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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1331646 |
審判番号 | 不服2016-17745 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-28 |
確定日 | 2017-08-17 |
事件の表示 | 特願2014-178387「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月25日出願公開、特開2014-240016〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件出願は、平成24年12月21日に出願した特願2012-280100号の一部を平成26年9月2日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。 平成26年11月10日:手続補正書 平成27年10月16日:拒絶理由通知 平成27年12月21日:手続補正書・意見書 平成28年 4月 7日:最後の拒絶理由通知 平成28年 6月 8日:手続補正書・意見書 平成28年 8月25日:同年6月8日付け手続補正書でした補正の却下の決定 平成28年 8月25日:拒絶査定 平成28年11月28日:審判請求書(拒絶査定不服の審判の請求) 平成28年11月28日:手続補正書 第2.平成28年11月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成28年11月28日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正について 本件補正は、特許請求の範囲の補正を含んでおり、本件補正により、平成27年12月21日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項1における 「発射された遊技球が流下する遊技領域を形成する遊技盤と、 前記遊技領域に設けられ、前記遊技領域を流下する遊技球が入賞する第1始動入賞口と、 前記遊技領域に設けられ、前記遊技領域を流下する遊技球が入賞する第2始動入賞口と、 前記遊技領域に設けられ、前記遊技領域を流下する遊技球を受け入れて進行方向を複数の異なる方向に振り分ける振分部を有する球振り分け装置と、 前記振分部の両側の一方に設けられ、前記振分部により振り分けられた遊技球を前記第1始動入賞口に誘導する第1誘導路と、 前記振分部の両側の他方に設けられ、前記振分部により振り分けられた遊技球を前記第2始動入賞口に誘導する第2誘導路と、 前記第1誘導路で誘導される遊技球が通過する第1通過経路と、 前記第2誘導路で誘導される遊技球が通過する第2通過経路と、 前記第1通過経路に設けられ、前記第1誘導路側に振り分けられた遊技球が前記遊技領域に誘導可能に構成された第1通過可能領域と、 前記第2通過経路に設けられ、前記第2誘導路側に振り分けられた遊技球が前記遊技領域に誘導可能に構成された第2通過可能領域と を備え、 前記第1通過経路は、前記第1始動入賞口の上方かつ前記球振り分け装置の下方に設けられ、 前記第2通過経路は、前記第2始動入賞口の上方かつ前記球振り分け装置の下方に設けられ、 前記第1通過可能領域は、前記第1誘導路側に振り分けられた遊技球が、前記第1始動入賞口に入賞するよりも前記遊技領域に再び誘導され難いように構成され、 前記第2通過可能領域は、前記第2誘導路側に振り分けられた遊技球が、前記第2始動入賞口に入賞するよりも前記遊技領域に再び誘導され難いように構成されていること を特徴とする遊技機。」 は、審判請求時に提出された手続補正書(平成28年11月28日付け)における 「A 発射された遊技球が流下する遊技領域を形成する遊技盤と、 前記遊技領域に設けられ、前記遊技領域を流下する遊技球が入賞する第1始動入賞口と、 前記遊技領域に設けられ、前記遊技領域を流下する遊技球が入賞する第2始動入賞口と、 前記遊技領域に設けられ、前記遊技領域を流下する遊技球を受け入れて進行方向を複数の異なる方向に振り分ける振分部を有する球振り分け装置と、 B 前記振分部の両側の一方に設けられ、前記振分部により振り分けられた遊技球を前記第1始動入賞口に誘導する第1誘導路と、 C 前記振分部の両側の他方に設けられ、前記振分部により振り分けられた遊技球を前記第2始動入賞口に誘導する第2誘導路と、 D 前記第1誘導路で誘導される遊技球が通過する第1通過経路と、 E 前記第2誘導路で誘導される遊技球が通過する第2通過経路と、 F 前記第1通過経路に設けられ、前記第1誘導路側に振り分けられた遊技球が前記遊技領域に誘導可能に構成された第1通過可能領域と、 G 前記第2通過経路に設けられ、前記第2誘導路側に振り分けられた遊技球が前記遊技領域に誘導可能に構成された第2通過可能領域と を備え、 H 前記第1通過経路は、前記第1始動入賞口の上方かつ前記球振り分け装置の下方に設けられ、 I 前記第2通過経路は、前記第2始動入賞口の上方かつ前記球振り分け装置の下方に設けられ、 J-1 前記第1通過可能領域は、前記第1誘導路側に振り分けられた遊技球が前記第1始動入賞口に入賞するよりも前記遊技領域に再び誘導され難いように、 J-2 前記遊技盤の前面側で J-3 複数方向から該遊技球を押さえるように構成され、 K-1 前記第2通過可能領域は、前記第2誘導路側に振り分けられた遊技球が前記第2始動入賞口に入賞するよりも前記遊技領域に再び誘導され難いように、 K-2 前記遊技盤の前面側で K-3 複数方向から該遊技球を押さえるように構成されていることを特徴とする遊技機。」 に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。また、「A」?「K-3」は、当審にて分説して付与した。)。 2.補正の目的 上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1通過可能領域」及び「第2通過可能領域」に関して、「第1(2)誘導路側に振り分けられた遊技球が前記第1始動入賞口に入賞するよりも前記遊技領域に再び誘導され難いように」という機能を実現するための構成を「遊技盤の前面側で複数方向から該遊技球を押さえるように」なる構成に限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。 3.発明の解釈 上記構成F・Gの「第1通過可能領域」・「第2通過可能領域」は、該各構成においてそれぞれ上記構成D・Eの「第1通過経路」・「第2通過経路」に「設けられ」る要素として特定されている。つまり、「第1通過可能領域」・「第2通過可能領域」はそれぞれ、「第1通過経路」・「第2通過経路」なる遊技球が通過する経路における一領域である。 また、該各「領域」では、構成F・Gにおいて「遊技球が前記遊技領域に誘導可能」であると特定される一方、構成F・G・J-1?3・K-1?3において、 (a)「遊技球が前記遊技領域に誘導可能」な領域であること(F・G) (b)「遊技盤の前面側」に位置する部分があること(J-2・K-2)、 (c)該「遊技盤の前面側」に位置する部分において「複数方向から該遊技球を押さえるように構成され」ていること(J-3・K-3)、 (d)(b)(c)の構成が「第1(第2)誘導路側に振り分けられた遊技球が前記第1(第2)始動入賞口に入賞するよりも前記遊技領域に再び誘導され難い」という作用を生じるようになされていること(J-1・K-1) が特定されている。 以上から、「第1通過可能領域」・「第2通過可能領域」は、それぞれ構成D・Eの「第1通過経路」・「第2通過経路」の一部分領域であって、「遊技盤の前面側」に位置する部分を有し、該部分では「複数方向から該遊技球を押さえるように構成され」、また、他方で、「遊技球が前記遊技領域に誘導可能」である部分や機能も備えている領域であると解される。 4.本件補正発明の独立特許要件についての検討 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明は、その請求項1?3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)刊行物1に記載された発明 原査定の拒絶理由において提示された、本願の遡及日前に頒布された刊行物である特開2012-223399号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。 ア.「【背景技術】 【0002】 従来、遊技領域内に球振り分けユニットを配置しておき、遊技領域を流下する遊技球が流入口に流入すると、球振り分けユニットの内部で第1領域と第2領域とに遊技球を振り分ける先行技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。 【0003】 球振り分けユニットは振分部材を有しており、この振分部材は遊技球を第1領域に向けて導く状態と第2領域に向けて導く状態とに変化する。特に先行技術では、流入口から流入した遊技球の自重によって振分部材の状態(姿勢)を交互に変化させているため、複雑な電気的制御を用いることなく、複数の領域に対して交互に遊技球を振り分けることができる。 【0004】 また上記の球振り分けユニットは、第1領域、第2領域がそれぞれ第1始動口、第2始動口となっており、流入口に流入して球振り分けユニット内部で振り分けられた後の遊技球は、第1始動口センサ、第2始動口センサのいずれかを必ず通過して盤面の裏側へ回収される構造となっている。 【0005】 このため、先行技術の球振り分けユニットを用いたパチンコ機では、球振り分けユニット内で第1始動口への入賞(交互振り分けによる入球)が発生すると第1抽選が実行されて第1図柄が変動し、また、球振り分けユニット内で第2始動口への入賞(交互振り分けによる入球)が発生すると第2抽選が実行されて第2図柄が変動する。このようなパチンコ機では、第1図柄による大当り抽選と第2図柄による大当り抽選とが偏りなく交互に行われるため、それぞれの記憶手段が持てる保留数(例えば各4個で合計8個)を最大限に活用して抽選による利益を遊技者に付与することができると考えられる。」 イ.「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 上記の先行技術では、球振り分けユニットの内部に第1始動口と第2始動口とがそれぞれ配置されている構造であり、球振り分けユニットの流入口から回転体(振分部材)による振り分けを経由する以外に第1始動口や第2始動口への入賞は発生し得ない。この場合、球振り分けユニットの流入口に入った時点で遊技球は「入賞球」とみなされるため、構造上は流入口が本来の「入賞口」となり、第1始動口や第2始動口は独立した「入賞口」とはなり得ない。 【0008】 しかしながら先行技術では、構造上の「入賞口」であるはずの流入口に遊技球が入った時点では未だ入賞の発生を検知することができず、その後の回転体による振り分け動作を経て、遊技球が第1始動口(センサ)又は第2始動口(センサ)に到達してからでなければ入賞の発生を検知することができない。このため、本来の抽選契機となるべき入賞が発生した時点(流入口へ流入した時点)から、これを検知するまでの間(始動口センサに到達するまでの間)に大幅な遅れが生じてしまうという問題がある。また、電気的制御を用いない構造上、回転体によって振り分け動作が行われる時間にばらつきが生じる可能性もあるため、入賞の発生後に抽選用乱数を取得するタイミングが極端にばらついてしまうと、それによって遊技の公正が害されるという問題がある。 【0009】 そこで本発明は、複数の図柄に対応する抽選要素の記憶数を最大限に活用できる遊技性を実現しつつ、抽選契機となるべき入賞の発生からその検出までのタイミングに極端なばらつきが生じるのを防止して遊技の公正を図る技術の提供を目的とする。」 ウ.「【0011】 (4)内部抽選を行うためには条件があり、先ず第1抽選要素を用いて内部抽選を行う場合、第1図柄についての第1始動条件が満たされた状態で、第2抽選要素より先に記憶された第1抽選要素が存在している必要がある。あるいは、第2抽選要素を用いて内部抽選を行う場合、第2図柄についての第2始動条件が満たされた状態で、第1抽選要素より先に記憶された第2抽選要素が存在している必要がある。このため、第1抽選要素又は第2抽選要素のいずれか一方の記憶が極端に少なく、他方の記憶だけが多く存在する傾向が強くなると、内部抽選が一方に偏りがちである。」 ウ-1.上記ウの下線部の記載から、刊行物1に記載された発明では、第1抽選要素と第2抽選要素とは、単に均等な数の保留記憶が存在するのみならず、該各要素の記憶順、すなわち発生順が交互であることも求められていると言える。 エ.「【0018】 解決手段3:解決手段2において、本発明の遊技機は、遊技者に相対する盤面に遊技領域が形成された遊技盤と、前記遊技領域に向けて遊技球を発射する球発射装置と、前記遊技領域内に分布して配置され、前記球発射装置により発射されて前記遊技領域内を流下する遊技球を無作為に誘導する複数の障害釘(又は遊技釘)とを備え、前記第1事象発生手段は、前記遊技領域内に配置され、前記遊技領域内を流下する遊技球が無作為に流入することで前記第1事象を発生させる第1始動入賞口を含み、前記第2事象発生手段は、前記遊技領域内で前記第1始動入賞口とは別の位置に配置され、前記遊技領域内を流下する遊技球が無作為に流入することで前記第2事象を発生させる第2始動入賞口を含み、前記事象発生促進手段は、前記遊技領域内で前記第1始動入賞口及び前記第2始動入賞口より上方位置に配置された流入口を有し、この流入口を通じて前記遊技領域内から無作為に流入した遊技球を前記盤面に沿う二方向へ交互に振り分けて誘導するとともに、いずれか一方向へ振り分けられた遊技球については前記第1始動入賞口への流入が容易となる態様により前記遊技領域内へ放出し、他方向へ振り分けられた遊技球については前記第2始動入賞口への流入が容易となる態様により前記遊技領域内へ放出する球振り分け装置を含むことが好ましい。」 オ.「【0019】 本解決手段によれば、本発明の遊技機において以下の特徴が追加される。 (1)本発明の遊技機による遊技は、発射された遊技球が遊技領域内を流下していくことで進行する。 (2)第1事象や第2事象は、遊技領域内を流下する遊技球が無作為に第1始動入賞口に流入(入賞)したり、第2始動入賞口に流入(入賞)したりすることで発生する。 (3)上記とは別に、球振り分け装置の流入口へも遊技球は無作為に流入するが、これによって直接的に第1事象や第2事象が発生するわけではない。 (4)ただし球振り分け装置は、流入した遊技球を二方向へ交互に振り分けた後、第1始動入賞口への入賞が容易となる態様で遊技領域内に再度放出するか、あるいは、第2始動入賞口への入賞が容易となる態様で遊技領域内に再度放出する。 (5)したがって、例えば遊技中に第1始動入賞口への流入や第2始動入賞口への流入を主眼として遊技球を発射するのではなく、球振り分け装置への流入を主な目標とすれば、そこでの振り分けと放出の動作により、第1始動入賞口への流入(入賞)と第2始動入賞口への流入(入賞)が交互に発生することが促進される。 【0020】 これにより、第1抽選要素及び第2抽選要素の記憶が交互に蓄積されやすくなり、結果として第1図柄の変動表示と第2図柄の変動表示とが交互に行われる機会を多く設けて遊技性の幅を拡げることができる。」 カ.「【0021】 解決手段4:解決手段3において、前記球振り分け装置は、前記流入口を通じて前記遊技領域内から無作為に流入した遊技球を前記盤面に沿う二方向へ交互に振り分けた後、前記二方向でそれぞれ前記盤面に対して直交する軸線に沿って遊技球を奥側へ転動させて誘導し、前記盤面より奧の位置で流下を伴いつつ前記軸線に沿って遊技球の転動方向を前面側へ反転させた状態で前記遊技領域内へ遊技球を放出することができる。」 キ.「【0022】 解決手段5:好ましくは解決手段4において、前記球振り分け装置は、前記流入口が前記遊技領域内で上方向に開口して形成され、内部に前記流入口の下方位置から前記二方向へ分岐する2つの振分誘導路が形成された装置本体と、前記装置本体内に配置され、前記流入口から流入してきた遊技球を2つの前記振分誘導路へ交互に振り分けて誘導する振分動作体と、前記装置本体内で2つの前記振分誘導路の終端にそれぞれ連なって形成され、前記盤面を構成する板材の内部を前記盤面より奥側へ延び、かつ、前記盤面より奧の位置で下方へ屈曲された後に前記盤面の前面側へ折り返して延びた2つの整流誘導路と、前記装置本体の前記盤面に沿う前面に開口して形成され、2つの前記整流誘導路の終端をそれぞれ前記遊技領域内にて開放する2つの放出口とを有する。」 ク.「【0023】 上記の態様であれば、球振り分け装置における遊技球の流下は以下の態様となる。 (1)先ず、流入口を通じて流入した遊技球を振分誘導路により盤面に沿って二方向へ交互に振り分ける。なお、ここでは遊技球の自然な流下が前提であり、振り分けには動力を用いないため、盤面に沿う二方向は必然的に幅方向となる。 (2)次に、振分誘導路の二方向の終端では、それぞれ盤面に対して直交する軸線に沿って奥側へ遊技球の転動方向を変換する。 (3)整流誘導路内では、盤面より奧の位置で遊技球を下方に潜り込ませながらUターンさせる。 (4)Uターンされた遊技球は、前面に向けて開放した放出口を通じて遊技領域内に再度放出される。 【0024】 上記(2)から(3)の過程を通じて、遊技球の流下の態様は振り分け時の二方向から上下方向へ整えられており、上記(1)で与えられた振り分け時の二方向への勢いが殺される(整流作用)。これにより、放出口から放出された遊技球の流下方向がほとんど下向きで安定し、振り分け時の二方向に暴れにくくなるため、放出された遊技球を第1始動入賞口や第2始動入賞口へ高頻度で入賞させやすくすることができる。」 ケ.「【0060】 〔球振り分け装置(第1構造例)〕 ・・・ 【0061】 球振り分け装置200は、遊技球が1つ通過し得る程度の幅を有する振分誘導路201を備えている。振分誘導路201は、トンネル状の構造であり、1つの流入口202に対して2つの出口(第1放出口204及び第2放出口203)が形成されている。したがって、流入口202に流入した遊技球は、第1放出口204又は第2放出口203のいずれかへと導かれる。・・・。 【0062】 振分誘導路201の中央部分には、円柱形状の空間が形成されており、その空間には風車形の回転体205が配置されている。回転体205は、その中心軸から放射状に延びた3つの羽部材205a,205b,205cを有している。回転体205は、電気的又はその他の動力による動作を行うものではなく、遊技球が羽部材205a,205b,205cに衝突することにより回転する。」 コ.「【0065】 〔可変始動入賞装置28(左始動入賞口28a)側への振り分け〕 図5中(A)に示すように、最初の状態では、回転体205の羽部材205bが右側の突起部206bと接触している状態である。 この状態で遊技球300が流入口202に流入すると、回転体205における羽部材205aと羽部材205cとの間に遊技球300が入り込み、遊技球300の重みによって回転体205が左回り(反時計回り)に回転する。 【0066】 そして、図5中(B)に示すように、回転体205が左回りに回転することにより、遊技球300が第2放出口203に導かれ、遊技球300が可変始動入賞装置28側へ振り分けられる。・・・。」 サ.「【0067】 第2放出口203は下向きに開口しており、この開口端から可変始動入賞装置28の上方に配置された一対の障害釘(命釘)までの距離Dは、例えば遊技球300の直径より僅かに大きく設定されている。したがって、可変始動入賞装置28側へ振り分けられた遊技球300は、そのまま可変始動入賞装置28(左始動入賞口28a)に入賞する場合もあるし、一対の障害釘(命釘)に弾かれて可変始動入賞装置28に入賞しない場合もある。」 シ.「【0072】 第1放出口204も同様に下向きに開口しており、この開口端から右始動入賞口26の上方に配置された一対の障害釘(命釘)までの距離Dもまた、例えば遊技球300の直径より僅かに大きく設定されている。したがって、右始動入賞口26側へ振り分けられた遊技球は、上述した可変始動入賞装置28(左始動入賞口28a)と同様に、そのまま右始動入賞口26に入賞する場合もあるし、右始動入賞口26の上方の釘に弾かれて右始動入賞口26に入賞しない場合もある。」 ス.「【0075】 〔球振り分け装置(第2構造例)〕 ・・・ 【0077】 第2構造例の球振り分け装置200は、例えばフロントパーツ200a及びリヤパーツ200bを有しており、これら2つのパーツ200a,200bが球振り分け装置200の本体部分(装置本体)を主に構成している。このうちリヤパーツ200bは、遊技盤8の板材(例えばベニヤ板、透明樹脂板)に対してその一部を嵌め込んだ状態で取り付けられる。すなわちリヤパーツ200bは、その大部分が盤面に沿って拡がったプレート状をなしているが、両端部分にはそれぞれ、盤面の奧方向へ突出した部分(図8では示さず)が一体に形成されている。」 セ.「【0080】 第2構造例の球振り分け装置200は、第1放出口204及び第2放出口203の形態が第1構造例と異なっている。すなわち、第1構造例では第1放出口204及び第2放出口203が下向きに開放していたが、第2構造例の場合、第1放出口204及び第2放出口203がいずれも前面に向けて開放している。したがって第2構造例の場合、第1放出口204及び第2放出口203の各開口面が遊技盤8の前面(盤面)と平行に配置されている。 【0081】 前面向きの第1放出口204及び第2放出口203を形成するため、第2構造例の球振り分け装置200には、正面視で縦型の整流誘導路208,209が形成されている。これら整流誘導路208,209は、振分誘導路201の両端にそれぞれ連なり、そこから盤面の奥側へ向けて屈曲されている。そして各整流誘導路208,209は、盤面の奧で下方に潜り込み、さらに盤面の前面側へ折り返すようにして反転している。そして第1放出口204及び第2放出口203は、各整流誘導路208,209が反転した終端(開放端)に位置している。なお整流誘導路208,209は、上述したリヤパーツ200bの各突出部分に形成されている。」 ソ.「【0101】 第2構造例において第2放出口203は前面に向けて開口しており、この開口の下端縁(Uターンリブ200fのエッジ)から可変始動入賞装置28の上方に配置された一対の障害釘(命釘)までの距離Dは、例えば遊技球300の直径より大きく設定されていてもよいし、遊技球300の直径より小さく設定されていてもよい。いずれにしても、第2放出口203から遊技領域8a(図12には示さず)に再放出された遊技球300は、無作為な流下に伴って可変始動入賞装置28(左始動入賞口28a)に入賞する場合もあるし、一対の障害釘(命釘)に弾かれて可変始動入賞装置28に入賞しない場合もある。また第1構造例の場合と同様に、遊技領域8a内の障害釘の状態によっては球振り分け装置200を経由することなく、その周辺から可変始動入賞装置28(左始動入賞口28a)に入賞する遊技球300もある。 ・・・ 【0105】 第2構造例において、第1放出口204もまた前面に向けて開口しており、この開口の下端縁(Uターンリブ200fのエッジ)から右始動入賞口26の上方に配置された一対の障害釘(命釘)までの距離Dは、例えば遊技球300の直径より大きく設定されていてもよいし、遊技球300の直径より小さく設定されていてもよい。いずれにしても、第1放出口204から遊技領域8a(図13には示さず)に再放出された遊技球300は、無作為な流下に伴って右始動入賞口26に入賞する場合もあるし、一対の障害釘(命釘)に弾かれて右始動入賞口26に入賞しない場合もある。ここでも第1構造例の場合と同様に、遊技領域8a内の障害釘の状態によっては球振り分け装置200を経由することなく、その周辺から右始動入賞口26に入賞する遊技球300もある。」 ソ-1.図13(B)には、第1放出口204から放出された遊技球が右始動入賞口26直上の命釘(附番なし)に弾かれて、右始動入賞口26に入賞せず、右方の遊技領域や左始動入賞口28との間の領域(この場合も遊技球は下方の遊技領域へ出て行くと考えられる)に出て行くことが図示されているといえる。 タ.「【0109】 〔遊技球の整流作用〕 第2構造例の球振り分け装置200によれば、遊技球300の流下に対して以下の誘導や整流が行われる。 (1)先ず、流入口202を通じて流入した遊技球300を回転体205及び振分誘導路201により盤面に沿って左右いずれかの方向へ交互に振り分ける。 (2)次に、振分誘導路201の左右両端では、それぞれコーナーリブ201b及び傾斜板201aにより盤面に対して直交する軸線(図中Z軸線)に沿って奥側へ遊技球300の転動方向を変換する。 (3)左右の整流誘導路208,209内では、盤面より奧の位置でその軸線(図中Z軸線)に沿って遊技球300をUターンさせる。このとき遊技球300は、盤面の奧で下方に潜り込むようにして反転する。 (4)Uターンされた遊技球300は、前面に向けて開放した第1放出口204又は第2放出口203を通じて遊技領域8a内に再度放出される。 【0110】 上記(2)から(3)の過程を通じて、遊技球300の流下の態様は左右方向から上下方向へ整えられており、上記(1)で与えられた左右方向への勢いが殺される(整流作用)。これにより、第1放出口204又は第2放出口203から放出された遊技球300の流下方向がほとんど下向きで安定し、左右方向に暴れにくくなるため、放出された遊技球300を右始動入賞口26又は可変始動入賞装置28(左始動入賞口28a)へ高頻度で入賞させやすくすることができる。」 上記記載事項ア.?タ.及び刊行物1の図面から、以下の事項が導かれる。 チ.前記キ・ケ・セ・ソの記載及び図8・14から、第2構造例において、整流誘導路208,209及びそれらの第1・第2各放出口(204・203)の開口下縁端から各始動口26・28上方の障害釘までの経路が、振り分け動作体(回転体105)及び振り分け誘導路201の下方、かつ各始動入賞口26・28の上方に位置することがみてとれる。 ツ.上記タの、整流誘導路208・209の作用により、該各整流誘導路の放出口から放出された遊技球は、「振り分け」で与えられた左右方向への勢いが殺される(整流作用)。これにより、第1放出口204又は第2放出口203から放出された遊技球300の流下方向がほとんど下向きで安定し、左右方向に暴れにくくなるため、放出された遊技球300を右始動入賞口26又は可変始動入賞装置28(左始動入賞口28a)へ高頻度で入賞させやすくする」との記載は、右(左)始動入賞口への入賞頻度が相対的に高い、すなわち、命釘で弾かれるなどして非入賞となるよりも入賞となる頻度が高いことを指すと解される。 ここで、前記入賞の頻度については、各入賞口上方の一対の命釘の調整次第で変更することが可能である点で不確定性があるが、刊行物1に記載された発明は、上記ア・イに記載されたとおり、振り分け装置に流入した遊技球が必ず2つの始動入賞口に交互に入賞する構造の従来技術について、(ア)、その「複数の図柄に対応する抽選要素の記憶数を最大限に活用できる遊技性を実現しつつ」、「抽選契機となるべき入賞の発生からその検出までのタイミングに極端なばらつきが生じるのを防止して遊技の公正を図る技術の提供を目的とする」(イ)ものであるから、例えば振り分け装置から放出された遊技球の入賞確率が50%を割るといった、「必ず交互に入賞」するという従来技術の持つ遊技性を大きく損なう設定を行うことは、前記目的に反することになるので、刊行物1に記載された発明の態様としては想定されない。 テ.上記タ(【0110】)で、「遊技球300の流下の態様は左右方向から上下方向へ整えられており、上記(1)で与えられた左右方向への勢いが殺される」整流作用を発揮する部分として、「上記(2)から(3)の過程を通じて」すなわち、 「(2)振分誘導路201の左右両端では、それぞれコーナーリブ201b及び傾斜板201aにより盤面に対して直交する軸線(図中Z軸線)に沿って奥側へ遊技球300の転動方向を変換する。 (3)左右の整流誘導路208,209内では、盤面より奧の位置でその軸線(図中Z軸線)に沿って遊技球300をUターンさせる。このとき遊技球300は、盤面の奧で下方に潜り込むようにして反転する」 という過程が挙げられている。 このうち、整流誘導路208,209は盤面の奥側(厚み内部)を盤面に沿う鉛直方向に走行する流路要素であるが、コーナーリブ201bは、振分誘導路201の端部要素として盤面の前面側に設けられた遊技球の方向転換部材であり、振分誘導路201を盤面に沿ったほぼ水平方向に流れてきた遊技球を盤面の奥側方向に方向転換するものであるから、その方向転換に伴い遊技球の盤面に沿う水平方向の速度成分が減じられることが明らかであり、よって、「振り分け」で与えられた左右方向への勢いが殺される」との作用の少なくとも一部を担う要素であることが明らかである。 また、上記タでいう「(2)から(3)の過程」即ちコーナーリブ201b(左右方向の運動を遊技盤奥側方向へ転換)及び整流誘導路208・209(傾斜板201aに沿う遊技盤奥側方向の運動を鉛直下方への運動に転換し、鉛直下方へ流下)からなる流路による遊技球の方向転換と案内が、上記タでは「左右方向への勢いが殺される(整流作用)。これにより、第1放出口204又は第2放出口203から放出された遊技球300の流下方向がほとんど下向きで安定し、左右方向に暴れにくくなる」との作用を発揮すると説明されており、「左右方向への勢い」が(流路摩擦の影響を除けば)主として前記流路の左右方向に位置する壁面やリブによって減じられることは物理法則から自明であるから、「第2構造例」では、前記流路のコーナーリブ201b及び整流誘導路208・209の左右の壁面の存在が、前記作用に主として貢献していることは明らかである。 そして、整流誘導路208・209は遊技盤奥側(盤内部)に形成され、奥側と左右側に壁面を持つ流路であるから(図9・14)、ここを流下する遊技球は、流下に伴い前記奥側と左右側の壁面に衝突(接触)し、「押さえられ」得ることが明らかと言える。 ト.図4?6及びこれに対応する【0060】?【0074】には、「球振り分け装置(第1構造例)」として、球流入口202から振分動作体205、振分誘導路201を経て各入賞口の方向へほぼ鉛直方向に放出する放出口203・204までを、すべて遊技盤の盤面前面側に設ける実施例が記載されている。 ナ.上記ア?タの記載事項及び上記チ?テの認定事項から、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる(a?k-3は、本件補正発明のA?K-3に対応させて付与した。)。 「a 遊技者に相対する盤面に遊技領域が形成された遊技盤と、前記遊技領域に向けて遊技球を発射する球発射装置と、 前記遊技領域内に配置され、前記遊技領域内を流下する遊技球が無作為に流入することで第1事象を発生させる第1始動入賞口を含む第1事象発生手段と、 前記遊技領域内で前記第1始動入賞口とは別の位置に配置され、前記遊技領域内を流下する遊技球が無作為に流入することで第2事象を発生させる第2始動入賞口を含む第2事象発生手段と、 前記遊技領域内で前記第1始動入賞口及び前記第2始動入賞口より上方位置に配置された流入口を有し、この流入口を通じて前記遊技領域内から無作為に流入した遊技球を前記盤面に沿う二方向へ交互に振り分けて誘導する振り分け装置を含む事象発生促進手段と、(以上エ) 前記振り分け装置本体内に配置され、前記流入口から流入してきた遊技球を2つの振分誘導路へ交互に振り分けて誘導する振分動作体である回転体205と、(キ・ケ) b 前記振り分け装置本体内部に設けられ、前記流入口に流入した遊技球を前記振分動作体により交互に振り分けて誘導される、前記流入口の下方位置から前記二方向へ分岐する2つの振分誘導路201のうちの一方と、(エ・カ・キ) c 前記振り分け装置本体内部に設けられ、前記流入口に流入した遊技球を前記振分動作体により交互に振り分けて誘導される、前記流入口の下方位置から前記二方向へ分岐する2つの振分誘導路201のうちの他方と、(エ・カ・キ) d 前記振分誘導路201のうちの一方の終端に連なって形成され、前記盤面を構成する板材の内部を前記盤面より奥側へ延び、かつ、前記盤面より奧の位置で下方へ屈曲された後に前記盤面の前面側へ折り返して延びた一方の整流誘導路208から、該整流誘導路208が反転した終端(開放端)に位置する第1放出口204の開口の下端縁(Uターンリブ200fのエッジ)を経て右始動入賞口26の上部までの経路1と、(キ・ソ) e 前記振分誘導路201のうちの他方の終端に連なって形成され、前記盤面を構成する板材の内部を前記盤面より奥側へ延び、かつ、前記盤面より奧の位置で下方へ屈曲された後に前記盤面の前面側へ折り返して延びた他方の整流誘導路209から、該整流誘導路209が反転した終端(開放端)に位置する第2放出口203の開口の下端縁(Uターンリブ200fのエッジ)を経て左始動入賞口28の上部までの経路2と、(キ・ソ) f 前記一方の整流誘導路208から、それが反転した終端(開放端)に位置する第1放出口204の開口を経て右始動入賞口26の上方に配置された一対の障害釘(命釘)までの経路1’において、第1放出口204から遊技領域8a(図13には示さず)に再放出された遊技球300は、一対の障害釘(命釘)に弾かれて右始動入賞口(第1始動入賞口)26に入賞せず遊技領域に出て行く場合もあり、(シ・ソ・ソ-1) g 前記他方の整流誘導路209から、それが反転した終端(開放端)に位置する第2放出口203の開口を経て左始動入賞口28の上方に配置された一対の障害釘(命釘)までの経路2’において、第2放出口203から遊技領域8a(図13には示さず)に再放出された遊技球300は、一対の障害釘(命釘)に弾かれて左始動入賞口(第2始動入賞口)28に入賞せず遊技領域に出て行く場合もあり、(シ・ソ・ソ-1) h 前記経路1は、前記第1始動入賞口の上方かつ前記振り分け装置の下方に設けられ、(ソー1) i 前記経路2は、前記第2始動入賞口の上方かつ前記振り分け装置の下方に設けられ、(ソー1) j-1 前記経路1’は、前記一方の振分誘導路に振り分けられた遊技球が前記右始動入賞口(第1始動入賞口)に入賞する確率が、入賞しない確率よりも大きいように(ツ)、 j-2 遊技盤の奥側にわたって配置され、(セ) j-3 そのうちの整流誘導路208においては、左右方向と奥側とから該遊技球を押さえるように構成され、(テ) k-1 前記経路2’は、前記他方の振分誘導路に振り分けられた遊技球が前記左始動入賞口(第2始動入賞口)に入賞する確率が、入賞しない確率よりも大きいように(ツ)、 k-2 遊技盤の奥側にわたって配置され、(セ) k-3 そのうちの整流誘導路209においては、左右方向と奥側とから該遊技球を押さえるように構成され(テ) ていることを特徴とする遊技機。」 (2)刊行物2に記載された技術事項 本願の遡及日前に頒布された刊行物である特開2001-310023号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。 ア.「【0003】 【発明が解決しようとする課題】このように遊技盤面上を流下する遊技球は、上記障害釘により、入賞口の付近に導かれる場合が多い。したがって、遊技球が入賞口に入賞するか否かは、障害釘の配置と遊技球の落下(流下)態様とにほぼ支配されており、入賞に際して遊技者の興趣を高めるに至らずに単調化する場合がある。」 イ.「【0005】 【課題を解決するための手段及び作用・効果】上記課題を解決するために、本発明の遊技機は、遊技球を複数方向に誘導することが可能な誘導装置を遊技領域に備えた遊技機において、誘導装置が、少なくとも一つの導入領域と、その導入領域に対して複数設けられた導出領域とを備え、導入領域への遊技球の導入態様に応じて、異なる複数の導出領域のいずれかへ遊技球が誘導されることを特徴とする。」 ウ.「【0011】なお、具体的に流下経路変更手段としては、例えば遊技球を前記複数の誘導経路構成手段に振り分け可能な分岐部や、遊技球の流下を妨げる突起部材、遊技球の流下方向を変更する回転部材等を例示することができる。例えば、上記誘導経路構成手段を、長手方向に延びる第1経路構成手段(主経路構成手段)と、その第1経路構成手段から分岐部において分岐した第2経路構成手段(分岐経路構成手段)とを少なくとも含むものとすれば、分岐部において各経路の何れに遊技球が誘導されるかの興趣が高まる。また、第1経路構成手段を、その長手方向が遊技球の落下(流下)方向と略一致し、第2経路構成手段を、その落下(流下)方向から左右に延びる方向とする構成とし、分岐部において異なる経路構成手段に遊技球が振り分けられるものとすることができる。 【0012】特に、第1経路構成手段は、遊技球をその入賞又は通過により遊技者に利益を付与可能な遊技装置(役物)に導くものとすることができる。遊技機の遊技盤面上には、センター役物、変動入賞装置等の各種大型役物やこれらの各種大型役物以外の入賞口あるいは入球口を有する各種遊技装置(役物)が備えられている。これらの各種遊技装置へ遊技盤面上を流下する遊技球を導くために、第1経路構成手段を構成し、第2経路構成手段を前記遊技装置に導かないための経路構成手段とすれば、入賞態様に関する遊技者の興趣が一層高まるものとなる。」 エ.「【0027】判定用図柄表示装置26の図示左側には、遊技球を特別領域36又は普通領域37のどちらかに振分ける振分装置38が設けられている。この振分装置38の表面には、後述する特別遊技状態の継続回数(いわゆるラウンド数)を表示するための例えばデジタル式の表示装置38aが付設されている。振分装置38へは、特定入賞口18及び後述する誘導装置350の何れかから遊技球が入賞可能とされている。・・・誘導部材350からの入賞球は、振分装置38の上端に形成された球受入口38bを通って当該振分装置38に入賞する。」 オ.「【0097】・・・誘導装置350は、遊技盤10から立ち上がる連続壁面であって、遊技球を誘導するための経路を構成する経路構成手段としての例えば樹脂製の誘導壁部351(図24a参照)と、当該誘導装置350を遊技盤10に取り付けるための取付板部(ベース板)352(図2参照)とから少なくとも構成されている。」 カ.「【0098】・・・遊技領域11(図2参照)を流下する遊技球Kを受入れ可能な球入口(導入領域)353と、その遊技球を当該誘導装置350から排出可能な複数(本実施例では3つ)の球出口(導出領域)354,355,356と、球入口353から入った遊技球Kを複数の球出口354?356のいずれかに誘導するための分岐部360,360と、を備えている。この場合、誘導装置350に導入された遊技球Kの誘導(振分け)は、球入口353への遊技球Kの導入態様(球入口353への進入角度(:R=0又はα又はβ))に応じて、分岐部360において行われる。球出口354,355へ導出された遊技球K1,K2は、遊技領域11(図2参照)へ放出され、球出口356へ導出された遊技球K3は、振分装置38の球受入口38b(図2参照)から振分装置38に入賞する。したがって、球出口356が、遊技者にとっての利益に関連した第1の導出領域、球出口354,355が遊技者にとって相対的に不利な第2の導出領域とされる。なお、本実施例において分岐部360は、誘導装置350内を流下する遊技球の流下経路に変化を与えるための流下経路変更手段として機能している。また、遊技球は、誘導壁部351に衝突ないし接触して流下経路が変更するため、誘導壁部351も遊技球Kの導入態様に応じて流下経路を変更する流下経路変更手段として機能している。」 キ.「【0108】以上のような誘導装置350、350a?350iを、本実施例においては第三種遊技機の図柄始動用役物に適用することとしているが、その他にも第一種遊技機(通称フィーバー機と呼ばれる)に使用される始動入賞口、その他の入賞口、役物等の遊技装置、及び第二種遊技機(通称羽根物と呼ばれる)に使用される始動入賞口、その他の入賞口、役物等の遊技装置、あるいはアレンジボール機(通称アレパチと呼ばれる)等のその他の遊技機において、入賞装置、役物等の遊技装置への入賞誘導装置として適用可能である。」 上記記載事項ア.?キ.及び刊行物2の図面から、以下のク.?コ.の事項が導かれる。 ク.前記オ.の記載及び図2・10・24(a)(b)から、「誘導装置350」は遊技盤10の遊技領域11内、すなわち遊技盤面の前面側に突出して取り付けられている構造体であると言える。 ケ.前記ウ.、カ.、キ.の記載及び図10から、「誘導装置350」上端の「球入口(導入領域)353」から流入した遊技球は、「誘導壁部351」・「分岐部360」を経てウ.の「第1経路構成手段は、遊技球をその入賞又は通過により遊技者に利益を付与可能な遊技装置(役物)に導く」「第1経路構成手段(主経路構成手段)」にあたる「経路構成手段351a」から球出口356への経路と、ウ.の「前記遊技装置に導かないための経路構成手段」である「第2経路構成手段(分岐経路構成手段)」にあたる球出口354・355へ向かう経路とに分岐し、前記「遊技者に利益を付与可能な遊技装置(役物)」としてはキ.から、始動入賞口またはその他の入賞口が想定されていると言える。 コ.前記記載事項オ.、カ.、及び認定事項ク.から、「誘導装置350」の「誘導経路351」及び「第1経路構成手段(主経路構成手段)」にあたる「経路構成手段351a」では、経路を通過する遊技球は少なくとも左右方向の壁面に衝突して流下経路が変更されるように構成されていると言える。 (3)対比 本件補正発明と刊行物1発明とを、分説に従い対比する。(以下、刊行物1発明の各構成については単に「構成a」などといい、本件補正発明の各構成は単に「構成A」などということがある。) ア.構成aの 「回転体205」、「振分動作体」 はそれぞれ構成Aの 「振分部」、「球振り分け装置」 に相当する。 したがって構成aは構成Aに相当する。 イ.構成b・cの「振分誘導路201のうちの一方」「振分誘導路201のうちの他方」は、それぞれ構成B・Cの「第1誘導路」「第2誘導路」に相当する。 したがって、構成b・cは構成B・Cに相当する。 ウ.構成d・eの「経路1」「経路2」がそれぞれ、構成D・Eの「第1通過経路」「第2通過経路」に相当する。 したがって、構成d・eは構成D・Eに相当する。 エ.構成fにおける「経路1’」は上記「経路1」の一部分であるから、「経路1’」は「経路1」「に設けられ」ていると言える。 また、構成fにおいて「経路1’」からは「遊技球300」が「一対の障害釘(命釘)に弾かれて右始動入賞口(第1始動入賞口)26に入賞せず遊技領域に出て行く」ことが可能であるから、構成fの「経路1’」は「遊技球が前記遊技領域に誘導可能に構成された」ものと言える。 したがって、前記ウ.を踏まえれば、構成fは構成Fに相当する。 オ.同じく構成gにおける「経路2’」は上記「経路2」の一部分であるから、「経路2’」は「経路2」「に設けられ」ていると言える。 また、構成gにおいて「経路2’」からは「遊技球300」が「一対の障害釘(命釘)に弾かれて右始動入賞口(第2始動入賞口)28に入賞せず遊技領域に出て行く」ことが可能であるから、構成gの「経路2’」は「遊技球が前記遊技領域に誘導可能に構成された」ものと言える。 したがって、前記ウ.を踏まえれば、構成gは構成Gに相当する。 カ.上記エ・オを総合し、「経路1’」「経路2’」がそれぞれ、上記3.で検討した本件補正発明の「第1通過可能領域」・「第2通過可能領域」についての特定事項のうち、「遊技盤の前面側」に位置することに関する点(3.(b)及び3.(c)の一部)を除き満足すると言える。 キ.構成h・iがそれぞれ構成H・Iに相当することは明らかである。 ク.構成j-1・j-3・k-1・k-3がそれぞれ構成J-1・J-3・K-1・K-3に相当することは明らかである。 ケ. 上記ア.?ク.によれば、本件補正発明と刊行物1発明とは、 「A 発射された遊技球が流下する遊技領域を形成する遊技盤と、 前記遊技領域に設けられ、前記遊技領域を流下する遊技球が入賞する第1始動入賞口と、 前記遊技領域に設けられ、前記遊技領域を流下する遊技球が入賞する第2始動入賞口と、 前記遊技領域に設けられ、前記遊技領域を流下する遊技球を受け入れて進行方向を複数 の異なる方向に振り分ける振分部を有する球振り分け装置と、 B 前記振分部の両側の一方に設けられ、前記振分部により振り分けられた遊技球を前記第1始動入賞口に誘導する第1誘導路と、 C 前記振分部の両側の他方に設けられ、前記振分部により振り分けられた遊技球を前記第2始動入賞口に誘導する第2誘導路と、 D 前記第1誘導路で誘導される遊技球が通過する第1通過経路と、 E 前記第2誘導路で誘導される遊技球が通過する第2通過経路と、 F 前記第1通過経路に設けられ、前記第1誘導路側に振り分けられた遊技球が前記遊技領域に誘導可能に構成された第1通過可能領域と、 G 前記第2通過経路に設けられ、前記第2誘導路側に振り分けられた遊技球が前記遊技領域に誘導可能に構成された第2通過可能領域と を備え、 H 前記第1通過経路は、前記第1始動入賞口の上方かつ前記球振り分け装置の下方に設けられ、 I 前記第2通過経路は、前記第2始動入賞口の上方かつ前記球振り分け装置の下方に設けられ、 J-1 前記第1通過可能領域は、前記第1誘導路側に振り分けられた遊技球が前記第1始動入賞口に入賞するよりも前記遊技領域に再び誘導され難いように、 J-3 複数方向から該遊技球を押さえるように構成され、 K-1 前記第2通過可能領域は、前記第2誘導路側に振り分けられた遊技球が前記第2始動入賞口に入賞するよりも前記遊技領域に再び誘導され難いように、 K-3 複数方向から該遊技球を押さえるように構成されている遊技機。」 の点で一致し、次の各点で相違する。 [相違点1] 本件補正発明の構成J-2に関し、刊行物1発明では、第1通過可能領域に相当する経路1’で遊技球を複数方向から押さえるように構成されている部分(整流誘導路208)が、遊技盤の前面側ではなく奥側である点。 [相違点2] 本件補正発明の構成K-2に関し、刊行物1発明では、第2通過可能領域に相当する経路2’で遊技球を複数方向から押さえるように構成されている部分(整流誘導路209)が、遊技盤の前面側ではなく奥側である点。 (4)当審の判断 上記各相違点は、構成が対応する一対の経路について個々に認定したものであるから、以下に於いてこれらをまとめて検討する。 ア.相違点1・2について 上記記載事項(2)ア.?キ.、認定事項(2)ク.?コ.から、刊行物2の「誘導装置350」は、遊技領域に誘導可能な「第2経路構成手段(分岐経路構成手段)」にあたる球出口354・355へ向かう経路を備える点が本件補正発明の構成F(G)の「第1(第2)通過可能領域」の特定事項に対応し、また、「誘導経路351」及び「第1経路構成手段(主経路構成手段)」にあたる「経路構成手段351a」では、流下する遊技球が盤面に沿った左右方向の壁面に衝突する(コ.)から、該流下する遊技球は、流下方向により該両壁面からそれぞれ(左右方向への移動を)押さえる作用を受け(得)ることが明らかである。 そしてこの作用が、特に「第1経路構成手段(主経路構成手段)」にあたる「経路構成手段351a」の部分において、流出口356下方の振り分け装置38やその他入賞口等(キ.)への入賞を補助する作用を持つことは明らかである。よって、前記「誘導装置350」の遊技球経路の構成は、本件補正発明の「第1(第2)通過可能領域」についての構成F・G・J-1・J-3・K-1・K-3の特定事項に対応する。 また、刊行物2の前記「誘導装置350」の遊技球通過経路はすべて、遊技盤の盤面の前面側に位置している(ク.)から、相違点1・2の構成、即ち「第1(第2)通過可能領域」についての構成J-2・K-2にも対応する。 また、刊行物1発明と刊行物2に記載された技術事項とは、共に遊技領域を流下する遊技球をその自重と運動により入賞口等へ誘導・振り分けを行う構造体に関するものである点で共通しており、さらに、刊行物1には各受賞口への振り分け・誘導路部材及びその流路を遊技盤の前面側に取り付ける例も記載されている(上記(1)ト.)ことからみても、刊行物1発明で一部を盤面奥側に設けた遊技球通過経路及びそのための経路経路手段に対し、そのすべてを盤面前面側に設けた刊行物2記載の技術事項事項を適用することに、その動機付けを格別阻害する要因は存しない。 以上のとおりであるから、刊行物1発明において、振り分け装置の遊技球経路のうち、一部経路部分が盤面奥に設けられた経路1’・経路2’の部分について、上記刊行物2に記載された「誘導装置350」の構成に置き換えて、そのすべてが遊技盤の前面側にあるような構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。 そして、本件補正発明により奏される効果は、当業者が、刊行物1発明及び刊行物2に記載された技術事項から予測し得た範囲内のものであって、格別のものではない。 イ.請求人の主張について 請求人は審判請求書【請求の理由】3(3)に於いて以下のとおり主張している。 「引用文献1に記載された整流誘導路208,209は、盤面の奥側に向けて屈曲されています。これに対し、本願請求項1に係る発明の第1通過可能領域及び第2通過可能領域は、遊技盤の前面側で複数方向から遊技球を押さえるように構成されています。 従いまして、本願請求項1に係る発明と引用文献1に記載された発明は、発明を特定する事項に明確な差異があります。このため、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当しません。 また、引用文献1には、本願請求項1に係る発明の上記特徴的構成が開示も示唆もされておらず、動機付けとなる記載も一切ありません。 さらに、引用文献1に記載された整流誘導路208,209は、盤面の奥側に向けて屈曲され、盤面の奥で下方に潜り込み、さらに盤面の前面側へ折り返すように反転されています。このため、本願明細書段落[0008]に記載されているように、整流誘導路208,209は、最低でも遊技球2個分(遊技球の直径の2倍)の高さとなり、構造上の制限を受けて、遊技領域内を占める領域が広くなり、遊技機の設計自由度を低下させてしまいます。 従いまして、引用文献1に記載された発明は、本願請求項1に係る発明の上記第2の効果が得られません。さらに、引用文献1に記載された発明は、上記特徴的構成によって得られる上記第1の効果も当然に得られません。このため、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明と比較した有利な効果であって技術水準から予測される範囲を超えた顕著な効果を有します。 従いまして、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することはできず、特許法第29条第2項に該当しません。 」 上記請求人が主張する本件補正発明の「複数方向から遊技球を押さえる」作用は、拒絶査定時の引用文献2にあたる上記刊行物1にも記載されている事項であるから、当該主張は結局、刊行物1において第1通過可能領域及び第2通過可能領域が遊技盤の前面側ではなく「盤面の奥側に向けて屈曲され、盤面の奥で下方に潜り込み、さらに盤面の前面側へ折り返すように反転されて」いるという相違点に基づく主張であると言える。 しかし、遊技球を複数方向から押さえて入賞口等へ導く経路を遊技盤の前面部に設けることが刊行物2により本件遡及日前に公知であったことは上述のとおりであり、審判請求人の主張は採用できない。 ウ.小括 したがって、上記ア?イにおいて検討したように、本件補正発明は、刊行物1発明及び刊行物2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4.むすび 上記3.において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成27年12月21日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1.本件補正について」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。 2.刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項は、上記第2.の4.(1)に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、本件補正発明の発明特定事項から、上記第2.の1.の構成J-2・J-3・K-2・K-3の下線部の構成を省いたものである。 上記第2.の4.(2)で検討したとおり、本願発明と刊行物1発明との相違点は上記第2.の1.の下線部の構成のみであるから、そうすると、この構成を省いた本願発明と刊行物1発明とに相違点は存在しない。 したがって、本願発明は、刊行物1発明と同一であり、刊行物1に記載された発明であるといえる。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-06-14 |
結審通知日 | 2017-06-20 |
審決日 | 2017-07-03 |
出願番号 | 特願2014-178387(P2014-178387) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) P 1 8・ 113- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高藤 華代 |
特許庁審判長 |
長崎 洋一 |
特許庁審判官 |
樋口 宗彦 長井 真一 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 鈴木 壯兵衞 |
代理人 | 森 哲也 |
代理人 | 田中 秀▲てつ▼ |