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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1332156
審判番号 不服2016-14839  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-04 
確定日 2017-09-26 
事件の表示 特願2012- 59915「偏光板及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月30日出願公開、特開2013-195494、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月16日の出願であって、平成27年11月17日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月14日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、平成28年6月29日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年10月4日に本件拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正(以下「審判請求時の補正」という。)がなされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成28年6月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願については、平成27年11月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由1.2.によって、拒絶をすべきものです。

1 理由1(特許法第29条第1項第3号)
本願出願の請求項1?6に係る発明は、下記の引用文献1,2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2 理由2(特許法第29条第2項)
本願出願の請求項1?7に係る発明は、下記の引用文献1?3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

<引用文献等一覧>
1.特開2010-181500号公報
2.特表2008-536177号公報
3.国際公開第2010/100986号


第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正は、平成28年1月14日付けの手続補正書の特許請求の範囲(以下「補正前」という。)の請求項1に係る発明のプライマー層について、「(メタ)アクリル系化合物を硬化させて形成された層である」ことを「(メタ)アクリル系化合物の塗膜の硬化物である」とする補正事項を含むが、当該補正事項は硬化について、(メタ)アクリル系化合物の「塗膜」を硬化させたものに限定するものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。また、審判請求時の補正は、補正前の請求項2を削除する補正事項を含んでいる。さらに、補正前の請求項5に係る発明の塗工液について、「紫外線の作用によってラジカルを発生するラジカル重合開始剤を含む」とし、硬化について「紫外線を照射することにより」とする補正事項は、それぞれ、塗工液および硬化工程に条件を付するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。そして、これらの補正事項が本件明細書の段落【0037】および【0141】に記載されていたことは明らかであるから、審判請求時の補正は新規事項を追加するものではないといえる。
以上のとおり、審判請求時の補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものであるが、以下の「第4 本願発明」?「第6 対比・判断」において示すように、補正後の請求項1?6に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明
本願請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。)は、審判請求時の補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される以下のとおりの発明と認められる。
「 【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムに、接着剤層、プライマー層及びシクロオレフィン系樹脂フィルムがこの順に積層されてなり、
該プライマー層は、下式(I)
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-を表し、Yは環状構造を含んでもよい炭素数1?12の2価の炭化水素基を表す。)
で示される(メタ)アクリル系化合物の塗膜の硬化物であることを特徴とする
偏光板。
【請求項2】
前記プライマー層は、5μm以下の膜厚を有する請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記偏光フィルムの、接着剤層、プライマー層及びシクロオレフィン系樹脂フィルムがこの順に積層された面と反対側の面に、接着剤層を介して熱可塑性樹脂からなる保護フィルムが積層されている請求項1または請求項2に記載の偏光板。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムに、接着剤を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムを貼合し、偏光板を製造する方法であって、
前記シクロオレフィン系樹脂フィルムの表面に、下式(I)
【化2】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-を表し、Yは環状構造を含んでもよい炭素数1?12の2価の炭化水素基を表す。)
で示される(メタ)アクリル系化合物および、紫外線の作用によってラジカルを発生するラジカル重合開始剤を含むプライマー用塗工液を塗工し、紫外線を照射することにより、それを硬化させてプライマー層を形成し、次いでそのプライマー層が形成された面を、前記接着剤を介して前記偏光フィルムに貼合することを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項5】
前記偏光フィルムの一方の面に前記接着剤を介して、前記プライマー層が形成されたシクロオレフィン系樹脂フィルムを貼合し、前記偏光フィルムの他方の面には、接着剤を介して熱可塑性樹脂からなる保護フィルムを貼合する請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記偏光フィルムの一方の面に前記プライマー層が形成されたシクロオレフィン系樹脂フィルムを貼合するための接着剤と、前記偏光フィルムの他方の面に前記熱可塑性樹脂からなる保護フィルムを貼合するための接着剤とが同種のものであり、
前記偏光フィルムの一方の面への前記シクロオレフィン系樹脂フィルムの貼合と、前記偏光フィルムの他方の面への前記熱可塑性樹脂からなる保護フィルムの貼合とが同時に行われる請求項5に記載の製造方法。」


第5 引用文献に記載された発明
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。以下同じ。)

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示素子の外面側に配設される偏光子外面保護フィルムであって、
透明な合成樹脂製の基材層と、
この基材層の内面側に積層されるプライマー層と、
このプライマー層の内面側に積層される親水性樹脂層と
を備えることを特徴とする偏光子外面保護フィルム。

(中略)

【請求項8】
上記プライマー層及び親水性樹脂層の合計厚みが、0.02μm以上4μm以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の偏光子外面保護フィルム。

(中略)

【請求項10】
ポリビニルアルコールからなる偏光子と、
この偏光子の外面に積層される請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の偏光子外面保護フィルムと、
偏光子の内面に積層される偏光子内面保護フィルムと
を備える偏光板。」

イ 「【0024】
図1の偏光子外面保護フィルム1は、透明な合成樹脂製の基材層2、プライマー層3及び親水性樹脂層4を有する。偏光子外面保護フィルム1は、衝撃に対する耐性及び取扱い性を向上させるための偏光子の保護膜として用いられるものであって、液晶表示素子の外面側(図示されたA方向の側)に配置される。」

ウ 「【0025】
透明樹脂製の基材層2を構成する樹脂は、液晶表示素子の偏光子外面保護フィルムとして要求される高い透明性を有する限り特に限定されるものではないが、典型的には、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる群から選択される。これらの合成樹脂は、優れた光学的透明性及び耐衝撃強度を有するため、トリアセチルセルロースに替わって液晶表示素子の外層側に配置することができる。基材層2は、透明性及び所望の強度を損なわない限りは他の任意成分を含んでよいが、上記のような合成樹脂を好ましくは90質量%以上含み、さらに好ましくは98質量%以上含む。ここでの任意成分の例として、紫外線吸収剤、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、位相差低減剤、艶消し剤、抗菌剤、防かび等が挙げられる。

(中略)

【0029】
基材層2に用いられるシクロオレフィン系樹脂は、シクロオレフィンに由来する骨格を有する樹脂である。シクロオレフィン系樹脂の例としては、特に限定されないが、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を必要に応じてマレイン酸付加、シクロペンタジエン付加のようなポリマー変性を行なった後に水素添加した樹脂、ノルボルネン系モノマーを付加重合させた樹脂、ノルボルネン系モノマーとエチレン及びα-オレフィンなどのオレフィン系モノマーを付加重合させた樹脂などを挙げることができる。」

エ 「【0044】
プライマー層3は、基材層2及び親水性樹脂層4の両者との化学的親和性を有する化学種を含むものである限り特に限定されないが、水系ラテックスから形成されるものであることが好ましい。水系ラテックスは、単一の不飽和モノマーの重合体、又は2種以上の不飽和モノマーの共重合体からなる親油性を呈する成分で構成される。水系ラテックスとしては、一般的な乳化重合法で合成されるものを使用してもよいし、市販のラテックスを使用してもよい。水系ラテックスの主溶媒としては水が用いられるが、水と混和可能な有機溶媒を少量用いてもよい。水系ラテックスには適宜、帯電防止剤、界面活性剤、増粘剤、安定剤、架橋剤、硬化触媒等の任意成分を添加してもよい。水系ラテックスの固形分は、典型的には20質量%以上50質量%以下である。水系ラテックスを構成する重合体粒子の粒径は、分散安定性の観点から0.005μm以上0.5μmであることが好ましい。
【0045】
上記不飽和モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、置換基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、アミル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、tert-オクチル基、ドデシル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、4-クロロブチル基、シアノエチル基、2-アセトキシエチル基、ジメチルアミノエチル基、ベンジル基、メトキシベンジル基、2-クロロシクロヘキシル基、シクロヘキシル基、フルフリル基、テトラヒドロフルフリル基、フェニル基、5-ヒドロキシペンチル基、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル基、2-メトキシエチル基、グリシジル基、アセトアセトキシエチル基、3-メトキシブチル基、2-エトキシエチル基、2-iso-プロポキシ基、2-ブトキシエチル基、2-(2-メトキシエトキシ)エチル基、2-(2-ブトキシエトキシ)エチル基、ω-メトキシオリゴオキシエチレン基、ω-ヒドロキシオリゴオキシエチレン基、1-ブロモ-2-メトキシエチル基、又は1,1-ジクロロ-2-エトキシエチル基を有するアクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体;
【0046】
アクリルアミド、メタクリルアミド、置換基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、ドデシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、ヒドロキシメチル基、メトキシエチル基、ジメチルアミノプロピル基、フェニル基、アセトアセトキシプロピル基又はシアノエチル基を有するN-モノ置換誘導体であるアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、N,N-ジメチル基又はN,N-ジエチル基を有するアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体;
【0047】
ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプレート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルなどのビニルエステル類;ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1-ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3-ジメチルブタジエンなどのオレフィン類;スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなどのスチレン類;クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシルなどのクロトン酸エステル類;イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸モノブチルエステル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチルなどのイタコン酸エステル類;フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチルなどのフマル酸エステル類;メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトンなどのビニルケトン類;N-ビニルピリジンおよび2-および4-ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルトリアゾール、N-ビニル-2-ピロリドンなどのヘテロ環含有ビニルモノマー類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類が挙げられる。
【0048】
水系ラテックスは、公知のディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法(ダイコート法)等を用いて、基材層2に塗布することができる。次いで、塗布された水系ラテックスを乾燥することにより、プライマー層3を形成することができる。プライマー層3の厚みは、好ましくは0.01μm以上1μm以下であり、さらに好ましくは0.05μm以上0.1μm以下である。」

オ 「【0050】
親水性樹脂層4を形成するための水分散性ポリエステル系樹脂は、公知の方法に従い、ジカルボン酸とジオールとをエステル化(エステル交換)し、重縮合させ、さらに親水性を付与するために変性することによって製造される。水分散性ポリエステル系樹脂の分子量としては、例えば、3000以上30000以下のものを用いることができる。

(中略)

【0054】
また、水分散性ポリエステル系樹脂として、ジカルボン酸及びジオールの他に、親水性のラジカル重合性ビニルモノマーを共重合させたものを用いることが好ましい。この場合には、例えば、ジカルボン酸及びジオールの合計100質量部に対し、ラジカル重合性ビニルモノマーを10質量部以上500質量部以下の割合で使用することができる。
【0055】
このような親水性のラジカル重合性ビニルモノマーの例としては、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアクリル酸エステル、エチレングリコールアクリレート、エチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート等のグリコールエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メトキシメチロールアクリルアミド等のアクリルアミド系化合物、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のグリシジルアクリレート系化合物、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルピロリドン等の含窒素ビニル系化合物、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和酸及びその塩、アクリル酸アミノアルキル、メタクリル酸アミノアルキルエステル及びその4級アンモニウム塩等のカチオン系モノマー等を挙げることができる。

(中略)

【0060】
親水性樹脂層4は、親水性樹脂を含む水系乳化物をプライマー層3に塗布し、乾燥することによって形成することができる。水系乳化物の固形分は、通常10質量%以上50質量%以下である。水系乳化物の主溶媒としては水が用いられるが、水と混和可能な有機溶媒を少量用いてもよい。このような有機溶媒の例としては、低級アルコール類、多価アルコール類及びそのアルキルエーテルまたはアルキルエステル類などが挙げられる。水系乳化物の塗布手段は、プライマー層の形成の場合と同様の手段を用いることができる。
【0061】
親水性樹脂層4を形成するための水系乳化物に、必要に応じて架橋剤を添加することが好ましい。架橋剤の例として、アルデヒド、N-メチロール化合物、ジオキサン誘導体、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾール、ジアルデヒド澱粉を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。架橋剤の添加量は、親水性樹脂全量に対して0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5?15質量%がさらに好ましい。親水性樹脂層を形成するための水系乳化物には、さらに界面活性剤、すべり剤、染料、UV吸収剤、マット剤、防腐剤、増粘剤などを添加してもよい。」

カ 「【0062】
プライマー層3及び親水性樹脂層4の合計厚みは、好ましくは0.02μm以上4μm以下であり、さらに好ましくは0.05μm以上2μm以下である。プライマー層3及び親水性樹脂層の合計厚みを0.02μm以上とすることによって、親水性樹脂層を構成する親水性樹脂と偏光子を構成するポリビニルアルコールとの接着が確実となる。また、このプライマー層3及び親水性樹脂層4の合計厚みを4μm以下とすることによって、偏光子外面保護フィルム1の厚みを十分薄く保つことができ、偏光子外面保護フィルム1を含めた偏光板全体の厚みの増大を抑制することができる。」

キ 「【0066】
図2の偏光板5は、ポリビニルアルコールからなる偏光子7の外面側(図示されたA方向の側)に、図1の偏光子外面保護フィルム1を備え、偏光子7の内面側に、従来から用いられているセルロースエステルからなる偏光子内面保護フィルム6を備えた構造を有している。偏光子7と偏光子外面保護フィルム1との間、及び、偏光子7と偏光子内面保護フィルム6との間は、接着剤(図示せず)によって接合されている。」

ク 「【0067】
偏光子7は、ポリビニルアルコール樹脂フィルムを二色性物質(例えば、ヨウ素や二色性染料)で染色し一軸延伸したものが用いられる。このポリビニルアルコール樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコールの重合度は、親水性樹脂を構成するビニルアルコール系重合体の場合と同様に、500以上が好ましく、1000以上がより好ましい。ポリビニルアルコール樹脂フィルムは、公知の方法(例として、樹脂を水又は有機溶媒に溶解した溶液を流延成膜する流延法、キャスト法など)で成形することができる。偏光子7の厚みは、偏光板5が用いられるLCDの目的や用途に応じて異なるが、典型的には5μm以上100μm以下である。偏光子7は、偏光機能及び光学的透明性を阻害しない限りは、ポリビニルアルコール樹脂及び二色性物質以外の任意成分を含んでいてもよい。」

ケ 「【0075】
必要に応じてケン化処理に供された偏光子外面保護フィルム1と、ポリビニルアルコールからなる偏光子7とは、図3に模式的に示される装置8によって貼合される。図3に示された複数の膜を貼合するための装置8は、偏光子7を供給するためのニップ9、偏光子外面保護フィルム1を供給するためのニップ10、接着剤を供給するための手段11、及び、偏光子7と偏光子外面保護フィルム1とを接着剤を介して押圧・接合するためのニップ12を備えている。」

コ 「【0078】
次いで、偏光子外面保護フィルム1が積層されていない方の偏光子7の面にも、同様の手段を用いて偏光子内面保護フィルム6を積層することによって、偏光板5が得られる。偏光子内面保護フィルム6は、偏光子7との接着を行う前に、予めアルカリでケン化処理に供して、トリアセチルセルロースのエステル基を水酸基に変換しておく。積層された偏光板5の厚みは、典型的には10μm以上100μm以下である。」

以上の記載事項によれば、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
「ポリビニルアルコール樹脂フィルムを二色性物質で染色し一軸延伸したものからなる偏光子と、
この偏光子の外面に積層される偏光子外面保護フィルムであって、透明なシクロオレフィン系樹脂である合成樹脂製の基材層と、この基材層の内面側に積層され、置換基として、5-ヒドロキシペンチル基、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル基を有するアクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体などの不飽和モノマーの重合体で構成される水系ラテックスから形成され、厚みは、1μm以下であり、塗布された水系ラテックスを乾燥することにより形成するプライマー層と、このプライマー層の内面側に積層され、ジカルボン酸及びジオールの他に、親水性のラジカル重合性ビニルモノマーを共重合させた親水性樹脂を含み架橋剤を添加した水系乳化物をプライマー層に塗布し、乾燥することによって形成する親水性樹脂層とを備える偏光子外面保護フィルムと、
偏光子の内面に積層される偏光子内面保護フィルムと
を備え、偏光子と偏光子外面保護フィルムとの間、及び、偏光子と偏光子内面保護フィルムとの間は、接着剤によって接合されている偏光板。」

(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア基体と、ポリビニルアルコールに対する付着を促進する層及び低複屈折ポリマーフィルムを含むカバーシートとを含む少なくとも1つのガードされたカバーシート複合体を用意すること、
偏光フィルムを用意すること、そして
該カバーシート内の該ポリビニルアルコールに対する付着を促進する層が該偏光フィルムと接触するように、該カバーシートを該偏光フィルムと接触させ、これにより、該ポリビニルアルコールに対する付着を促進する層によって接着結合されたカバーシートと偏光フィルムとを含む偏光子板複合シートを製造すること
を含んで成る偏光子板の形成方法、
該キャリア基体が、該カバーシートを該偏光フィルムと接触させる前に該カバーシートから引き剥がされ、そして該方法が、該カバーシート、ガードされたカバーシート複合体、及び偏光子フィルムのうちの少なくとも1つを、該複合偏光子フィルムの連続生産を可能にするように、アキュムレータを通して搬送することをさらに含む偏光子板の形成方法。

(中略)

【請求項23】
相互の接触前に、該カバーシート又は偏光フィルムに、接着剤が適用される請求項1に記載の方法。

(中略)

【請求項33】
該ポリビニルアルコールフィルムに対する付着を促進する層が親水性ポリマーを含む請求項1に記載の方法。

(中略)

【請求項35】
該ポリビニルアルコールフィルムに対する付着を促進する層が、架橋用化合物をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項36】
該低複屈折ポリマーフィルムが、ポリカーボネート又は環状ポリオレフィンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項37】
下記工程を含んで成る偏光板を形成する方法:
(a) キャリア基体と、低複屈折ポリマー保護フィルム及びポリビニルアルコールに対する付着を促進する層を含む保護カバーシートとを有するガードされたカバーシートをそれぞれが含む第1ウェブと第2ウェブとを、それぞれ第1供給ロールと第2供給ロールとから供給する工程;
(b) 該第1又は第2ウェブのそれぞれが、独立して起きることができる、終わりに近くなると、各ウェブと新しいウェブとを両面添え継ぎする手段に近接して各ウェブを搬送する工程;
(c) 工程(h)における乾燥器への偏光子シートの供給が実質的に一定であるように、下記工程(d)の引き剥がしステーションの前、又は工程(g)のラミネーションの後に配置されたアキュムレータを通して、各ウェブを搬送する工程;
(d) (i)該保護カバーシートを含むガード無しウェブと、(ii)該キャリア基体を含むキャリヤ・ウェブとを生成するために、各ウェブにおいて、引き剥がしステーションで該保護カバーシートから該キャリア基体を取り外す工程;
(e) 任意選択的に、各ガード無しウェブを、ウェブ展開手段上を通過するように搬送する工程;
(f) 各ポリビニルアルコールに対する付着を促進する層が各ガード無しウェブにおいて二色性PVAフィルムと接触させられるように、各ガード無しウェブを、二色性PVAフィルムを含む偏光ウェブと同時又は順次に接触させ、該二色性PVAフィルムと保護カバーシートとが接触させられるのに伴って圧力が加えられ、これにより偏光子板ウェブを形成する工程;そして
(g) 該偏光子板ウェブを乾燥させるする工程。
【請求項38】
下記工程を含んで成る偏光板を形成する方法:
(a) キャリア基体と、低複屈折ポリマー保護フィルム及びポリビニルアルコールに対する付着を促進する層を含む保護カバーシートとを有するガードされたカバーシートを含むウェブを、供給ロールから供給する工程;
(b) 任意選択的に、該ウェブが終わりに近くなると、該ウェブと新しいウェブとを両面添え継ぎする手段に近接して各ウェブを搬送する工程;
(c) 任意選択的に、該ウェブを、駆動ローラを通して搬送する工程;
(d) (i)該保護カバーシートを含むガード無しウェブと、(ii)該キャリア基体を含むキャリヤ・ウェブとを生成するために、引き剥がしステーションで該保護カバーシートから該キャリア基体を取り外す工程;
(e) 任意選択的に、各ガード無しウェブを、ウェブ展開手段上を通過するように搬送する工程;
(f) 該ポリビニルアルコールに対する付着を促進する層が、該ガード無しウェブにおいて二色性PVAフィルムと接触させられるように、該ガード無しウェブを、二色性PVAフィルムを含む偏光ウェブと接触させ、該二色性PVAフィルムとカバーシートとが接触させられるのに伴って圧力が加えられ、偏光板複合シートを形成する工程;
(g) 任意選択的に、偏光子板ウェブを形成するために、工程(f)と同時又は順次に該偏光ウェブの反対側で、該偏光ウェブを第2のガード無しウェブと接触させる工程;そして
(h) 該偏光子板ウェブを乾燥させる工程。」

イ 「【0004】
偏光子板の保護カバーシートは、高い均一性、良好な寸法的及び化学的安定性、並びに高い透明性を有することが必要とされる。最初、保護カバーシートは、ガラスから形成されたが、しかし今は、軽量且つ可撓性の偏光子を製造するために、数多くの樹脂フィルムが使用される。セルロース、アクリル、環状ポリオレフィンポリマー、ポリカーボネート、及びスルホンを含む多くの樹脂が、保護カバーシートにおいて使用するように示唆されている。しかし、アセチルセルロース・ポリマーが、偏光子板用保護カバーにおいて最も広く使用されている。アセチルセルロース・タイプのポリマーは、種々様々な分子量、並びにセルロース主鎖上のヒドロキシル基のアセチル置換度で、商業的に入手可能である。これらのうち、偏光子板用保護カバーシートにおいて使用するための樹脂フィルムを製造するためには、完全置換型ポリマー、トリアセチルセルロース(TAC)が一般に使用される。」

ウ 「【0023】
具体的には、本発明の方法は、キャリヤ・ウェブ上の少なくとも1つ、好ましくは、2つのカバーシートを供給し、キャリヤ・ウェブからカバーシートを引き剥がし、そしてカバーシートをPVA二色性フィルムにラミネートすることを含む。「シート」という用語は本明細書中では、特に断りのない限り、ロールなどから繰り出されるか又はロール上に巻き取られるウェブなどを意味することができる。この方法はさらに、改善された張力制御、キャリヤ・ウェブからのカバーシートの引き剥がし後の静電散逸を含んでよい。カバーシートとキャリヤ基体とを含む複合体は、好ましくは、巻き取られてロールにされ、そして偏光子板製作に必要とされるまで貯蔵される。」

エ 「【0058】
図4に目を転じると、本発明のガードされたカバーシート複合体から偏光子板を製作するための本発明による方法の1つの態様の概略図が示されている。図4は、引き剥がしステーションにおけるウェブ引き剥がし、及びラミネーション・ステーションにおける複数のウェブ相互間のラミネーションを伴うロール間プロセスを示す。偏光子板の一方の側に対しては、カバーシート171とキャリヤ基体170とを含むガードされたカバーシート複合体151(図15参照)が、そして偏光子板の他方の側に対しては、カバーシート173とキャリヤ基体170bとを含むガードされたカバーシート複合体153(図16参照)が、それぞれ供給ロール200a及び200bから供給される。ラミネーション・ステーションに供給される前に連続プロセスで二色性フィルムを形成するために、PVA二色性フィルム202が延伸され、そしてヨウ化物で染色される。対向型ピンチローラ206及び208間のラミネーション・ニップに入る前に、最下層(図15及び16の場合、これは層162であり、ポリビニルアルコールに対する付着を促進する層である)を露出させるために、キャリヤ基体170a及び170bは、ガードされたカバーシート複合体151及び153から、引き剥がしステーションで引き剥がされる。引き剥がされたキャリヤ基体170a及び170bは、キャリヤ巻き取り器210a, 210b上で巻き取られてロールにされる。シート及びフィルムがピンチローラ206及び208間のニップに入る前に、PVA二色性フィルムの両側、又はカバーシート171及び173の最下層に、接着剤溶液を任意に適用することができる。接着剤溶液は、例えば噴霧塗布、滴下塗布、ホッパー塗布、ローラ塗布、ブレード塗布、ワイヤロッド塗布などを含む種々のよく知られた塗布法によって適用することができる。」

オ 「【0060】
この特定の態様において、キャリヤ基体は好ましくは、ポリエステルであり、そして保護カバーシートは、保護ポリマー、例えばTAC及び任意選択の補助層を含む。保護カバーシートは、少なくとも低複屈折ポリマー保護フィルムと、ポリビニルアルコールフィルムに対する付着を促進する層とを含む。」

カ 「【0134】
このプロセスに関連して上述したように、対PVA付着促進層がカバーシートの、PVA二色性フィルムと接触する側に位置するように、カバーシートがPVA二色性フィルムにラミネートされる場合、カバーフィルムとPVA二色性フィルムとをラミネートするために接着剤溶液を使用することができる。種々様々な接着剤組成物が利用可能であり、そして特に限定されることはない。一般に採用される例は、溶解されたポリマー、例えばPVA又はその誘導体、及びホウ素化合物、例えばホウ酸を含有する水/アルコール溶液である。或いは、溶液は、溶解ポリマーを含まないか、又は実質的に含まず、そしてPVAを架橋する試薬を含んでよい。試薬はPVAをイオン的に又は共有結合的に架橋することができ、或いは、両タイプの試薬の組み合わせを用いることもできる。適切な架橋イオンの一例としては、カチオン、例えばカルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、ホウ素、ベリリウム、アルミニウム、鉄、銅、コバルト、鉛、銀、ジルコニウム、及び亜鉛イオンが挙げられる。ホウ素化合物、例えばホウ酸、及びジルコニウム化合物、例えば硝酸ジルコニウム又は炭酸ジルコニウムが特に好ましい。共有結合架橋試薬の例は、ポリカルボン酸又は無水物;ポリアミン;エピハロヒドリン;ジエポキシド;ジアルデヒド;ジオール;カルボン酸ハロゲン化物、ケテン及び同様の化合物を含む。フィルム上に適用される溶液の量は、その組成に応じて大幅に変化することが可能である。例えば、湿潤フィルム被覆率は、1 cc/m^(2)もの低さであること、並びに100 cc/m^(2)もの高さであることが可能である。湿潤フィルム被覆率は、所要乾燥時間を短くするためには低いことが望ましい。」

キ 「【0136】
低複屈折保護ポリマーフィルムにおいて使用するための高分子材料の一例としては、セルロース・エステル(トリアセチルセルロース(TAC)、二酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロースを含む)、ポリカーボネート(例えばGeneral Electric Corp.から入手可能なLEXAN、ビスフェノール-A-トリメチルシクロヘキサン-ポリカーボネート、ビスフェノール-A-フタレート-ポリカーボネート)、ポリスルホン(例えば、Amoco Performance Products Inc.から入手可能なUDEL)、ポリアクリレート、及び環状オレフィン・ポリマー(例えばJSR Corp.から入手可能なARTON)、Nippon Zeonから入手可能なZEONEX及びZEONOR、Ticonaによって供給されるTOPAS)が挙げられる。好ましくは、本発明の低複屈折保護ポリマーフィルムは、商業的な入手可能性、及び優れた光学特性に基づいて、TAC、ポリカーボネート、又は環状オレフィン・ポリマーを含む。」

ク 「【0138】
対PVA付着促進層は親水性ポリマーを含む。本発明の目的に適した親水性ポリマーは合成ポリマー及び天然ポリマーの両方を含む。天然発生型ポリマーは、タンパク質、タンパク質誘導体、セルロース誘導体(例えばセルロース・エステル)、多糖、及びカゼインなどを含み、そして合成型ポリマーは、ポリ(ビニルラクタム)、アクリルアミド・ポリマー、ポリ(ビニルアルコール)及びその誘導体、加水分解型ポリビニルアセテート、アルキル及びスルホアルキルアクリレート及びメタクリレートのポリマー、ポリアミド、ポリビニルピリジン、アクリル酸ポリマー、無水マレイン酸コポリマー、ポリアルキレンオキシド、メタクリルアミド・コポリマー、ポリビニルオキサリジノン、マレイン酸コポリマー、ビニルアミン・コポリマー、メタクリル酸コポリマー、アクリロイルオキシアルキルスルホン酸コポリマー、ビニルイミダゾール・コポリマー、ビニルスルフィド・コポリマー、スチレンスルホン酸を含有するホモポリマー又はコポリマーなどを含む。

(中略)

【0140】
具体的な1つの態様の場合、ポリビニルアルコールフィルムに対する付着を促進する層は、さらに疎水性ポリマー粒子、例えば水分散性ポリマー又はポリマー・ラテックスを含んでよい。好ましくは、これらのポリマー粒子は、水素結合を受容する基を含有する。この基は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、又はスルホニル部分を含む。好適なポリマー粒子は、エチレン系不飽和型モノマー、例えばアクリル酸を含むアクリレート、メタクリル酸を含むメタクリレート、アクリルアミド及びメタクリルアミド、イタコン酸及びその半エステル及びジエステル、置換型スチレンを含むスチレン、アクリロニトリル及びメタクリルニトリル、ビニルアセテート、ビニルエーテル、ビニル及びビニリデンハロゲン化物、及びオレフィンから調製された付加タイプのポリマー及びインターポリマーを含む。加えて、架橋用モノマー及びグラフト結合用モノマー、例えば、1,4-ブチレングリコールメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、及びジビニルベンゼンなどを使用することができる。その他の好適なポリマー分散体は、ポリウレタン分散体又はポリエステルイオノマー分散体、ポリウレタン/ビニルポリマー分散体、及びフルオロポリマー分散体である。好ましくは、本発明のポリマー粒子において使用するためのポリマーの重量平均分子量は、約10,000を上回り、ガラス転移温度(Tg)は約25℃未満である。一般に、分子量が高く、Tgが低いと、ポリマー粒子は、PVA二色性フィルム及びつなぎ層の両方に対する層の付着力を改善する。

(中略)

【0142】
対PVA付着促進層は、架橋剤を含有することもできる。本発明の実施のために有用な架橋剤は、水溶性ポリマー及び/又はポリマー粒子上に存在する反応性部分と反応することができる任意の化合物を含む。このような架橋剤は、アルデヒド及び関連化合物、ピリジニウム、オレフィン、例えばビス(ビニルスルホニルメチル)エーテル、カルボジイミド、エポキシド、トリアジン、多官能性アジリジン、メトキシアルキルメラミン、及びポリイソシアネートなどを含む。これらの化合物は、合成有機化学の当業者には容易に明らかとなる公開された合成処置又は日常的な改質を用いて、容易に調製することができる。対PVA付着促進層においてやはり成功裡に採用することができる追加の架橋剤は、多価金属イオン、例えば亜鉛、カルシウム、ジルコニウム、及びチタニウムを含む。
【0143】
対PVA付着促進層は、典型的には50?3000 mg/m^(2)、好ましくは、250?1000 mg/m^(2)の乾燥塗膜重量で適用される。層は高透明であり、好ましくは、その光透過率は95%を上回る。」

ケ 「【0146】
1つの態様の場合、任意選択のつなぎ層は好ましくは、20℃で有機溶剤中に可溶性である酸価20?300の少なくとも50重量%のポリマーを含むことができる。好ましくは、酸官能基はカルボン酸である。つなぎ層内で使用するのに適したポリマーは、カルボン酸基を含むエチレン系不飽和型モノマーのインターポリマー、酸含有セルロースポリマー、例えば酸性フタル酸セルロース及び酢酸トリメリット酸セルロース、カルボン酸基を有するポリウレタン、及びその他のものを含む。カルボン酸基を含むエチレン系不飽和型モノマーの好適なインターポリマーは、アクリル酸を含むアクリレート、メタクリル酸を含むメタクリレート、アクリルアミド及びメタクリルアミド、イタコン酸及びその半エステル及びジエステル、置換型スチレンを含むスチレン、アクリロニトリル及びメタクリルニトリル、ビニルアセテート、ビニルエーテル、ビニル及びビニリデンハロゲン化物、及びオレフィンを含む。

(中略)

【0148】
つなぎ層は、架橋剤を含有することもできる。本発明の実施のために有用な架橋剤は、ポリマー上に存在する反応性部分、具体的にはカルボン酸と反応することができる任意の化合物を含む。このような架橋剤は、アルデヒド及び関連化合物、ピリジニウム、オレフィン、例えばビス(ビニルスルホニルメチル)エーテル、カルボジイミド、エポキシド、トリアジン、多官能性アジリジン、メトキシアルキルメラミン、及びポリイソシアネートなど、又はこれらの混合物を含む。これらの化合物は、合成有機化学の当業者には容易に明らかとなる発表済みの合成処置又は日常的な改質を用いて、容易に調製することができる。層においてやはり成功裡に採用することができる追加の架橋剤は、多価金属イオン、例えば亜鉛、カルシウム、ジルコニウム、及びチタニウムを含む。
【0149】
任意選択のつなぎ層は、典型的には50?5000 mg/m^(2)、好ましくは、500?5000 mg/m^(2)の乾燥塗膜重量で適用され、その厚さは好ましくは、0.5?5マイクロメートルである。層は高透明であり、好ましくは、その光透過率は好ましくは95%を上回る。
【0150】
つなぎ層は、既に塗布・乾燥された対PVA付着促進層上に適用することができる。つなぎ層は、別個の塗膜適用において塗布することができ、或いは、1つ又は2つ以上の他の層と同時に適用することもできる。好ましくは、最良の付着を達成するために、つなぎ層は、低複屈折保護ポリマー層と同時に適用される。」

コ 「【0200】
図8は、いずれの側にも偏光子板252及び254が配置された典型的な液晶セル260を示す断面図である。偏光子板254は、LCDセルの、観察者に最も近い側にある。各偏光子板は2つのカバーシートを採用する。説明のため、偏光板254は、PVA付着促進層261と、つなぎ層262と、低複屈折保護ポリマーフィルム264と、バリヤ層266と、静電防止層268とを含む最上カバーシート(これは観察者に最も近いカバーシートである)とともに示されている。偏光子板254内に含有される最下カバーシートは、対PVA付着促進層261と、つなぎ層262と、低複屈折保護ポリマーフィルム264と、バリヤ層266と、視野角補償層272とを含む。LCDセルの反対側には、偏光子板252が最上カバーシートとともに示されており、偏光子板252は説明のため、対PVA付着促進層261と、つなぎ層262と、低複屈折保護ポリマーフィルム264と、バリヤ層266と、視野角補償層272とを含む。偏光子板252はまた、対PVA付着促進層261と、つなぎ層262と、低複屈折保護ポリマーフィルム264と、バリヤ層266とを含む最下カバーシートを有する。」

サ 「【0207】

(前略)

【図8】図8は、セルのいずれの側にも、本発明に従って形成することができる偏光子板を有する液晶セルを示す断面図である。

(後略)



以上の記載事項によれば、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
「キャリア基体と、親水性ポリマーを含み架橋用化合物をさらに含むポリビニルアルコールに対する付着を促進する層及び環状ポリオレフィンを含む低複屈折ポリマーフィルムを含むカバーシートとを含む少なくとも1つのガードされたカバーシート複合体を用意すること、
PVA二色性フィルムからなる偏光フィルムを用意すること、そして
該カバーシート又は偏光フィルムに、接着剤が適用され
該カバーシート内の該ポリビニルアルコールに対する付着を促進する層が該偏光フィルムと接触するように、該カバーシートを該偏光フィルムと接触させ、これにより、該ポリビニルアルコールに対する付着を促進する層によって接着結合されたカバーシートと偏光フィルムとを含む偏光子板複合シートを製造すること
を含んで成る偏光子板の形成方法であって、
該キャリア基体が、該カバーシートを該偏光フィルムと接触させる前に該カバーシートから引き剥がされ、そして該方法が、該カバーシート、ガードされたカバーシート複合体、及び偏光子フィルムのうちの少なくとも1つを、該複合偏光子フィルムの連続生産を可能にするように、アキュムレータを通して搬送することをさらに含む偏光子板の形成方法によって形成された偏光子板。」

(3)引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献3には、次の事項が記載されている。

ア 「 [0291]
これらを通常、0.5?30質量%の固形分に調製して用いることが好ましい。特にセルロースエステルを偏光板保護フィルムと使用した場合と同一の接着剤であることが好ましい。」

イ 「 [0309]
〈偏光子の作製と貼り合わせ〉
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で6倍に製膜方向に延伸して偏光子を作製した。
[0310]
次に、ポリビニルアルコール系の水性接着剤(2.5質量%溶液)を用いて、偏光子の透過軸とアクリルフィルムの面内遅相軸が平行になるように偏光子の片面にアクリルフィルム、反対面には、同様にケン化処理したコニカミノルタタックKC4UYを貼り合わせ偏光板1を作製した。」


第6 対比・判断
1 引用発明1との対比・判断
(1)本願発明1について
ア 本願発明1と引用発明1とを対比する。

(ア)引用発明1の「ポリビニルアルコール樹脂フィルムを二色性物質で染色し一軸延伸したものからなる偏光子」は、本願発明1の「ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルム」に相当する。
(イ)引用発明1の「偏光子と偏光子外面保護フィルムとの間」に存在する「接着剤」は、本願発明1の「接着剤層」を形成しているといえる。
(ウ)引用発明1の「プライマー層」を構成する「置換基として、5-ヒドロキシペンチル基、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル基を有するアクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体などの不飽和モノマー」は、本願発明1の「プライマー層」における「式(I)で示される(メタ)アクリル系化合物」に相当する。そして、引用発明1の「置換基として、5-ヒドロキシペンチル基、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル基を有するアクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体などの不飽和モノマーの重合体で構成される水系ラテックスから形成され、厚みは、1μm以下であり、塗布された水系ラテックスを乾燥することにより形成する」プライマー層と本願発明1の「式(I)で示される(メタ)アクリル系化合物の塗膜の硬化物である」プライマー層とは、「式(I)で示される(メタ)アクリル系化合物の硬化物を含むプライマー層」である点で共通する。
(エ)引用発明1の「シクロオレフィン系樹脂である合成樹脂製の基材層」は、本願発明1の「シクロオレフィン系樹脂フィルム」に相当する。
(オ)引用発明1の「偏光板」は、基材層、プライマー層、接着剤、親水性樹脂層、偏光子の順に積層されていることから、引用発明1の「偏光板」と本願発明1の「偏光板」とは、「偏光フィルムに、接着剤層、プライマー層及びシクロオレフィン系樹脂フィルムが積層されてな」る点で共通する。
したがって、両者は、「ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムに、接着剤層、プライマー層及びシクロオレフィン系樹脂フィルムが積層されてなり、該プライマー層は、式(I)で示される(メタ)アクリル系化合物の硬化物を含む、偏光板。」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1-1]本願発明1の偏光板は、偏光フィルムに、接着剤層、プライマー層及びシクロオレフィン系樹脂フィルムがこの順に積層されているのに対し、引用発明1の偏光板は、基材層、プライマー層、接着剤、親水性樹脂層、偏光子の順に積層されている点で相違する。
[相違点1-2]本願発明1のプライマー層は、式(I)で示される(メタ)アクリル系化合物、つまりモノマーの「塗膜の硬化物である」のに対し、引用発明1のプライマー層は、モノマーの「重合体で構成される水系ラテックス」を「塗布」、「乾燥」することにより形成したものである点。

イ 相違点に対する判断
[相違点1-2]について
プライマー層がモノマーの塗膜の硬化物であるとされた場合、プライマー層は、塗膜中に存在するモノマーが硬化物となり層を形成するものである。そして、明細書の段落【0037】の記載によれば、ラジカル重合開始剤を混合したプライマー用塗工液を塗工した後、熱や紫外線により「硬化」されるものであるから、本願発明1では、塗膜中に存在するモノマー同士が重合反応により一体となって重合して層を形成するものといえる。一方、引用発明1では、重合体で構成される水性ラテックスを塗布、乾燥することによりプライマー層を形成するものであるから、重合体粒子が凝集して層を形成するものであって、一体に重合されるものではない。
したがって、両者は、同じ化学式で表現されるポリマーを含む層である点で共通するものの、層を形成するポリマーの配置が異なるものであり、その密着性などの特性に違いがあることは明らかであるから、当該相違点1-2において、実質的に一致しているとはいえないものである。なお、引用発明1の親水性樹脂層も、水系乳化物を塗布し、乾燥することによって形成されるものであるから、引用発明1の親水性樹脂層とプライマー層とを合わせても、本願発明1のプライマー層に相当するものとはいえない。
また、プライマー層において、その接着力を高めるために、モノマーからなる塗膜を硬化することが、本願出願前に当該分野において知られていたとする根拠も見いだせない。原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3はプライマー層について何ら開示していない。以上より、引用発明1において、本願発明1の[相違点1-2]に係る構成とすることが当業者にとって容易であったともいえない。

なお、本願発明1における「硬化物」が重合反応によらない、乾燥により固まったものを含むものと解釈すると、本願発明のプライマー層には、式(1)で示されるモノマーがそのまま存在することとなる。引用発明1における水性ラテックスはモノマーではなく重合体で構成されるものであるから、この点において一致するとはいえない。
そして、モノマーと重合体とではその特性が大きく異なるものであり、プライマー層において、重合体の代わりにモノマーをそのまま用いることが本願出願前において知られていたとする根拠も見いだせないから、引用発明1において、プライマー層に含まれる重合体の代わりにモノマーを用いることが当業者にとって容易であったとはいえない。

(2)本願発明2,3について
本願発明2,3は、いずれも本願発明1の構成要件を必須の構成要件とするものである。したがって、引用発明1と対比した場合に、いずれも上記[相違点1-2]で相違するものであり、既に検討したとおり、上記[相違点1-2]は一致するとはいえないものであり、当業者が容易に発明をすることができたともいえないものである。

(3)本願発明4について
引用文献1の記載から、引用発明1を製造する方法に係る発明(以下、「引用発明1-2」という。)を把握することができるところ、本願発明4と当該引用発明1-2とを対比すると、少なくとも以下の点で相違している。
[相違点1-2]本願発明4は、「(メタ)アクリル系化合物および、紫外線の作用によってラジカルを発生するラジカル重合開始剤を含むプライマー用塗工液を塗工し、紫外線を照射することにより、それを硬化させてプライマー層を形成」する工程を有するのに対し、引用発明1-2は、プライマー層について「塗布された水系ラテックスを乾燥することにより形成する」点。

上記[相違点1-2]について検討すると、当該相違点に係る構成が、本願出願前に当該分野において知られていたとする根拠を見いだせない。したがって、引用発明1-2において、プライマー層を形成する工程を、本願発明4の[相違点1-2]に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。

(4)本願発明5,6について
本願発明5,6は、いずれも本願発明4の構成要件を必須の構成要件とするものである。したがって、引用発明1-2と対比した場合に、いずれも上記[相違点1-2]で相違するものであり、既に検討したとおり、上記[相違点1-2]は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものである。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本願発明1?6は、引用文献1に記載された発明とはいえず、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

2 引用発明2との対比・判断
(1)本願発明1について
ア 本願発明1と引用発明2とを対比する

(ア)引用発明2の「PVA二色性フィルムからなる偏光フィルム」は、本願発明1の「ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルム」に相当する。
(イ)引用発明2の「接着剤」は、本願発明1の「接着剤層」を形成しているといえる。
(ウ)引用発明2の「環状ポリオレフィンを含む低複屈折ポリマーフィルム」は、本願発明の「シクロオレフィン系樹脂フィルム」に相当する。
(エ)引用発明2の「偏光子板」は、本願発明1の「偏光板」に相当する。(オ)引用発明2の「偏光子板」は、偏光フィルム、接着剤、ポリビニルアルコールに対する付着を促進する層、低複屈折ポリマーフィルムの順に積層されることから、引用発明2の「偏光子板」と本願発明1の「偏光板」とは、「偏光フィルムに、接着剤層、シクロオレフィン系樹脂フィルムがこの順に積層」している点で共通する。

したがって、両者は、「ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムに、接着剤層及びシクロオレフィン系樹脂フィルムがこの順に積層されてなる偏光板。」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点2-1]本願発明1は、式(I)で示される(メタ)アクリル系化合物の塗膜の硬化物であるプライマー層を有するのに対し、引用発明2は、本願発明1における式(I)で示される化合物の塗膜の硬化物である層を有していない点。

イ 相違点に対する判断
引用発明2の親水性ポリマーを含み架橋用化合物をさらに含むポリビニルアルコールに対する付着を促進する層が含むことができるとされる化合物のいずれも、本願発明1の式(I)で示される化合物とは異なるものであり、本願発明1の式(I)で示される化合物を採用することが示唆されていたということはできない。また、引用文献2には、任意選択の「つなぎ層」を設けることも開示されているが、カルボン酸基を含むポリマーを挙げるのみで、本願発明1の式(I)で示される化合物を開示していない。
また、本願発明1の式(I)で示されるモノマーからなる塗膜を硬化して膜を形成することが、本願出願前に当該分野において知られていたとする根拠も見いだせない。したがって、引用発明2において、本願発明1の[相違点2-1]に係る構成とすることが当業者にとって容易であったともいえない。

(2)本願発明2,3について
本願発明2,3は、いずれも本願発明1の構成要件を必須の構成要件とするものである。したがって、引用発明2と対比した場合に、いずれも上記[相違点2-1]で相違するものであり、既に検討したとおり、上記[相違点2-1]は、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないものである。

(3)本願発明4について
本願発明4と引用文献2に記載された、偏光子板の形成方法に係る発明(以下「引用発明2-2」という。)とを対比すると、以下の点で相違している。
[相違点2-2]本願発明4は、「式(I)で示される(メタ)アクリル系化合物および、紫外線の作用によってラジカルを発生するラジカル重合開始剤を含むプライマー用塗工液を塗工し、紫外線を照射することにより、それを硬化させてプライマー層を形成」する工程を有するのに対し、引用発明2-2は、プライマー層を形成する工程を有していない点。

上記[相違点2-2]について検討すると、当該相違点に係る構成が、本願出願前に当該分野において知られていたとする根拠を見いだせない。したがって、引用発明2-2において、特定のプライマー層を形成する工程を付加し、本願発明4の[相違点2-2]に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。

(4)本願発明5,6について
本願発明5,6は、いずれも本願発明4の構成要件を必須の構成要件とするものである。したがって、引用発明2-2と対比した場合に、いずれも上記[相違点2-2]で相違するものであり、既に検討したとおり、上記[相違点2-2]は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものである。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本願発明1?6は、引用文献2に記載された発明とはいえず、引用文献2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。


第7 原査定について
前記第6に示したとおりの理由により、本願発明1ないし6が、引用文献1又は2に記載された発明と同一であるとはいえず、引用文献1又は2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-11 
出願番号 特願2012-59915(P2012-59915)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
P 1 8・ 113- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 清水 康司
宮澤 浩
発明の名称 偏光板及びその製造方法  
代理人 中山 亨  
代理人 坂元 徹  

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