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審決分類 審判 全部無効 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  G01N
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01N
審判 全部無効 特123条1項5号  G01N
管理番号 1331524
審判番号 無効2016-800039  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-03-31 
確定日 2017-06-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5815826号発明「粒子分光計のための分析装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5815826号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第5815826号の請求項〔1?5、7、8〕、〔9?16、18〕に係る発明についての本件審判の請求は、成り立たない。 特許第5815826号の請求項6、17についての本件審判請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許は、ヴィゲー・シエンタ・アーベーにより出願された、2012年3月6日を国際出願日とする出願である特願2014-560888号の一部を、平成26年10月7日に新たな出願とした特願2014-206185号に係り、平成27年7月2日付けの手続補正によって補正された願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面の内容について、特許第5815826号として平成27年10月2日に設定登録されたものである。(ヴィゲー・シエンタ・アーベーは、特許権設定登録後に、シエンタ・オミクロン・アーベー(以下「被請求人」という。)に表示変更登録された。)
本件特許無効審判事件は、請求人 エム・ベー・サイエンティフィック・アクチボラゲット(以下「請求人」という。)が、「特許第5815826号の特許請求の範囲の請求項1から18に記載された発明に係る特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」として、平成28年3月31日に請求したものであって、当該審判請求後の手続は以下のとおりである。

平成28年 8月12日 審判事件答弁書、訂正請求書
平成28年10月14日 審判事件弁駁書
平成29年 1月10日 被請求人 口頭審理陳述要領書
平成29年 1月12日 請求人 口頭審理陳述要領書
平成29年 1月24日 口頭審理


第2 平成28年8月12日付け訂正請求について
平成28年8月12日付け訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)の適否について、以下に検討する。

1 本件訂正請求の内容
本件訂正請求は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲(以下、これらと図面を併せて、「本件特許明細書等」という。)について、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである。(下線は、被請求人が付したものであり、訂正箇所である。)

(1)訂正事項1
請求項1について、訂正前の、
「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回、前記粒子ビームを偏向させるステップ」
を、
「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うステップ」
に訂正する。

(2)訂正事項2
請求項1について、訂正前の、
「ステップを特徴とする方法」
を、
「ステップと、
前記粒子ビームを形成する前記粒子の角度分布(39)の所定の部分(A、B)が前記測定領域(3)の前記入口(8)を通過するように、前記粒子ビームの前記偏向を制御するステップと、をさらに備えることを特徴とする方法」
に訂正する。

(3)訂正事項3
請求項6を削除する。

(4)訂正事項4
請求項7について、訂正前の、
「請求項6に記載の方法」

「請求項1?5の何れか一項に記載の方法」
に訂正する。

(5)訂正事項5
請求項8について、訂正前の
「請求項1?7の何れか一項に記載の方法」
を、
「請求項1?5、7の何れか一項に記載の方法」
に訂正する。

(6)訂正事項6
特許明細書の段落【0019】について、訂正前の、
「さらに、その方法は、粒子ビームが測定領域に入射する前に、少なくとも同じ第1座標方向に少なくとも二回、粒子ビームを偏向させるステップを備える。」

「さらに、その方法は、粒子ビームが測定領域に入射する前に、少なくとも同じ第1座標方向に少なくとも二回目の粒子ビームの偏向を行うステップを備える。」
に訂正する。

(7)訂正事項7
請求項9について、訂正前の、
「前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回前記粒子ビームを偏向させるための少なくとも第2の偏向器(33A’/33C’、33B’/33D’)」
を、
「前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うための少なくとも第2の偏向器(33A’/33C’、33B’/33D’)」
に訂正する。

(8)訂正事項8
請求項9に、
「前記光電子分光計は、前記粒子ビームを形成する前記粒子の角度分布(39)の所定の部分(A、B)が前記測定領域(3)の前記入口(8)を通過するように、前記偏向装置(31)が前記粒子ビームを偏向させるように操作可能な制御ユニット(35)をさらに備える」
を追加する。

(9)訂正事項9
請求項17を削除する。

(10)訂正事項10
請求項18について、訂正前の、
「請求項17に記載の方法」

「請求項9?16の何れか一項に記載の方法」
に訂正する。

(11)訂正事項11
特許明細書の段落【0031】について、訂正前の、
「粒子ビームが測定領域に入射する前に、少なくとも同じ第1座標方向に少なくとも二回粒子ビームを偏向させるように操作可能な少なくとも第2の偏向器と、を備える偏向装置をさらに含む。」

「粒子ビームが測定領域に入射する前に、少なくとも同じ第1座標方向に少なくとも二回目の粒子ビームの偏向を行うように操作可能な少なくとも第2の偏向器と、を備える偏向装置をさらに含む。」
に訂正する。

2 本件訂正請求の訂正の目的、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正前の請求項1の「少なくとも二回、前記粒子ビームを偏向させる」との記載は、願書に添付した外国語特許請求の範囲の請求項1の「deflecting the particle beam ... at least a seccond time ...」との記載を誤訳したものであるところ、「少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行う」と訂正するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134の2第1項ただし書き第2号に規定される誤訳の訂正を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
上記「ア」で検討したとおりであるから、訂正事項1は、外国語書面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 拡張・変更の存否
訂正前の請求項1の「少なくとも二回、前記粒子ビームを偏向させる」との記載は、本件特許明細書等の全記載を参照すれば、「少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行う」の誤記であることは、当業者であれば、容易に把握し得ることであるから、訂正事項1が、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、実質的に、訂正前の請求項1に、
「前記粒子ビームを形成する前記粒子の角度分布(39)の所定の部分(A、B)が前記測定領域(3)の前記入口(8)を通過するように、前記粒子ビームの前記偏向を制御するステップと、をさらに備えること」
を追加するものである。
この訂正事項2で追加される事項は、訂正前の請求項1の「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、前記レンズシステムの前記光学軸と直交する少なくとも第1座標方向(x、y)において前記粒子ビームを偏向させるステップ」、「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回、前記粒子ビームを偏向させるステップ」について、どのように制御するかをより具体的に限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第134の2第1項ただし書き第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項2で追加される事項は、訂正前の請求項6に記載された事項と同一のものであるから、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 拡張・変更の存否
本件特許明細書等の全記載を参照すれば、粒子放出試料からある限られた角度範囲内で放出された荷電粒子を、光電子分光計の測定領域の入口を通過させるための方法として、従来の6自由度の試料マニピュレーターにより試料を回転及び傾斜させる方法が有する種々の問題を解決することを目的として、従来の方法に変えて、粒子ビームを偏向させる方法を採用するという技術事項が把握できると認められる。
すると、訂正前の請求項1に係る「方法」の発明は、そもそも、「粒子ビームを偏向させるステップ」により、粒子放出試料からある限られた角度範囲内で放出された荷電粒子を、光電子分光計の測定領域の入口を通過させることを目的とするものであることは、本件特許明細書等の全記載からみて、明らかである。
したがって、訂正事項2により追加される事項は、訂正前の請求項1に係る「方法」の発明がそもそも目的とする技術事項を限定するものであって、訂正前の請求項1に係る「方法」の発明に含まれていた事項であると認められるから、訂正事項2が、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
したがって、訂正事項2は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項6を削除するものであるから、特許法第134の2第1項ただし書き第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
上記「ア」で検討したとおりであるから、訂正事項3は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 拡張・変更の存否
上記「ア」で検討したとおりであるから、訂正事項3は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項6の削除に伴い、請求項7の引用請求項を適正に修正するものであるから、特許法第134の2第1項ただし書き第3号に規定される明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
上記「ア」で検討したとおりであるから、訂正事項4は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 拡張・変更の存否
上記「ア」で検討したとおりであるから、訂正事項4は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の請求項6の削除に伴い、請求項8の引用請求項から請求項6を削除するものであるから、特許法第134の2第1項ただし書き第3号に規定される明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
上記「ア」で検討したとおりであるから、訂正事項5は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 拡張・変更の存否
上記「ア」で検討したとおりであるから、訂正事項5は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的
訂正事項6は、請求項1の訂正(訂正事項1)に合わせて、明細書の記載を訂正するものであるから、特許法第134の2第1項ただし書き第3号に規定される明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
上記「(1)」「イ」での検討と同様、訂正事項6は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 拡張・変更の存否
上記「(1)」「ウ」での検討と同様、訂正事項6は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的
訂正前の請求項9の「少なくとも二回、前記粒子ビームを偏向させる」との記載は、願書に添付した外国語特許請求の範囲の請求項9の「deflecting the particle beam ... at least a seccond time ...」との記載を誤訳したものであるところ、「少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行う」と訂正するものである。
したがって、訂正事項7は、特許法第134の2第1項ただし書き第2号に規定される誤訳の訂正を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
上記「ア」で検討したとおりであるから、訂正事項7は、外国語書面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 拡張・変更の存否
訂正前の請求項7の「少なくとも二回、前記粒子ビームを偏向させる」との記載は、本件特許明細書等の全記載を参照すれば、「少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行う」の誤記であることは、当業者であれば、容易に把握し得ることであるから、訂正事項1が、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的
訂正事項8は、訂正前の請求項9に、
「前記光電子分光計は、前記粒子ビームを形成する前記粒子の角度分布(39)の所定の部分(A、B)が前記測定領域(3)の前記入口(8)を通過するように、前記偏向装置(31)が前記粒子ビームを偏向させるように操作可能な制御ユニット(35)をさらに備える」
を追加するものである。
この訂正事項8で追加される事項は、訂正前の請求項9の「光電子分光計」が、「前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、前記レンズシステムの前記光学軸と直交する少なくとも第1座標方向(x、y)において前記粒子ビームを偏向させるための第1の偏向器(33A/33C、33B/33D)を備える偏向装置(31)」、「前記偏向装置(31)は、前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回前記粒子ビームを偏向させるための少なくとも第2の偏向器(33A’/33C’、33B’/33D’)」を制御する制御ユニットを備えることを限定するものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第134の2第1項ただし書き第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項8で追加される事項は、訂正前の請求項17に記載された事項と同一のものであるから、訂正事項8は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 拡張・変更の存否
本件特許明細書等の全記載を参照すれば、粒子放出試料からある限られた角度範囲内で放出された荷電粒子を、光電子分光計の測定領域の入口を通過させるための方法として、従来の6自由度の試料マニピュレーターにより試料を回転及び傾斜させる方法が有する種々の問題を解決することを目的として、従来の方法に変えて、粒子ビームを偏向させる方法を採用するという技術事項が把握できると認められる。
すると、訂正前の請求項9に係る「光電子分光計」の発明は、そもそも、「偏向装置(31)」により、粒子放出試料からある限られた角度範囲内で放出された荷電粒子を、光電子分光計の測定領域の入口を通過させることを目的とするものであることは、本件特許明細書等の全記載からみて、明らかである。
したがって、訂正事項8により追加される事項は、訂正前の請求項9に係る「光電子分光計」の発明がそもそも目的とする技術事項を限定するものであって、訂正前の請求項9に係る「光電子分光計」の発明に含まれていた事項であると認められるから、訂正事項8が、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
したがって、訂正事項8は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(9)訂正事項9について
ア 訂正の目的
訂正事項9は、訂正前の請求項17を削除するものであるから、特許法第134の2第1項ただし書き第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
上記「ア」で検討したとおりであるから、訂正事項9は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 拡張・変更の存否
上記「ア」で検討したとおりであるから、訂正事項9は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(10)訂正事項10について
ア 訂正の目的
訂正事項10は、訂正前の請求項17の削除に伴い、請求項18の引用請求項を適正に修正するものであるから、特許法第134の2第1項ただし書き第3号に規定される明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
上記「ア」で検討したとおりであるから、訂正事項10は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 拡張・変更の存否
上記「ア」で検討したとおりであるから、訂正事項10は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(11)訂正事項11について
ア 訂正の目的
訂正事項11は、請求項9の訂正(訂正事項7)に合わせて、明細書の記載を訂正するものであるから、特許法第134の2第1項ただし書き第3号に規定される明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
上記「(7)」「イ」での検討と同様、訂正事項11は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 拡張・変更の存否
上記「(7)」「ウ」での検討と同様、訂正事項11は、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 一群の請求項について
(1)訂正事項1?5
訂正事項1?5は、訂正前の請求項1?8からなる一群の請求項ごとに請求するものであるから、特許法第134の2第3項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項6
訂正事項6は、訂正前の請求項1?8からなる一群の請求項の全てに係るものであるから、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項7?10
訂正事項7?10は、訂正前の請求項9?18からなる一群の請求項ごとに請求するものであるから、特許法第134の2第3項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項11
訂正事項11は、訂正前の請求項9?18からなる一群の請求項の全てに係るものであるから、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。

4 請求人の主張について
(1)請求人の主張
本件訂正について、請求人は、2つの裁判例を示して、特許請求の範囲を減縮する訂正について、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないというためには、訂正により付加された構成が、出願当時、当業者にとって周知技術である必要があるところ、被請求人は、訂正事項2及び8により追加される事項が、本件特許の国際出願日当時、当業者にとって周知技術であるとは何ら言及していない。
したがって、訂正事項2及び8は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであって、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものではないから、当該訂正は認められないと主張する。
そこで、請求人の上記主張について、以下、検討する。

(2)特許法第126条第6項について
特許法第126条第6項の規定の趣旨は、第三者に不測の不利益が生じることを防止する観点から、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれるという事態が生じないことを担保することにある。
また、特許権が設定登録により発生すると、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容が特許公報に掲載されて、第三者に公示され(特許法第66条第1、3項)、第三者が利害関係を有する特許権の禁止権の範囲である特許発明の技術的範囲は、この願書に添付した特許請求の範囲に基づいて定められ、その用語の意義はこの願書に添付した明細書及び図面を考慮して解釈するものとされている(特許法第70条第1、2項)。(知財高平成28年8月29日判決言渡・平成27年(行ケ)第10216号参照)
そして、同項の「拡張」及び「変更」の文言からも明らかなとおり、同項の規定を満たすか否かの判断は、訂正前後の特許請求の範囲の対比に基づき、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれているか否かを判断することであり、また、その特許請求の範囲の記載は、願書に添付した明細書及び図面を考慮して解釈するものである。
すると、同項の規定を満たすか否かの判断は、必ずしも、請求人が主張するように、単に、訂正により付加された構成が、出願当時、当業者にとって周知技術であるか否かを判断することのみによってなされるものではない。

(3)訂正事項2及び8について
上記「2」「(2)」「ウ」及び「(8)」「ウ」で検討したとおり、訂正事項2及び8で追加される事項は、本件特許明細書等の全記載を考慮すると、訂正前の本件特許発明1及び9に含まれていたものと認められるから、訂正事項2及び8により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとはならない。
すると、訂正事項2及び8は、上記「2」「(2)」「ウ」及び「(8)」「ウ」で、特許法第134の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合すると判断したとおりである。

(4)結論
上述のとおりであるから、請求人の訂正事項2及び8の訂正は認められないとする主張は採用しない。

5 本件訂正請求についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き出し1?3号に掲げられた事項を目的としており、また、特許法第134の2第3項、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第3?6項の規定に適合する。

よって、本件訂正請求による訂正を認め、以下、訂正後の請求項1?18に係る発明(以下「訂正特許発明1」?「訂正特許発明18」という。)について、請求人の主張する無効理由を検討する。


第3 訂正特許発明
訂正特許発明1?18は、訂正特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
粒子放出試料(11)から放出された荷電粒子に関する少なくとも一つのパラメーターを決定するための方法であって、
前記荷電粒子の粒子ビームを形成し、実質的に一直線の光学軸(15)を有するレンズシステム(13)によって前記粒子放出試料(11)と測定領域(3)の入口(8)との間で粒子を輸送するステップと、
前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、前記レンズシステムの前記光学軸と直交する少なくとも第1座標方向(x、y)において前記粒子ビームを偏向させるステップと、
前記測定領域における前記荷電粒子の位置を検出するステップと、を備え、前記位置は、少なくとも一つの前記パラメーターの指標となり、
前記荷電粒子の前記位置を検出する前記ステップは、二つの次元での位置の検出を含み、前記二つの次元での位置の一方は前記粒子のエネルギーの指標となり、前記二つの次元での位置の他方は前記粒子の開始方向の指標となり、
前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うステップと、
前記粒子ビームを形成する前記粒子の角度分布(39)の所定の部分(A、B)が前記測定領域(3)の前記入口(8)を通過するように、前記粒子ビームの前記偏向を制御するステップと、
をさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記粒子ビームの一回目の偏向は、第1の偏向器(33A/33C、33B/33D)によって実現され、前記粒子ビームの少なくとも二回目の偏向は、少なくとも第2の偏向器(33A’/33C’、33B’/33D’)によって実現され、前記第2の偏向器は、前記第1の偏向器の下流に前記レンズシステム(13)の前記光学軸(15)に沿って前記第1の偏向器から離間して配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子ビームは、前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、前記第1座標方向(x)及び前記レンズシステム(13)の前記光学軸(15)と直交する第2座標方向(y)においても少なくとも二回偏向される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子ビームの偏向はすべてレンズシステム(13)内で起こり、少なくとも一つのレンズ(L1)が前記粒子ビームの前記一回目の偏向の前に前記粒子に作用し、少なくとも一つのレンズ(L3)が前記粒子ビームの最後の偏向の後に前記粒子に作用する、請求項1?3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記粒子ビームの少なくとも一つの偏向は、偏向器パッケージ(29)によって実現され、前記偏向器パッケージ(29)は本質的に四極対称な形態で配置される四つの電極(33A?33D)を備え、前記四つの電極(33A?33D)は二つの電極対(33A/33C、33B/33D)を形成し、前記二つの電極対(33A/33C、33B/33D)はそれぞれの座標方向(x、y)における偏向器の役割を果たし、
前記偏向器パッケージ(29)の前記二つの電極対の一方(33A/33C)の間に第1の偏向器電圧(Vx)を印加するステップと、
前記偏向器パッケージ(29)の前記二つの電極対の他方(33B/33D)の間に第2の偏向器電圧(Vy)を印加するステップと、
前記偏向器パッケージ(29)の前記電極(33A?33D)に四極対称の電圧(±Vq)を印加し、前記偏向器電圧(Vx、Vy)に重畳させるステップと、をさらに備える、請求項1?4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
前記粒子の前記角度分布の前記所定の部分(A、B)が、前記測定領域(3)の前記入口(8)を前記レンズシステム(13)の前記光学軸(15)と実質的に平行な方向に通過するように、前記粒子ビームの前記偏向を制御するステップをさらに備える、請求項1?5の何れか一項にに記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つのパラメーターは、
前記荷電粒子のエネルギー、
前記荷電粒子の開始方向、
前記荷電粒子の開始位置、及び
前記荷電粒子のスピン、
のうち少なくとも一つに関する、請求項1?5お及び7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
粒子放出試料(11)から放出された荷電粒子に関する少なくとも一つのパラメーターを決定することにより前記粒子放出試料(11)を分析するための半球状偏向器型の光電子分光計であって、
測定領域(3)であって、前記粒子が前記測定領域に入射することを可能にする入口(8)を有する測定領域(3)と、
前記荷電粒子の粒子ビームを形成し、前記粒子放出試料と前記測定領域の前記入口との間で前記粒子を輸送するためのレンズシステム(13)であって、実質的に一直線の光学軸(15)を有するレンズシステム(13)と、
前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、前記レンズシステムの前記光学軸と直交する少なくとも第1座標方向(x、y)において前記粒子ビームを偏向させるための第1の偏向器(33A/33C、33B/33D)を備える偏向装置(31)と、
前記測定領域における前記荷電粒子の位置を検出するための検出装置(9)と、を備え、前記位置は前記少なくとも一つのパラメーターの指標となり、
前記検出装置(9)は、二つの次元での前記荷電粒子の位置を決定するように構成され、前記二つの次元での位置の一方は前記粒子のエネルギーの指標となり、前記二つの次元での位置の他方は前記粒子の開始方向の指標となり、
前記偏向装置(31)は、前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うための少なくとも第2の偏向器(33A’/33C’、33B’/33D’)をさらに備え、
前記光電子分光計は、前記粒子ビームを形成する前記粒子の角度分布(39)の所定の部分(A、B)が前記測定領域(3)の前記入口(8)を通過するように、前記偏向装置(31)が前記粒子ビームを偏向させるように操作可能な制御ユニット(35)をさらに備えることを特徴とする半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項10】
前記第2の偏向器(33A’/33C’、33B’/33D’)は、前記第1の偏向器(33A/33C、33B/33D)の下流に、前記レンズシステム(13)の前記光学軸(15)に沿って前記第1の偏向器から離間して配置される、請求項9に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項11】
前記偏向装置(31)は、前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、前記第1座標方向(x)及びレンズシステム(13)の光学軸(15)と直交する第2座標方向(y)においても少なくとも二回前記粒子ビームを偏向させるように操作可能である、請求項9又は10に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項12】
前記偏向装置(31)は、本質的に四極対称な形態で配置される四つの電極(33A?33D)を備える少なくとも一つの偏向器パッケージ(29)を備え、前記偏向器パッケージ(29)の前記四つの電極(33A?33D)は二つの電極対(33A/33C、33B/33D)を形成し、前記二つの電極対(33A/33C、33B/33D)は前記第1座標方向(x)及び前記第2座標方向(y)のそれぞれの座標方向における偏向器の役割を果たす、請求項11に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項13】
前記電極(33A?33D)のそれぞれに個別の電圧を印加するように構成された制御ユニット(35)をさらに備える、請求項12に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項14】
前記レンズシステムの少なくとも一つのレンズ要素(L1)が前記偏向装置のすべての偏向器(33A/33C、33B/33D、33A’/33C’、33B’/33D’)の上流に位置し、前記レンズシステムの他の少なくとも一つのレンズ要素(L3)が前記偏向装置のすべての偏向器の下流に位置するように、前記偏向装置(31)と前記レンズシステム(13)とが配置される、請求項9?13の何れか一項に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項15】
前記偏向装置(31)のすべての偏向器(33A/33C、33B/33D、33A’/33C’、33B’/33D’)は、レンズ装置(13)の同じレンズ要素(L2)内に配置される、請求項9?14の何れか一項に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項16】
前記偏向装置(31)は、前記レンズシステム(13)の一体部品を形成する、請求項9?15の何れか一項に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項17】(削除)
【請求項18】
前記制御ユニット(35)は、前記粒子の前記角度分布(39)の前記所定の部分(A、B)が、前記測定領域(3)の前記入口(8)を前記レンズシステム(13)の前記光学軸(15)と実質的に平行な方向に通過するように、前記偏向装置(31)が前記粒子ビームを偏向させるように操作可能である、請求項9?16の何れか一項に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。」


第4 請求人の主張する無効理由
1 本件特許発明
訂正前の本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項1?18に係る発明(以下「本件特許発明1」?「本件特許発明18」という。)は、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
粒子放出試料(11)から放出された荷電粒子に関する少なくとも一つのパラメーターを決定するための方法であって、
前記荷電粒子の粒子ビームを形成し、実質的に一直線の光学軸(15)を有するレンズシステム(13)によって前記粒子放出試料(11)と測定領域(3)の入口(8)との間で粒子を輸送するステップと、
前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、前記レンズシステムの前記光学軸と直交する少なくとも第1座標方向(x、y)において前記粒子ビームを偏向させるステップと、
前記測定領域における前記荷電粒子の位置を検出するステップと、を備え、前記位置は、少なくとも一つの前記パラメーターの指標となり、
前記荷電粒子の前記位置を検出する前記ステップは、二つの次元での位置の検出を含み、前記二つの次元での位置の一方は前記粒子のエネルギーの指標となり、前記二つの次元での位置の他方は前記粒子の開始方向の指標となり、
前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回、前記粒子ビームを偏向させるステップを特徴とする方法。
【請求項2】
前記粒子ビームの一回目の偏向は、第1の偏向器(33A/33C、33B/33D)によって実現され、前記粒子ビームの少なくとも二回目の偏向は、少なくとも第2の偏向器(33A’/33C’、33B’/33D’)によって実現され、前記第2の偏向器は、前記第1の偏向器の下流に前記レンズシステム(13)の前記光学軸(15)に沿って前記第1の偏向器から離間して配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子ビームは、前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、前記第1座標方向(x)及び前記レンズシステム(13)の前記光学軸(15)と直交する第2座標方向(y)においても少なくとも二回偏向される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子ビームの偏向はすべてレンズシステム(13)内で起こり、少なくとも一つのレンズ(L1)が前記粒子ビームの前記一回目の偏向の前に前記粒子に作用し、少なくとも一つのレンズ(L3)が前記粒子ビームの最後の偏向の後に前記粒子に作用する、請求項1?3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記粒子ビームの少なくとも一つの偏向は、偏向器パッケージ(29)によって実現され、前記偏向器パッケージ(29)は本質的に四極対称な形態で配置される四つの電極(33A?33D)を備え、前記四つの電極(33A?33D)は二つの電極対(33A/33C、33B/33D)を形成し、前記二つの電極対(33A/33C、33B/33D)はそれぞれの座標方向(x、y)における偏向器の役割を果たし、
前記偏向器パッケージ(29)の前記二つの電極対の一方(33A/33C)の間に第1の偏向器電圧(Vx)を印加するステップと、
前記偏向器パッケージ(29)の前記二つの電極対の他方(33B/33D)の間に第2の偏向器電圧(Vy)を印加するステップと、
前記偏向器パッケージ(29)の前記電極(33A?33D)に四極対称の電圧(±Vq)を印加し、前記偏向器電圧(Vx、Vy)に重畳させるステップと、をさらに備える、請求項1?4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記粒子ビームを形成する前記粒子の角度分布(39)の所定の部分(A、B)が前記測定領域(3)の前記入口(8)を通過するように、前記粒子ビームの前記偏向を制御するステップをさらに備える、請求項1?5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子の前記角度分布の前記所定の部分(A、B)が、前記測定領域(3)の前記入口(8)を前記レンズシステム(13)の前記光学軸(15)と実質的に平行な方向に通過するように、前記粒子ビームの前記偏向を制御するステップをさらに備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つのパラメーターは、
前記荷電粒子のエネルギー、
前記荷電粒子の開始方向、
前記荷電粒子の開始位置、及び
前記荷電粒子のスピン、
のうち少なくとも一つに関する、請求項1?7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
粒子放出試料(11)から放出された荷電粒子に関する少なくとも一つのパラメーターを決定することにより前記粒子放出試料(11)を分析するための半球状偏向器型の光電子分光計であって、
測定領域(3)であって、前記粒子が前記測定領域に入射することを可能にする入口(8)を有する測定領域(3)と、
前記荷電粒子の粒子ビームを形成し、前記粒子放出試料と前記測定領域の前記入口との間で前記粒子を輸送するためのレンズシステム(13)であって、実質的に一直線の光学軸(15)を有するレンズシステム(13)と、
前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、前記レンズシステムの前記光学軸と直交する少なくとも第1座標方向(x、y)において前記粒子ビームを偏向させるための第1の偏向器(33A/33C、33B/33D)を備える偏向装置(31)と、
前記測定領域における前記荷電粒子の位置を検出するための検出装置(9)と、を備え、前記位置は前記少なくとも一つのパラメーターの指標となり、
前記検出装置(9)は、二つの次元での前記荷電粒子の位置を決定するように構成され、前記二つの次元での位置の一方は前記粒子のエネルギーの指標となり、前記二つの次元での位置の他方は前記粒子の開始方向の指標となり、
前記偏向装置(31)は、前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回前記粒子ビームを偏向させるための少なくとも第2の偏向器(33A’/33C’、33B’/33D’)をさらに備えることを特徴とする半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項10】
前記第2の偏向器(33A’/33C’、33B’/33D’)は、前記第1の偏向器(33A/33C、33B/33D)の下流に、前記レンズシステム(13)の前記光学軸(15)に沿って前記第1の偏向器から離間して配置される、請求項9に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項11】
前記偏向装置(31)は、前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、前記第1座標方向(x)及びレンズシステム(13)の光学軸(15)と直交する第2座標方向(y)においても少なくとも二回前記粒子ビームを偏向させるように操作可能である、請求項9又は10に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項12】
前記偏向装置(31)は、本質的に四極対称な形態で配置される四つの電極(33A?33D)を備える少なくとも一つの偏向器パッケージ(29)を備え、前記偏向器パッケージ(29)の前記四つの電極(33A?33D)は二つの電極対(33A/33C、33B/33D)を形成し、前記二つの電極対(33A/33C、33B/33D)は前記第1座標方向(x)及び前記第2座標方向(y)のそれぞれの座標方向における偏向器の役割を果たす、請求項11に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項13】
前記電極(33A?33D)のそれぞれに個別の電圧を印加するように構成された制御ユニット(35)をさらに備える、請求項12に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項14】
前記レンズシステムの少なくとも一つのレンズ要素(L1)が前記偏向装置のすべての偏向器(33A/33C、33B/33D、33A’/33C’、33B’/33D’)の上流に位置し、前記レンズシステムの他の少なくとも一つのレンズ要素(L3)が前記偏向装置のすべての偏向器の下流に位置するように、前記偏向装置(31)と前記レンズシステム(13)とが配置される、請求項9?13の何れか一項に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項15】
前記偏向装置(31)のすべての偏向器(33A/33C、33B/33D、33A’/33C’、33B’/33D’)は、レンズ装置(13)の同じレンズ要素(L2)内に配置される、請求項9?14の何れか一項に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項16】
前記偏向装置(31)は、前記レンズシステム(13)の一体部品を形成する、請求項9?15の何れか一項に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項17】
前記粒子ビームを形成する前記粒子の角度分布(39)の所定の部分(A、B)が、前記測定領域(3)の前記入口(8)を通過するように、前記偏向装置(31)が前記粒子ビームを偏向させるように操作可能な制御ユニット(35)をさらに備える、請求項9?16の何れか一項に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項18】
前記制御ユニット(35)は、前記粒子の前記角度分布(39)の前記所定の部分(A、B)が、前記測定領域(3)の前記入口(8)を前記レンズシステム(13)の前記光学軸(15)と実質的に平行な方向に通過するように、前記偏向装置(31)が前記粒子ビームを偏向させるように操作可能である、請求項17に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。」


2 無効理由1(原文新規事項)
請求人の主張する無効理由1は、概略、以下のとおりである。
(1)本件特許発明9?18について
ア 本件外国語書面の請求項9の記載
本件の外国語書面の請求項9には、
「said deflector arrangement(31) further comprising at least a second deflector (33A'/33C', 33B'/33D') for deflecting the particle beam in the same at least first coordinate direction (x,y) at least a second time before entrance of the particle beam into the measurement region (3)」
と記載されている。

イ 仮想翻訳文
上記外国語書面の請求項9の記載の仮想翻訳文は、下記のとおりである。
「前記偏向装置(31)は、前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向をさせるための少なくとも第2の偏向器(33A’/33C’、33B’/33D’)をさらに備える」

ウ 仮想翻訳文との対比
「第2の偏向器」について、本件特許発明9では、「少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回前記粒子ビームを偏向させるための少なくとも第2の偏向器」と記載されるのに対して、上記仮想翻訳文では、「少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向をさせるための少なくとも第2の偏向器」である。

エ まとめ
他に、本件外国語書面の全記載を参照しても、「少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回前記粒子ビームを偏向させるための少なくとも第2の偏向器」は記載されていない。
したがって、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項9の記載は、外国語書面に記載した事項の範囲内ではないから、本件特許発明9は、特許法第123条第1項第5号に該当し、無効とすべきものである。また、本件特許発明9の構成を全て有する本件特許発明10?18についても、同様である。

(2)本件特許発明1?8について
ア 本件外国語書面の請求項1の記載
本件の外国語書面の請求項1には、
「deflecting the particle beam in the same at least first coordinate direction (x,y) at least a second time before entrance of the particle beam into the measurement region」
と記載されている。

イ 仮想翻訳文
上記外国語書面の請求項1の記載の仮想翻訳文は、下記のとおりである。
「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向をさせるステップ」

ウ 仮想翻訳文との対比
本件特許発明1では、「少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回、前記粒子ビームを偏向させるステップ」と記載されるのに対して、上記仮想翻訳文では、「少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向をさせるステップ」である。

エ まとめ
他に、本件外国語書面の全記載を参照しても、「少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回、前記粒子ビームを偏向させるステップ」は記載されていない。
したがって、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項1の記載は、外国語書面に記載した事項の範囲内ではないから、本件特許発明1は、特許法第123条第1項第5号に該当し、無効とすべきものである。また、本件特許発明1の構成を全て有する本件特許発明2?8についても、同様である。

3 無効理由2(サポート要件違反)
請求人の主張する無効理由2は、概略、以下のとおりである。
(1)本件特許発明9?18について
本件特許発明9は、1つの「第2の偏向器」により、少なくとも二回、粒子ビームを偏向させる構成であると解される。
しかし、本件特許明細書等の全記載を参照しても、そのような構成が記載されているとは認められない。
したがって、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項9の記載は、本件特許明細書等の発明の詳細な説明に記載した事項の範囲内ではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許発明9は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。また、本件特許発明9の構成を全て有する本件特許発明10?18についても、同様である。

(2)本件特許発明1?8について
本件特許発明1は、「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、前記レンズシステムの前記光学軸と直交する少なくとも第1座標方向(x、y)において前記粒子ビームを偏向させるステップ」を備えたうえに、さらに、「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回、前記粒子ビームを偏向させるステップ」を備えていることから、単一の「偏向させるステップ」において、少なくとも二回粒子ビームを偏向させる構成を含むものである。
しかし、本件特許明細書等の全記載を参照しても、そのような構成が記載されているとは認められない。
したがって、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項1の記載は、本件特許明細書等の発明の詳細な説明に記載した事項の範囲内ではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許発明1は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。また、本件特許発明1の構成を全て有する本件特許発明2?8についても、同様である。

4 無効理由3(実施可能要件違反)
請求人の主張する無効理由3は、概略、以下のとおりである。
(1)本件特許発明9?18について
本件特許発明9は、1つの「第2の偏向器」により、少なくとも二回、粒子ビームを偏向させる構成であると解される。
しかし、本件特許明細書等の全記載を参照しても、そのような構成自体は、もちろん、該構成を具体化する手段についても、本件特許明細書等に記載されているとは認められない。
したがって、本件特許明細書等の発明の詳細な説明は、本件特許発明9を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許発明9は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。また、本件特許発明9の構成を全て有する本件特許発明10?18についても、同様である。

(2)本件特許発明1?8について
本件特許発明1は、「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、前記レンズシステムの前記光学軸と直交する少なくとも第1座標方向(x、y)において前記粒子ビームを偏向させるステップ」を備えたうえに、さらに、「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回、前記粒子ビームを偏向させるステップ」を備えていることから、単一の「偏向させるステップ」において、少なくとも二回粒子ビームを偏向させる構成を含むものである。
しかし、本件特許明細書等の全記載を参照しても、そのような構成自体は、もちろん、該構成を具体化する手段についても、本件特許明細書等に記載されているとは認められない。
したがって、本件特許明細書等の発明の詳細な説明は、本件特許発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許発明1は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。また、本件特許発明1の構成を全て有する本件特許発明2?8についても、同様である。

5 請求人が審判事件弁駁書で新たに主張する無効理由
請求人が審判事件弁駁書で新たに主張する無効理由(以下「追加無効理由」という。)は、概略、以下のとおりである。
訂正特許発明1及び9について、下記に主張する2つの点において、出願時の技術常識に照らしても、訂正特許発明1及び9の範囲まで、訂正特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
したがって、訂正特許請求の範囲の請求項1及び9の記載は、訂正特許明細書の発明の詳細な説明に記載した事項の範囲内ではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、訂正特許発明1及び9は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。また、訂正特許発明1及び9の構成を全て有する訂正特許発明2?8、10?18についても、同様である。

(1)サポート要件違反についての主張1
訂正明細書の発明の詳細な説明には、粒子ビームを構成する粒子の角度分布の所定の部分が測定領域の入口を通過するための構成として、粒子ビームをx方向及びy方向のそれぞれにおいて少なくとも2回偏向される構成のみが記載されている。
しかし、訂正特許発明1及び9は、1回目及び2回目の偏向において、第2座標方向に対して偏向を行わない構成を含んでいる点において、訂正特許明細書の発明の詳細な説明の記載した事項の範囲内ではない。

(2)サポート要件違反についての主張2
訂正明細書の発明の詳細な説明には、所定の条件を満たす電圧が第1の偏向器及び第2の偏向器に印加される構成のみが記載されている。
しかし、訂正特許発明1及び9は、所定の条件を満たす電圧が第1の偏向器及び第2の偏向器に印加されない構成を含んでいる点において、訂正特許明細書の発明の詳細な説明の記載した事項の範囲内ではない。


第5 被請求人の主張
1 無効理由1について
請求人の主張する無効理由1について、被請求人は、概略、以下のとおり主張している。
(1)訂正特許発明9?16、18について
本件特許発明9の「少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回前記粒子ビームを偏向させるための少なくとも第2の偏向器」は、訂正特許発明9の「少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うための少なくとも第2の偏向器」に訂正されたので、無効理由1は存在しない。
また、訂正特許発明10?16、18についても同様であり、さらに、本件特許発明17は削除したので、無効理由1は存在しない。

(2)訂正特許発明1?5、7、8について
本件特許発明の「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回、前記粒子ビームを偏向させるステップ」は、訂正特許発明1の「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うステップ」に訂正されたので、無効理由1は存在しない。
また、訂正特許発明2?5、7、8についても同様であり、さらに、本件特許発明6は削除したので、無効理由1は存在しない。

2 無効理由2について
請求人の主張する無効理由2について、被請求人は、概略、以下のとおり主張している。
(1)訂正特許発明9?16、18について
本件特許発明9の「少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回前記粒子ビームを偏向させるための少なくとも第2の偏向器」は、訂正特許発明9の「少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うための少なくとも第2の偏向器」に訂正されたので、無効理由1は存在しない。
また、訂正特許発明10?16、18についても同様であり、さらに、本件特許発明17は削除したので、無効理由2は存在しない。

(2)訂正特許発明1?5、7、8について
本件特許発明の「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回、前記粒子ビームを偏向させるステップ」は、訂正特許発明1の「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うステップ」に訂正されたので、無効理由1は存在しない。
また、訂正特許発明2?5、7、8についても同様であり、さらに、本件特許発明6は削除したので、無効理由2は存在しない。

3 無効理由3について
請求人の主張する無効理由3について、被請求人は、概略、以下のとおり主張している。
(1)訂正特許発明9?16、18について
本件特許発明9の「少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回前記粒子ビームを偏向させるための少なくとも第2の偏向器」は、訂正特許発明9の「少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うための少なくとも第2の偏向器」に訂正されたので、無効理由1は存在しない。
また、訂正特許発明10?16、18についても同様であり、さらに、本件特許発明17は削除したので、無効理由3は存在しない。

(2)訂正特許発明1?5、7、8について
本件特許発明の「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回、前記粒子ビームを偏向させるステップ」は、訂正特許発明1の「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うステップ」に訂正されたので、無効理由1は存在しない。
また、訂正特許発明2?5、7、8についても同様であり、さらに、本件特許発明6は削除したので、無効理由3は存在しない。


第6 当審の判断
1 無効理由1について
(1)訂正特許発明9?18について
訂正特許請求の範囲の請求項9では、「少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うための少なくとも第2の偏向器」に訂正され、本件の外国語書面の請求項9の「said deflector arrangement(31) further comprising at least a second deflector (33A'/33C', 33B'/33D') for deflecting the particle beam in the same at least first coordinate direction (x,y) at least a second time before entrance of the particle beam into the measurement region (3)」との記載内容と一致するものとなり、外国語書面に記載した事項の範囲内のものとなった。
したがって、訂正特許請求の範囲の請求項9の記載は、外国語書面に記載した事項の範囲内ではないから、訂正特許発明9は、特許法第123条第1項第5号に該当し、無効とすべきものであるとはいえなくなった。
また、訂正特許発明9の構成を全て有する訂正特許発明10?16、18についても、同様である。
なお、本件特許発明17は削除された。

(2)訂正特許発明1?8について
訂正特許請求の範囲の請求項1では、「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うステップ」に訂正され、本件の外国語書面の請求項1の「deflecting the particle beam in the same at least first coordinate direction (x,y) at least a second time before entrance of the particle beam into the measurement region」との記載内容と一致するものとなり、外国語書面に記載した事項の範囲内のものとなった。
したがって、訂正特許請求の範囲の請求項1の記載は、外国語書面に記載した事項の範囲内ではないから、訂正特許発明1は、特許法第123条第1項第5号に該当し、無効とすべきものであるとはいえなくなった。
また、訂正特許発明1の構成を全て有する訂正特許発明2?5、7、8についても、同様である。
なお、本件特許発明6は削除された。

2 無効理由2について
(1)訂正特許発明9?18について
訂正特許請求の範囲の請求項9では、「少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うための少なくとも第2の偏向器」に訂正され、訂正特許明細書の発明の詳細な説明に記載した事項の範囲内のものとなった。
したがって、訂正特許請求の範囲の請求項9の記載は、訂正特許明細書の発明の詳細な説明に記載した事項の範囲内ではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、訂正特許発明9は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものであるとはいえなくなった。
また、訂正特許発明9の構成を全て有する訂正特許発明10?16、18についても、同様である。
なお、本件特許発明17は削除された。

(2)訂正特許発明1?8について
訂正特許発明1では、「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うステップ」に訂正され、訂正特許明細書の発明の詳細な説明に記載した事項の範囲内のものとなった。
したがって、訂正特許請求の範囲の請求項1の記載は、訂正特許明細書の発明の詳細な説明に記載した事項の範囲内ではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、訂正特許発明1は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものであるとはいえなくなった。
また、訂正特許発明1の構成を全て有する訂正特許発明2?5、7、8についても、同様である。
なお、本件特許発明6は削除された。

3 無効理由3について
(1)訂正特許発明9?18について
訂正特許請求の範囲の請求項9では、「少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うための少なくとも第2の偏向器」に訂正され、訂正特許明細書の発明の詳細な説明は、訂正特許発明9を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとなった。
したがって、訂正特許明細書の発明の詳細な説明は、訂正特許発明9を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、訂正特許発明9は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものであるとはいえなくなった。
また、訂正特許発明9の構成を全て有する訂正特許発明10?16、18についても、同様である。
なお、本件特許発明17は削除された。

(2)訂正特許発明1?8について
訂正特許発明1では、「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うステップ」に訂正され、訂正特許明細書の発明の詳細な説明は、訂正特許発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとなった。
したがって、訂正特許明細書の発明の詳細な説明は、訂正特許発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、訂正特許発明1は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものであるとはいえなくなった。
また、訂正特許発明1の構成を全て有する訂正特許発明10?16、18についても、同様である。
なお、本件特許発明6は削除された。

4 追加無効理由について
追加無効理由については、審理事項通知書で言及し、口頭審理で通知した「補正許否の決定」により追加することが許可されないものとなった。その理由は、以下のとおりである。

(1)主張1について
主張1は、訂正特許請求の範囲の請求項1の、
「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、前記レンズシステムの前記光学軸と直交する少なくとも第1座標方向(x、y)において前記粒子ビームを偏向させるステップ」、
「前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うステップ」、
同請求項9の
「前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、前記レンズシステムの前記光学軸と直交する少なくとも第1座標方向(x、y)において前記粒子ビームを偏向させるための第1の偏向器(33A/33C、33B/33D)」、
「前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うための少なくとも第2の偏向器(33A’/33C’、33B’/33D’)」
という記載についての無効理由の主張であると認めるのが相当である。
しかし、これらの記載は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1及び9に既に存在していた記載であるから、これらの記載についての新たな無効理由の主張が訂正の請求により必要が生じたものであるとは認められない。また、他に、この無効理由を審判請求時の請求書に記載しなかったことに合理的な理由があったとも認められない。

(2)主張2について
主張2は、訂正特許請求の範囲の請求項1の、
「前記粒子ビームを形成する前記粒子の角度分布(39)の所定の部分(A、B)が前記測定領域(3)の前記入口(8)を通過するように、前記粒子ビームの前記偏向を制御するステップ」、
同請求項9の
「前記粒子ビームを形成する前記粒子の角度分布(39)の所定の部分(A、B)が前記測定領域(3)の前記入口(8)を通過するように、前記偏向装置(31)が前記粒子ビームを偏向させるように操作可能な制御ユニット(35)」
という記載についての無効理由の主張であると認めるのが相当である。
しかし、これらの記載は、訂正前の特許請求の範囲の請求項6及び17に既に存在していた記載であるから、これらの記載についての新たな無効理由の主張が訂正の請求により必要が生じたものであるとは認められない。また、他に、この無効理由を審判請求時の請求書に記載しなかったことに合理的な理由があったとも認められない。

(3)追加無効理由についてのまとめ
以上のとおりであるから、追加無効理由は、審判請求書の請求の理由を審判事件弁駁書で新たな内容を追加して補正したものとみなされるところ、この補正は、特許法第131条の2第2項の規定により、許可されるべきものではない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、訂正特許発明1?5、7?16、18についての特許は、いずれも願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にない特許出願に対してなされたものではなく、また、訂正特許発明1?5、7?16、18についての特許は、いずれも同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではなく、また、訂正特許発明1?5、7?16、18についての特許は、いずれも同法第36条第4項第1号の規定に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではないから、訂正特許発明1?5、7?16、18についての特許は、同法第123条第1項第4及び5号に該当せず、請求人の主張する無効理由1?3によっては、無効とすることはできない。
また、特許第5815826号の請求項6、17についての本件審判請求を却下する。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。

よって、結論の通り審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
粒子分光計のための分析装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば粒子放出試料から放出された荷電粒子のエネルギー、開始方向(start direction)及び開始位置(start position)を分析するための方法及び分析装置、並びにそのような分析装置を備える粒子分光計に関する。特に、本発明は、半球状偏向型の光電子分光計において使用するための方法及び分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術による半球状偏向器型の光電子分光計を、図1に示す。半球状偏向器型の光電子分光計1において、中心的な構成要素は測定領域3であり、測定領域3では電子のエネルギーが分析される。測定領域3は、二つの同中心の半球5から形成される。二つの同中心の半球5は、ベース板7の上に載置され、二つの同中心の半球5の間に静電場が印加される。電子は、入口8を通って測定領域3に入射し、ベース板7に対して垂直に近い方向で半球5の間の領域へ入射した電子は、静電場によって偏向させられる。偏向場によって定められる特定の範囲内の運動エネルギーを有するそれらの電子は、半円を通って進んだ後、検出装置9に到達することになる。典型的な装置において、電子は、電子源(典型的には、光子、電子、又はその他の粒子による励起後に電子を放出する試料11)から半球の入口8まで、実質的に一直線である共通の光学軸15を有する複数のレンズL1?L3を備える静電レンズシステム13によって輸送される。
【0003】
以下に述べる説明には、座標系のz軸がレンズシステム13の光学軸15(大抵の場合、回転対称軸である)に沿っているデカルト座標系が用いられることになる。半球は、(y、z)平面に関して対称である。電子の軌道の方向は、(y、z)平面に対する電子の軌道の角度θ_(x)と、(x、z)平面に対する電子の軌道の角度θ_(y)とによって記述される。
【0004】
レンズシステム13及び検出装置9は、レンズ軸15に垂直で、限られた角度範囲内にある限られた領域内に放出された電子のみを受け取ることになる。さらに、電子源は、(感度と分解能の観点から)最良の特性を達成するために、z方向において狭い範囲内に配置されなければならない。このため、すべての座標方向における並進及び回転の両方、即ち6自由度、を可能とするマニピュレーター17の上に試料を載置する必要がある。
【0005】
例えば角度分解光電子分光(Angle Resolved Photoelectron Spectroscopy:ALPES)といった多くの応用例において、完全な測定には、よく位置合わせされた(aligned)試料から30°の円錐型の開口全体の立体角すべての検出を要する。試料及び励起エネルギー/運動エネルギーに応じて、必要となる角度範囲は変わり得る。角度分解能の要請も、用途に伴って変わるが、典型的には1°から0.1°よりも小角までの範囲である。エネルギー分解能においては、望ましい範囲は、用途に応じて0.5eVから0.5meVに至るまでである。高分解能の測定を達成するために、分析装置は十分な角度分解能及びエネルギー分解能を有していなければならないが、半球状の分析装置は、レンズ軸15に垂直な限られた角度範囲内で放出された電子のみを受け取るので、試料マニピュレーター17は非常に高い精度の動作及び繰返し精度を有していなければならない。マニピュレーター17は、試料を精密に回転及び傾斜させ、30°の立体角の完全なデータセットを築き上げることが必要とされる。
【0006】
試料から放出された電子のエネルギー分散は、ΔE=3.5×k_(B)[eV/K]×T[K]で与えられる熱的広がりに依存する。ここで、ΔEはeV単位のエネルギー分散、k_(B)はボルツマン定数、Tはケルビン単位の温度である。従って、望ましいエネルギー分解能を達成するためには、試料11は極低温まで冷却できることが必須である。例えば、1meV未満の広がりを得るには、最高でも3Kの試料温度を要する。
【0007】
半球5は、検出器平面(半球状の分析装置における測定領域3の入口8の平面と一致する)におけるy方向に沿って、電子のエネルギーに対して電子を分散させる。x方向において、検出器平面内の位置は、半球5の入口8の平面内のx座標の直立像(direct image)である。半球5の入口8は、x方向における狭いスリットとして形成され、以下では測定領域の入射スリット、又は単に入射スリットと呼ぶ。電子が狭い入射スリット8を通って半球5に入射することが可能である場合、二次元検出装置9は、エネルギー分散に関する情報と入射スリット8に沿った分布に関する情報とを同時に与えることになる。二次元検出装置9は、典型的には、マルチチャンネルの電子増倍板(multichannel electron-multiplying plate:MCP)19を備える。マルチチャンネルの電子増倍板は、半球5の入射スリット8と同じ平面内に配置され、入ってくる電子の位置において、測定可能な電気信号を発生させる。従って、入ってくる電子の位置は、リンのスクリーン(phosphorous screen)及びビデオカメラ21によって光学的に記録することも、例えばディレイライン又は抵抗性陽極検波器(resistive anode detector)上の電気パルスとして記録することもできる。代わりに、エネルギーが選択された電子のいくつかが、スピン検出器25に繋がっている出口孔部23を通って半球領域を離れた後、特に電子のスピンに関して、さらに分析されてもよい。一種のスピン検出器において、(負の)z方向に近い方向で半球5を出た電子は、第1のレンズシステムと、90°偏向器と、ターゲット上への第2のレンズシステムとからなる配列を通過し、その後散乱電子の分布が測定される。いくつかの装置は、偏向器と共に載置され、互いに対して90°の角度をなす(即ち、一つは(y、z)平面内で曲がり、一つは(x、z)平面に平行である)そのようなスピン検出器を二つ含む。それらの入口孔部は、半球の(y、z)対称平面内に、且つMCP検出器のそれぞれの側上の異なる半径方向(y)の位置(different radial(y)positions)に位置する。
【0008】
半球5の間で与えられた電場のため、パスエネルギー(E_(p))と呼ばれる、ある所定の運動エネルギーの電子は、MCP検出器19の中心に衝突することになり、エネルギー窓と呼ばれる範囲がMCPの感度領域内に入る(fall within)ことになる。エネルギー分散(dy/dE)はE_(p)に反比例し、一方エネルギー窓はE_(p)に正比例する。従って、エネルギー分解能と情報速度(information rate)との間の適切な妥協を達成するためには、通常は放出された電子の運動エネルギーE_(k)を適切なパスエネルギーに合わせて調整することが必要である。このエネルギーの調整は、レンズシステム13によって行われる。レンズシステム13は、光学軸15に沿って配置された同中心の電極(円筒、切頭円錐、開口等)の形態の一連のレンズ要素L1?L3から成る。レンズ要素L1?L3は、それぞれ電圧源に接続されている。エネルギーの調整(加速又は減速)を行う他に、レンズシステム13は、試料を半球5から便利な距離に設置することも可能にし、また、現在の文脈において最も重要なことには、レンズシステム13によって、半球の入射スリット8の平面における電子の分布の制御を行うことができる。加速又は減速は、試料11と半球の入口8との間の電位差によって、直接的に制御され、一方その他のレンズ電圧は電子の分布を制御するために用いられる。レンズシステム13は、それぞれイメージングモード及び角度分解モード(角度モード)と呼ばれる、二つの異なるモードで操作され得る。イメージングモードでは、(一次式まででは(to first order))放出点と入射スリット8の平面内の(x、y)位置との間の点対点の対応が存在し、試料11からの取り出し角(take-off angle)には依存しない。従って、入射スリット8は、入射スリットと同じ形状で、レンズの倍率によって決まる大きさの試料の領域から放出された電子を選別することになる。即ち、通常はy方向において狭い範囲内の領域となる。角度モードでは、レンズ電圧は、その代わりに、レンズ軸に対して同じ角度(θ_(x)、θ_(y))で放出された電子が、図2に示すように、入射スリット8の平面26内の同じ点(x、y)に集束させられるように準備される。図2において、y軸及びz軸は任意単位で、異なるスケールで示されている。ここで、最終位置は、一次式まででは開始位置に依存せず、従って割と臨界的ではない(fairly uncritical)。そうして、入射スリット8に受け入れられた電子は、y方向におけるそれらの取り出し角を狭い範囲内で有し、その範囲は入射スリット幅及び角度分散(dy/dθ_(y))によって定まり、一方、x方向における異なる取り出し角は、入射スリット8に沿って分布する。しかし、角度分散は、レンズシステムの回転対称性(dx/dθ_(x)=dy/dθ_(y))のため、x方向とy方向とで等しい。イメージングモードにおける倍率及び角度モードにおける角度分散の両方は、レンズ電圧を事前に計算された関数に従って調整することにより、随意に選択され、(E_(k)/E_(p))の広い範囲にわたって一定に保たれることが可能である。
【0009】
与えられたパスエネルギーにおける半球5のエネルギー分解能は、入射スリット8の幅と、電子が半球に入射するときの半径方向における電子ビームの角度広がり(即ち、dy/dzの広がり)と、の両方に影響を受ける。入射スリット8のそれぞれの大きさに対して、対応する角度広がりが存在し、対応する角度広がりは強度と分解能との最適な組み合わせを与える。狭い入射スリット、即ち高いエネルギー分解能、に対して、対応する角度広がりは非常に小さく、典型的には1?2°である。この角度広がりは、図3に示すように、入射スリット8を別のスリット27(以下、開口スリットという)と組み合わせることによって定められる。開口スリット27の前には多少の距離がある。入射スリット((x、z)平面)に沿った方向において、分解能の要請からのそのような角度の制限は存在しない。しかし、中央の(y、z)平面に対する、半球の後の出射角度は、この中央の(y、z)平面に対する入射角度(dx/dz)と同じものである(図1における、中央の平面内の軌道及び別の平面内の軌道を参照)から、スピン検出器の入口孔部に到達するように意図された電子の方向は、非常にz方向に近いものである必要がある。
【0010】
放出する試料11の放出点の、レンズシステム13の光学軸15に関する不揃いを補うために、通常x方向において作用する一つの偏向器と、y方向に作用する一つの偏向器とが、レンズシステムに組み込まれる。x偏向器及びy偏向器は、レンズ軸15に沿って互いの後ろに設置されてもよいが、x偏向器及びy偏向器は、四つの電極から成る一つの偏向器パッケージ(deflector package)29の中に組み入れられることの方が多い。x偏向器及びy偏向器はそれぞれ、90°近い方位角をカバーする(図1を参照)。
【0011】
以下、従来技術による粒子分光計のいくつかの問題点が、図1を参照しながら論じられることになる。便宜上、議論は主にレンズシステム13の角度分解操作モード(角度操作モード)に言及することになる。しかし、議論の大部分は、イメージングモードにおけるマッピングにも等しく良く当てはめることができることは理解されるべきである。
【0012】
極低温まで効率的に冷却するための必要条件は、試料11が冷媒と非常に良い熱接触状態にある必要があり、熱輻射から効率的に遮蔽されている必要もあるということを含む。この必要条件は、角度範囲全体をカバーできるように、十分な自由度をもってマニピュレーター17の上に載置することとは相容れない。試料11を機械的に動かすことも、放出領域又は分光計の分析装置に対して可視(visible)領域が変わるという危険性をもたらすため、異なる角度で取得されるスペクトルが、不注意で試料の異なる部分からも取得されてしまう。
【0013】
ある程度は、上述のx偏向器及び/又はy偏向器を用いて、(イメージングモードにおいて)軸から外れて発射した電子や(角度モードにおいて)レンズシステム13の光学軸15に沿わない方向に発射した電子を入射スリット8の中心に導くことにより、試料11を動かすのを避けることは可能である。特開昭58-200144号公報に開示された方法は、このテーマの一つの変形例を提供する。しかし、この技術で入射スリット8の中心に到達する軌道は、一般的な場合、光学軸15に対して角度をなすことになるため、そのようなアプローチの実際の適用可能性は、どれも非常に限られている。従って、(スリットを横切る)y方向における偏向のために、それらの軌道は、角度を定める開口スリット27及び入射スリット8の組み合わせによって妨げられたり、許容できないエネルギー分解能の低下を招いたりすることになる。(スリットに沿った)x方向においては、比較的小さな初期角度範囲内の軌道のみが、スピン検出器システムに許容される角度範囲内に出ていくことになる。入射スリット8に沿った分布全体を利用することが意図されている場合、一般的に、角度のスケールが非常に小さな偏向のためにさえ激しく歪められるというさらなる問題がある。
【0014】
さらに、達成可能な角度分解能は、レンズシステム13の角度分散に依存する。これは、y方向において最も明らかに見られ、y方向において、分解能は角度分散によって分割される入射スリット幅よりも良くはならない。この観点から、大きな分散をもって作動可能であることが望ましいことが多い。一方、観測できるθ_(x)の範囲は、(半球の入射スリットの長さ)/(角度分散)とレンズの前側開口(the lens front aperture)のアクセプタンスとのうち、より小さい方によって制限されている。従って、分散が大きくなるとともに、半球の入射スリットの長さに由来する制限が厳しくなりすぎて、観測できるθ_(x)の範囲はレンズのアクセプタンスよりも遥かに小さくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭58-200144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述の問題のうちの一つ若しくはそれ以上を解決すること、又は少なくとも緩和することが、本発明の目的である。
【0017】
特に、粒子分光測定、例えば光電子分光測定等におけるエネルギー分解能を向上させることが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的及びその他の目的は、粒子放出試料から放出された荷電粒子に関する少なくとも一つのパラメーターを決定する方法によって達成される。その一つのパラメーターは、例えば、荷電粒子のエネルギー、開始方向、開始位置、又はスピンに関する。
その方法は、
前記荷電粒子の粒子ビームを形成し、実質的に一直線の光学軸を有するレンズシステムによって前記粒子放出試料と測定領域の入口との間で粒子を輸送するステップと、
粒子ビームが測定領域に入射する前に、レンズシステムの光学軸と直交する少なくとも第1座標方向に粒子ビームを偏向させるステップと、
前記測定領域内の前記荷電粒子の位置を検出するステップと、を備え、その位置は少なくとも一つの前記パラメーターの指標となる。
【0019】
さらに、その方法は、粒子ビームが測定領域に入射する前に、少なくとも同じ第1座標方向に少なくとも二回目の粒子ビームの偏向を行うステップを備える。
【0020】
粒子放出試料と測定領域の入口との間で粒子ビームを同じ座標方向に二回偏向させることによって、測定領域の入口における粒子ビームの位置及び方向の両方を制御することができる。
【0021】
好適には、粒子ビームの測定領域への入射前に、粒子ビームは、レンズシステムの光学軸と直交する二つの座標方向のそれぞれにおいて、少なくとも二回偏向される。これは、レンズシステムの光学軸に沿ったz軸を有する三次元のデカルト座標系を仮定すると、粒子ビームは、好適にはx方向及びy方向のそれぞれにおいて少なくとも二回、粒子の視点から見ると測定領域の入口の上流側へ(upstream the entrance of the measurement region)偏向されることを意味する。四つの条件(二つの直交した方向における位置及び方向)を満たすために、少なくとも二つの自由度がそれぞれの方向において必要である。
【0022】
その方法によって、粒子ビームを形成する粒子の角度分布の所定の部分が測定領域の入口を通過することが可能となる。好適には、粒子ビームの偏向は制御され、粒子の角度分布の前記所定の部分が、測定領域の入口をレンズシステムの光学軸と実質的に平行な方向に通過する。粒子ビームの角度分布の任意の部分(上記のデカルト座標系のx軸又はy軸に沿った部分だけではない)を分析するために、粒子ビームの偏向は、粒子ビームが測定チャンバーに入射する前に、x軸及びy軸方向のそれぞれにおいて二回行われなければならないことがある。
【0023】
本発明の一実施形態において、第1及び少なくとも第2の方向は制御され、粒子の角度分布の前記所定の部分が、所定の開始方向(θ_(x0)、θ_(y0))で、又は所定の範囲内の開始方向内において試料から放出された粒子のみを含む。
【0024】
その方法によって、レンズシステムの光学軸に平行でない方向に放出された粒子を、測定領域の入口へレンズ軸と実質的に平行な方向に入射させることが可能になるので、試料表面は、表面の法線に対する放出角であってレンズ軸と平行な望ましい放出角を有するように方向付けられなければならないという基準が排除され、基準が排除されたことによって、次に(in turn)、試験試料(test sample)を動かしてこの方向付けを達成する必要性が減じられる。従って、本発明は新しいタイプの粒子ビーム操作を開示する。この新しいタイプの粒子ビーム操作により、ある程度、試験試料の物理的な操作の必要性が除かれる。
【0025】
特に、提唱される粒子ビーム操作によって、試験試料を上記の三次元デカルト座標系のx方向及びy方向に傾斜させ、回転させる必要性が減じられる。
【0026】
マニピュレーターの複雑な可動性の必要性が低減されるため、試験試料に対して直接冷却が行われることを可能にするマニピュレーターを使用することができる。上述のように、このマニピュレーターによって、試験試料のより効率的な冷却が可能になり、より効率的な冷却が可能になることによって、次に、分光分析器によって得られる測定のエネルギー分解能の向上がもたらされる。マニピュレーターの複雑な可動性の必要性が低減されることにより、試験試料は、冷却板に直接取り付けられることが可能になり、試験試料は約2Kまで冷却されることが可能になる。約2Kまでの冷却が可能になると、本発明による分光分析器を用いて、狭いバンド幅の励起源を使用するという条件では、結果として約0.7meVのエネルギー分解能が得られる。
【0027】
角度分解能を維持しながらエネルギー分解能が向上するという利点の他に、上述した方法を行うことが可能な分析装置を備える粒子分光計は、6軸マニピュレーター等の試験試料の複雑な動作を可能にするマニピュレーターを有する分光計よりも低コストで製造することができる。
【0028】
さらに、従来技術による分光計のようなものにおける試験試料の複雑な動作は、試験試料の正確に規定された領域への連続的な照射を困難にし、従って、試験試料の正確に規定された領域を分析することを困難にする。本発明は、試験試料の複雑な動作の必要性を排除するため、試験試料の正確に規定された目標領域への照射及び試験試料の正確に規定された目標領域の分析が容易になる。特に、試料位置は、多くの場合物理的に関連のあるすべての情報が得られるほど十分に大きな立体角内の全方向をカバーする一連の長い測定の間、不変に保たれることが可能である。
【0029】
測定領域において、荷電粒子は静電場によって偏向され、偏向後の粒子の位置は検出装置によって検知される。測定領域、測定領域の入口、及び検出装置の設計に応じて、粒子のエネルギー、開始方向、又は開始位置といった様々な粒子に関連するパラメーターは、検出された位置から決定することができる。好適には、検出は二つの次元での粒子位置の検出を含む。二つの次元での粒子位置の一方は実質的に粒子のエネルギーを表し、他方は測定領域の入射平面内の直線に沿った粒子の空間分布を表す。入射平面内の直線に沿った(典型的には、スリット型の入口の長さ方向)粒子の空間分布から、粒子の開始方向及び開始位置に関する情報が得られるため、二次元検出装置によって、粒子のエネルギーと粒子の開始方向又は開始位置との両方を同時に決定することが可能になる。
【0030】
しかし、測定領域への入口における粒子ビームの位置及び方向の両方を制御する能力のもう一つの結果は、それぞれの座標方向におけるビームの偏向が一回である場合と比べて、より大きな角度範囲が検出可能である点である。さらに、強度並びに(エネルギー及び角度の)分解能を維持しながら、より大きな角度範囲を調べることができる。同じ座標方向における二度の偏向の使用は、測定領域への入口における粒子ビームの位置及び方向の両方を制御し、実質的にレンズの前側開口のアクセプタンス角度によって定まる立体角内の角度範囲を、試料を動かすことなしに調べることを可能にする。これは、単一の偏向器の組では事実上不可能である。
【0031】
本発明はまた、粒子放出試料から放出された荷電粒子に関する少なくとも一つのパラメーターを決定するための分析装置を提供し、分析装置は上述した方法を実行することができる。この目的のために、分析装置は荷電粒子が測定領域に入射することを可能にする入口を有する測定領域と、測定領域内の荷電粒子の位置を検出するための検出装置と、を備え、荷電粒子の位置は上記の少なくとも一つのパラメーターの指標となる。さらに、分析装置は実質的に一直線の光学軸を有するレンズシステムを備え、レンズシステムは試料から放出された荷電粒子の粒子ビームを形成するように操作可能であり、試料と上記の測定領域の入口との間で粒子を輸送する。分析装置は、粒子ビームが測定領域に入射する前に、レンズシステムの光学軸と直交する少なくとも第1座標方向に粒子ビームを偏向させるための第1の偏向器と、粒子ビームが測定領域に入射する前に、少なくとも同じ第1座標方向に少なくとも二回目の粒子ビームの偏向を行うように操作可能な少なくとも第2の偏向器と、を備える偏向装置をさらに含む。
【0032】
好適には、少なくとも第2の偏向器は、第1の偏向器の下流に、レンズシステムの光学軸に沿って第1の偏向器から離間して配置される。上記の議論から理解されるように、第1及び少なくとも第2の偏向器を組み合わせた効果は、ビームのどの部分がどの方向で測定領域に入射するかを制御することである。この制御によって、ビームの選択された部分が、レンズ軸(即ち、レンズシステムの光学軸)の方向に沿って測定領域に入射することができるようになる。
【0033】
偏向装置は、好適には、分析装置のレンズシステム中に一体化される。これは、レンズシステムと偏向装置とが一体部品を形成することを意味する。偏向装置とレンズシステムとの一体化により、分析器の小型設計ができ、分析器の中の別個の部品の数が減じられる。しかしながら、偏向装置はまた、分析器のレンズシステムの上流若しくは下流に配置されることも可能であり、レンズシステムの二つのレンズの間に配置されることも可能であり、又は少なくとも二つの偏向器がレンズシステムに関して異なる位置に配置されることも可能である。
【0034】
以上で議論した理由のため、偏向装置は、好適には、粒子ビームの粒子が測定領域の入口を通過する前に、粒子ビームをレンズシステムの光学軸と直交する座標方向、即ちx方向及びy方向のそれぞれにおいて二回偏向させるように操作可能である。
【0035】
この目的のために、偏向装置は例えば四つの偏向器を備えることが可能であり、四つの偏向器のうち二つは粒子ビームをx方向に偏向させるように操作可能であり、二つは粒子ビームをy方向に偏向させるように操作可能である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、偏向装置は二つの偏向器パッケージ(deflector packages)を備え、それぞれの偏向器パッケージは、粒子ビームをx方向及びy方向の両方において偏向させるように操作可能である。この目的のために、それぞれの偏向器パッケージは二つの電極対を備えることが可能であり、二つの電極対は、電圧がそれぞれの対の電極間に印加されたとき、電場の二つの直交成分を発生させるように操作可能である。それぞれの偏向器パッケージの四つの電極は、好適には本質的に四極対称(quadrupolar symmetry)な形態で配置される。
【0037】
分析装置は、制御された電圧を偏向装置の電極に印加することによって粒子ビームの偏向を制御するための制御ユニットをさらに備える。
【0038】
制御ユニットは、試料から放出された粒子の特定の開始方向を決定するように構成されることが可能である。放出された粒子は、事前に計算された関数に従った偏向電圧を印加することによって、レンズシステムの光学軸に沿って測定領域に入射する。
【0039】
一応用例において、電圧はy方向における一連の開始角度(start angle)θ_(y)が連続的に測定システムによって記録されるような方法で走査されることになる。それぞれのθ_(y)に対して、測定領域の入口のスリット長さによって制限されたx方向における角度θ_(x)の範囲が記録されるため、検出器システムによって定められる窓(window)の中のそれぞれのエネルギーに対する角度分布の二次元マップが得られる。そのような角度走査の間、x方向の偏向は、典型的には一定に保たれることになり、(θ_(x)、θ_(y))内の長方形の領域にわたるマップが得られる。レンズが高い角度分散で操作されると、x方向の異なる偏向を有するそのような多数の走査を組み合わせて、レンズの前側開口のアクセプタンス角度全体にわたる完全なマップを得ることが可能である。検出器のエネルギー窓よりも大きなエネルギー範囲をカバーするために、試料と測定領域との間の加速電圧又は減速電圧を走査することも可能である。この応用例は、例えば角度分解光電子分光(Angle Resolved Photoelectron Spectroscopy:ARPES)に利用できるが、それに限定されない。
【0040】
別の応用例においては、偏向器電圧は、一つの選択された方向(θ_(x0)、θ_(y0))の周りの狭い立体角内で放出された粒子がレンズの光学軸に沿って測定領域に入射することになるように、制御ユニットによってセットされることになり、エネルギー分析の後、この特定の初期方向を有する狭いエネルギー範囲内の粒子は、スピン検出器に入ることが可能となる。
【0041】
両方の場合で、制御ユニットは、レンズの集束特性及び分散特性を維持するため、及び必要な偏向角を与えるために、レンズの電圧及び偏向器電極の電圧を、事前に計算された関数に従って変化させることになる。
【0042】
本発明のさらなる実施形態において、四極対称の電圧が、少なくとも一つの偏向器パッケージにおける偏向器電圧に重畳される。そのような電圧によって、一つの平面内で焦点合わせすること及び直交した平面内で焦点をぼかすこと(defocusing)が可能になり、そのような電圧は角度マップにおける歪みを低減するために印加することができる。
【0043】
以上で簡単に議論したように、分析器の検出装置は、典型的には、測定領域内での荷電粒子のさらなる偏向の後の荷電粒子の位置を検出するように配置される。粒子の偏向の大きさは、粒子の運動エネルギーに依存するため、特定の方向における粒子の検出位置は、粒子のエネルギーの指標となる。また上述したように、検出装置は、好適には、測定領域内の荷電粒子のエネルギーと開始方向又は開始位置との両方を決定するために、測定領域内の荷電粒子の二つの次元での位置を検出することが可能である。この目的のために、検出装置は、例えば、マルチチャンネルの電子増倍板(MCP)を備えることができる。マルチチャンネルの電子増倍板は、入ってくる粒子の位置において、測定可能な電気信号を発生させる。従って、入ってくる粒子の位置は、リンのスクリーン及びビデオカメラによって光学的に記録することも、例えばディレイライン又は抵抗性陽極検波器上の電気パルスとして記録することもできる。
【0044】
分析装置は、好適には、背景技術の部分で記述されたような半球状の光電子分光計といった半球状偏向器型の粒子分光計において使用される。従って、この場合、測定領域は上述の座標系の(y、z)平面に関して対称である二つの同中心の半球を備えることが可能である。半球は、ベース板の上に載置され、二つの半球の間に印加される静電場を有することが可能である。ベース板に対して垂直に近い方向で半球の間の領域へ入射した粒子は、場によって偏向され、偏向場によって定められる特定の範囲内の運動エネルギーを有する電子は、半円を通って進んだ後、検出装置に到達することになる。この実施形態において、測定領域の入口、即ち半球への入口は、典型的にはx方向に沿ったスリットであり、この測定領域の入口によって、二つの次元での検出が可能である検出装置は、エネルギー分布に関する情報と入射スリットに沿った分布に関する情報とを同時に与えることが可能になる。入射スリットに沿った分布に関する情報は、レンズ装置の操作モードに応じて粒子の開始方向及び開始位置のどちらの指標にもなる。
【0045】
本発明の改良された実施形態において、分析装置はスピン検出器を備える。従来技術によるスピン検出器においては、スピン検出器の入口のレンズの軸の周りの狭い角度範囲内でスピン検出器に入射した電子のみが許容される。従来技術による分光計においては、このことは、電子はまた、分光計のレンズ軸の方向に対して平行に試料を飛び出さなければならないことを意味している。しかし、試験試料の代わりに、又は試験試料に加えて提案された電子ビーム操作の原理の別の利点は、レンズシステムのアクセプタンス内のどんな方向において試料から放出された電子であっても、スピン検出器の入口のレンズの方向に沿ってスピン検出器に入射するように運ばれることが可能であるということである。また本発明は、光電子分光計といった、上述したような分析装置を備える粒子分光計を提供する。好ましい実施形態において、粒子分光計は、背景技術の部分において上述されたように、半球状偏向器型の光電子分光計である。
【0046】
本発明は、以下に与えられる詳細な説明及び例示のためだけに与えられるその付随的な図面から、より完全に理解されるようになるであろう。異なる図面において、同一の参照番号は同一の要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来技術による半球状偏向器型の光電子分光計を示す図である。
【図2】図1に示された光電子分光計のレンズシステムを通った粒子の軌道を示す図である。
【図3】開口スリット及び図1に示された光電子分光計の測定領域の入射スリットを示す図である。
【図4】本発明の一つの例示的な実施形態による半球状偏向器型の光電子分光計を示す図である。
【図5A】本発明の一つの例示的な実施形態による分析装置の二つの偏向器パッケージの端面図である。
【図5B】本発明の一つの例示的な実施形態による分析装置の二つの偏向器パッケージの端面図である。
【図6】本発明の例示の実施形態による分析装置の一部を示す図である。
【図7】偏向器電圧が図5A及び図5Bに示された偏向器パッケージの電極に印加されることが可能である例示的な方法を示す図である。
【図8A】偏向器電位が印加されていない場合の、本発明による分析装置のレンズシステムを通った粒子の軌道を示す図である。
【図8B】偏向器電位が印加されている場合の、本発明による分析装置のレンズシステムを通った粒子の軌道を示す図である。
【図9】放出された粒子の角度分布の選択された部分が、本発明の原理に従ってどのように偏向されることができるかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図4は、本発明の例示的な実施形態による粒子分光計30を図解している。以下に説明される差異の他には、粒子分光計30の構成要素及び機能性は、背景技術の部分で図1?3を参照して記述された従来技術による半球状偏向器型の光電子分光計1の構成要素及び機能性と同一である。図4に示された構成要素で図1?3に示された構成要素に対応するものには、同じ参照番号が与えられており、そのさらなる説明は省略する。
【0049】
従って、粒子分光計30は、粒子放出試料11から放出された荷電粒子のエネルギーと開始方向又は開始位置との分析のために適合される分析装置を備えた半球状偏向器型の光電子分光計である。
【0050】
図4に見られるように、分析装置は、第1の偏向器パッケージ29と第2の偏向器パッケージ29’とを備える偏向装置31を含む。第1の偏向器パッケージ29及び第2の偏向器パッケージ29’のそれぞれは、背景技術の部分に記述された図1の単一の偏向器パッケージ29の通りに考案され、設計される。
【0051】
第1の偏向器パッケージ29及び第2の偏向器パッケージ29’の端面図をそれぞれ図解する図5A及び図5Bを同時に参照すると、これは第1及び第2の偏向器パッケージのそれぞれが四つの電極33A?33D及び33A’?33D’を備え、電極のそれぞれが90°に近い方位角をカバーしていることを意味する。それぞれの偏向器パッケージにおいて二つの対向して配置された電極は、電極対33A/33C、33B/33D、33A’/33C’、33B’/33D’を形成する。これらの電極対は、偏向器電圧V_(x)、V_(y)の印加によって電極間に電場を発生させるように操作可能であるため、一つの座標方向において偏向器パッケージの電極間を通過する荷電粒子を偏向させるように操作可能である。従って、そのような電極対のそれぞれは、一つの座標方向において荷電粒子を偏向させるための偏向器を形成する。
【0052】
座標系のz軸がレンズシステム13の光学軸15に沿っており、半球5が(y、z)平面に関して対称である三次元のデカルト座標系を仮定すると、それぞれの偏向器パッケージ29、29’の一方の電極対33A/33C、33A’/33C’は、x方向に荷電粒子を偏向させるように配置され、それぞれの偏向器パッケージ29、29’の他方の電極対33B/33D、33B’/33D’は、y方向に荷電粒子を偏向させるように配置される。x方向に荷電粒子を偏向させるように配置された電極対は、以下では時としてx偏向器と呼ばれることになり、y方向に荷電粒子を偏向させるように配置された電極対は、以下では時としてy偏向器と呼ばれることになる。
【0053】
図6は分析装置の一部のより詳細な図を示しており、図6に図解されるように、偏向器パッケージ29、29’の電極33A?33D、33A’?33D’に印加される偏向器電圧は、制御ユニット35によって制御される。同じ制御ユニット35が、レンズシステム13のレンズL1?L3を構成する複数の同中心の電極に印加されるレンズ電圧を制御するように構成されることも可能である。
【0054】
偏向装置31のそれぞれの電極対33A/33C、33B/33D、33A’/33C’、33B’/33D’の間に印加される偏向器電圧V_(x)、V_(y)の符号及び絶対値は、制御ユニット35によって独立に制御される。図5A及び図5Bに図解されるように、第1の偏向器パッケージ29におけるx偏向器33A/33Cの偏向器電圧はV_(x1)と表され、第2の偏向器パッケージ29’におけるx偏向器33A’/33C’の偏向器電圧はV_(x2)と表される。同様に、第1及び第2の偏向器パッケージにおけるy偏向器33B/33D、33B’/33D’の偏向器電圧はそれぞれV_(y1)、V_(y2)と表される。
【0055】
このように、それぞれの偏向器パッケージ29、29’における偏向器電極33A?33D、33A’?33D’は、対向する電極33A/33C、33A’/33C’の一つの対の間に印加される電圧ΔV_(x)がx方向にのみ偏向をもたらし、直交する対33B/33D、33B’/33D’の間に印加される電圧ΔV_(y)がy方向にのみ偏向をもたらすように配置される。従って、必要な偏向(Δx’、Δy’)はどんなものでも、x方向及びy方向における偏向のための電圧の組み合わせを印加することによって達成することができる。そのため、偏向器電極に印加される電圧の適切な組み合わせにより、レンズシステム13に入る荷電粒子の入射角がどのような組み合わせであっても、偏向器領域からの出射方向、即ち荷電粒子が偏向装置31の最後の偏向器を通過した時の荷電粒子の方向がレンズ軸15に対して平行であることと、荷電粒子の偏向器領域からの出射がレンズ軸15に沿って起こることとを同時に達成することが可能である。これは、この特定の方向への軌道が、偏向装置31の後に(即ち、粒子の視点から見て偏向装置の下流に)位置するレンズシステム13の部分によって実質的に不変であることを意味する。
【0056】
図7に図解されるように、四極対称の電圧V_(q)が、偏向器パッケージの電極に印加される偏向器電圧V_(x)、V_(y)に重畳されることが可能である。図7は第1の偏向器パッケージ29のみを示しているが、四極対称の電圧V_(q)が、第1の偏向器パッケージ29及び第2の偏向器パッケージ29’の何れか、又は両方における偏向器電圧に重畳されることが可能であることは理解されるべきである。これらの重畳される電圧V_(q)はまた、一つの平面内で焦点合わせすること及び直交した平面内で焦点をぼかすことを達成するように、制御ユニット35によって制御され、それによって角度マップにおける歪みを低減する。
【0057】
図8A及び図8Bは、レンズシステム13の角度操作モード中に第1及び第2の偏向器パッケージ29、29’に偏向器電位ΔV_(x)、ΔV_(y)が印加されていない場合及び印加されている場合の、粒子放出試料11(例示された座標系において、z=0に位置しており、y=0を中心に小さな幅を有している)からの荷電粒子の異なる開始方向に対する、レンズシステム13を通ったいくつかの軌道の(y、z)平面における射影を示す図である。図の縦軸は、以前に議論した三次元座標系のy座標を示し、横軸は同じ座標系のz方向における試料からの距離、即ちレンズシステム13の光学軸15に沿った試料からの距離を示す。軸は任意単位で、異なるスケールで描かれている。実線で示された軌道は、レンズシステムの光学軸15に関して取り出し角0°で試料11から放出された粒子の軌道であり、一方破線及び一点鎖線で示された軌道は、それぞれ取り出し角4°及び8°の対応する軌道である。
【0058】
図8Aは、偏向器パッケージ29、29’に偏向器電位が印加されていない場合の、レンズシステム13が角度モードにおいて操作されるときの軌道を図示する。レンズ軸15上に放出された粒子は、異なるレンズL1?L3(図4?6を参照)の影響下にあるレンズシステムによって、入射スリット8の平面26の中心へ導かれることになる。レンズ軸に対してその他の角度(θ_(x)、θ_(y))で放出された粒子は、入射スリット平面26上のその他の定められた位置に集束されることになる。
【0059】
図8Bは、偏向器電位V_(x)、V_(y)が印加されている場合の、レンズシステム13が角度モードにおいて操作されるときの軌道を図示する。この例示的な実施形態において、偏向器パッケージ29、29’の電極33A?33D、33A’?33D’に印加された偏向器電圧は、粒子の角度分布の一部、即ちレンズ軸15に対して取り出し角8°で放出された粒子を含む部分が、入射スリット8の平面の中心へ導かれるように制御され、粒子はレンズ軸15の方向において測定領域3に入射する。レンズ軸に対してその他の角度(θ_(x)、θ_(y))で放出された粒子は、入射スリット平面上のその他の定められた位置に集束されることになる。
【0060】
この例示的な実施形態において、選択された軌道が徐々にレンズ軸15へ近付くように、第1の偏向器パッケージ29は、粒子の軌道を「下方へ」曲げ、一方第2の偏向器パッケージ29’は、逆の方向に曲げる。その他の方向で開始した軌道は、偏向させなかった場合と実質的に同じ分散を保ちながら、すべて実質的に同じ量だけずれた位置でレンズシステムを出ることになる。
【0061】
図9A?9Cも、放出された粒子の角度分布の選択された部分A、Bが、たとえ試料11からの取り出し角θ_(x)、θ_(y)がどんなものであっても、本明細書に記載された発明の構想を用いて、選択された部分がレンズ装置の光学軸15に対して実質的に平行な方向において測定領域3の入口8に入射するように偏向されることができる方法を図解する。図9A及び図9Bは、粒子ビームの角度分布を図解しており、粒子ビームは参照番号39によって表される。また、図9Cは粒子ビームの偏向の後に半球の入射平面26上に描かれるこれらの角度分布を示す。
【0062】
図9A及び図9Cは、粒子ビームの角度分布の部分Aの望ましい偏向をともに図解し、図9B及び図9Cは、粒子ビームの角度分布の部分Bの望ましい偏向をともに図解する。部分A及び部分Bは、測定領域3において例えば粒子のエネルギー、開始方向、開始位置、又はスピンに関して分析するために選択された粒子を含んでいる。図8Bに図示された例に従って、単一の座標方向(y方向)における二つの偏向は、図9A中の縦破線によって限定されたストリップ(strip)内の角度分布の任意の選択された部分Aをレンズ軸15と実質的に平行な方向において測定領域に入射させるのに十分なものである。一方、レンズ軸15に直交する二つの座標方向(即ち、x方向及びy方向)のそれぞれにおける二つの偏向が、図9B中の縦破線によって限定されたストリップ内の角度分布の任意の選択された部分Bをレンズ軸と実質的に平行な方向において測定領域に入射させるためには必要である。図9B中の縦破線の間の角度分布の任意の選択された部分は、その部分の中心を(θ_(x)、θ_(y))として、固定された開始方向θ_(x)≠0の軌道がx=0及びdx/dz=0で出ていくように電圧V_(x)を設定し、連続した方向θ_(y)がy=0及びdy/dz=0で出ていくように電圧V_(y)を変化させれば、測定領域に入射させることが可能である。
【0063】
再度図6を参照すると、第1の偏向器パッケージ29及び第2の偏向器パッケージ29’は、荷電粒子が粒子放出試料11と測定領域3の入口8との間の道筋の上にある偏向子パッケージの電極対33A/33C、33B/33D、33A’/33C’、33B’/33D’の間を通過するように、レンズシステム13の光学軸15の周りに同心円状に配置され、いくらかの距離だけ離隔される。別の用途には個々のレンズ要素L1、L2、L3の異なる組み合わせが必要になる可能性があるので、別の用途のために、レンズ装置13中のレンズ要素の数及び/又はレンズ装置13全体(一体化した偏向装置31を含む)の長さは、実質的に変更が可能である。好適には、偏向装置31の偏向器は何れも、レンズ要素L2内に配置されるが、上記のレンズ要素L2の端からおよそ一つのレンズ要素の半径よりもレンズ要素L2の端の近くに位置するべきではない。さらに、第1の偏向器パッケージ29及び第2の偏向器パッケージ29’の間の距離は、好適には、最小でもレンズ要素L2の半径であるべきであり、偏向器パッケージはレンズ要素L2内に配置される。従って、第1の偏向器パッケージ29及び第2の偏向器パッケージ29’があるレンズ要素の半径を有する同じレンズ要素L2内に配置される場合、第1の偏向器パッケージ29は、好適には、レンズ要素L2の始端から最小でも一つのレンズ要素の半径だけ離間して位置し、第2の偏向器パッケージ29’は、好適には、第1の偏向器パッケージ29とレンズ要素L2の終端との両方から最小でも一つのレンズ要素の半径だけ離間して位置する。これは、荷電粒子が次の偏向器に入る前にその方向を変化させるための時間を荷電粒子に与えるためだけでなく、第1及び第2の偏向器パッケージの間で静電電位がクロストークするのを避けるためでもある。
【0064】
さらに、偏向装置31の偏向器33A/33C、33B/33D、33A’/33C’、33B’/33D’は、好適には、偏向器電極及び電極間の隔たりを含む領域には偏向器電極自身によって発生したもの以外の電場が実質的に存在しないように、レンズ装置13のレンズ要素L1?L3に関して配置される。この目的のために、図5A及び図5Bに図解されるように、偏向器電極33A?33D、33A’?33D’は、好適には、円筒形のチューブ41、41’の中に配置され、偏向器電極33A?33D、33A’?33D’の電位は円筒形のチューブ41、41’の電位を参照させられる(with their electrical potentials referred to the potential of this tube)。従って、偏向装置31が二つの偏向器パッケージ29、29’を備え、偏向器パッケージ29、29’のそれぞれが四つの電極33A?33D、33A’?33D’を備える好ましい実施形態において、それぞれの偏向器パッケージの電極は、実質的に円筒形状の偏向器パッケージを形成するように、四重の回転対称性を有する円筒形の領域を形成し、円筒形の偏向器パッケージは外側の円筒形のチューブ41、41’の中に配置される。
【0065】
図面に示された例示的な実施形態においてはレンズシステム13に一体化しているが、偏向装置31の偏向器33A/33C、33B/33D、33A’/33C’、33B’/33D’がレンズシステム13及びレンズシステム13の個々のレンズ要素L1?L3との関連において別の様態で配置されることも可能であるということは理解されるべきである。例えば、偏向装置31及び偏向装置31のすべての偏向器は、試料11とレンズシステム13の始端との間の「上流の位置」に配置されることも、又はレンズシステム13の出口と半球5の入射スリット8との間の「下流の位置」に配置されることも可能である。そのような配置が偏向動作とレンズ動作とをさらに分離する限りは、そのような配置はいくつかの状況において有利である可能性がある。例えば、全体として一度に一つの単一方向の観測専用となっているシステム(例えば、スピン検出専用システム)のために、偏向装置31の上流の位置は一体化された解決手法よりも広い角度範囲を可能にする。しかし、試料11とレンズ装置13との間の距離が増加すると、通常の用途のためのアクセプタンス角度の好ましくない減少をもたらすことになる。偏向装置31の下流の位置では、最後のアクティブレンズ要素L3と測定領域3の入射スリット8との間の距離が増加すると、分散及びエネルギー範囲の柔軟性を減少させることになる。
【0066】
従って、本発明の好ましい実施形態において、偏向装置31の偏向器33A/33C、33B/33D、33A’/33C’、33B’/33D’は、少なくとも一つのレンズが粒子ビームの第1の偏向の前に粒子ビームに作用し、少なくとも一つのレンズが粒子ビームの最後の偏向の後に粒子ビームに作用するように、レンズ装置13の個々のレンズ要素L1?L3に関して配置される。また、偏向装置31のすべての偏向器は、好適には、レンズシステム13の同じレンズ要素L2内に配置される。これは、偏向装置のすべての偏向器が同じ電位に囲まれることを意味する。これは、粒子ビームの角度分布の所望の部分がレンズ軸15と平行に測定領域3の入口8を通過するようにするために必要な偏向器電圧及びレンズ電圧の制御を容易にするという点で有利である。
【0067】
以上で議論したように、好ましい設計において、偏向器電極は四重の回転対称性を有する二つの偏向器パッケージ29、29’の中に詰められた円筒形の部分のような形状であり、二つの偏向器パッケージは断面及び長さの両方において同一である。しかし、これらの特徴は何れも分析装置の操作のために不可欠なものではないことは理解されるべきである、平板状又はその他の形状の電極が考えられ、例えば角度のパターンの歪みを低減するという利点を有し得る。少なくとも一つのパッケージ中に8個(又は4n個)の電極を有する構成も可能である。(x、z)及び(y、z)平面に関する鏡映対称性は、実用上の観点から非常に望ましいが、厳密に必要というわけではない。
【0068】
本発明は以上に記述された実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内の様々なものであり得る。
【符号の説明】
【0069】
1 光電子分光計
3 測定領域
5 半球
7 ベース板
8 入射スリット
9 検出装置
11 粒子放出試料
13 レンズシステム
15 光学軸
17 マニピュレーター
19 MCP検出器
21 ビデオカメラ
23 出口孔部
25 スピン検出器
26 入射スリット平面
27 開口スリット
29 第1の偏向器パッケージ
29’ 第2の偏向器パッケージ
30 粒子分光計
31 偏向装置
33A?33D、33A’?33D’ 偏向器電極
35 制御ユニット
39 粒子ビーム
41、41’ チューブ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子放出試料(11)から放出された荷電粒子に関する少なくとも一つのパラメーターを決定するための方法であって、
前記荷電粒子の粒子ビームを形成し、実質的に一直線の光学軸(15)を有するレンズシステム(13)によって前記粒子放出試料(11)と測定領域(3)の入口(8)との間で粒子を輸送するステップと、
前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、前記レンズシステムの前記光学軸と直交する少なくとも第1座標方向(x、y)において前記粒子ビームを偏向させるステップと、
前記測定領域における前記荷電粒子の位置を検出するステップと、を備え、前記位置は、少なくとも一つの前記パラメーターの指標となり、
前記荷電粒子の前記位置を検出する前記ステップは、二つの次元での位置の検出を含み、前記二つの次元での位置の一方は前記粒子のエネルギーの指標となり、前記二つの次元での位置の他方は前記粒子の開始方向の指標となり、
前記粒子ビームが前記測定領域に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うステップと、
前記粒子ビームを形成する前記粒子の角度分布(39)の所定の部分(A、B)が前記測定領域(3)の前記入口(8)を通過するように、前記粒子ビームの前記偏向を制御するステップと、
をさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記粒子ビームの一回目の偏向は、第1の偏向器(33A/33C、33B/33D)によって実現され、前記粒子ビームの少なくとも二回目の偏向は、少なくとも第2の偏向器(33A’/33C’、33B’/33D’)によって実現され、前記第2の偏向器は、前記第1の偏向器の下流に前記レンズシステム(13)の前記光学軸(15)に沿って前記第1の偏向器から離間して配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子ビームは、前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、前記第1座標方向(x)及び前記レンズシステム(13)の前記光学軸(15)と直交する第2座標方向(y)においても少なくとも二回偏向される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子ビームの偏向はすべてレンズシステム(13)内で起こり、少なくとも一つのレンズ(L1)が前記粒子ビームの前記一回目の偏向の前に前記粒子に作用し、少なくとも一つのレンズ(L3)が前記粒子ビームの最後の偏向の後に前記粒子に作用する、請求項1?3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記粒子ビームの少なくとも一つの偏向は、偏向器パッケージ(29)によって実現され、前記偏向器パッケージ(29)は本質的に四極対称な形態で配置される四つの電極(33A?33D)を備え、前記四つの電極(33A?33D)は二つの電極対(33A/33C、33B/33D)を形成し、前記二つの電極対(33A/33C、33B/33D)はそれぞれの座標方向(x、y)における偏向器の役割を果たし、
前記偏向器パッケージ(29)の前記二つの電極対の一方(33A/33C)の間に第1の偏向器電圧(V_(x))を印加するステップと、
前記偏向器パッケージ(29)の前記二つの電極対の他方(33B/33D)の間に第2の偏向器電圧(V_(y))を印加するステップと、
前記偏向器パッケージ(29)の前記電極(33A?33D)に四極対称の電圧(±V_(q))を印加し、前記偏向器電圧(V_(x)、V_(y))に重畳させるステップと、をさらに備える、請求項1?4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
前記粒子の前記角度分布の前記所定の部分(A、B)が、前記測定領域(3)の前記入口(8)を前記レンズシステム(13)の前記光学軸(15)と実質的に平行な方向に通過するように、前記粒子ビームの前記偏向を制御するステップをさらに備える、請求項1?5の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つのパラメーターは、
前記荷電粒子のエネルギー、
前記荷電粒子の開始方向、
前記荷電粒子の開始位置、及び
前記荷電粒子のスピン、
のうち少なくとも一つに関する、請求項1?5及び7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
粒子放出試料(11)から放出された荷電粒子に関する少なくとも一つのパラメーターを決定することにより前記粒子放出試料(11)を分析するための半球状偏向器型の光電子分光計であって、
測定領域(3)であって、前記粒子が前記測定領域に入射することを可能にする入口(8)を有する測定領域(3)と、
前記荷電粒子の粒子ビームを形成し、前記粒子放出試料と前記測定領域の前記入口との間で前記粒子を輸送するためのレンズシステム(13)であって、実質的に一直線の光学軸(15)を有するレンズシステム(13)と、
前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、前記レンズシステムの前記光学軸と直交する少なくとも第1座標方向(x、y)において前記粒子ビームを偏向させるための第1の偏向器(33A/33C、33B/33D)を備える偏向装置(31)と、
前記測定領域における前記荷電粒子の位置を検出するための検出装置(9)と、を備え、前記位置は前記少なくとも一つのパラメーターの指標となり、
前記検出装置(9)は、二つの次元での前記荷電粒子の位置を決定するように構成され、前記二つの次元での位置の一方は前記粒子のエネルギーの指標となり、前記二つの次元での位置の他方は前記粒子の開始方向の指標となり、
前記偏向装置(31)は、前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、少なくとも同じ前記第1座標方向(x、y)において少なくとも二回目の前記粒子ビームの偏向を行うための少なくとも第2の偏向器(33A’/33C’、33B’/33D’)をさらに備え、
前記光電子分光計は、前記粒子ビームを形成する前記粒子の角度分布(39)の所定の部分(A、B)が前記測定領域(3)の前記入口(8)を通過するように、前記偏向装置(31)が前記粒子ビームを偏向させるように操作可能な制御ユニット(35)をさらに備えることを特徴とする半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項10】
前記第2の偏向器(33A’/33C’、33B’/33D’)は、前記第1の偏向器(33A/33C、33B/33D)の下流に、前記レンズシステム(13)の前記光学軸(15)に沿って前記第1の偏向器から離間して配置される、請求項9に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項11】
前記偏向装置(31)は、前記粒子ビームが前記測定領域(3)に入射する前に、前記第1座標方向(x)及びレンズシステム(13)の光学軸(15)と直交する第2座標方向(y)においても少なくとも二回前記粒子ビームを偏向させるように操作可能である、請求項9又は10に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項12】
前記偏向装置(31)は、本質的に四極対称な形態で配置される四つの電極(33A?33D)を備える少なくとも一つの偏向器パッケージ(29)を備え、前記偏向器パッケージ(29)の前記四つの電極(33A?33D)は二つの電極対(33A/33C、33B/33D)を形成し、前記二つの電極対(33A/33C、33B/33D)は前記第1座標方向(x)及び前記第2座標方向(y)のそれぞれの座標方向における偏向器の役割を果たす、請求項11に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項13】
前記電極(33A?33D)のそれぞれに個別の電圧を印加するように構成された制御ユニット(35)をさらに備える、請求項12に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項14】
前記レンズシステムの少なくとも一つのレンズ要素(L1)が前記偏向装置のすべての偏向器(33A/33C、33B/33D、33A’/33C’、33B’/33D’)の上流に位置し、前記レンズシステムの他の少なくとも一つのレンズ要素(L3)が前記偏向装置のすべての偏向器の下流に位置するように、前記偏向装置(31)と前記レンズシステム(13)とが配置される、請求項9?13の何れか一項に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項15】
前記偏向装置(31)のすべての偏向器(33A/33C、33B/33D、33A’/33C’、33B’/33D’)は、レンズ装置(13)の同じレンズ要素(L2)内に配置される、請求項9?14の何れか一項に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項16】
前記偏向装置(31)は、前記レンズシステム(13)の一体部品を形成する、請求項9?15の何れか一項に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
【請求項17】(削除)
【請求項18】
前記制御ユニット(35)は、前記粒子の前記角度分布(39)の前記所定の部分(A、B)が、前記測定領域(3)の前記入口(8)を前記レンズシステム(13)の前記光学軸(15)と実質的に平行な方向に通過するように、前記偏向装置(31)が前記粒子ビームを偏向させるように操作可能である、請求項9?16の何れか一項に記載の半球状偏向器型の光電子分光計。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-02-03 
結審通知日 2017-02-07 
審決日 2017-02-20 
出願番号 特願2014-206185(P2014-206185)
審決分類 P 1 113・ 854- YAA (G01N)
P 1 113・ 536- YAA (G01N)
P 1 113・ 54- YAA (G01N)
P 1 113・ 537- YAA (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 都志行  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 森 竜介
伊藤 昌哉
登録日 2015-10-02 
登録番号 特許第5815826号(P5815826)
発明の名称 粒子分光計のための分析装置  
代理人 崔 允辰  
代理人 大河内 みなみ  
代理人 寺本 光生  
代理人 田中 研二  
代理人 松村 啓  
代理人 寺本 光生  
代理人 佐々木 眞人  
代理人 村山 靖彦  
代理人 深見 久郎  
代理人 阿部 達彦  
代理人 松村 啓  
代理人 村山 靖彦  
代理人 木原 美武  
代理人 阿部 達彦  
代理人 十河 陽介  
代理人 崔 允辰  
代理人 十河 誠治  
代理人 堀井 豊  
代理人 田中 研二  
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