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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B64D
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B64D
管理番号 1331769
審判番号 不服2016-4338  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-23 
確定日 2017-09-12 
事件の表示 特願2013-537795号「スライド式ベッドポッド」拒絶査定不服審判事件〔平成24年5月10日国際公開、WO2012/061525、平成25年12月12日国内公表、特表2013-544202号、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2011年11月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年11月3日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成25年7月9日に手続補正書が提出され、平成27年7月30日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月4日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年1月5日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年3月23日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、平成29年3月6日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年7月13日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2.原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1、3、4、16、17に係る発明は、以下の引用文献1、2に基いて、本願請求項5、6、18に係る発明は、以下の引用文献1?3に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献等一覧
1.特表2005-532951号公報
2.特表2007-523002号公報
3.特開昭56-160229号公報

第3.当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



請求項12の「(b)前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置する展開位置から、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置しない収容位置へと前記座席を動かすステップ」との記載において、「座席を動かす」ことの具体的態様が特定されていないため、座席が「スライド可能」である態様のほか、背部が座部に対して揺動することでベッドフットプリント内に位置しない収容位置へと「座席を動かす」という態様も含み得るものであり、「座席を動かす」という意味が多義的に解し得るため、発明が不明確となっている。
また、請求項12を直接または間接的に引用する請求項13?15の記載も同様の理由により不明確である。

第4.本願発明
本願請求項1?18に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明18」という。)は、平成29年7月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
航空機で使用するためのポッドアセンブリであって、
座部および背部を有する座席と、
前記座席を少なくとも部分的に包囲するシェルと、
前記シェルに結合されたベッドであって、前記ベッドは、前記ベッドが概して平坦である展開位置と収容位置との間で動かすことが可能であり、前記ベッドは前記展開位置において前記シェルによって支持される、ベッドと、
を備え、
前記ベッドが前記ベッドの前記展開位置においてベッドフットプリントを画定し、前記座席は、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置する展開位置と、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置しない収容位置との間でスライド可能である、ことを特徴とするポッドアセンブリ。
【請求項2】
前記ベッドは、前記ベッドの前記展開位置において前記座席によって支持されない、ことを特徴とする請求項1に記載のポッドアセンブリ。
【請求項3】
前記シェルは、前壁および少なくとも一つの側壁を含み、前記ベッドは前記前壁に結合され、前記ベッドは、前記前壁から前記座席に向かって展開し、前記ベッドの前記展開位置において、前記側壁によって少なくとも部分的に支持される、ことを特徴とする請求項1に記載のポッドアセンブリ。
【請求項4】
前記ベッドは、前記ベッドの前記収容位置において折りたたまれ、前記ベッドの前記展開位置において広げられる、ことを特徴とする請求項3に記載のポッドアセンブリ。
【請求項5】
前記少なくとも一つの側壁は、その内部表面へと固定されたトラックを含み、前記ベッドは、前記ベッドが前記ベッドの前記収容位置から前記ベッドの前記展開位置へと広げられるときに前記トラックと協働する構造を含む、ことを特徴とする請求項4に記載のポッドアセンブリ。
【請求項6】
前記シェルは、その内部表面に固定されたトラックを各々含む第一および第二の側壁を含み、前記ベッドは、少なくとも二つのローラを含み、前記ベッドが前記ベッドの前記収容位置から前記ベッドの前記展開位置へと広がるとき、前記ローラは前記トラックに沿って移動する、ことを特徴とする請求項5に記載のポッドアセンブリ。
【請求項7】
前記ベッドは、前記ベッドの前記展開位置において、前記座席によって支持されない、ことを特徴とする請求項6に記載のポッドアセンブリ。
【請求項8】
前記前壁に隣接して位置する展開位置と前記前壁に隣接しない収容位置との間で動かすことが可能なビデオモニタをさらに含み、前記ベッドを前記ベッドの前記収容位置から前記ベッドの前記展開位置へと動かすために、前記ビデオモニタを前記ビデオモニタの前記収容位置に動かさなければならない、ことを特徴とする請求項4に記載のポッドアセンブリ。
【請求項9】
前記座席の前記収容位置において、前記背部が垂直位置にあり、かつ、前記ベッドが前記展開位置にあるときに前記ベッドの上部表面によって画定される平面よりも上に前記背部が伸長する、ことを特徴とする請求項1に記載のポッドアセンブリ。
【請求項10】
前記座席の前記収容位置において、前記背部および座部が、前記ベッドの前記展開位置における前記ベッドの上部表面によって画定される平面よりも下に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載のポッドアセンブリ。
【請求項11】
前記座席は、展開位置と収容位置との間で動かすことが可能なアームレストを含み、前記アームレストの前記展開位置においては、前記アームレストのうちの少なくとも一部が前記ベッドフットプリントの上に伸長し、前記アームレストの前記収容位置においては、前記アームレストは前記ベッドフットプリントの下に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載のポッドアセンブリ。
【請求項12】
(a)座部および背部を有する座席と、前記座席を少なくとも部分的に包囲するシェルと、前記シェルに結合されたベッドとを含むポッドアセンブリを提供するステップであって、前記ベッドは、収容位置と、前記ベッドが概して平坦であり、かつ前記シェルによって支持される展開位置との間で動かすことが可能であり、前記展開位置において、前記ベッドはベッドフットプリントを画定する、ステップと、
(b)前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置する展開位置から、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置しない収容位置へと前記座席をスライドするステップと、
(c)前記ベッドの前記収容位置から前記ベッドの前記展開位置へと前記ベッドを動かすステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記ベッドが前記ベッドの前記展開位置にあるときに、前記背部が前記ベッドフットプリントの上に伸長する、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポッドアセンブリはビデオモニタを含み、前記方法は、前記ベッドの前記収容位置における前記ベッドに隣接する展開位置から、前記ベッドの前記収容位置における前記ベッドに隣接しない収容位置へと、前記モニタを動かすステップをさらに含み、本ステップはステップ(c)の前に実施される、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ベッドは、前記ベッドの前記展開位置において前記座席によって支持されない、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
航空機内で使用するためのポッドアセンブリであって、
座部および背部を有する座席と、
前記座席を少なくとも部分的に包囲するシェルであって、前記シェルは、前壁、後壁、第一および第二の側壁を含み、前記第一の壁は、乗客が前記シェルに出入りすることを可能にするための開口を含む、シェルと、
前記シェルの前記前壁に結合されたベッドであって、前記ベッドは、収容位置と、前記ベッドが概して平坦である展開位置との間で動かすことが可能であり、前記ベッドは前記展開位置において、少なくとも前記第一および第二の側壁によって支持される、ベッドと、
を備え、
前記ベッドが前記ベッドの前記展開位置においてベッドフットプリントを画定し、前記座席は、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置する展開位置と、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置しない収容位置との間でスライド可能である、ことを特徴とするポッドアセンブリ。
【請求項17】
前記ベッドは、前記ベッドの前記収容位置において折りたたまれ、前記前壁から前記後壁に向かって展開する、ことを特徴とする請求項16に記載のポッドアセンブリ。
【請求項18】
前記第一および第二の側壁が各々、その内部表面に固定されたトラックを含み、前記ベッドは少なくとも二つのローラを含み、前記ベッドが前記ベッドの前記収容位置から前記ベッドの前記展開位置へと広がるときに、前記ローラは前記トラックに沿って移動する、ことを特徴とする請求項16に記載のポッドアセンブリ。」

第5.当審拒絶理由について
平成29年7月13日付け手続補正により、請求項12の「座席を動かす」を「座席をスライドする」と補正したことで、「座席を動かす」ことの具体的態様が特定されて明らかになったので、当審拒絶理由の理由は解消した。

第6.原査定について
1.引用文献、引用発明等
(1)引用文献1について
原査定で引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与。以下同様。)

(1-1)
「【0001】
本発明は、航空機用キャビンモジュールに関する。」
(1-2)
「【0025】
図1は、航空機のキャビンの一区間の居住スペースを概略的に示す。この区間は、2つの連続する非常口2の間に長手方向に配置される。長手方向のキャビン壁4は、航空機の両側面でこのスペースの範囲を定める。窓6は、各キャビン壁に実装される。通路8は、キャビン区間の真ん中で長手方向に延びる。この通路8のそれぞれの側には、各場合に、それぞれ2人の乗客を収容することを目的としたモジュール10が3つある。通路8は、長手方向壁により各モジュールから分離される。
【0026】
通路8の長さは、たとえば約9mで、その幅は約0.75mである。各モジュール10は、縦方向に約2.90mの長さを有する。横方向では、モジュール10の幅は、たとえば約2.70mである。
【0027】
各モジュール10は、一方では、キャビンの床に対応する床と天井とにより区切られ、他方では、通路8、キャビン壁4、および2つの横断方向壁12により区切られる。たとえば図2および図4のようなある場合では、キャビン壁4が円形の円柱状であるため、天井がキャビン壁4で構成することができる。図は、2つのデッキを有する長距離航空機内のモジュール10を示す。図1、図2、および図4は、上部デッキに配置されるモジュールを示すが、図3は下部デッキに配置されるモジュールを示す。上部デッキに配置されるモジュールでは、天井が丸められたキャビン区間の形状に追従し、キャビン区間はほぼ円形の円柱状である。
【0028】
各モジュール10は、洗面所14、座席、および2つのベッドが装備されている。モジュール10は、洗面所14のいずれかの側に配置された、各場合に洗面所14と横断方向壁12との間の2つのドア16により通路8から入ることができる。各モジュール10は、横断方向壁12に平行な横中央面に対してほぼ対称に、横断方向壁12から均等な距離を置いて配置される。したがって、1つのモジュールは、それぞれ乗客1名を対象とし、乗客の個人スペースを画定する2つの半モジュールから成る。各半モジュールは、回転座席18、第2の座席、およびベッドが装備される。
【0029】
各洗面所14は、全般的に平行六面体の形状である。洗面所は、2つの大きな長手方向壁と2つの小さな横断方向壁を有する。洗面所には洗面台20が装備される。洗面所14は、洗面所の小さな横断方向壁に実装された2つのドア22から入ることができる。よって、半モジュールのそれぞれからモジュールの洗面所14にアクセスすることが可能である。
【0030】
図1に示される各ベッドには、図4に示されるように、2つの部分で実装される。第1の部分24は、水平方向軸26を中心に回転するよう構成され、第2の固定部28は、キャビン壁4に沿って配置される。第1の部分24は、モジュール10内部に位置する洗面所14の長手方向壁沿いの垂直上昇位置と、第1の部分が洗面所14からキャビン壁4に向かって固定部28まで延びる水平降下位置との間で回転する。
【0031】
回転する第1の部分24が上昇位置にあるとき、固定部28は、訪問者のための座席としても使用することができる。キャビン壁4の丸みのために、ベッドのこの固定部28を座席として使用できない場合、ベッドの固定部28の前に別の座席30を置くことができる。この座席30は、たとえば、ベッドの回転する第1の部分24の旋回運動を妨害しないように、第1の部分が水平方向位置にある間は折り畳んでおくことができる背もたれを有する。」

以上の記載事項から次の事項が認定できる。
(1-3)座席30は、座部を有することは明らかであり、記載事項(1-2)段落【0028】の「1つのモジュールは、それぞれ乗客1名を対象とし、乗客の個人スペースを画定する2つの半モジュールから成る」との記載によれば、モジュール10は2つの半モジュールから成るところ、段落【0030】、段落【0031】の記載及び【図1】、【図4】を参酌すると、各半モジュール内に座席30が置かれていることが理解できる。

(1-4)記載事項(1-2)の段落【0030】及び段落【0031】の記載並びに【図4】を参酌すると、第1の部分24は、半モジュール内の洗面所側の長手方向壁に結合されたものであって、前記第1の部分24は、洗面所側の長手方向壁の長手方向壁の水平方向軸26を中心として水平降下位置と長手方向壁沿いの垂直上昇位置との間で回転し、前記第1の部分24は水平降下位置において半モジュールを形成するキャビン壁4の固定部28で支持されることが理解できる。

(1-5)記載事項(1-2)の段落【0028】の記載及び【図2】を参酌すると、モジュール10を、横中央面を有する横中央壁によって区切ることにより半モジュールを画定していることが理解できる。また、段落【0025】の記載並びに【図1】を併せみると、半モジュールは、横断方向壁12、横中央面を有する横中央壁、通路8側の壁およびキャビン壁4を含み、前記通路8側の壁は、乗客が前記半モジュールに出入りすることを可能にするためのドア16を含むことが理解できる。

これら記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願発明1及び本願発明16の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」及び「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
[引用発明1]
「航空機用キャビンモジュールであって、
座部および背もたれを有する座席30と、
前記座席30が置かれる半モジュールと、
半モジュール内の洗面所側の長手方向壁に結合された第1の部分24であって、前記第1の部分24は、洗面所側の前記長手方向壁の水平方向軸26を中心として水平降下位置と長手方向壁沿いの垂直上昇位置との間で回転し、前記第1の部分24は水平降下位置において半モジュールを形成するキャビン壁4の固定部28によって支持される、第1の部分24と、
を備え、
前記座席30は、前記背もたれが前記第1の部分24は水平降下位置にある間は、前記背もたれがベッドの回転する第1の部分24の旋回運動を妨害しないように、折り畳んでおくことができる航空機用キャビンモジュール。」

[引用発明2]
「航空機用キャビンモジュールであって、
座部および背もたれを有する座席30と、
前記座席30が置かれる半モジュールであって、前記半モジュールは、横断方向壁12、横中央面を有する横中央壁、通路8側の壁およびキャビン壁4を含み、前記通路8側の壁は、乗客が前記半モジュールに出入りすることを可能にするためのドア16を含む、半モジュールと、
半モジュール内の洗面所側の長手方向壁に結合された第1の部分24であって、前記第1の部分24は、洗面所側の前記長手方向壁の水平方向軸26を中心として水平降下位置と前記長手方向壁沿いの垂直上昇位置との間で回転し、前記第1の部分24は水平降下位置において半モジュールを形成するキャビン壁4の固定部28によって支持される、第1の部分24と、
を備え、
前記座席30は、前記背もたれが前記第1の部分24は水平降下位置にある間は、前記背もたれがベッドの回転する第1の部分24の旋回運動を妨害しないように、折り畳んでおくことができる航空機用キャビンモジュール。」

(2)引用文献2について
原査定で引用された引用文献2の段落【0100】及び段落【0104】並びに【図6】?【図8】を参酌すると、次の事項が認定できる。

「ベッド30の展開時にイス31の背もたれを折り畳んで前記ベッド30を支持すること。」

(3)引用文献3について
原査定で引用された引用文献3の第2欄第3?15行、第4欄第9行?第6欄第7行及び第1図?第5図を参酌すると、次の事項が認定できる。

「ベッドの案内ロール16,17が、側壁3のガイドレール5に沿って移動することで、ベッドを展開すること。」

2.対比・判断
(1)本願発明1について
(1-1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、

ア.後者の「航空機用キャビンモジュール」は前者の「航空機で使用するためのポッドアセンブリ」に相当する。後者の「座部および背もたれを有する座席30」は前者の「座部および背部を有する座席」に相当し、後者の「前記座席30が置かれる半モジュール」は前者の「前記座席を少なくとも部分的に包囲するシェル」に相当する。

イ.記載事項(1-2)の段落【0030】の「図1に示される各ベッドには、図4に示されるように、2つの部分で実装される。第1の部分24は、水平方向軸26を中心に回転するよう構成され、第2の固定部28は、キャビン壁4に沿って配置される。」との記載及び【図4】を参酌すると、後者の「第1の部分24」は前者の「ベッド」に相当する。また、前者の「シェルによって支持される」とは、本願明細書の段落【0022】に記載されているように「シェル16に取り付けられたベッド支持構造物36によって全体が支持される」との態様を含むものであるところ、後者の「固定部28」はベッド支持構造物といえるから、後者の「半モジュールを形成するキャビン壁4の固定部28によって支持される」は、前者の「前記シェルによって支持される」に相当する。
そうすると、後者の「半モジュール内の洗面所側の長手方向壁に結合された第1の部分24であって、前記第1の部分24は、洗面所側の前記長手方向壁の水平方向軸26を中心として水平降下位置と長手方向壁沿いの垂直上昇位置との間で回転し、前記第1の部分24は水平降下位置において半モジュールを形成するキャビン壁4の固定部28によって支持される」ことと、前者の「前記シェルに結合されたベッドであって、前記ベッドは、前記ベッドが概して平坦である展開位置と収容位置との間で動かすことが可能であり、前記ベッドは前記展開位置において前記シェルによって支持される」こととは、「ベッドであって、前記ベッドは、前記ベッドが概して平坦である展開位置と収容位置との間で動かすことが可能であり、前記ベッドは前記展開位置において前記シェルによって支持される」という限度で共通する。

そうすると、両者は、本願発明1の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「航空機で使用するためのポッドアセンブリであって、
座部および背部を有する座席と、
前記座席を少なくとも部分的に包囲するシェルと、
ベッドであって、前記ベッドは、前記ベッドが概して平坦である展開位置と収容位置との間で動かすことが可能であり、前記ベッドは前記展開位置において前記シェルによって支持される、ベッドと、
を備えるポッドアセンブリ。」

そして、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
「ベッド」に関し、
本願発明1は、「シェル」に結合されたものであるのに対し、
引用発明1は、「半モジュール内の洗面所側の長手方向壁」に結合されたものである点。

[相違点2]
本願発明1は、「前記ベッドが前記ベッドの前記展開位置においてベッドフットプリントを画定し、前記座席は、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置する展開位置と、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置しない収容位置との間でスライド可能である」のに対し、
引用発明1は、「前記座席30は、前記背もたれが前記第1の部分24は水平降下位置にある間は、前記背もたれがベッドの回転する第1の部分24の旋回運動を妨害しないように、折り畳んでおくことができる」点。

(1-2)相違点についての判断
事案に鑑み相違点2を先に検討する。
本願発明1の「ベッドフットプリント」とは、明細書の段落【0023】を参酌すると、「ベッドが展開位置にあるときに、ベッドによって占有される空間」を意味するものである。その意味からすると、引用発明1における第1の部分24(本願発明1の「ベット」に相当。)が水平降下位置(本願発明1の「ベットの前記展開位置」に相当。)にあるときに、第1の部分24によって占有される空間が本願発明1の「ベッドフットプリント」に相当するものといえる。そして、引用発明1の「座席30」は、「背もたれ」が折り畳んでいない状態(本願発明1の「座席」の「展開位置」に対応。)では、第1の部分24が水平降下位置にあるときに、第1の部分24によって占有される空間内に位置しているから、本願発明1でいうところの「前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置する展開位置」を有するといえ、「背もたれ」が折り畳んでいる状態(本願発明1の「座席」の「収容位置」に対応。)では、第1の部分24によって占有される空間に位置しないから、本願発明1でいうところの「前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置しない収容位置」を有するといえる。
そうすると、上記相違点2は、「前記座席は、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置する展開位置と、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置しない収容位置との間」において、本願発明1は「スライド可能である」のに対し、引用発明は「背もたれ」が「折り畳んでおくことができる」という点に集約することになる。
引用文献2には、上記相違点2に係る「前記座席は、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置する展開位置と、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置しない収容位置との間でスライド可能である」点についての開示がないので、引用発明1に引用文献2に記載されている事項を適用しても本願発明1の上記相違点2に係る構成には至らない。
したがって、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1、引用文献2記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)本願発明3、4について
本願発明3、4は、本願発明1をさらに減縮したものであるので、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明1、引用文献2記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)本願発明5、6について
本願発明5、6は、本願発明1をさらに減縮したものであるところ、引用文献3にも、上記相違点2に係る「前記座席は、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置する展開位置と、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置しない収容位置との間でスライド可能である」ことが開示されていないから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明1、引用文献2及び3に記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)本願発明16について
(4-1)対比
本願発明16と引用発明2とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、

ア.後者の「航空機用キャビンモジュール」は前者の「航空機で使用するためのポッドアセンブリ」に相当する。後者の「座部および背もたれを有する座席30」は前者の「座部および背部を有する座席」に相当し、後者の「前記座席30が置かれる半モジュール」は前者の「前記座席を少なくとも部分的に包囲するシェル」に相当する。

イ.後者の「前記座席30が置かれる半モジュールであって、前記半モジュールは、横断方向壁12、横中央面を有する横中央壁、通路8側の壁およびキャビン壁4を含み、前記通路8側の壁は、乗客が前記半モジュールに出入りすることを可能にするためのドア16を含む、半モジュール」は前者の「前記座席を少なくとも部分的に包囲するシェルであって、前記シェルは、前壁、後壁、第一および第二の側壁を含み、前記第一の壁は、乗客が前記シェルに出入りすることを可能にするための開口を含む、シェル」に相当する。

ウ.先の(1)(1-1)イ.において述べた対比関係から、後者の「半モジュール内の洗面所側の前記長手方向壁に結合された第1の部分24であって、前記第1の部分24は、洗面所側の前記長手方向壁の水平方向軸26を中心として水平降下位置と長手方向壁沿いの垂直上昇位置との間で回転し、前記第1の部分24は水平降下位置においてキャビン壁4の固定部28によって支持される、第1の部分24」と前者の「前記シェルの前記前壁に結合されたベッドであって、前記ベッドは、収容位置と、前記ベッドが概して平坦である展開位置との間で動かすことが可能であり、前記ベッドは前記展開位置において、少なくとも前記第一および第二の側壁によって支持される、ベッド」とは、「ベッドであって、前記ベッドは、収容位置と、前記ベッドが概して平坦である展開位置との間で動かすことが可能であり、前記ベッドは前記展開位置において、前記シェルによって支持される、ベッド」という限度で共通する。

そうすると、両者は、本願発明16の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「航空機内で使用するためのポッドアセンブリであって、
座部および背部を有する座席と、
前記座席を少なくとも部分的に包囲するシェルであって、前記シェルは、前壁、後壁、第一および第二の側壁を含み、前記第一の壁は、乗客が前記シェルに出入りすることを可能にするための開口を含む、シェルと、
ベッドであって、前記ベッドは、収容位置と、前記ベッドが概して平坦である展開位置との間で動かすことが可能であり、前記ベッドは前記展開位置において、前記シェルによって支持される、ベッドと、
を備えるポッドアセンブリ。」

そして、両者は次の点で相違する。
[相違点1’]
「ベッド」に関し、
本願発明16は、「シェル」に結合されたものであり、展開位置において、「少なくとも前記第一および第二の側壁」によって支持されるものであるのに対し、
引用発明2は、「半モジュール内の洗面所側の前記長手方向壁」に結合されたものであり、水平降下位置において、「半モジュールを形成するキャビン壁4の固定部28」によって支持される点。

[相違点2’]
本願発明16は、「前記ベッドが前記ベッドの前記展開位置においてベッドフットプリントを画定し、前記座席は、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置する展開位置と、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置しない収容位置との間でスライド可能である」のに対し、
引用発明2は、「前記座席30は、前記背もたれが前記第1の部分24は水平降下位置にある間は、前記背もたれがベッドの回転する第1の部分24の旋回運動を妨害しないように、折り畳んでおくことができる」点。

(4-2)相違点についての判断
先の(1)(1-2)で述べた理由と同様に、引用発明に引用文献2に記載されている事項を適用しても本願発明16の上記相違点2’に係る構成には至らない。
したがって、上記相違点2’に係る本願発明16の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明16は、当業者であっても引用発明2、引用文献2記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

(5)本願発明17について
本願発明17は、本願発明16をさらに減縮したものであるので、本願発明16と同様の理由により、当業者であっても引用発明2、引用文献2記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

(6)本願発明18について
本願発明18は、本願発明16さらに減縮したものであるところ、引用文献3にも、上記相違点2’に係る「前記座席は、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置する展開位置と、前記背部が前記ベッドフットプリント内に位置しない収容位置との間でスライド可能である」ことが開示されていないから、本願発明16と同様の理由により、当業者であっても引用発明2、引用文献2及び3に記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

第7. むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-30 
出願番号 特願2013-537795(P2013-537795)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B64D)
P 1 8・ 537- WY (B64D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 志水 裕司  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 島田 信一
出口 昌哉
発明の名称 スライド式ベッドポッド  
代理人 川北 喜十郎  

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