンホール」として内径が300mm程度の大きさのものもある(同規格「JSWAS K-9」)。
一方、立ち上がり部の内径が900mmといった一般にはマンホールと呼ばれる大きさのものもイ号図面の図1には「汚水桝」と記載されている。
即ち、「汚水桝」と「マンホール」は当該技術分野では用語として明確に区別されて使用されておらず、表現上の差に過ぎない。
万が一そうでないとしても少なくとも均等の範囲内のものである。
したがって、イ号図面の図1に記載された「汚水桝」は本件特許発明の「マンホール」に相当するのは明らかである。」(弁駁書3頁9から22行)と主張している。

(4) 属否について
請求人は、イ号物件の構成aないしfは本件特許発明の構成要件AないしFを充足しているから、イ号説明書及びイ号図面(図1?図3)に示す「災害用トイレシステム」は本件特許発明の技術的範囲に属していると主張している。

2 被請求人の主張
被請求人は、平成29年4月26日付け答弁書で、「答弁の趣旨」として「イ号書面およびイ号図面のうち図2および図3に示す「災害用トイレシステム」は、特許第4104197号技術的範囲に属さない、との判定を求める。」(答弁書2頁10から13行)と主張するとともに、「答弁の理由」として、「被請求人はイ号図面の図1に示された「災害用トイレシステム」を実施していない」(答弁書2頁下から8?7行)、「請求人が主張する事実関係は真実とは合致しておらず、本件判定請求の趣旨が失われていると思料する。」(答弁書3頁16?17行)、「請求人は請求の趣旨において「イ号説明書およびイ号図面(図1?図3)に示す「災害用トイレシステム」は、特許第4104197号技術的範囲に属する、との判定を求める」としており、そこには被請求人の災害用トイレシステムに関する「図2」および「図3」が含まれている。従って、被請求人は、イ号図面の図2および図3に示す「災害用トイレシステム」が特許第4104197号に係る発明・・・の技術的範囲に属さないことを以下に詳述する。」(答弁書3頁18?最下行)、「被請求人のイ号図面の図2に示された災害用トイレシステムは本件特許発明の上記構成要件A、BおよびFを具備しているが、上記の構成要件C、D、およびEを欠如している。」(答弁書4頁23から最下行)、「イ号図面の図2の「流入管」が直接下水管に接続されるように構成されているのである。即ち、イ号図面の図2では本管2、3(排水管)の端部にマンホールが接続されておらず、本管の端部の流入管13が直接的に下水管に接続されるよう構成されているので、イ号図面の図2のトイレシステムでは仮設のマンホールは不要なのである。」(答弁書5頁21から25行)と主張している。

3 当審によるイ号物件の特定
被請求人は、上記2のとおり、イ号図面の図1に示された「災害用トイレシステム」を実施していないことを主張するとともに、イ号図面の図2及び3に示す「災害用トイレシステム」が本件特許発明の技術的範囲に属さない旨主張する。
しかしながら、上記したとおり本件判定請求の趣旨は「イ号説明書およびイ号図面(図1?図3)に示す「災害用トイレシステム」、すなわちイ号図面の図1を含む、イ号図面の図1?図3に示されるものが、本件特許発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものであるから、実施されているか否かは問わず、イ号図面の図1?図3に示されるものをイ号物件として以下に検討する。

(1) イ号図面の図1ないし3の記載内容
ア 図1
図1からは、以下の事項が看てとれる。

(ア) 図1は、「工事名称」が「調布市立神代中学校ほか1校 体育館避難所機能整備工事」、「図面名称」が「調布市立第3中学校 衛生設備 外構図」、「日付」が「平成27年3月」、「図面番号」が「DM-1」と記載されているものであって、図面全体からみて平面図であることがわかる。図面中、引き出し線で各部材の名称あるいは仕様が記載されている。以下、該引き出し線で示される部材の名称あるいは仕様を以て、各部材を特定する。
ただし建物を表す箇所では、引出線を用いることなく建物の名称が記載されている(「第一体育館」、「第二体育館」等。)。

(イ) 図面視で「第1体育館」下方に左右方向に延びる「災害用マンホールトイレ(5箇所)」が、「第二体育館」上方に上下方向に延びる「災害用マンホールトイレ(4箇所)」が記載されている。
該「災害用マンホールトイレ(5箇所)」という記載の下には、「(詳細図参照)」と記載されている。

(ウ) 図面視左右方向に延びる上記「災害用マンホールトイレ(5箇所)」から、該左右方向を左方に延長する形で、「200φ(Δ=1.9/100)」(「Δ」は原文では勾配記号。以下同様。)が記載されている。この記載から、該「200φ(Δ=1.9/100)」は直径が200mmで勾配が1.9/100の管であると解される。
同様に、図面視上下方向に延びる上記「災害用マンホールトイレ(4箇所)」から、該上下方向を上方に延長する形で、「200φ(Δ=1.8/100)」が記載されている。この記載から、該「200φ(Δ=1.8/100)」は直径が200mmで勾配が1.8/100の管であると解される。

(エ) 上記「200φ(Δ=1.9/100)」管の図面視左端(すなわち上記「災害用マンホールトイレ(5箇所)」と反対側端)、かつ上記「200φ(Δ=1.8/100)」管の図面視上端(すなわち上記「災害用マンホールトイレ(5箇所)」と反対側端)が接する箇所に、「汚水桝(新設)900φ×1230H」が記載されている。

(オ) 上記「汚水桝(新設)900φ×1230H」から図面視左上方に延びる形で、「200φ(Δ=2/100)」が記載されている。この記載から、該「200φ(Δ=2/100)」は直径が200mmで勾配が2/100の管であると解される。また該管の位置する箇所に、「アスファルト舗装解体・復旧(1000幅)」と記載されている。

(カ) 上記「200φ(Δ=2/100)」管の図面視左上端から同視左方向に延びる形で、「既設接続管200φ」が記載されている。ここで、「200φ(Δ=2/100)」管と「既設接続管200φ」が接する箇所に「既設公設桝900φ×1400H」、「汚水桝(新設)900φ×1380H」、及び「既設汚水桝600φ×780H」の3つの桝が記載されているが、これら桝がどう介在しているかは図1には記載されていない。

(キ) 上記「既設接続管200φ」はその図面視左端で「下水本管500φ(Δ=0.35/100)」あるいは「下水本管600φ(Δ=0.35/100)」に接していることが看て取れる。
ここで、図1には「下水本管」がどの箇所で「500φ(Δ=0.35/100)」から「600φ(Δ=0.35/100)」に変わるのか記載されていないが、いずれの「下水本管」であっても、「既設接続管200φ」の該左端が「下水本管」に接することに違いはない。

(ク) 下水は下水本管に向かって流れるよう配管されるという技術常識より、上記(イ)の「災害用マンホールトイレ(5箇所)」から流出する汚水は、上記(ウ)の「200φ(Δ=1.9/100)」管、上記(エ)の「汚水桝(新設)900φ×1230H」、上記(オ)の「200φ(Δ=2/100)」管、上記(カ)の「既設接続管200φ」の順に流れ、上記(キ)の「下水本管」に流入するものであることが理解できる。

イ 図2
図2からは、以下の事項が看てとれる。

(ア) 図2は、「工事名称」が「調布市立神代中学校ほか1校 体育館避難所機能整備工事」、「図面名称」が「調布市立第3中学校 災害用マンホールトイレ参考図1」、「日付」が「平成27年3月」、「図面番号」が「DM-8」と記載されているものであって、左上に「災害用マンホールトイレ仕様書」、右下に「参考図」と記載され、上側に「平面図」、中側に「A断面図」(平面図中に記載されたA-A線での断面図と解される。)、下側に「B断面図」(平面図中に記載されたB-B線での断面図と解される。)と名付けられた図面が記載されるとともに、右下側に「No.」、「名称」、「数量」及び「備考」欄を有する表が記載されており、該「No.」と上記平面図、A断面図、及びB断面図中に付された番号が対応すると解される。以下の各部材の名称、番号は、平面図、A断面図、及びB断面図中に付された番号と、上記表の「No.」、「名称」による。

(イ) A断面図より、イ号物件は、「本管3」、「本管3」のA断面図視で左側に接続される「本管2」、及び「本管3」のA断面図視で左側に接続される「流入管13」を有し、これらの管は横方向に設けられており、さらには、「本管2、3」のA断面図視下側にΔ2/100を示す勾配(A断面図視で左側に下る勾配)が記載されており、これらの管は、A断面図視で左側に下る同勾配を有していることが理解できる。すなわち、「本管3」の下流側に「本管2」、「本管2」の下流側に「流入管13」が接続されていることが分かる。
さらに、B断面図で図面視最上側が「アスファルト舗装」とされていることから、それより同視下側は地中であることが分かる。よってA断面図とB断面図を合わせみると、「本管3」、「本管2」、及び「流入管13」は、地中に設けられていることが分かる。

(ウ) A断面図より、イ号物件は複数(5本)の「支管5」を有することが分かる。A断面図とB断面図を合わせみると、複数の「支管5」は、「本管3」、「本管2」、及び「流入管13」を横方向として、これに対して縦方向に沿って配置されていることがわかる。A断面図より、複数の「支管5」はその軸方向に間隔をあけて配置され、それぞれの図面視下端部が「本管3」及び「本管2」の同視上部に接続されていることが分かる。

(エ) A断面図より、複数(5本)の「支管5」それぞれの上に点線で示された構造物があり、平面図を参照すると該構造物は「一般用トイレ」及び「身障者用トイレ」(一般用トイレ4つ及び身障者用トイレ1つで合計5つ。)であることが分かる。また図2中の左上部に「・仮設トイレ設置箇所数:5箇所」と記載されていることから、「一般用トイレ」及び「身障者用トイレ」は仮設トイレであり、仮設されたときの状態を点線で示していることが分かる。そして、「支管5」それぞれの上に各仮設トイレが据え付けられるということは、「支管5」それぞれは各仮設トイレの便器と連結されるものであり、そのためにキャップ4が被せられ、上端が地表に開口されていると解される。

(オ) A断面図より、イ号物件は「流入管13」に設けられる「1次止水ゲート(バタフライ弁)11」及び「2次止水ゲート(スライドゲート)12」を有することが分かる。(表中には「2次止水ゲート(スライドゲートライド)」と記載されているが、」これが「2次止水ゲート(スライドゲート)」の誤記であることは明らかである。)

ウ 図3
図3は、イ号説明書では「図面」とされているが、その内容は被請求人の「災害用トイレシステム-埋設型トイレ」のパンフレットである。該パンフレットには、以下の記載がある。

(ア) 「災害用トイレシステム-埋設型トイレ」との名称が記載された面をパンフレットの表として、その裏面の上部に「バタフライ弁式トイレシステム」と名付けられた図が、左側下部に「非常時(仮設トイレ組み立て完了)」と名付けられた図が記載されている。両図から、該トイレは、上記図2記載の「災害用マンホールトイレ」と同様に、地中に設けられ勾配を有する1本の管(図2にならい以下「本管」という。)と、縦方向に沿って軸方向に間隔をあけて配置されその下端が前記本管に接続される5本の管(図2にならい以下「支管」という。)を有し、該支管それぞれの上に各仮設トイレが組み立てられることが分かる。

(イ) 上記「バタフライ弁式トイレシステム」図で本管の図示左側、「非常時(仮設トイレ組み立て完了)」図で本管の図示右側、すなわち本管から下流側に、本管に直交する方向(図面に垂直方向)の管が記載されている。トイレ下流に位置することから、この管は下水管であることが分かる。

(ウ) 上記裏面の左側中央やや下寄りに
「●汚物を効率的に処理する貯留方式
プールなどの水を利用して、使用前に一定量の水を貯留します。この貯留水により汚物の軟化・流動化を図り、多量の汚物処理が可能です。」と記載され、
また同裏面右下の「ダイカ災害用トイレシステムの能力」と名付けられた表に、「≪バタフライ弁式>」について、「注水時水量」が「290l」、「排水時水量」が「770l」、「注水-排水=処理能力」が「480l」、そして「処理回数/日」が「3回」と記載されているから、該「トイレシステム」は、使用前に本管内に一定量の水を貯留し、貯留水により汚物の軟化・流動化を図り、多量の汚物処理を行うものであることが理解できる。

(2) イ号物件の特定
図1と図2は「工事名称」が「調布市立神代中学校ほか1校 体育館避難所機能整備工事」、「図面名称」が「調布市立第3中学校」、日付が「平成27年3月」という点で共通するものであるから、図2は図1中の災害用マンホールトイレについての参考図であると考えられる。そして、図1には「災害用マンホールトイレ」との記載が2つ存在するが、上記(1)イ(エ)のとおり、図2の平面図、A断面図、及びB断面図で示される「災害用マンホールトイレ」は合計5つのトイレを有するものであることから、図1の2つの「災害用マンホールトイレ」のうち「災害用マンホールトイレ(5箇所)」が図2の「災害用マンホールトイレ」に対応するものと解される。また上記2のとおり、被請求人が「被請求人の災害用トイレシステムに関する「図2」および「図3」」としていることから、図3は図2記載のトイレシステムを説明するパンフレットにあたると解される。
上記(1)を踏まえると、イ号説明書及びイ号図面の図1ないし3からみて、イ号物件は、本件特許発明の構成要件の分説と対応するように記号を付して構成に分説すると、以下のとおりのものと認められる(以下、分説した構成を「構成a」などという。)。

「a 横方向に地中に設けられる、本管3、本管3の下流側に接続される本管2、及び本管2の下流側に接続される流入管13と、
b 本管3及び本管2の上部に、軸方向に間隔をあけてそれぞれの下端部が接続されるように、それぞれが縦方向に沿って配置されており、地表に据え付けられる仮設トイレの便器と連結されるように、キャップ4が被せられた、上端が地表に開口されている複数の支管5と、
c 流入管13の下流側に連結される「200φ(Δ=1.9/100)」管と、「200φ(Δ=1.9/100)」管の下流側に連結される「汚水桝(新設)900φ×1230H」と、
d この「汚水桝(新設)900φ×1230H」と「下水本管」を連結する、「アスファルト舗装解体・復旧(1000幅)」箇所に位置する「200φ(Δ=2/100)」管、及びその下流側の「既設接続管200φ」と、
e 流入管13に設けられた1次止水ゲート11(バタフライ弁)及び2次止水ゲート(スライドゲート)12と、
f を具備する、使用前に一定量の水を貯留し、貯留水により汚物の軟化・流動化を図り、多量の汚物処理が可能である災害用トイレシステム。」


第5 属否の判断
イ号物件が、本件特許発明の構成要件AないしFを充足するか否かについて、以下検討する。

(1) 構成要件Aの充足性について
イ号物件の構成aの「横方向に地中に設けられる、本管3、本管3の下流側に接続される本管2、及び本管2の下流側に接続される流入管13」が、本件特許発明の構成要件Aの「横方向に沿って地中に埋設された排水管」に相当することは明らかである。
よって、イ号物件の構成aは本件特許発明の構成要件Aを充足する。

(2) 構成要件Bの充足性について
イ号物件の構成bにおける「本管3及び本管2の上部」は本件特許発明の構成要件Bの「排水管の上部」に相当するから、イ号物件の構成bの「本管3及び本管2の上部に、軸方向に間隔をあけてそれぞれの下端部が接続されるように、それぞれが縦方向に沿って配置されており、地表に据え付けられる仮設トイレの便器と連結されるように、キャップ4が被せられた、上端が地表に開口されている複数の支管5」は、便器と連結されるときに、キャップ4が外され支管5の上端は、開口した状態となることが明らかであるから、本件特許発明の構成要件Bの「排水管の上部に、軸方向に適当な間隔をあけてそれぞれの下端部が接続されるように、それぞれが縦方向に沿って配置されており、地表に据え付けられる便器と連結され得るように、上端面がそれぞれ地表に開口している複数の縦管」に相当する。
よって、イ号物件の構成bは本件特許発明の構成要件Bを充足する。

(3) 構成要件Cの充足性について
ア 本件特許発明について
(ア) マンホール
本件特許発明の構成要件C「前記排水管の一方の端部が接続されたマンホールと、」の「マンホール」は、構成要件D及びEを考慮すると、排水管と、既設の下水管とを連結する流出管との間に介在するものであり、「排水管」に貯留されていた汚物を含む水が流入されるものであるといえる。
ところで、マンホールとは「下水などの導水管・管渠・ボイラーの掃除・点検のため、人の出入りができるように作った穴。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)であるが、本件特許明細書の「マンホール」についての説明「このようにして、排水本管21内には、所定の水位になった水とともに汚物が貯留されるが、1日に1?2回程度、適当な時間間隔をあけて、貯水ゲート25の操作ハンドル25cが操作されて、ゲート本体25aが上方にスライドされる。これにより、排水本管21における下部が開放された状態になり、排水本管21内に貯留された汚物および水の流体はマンホール10内に流入する。排水本管21は、適当な勾配で傾斜しているために、排水本管21内の汚物は、水とともにマンホール10内に円滑に流入し、排水本管21内にて滞留するおそれがない。マンホール10内に流入した汚物は、水とともに流出管12内に流入して、既設の下水管内へ流出される。」(段落0024)を参照しても、マンホールは排水本管21内に滞留しないように汚物と水を流入させられるものであればよく、人の出入りが必須ではないものと解される。

(イ) 排水管とマンホールとの接続
本件特許明細書の段落0015に「排水本管21の一方の端部は、マンホール10の下部周面に取り付けられたマンホール継手11によって、マンホール10に接続されている。」と「マンホール継手11」を介した間接的な接続が説明されているように、本件特許発明は排水管とマンホールとが間接的に接続されるものも含む。

イ 属否について
イ号物件の構成cの「汚水桝(新設)900φ×1230H」は、本管3、2及び流入管13に連結される「200φ(Δ=1.9/100)」管と、「既設接続管200φ」及びその下流の下水本管に連結される「200φ(Δ=2/100)」管との間に介在し、本管3、2及び流入管13に比べて大きな空間を有するものであり、本管3、2に貯留されていた汚物を含む水が流入されるものである。
そうすると、イ号物件の構成cの「汚水桝(新設)900φ×1230H」と、本件特許発明の構成要件Cの「マンホール」とは、排水管と、既設の下水管に連結される流出管(構成要件D)との間に設けられ、排水管に貯留されていた汚物を含む水が流入される点で共通する。そして、イ号物件も、構成cの「汚水桝(新設)900φ×1230H」が設けられていることにより、本管3、2及び流入管13、「200φ(Δ=1.9/100)」管の管内に汚物や水が滞留しないことは自明である。
よって、イ号物件の構成cの「汚水桝(新設)900φ×1230H」は、本件特許発明の構成要件Cの「マンホール」に相当する。

また、イ号物件の構成cにおける、流入管13と「汚水桝(新設)900φ×1230H」間の「200φ(Δ=1.9/100)」管を介した間接的な接続も、本件特許発明の構成要件Cの「端部が接続」に含まれる。

ウ 小括
よって、イ号物件の構成cの「流入管13の下流側に連結される「200φ(Δ=1.9/100)」管と、「200φ(Δ=1.9/100)」管の下流側に連結される「汚水桝(新設)900φ×1230H」」は、本件特許発明の構成要件Cの「排水管の一方の端部が接続されたマンホール」に相当し、イ号物件の構成cは本件特許発明の構成要件Cを充足する。

(4) 構成要件Dの充足性について
イ号物件の構成dの「既設接続管200φ」は「既設」の管であり、また「下水本管」に連結される管であるところ明らかに下水管である。よって、イ号物件の構成dの「既設接続管200φ」は、本件特許発明の構成要件Dの「既設の下水管」に相当する。
ここで、本件特許発明の構成要件Dは「このマンホールと既設の下水管とを連結する流出管」というものであり、すなわち「マンホール」及び「流出管」は「既設の下水管」とは別のものとされている。このことを踏まえて検討すると、イ号物件の構成dの「汚水桝(新設)900φ×1230H」は明らかに新設であり、そして「200φ(Δ=2/100)」管は、この新設の「汚水桝(新設)900φ×1230H」を「既設接続管200φ」と連結するための管で、「アスファルト舗装解体・復旧(1000幅)」箇所に位置するものであるから、新設の管であることは明らかである。よって、イ号物件の構成dの「200φ(Δ=2/100)」管は、本件特許発明の構成要件Dの「マンホールと既設の下水管とを連結する流出管」に相当する。
よって、イ号物件の構成dは本件特許発明の構成要件Dを充足する。

(5) 構成要件Eの充足性について
イ号物件の構成eにおける、「流入管13に設けられた1次止水ゲート11(バタフライ弁)及び2次止水ゲート(スライドゲート)12」が「流入管13」を開閉し得ること、またイ号物件の構成fの「一定量の水を貯留」することからも、該ゲートを閉じれば「本管3及び2」を含む該ゲートより上流側に一定量の水を貯留できることは明らかである。加えて、該ゲートは「本管3及び2」並びに「流入管13」の中で最も下流端の「流入管13」に設けられるものであることからすれば、イ号物件の構成eの「流入管13に設けられた1次止水ゲート11(バタフライ弁)及び2次止水ゲート(スライドゲート)12」は、本件特許発明の構成要件Eの「前記排水管の内部に流体が貯留されるように排水管の端部を開閉し得るように配置され」る「貯水ゲート」に相当する。
また、イ号物件の構成eにおける「1次止水ゲート11(バタフライ弁)及び2次止水ゲート(スライドゲート)12」が開放されれば、それまで該ゲートより上流側(すなわち勾配の上側)に貯められていた流体が勾配に従い流出することは明らかであり、かつイ号物件の構成eにおける「流入管13」は、構成cにあるとおり「200φ(Δ=1.9/100)」管を通じ「汚水桝(新設)900φ×1230H」に連結されているので、該流体が「汚水桝(新設)900φ×1230H」に流出することになるのも明らかであるから、本件特許発明の構成要件Eの「排水管の端部が開放されることによって排水管内の流体をマンホール内に流出させる」ことに相当する。
よって、イ号物件の構成eは構成要件Eを充足する。

(6) 構成要件Fの充足性について
イ号物件の構成fの「災害用トイレシステム」が本件特許発明の構成要件Fの「仮設トイレ用配管構造」に相当することは明らかである。よって、イ号物件の構成fは構成要件Fを充足する。

(7) 被請求人の主張について
ア 被請求人は、「被請求人はイ号図面の図1に示された「災害用トイレシステム」を実施していない」、「請求人が主張する事実関係は真実とは合致しておらず、本件判定請求の趣旨が失われていると思料する。」と主張している。
しかしながら、被請求人は「イ号書面およびイ号図面のうち図2および図3に示す「災害用トイレシステム」は、特許第4104197号技術的範囲に属さない、との判定を求める。」とも述べており、判定を行うこと自体を否定するものではないから、被請求人の主張は採用できない。

イ 被請求人は、「イ号図面の図2のトイレシステムでは」「マンホールは不要」と主張している。
しかしながら、本件判定請求はイ号図面の図1?図3に示されるものについて判定を求めるものであるから、図1を含まないことを前提とする被請求人の主張は採用できない。そして、本件は、請求人が主張する実施の関係が事実か否かは問わず、図2のみならずイ号図面の図1?図3に示されるものをイ号物件として判断するものであり、図1に示される「汚水桝(新設)900φ×1230H」が本件特許発明の「マンホール」に相当することは上記(3)のとおりである。

(8) 小括
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件をすべて充足する。


第6 むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件をすべて充足するから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属する。

よって、結論のとおり判定する。












 
判定日 2017-08-02 
出願番号 特願平10-17108
審決分類 P 1 2・ 1- YA (E03F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 秀幹鷲崎 亮  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 前川 慎喜
住田 秀弘
登録日 2008-04-04 
登録番号 特許第4104197号(P4104197)
発明の名称 仮設トイレ用配管構造  
代理人 川越 雄一郎  
復代理人 寺本 光生  
代理人 一色国際特許業務法人  
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