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審決分類 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 G01C
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01C
管理番号 1331819
審判番号 不服2016-18744  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-13 
確定日 2017-09-19 
事件の表示 特願2013-519200「距離測定のためのライトプロジェクタ及びビジョンシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月19日国際公開、WO2012/007898、平成25年 9月 5日国内公表、特表2013-534635、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成23年7月12日
(パリ条約による優先権主張(外国庁受理2010年7月16日、欧州)を伴う国際出願)
拒絶査定: 平成28年7月25日(送達日:同年8月26日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成28年12月13日
手続補正: 平成28年12月13日


第2 原査定の概要
原査定(平成28年7月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由2.(進歩性)この出願の請求項1-13に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1-2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由3.(拡大先願)この出願の請求項1-13に係る発明は、その優先日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願3の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願日において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2010-68018号公報
2.国際公開第2007/063306号
3.特願2011-130067号(特開2012-22307号)


第3 本願発明
本願請求項1-13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は、平成28年12月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される発明であり、そのうち本願発明1は以下のとおりの発明である。

「積層された光学素子のスタックを有するライトプロジェクタであって、前記スタックは:
マイクロレンズアレイ;及び
前記マイクロレンズアレイによって異なる焦点距離に合焦される異なる反復ピッチを持つ複数の光パターンを同時に提供するように構成された一群の少なくとも1つの光学素子;
を有する、ライトプロジェクタ。」


第4 特許法第29条第2項(進歩性)について
1.引用文献、引用発明等
(1)引用文献1(特開2010-68018号公報)について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

「【0047】
このようにして生成された合成画像データD5では、以下説明するリフォーカス演算処理(積分処理)がなされることにより、任意の焦点(リフォーカス係数αによって規定されるリフォーカス面)に設定された画像(再構築画像)が生成される。すなわち、例えば図10(A)?図10(D)に示したように、リフォーカス係数α0,α1,α2を用いたリフォーカス演算処理により、それぞれのリフォーカス係数に対応するリフォーカス面上に合焦する再構築画像が生成される。ここでは、例えば図10(D)に示したように、確かに、リフォーカス係数α1に対応するリフォーカス面上において、挿入画像データD3の画像が合焦していることが分かる。」

「【0051】
以上のように本実施の形態では、画像処理部14において、光線の進行方向を保持した状態で取得された撮像データに対応する撮像画像内における指定された奥行き面をリフォーカス面とするリフォーカス係数α1を算出し、算出されたリフォーカス係数α1を用いて撮像データD1に対して第1の並び替え処理を行うと共に、その第1の並び替え処理後の撮像データD2に対して所定の2次元画像データ(挿入画像データD3)を挿入する画像合成処理を行うことによって、合成画像データD4を生成するようにしたので、撮像画像内の指定された奥行き面をリフォーカス面とするリフォーカス係数α1を用いて、挿入画像データD3の挿入処理(画像合成処理)を行うことができる。よって、この合成画像データD4に基づいて、実画像中の実距離と関連付けられた2次元画像を含む立体画像(例えば、合成画像データD5)の生成が可能となり、立体画像内の任意の奥行き方向に、任意の2次元画像を挿入することができる。
【0052】
すなわち、そのような立体画像に基づいて立体映像表示を行う場合に、立体像よりも手前側や奥側といったあいまいな基準ではなく、対象物からの相対距離により規定された正確な位置(実画像中の実距離により規定された位置)に2次元画像を挿入することができ、新しい立体映像の表現が可能となる。」

「【0081】
図20は、上記実施の形態の撮像装置を搭載した立体表示装置(立体表示装置4)のブロック構成を表したものである。この立体表示装置4は、被写体2の立体像(3D映像)を表示するものであり、撮像装置1と、この撮像装置1から出力される合成画像データDoutに基づいて画像表示を行う表示パネル41と、この表示パネル41の前面(表示パネル4と視聴者5との間)に配置されたマイクロレンズアレイ42とを備えている。ここで、表示パネル41としては、例えば液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネルなどが用いられる。なお、表示パネル41およびマイクロレンズアレイ42が、合成画像データDoutに基づいて立体映像表示を行う「表示部」の一具体例に対応する。」

上記段落【0081】の記載から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「液晶パネルや有機ELパネルなどの表示パネル41と、この表示パネル41の前面に配置されたマイクロレンズアレイ42とを備え、被写体2の立体像を表示する立体表示装置4。」

(2)引用文献2(国際公開第2007/063306号)について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「The drawings also illustrate apparatus for creating a three dimensional virtual object/computer interface, comprising: ・・・ imaging means 16 for imaging an object 13 in an object space 14; ・・・detection means 16 detecting when an object 13 intersects one of said depth zones I, II, III, IV at a location coincident with an artefact 15 at that depth; ・・・
At least one depth zone I, II, III, IV is defined by a focus condition, which is an in-focus condition of a projected pattern. ・・・The pattern, as illustrated in Figure 4, is a grid pattern cast by a projector 17. 」(第4ページ第33行?第5ページ第7行)
(当審訳:図面はまた、3次元仮想オブジェクト / コンピュータインタフェースを与える構成を示し、これは・・・オブジェクトスペース14にオブジェクト13を結像させるための撮像手段16と、・・・その深さのアーチファクト15と一致する位置で、オブジェクト13が前記深度ゾーンI, II, III, IVの1つといつ交差するかを検出する検出手段16と、・・・から構成される。
少なくとも1つの深度ゾーンI, II, III, IVが、投影されたパターンの合焦状態である焦点条件によって定義される。・・・パターンは、図4で例示されるように、プロジェクタ17によって投射された格子パターンである。)

2.対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
まず、引用発明における「マイクロレンズアレイ42」は、本願発明1の「マイクロレンズアレイ」に相当する。
また、引用発明において表示される「被写体2の立体像」は、通常様々な光パターンを含むものであるから、引用発明の「液晶パネルや有機ELパネルなどの表示パネル41」と、本願発明1の「前記マイクロレンズアレイによって異なる焦点距離に合焦される異なる反復ピッチを持つ複数の光パターンを同時に提供するように構成された一群の少なくとも1つの光学素子」とは、共に「複数の光パターンを同時に提供するように構成された一群の少なくとも1つの光学素子」である点で共通するといえる。
そして、引用発明の「マイクロレンズアレイ42」は「表示パネル41の前面に配置され」るものであるから、「マイクロレンズアレイ42」と「表示パネル41」とは積層さたものであるといえる。
また、引用発明の「立体表示装置4」と本願発明1の「ライトプロジェクタ」とは、共に「光学装置」である点で共通する。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「積層された光学素子のスタックを有する光学装置であって、前記スタックは:
マイクロレンズアレイ;及び
複数の光パターンを同時に提供するように構成された一群の少なくとも1つの光学素子;
を有する、光学装置。」

(相違点)
相違点1:本願発明1において、「光学素子」の提供する「複数の光パターン」は、「前記マイクロレンズアレイによって異なる焦点距離に合焦される異なる反復ピッチを持つ」とされているのに対し、引用発明において「液晶パネルや有機ELパネルなどの表示パネル41」が表示する画像は、そのような「反復ピッチ」を持つとはされていない点。

相違点2:本願発明1は、「ライトプロジェクタ」であるのに対し、引用発明は「立体表示装置」である点。

イ 相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、相違点1に係る本願発明1の、「光学素子」の提供する「複数の光パターン」が「前記マイクロレンズアレイによって異なる焦点距離に合焦される異なる反復ピッチを持つ」という構成は、引用文献1,2のいずれにも記載も示唆もされていない。また、該構成が本願優先日前において周知技術であったともいえない。したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(2)本願発明2-13について
本願の請求項2-13は請求項1を直接または間接的に引用しており、本願発明2-13も、上記相違点1に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第5 特許法第29条の2(拡大先願)について
1.先願、先願発明等
原査定の拒絶の理由に引用された先願3(特願2011-130067号(特開2012-22307号))の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には、次の事項が記載されている。

「【0052】
図8を参照して、上述のようにして生成された三次元情報を含む表示用画像を表示するための表示装置110について説明する。図8はz軸方向における表示装置110の構成を模式的に示す図である。図8(a)に示すように、表示装置110は、表示器111と、表示用マイクロレンズアレイ112と、虚像レンズ113とを備える。表示器111は、たとえばバックライトを有する液晶表示器や有機EL表示器等により構成され、二次元状に配列された複数の表示画素配列114を有する。これら複数の表示画素配列114のそれぞれは、二次元状に配列された複数の表示画素115を有する。表示画素115は、上述した表示制御部107により制御されて、後述するように表示用画像データに対応して発光する。
・・・
【0055】
図8(b)に示すように、上述した表示装置110のz軸方向における表示用マイクロレンズアレイ112と表示画素115との位置関係は、図4に示す撮像ユニット100のz軸方向におけるマイクロレンズアレイ12と撮像画素131との位置関係と等価と見なすことができる。図4(b)に示すように、ある焦点位置Sからの被写体光が複数の撮像画素131へ入射した場合、画像パターン生成部106は、図6(a)に示す撮像画素131の入射光の配列パターンと同様の配列パターンで表示画素115が発光するように表示用画像データを生成する。この場合、図8(b)に示すように、表示画素115からの光束r1?r5は表示用マイクロレンズ116を介して焦点位置S’に像を結ぶ。
【0056】
合成画像データの各画素のそれぞれに関して、式(5)で表されるマイクロレンズ120と撮像画素131との対応関係が表示用マイクロレンズ116と表示画素115とによって再現されると、表示器111から射出した光は合成画像データの各画素で異なる焦点位置Sに対応した焦点位置S’に像を結ぶ。その結果、合成画像データの立体情報に対応する三次元情報を有する表示用画像が立体形状を有する空中像として形成されることになる。この場合、空中像では、被写体の実際の奥行き方向の距離が、その距離感を保ったまま表示用画像で縮小して再現されることになる。すなわち、空中像では被写体の実際の距離の逆数が圧縮されることになる。なお、図8(b)においても、表示画素115からの光束r1?r5の主光線を示している。
・・・
【0063】
以上で説明した実施の形態によるデジタルカメラ1によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)画像積算部105は、撮像素子13から出力された画像信号を用いて複数の焦点位置に関する情報を有する合成画像データを生成し、画像パターン生成部106は、合成画像データに基づいて三次元情報を有する表示用画像データを生成する。表示器111は、複数の表示画素115が二次元状に配列され、複数の表示画素115は表示用画像データに応じて複数の表示画素から光束を射出する。そして、表示用マイクロレンズアレイ112には、複数の表示画素115から射出された光束が合成されて三次元像を形成する複数の表示用マイクロレンズ116が二次元状に配列され、虚像レンズ113は表示用マイクロレンズ116により形成された三次元像を観察可能に構成する。その結果、ステレオ型やレンチキュラー方式のように右眼と左目との視差による錯覚を利用した立体表示を行うことなく、ユーザは立体形状を有する被写体の像を画面上に三次元の空中像として観察することができる。したがって、錯覚に基づくものではなく、実際に三次元に再現された空
中像を観察するので、従来の立体画像の表示で問題となっていた立体酔いや小児の視覚形成機能の阻害等の生理的な悪影響を防ぐことができる。さらに、専用のメガネ等を用いることなく観察できるので、長時間の観察が可能になる。
・・・
【0066】
(3)虚像レンズ113は、虚像レンズ113とその焦点距離と間に表示用マイクロレンズ116によって三次元像面が形成されるように配置するようにした。したがって、画像パターン生成部106により生成された二次元の表示画像用データを、簡易な構成で三次元の空中像として観察することができる。」

また、図8の記載から、「表示器111」と「表示用マイクロレンズアレイ112」とが積層配置されていることがわかる。

そうすると、上記段落【0052】及び図8の記載から、先願3の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

「バックライトを有する液晶表示器や有機EL表示器等により構成される表示器111と、表示器111に積層された表示用マイクロレンズアレイ112とを備え、三次元情報を含む表示用画像を表示するための表示装置110。」

2.対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と先願発明とを対比する。
まず、先願発明における「表示用マイクロレンズアレイ112」は、本願発明1の「マイクロレンズアレイ」に相当する。
また、先願発明において表示される「三次元情報を含む表示用画像」は、通常様々な光パターンを含むものであるから、先願発明の「バックライトを有する液晶表示器や有機EL表示器等により構成される表示器111」と、本願発明1の「前記マイクロレンズアレイによって異なる焦点距離に合焦される異なる反復ピッチを持つ複数の光パターンを同時に提供するように構成された一群の少なくとも1つの光学素子」とは、共に「複数の光パターンを同時に提供するように構成された一群の少なくとも1つの光学素子」である点で共通するといえる。
また、先願発明の「表示装置110」と本願発明1の「ライトプロジェクタ」とは、共に「光学装置」である点で共通する。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「積層された光学素子のスタックを有する光学装置であって、前記スタックは:
マイクロレンズアレイ;及び
複数の光パターンを同時に提供するように構成された一群の少なくとも1つの光学素子子;
を有する、光学装置。」

(相違点)
相違点1:本願発明1において、「光学素子」の提供する「複数の光パターン」は、「前記マイクロレンズアレイによって異なる焦点距離に合焦される異なる反復ピッチを持つ」とされているのに対し、先願発明において「バックライトを有する液晶表示器や有機EL表示器等により構成される表示器111」が表示する画像は、そのような「反復ピッチ」を持つとはされていない点。

相違点2:本願発明1は、「ライトプロジェクタ」であるのに対し、先願発明は「三次元情報を含む表示用画像を表示するための表示装置110」である点。

イ 判断
上記のように、本願発明1と先願発明との間には相違点1,2が存在しており、これらは設計事項であるともいえない。したがって、本願発明1と先願発明とは同一の発明であるとはいえない。

(2)本願発明2-13について
本願の請求項2-13は請求項1を直接または間接的に引用しており、本願発明2-13も、先願発明との間に上記相違点1,2を有するものである。したがって、本願発明2-13も、先願発明と同一の発明であるとはいえない。


第6 原査定について
1.理由2(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1-13は「光学素子」の提供する「複数の光パターン」が「前記マイクロレンズアレイによって異なる焦点距離に合焦される異なる反復ピッチを持つ」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

2.理由3(特許法第29条の2)について
審判請求時の補正により、本願発明1-13は「光学素子」の提供する「複数の光パターン」が「前記マイクロレンズアレイによって異なる焦点距離に合焦される異なる反復ピッチを持つ」という事項を有するものとなっており、特許出願3の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるとはいえない。したがって、原査定の理由3を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-04 
出願番号 特願2013-519200(P2013-519200)
審決分類 P 1 8・ 161- WY (G01C)
P 1 8・ 121- WY (G01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 俊久岸 智史  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 中塚 直樹
関根 洋之
発明の名称 距離測定のためのライトプロジェクタ及びビジョンシステム  
代理人 特許業務法人M&Sパートナーズ  

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