• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1332022
審判番号 不服2016-17895  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-30 
確定日 2017-08-31 
事件の表示 特願2016- 49897「導光部に湾曲部を有する照明器具」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月28日出願公開、特開2016-135274〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年9月4日に請求人により出願された実願2014-004721号(以下、「原出願」という。)に係る実用新案登録第3194316号(登録日:平成26年10月22日)に基づいて、特許法第46条の2第1項の規定により、平成28年3月14日にされた特許出願であって、平成28年5月27日付けで拒絶理由が通知され、同年7月27日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月30日付けで拒絶査定されたところ、同年11月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、さらに、審判請求人からの要請により、平成29年6月27日に面接審理が行われたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容について
(1)本件補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、

「 【請求項1】
空気との屈折率の差を利用して、光を導いて対象物を照射するための導光部と、
前記導光部の光源である光源部と、
前記光源部の電源である電源部と、
を含む照明器具であって、
前記導光部は、空気より屈折率が高い透光性の素材により形成され、
前記導光部の先端部分は、前記照明器具の長軸に対して40度以上湾曲する湾曲部を含み、
前記導光部は、漸次縮径する形状の基端部と、前記基端部から直線状に延伸して前記先端部分を対象物に近付けるための幹部を含み、
前記幹部は、直径が10mm以下で、軸方向の長さが60mm?500mmである
照明器具。」(下線は補正箇所を示す。)と補正された。

(2)本件補正の目的について
特許請求の範囲の請求項1についての上記の補正は、本件補正前の「光を導いて対象物を照射するための導光部」が、「空気との屈折率の差を利用」するものであるとの限定と、「直線状に延伸する幹部」を含む「導光部」を、「漸次縮径する形状の基端部と、前記基端部から直線状に延伸して前記先端部分を対象物に近付けるための幹部」を含むものであるとの限定とを加える補正をするものであるから、上記補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

2 独立特許要件についての検討
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)において摘示したとおりの発明特定事項により特定されるものである。

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由の引用文献1として引用され、原出願前に頒布された刊行物である特開2002-028169号公報(以下、「引用例1」という。)には、つぎの事項が記載されている。(以下、下線は当審で付した。)

(ア)「【0015】
【発明の実施の形態】図1及び図2(a),(b)に、初期う蝕を検知するのに有利な歯科用照明器が示されている。この歯科用照明器は、光源としての単一のキセノンランプ(キセノンガスが封入されたランプ)1、該キセノンランプ1に電力供給する乾電池2、これらを収納するケーシング3、前記キセノンランプ1をON-OFF操作するための回転式(押しボタン式やスライド式等でもよい)のスイッチ4等からなる汎用のペンライト5と、このペンライト5の先端の筒状部6に差し込んで前記キセノンランプ1からの光を導入して出射するための導光プローブ7とから構成している。図に示す20は、胸ポケット等に差し込んで挟持固定するためのクリップであり、無くてもよい。前記歯科用照明器は、特に診療室外での歯科検診において有利なコードレスタイプ(ハンディタイプ)としているが、ケーシング3を軽くし、操作し易くする目的から、乾電池を携帯のできる別ユニットとして設け、光源部とコードで接続する方式にしてもよい。又、交流を使用できるコードタイプにしてもよい。前記交流を使用できるタイプでは、取扱面においてコードレスタイプに比べて劣るものの、電池の消耗による交換作業が不要になる利点がある。前記乾電池の他、鉛蓄電池、アルカリ蓄電池、カドミウム蓄電池等の各種の蓄電池(二次電池)等でもよい。又、ここでは、汎用のペンライト5を利用することによって、製造面において有利にすることができるが、専用のもので構成してもよい。」

(イ)「【0017】図3に示すように、前記導光プローブ7は、前記ケーシング3の一端に設けた前記筒状部6である差込部10に着脱自在に内挿され、かつ、前記キセノンランプ1からの光及び反射鏡9により反射された光を導入するための挿入部11と、この挿入部11の先端から所定角度α円錐状(コーン状)に形成された反射面12Aを有する光源側の集光部12と、この集光部12の先端に延出されると共に円柱状に形成された反射面13Aを有し、かつ、曲率半径Rで所定角度θを持って緩やかに湾曲させてなる導光部13と、導光部13の先端に導光部13からの光を集光させるために円錐状に形成された反射面14Aを有する先端側の集光部14とから構成し、それら各部を無色(場合によっては有色でもよい)透明な樹脂により一体形成している。前記導光部13を、前記集光部12側に位置する第1ストレート部13Aと、この第1ストレート部13Aの先端から前記のように曲率半径Rで所定角度θを持って緩やかに湾曲させた湾曲部13Bと、この湾曲部13Bの先端に延出させた第2ストレート部13Cとから構成することによって、反射面13Aにて確実に反射(全面反射)させながら光を案内する点において最適であるが、2つのストレート部13A,13Cの一方又は両方を無くして実施してもよい。又、前記反射面(厳密には内壁面での反射)12A,13A,14Aは、光を反射させるために高度に表面(外面)を研磨して構成しているが、更に高度な反射面とするために表面(外面)に銀、アルミニウム、その他の誘電体多層膜等を反射機能としての表面研磨状態を損なうことなく蒸着してもよい。又、前記反射面12A,13A,14Aを円錐状に形成することが好ましいが、角錐状等に形成してもよい。又、図3では、反射面12Aに入射してきた入射光の入射角θi(反射面12Aに立てた法線とのなす角度)と反射面12Aにて反射した反射光の反射角θrとが同一になるように反射を繰り返して集光部14の先端から出射することになる。」

(ウ)上記(ア)及び(イ)から総合すると、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「光源としての単一のキセノンランプ1、該キセノンランプ1に電力供給する乾電池2、前記キセノンランプ1からの光を導入して出射するための導光プローブ7とから構成される初期う蝕を検知するのに有利な歯科用照明器であって、
前記導光プローブ7は、挿入部11の先端から所定角度α円錐状(コーン状)に形成された反射面12Aを有する光源側の集光部12と、この集光部12の先端に延出されると共に円柱状に形成された反射面13Aを有し、かつ、曲率半径Rで所定角度θを持って緩やかに湾曲させてなる導光部13と反射面14Aを有する先端側の集光部14とから構成し、それら各部を無色透明な樹脂により一体形成し、
前記導光部13を、前記集光部12側に位置する第1ストレート部13Aと、この第1ストレート部13Aの先端から前記のように曲率半径Rで所定角度θを持って緩やかに湾曲させた湾曲部13Bと、この湾曲部13Bの先端に延出させた第2ストレート部13Cとから構成することによって、反射面13Aにて確実に反射(全面反射)させながら光を案内し、
前記反射面(厳密には内壁面での反射)12A,13A,14Aは、光を反射させるために高度に表面(外面)を研磨して構成している
歯科用照明器。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。

ア 引用発明1の「導光プローブ7」は、無色透明な樹脂により一体形成されており、その反射面12A,13A,14Aにより光を反射し、初期う蝕を検知するために検査対象となる歯に出射していることは明らかであるから、引用発明1の「導光プローブ7」は、本件補正発明の「空気との屈折率の差を利用して、光を導いて対象物を照射するための導光部」に相当する。

イ 引用発明1の「光源としての単一のキセノンランプ1」、「該キセノンランプ1に電力供給する乾電池2」及び「歯科用照明器」は、それぞれ本件補正発明の「前記導光部の光源である光源部」、「前記光源部の電源である電源部」及び「照明器具」に相当する。

ウ 引用発明1の「導光プローブ7」は、無色透明な樹脂により一体形成されており、無色透明な樹脂の屈折率は空気の屈折率より高いことは明らかであるから、引用発明1の「導光プローブ7」と本件補正発明の「導光部」とは、「空気より屈折率が高い透光性の素材により形成され」ている点で共通している。

エ 引用発明1の「曲率半径Rで所定角度θを持って緩やかに湾曲させた湾曲部13B」は、本件補正発明の「前記照明器具の長軸に対して」「湾曲する湾曲部」に相当する。

オ 引用発明1の、「挿入部11の先端から所定角度α円錐状(コーン状)に形成された反射面12Aを有する光源側の集光部12」は、本件補正発明の「漸次縮径する形状の基端部」に相当する。

カ 引用発明1の「先端側の集光部14」は、本件補正発明の「先端部分」に相当し、引用発明1の「前記集光部12側に位置する第1ストレート部13A」は、「集光部12」の先端に延出されており、「先端側の集光部14」を対象物に近づけていることは明らかであるから、本件補正発明の「前記基端部から直線状に延伸して前記先端部分を対象物に近付けるための幹部」に相当する。

キ 以上のことから、本件補正発明と引用発明とは、つぎの一致点で一致し、つぎの相違点で相違するものである。

<一致点>
「空気との屈折率の差を利用して、光を導いて対象物を照射するための導光部と、
前記導光部の光源である光源部と、
前記光源部の電源である電源部と、
を含む照明器具であって、
前記導光部は、空気より屈折率が高い透光性の素材により形成され、
前記導光部の先端部分は、前記照明器具の長軸に対して湾曲する湾曲部を含み、
前記導光部は、漸次縮径する形状の基端部と、前記基端部から直線状に延伸して前記先端部分を対象物に近付けるための幹部を含む
照明器具。」

<相違点>
本件補正発明の湾曲部は、照明器具の長軸に対し40度以上湾曲しており、幹部は、直径が10mm以下で、軸方向の長さが60mm?500mmであるのに対し、引用発明1の湾曲部がどの程度湾曲しているか、また、第1ストレート部の直径及び軸方向の長さがどの程度であるか記載されていない点。

(4)相違点についての検討
引用発明1の「歯科用照明器」において、「導光プローブ7」の「湾曲部13B」の「所定角度θ」をどの程度の角度とするか、また、「第1ストレート部13A」の直径や軸方向の長さをどの程度とするかは、患者の口腔の大きさや検知する部位の位置等に応じ適宜設定されるべき事項であって、その数値として、「湾曲部13B」の「所定角度θ」が40度以上、「第1ストレート部13A」の直径が10mm以下、軸方向の長さが60mm以上とすることは、当業者が容易に設定できたものであるといえる。
そして、「40度以上」、「直径が10mm以下」、「軸方向の長さが60mm?500mm」との数値限定に、本願明細書及び平成28年11月30日付け審判請求書の記載を参酌しても、当業者が予期し得ない効果が有るとはいえない。

(5)請求人の主張について
平成28年11月30日付け審判請求書において請求人は、『引用発明1は、「基端部から直線状に延伸して前記先端部分を対象物に近付けるための幹部」であって、「直径が10mm以下で、軸方向の長さが60mm?500mmで」あるものを含ん』でいない旨主張しているが、上記(3)で検討したとおり、引用発明1の「第1ストレート部13A」が、本件補正発明の「幹部」に相当し、その直径及び軸方向の長さに関しても、上記(4)で検討したとおり、当業者が容易に設定できたものであるといえるから、請求人の主張は採用されない。
なお、平成29年6月27日の面接審理においても、上記相違点1に関し、当業者が予期しない格別な効果を見いだすことはできなかった。

(6)小括
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本件補正発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。

3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成28年7月27日にされた手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであって、そのうち請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

「 【請求項1】
光を導いて対象物を照射するための導光部と、
前記導光部の光源である光源部と、
前記光源部の電源である電源部と、
を含む照明器具であって、
前記導光部は、空気より屈折率が高い透光性の素材により形成され、
前記導光部の先端部分は、前記照明器具の長軸に対して40度以上湾曲する湾曲部を含み、
前記導光部は、直線状に延伸する幹部を含み、
前記幹部は、直径が10mm以下で、軸方向の長さが60mm?500mmである
照明器具。」

2 引用例及びその記載事項
原査定で引用された引用例1に記載の事項及び引用発明1は、上記第2の2(2)において説示し、認定したとおりである。

3 本願発明と引用発明1との対比・判断
上記第2の1で検討した本件補正発明は、本願発明の「光を導いて対象物を照射するための導光部」が、「空気との屈折率の差を利用」するものであるとの限定と、「直線状に延伸する幹部」を含む「導光部」を、「漸次縮径する形状の基端部と、前記基端部から直線状に延伸して前記先端部分を対象物に近付けるための幹部」を含むものであるとの限定とを加えるものであるから、本願発明は、本件補正発明を包含するものである。
してみると、本願発明は、本件補正発明と同様、上記第2の2において検討した本件補正発明が独立特許要件を具備しないとする理由と同様の理由により、引用発明1に記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
上記で検討したように、本願発明は、原出願前に頒布された引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない 。

したがって、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-28 
結審通知日 2017-07-04 
審決日 2017-07-18 
出願番号 特願2016-49897(P2016-49897)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田倉 直人  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 松岡 智也
福島 浩司
発明の名称 導光部に湾曲部を有する照明器具  
代理人 特許業務法人湘洋内外特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ