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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B41J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B41J
管理番号 1332122
審判番号 不服2017-378  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-11 
確定日 2017-09-26 
事件の表示 特願2012-122904「画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日出願公開、特開2013-248741、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月30日の出願であって、平成28年6月16日付けで手続補正がされ、同年10月3日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年1月11日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がなされ、同年5月18日付けで拒絶理由通知がされ、同年7月21日付けで手続補正がされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1乃至6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」乃至「本願発明6」という。)は、平成29年7月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
ユーザからの指示を受け付ける受付部と、
印刷指示に従って画像を印刷する印刷部と、
制御を行う制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記受付部における特定パスワードの入力を伴う印刷指示にしたがって、前記特定パスワードが設定された印刷データに基づき生成された画像データを用いて前記印刷部に印刷させ、更なる印刷が可能となるように前記生成された画像データを前記特定パスワードに基づく暗号鍵を用いて暗号化して保存する処理と、
前記受付部における前記特定パスワードの入力を伴う更なる印刷指示にしたがって、暗号化されて保存された前記画像データを前記暗号鍵を用いて復号化し、復号化された画像データに基づき前記印刷部に印刷させる処理と、を行うことを特徴とする画像形成装置。」

なお、本願発明2乃至6の概要は以下のとおりである。
本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明3は、本願発明2を減縮した発明である。
本願発明4は、本願発明1乃至3のいずれかを減縮した発明である。
本願発明5は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明6は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明1と実質的な構成の差異がない発明である。


第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前の平成16年11月18日に頒布された引用文献1(特開2004-326556号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データおよび当該印刷データに対して設定された第1の情報を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された前記印刷データの印刷を許可する第1の許可手段と、
前記受信手段により受信された前記印刷データを保存する保存手段と、
前記印刷データが前記保存手段に保存された後に、第2の情報を入力する入力手段と、
前記第2の情報が前記第1の情報に対応している場合、前記保存手段に保存されている前記印刷データの印刷を許可する第2の許可手段と
を有する印刷制御装置。
【請求項2】
前記第1の情報および前記第2の情報は、前記印刷データに関連するパスワードである請求項1に記載の印刷制御装置。」
(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷制御装置および印刷制御方法に関する。」
(3)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の技術にあっては、ユーザが、プリンタで暗証符号を入力する手間および時間をかけることなく至急に印刷物を得たい場合、暗証符号を設定しない通常印刷モードを指定する必要がある。この場合、迅速に印刷物を取得できるものの、処理済の印刷データを保存する必要がある場合には当該印刷データはたとえば再印刷時に暗証符号の入力を必要としない状態で保存されてしまうため、機密性が保たれない。一方、機密性を保持するために暗証符号を設定して機密印刷モードを指定した場合、プリンタで暗証符号を入力しないとPCから受信した印刷データの印刷が行われないため、ユーザはプリンタの前で待たされてしまうという時間の無駄が発生する。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、迅速に印刷物を取得でき、かつ印刷データの機密性を保持することができる印刷制御装置および印刷制御方法を提供することである。」
(4)「【0016】
図1に示すように、印刷システムは、PC100と、印刷制御装置としての機能を有するプリンタ200とを備え、これらはネットワーク300を介して相互に通信可能に接続されている。ネットワーク300は、イーサネット(R)、トークンリング、FDDI等の規格によるLANや、LAN同士をたとえば専用線で接続したWAN等からなる。

【0018】
図2は、図1に示されるPC100の構成を示すブロック図である。図2に示すように、PC100は、装置全体の制御および各種演算処理を行うCPU101、プログラムやデータを格納するためのROM102、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するためのRAM103、各種のプログラムやデータを保存するための外部記憶装置としてのハードディスク104、各種情報の表示のための液晶ディスプレイなどの表示部105、各種指示の入力のためのキーボードやマウスなどの入力部106、およびネットワーク300に接続するためのLANカードなどのネットワークインタフェース107を含み、これらは信号を遣り取りするためのバス108を介して相互に接続されている。
【0019】
図3は、図1に示されるプリンタ200の構成を示すブロック図である。図3に示すように、プリンタ200は、CPU201、ROM202、RAM203、ハードディスク204、操作パネル部205、印刷部206、およびネットワークインタフェース207を含み、これらは信号を遣り取りするためのバス208を介して相互に接続されている。なお、プリンタ200の構成要素のうち、PC100の構成要素と同様の機能を有する部分についての重複する説明を省略する。

【0021】
操作パネル部205は、各種情報の表示および各種指示の入力に使用される。印刷部206は、電子写真式プロセス等の周知の作像プロセスを用いて、各種データを用紙などの記録材上に印刷する。」
(5)「【0028】
さらに、機密印刷モードが設定される場合、エディットボックス515にパスワードが入力されることにより、パスワードの設定が行われる。パスワードは、印刷データに関連する暗証符号である。このパスワードは、印刷データごとに異なる暗証符号であってもよいし、あるいはユーザに固有の暗証符号であってもよい。
【0029】
ラジオボタン512は、「機密印刷して機密保存」のタイプを選択するためのものである。このタイプが選択された場合、印刷ジョブを受信したプリンタは、所定のパスワードの入力があったときにのみ印刷を開始する。また、処理済の印刷ジョブはプリンタに保存され、所定のパスワードの入力があったときにのみ再印刷が可能である。ラジオボタン513は、「通常印刷して機密保存」のタイプを選択するためのものである。このタイプが選択された場合、印刷ジョブを受信したプリンタは、パスワードの入力を必要とせずにすぐに印刷を開始する。ただし、処理済の印刷ジョブはプリンタに保存されるが、所定のパスワードの入力があったときにのみ再印刷が可能である。ラジオボタン514は、「機密印刷のみ(保存しない)」のタイプを選択するためのものである。このタイプが選択された場合、印刷ジョブを受信したプリンタは、所定のパスワードの入力があったときにのみ印刷を開始する。しかし、処理済の印刷ジョブは保存されない。このように、本実施形態では、機密印刷モードの中で複数のタイプの中から1つを選択して設定することができ、ユーザの希望に沿った印刷が可能となっている。
【0030】
一方、チェックボックス511にチェックが入れられない場合、機密印刷モードは設定されず(機密印刷モードはOFF)、通常印刷モードが設定される。この場合、印刷ジョブを受信したプリンタは、パスワードの入力を必要とせずにすぐに印刷を開始する。処理済の印刷ジョブは保存されない。ただし、通常印刷モードが設定された場合に、プリンタが処理済の印刷ジョブを保存し、保存された印刷ジョブがパスワードの入力を必要とせずに自由に再利用(再印刷)可能とされてもよい。
【0031】
ステップS104では、プロパティ画面510において、OKボタン516、またはキャンセルボタン517のいずれが操作されたかが判断される。
【0032】
OKボタン516が操作された場合、ステップS103において設定された各種の設定情報が、RAM103などの記憶部に保存される(S105)。一方、キャンセルボタン517が操作された場合、ステップS106に進む。
【0033】
ステップS106では、プロパティ画面510が閉じられる。なお、プロパティ画面510が開かれなかった場合、デフォルト値として通常印刷モードが設定され、この場合、ステップS102?S106の処理は省略される。
【0034】
続いて、印刷ダイアログボックス500(図5参照)において、OKボタン502、またはキャンセルボタン503のいずれが操作されたかが判断される(S107)。キャンセルボタン503が操作された場合、図4の処理の実行を終了する。
【0035】
OKボタン502が操作された場合、ステップS105で保存された設定情報を含む属性データと、実際に用紙上に印刷される対象となる印刷データとを含む印刷ジョブが作成され(S108)、作成された印刷ジョブは、送信先であるたとえばプリンタ200に送信される(S109)。なお、印刷データと属性データとは別々に送信されてもよい。
【0036】
図7は、印刷ジョブの一例を示す図である。図7に示すように、印刷ジョブ600は、上記の設定情報を含む属性データ610、および印刷データ(図7における「画像データ」に相当する)620を有している。属性データ610には、たとえば、ジョブ名データ611、ユーザ名データ612、印刷モードデータ613、およびパスワードデータ614が含まれる。」
(6)「【0044】
次に、図9を参照して、図8のステップS204における第1の印刷処理について説明する。
【0045】
まず、図7に示すような印刷ジョブ600が、RAM203などの記憶部に読み込まれる(S301)。続いて、印刷ジョブ600から、属性データ610が抽出されて、RAM203などの記憶部の所定領域に記憶される(S302)。
【0046】
ステップS303では、属性データ610の印刷モードデータ613を参照することにより、機密印刷モードにおける「機密印刷して機密保存」または「機密印刷のみ(保存しない)」のタイプが選択されているか否かが判断される。「機密印刷して機密保存」または「機密印刷のみ(保存しない)」のタイプが選択されていない場合(S303でNO)、すなわち、本実施形態では、機密印刷モードが設定されていないか、または機密印刷モードにおける「通常印刷して機密保存」のタイプが選択されている場合、ステップS307に進む。
【0047】
機密印刷モードにおける「機密印刷して機密保存」または「機密印刷のみ(保存しない)」のタイプが選択されている場合(S303でYES)、パスワードの入力が要求される(S304)。このとき、表示パネル221には、パスワードの入力要求画面が表示される。
【0048】
図12は、パスワードの入力要求画面を表示したときの操作パネル部の要部を示す図である。ここで、入力要求画面710のエディットボックス711には、文字キー224またはテンキー225を通して、ユーザの操作に基づいてパスワードが入力され得る。
【0049】
ステップS305では、操作パネル部205のエンターキー222、またはキャンセルキー226のいずれが操作されたかが判断される。キャンセルキー226が操作された場合、ステップS308に進む。
【0050】
エンターキー222が操作された場合、エディットボックス711に入力されたパスワードと、ステップS302において記憶された属性データ610の中のパスワードデータ614に含まれるパスワードとが一致しているか否かが判断される(S306)。両者のパスワードが一致していない場合(S306でNO)、ステップS304に戻って、再度パスワードの入力が要求される。両者のパスワードが一致している場合(S306でYES)、ステップS307に進む。
【0051】
ステップS307では、印刷データ620(図7参照)が印刷部206に出力される。そして、印刷部206は、印刷データ620を用紙などの記録材上に印刷する。
【0052】
続いて、再度、属性データ610の印刷モードデータ613を参照することにより、機密印刷モードにおける「機密印刷して機密保存」または「通常印刷して機密保存」のタイプが選択されているか否かが判断される(S308)。
【0053】
「機密印刷して機密保存」または「通常印刷して機密保存」のタイプが選択されている場合(S308でYES)、印刷ジョブ600(図7参照)は、印刷ジョブ保存用のハードディスク204に保存される。
【0054】
一方、「機密印刷して機密保存」または「通常印刷して機密保存」のタイプが選択されていない場合(S308でNO)、すなわち、本実施形態では、機密印刷モードが設定されていないか、または機密印刷モードにおける「機密印刷のみ(保存しない)」のタイプが選択されている場合、印刷ジョブを保存することなく、図9の処理の実行を終了する。
【0055】
次に、図10を参照して、図8のステップS205における第2の印刷処理について説明する。
【0056】
まず、図7に示すような印刷ジョブ600が、RAM203などの記憶部に読み込まれる(S401)。続いて、印刷ジョブ600から、属性データ610が抽出されて、RAM203などの記憶部の所定領域に記憶される(S402)。
【0057】
続いて、パスワードの入力が要求される(S403)。このとき、表示パネル221には、パスワードの入力要求画面が表示される(図12参照)。ここで、入力要求画面710のエディットボックス711には、文字キー224またはテンキー225を通して、ユーザの操作に基づいてパスワードが入力され得る。
【0058】
ステップS404では、操作パネル部205のエンターキー222、またはキャンセルキー226のいずれが操作されたかが判断される。キャンセルキー226が操作された場合、図10の処理の実行を終了する。
【0059】
エンターキー222が操作された場合、エディットボックス711に入力されたパスワードと、ステップS402において記憶された属性データ610の中のパスワードデータ614に含まれるパスワードとが一致しているか否かが判断される(S405)。両者のパスワードが一致していない場合(S405でNO)、ステップS403に戻って、再度パスワードの入力が要求される。
【0060】
両者のパスワードが一致している場合(S405でYES)、印刷データ620(図7参照)が印刷部206に出力される(406)。そして、印刷部206は、印刷データ620を用紙などの記録材上に印刷する。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「印刷部を含み、
印刷データおよび当該印刷データに対して設定された第1の情報を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された前記印刷データの印刷を許可する第1の許可手段と、
前記受信手段により受信された前記印刷データを保存する保存手段と、
前記印刷データが前記保存手段に保存された後に、第2の情報を入力する入力手段と、
前記第2の情報が前記第1の情報に対応している場合、前記保存手段に保存されている前記印刷データの印刷を許可する第2の許可手段とを有し、
前記第1の情報および前記第2の情報は、前記印刷データに関連するパスワードである印刷制御装置としての機能を有するプリンタ。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前の平成23年2月17日に頒布された引用文献2(特開2011-35690号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
実行されたジョブのジョブ履歴として、出力された画像の複写が制限されている画像データを出力処理したジョブに関する情報と、出力された画像の複写が制限されていない画像データを出力処理したジョブに関する情報とを保存する保存手段と、
前記保存手段に保存されたジョブ履歴に基づいて、実行されたジョブの一覧を表示する表示手段と、
前記表示手段に表示されたジョブの一覧から少なくとも1つのジョブをユーザに選択させる選択手段と、
前記選択手段により選択されたジョブが、出力された画像の複写が制限されている画像データを出力処理したジョブであるかどうかを判断する判断手段と、
前記判断手段が、出力された画像の複写が制限されている画像データを出力処理したジョブであると判断した場合、前記選択手段により選択されたジョブで出力処理された画像データの再出力を制限する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記判断手段が、出力された画像の複写が制限されている画像データを出力処理したジョブであると判断した場合、前記ユーザから入力された認証情報を受け付ける受付手段を備え、
前記制御手段は、前記受付手段により受け付けられた認証情報と前記選択手段で選択されたジョブに設定されている認証情報とが一致する場合、前記選択手段で選択されたジョブで出力処理された画像データの再出力を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記認証情報は、パスワードであることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、履歴印刷機能を備える画像処理装置に関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した履歴印刷機能を用いることで、コピー制限情報を印刷物に付加して印刷する印刷ジョブを再実行できる構成とすると、コピーガード機能による効果が期待できなくなり、印刷物が増えてしまう。一方で、履歴印刷機能を備える画像処理装置において、ジョブの実行履歴を使った印刷を一律できないように構成すると、履歴印刷機能を利用したいというユーザニーズに応えられず、利便性が低下してしまう。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、実行されたジョブの履歴を用いての再出力の利便性が低下することを抑制しつつ、印刷物がむやみに増えてしまうことによるセキュリティの低下を抑制できる仕組みを提供することである。」
(4)「【0043】
S901において、ユーザは操作部7を介し、図7に示したジョブ履歴データ管理テーブルからジョブ履歴データを呼び出して、図10に一例を示すジョブ一覧を操作部7に表示させる。ここでは、再出力が制限されているジョブと、再出力が制限されていないジョブとを含むジョブ一覧が操作部7に表示される。
【0044】
図10では、ジョブID、ジョブ種類、元データのファイル名、部数、ユーザ名、実行日時、紙サイズを表示する例を示すが、表示内容はこれらに限定されるものではない。
ここで、ユーザは、図10に示すジョブ一覧から、再出力するジョブを操作部7のボタンにより選択する。そして、CPU110Aはユーザにより選択されたジョブのジョブ管理データをジョブ履歴データ管理テーブル703で特定する。
次に、S902で、特定されたジョブ管理データを用い、ジョブに対して複写禁止のQRコードの埋め込みが設定されているか否かをCPU110Aが判断する。ここで、複写禁止のQRコードの埋め込みが設定されているとCPU110Aが判断した場合は、S903へ進む。一方、複写禁止のQRコードの埋め込みが設定されていないとCPU110Aが判断した場合は、S906へ移行する。
【0045】
そして、S903で、特定されたジョブ管理データに個人認証データ(本実施形態では、パスワード情報)があるかどうかCPU110Aが判断する。なお、本実施形態では、パスワード情報が無いとCPU110Aが判断した場合は再出力せずにそのまま処理を終了する。
一方、S903で、パスワード情報が有るとCPU110Aが判断した場合にはS904へ進み、操作部7を介してユーザへパスワード入力を要求する。
そして、S905で、ユーザが操作部7から入力したパスワードがジョブ履歴データ内のパスワード情報と一致するかどうかをCPU110Aが判断する。ここで、パスワードが正しくないため、入力したパスワードがジョブ管理データ内のパスワード情報と一致しないとCPU110Aが判断した場合は、本処理を終了する。
【0046】
一方、S905で、入力したパスワードがジョブ管理データ内のパスワード情報と一致するとCPU110Aが判断した場合は、S906へ移行する。
そして、S906で、CPU110Aはハードディスク8のジョブ履歴領域702から該当ジョブの画像データをCodec110Dで伸張し、RAM110Bに読み出す。そして、CPU110Aは、プリンタI/Fを介してプリンタ装置6に送信して印刷させて、本処理を終了する。
本実施形態によれば、ユーザは、制限付きかそれ以外かを特に意識することなく、保存されたジョブの一覧を確認することができる。そして、ユーザがジョブを選択した時点で、CPU110Aが再出力制限付きであるジョブであることを確認した場合、ジョブを選択したユーザに対して認証情報を要求する。したがって、不特定のユーザがジョブ一覧からジョブを選択しても、選択したジョブが制限付きであれば、入力した認証情報が一致しない限り、保存されたジョブの再出力されてしまうことを制限できる。
また、制限付きのジョブでないジョブをユーザが選択した場合は、選択したジョブに対して認証処理を行うことなく出力できる。つまり、それぞれのジョブに対して一様に認証処理を行うシステムに比べて、ジョブ実行に対してユーザが行う操作負担が軽減され、かつ、制限付きのジョブがむやみに再出力されてしまうことも同時に防止できる。」

したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「実行されたジョブのジョブ履歴として、出力された画像の複写が制限されている画像データを出力処理したジョブに関する情報と、出力された画像の複写が制限されていない画像データを出力処理したジョブに関する情報とを保存する保存手段と、
前記保存手段に保存されたジョブ履歴に基づいて、実行されたジョブの一覧を表示する表示手段と、
前記表示手段に表示されたジョブの一覧から少なくとも1つのジョブをユーザに選択させる選択手段と、
前記選択手段により選択されたジョブが、出力された画像の複写が制限されている画像データを出力処理したジョブであるかどうかを判断する判断手段と、
前記判断手段が、出力された画像の複写が制限されている画像データを出力処理したジョブであると判断した場合、前記選択手段により選択されたジョブで出力処理された画像データの再出力を制限する制御手段と、を備え,
前記判断手段が、出力された画像の複写が制限されている画像データを出力処理したジョブであると判断した場合、前記ユーザから入力された認証情報を受け付ける受付手段を備え、
前記制御手段は、前記受付手段により受け付けられた認証情報と前記選択手段で選択されたジョブに設定されている認証情報とが一致する場合、前記選択手段で選択されたジョブで出力処理された画像データの再出力を実行し、
前記認証情報は、パスワードである画像処理装置。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前の平成18年10月19日に頒布された引用文献3(特開2006-285610号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データとその属性情報を有するジョブを入力する入力手段と、
前記入力手段が入力したジョブを格納する第一のメモリと、
前記入力ジョブの前記属性情報に従い、当該ジョブの画像データを画像処理する画像処理手段と、
前記画像処理手段が処理したジョブを格納する第二のメモリと、
前記処理ジョブの前記属性情報に従い、当該ジョブを出力する出力手段と、
前記第一のメモリによる前記入力ジョブの保存、および、前記第二のメモリによる前記処理ジョブの保存を設定する設定手段と、
前記設定手段によって設定された保存方法に応じて前記入力ジョブおよび前記処理ジョブの保存を制御するとともに、前記保存したジョブを出力する際は、前記保存方法に応じて前記属性情報の変更の可否を示し、当該属性情報の変更を受け付ける制御手段とを有することを特徴とする画像処理装置。

【請求項12】
前記画像処理手段は、PDLデータのラスタライズ処理機能を有することを特徴とする請求項1から請求項11の何れかに記載された画像処理装置。
【請求項13】
前記第一のメモリは前記ラスタライズ処理前のデータを格納し、前記第二のメモリは前記ラスタライズ処理後のデータを格納することを特徴とする請求項12に記載された画像処理装置。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置およびその制御方法に関し、例えば、画像データとその属性情報を有するジョブを入力し、属性情報に従い画像データを画像処理し、属性情報に従いジョブを出力する画像処理に関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、画像処理前後のデータの保存方法の設定を可能にすることを目的とする。
【0009】
また、保存したデータを再出力する際に、属性情報の変更可否を示し、当該属性情報の変更を受け付けることを他の目的とする。」
(4)「【0067】
PDL解析部43は、入力される様々な種類のPDLデータを解析する。PDLデータのフォーマットとしては、Adobe社のPostScript(R)言語やHP社のPCL (Printer Control Language)言語などが有名である。これらは、頁単位の画像を作成するためのプリンタ制御コードで記述され、単純な文字コードのほか、図形描画コードや写真画像コードなども含まれる。また、PDF (Portable Document Format)というAdobe社が開発した文書用のファイル形式も様々な業界で多用され、PDLデータに書き換えず(ドライバを使用せず)に直接MFPに入力されたPDFもPDL解析部43の処理対象である。その他、PPML (Personalized Print Markup Language)と呼ばれるVDP (Variable Data Print)向けフォーマット、JPEG (Joint Photographic Experts Group)やTIFF (Tagged Image File Format)などの画像圧縮フォーマットにも対応する。」
(5)「【0175】
「ジョブ優先度」プルダウンリストボックスは高、中、低といった、ジョブの優先度を指定する。「RIP前ジョブ保存」プルダウンリストボックスは、デバイスに投入したRIP前ジョブをハードディスクなどのメモリ16に保存するか否かを指定する。「RIP後ジョブ保存」プルダウンリストボックスは、デバイスに投入したRIP後ジョブをハードディスクなどのメモリ16に保存するか否かを指定する。「ジョブスケジューリング」プルダウンリストボックスは、投入したジョブをそのまま印刷するのか、RIP前にホールドするのか、RIP後にホールドするのかを指定する。」
(6)「【0199】
MFP制御部は、ジョブを受け付け(S2701)、RIP前のPDLデータと属性情報(ジョブチケット)をセットにしてメモリ16aに保存する(S2702)。それとともに、出力ジョブ制御部182によってジョブチケットを解析し(S2703)、RIPに必要な属性情報をRIPパラメータとして設定し、RIP処理を開始する(S2704)。RIP終了後、RIP後のデータをメモリ16bに格納し、メモリ16aに格納したRIP前のデータと関連付ける(S2705)。

【0201】
選択肢として「(1)印刷開始速度を重視する」「(2)印刷設定の柔軟性を重視する」および「(3)両方を重視する」がある。(1)は、RIP後のデータのみをMFPに保存する指示で、プリントレディファイルをメモリ16から読み出すため、部数や後処理機能など限られた設定情報の変更しかできないが、より速く印刷することができる。(2)は、RIP前のデータのみをMFPに保存する指示で、再度RIPを行う必要があり、出力パフォーマンスはよくないが、再プリントの際に、より多くの項目の設定条件(属性情報)を変更することができる。(3)は、RIP前のデータとRIP後のデータの両方をMFPに保存する指示で、設定条件の変更内容によっては、良好なパフォーマンスで印刷することができ、ジョブチケットの柔軟な変更にも対応することができる。しかし、より多くのメモリ領域を必要とするため、以降に入力される他のデータを圧迫する危惧がある。
【0202】
このように、ユーザは、ジョブの投入時にRIP前のデータ、RIP後のデータ、または、両方のデータの保存を選択することができる。
【0203】
図27に戻り、MFP制御部は、図28に示す選択画面で選択された保存方法に基づき処理を分岐する(S2706)。「(1)印刷開始速度を重視する」が選択された場合はメモリ16aに格納したRIP前データを削除し(S2707)、「(2)印刷設定の柔軟性を重視する」が選択された場合はメモリ16bに格納したRIP後のデータを削除し(S2708)、「(3)両方を重視する」が選択された場合はデータの削除を行わない。そして、必要に応じてジョブをプリントし(S2709)、当該ジョブの処理を一旦終了する。なお、図28に示す選択画面で選択された保存方法は、メモリ16に格納するジョブに関連付けて、メモリ16の所定領域に格納しておく。
【0204】
図29はメモリ16に保存したジョブを再プリントする処理例を示すフローチャートで、再プリントが指示された場合にMFP制御部が実行する処理である。
【0205】
MFP制御部は、再プリントを受け付ける(S2801)。再プリントの指示は、例えばボックスに保管されたジョブを呼び出してプリントする、ボックスプリントの要領で行われる。
【0206】
図30はボックスプリントを起動する画面例を示す図で、図12に示す操作画面のボックスタブを押すことで表示される。例えば、ユーザBは、MFPにジョブを投入してプリントを行うと同時に、図30に示すボックス01(ユーザBのボックス)にジョブを保管する。その後、ボックス01を選択すると、図31に示すユーザボックス画面が表示されるので、ユーザBは例えばドキュメントQを選択する。
【0207】
以下では、ドキュメントQがPDLデータである場合を説明する。
【0208】
MFP制御部は、ユーザボックス画面を介したドキュメントの選択(ジョブの選択)を受け付けると(S2802)、図32に示すプリント画面を操作部14に表示する。ユーザBが「ジョブの設定条件の変更」ボタンを押すと、MFP制御部はジョブチケットの設定変更を受け付け(S2803)、図33または図34に示す設定変更画面を表示する。ユーザBは、ジョブチケットの設定変更画面を用いて、ジョブチケットの内容を変更することができる。
【0209】
ただし、ジョブの設定情報という意味では、図32に示す「用紙選択」「ソータ」「両面プリント」「試しプリント」などの機能も含まれる。それら以外の設定情報は、図33および図34に示す設定変更画面にグループに整理されて表示され、一つのジョブに対する設定(ジョブチケット)を変更することができる。なお、図33および図34に示す設定変更画面は、左下の「△」「▽」ボタンによって交互に切り替えることができる。また、「閉じる」ボタンを押すと、設定変更画面を閉じて図32に示すプリント画面に遷移する。
【0210】
図33に示すジョブチケットの設定変更画面の表示は、図28に示した保存方法の選択「(1)印刷開始速度を重視する」「(2)印刷設定の柔軟性を重視する」「(3)両方を重視する」に依存するメモリ16への格納方法に応じて変化する。というのは、保存方法の選択によって、ジョブの格納場所がメモリ16aか、メモリ16bかが決定され、(1)が選択された場合はジョブB(図2参照)のみが存在し、(2)が選択された場合はジョブA(図2参照)のみが存在し、(3)が選択された場合はジョブAとジョブBの両方が存在するからである。
【0211】
MFP制御部は、予め関連付けられたジョブAとジョブBのうち最適な方を選んで再プリントする。その際、図2に示す画像処理/RIP部17が使用するジョブチケットについて、ジョブAに対しては変更または再設定が可能だが、ジョブBに対しては変更も再設定もできない。
【0212】
つまり、「(1)印刷開始速度を重視する」の選択に従い保存したジョブは、図33に示すジョブチケットの設定変更画面に表示される処理のうち、画像処理/RIP部17の処理(レイアウトの「拡大/縮小」「印刷の向き」「ページレイアウト」、印刷品質の「解像度」「トラッピング」「圧縮率」、および、カラー調整の「マッチングモード」「マッチング方法「プロファイル」など)は実行することができない。従って、これらの処理を設定変更画面に表示すれば、ユーザに混乱を与える危惧がある。そこで、MFP制御部は、当該ジョブをメモリ16に格納した際の保存方法の設定をメモリ16の所定領域から読み出し、保存方法を判定する(S2804)。(1)が選択されていた場合は、図35に示すように、それらのボタンをグレイアウト表示して選択できないことをユーザに知らせたり、あるいは、図36に示すように、それらのボタンの非表示にするなどの処理を行う(S2805)。つまり、RIP後のデータだけを保存していることを、間接的にユーザに知らせることになる。
【0213】
また「(2)印刷設定の柔軟性を重視する」または「(3)両方を重視する」が選択されていた場合、MFP制御部は、図33に示すように、全てのボタンを表示して、全てのジョブチケットに対応する設定変更ができることを示す(S2806)。つまり、RIP前のデータも保存していることを、間接的にユーザに知らせることになる。
【0214】
MFP制御部は、ジョブチケットの設定変を受け付け(S2807)、ジョブチケットの設定変更画面が閉じられ、図32に示すプリント画面の「プリント開始」ボタンが押されると、ジョブAまたはジョブBをメモリ16から読み出し(S2808またはS2809)、再プリントを行う(S2810)。その際、メモリ16bにジョブBがあれば、それを優先的に読み出すが、ジョブチケットの設定変更などによりジョブBが利用できない、あるいは、ジョブAしかない場合は、メモリ16aからジョブAを読み出す。
【0215】
このように、ユーザは、ジョブ投入時はRIP前後のデータの保存方法を選択することができる。また、再プリント時は、ジョブチケットの設定変更の可否、および、RIP前後のデータのどれが保存されているかをユーザに通知することができる。」

したがって、上記引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「画像データとその属性情報を有する文書用のファイル形式のジョブを入力する入力手段と、
前記入力手段が入力したジョブを格納する第一のメモリと、
前記入力ジョブの前記属性情報に従い、当該ジョブの画像データを画像処理する画像処理手段と、
前記画像処理手段が処理したジョブを格納する第二のメモリと、
前記処理ジョブの前記属性情報に従い、当該ジョブを出力する出力手段と、
前記第一のメモリによる前記入力ジョブの保存、および、前記第二のメモリによる前記処理ジョブの保存を設定する設定手段と、
前記設定手段によって設定された保存方法に応じて前記入力ジョブおよび前記処理ジョブの保存を制御するとともに、前記保存したジョブを出力する際は、前記保存方法に応じて前記属性情報の変更の可否を示し、当該属性情報の変更を受け付ける制御手段とを有し、
前記画像処理手段は、PDLデータのラスタライズ処理機能を有し、
前記第一のメモリは前記ラスタライズ処理前のデータを格納し、前記第二のメモリは前記ラスタライズ処理後のデータを格納する画像処理装置。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前の平成17年6月30日に頒布された引用文献4(特開2005-169944号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置から出力ジョブを直接受信して出力するダイレクトプリント機能を備える出力装置であって、
受信した前記出力ジョブにアクセス制限に関する情報が含まれているか否かを判断するアクセス制限判断手段と、
前記アクセス制限判断手段において前記出力ジョブに前記アクセス制限に関する情報が含まれていると判断した場合に、前記アクセス制限を解くための認証情報の有無を判断する認証情報判断手段と、
前記認証情報判断手段において前記認証情報が無いと判断した場合に、前記アクセス制限に関する情報に応じて前記出力ジョブに対する保存処理を行う保存処理手段と
を具備することを特徴とする出力装置。
【請求項2】
前記保存処理手段は、
前記出力ジョブを保存する保存手段と、
前記アクセス制限に関する情報に応じて前記保存手段に前記出力ジョブを保存するか否かを判断する制限判断手段と、
前記制限判断手段が前記保存手段に前記出力ジョブを保存すると判断した場合に、前記保存手段に前記出力ジョブを保存する保存処理実行手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の出力装置。

【請求項5】
前記制限判断手段が前記保存手段に前記出力ジョブを保存すると判断した場合に、前記上位装置に対して前記認証情報を要求する要求情報を送信する送信手段を具備することを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の出力装置。
【請求項6】
前記上位装置から前記要求情報に応じた認証情報を受信した場合に、当該認証情報を基に認証処理を行う認証手段と、
前記認証手段が認証した場合に、前記保存手段に保存した前記出力ジョブに対して出力のための処理を行う出力処理手段と
を具備することを特徴とする請求項5に記載の出力装置。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、上位装置からジョブを直接受信して出力のための処理を行うダイレクトプリント機能を備える出力装置、出力方法及びそのプログラムに関するものである。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上位装置から出力ドライバを介さずに直接ジョブを送信するダイレクトプリントの場合には、アクセス制限がかかったジョブに対してアクセス制限を解くためのパスワードが存在せずに送信される場合が多々ある。その場合、該ジョブを受信した出力装置において、アクセス制限の内容にかかわらず一様にエラーとして処理され、再度初めからジョブとパスワードを送信し直す必要があるという課題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、パスワードが存在せず、アクセス制限のかかったジョブだけを受信した場合でも、処理を継続して行うことにより、再度初めからジョブを送信し直す手間を省くことができる出力装置、出力方法及びそのプログラムを提供することを目的とする。」
(4)「【0046】
まず、ステップS71において、解析部25は、ジョブのデータに含まれているアクセス制限の情報の内容が閲覧禁止であるか否かを判断する。ここで、閲覧禁止である場合(ステップS71のYes)には、ステップS72に進み、解析部25は、解析処理が終了したか否かを判断する。ここで、解析処理が終了していないと判断した場合(ステップS72のNo)には、ステップS73に進み、解析部25は、解析処理を続行する。また、解析処理が終了したと判断した場合(ステップS72のYes)には、ステップS74において、展開部26は、ジョブに対して展開処理及び展開したビットマップデータに対して暗号化処理を行う。次に、ステップS75に進み、展開部26は、暗号化を行った印刷データをRAM14またはHDD15に保存する。次に、ステップS76において、解析部25は、ジョブの送信を行った上位装置3000に対して、ユーザにパスワードの入力を促すメッセージを通知して本処理を終了する。この後、図6の処理が行なわれ、入力さ
れたパスワードとジョブのパスワードとが一致した場合、展開処理が行われ、図2のステップS5の出力処理が行われる。」

したがって、上記引用文献4には次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「上位装置から出力ジョブを直接受信して出力するダイレクトプリント機能を備える出力装置であって、
受信した前記出力ジョブにアクセス制限に関する情報が含まれているか否かを判断するアクセス制限判断手段と、
前記アクセス制限判断手段において前記出力ジョブに前記アクセス制限に関する情報が含まれていると判断した場合に、前記アクセス制限を解くための認証情報の有無を判断する認証情報判断手段と、
前記認証情報判断手段において前記認証情報が無いと判断した場合に、前記アクセス制限に関する情報に応じて前記出力ジョブに対する保存処理を行い、
前記出力ジョブを保存する保存手段と、
前記アクセス制限に関する情報に応じて前記保存手段に前記出力ジョブを保存するか否かを判断する制限判断手段と、
前記制限判断手段が前記保存手段に前記出力ジョブを保存すると判断した場合に、前記保存手段に前記出力ジョブを保存する保存処理実行手段とを備える保存処理手段と、
前記制限判断手段が前記保存手段に前記出力ジョブを保存すると判断した場合に、前記上位装置に対して前記認証情報を要求する要求情報を送信する送信手段を具備し、
前記上位装置から前記要求情報に応じた認証情報を受信した場合に、当該認証情報を基に認証処理を行う認証手段と、
前記認証手段が認証した場合に、前記保存手段に保存した前記出力ジョブに対して出力のための処理を行う出力処理手段と
を具備する出力装置。」

5.引用文献5について
本願の出願日前の平成20年1月10日に頒布された引用文献5(特開2008-3883号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを取得する画像データ取得部と、
ユーザを識別するための識別情報を受け付ける識別情報受付部と、
パスワードを生成するパスワード生成部と、
前記識別情報受付部により受け付けられた識別情報及び前記パスワード生成部により生成されたパスワードに基づいて暗号化鍵を生成する暗号化鍵生成部と、
前記暗号化鍵生成部により生成された暗号化鍵に基づいて、前記画像データ取得部により取得された画像データを暗号化する暗号化部と、
前記暗号化部により暗号化された画像データと前記パスワード生成部により生成されたパスワードとを合成して暗号化データを生成する合成処理部と、
前記合成処理部により生成された暗号化データを記憶する記憶部と、
記録紙に画像を形成する旨の画像形成指示を受け付ける指示受付部と、
前記指示受付部により前記画像形成指示が受け付けられた場合、前記記憶部に記憶されている前記暗号化データから前記パスワードを取得し、当該取得されたパスワード及び前記識別情報受付部により受け付けられた識別情報に基づいて復号化鍵を生成する復号化鍵生成部と、
前記復号化鍵生成部により生成された復号化鍵に基づいて、前記記憶部に記憶されている暗号化データを復号化して前記画像データを取得する復号化部と、
前記復号化部により取得された画像データに基づき記録紙に画像を形成する画像形成部と
を備えることを特徴とする画像形成装置。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データを暗号化する画像形成装置及び画像形成システムに関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、機密文書データを暗号化する画像形成装置では、例えばネットワークを介して他の画像形成装置へ、暗号化された機密文書データを復号化するための暗号化鍵やパスワードを送信すると、通信経路中で暗号化鍵やパスワードが盗聴される等して漏洩するおそれがある。そして、このようなパスワードや暗号化鍵が第三者に知られてしまうと、第三者が暗号化された機密文書データを復号化することが可能となり、機密情報が漏洩するおそれがあるという不都合があった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みて為された発明であり、画像データが漏洩するおそれを低減することができる画像形成装置及び画像形成システムを提供することを目的とする。」

したがって、上記引用文献5には次の発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。
「画像データを取得する画像データ取得部と、
ユーザを識別するための識別情報を受け付ける識別情報受付部と、
パスワードを生成するパスワード生成部と、
前記識別情報受付部により受け付けられた識別情報及び前記パスワード生成部により生成されたパスワードに基づいて暗号化鍵を生成する暗号化鍵生成部と、
前記暗号化鍵生成部により生成された暗号化鍵に基づいて、前記画像データ取得部により取得された画像データを暗号化する暗号化部と、
前記暗号化部により暗号化された画像データと前記パスワード生成部により生成されたパスワードとを合成して暗号化データを生成する合成処理部と、
前記合成処理部により生成された暗号化データを記憶する記憶部と、
記録紙に画像を形成する旨の画像形成指示を受け付ける指示受付部と、
前記指示受付部により前記画像形成指示が受け付けられた場合、前記記憶部に記憶されている前記暗号化データから前記パスワードを取得し、当該取得されたパスワード及び前記識別情報受付部により受け付けられた識別情報に基づいて復号化鍵を生成する復号化鍵生成部と、
前記復号化鍵生成部により生成された復号化鍵に基づいて、前記記憶部に記憶されている暗号化データを復号化して前記画像データを取得する復号化部と、
前記復号化部により取得された画像データに基づき記録紙に画像を形成する画像形成部と
を備える画像形成装置。」


第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、
後者の「受信手段」、「印刷部」、「印刷制御装置」、「『第1の情報』、『第2の情報』及び『パスワード』」、及び「プリンタ」は、それぞれ、前者の「受付部」、「印刷指示に従って画像を印刷する印刷部」、「制御を行う制御部」、「特定のパスワード」、及び「画像形成装置」に相当する。
後者の「受信手段」は、印刷データおよび当該印刷データに対して設定された第1の情報を受信するものであるから、後者の「受信手段により受信された前記印刷データの印刷」は、前者の「受付部における特定パスワードの入力を伴う印刷指示にしたがって」といえる。
ここで、本願発明1の「画像データ」とは、「文書データを、ビットマップデータに変換した画像データのことである。」(本願明細書【0039】参照。)。そうすると、後者においても、印刷データをビットマップデータに変換して印刷を行っていることは明らかであるから、後者の「受信手段により受信された前記印刷データの印刷を許可する第1の許可手段」は、「特定パスワードが設定された印刷データに基づき生成された画像データを用いて前記印刷部に印刷させ」るといえる。しかし、後者の「保存手段」が保存するものは、「受信手段により受信された印刷データ」であって、印刷データをビットマップデータに変換したものではないから、後者の「受信手段により受信された前記印刷データを保存する保存手段」と、前者の「制御部」とは、「更なる印刷が可能となるようにデータを保存する処理」を行うとの概念で共通するにとどまる。
後者の「プリンタ」の「受信手段」が受信する「印刷データ」は、ユーザの指示によるものであることは、明らかである。
後者の「保存手段に保存されている前記印刷データの印刷」は、前者の「保存されたデータを印刷部に印刷させる処理」といえる。そして、後者の「保存手段に保存されている前記印刷データの印刷」は、「第2の情報を入力する入力手段と、前記第2の情報が前記第1の情報に対応している場合」に許可されるものであるから、「受付部における前記特定パスワードの入力を伴う更なる印刷指示にしたがって」、「印刷させる処理」といえる。

したがって、両者は、
「ユーザからの指示を受け付ける受付部と、
印刷指示に従って画像を印刷する印刷部と、
制御を行う制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記受付部における特定パスワードの入力を伴う印刷指示にしたがって、前記特定パスワードが設定された印刷データに基づき生成された画像データを用いて前記印刷部に印刷させ、更なる印刷が可能となるようにデータを保存する処理と、
前記受付部における前記特定パスワードの入力を伴う更なる印刷指示にしたがって、保存された前記データを印刷部に印刷させる処理と、を行う画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願発明1が、「印刷データに基づき生成された画像データを特定パスワードに基づく暗号鍵を用いて暗号化して」保存する処理と、「暗号化されて保存された前記画像データを前記暗号鍵を用いて復号化し、復号化された画像データに基づき」印刷部に印刷させる処理と、を有するものであるのに対し、引用発明1は、そのようなものでない点。

(2)相違点についての判断
引用発明2の「画像データ」、及び「『認証情報』、及び『パスワード』」は、それぞれ、本願発明1の「印刷データ」、及び「パスワード」に相当する。
また、引用発明3の「データ」、及び「画像処理装置」は、それぞれ、本願発明1の「印刷データ」、及び「画像形成装置」に相当する。
しかし、上記相違点に係る本願発明1の、「生成された画像データを特定パスワードに基づく暗号鍵を用いて暗号化して」保存する処理と、「暗号化されて保存された前記画像データを前記暗号鍵を用いて復号化し、復号化された画像データに基づき」印刷部に印刷させる処理は、引用発明2及び引用発明3のいずれにも、記載も示唆もされていない。
また、引用発明4の「出力ジョブ」及び引用発明5の「画像データ」も、本願発明1の「印刷データ」に相当するものであるから、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項は、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4、及び引用文献5にも、記載も示唆もされていない。
また、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項が設計的事項といえる理由もない。
そして、本願発明1は、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項により、「本発明によれば、文書データのセキュリティを維持しつつ再印刷機能の利便性を向上させることができる。」(本願明細書【0008】参照。)との効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、引用発明1乃至引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

2.本願発明2乃至6について
本願発明2乃至4は、本願発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本願発明2乃至4は、上記1.(2)と同様の理由により、引用文献1乃至5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本願発明5は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であるし、本願発明6は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明1と実質的な構成の差異がない発明であるから、本願発明5、及び本願発明6は、上記1.(2)と同様の理由により、引用文献1乃至5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1-6に対して、引用文献等1-4
<引用文献等一覧>
1.特開2004-326556号公報
2.特開2011-35690号公報
3.特開2006-285610号公報
4.特開2005-169944号公報」
というものである。
しかしながら、請求項1に係る発明は、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項である画像データを「特定パスワードに基づく暗号鍵を用いて暗号化して」保存する処理と、「暗号化されて」保存された前記画像データを「暗号鍵を用いて復号化し、復号化された画像データに基づき」印刷部に印刷させる処理と、を有するものとなっており、上記「第4」のとおり、本願発明1乃至6は、上記引用文献1乃至引用文献4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について
当審では、
「1.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1?6に係る発明は、「暗号化した画像データの保存」及び「再印刷処理」に関して何ら特定されていないから、発明の詳細な説明に記載の課題「セキュリティを維持しつつ再印刷機能の利便性を向上させる手段を提供すること」(【0006】参照。)を解決する手段が記載されているとはいえない。
(2)請求項1、5及び6の「前記受付部における特定パスワードの入力を伴う印刷指示」と「前記受付部における前記特定パスワードの入力を伴う印刷指示」との差異が不明であり、両者が同一のものと解釈し得るところ、そのような事項に対応する発明の詳細な説明に記載の実施例はない。
2.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項1、5及び6の「前記受付部における特定パスワードの入力を伴う印刷指示」と「前記受付部における前記特定パスワードの入力を伴う印刷指示」との差異が不明である。」
との拒絶の理由を通知しているが、平成29年7月21日付けの補正において、上記指摘1.(1)に対して、請求項1、5及び6は、「暗号化して保存する処理」との補正がなされ、上記指摘1.(2)及び指摘2.に対して請求項1、5及び6は、「更なる印刷指示」との補正がなされた結果、この拒絶の理由は解消した。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-12 
出願番号 特願2012-122904(P2012-122904)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B41J)
P 1 8・ 121- WY (B41J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岡▲崎▼ 輝雄金田 理香  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
森次 顕
発明の名称 画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム  
代理人 黒岩 創吾  
代理人 阿部 琢磨  

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