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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1332087
審判番号 不服2016-19650  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-28 
確定日 2017-09-26 
事件の表示 特願2014-258954「車両用複合ケーブル及び車両用複合ハーネス」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月30日出願公開、特開2016-119245、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月22日の出願であって、平成28年6月22日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月26日付けで手続補正がされ、同年9月8日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年12月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成29年6月30日付けで当審から拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年8月3日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年9月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-7、11-12に係る発明は、以下の引用文献A-Bに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2014-135153号公報
B.特開2012-124005号公報


第3 平成29年6月30日付け当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由通知の概要は次のとおりである。

本願請求項1-8に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2013-237428号公報
2.特開2006-351322号公報
3.国際公開第2012/105142号


第4 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、平成29年8月3日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-5は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
車両の停止後に制動力を発生させるパーキングブレーキ装置に電流を供給し、中心導体を絶縁体で被覆してなる2本の電源線と、
前記車両の走行時に第1の電気信号を伝送し、中心導体を絶縁体で被覆してなる一対の第1の絶縁電線を撚り合わせてなるツイストペア線からなる第1の信号線と、
同じく前記車両の走行時に第2の電気信号を伝送し、中心導体を絶縁体で被覆してなる一対の第2の絶縁電線を撚り合わせてなるツイストペア線からなる第2の信号線と、
前記2本の電源線と前記第1及び第2の信号線とを一括して被覆するシースと、
を備え、
前記電源線は、前記第1及び第2の絶縁電線よりも大きな外径であり、
前記2本の電源線の間隔が前記第1の絶縁電線の太さ及び前記第2の絶縁電線の太さよりも狭く、
前記2本の電源線ならびに前記第1及び第2の信号線は、何れもシールド導体により被覆されておらず、
前記第1及び第2の信号線を前記2本の電源線を挟んで配置して前記第1の信号線と前記第2の信号線とを離間させ、かつ前記2本の電源線の前記中心導体によるシールド効果によって前記車両の走行時における前記第1の信号線と前記第2の信号線との間のクロストークを抑制する、
車両用複合ケーブル。
【請求項2】
前記第1の電気信号は、車輪の回転速度を検出する車輪速検出用の信号であり、
前記第2の電気信号は、前記車輪の回転速度とは異なる前記車両の走行状態を示す車両状態量の検出信号である、
請求項1に記載の車両用複合ケーブル。
【請求項3】
前記2本の電源線、前記第1の信号線、及び前記第2の信号線によって囲まれた領域が空間とされている、
請求項1又は2に記載の車両用複合ケーブル。
【請求項4】
前記2本の電源線ならびに前記第1及び第2の信号線が、潤滑材を介して前記シースに保持されている、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用複合ケーブル。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両用複合ケーブルと、
前記シースから露出した前記2本の電源線、前記第1の信号線、及び前記第2の信号線の端部のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタとを有する、
車両用複合ハーネス。」


第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
平成29年6月30日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

(a)「【0019】
図1は、本実施の形態に係る複合ハーネスを示す図であり、(a)は平面図、(b)はその1B-1B線断面図である。
【0020】
図1(a),(b)に示すように、複合ハーネス1は、電気ブレーキ用ケーブル2とABSセンサ用ケーブル3とを共通の外部シース4で被覆して一体化した複合ケーブル5を備えたものである。更に、複合ハーネス1は、該複合ケーブル5の端部にて電気ブレーキ用ケーブル2と、ABSセンサ用ケーブル3とを分岐し、両ケーブル2,3の少なくとも一方の端部に接続用のコネクタ6を設けて構成される。
【0021】
電気ブレーキ用ケーブル2は、2本の電源線7からなり、主に、車両の停車後に、所定ボタンを押圧することにより、車輪の回転を抑止するための機構(電動パーキングブレーキ(EPB)機構)を機能させるための電流を流す導電路として用いられるものである。また、電気ブレーキ用ケーブル2は、電動パーキングブレーキ(EPB)以外の通常の電気ブレーキ用のケーブル(例えば、2本の電源線7以外に制御用の信号線等を含むもの)を用いることも当然に可能である。
【0022】
電源線7は、中心導体7aの周囲を絶縁体7bで被覆して構成される。絶縁体7bは、例えば、XLPE(架橋ポリエチレン),ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)などからなる。通常、電気ブレーキ用ケーブル2では、2本の電源線7の周囲にシースを被覆するが、本発明では、このシースの代用として共通の外部シース4を用いる。
【0023】
なお、本実施の形態では、複合ケーブル5を、電気ブレーキ用ケーブル2とABSセンサ用ケーブル3とを共通の外部シース4で被覆して一体化したもの、と定義しているが、複合ケーブル5は、電気ブレーキ用ケーブル2のシース(外部シース4)にABSセンサ用ケーブル3を埋め込んで一体化したもの、と換言することもできる。
【0024】
複合ケーブル5の両端部からは、電気ブレーキ用ケーブル2の2本の電源線7が延出され、その一方の端部にはブレーキキャリパー(図示せず)に接続されるコネクタ6aが設けられ、その他方の端部には制御装置(図示せず)に接続されるコネクタ6bが設けられる。複合ケーブル5から延出された2本の電源線7の周囲には、電源線7を飛石によるチッピング等から保護すべく、チューブやホース等からなる保護材8が設けられる。
【0025】
ABSセンサ用ケーブル3は、2本の信号線9を内部シース10で一括被覆して構成される。信号線9は、中心導体9aの周囲を絶縁体9bで被覆して構成される。絶縁体9bは、例えば、XLPEなどからなる。本実施の形態では、ABSセンサ用ケーブル3と電源線7とは、接触して設けられている。」
(b)「【0037】
これにより、内部シース10と樹脂モールドを気密に一体化することが可能となり、水分の侵入によるセンサ部11の故障等を低減できる。また、ABSセンサ用ケーブル3の端部にセンサ部11を一体に設けることで、配線部品の部品点数をより削減し、配線作業をより容易にすることが可能となる。
また、電気ブレーキ用ケーブル2は、車両の停車後に、所定ボタンを押圧することにより、パーキングブレーキ機構を機能させるための電流を流す導電路として用いられるものである。よって、車両の走行中に機能するものであるABSセンサ用ケーブル3に対する電気ブレーキ用ケーブル2からのノイズに対する対策は不要である。したがって、電気ブレーキ用ケーブル2及びABSセンサ用ケーブル3の少なくとも一方へノイズ対策用のシールドを設けることなく、電気ブレーキ用ケーブル2とABSセンサ用ケーブル3とを一体化することが可能である。」

・図1の記載によれば、「電源線7」の外径は「信号線9」の外径よりも大きいことが読み取れる。
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「電気ブレーキ用ケーブル2とABSセンサ用ケーブル3とを共通の外部シース4で被覆して一体化した複合ケーブル5であって、
前記電気ブレーキ用ケーブル2は、車両の停車後に、車輪の回転を抑止するための機構(電動パーキングブレーキ(EPB)機構)を機能させるための電流を流す導電路として用いられ、2本の電源線7からなり、前記電源線7は、中心導体7aの周囲を絶縁体7bで被覆して構成され、
前記ABSセンサ用ケーブル3は、2本の信号線9を内部シース10で一括被覆して構成され、前記信号線9は、中心導体9aの周囲を絶縁体9bで被覆して構成されており、
前記電源線7の外径は前記信号線9の外径よりも大きく、
前記電気ブレーキ用ケーブル2及び前記ABSセンサ用ケーブル3のノイズ対策用のシールドを設けることがない、
複合ケーブル5。」

2.引用文献2について
平成29年6月30日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

(a)「【0021】
図1に示すように、本実施の形態に係るケーブル10は、絶縁層を有する導体コア11の外周に、2層構造の被覆層を設けたものである。この被覆層は、複数本の金属線材及び繊維材を交互に織り込み、編み込んでなる交織編組層13と、その交織編組層13の外周に設けられ、ゴム材料からなるシース層15で構成される。シース層15の内周表層部15aは交織編組層13の表面網目部19に食い込んでおり、交織編組層13とシース層15は一体に設けられている。また、導体コア11と交織編組層13の間隙には介在Mが設けられる。
【0022】
導体コア11は、図2に示すように、複数本(図2中では2本を図示)の電源線(電力線)21と複数本(図2中では2本を図示)の信号線25を撚り合わせてなる。各電源線21は、導体22を絶縁層23で被覆したものである。各信号線25は、導体27を絶縁層28で被覆してなる素線26を2本撚り合わせ、その対撚線を編組シールド29で被覆したものである。導体22,27の構成材としては、例えばSn含有銅合金(Cu-0.15?0.7wt%Sn合金)、絶縁層23,28の構成材としては、例えば架橋ポリエチレンが挙げられる。」
(b)「図2




3.引用文献3について
平成29年6月30日付けの拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

(a)「[0036] 図4に示す信号ケーブル20Aは、駆動信号系の2本の同軸線30,30、出力信号系の2本の同軸線31,31、電源系統(グランドを含む)の6本の単純線24,…を有し、3本の単純線(例えば、何れも電源線)を撚り束ねて複合ケーブル22Aとしてユニット化すると共に、3本の単純線(例えば、2本の電源線と1本のグランド線)を撚り束ねて複合ケーブル23Aとしてユニット化している。
[0037] 複合ケーブル22A,23Aは、ケーブル中心軸Oを図中垂直方向に通る直線Lを挟んでほぼ対称となる位置に配置され、他の駆動信号系の2本の同軸線30,30、及び出力信号系の同軸線31,31はユニット化せず、同軸線30,30同士は互いに直線Lを挟んだ対称位置に配置される。同軸線31,31同士においても互いに直線Lを挟んだ対称位置に配置される。さらに、同軸線30,30と同軸線31,31の組同士は、複合ケーブル22A,23Aが略一直線上に配置される中心軸、即ち直線Lとケーブル中心軸Oにて直交する軸線(不図示)に対して略対称となる位置に配置されている。このような信号ケーブル20Aでは、駆動信号線と出力信号線の間にユニット化した単純線の複合ケーブル22A,23Aが挟み込まれる配置となるため、駆動信号線と出力信号線との物理的距離を確保することができ、駆動信号と出力信号とのクロストークの影響を低減することができる。
[0038] この場合、複合ケーブル22A,23Aと他の同軸線30,31との間に生じる隙間に介在物55’を配置しても良いが、複合ケーブル22A,23Aが駆動信号線(同軸線30,30)と出力信号線(同軸線31,31)との間の壁の役割を果たす。このため、図4の信号ケーブル20Aでは、あえて介在物55’を充填しなくても、駆動信号線と出力信号線との間の物理的な距離を十分に確保することができ、駆動信号と出力信号とのクロストークの影響を低減することができる。」


第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(a)引用発明の「2本の電源線7」は、「車両の停車後に、車輪の回転を抑止するための機構(電動パーキングブレーキ(EPB)機構)を機能させるための電流を流す導電路として用いられ」るものであって、「中心導体7aの周囲を絶縁体7bで被覆して構成され」るものであるから、本願発明1の「車両の停止後に制動力を発生させるパーキングブレーキ装置に電流を供給し、中心導体を絶縁体で被覆してなる2本の電源線」に相当する。
(b)引用発明の「ABSセンサ用ケーブル3」は、「中心導体9aの周囲を絶縁体9bで被覆し」た「信号線9」を、「2本」「内部シース10で一括被覆し」たものであって、「ABSセンサ」が車両の走行時に用いられることは明らかであるから、引用発明の「2本」の「信号線9」は、本願発明1の「中心導体を絶縁体で被覆してなる一対の第1の絶縁電線」に相当し、引用発明の「ABSセンサ用ケーブル3」と、本願発明1の「車両の走行時に第1の電気信号を伝送し、中心導体を絶縁体で被覆してなる一対の第1の絶縁電線を撚り合わせてなるツイストペア線からなる第1の信号線」とは、「車両の走行時に第1の電気信号を伝送し、中心導体を絶縁体で被覆してなる一対の第1の絶縁電線からなる第1の信号線」の点では共通する。
(c)引用発明の「外部シース4」は、「電気ブレーキ用ケーブル2とABSセンサ用ケーブル3とを共通」に「被覆して一体化した」ものであって、「電気ブレーキ用ケーブル2」は、「2本の電源線7」からなるものであるから、引用発明の「外部シース4」と、本願発明1の「2本の電源線と前記第1及び第2の信号線とを一括して被覆するシース」とは、「2本の電源線と前記第1の信号線とを一括して被覆するシース」の点では共通する。
(d)引用発明の「電源線7の外径は前記信号線9の外径よりも大き」いと、本願発明1の「電源線は、前記第1及び第2の絶縁電線よりも大きな外径であ」るとは、「電源線は、前記第1の絶縁電線よりも大きな外径であ」る点では共通する。
(e)引用発明の「電気ブレーキ用ケーブル2及び前記ABSセンサ用ケーブル3のノイズ対策用のシールドを設けることがない」と、本願発明1の「2本の電源線ならびに前記第1及び第2の信号線は、何れもシールド導体により被覆されておらず」とは、「2本の電源線ならびに前記第1の信号線は、何れもシールド導体により被覆されておらず」の点では共通する。
(f)引用発明の「複合ケーブル5」は、後述する相違点を除き、本願発明1の「車両用複合ケーブル」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「車両の停止後に制動力を発生させるパーキングブレーキ装置に電流を供給し、中心導体を絶縁体で被覆してなる2本の電源線と、
前記車両の走行時に第1の電気信号を伝送し、中心導体を絶縁体で被覆してなる一対の第1の絶縁電線からなる第1の信号線と、
前記2本の電源線と前記第1の信号線とを一括して被覆するシースと、
を備え、
前記電源線は、前記第1の絶縁電線よりも大きな外径であり、
前記2本の電源線ならびに前記第1の信号線は、何れもシールド導体により被覆されていない、
車両用複合ケーブル。」

(相違点1)
本願発明1では、「第1の信号線」が「一対の第1の絶縁電線を撚り合わせてなるツイストペア線」であるのに対して、引用発明では、「ABSセンサ用ケーブル3」に関してそのような特定がされていない点。


(相違点2)
本願発明1では、「同じく前記車両の走行時に第2の電気信号を伝送し、中心導体を絶縁体で被覆してなる一対の第2の絶縁電線を撚り合わせてなるツイストペア線からなる第2の信号線」を備え、「シース」で「第2の信号線」も「一括して被覆する」ものであって、さらに、「前記電源線は、前記第1及び第2の絶縁電線よりも大きな外径であり、前記2本の電源線の間隔が前記第1の絶縁電線の太さ及び前記第2の絶縁電線の太さよりも狭く、前記2本の電源線ならびに前記第1及び第2の信号線は、何れもシールド導体により被覆されておらず、前記第1及び第2の信号線を前記2本の電源線を挟んで配置して前記第1の信号線と前記第2の信号線とを離間させ、かつ前記2本の電源線の前記中心導体によるシールド効果によって前記車両の走行時における前記第1の信号線と前記第2の信号線との間のクロストークを抑制する」ものであるのに対して、
引用発明では、「信号線」は「ABSセンサ用ケーブル3」しか備えておらず、そのような構成ではない点。

(2)相違点についての判断
事案を鑑みて、上記相違点2について先に検討すると、上記引用文献2、3には、第1及び第2の信号線を2本の電源線を挟んで配置して前記第1の信号線と前記第2の信号線とを離間させることは記載されているが、引用文献2記載の「各信号線」は「対撚線を編組シールドで被覆したもの」であり、引用文献3の「駆動信号線」と「出力信号線」は「同軸線」であり、「2本の電源線ならびに前記第1及び第2の信号線は、何れもシールド導体により被覆されて」いないこと、及び「前記2本の電源線の前記中心導体によるシールド効果によって前記車両の走行時における前記第1の信号線と前記第2の信号線との間のクロストークを抑制する」ことは記載されておらず、本願出願日前において周知技術であるともいえない。
したがって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-5について
本願発明2-5も、本願発明1の「同じく前記車両の走行時に第2の電気信号を伝送し、中心導体を絶縁体で被覆してなる一対の第2の絶縁電線を撚り合わせてなるツイストペア線からなる第2の信号線」を有し、「前記電源線は、前記第1及び第2の絶縁電線よりも大きな外径であり、前記2本の電源線の間隔が前記第1の絶縁電線の太さ及び前記第2の絶縁電線の太さよりも狭く、前記2本の電源線ならびに前記第1及び第2の信号線は、何れもシールド導体により被覆されておらず、前記第1及び第2の信号線を前記2本の電源線を挟んで配置して前記第1の信号線と前記第2の信号線とを離間させ、かつ前記2本の電源線の前記中心導体によるシールド効果によって前記車両の走行時における前記第1の信号線と前記第2の信号線との間のクロストークを抑制する」という構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定についての判断
平成29年8月3日付けの補正により、補正後の請求項1は、「前記電源線は、前記第1及び第2の絶縁電線よりも大きな外径であり、前記2本の電源線の間隔が前記第1の絶縁電線の太さ及び前記第2の絶縁電線の太さよりも狭く、前記2本の電源線ならびに前記第1及び第2の信号線は、何れもシールド導体により被覆されておらず、前記第1及び第2の信号線を前記2本の電源線を挟んで配置して前記第1の信号線と前記第2の信号線とを離間させ、かつ前記2本の電源線の前記中心導体によるシールド効果によって前記車両の走行時における前記第1の信号線と前記第2の信号線との間のクロストークを抑制する」という技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献A、Bには記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1-5は、当業者であっても、原査定における引用文献A、Bに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-12 
出願番号 特願2014-258954(P2014-258954)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 土谷 慎吾
山澤 宏
発明の名称 車両用複合ケーブル及び車両用複合ハーネス  
代理人 特許業務法人平田国際特許事務所  

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