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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1331929
審判番号 不服2016-18685  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-12 
確定日 2017-09-19 
事件の表示 特願2012-141358「多軸磁気センサ、および、その製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月16日出願公開、特開2014- 6127、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年6月22日の出願であって、平成28年2月23日付けで拒絶理由が通知され、平成28年4月28日付けで手続補正がなされたが、平成28年9月5日付けで、拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これに対し、平成28年12月12日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年9月5日付け拒絶査定)の概要は次の通りである。

この出願の請求項1-15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、引用文献1-7に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2011/068146号
2.特開平9-231517号公報
3.特開2005-236134号公報
4.特開2011-7801号公報
5.特開2006-267120号公報
6.特表2011-501153号公報
7.特開2006-64530号公報

第3 本願発明
本願の請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
3軸の磁場を検出することが可能な多軸磁気センサであって、
磁化が第一の方向に固定されたピンド層と、前記磁化の向きを前記第一の方向とは異なる第二の方向へ変えることが可能なフリー層とを有する複数の磁気抵抗効果素子と、
前記複数の磁気抵抗効果素子の少なくとも1つが配置された位置を空間的に覆う所定の領域内に配設された磁気収束手段と
を具え、
前記複数の磁気抵抗効果素子は、前記磁気収束手段の下において、平面視で該磁気収束手段の領域内に配置され、
各磁気抵抗効果素子における前記ピンド層の磁化の向きは、前記第一の方向に固定される
ことを特徴とする多軸磁気センサ。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
a 「[0026]
図1は本実施形態におけるZ軸磁気センサの平面図、図2は、図1に示すZ軸磁気センサから軟磁性体及び第2の軟磁性体を除去した平面図、図3は図1に示すA-A線から高さ方向に切断し矢印方向から見たZ軸磁気センサの部分拡大縦断面図、図4は本実施形態におけるZ軸磁気センサの回路図、図5は、本実施形態における磁気抵抗効果素子の部分縦断面図、図6は、Z軸磁気センサ、X軸磁気センサ、Y軸磁気センサを備える地磁気センサの概念図(平面図)、図7は、本実施形態の軟磁性体から発せられる磁界成分強度を示す図、図8は、別の実施形態における軟磁性体と磁気抵抗効果素子との配置を示す部分縦断面図、図9は、別の実施形態における軟磁性体と磁気抵抗効果素子とを示す部分平面図、図10は、Y軸磁気センサの部分平面図、である。」

b 「[0029]
Z軸磁気センサ1は、図1,図3に示すように、基板2上に形成された磁気抵抗効果素子Sと、第1の軟磁性体3とを有して構成される。」

c 「[0031]
図5に示すように、磁気抵抗効果素子S(GMR素子)は、例えば下から反強磁性層33、固定磁性層34、非磁性層35、およびフリー磁性層36の順に積層されて成膜され、フリー磁性層36の表面が保護層37で覆われている。磁気抵抗効果素子Sは例えばスパッタにて成膜される。」

d 「[0033]
磁気抵抗効果素子Sでは、反強磁性層33と固定磁性層34との反強磁性結合により、固定磁性層34の磁化方向(P方向)が固定されている。本実施形態は後述するように磁気抵抗効果素子Sが前後方向(Y1-Y2)に延出した形状であり、図5に示すように、固定磁性層34の固定磁化方向(P方向)が、例えば右方向(X1)に向いている。一方、フリー磁性層36の磁化方向は、外部磁界により変動する。フリー磁性層36は形状磁気異方性により、無磁場成分状態(外部磁界の作用がない状態)では、前後方向(Y1-Y2)に向けられている。」

e 「[0044]
図3に示すように、各第1の軟磁性体3は水平面に平行な上面3aと下面3bと、上面3a及び下面3b間を繋ぎ垂直面である側面3c,3cとを有して構成される。なお側面3c,3cは垂直面でなく下方に向けて徐々に幅寸法T1が広がる傾斜面とすることも出来る。図3に示すように、磁気抵抗効果素子S1は、第1の軟磁性体3の下面3bの左端部3b1近傍に配置されている。一方、磁気抵抗効果素子S9,S10は、第1の軟磁性体3の下面3bの右端部3b2近傍に配置されている。
[0045]
図1,図3に示すように、各磁気抵抗効果素子Sと第1の軟磁性体3との間には左右方向(X1-X2)に間隔T3が設けられる(図3参照)。なお、多少、磁気抵抗効果素子Sと第1の軟磁性体3とが平面視にてオーバーラップしていてもよいが、磁気抵抗効果素子Sと第1の軟磁性体3とは非接触状態を維持する。」

f 「[0065]
図10(a)は、Y軸磁気センサ50の平面図、図10(b)は、Y軸磁気センサ50をB-B線から高さ方向に切断し矢印方向から見た部分縦断面図を示す。」

g 「[0070]
図10に示すように、磁気抵抗効果素子Sを構成する各素子連設体61の間、及び最も外側に位置する素子連設体61の外側に軟磁性体18が設けられている。軟磁性体18は、各素子連設体61と非接触で配置されている。軟磁性体18は例えばスパッタやメッキにて薄膜形成される。軟磁性体18は、NiFe、CoFe、CoFeSiBやCoZrNb等で形成されるが、CoZrNbで形成されることが好適である。
[0071]
図10(b)に示すように、軟磁性体18の前後方向(Y1-Y2)への幅寸法T7は、3?10μm程度で形成され、軟磁性体18の高さ寸法T8は、0.5?1.5μm程度で形成される。そして、T8/T7は、0.05?0.5程度である。このように、Y軸磁気センサ50に用いられる軟磁性体18の高さ寸法T8は、Z軸磁気センサ1に用いられる第1の軟磁性体3の高さ寸法T2に比べて小さく、幅寸法T7に対するアスペクト比(T8/T7)も小さい。このため、仮に、Y軸磁気センサ50に垂直磁界成分H1が作用しても、図3に示すように垂直磁界成分H1を水平方向への磁界成分H2,H3に変換する能力は小さく、Y軸磁気センサ50では垂直磁界成分H1を検知することはできない。一方、前後方向(Y1-Y2)に向く水平磁界成分H5が作用すると、各素子部14のフリー磁性層36の電気抵抗値が変動して、前後方向(Y1-Y2)への水平磁界成分H5を検知することができる。なお左右方向(X1-X2)への水平磁界成分H6は、磁気シールドとなる軟磁性体18に吸収されるため、左右方向(X1-X2)への水平磁界成分H6に対して素子部14は見かけ上、感度が低下し、左右方向(X1-X2)への水平磁界成分H6を検知しない。このようにY軸磁気センサ50は、前後方向(Y1-Y2)への水平磁界成分H5を検知する。
[0072]
なお図示しないがX軸磁気センサは図10(a)のY軸磁気センサ50をX-Y平面内にて90度回転させた形態であり、X軸磁気センサは、左右方向(X1-X2)への水平磁界成分H6を検知する。
[0073]
図6に示すように、本実施形態では、支持体71上にX軸磁気センサ70、Y軸磁気センサ50、Z軸磁気センサ1を配置することが可能である。図6に示すように、X軸磁気センサ70を構成する磁気抵抗効果素子Sの固定磁性層の固定磁化方向(P方向)は、X1-X2方向、Y軸磁気センサ50を構成する磁気抵抗効果素子Sの固定磁性層の固定磁化方向(P方向)は、Y1-Y2方向である。Z軸磁気センサ1を構成する磁気抵抗効果素子Sの固定磁性層の固定磁化方向(P方向)は、図6(a)に示すように、Y1-Y2方向であってもよいし、X1-X2方向であってもよいし、あるいは図6(b)に示すように、磁気抵抗効果素子SをY1-Y2方向とX1-X2方向との間にて斜めに形成して、前記固定磁化方向(P方向)を斜めにしてもよい。」

h 図10より、Y軸磁気センサ50の磁気抵抗効果素子Sを構成する各素子連設体61と軟磁性体18が、平面視でオーバーラップしていないことが、見て取れる。

上記a?hより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所を示す。)。
「Z軸磁気センサ、X軸磁気センサ、Y軸磁気センサを備える地磁気センサであって([0026])、
固定磁化方向(P方向)が、右方向(X1)に向いている固定磁性層34と、磁化方向が、無磁場成分状態では、前後方向(Y1-Y2)に向けられ、外部磁界により変動するフリー磁性層36とを有する磁気抵抗効果素子Sを具え([0031]、[0033])、
Z軸磁気センサ1は、磁気抵抗効果素子Sと、第1の軟磁性体3とを有して構成され([0029])、
第1の軟磁性体3は、水平面に平行な上面3aと下面3bと、上面3a及び下面3b間を繋ぎ垂直面である側面3c,3cとを有して構成され、
Z軸磁気センサ1の磁気抵抗効果素子S1は、第1の軟磁性体3の下面3bの近傍に配置されており([0044])、多少、磁気抵抗効果素子Sと第1の軟磁性体3とが平面視にてオーバーラップしていてもよく([0045])、
Y軸磁気センサ50には、磁気抵抗効果素子Sを構成する各素子連設体61の間、及び最も外側に位置する素子連設体61の外側に軟磁性体18が設けられており([0065]、[0070])、
Y軸磁気センサ50の磁気抵抗効果素子Sは、軟磁性体18と平面視でオーバーラップしておらず(図10)、
X軸磁気センサはY軸磁気センサ50をX-Y平面内にて90度回転させた形態であり([0072])、
X軸磁気センサ70を構成する磁気抵抗効果素子Sの固定磁性層の固定磁化方向(P方向)は、X1-X2方向、Y軸磁気センサ50を構成する磁気抵抗効果素子Sの固定磁性層の固定磁化方向(P方向)は、Y1-Y2方向、Z軸磁気センサ1を構成する磁気抵抗効果素子Sの固定磁性層の固定磁化方向(P方向)は、Y1-Y2方向であってもよいし、X1-X2方向であってもよい([0073])
地磁気センサ。」

2 引用文献6について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献6には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「【0015】
図1で示される実施形態では、4つのMR素子のうちの2つ、MR素子14およびMR素子16は、当該素子を印加磁場から分離し、それらが基準素子として働くことを可能にする磁気シールドによって覆われる。MR素子14、16はそれぞれ、磁気シールド26、28によって覆われる。磁気シールドを備えるMR素子14、16はそれぞれ、遮蔽されたMR素子30、32として示される。残りの2つのMR素子、MR素子12および18は、磁場にさらされ、そのため能動(または検出)素子として動作する。磁気遮蔽は、MR素子をNiFeなどの高透磁率材料で囲むことによって達成されてもよい。磁気遮蔽は、多層遮蔽であってもよい。」

b 「【0025】
遮蔽されたデバイスは、磁束集中器として働くことができるので、ある設計では遮蔽されないデバイスだけを使用することが望ましいこともある。」

3 引用文献7について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献7には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「【0039】
また、SOI層4の第1主面U側には、第1主面Uの法線方向(Z軸方向)に磁電変換素子5と重なる領域(磁電変換素子5の上面)を除く第1主面U(SOI層4の表面)に、空気よりも透磁率の低い材料により低透磁率部17(第6の低透磁率部)が形成されている。さらに、第1主面U側において、磁電変換素子5の上面、及び低透磁率部17の表面に、高透磁率の材料により構成された磁性体部18(第4の磁性体部)が形成されている。」

b 「【0042】
次に、上述のように構成された磁気センサ1bの動作について説明する。図9は、磁気センサ1bの動作を説明するための図8(a)におけるX-X’断面図である。図9は、Z軸方向の磁界中に磁気センサ1bを配置した場合の磁束Bを破線で示している。図9に示す磁気センサ1bでは、上述したように、磁束Bは磁気抵抗が最も小さくなる経路を選択的に通過する性質を有するので、磁性体部18によって収束された磁束Bは、磁気抵抗が低い凸部19と底面14表面の磁性体部16との対向部、すなわち磁電変換素子5を通過する。これにより、磁電変換素子5に磁束Bが収束され、磁電変換素子5に対する磁束Bの収束効率を向上させることができる。」

c 「【0053】
また、例えば、図13に示す磁気センサ1dのように、図4に示す磁気センサ1a(第1の磁気センサ)を二つ、図7に示す磁気センサ1b(第2の磁気センサ)を一つ、磁電変換素子5の感度軸が互いに直交する向きに、同一の半導体基板上に形成するようにしてもよい。また、図4に示す磁気センサ1aの代わりに図1に示す磁気センサ1を用いてもよく、図7に示す磁気センサ1bの代わりに図11に示す磁気センサ1cを用いてもよい。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「固定磁性層34」、「フリー磁性層36」、「第1の軟磁性体3」は、それぞれ、本願発明1の「ピンド層」、「フリー層」、「磁気収束手段」に相当する。

イ 引用発明の「Z軸磁気センサ、X軸磁気センサ、Y軸磁気センサを備える地磁気センサ」は、本願発明1の「3軸の磁場を検出することが可能な多軸磁気センサ」に相当する。

ウ 引用発明は「X軸磁気センサ70を構成する磁気抵抗効果素子S」、「Y軸磁気センサ50を構成する磁気抵抗効果素子S」及び「Z軸磁気センサ1を構成する磁気抵抗効果素子S」を有するので、引用発明の「地磁気センサ」は、複数の「磁気抵抗効果素子S」を有している。
よって、引用発明の「地磁気センサ」の「固定磁化方向(P方向)が、右方向(X1)に向いている固定磁性層34と、磁化方向が、無磁場成分状態では、前後方向(Y1-Y2)に向けられ、外部磁界により変動するフリー磁性層36とを有する磁気抵抗効果素子S」は、本願発明1の「磁化が第一の方向に固定されたピンド層と、前記磁化の向きを前記第一の方向とは異なる第二の方向へ変えることが可能なフリー層とを有する複数の磁気抵抗効果素子」に相当する。

エ 引用発明における「オーバーラップ」とは、部分的に重なることを意味すると解されるから、引用発明の「Z軸磁気センサ1の磁気抵抗効果素子S1」が「下面3bの近傍に配置されて」「多少、」「平面視にてオーバーラップしていてもよ」い、「水平面に平行な上面3aと下面3bと、上面3a及び下面3b間を繋ぎ垂直面である側面3c,3cとを有して構成され」る「第1の軟磁性体3」と、本願発明1の「前記複数の磁気抵抗効果素子の少なくとも1つが配置された位置を空間的に覆う所定の領域内に配設された磁気収束手段」とは、「前記複数の磁気抵抗効果素子の少なくとも1つが配置された位置と少なくともオーバーラップして配設された磁気収束手段」である点で共通する。

オ 引用発明の「Y軸磁気センサ50の磁気抵抗効果素子Sは、軟磁性体18と平面視でオーバーラップしておらず、X軸磁気センサはY軸磁気センサ50をX-Y平面内にて90度回転させた形態であり、」「Z軸磁気センサ1の磁気抵抗効果素子S1は、」「多少、磁気抵抗効果素子Sと第1の軟磁性体3とが平面視にてオーバーラップしていてもよく」と、本願発明1の「前記複数の磁気抵抗効果素子は、前記磁気収束手段の下において、平面視で該磁気収束手段の領域内に配置され」とは、「少なくとも1つの磁気抵抗効果素子は、前記磁気収束手段の下において、平面視で該磁気収束手段と少なくともオーバーラップして配置され」る点で共通する。

すると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「3軸の磁場を検出することが可能な多軸磁気センサであって、
磁化が第一の方向に固定されたピンド層と、前記磁化の向きを前記第一の方向とは異なる第二の方向へ変えることが可能なフリー層とを有する複数の磁気抵抗効果素子と、
前記複数の磁気抵抗効果素子の少なくとも1つが配置された位置と少なくともオーバーラップして配設された磁気収束手段と
を具え、
少なくとも1つの磁気抵抗効果素子は、前記磁気収束手段の下において、平面視で該磁気収束手段と少なくともオーバーラップして配置される
多軸磁気センサ。」

(相違点1)
本願発明1は、「磁気収束手段」が、「前記複数の磁気抵抗効果素子の少なくとも1つが配置された位置を空間的に覆う所定の領域内に配設され」るのに対して、引用発明は、「第1の軟磁性体3」が、「多少、磁気抵抗効果素子Sと」「平面視にてオーバーラップ」している点。
(相違点2)
本願発明1は、「前記複数の磁気抵抗効果素子は、前記磁気収束手段の下において、平面視で該磁気収束手段の領域内に配置され」るのに対して、引用発明は、「Z軸磁気センサ1の磁気抵抗効果素子S1は、」「多少、磁気抵抗効果素子Sと第1の軟磁性体3とが平面視にてオーバーラップして」おり、「X軸磁気センサ」と「Y軸磁気センサ50」の「磁気抵抗効果素子S」は、「軟磁性体18と平面視でオーバーラップして」いない点。
(相違点3)
本願発明1は、「各磁気抵抗効果素子における前記ピンド層の磁化の向きは、前記第一の方向に固定される」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。

(2)判断
上記相違点3について検討する。
引用発明は、X軸磁気センサ70を構成する磁気抵抗効果素子Sの固定磁性層の固定磁化方向(P方向)は、X1-X2方向、Y軸磁気センサ50を構成する磁気抵抗効果素子Sの固定磁性層の固定磁化方向(P方向)は、Y1-Y2方向、Z軸磁気センサ1を構成する磁気抵抗効果素子Sの固定磁性層の固定磁化方向(P方向)は、Y1-Y2方向であってもよいし、X1-X2方向であってもよいが、
Y軸磁気センサ50は、前後方向(Y1-Y2)に向く水平磁界成分H5が作用すると、各素子部14のフリー磁性層36の電気抵抗値が変動して、前後方向(Y1-Y2)への水平磁界成分H5を検知することができ、左右方向(X1-X2)への水平磁界成分H6は、磁気シールドとなる軟磁性体18に吸収されるため、左右方向(X1-X2)への水平磁界成分H6に対して素子部14は見かけ上、感度が低下し、左右方向(X1-X2)への水平磁界成分H6を検知せず、前後方向(Y1-Y2)への水平磁界成分H5を検知するのであり([0071])、
X軸磁気センサは、Y軸磁気センサ50をX-Y平面内にて90度回転させた形態であり、X軸磁気センサは、左右方向(X1-X2)への水平磁界成分H6を検知する([0072])のであるから、
引用発明において、X軸磁気センサ70の固定磁化方向とY軸磁気センサ50の固定磁化方向を同じ方向に揃えることは、想定していない。

また、引用文献2-7にも、各磁気抵抗効果素子におけるピンド層の磁化の向きを、第一の方向に固定することは記載されていない。

したがって、上記相違点3に係る本願発明1の構成は、引用発明、引用文献2-7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

よって、本願発明1は、上記相違点1、2について検討するまでもなく、引用発明、引用文献2-7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2-12について
本願発明2-12も、上記相違点3に係る本願発明1の「各磁気抵抗効果素子における前記ピンド層の磁化の向きは、前記第一の方向に固定される」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由によって、引用発明、引用文献2-7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明13について
本願発明13は、本願発明1に対応する製造方法の発明であり、上記相違点3に係る本願発明1の「各磁気抵抗効果素子における前記ピンド層の磁化の向きは、前記第一の方向に固定される」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由によって、引用発明、引用文献2-7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4 本願発明14、15について
本願発明14、15も、上記相違点3に係る本願発明1の「各磁気抵抗効果素子における前記ピンド層の磁化の向きは、前記第一の方向に固定される」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由によって、引用発明、引用文献2-7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-15は「各磁気抵抗効果素子における前記ピンド層の磁化の向きは、前記第一の方向に固定される」という事項を有するものとなっており、引用発明、引用文献2-7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-04 
出願番号 特願2012-141358(P2012-141358)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 續山 浩二  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 関根 洋之
須原 宏光
発明の名称 多軸磁気センサ、および、その製造方法  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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