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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G03G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G03G
審判 全部申し立て 2項進歩性  G03G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G03G
管理番号 1332250
異議申立番号 異議2015-700231  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-11-27 
確定日 2017-08-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5726360号発明「キャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5726360号の明細書,特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲及び図面のとおり,訂正後の請求項〔1ないし4〕について訂正することを認める。 特許第5726360号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5726360号(請求項の数4。以下,「本件特許」という。)は,平成26年10月21日に出願され,平成27年4月10日に特許権の設定登録がされたものである。(平成27年5月27日特許掲載公報の発行)
これに対し,平成27年11月27日に特許異議申立人より請求項1ないし4に係る特許について特許異議の申立てがされ,平成28年2月19日付けで特許権者に取消理由が通知され,同年4月25日に特許権者より意見書が提出され,同年7月13日付けで特許権者に取消理由通知(決定の予告)がされ,同年9月12日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ,同年11月30日に異議申立人より意見書が提出され,平成29年2月28日付けで特許権者に取消理由通知(決定の予告)がされ,同年5月1日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ(特許法120条の5第7項の規定により,平成28年9月12日にした訂正の請求は取り下げられたものとみなす。以下,平成29年5月1日にした訂正の請求を「本件訂正請求」といい,本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。),同年7月3日に異議申立人より意見書が提出された。


第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
(1)訂正前後の記載
本件訂正請求は,明細書,特許請求の範囲及び図面を,訂正請求書に添付した訂正明細書,特許請求の範囲及び図面のとおり,訂正後の請求項1ないし4について訂正することを求めるものであるところ,一群の請求項〔1ないし4〕ごとに請求されたものである。
しかるに,本件訂正前後の明細書及び特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
ア 本件訂正前の記載
(ア)明細書中の本件訂正に係る記載
「【0011】
本発明によれば,球形粒子が2個?5個の結合した結合粒子が5個数%?20個数%含まれ,前記結合粒子以外の通常粒子は球形で,前記結合粒子は,粒径の最も大きい母粒子と,前記母粒子よりも粒径の小さい1個?4個の子粒子とが結合した粒子であり,前記子粒子の少なくとも1つの子粒子の粒径は,前記母粒子の粒径の1/2よりも大きいことを特徴とするフェライト粒子からなるキャリア芯材が提供される。」
「【0018】
【図1】実施例1のキャリア芯材のSEM写真である。
【図2】実施例2のキャリア芯材のSEM写真である。
【図3】実施例3のキャリア芯材のSEM写真である。
【図4】比較例1のキャリア芯材のSEM写真である。
【図5】比較例2のキャリア芯材のSEM写真である。
【図6】実施例4のキャリア芯材のSEM写真である。
【図7】実施例5のキャリア芯材のSEM写真である。
【図8】実施例6のキャリア芯材のSEM写真である。
【図9】比較例3のキャリア芯材のSEM写真である。
【図10】本発明に係るキャリアを用いた現像装置の一例を示す概説図である。」
「【0059】
実施例4
Fe_(2)O_(3)(平均粒径:0.6μm)7.985kg,MgO(平均粒径:0.8μm)0.183kg,Mn_(3)O_(4)(平均粒径:0.9μm)2.773kg,SrCO_(3)(平均粒径:0.6μm)0.013kgを純水5.58kg中に分散し,分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を30g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し,混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し,粒径10μm?75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径50μmを超える粗粒は篩を用いて除去した。
この造粒物を,電気炉に投入し1300℃まで4.5時間かけて昇温した。その後,1300℃で6時間保持することにより焼成を行った。その後8時間かけて室温まで冷却した。この間,電気炉内の酸素濃度は15000ppmとなるよう,酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。
得られた焼成物をハンマーミル(スクリーン目開き:0.3mm)で1回解粒した後,パルベライザーで1回解粒し,平均粒径33.5μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成,物性,最大山谷深さRz,結合粒子の直径比,結合粒子割合,現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また,図6に,実施例4のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0060】
実施例5
原料として,Fe_(2)O_(3)(平均粒径:0.6μm)7.985kg,MgO(平均粒径:0.8μm)0.403kg,Mn_(3)O_(4)(平均粒径:0.9μm)3.051kg,SrCO_(3)(平均粒径:0.6μm)0.097kgを用い,焼成温度1300℃での保持時間を8時間とし,パルベライザーによる解粒処理を行わなかった以外は,実施例4と同様にして平均粒径36.5μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成,物性,最大山谷深さRz,結合粒子の直径比,結合粒子割合,現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また,図7に,実施例5のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0061】
実施例6
原料として,Fe_(2)O_(3)(平均粒径:0.6μm)7.985kg,MgO(平均粒径:0.8μm)0.605kg,Mn_(3)O_(4)(平均粒径:0.9μm)2.669kg,SrCO_(3)(平均粒径:0.6μm)0.067kgを用い,焼成温度1300℃での保持時間を8時間とした以外は,実施例4と同様にして平均粒径36.3μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成,物性,最大山谷深さRz,結合粒子の直径比,結合粒子割合,現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また,図8に,実施例6のキャリア芯材のSEM写真を示す。」
「【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
表2から明らかなように,本発明で規定する結合粒子の含有割合を満たす実施例1?6のキャリア芯材を用いた現像剤では,「現像メモリー」の発生は抑制されていた。」

(イ)特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
球形粒子が2個?5個の結合した結合粒子が5個数%?20個数%含まれ,
前記結合粒子以外の通常粒子は球形で,
前記結合粒子は,粒径の最も大きい母粒子と,前記母粒子よりも粒径の小さい1個?4個の子粒子とが結合した粒子であり,
前記子粒子の少なくとも1つの子粒子の粒径は,前記母粒子の粒径の1/2よりも大きい
ことを特徴とするフェライト粒子からなるキャリア芯材。
【請求項2】
体積平均粒径が25μm以上50μm未満である請求項1記載のキャリア芯材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキャリア芯材の表面を樹脂で被覆したことを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【請求項4】
請求項3記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤。」

(ウ)図面
「【図6】



イ 本件訂正後の記載
(ア)明細書中の本件訂正に係る記載
「【0011】
本発明によれば,組成式(MnO)x(MgO)y(Fe_(2)O_(3))zで表され,x+y+z=100mol%であり,少なくともMnO及び/又はMgOの一部をSrOで0.15mol%?1.0mol%置換したフェライト粒子からなるキャリア芯材であって,球形粒子が2個?5個の結合した結合粒子の下記方法で測定される含有率が5個数%?20個数%であり,前記結合粒子以外の通常粒子は球形で,前記結合粒子は,粒径の最も大きい母粒子と,前記母粒子よりも粒径の小さい1個?4個の子粒子とが結合した粒子であり,前記子粒子の少なくとも1つの子粒子の粒径は,前記母粒子の粒径の1/2よりも大きいことを特徴とするフェライト粒子からなるキャリア芯材が提供される。
(結合粒子の含有率測定)
走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM-6510LA)を用いて倍率250倍で撮影した画像より任意の400粒子を選択し,その中で結合粒子の数をカウントし,上記400粒子中に含まれる結合粒子の個数割合を結合粒子の含有率とする。」
「【0018】
【図1】実施例1のキャリア芯材のSEM写真である。
【図2】実施例2のキャリア芯材のSEM写真である。
【図3】実施例3のキャリア芯材のSEM写真である。
【図4】比較例1のキャリア芯材のSEM写真である。
【図5】比較例2のキャリア芯材のSEM写真である。
【図6】(削除)
【図7】実施例5のキャリア芯材のSEM写真である。
【図8】実施例6のキャリア芯材のSEM写真である。
【図9】比較例3のキャリア芯材のSEM写真である。
【図10】本発明に係るキャリアを用いた現像装置の一例を示す概説図である。」
「【0059】
(削除)
【0060】
実施例5
原料として,Fe_(2)O_(3)(平均粒径:0.6μm)7.985kg,MgO(平均粒径:0.8μm)0.403kg,Mn_(3)O_(4)(平均粒径:0.9μm)3.051kg,SrCO_(3)(平均粒径:0.6μm)0.097kgを純水5.58kg中に分散し,分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を30g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し,混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し,粒径10μm?75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径50μmを超える粗粒は篩を用いて除去した。
この造粒物を,電気炉に投入し1300℃まで4.5時間かけて昇温した。その後,1300℃で8時間保持することにより焼成を行った。その後8時間かけて室温まで冷却した。この間,電気炉内の酸素濃度は15000ppmとなるよう,酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。
得られた焼成物をハンマーミル(スクリーン目開き:0.3mm)で1回解粒し,平均粒径36.5μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成,物性,最大山谷深さRz,結合粒子の直径比,結合粒子割合,現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また,図7に,実施例5のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0061】
実施例6
原料として,Fe_(2)O_(3)(平均粒径:0.6μm)7.985kg,MgO(平均粒径:0.8μm)0.605kg,Mn_(3)O_(4)(平均粒径:0.9μm)2.669kg,SrCO_(3)(平均粒径:0.6μm)0.067kgを純水5.58kg中に分散し,分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を30g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し,混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し,粒径10μm?75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径50μmを超える粗粒は篩を用いて除去した。
この造粒物を,電気炉に投入し1300℃まで4.5時間かけて昇温した。その後,1300℃で8時間保持することにより焼成を行った。その後8時間かけて室温まで冷却した。この間,電気炉内の酸素濃度は15000ppmとなるよう,酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。
得られた焼成物をハンマーミル(スクリーン目開き:0.3mm)で1回解粒した後,パルベライザーで1回解粒し,平均粒径36.3μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成,物性,最大山谷深さRz,結合粒子の直径比,結合粒子割合,現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また,図8に,実施例6のキャリア芯材のSEM写真を示す。」
「【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
表2から明らかなように,本発明で規定する結合粒子の含有割合を満たす実施例1?3,5,6のキャリア芯材を用いた現像剤では,「現像メモリー」の発生は抑制されていた。」

(イ)特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
組成式(MnO)x(MgO)y(Fe_(2)O_(3))zで表され,x+y+z=100mol%であり,少なくともMnO及び/又はMgOの一部をSrOで0.15mol%?1.0mol%置換したフェライト粒子からなるキャリア芯材であって,
球形粒子が2個?5個の結合した結合粒子の下記方法で測定される含有率が5個数%?20個数%であり,
前記結合粒子以外の通常粒子は球形で,
前記結合粒子は,粒径の最も大きい母粒子と,前記母粒子よりも粒径の小さい1個?4個の子粒子とが結合した粒子であり,
前記子粒子の少なくとも1つの子粒子の粒径は,前記母粒子の粒径の1/2よりも大きい
ことを特徴とするフェライト粒子からなるキャリア芯材。
(結合粒子の含有率測定)
走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM-6510LA)を用いて倍率250倍で撮影した画像より任意の400粒子を選択し,その中で結合粒子の数をカウントし,上記400粒子中に含まれる結合粒子の個数割合を結合粒子の含有率とする。
【請求項2】
体積平均粒径が25μm以上50μm未満である請求項1記載のキャリア芯材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキャリア芯材の表面を樹脂で被覆したことを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【請求項4】
請求項3記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤。」

(ウ)図面
「【図6】
(削除)


(2)訂正事項
本件訂正は,次の訂正事項からなる。
ア 訂正事項1
請求項1の冒頭に「組成式(MnO)x(MgO)y(Fe_(2)O_(3))zで表され,x+y+z=100mol%であり,少なくともMnO及び/又はMgOの一部をSrOで0.15mol%?1.0mol%置換したフェライト粒子からなるキャリア芯材であって,」という記載を挿入する訂正を行う。

イ 訂正事項2
請求項1に「球形粒子が2個?5個の結合した結合粒子が5個数%?20個数%含まれ」とあるのを,「球形粒子が2個?5個の結合した結合粒子の下記方法で測定される含有率が5個数%?20個数%であり」に訂正するとともに,請求項1の末尾に「(結合粒子の含有率測定) 走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM-6510LA)を用いて倍率250倍で撮影した画像より任意の400粒子を選択し,その中で結合粒子の数をカウントし,上記400粒子中に含まれる結合粒子の個数割合を結合粒子の含有率とする。」という記載を挿入する訂正を行う。

ウ 訂正事項3
明細書の【0011】に「本発明によれば,球形粒子が2個?5個の結合した結合粒子が5個数%?20個数%含まれ,前記結合粒子以外の通常粒子は球形で,前記結合粒子は,粒径の最も大きい母粒子と,前記母粒子よりも粒径の小さい1個?4個の子粒子とが結合した粒子であり,前記子粒子の少なくとも1つの子粒子の粒径は,前記母粒子の粒径の1/2よりも大きいことを特徴とするフェライト粒子からなるキャリア芯材が提供される。」とあるのを,「本発明によれば,組成式(MnO)x(MgO)y(Fe_(2)O_(3))zで表され,x+y+z=100mol%であり,少なくともMnO及び/又はMgOの一部をSrOで0.15mol%?1.0mol%置換したフェライト粒子からなるキャリア芯材であって,球形粒子が2個?5個の結合した結合粒子の下記方法で測定される含有率が5個数%?20個数%であり,前記結合粒子以外の通常粒子は球形で,前記結合粒子は,粒径の最も大きい母粒子と,前記母粒子よりも粒径の小さい1個?4個の子粒子とが結合した粒子であり,前記子粒子の少なくとも1つの子粒子の粒径は,前記母粒子の粒径の1/2よりも大きいことを特徴とするフェライト粒子からなるキャリア芯材が提供される。(結合粒子の含有率測定) 走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM-6510LA)を用いて倍率250倍で撮影した画像より任意の400粒子を選択し,その中で結合粒子の数をカウントし,上記400粒子中に含まれる結合粒子の個数割合を結合粒子の含有率とする。」に訂正する。

エ 訂正事項4
明細書の【0018】中の図6の図面の簡単な説明を削除する。

オ 訂正事項5
明細書の【0059】を削除する。

カ 訂正事項6
明細書の【0060】に「実施例5 原料として,Fe_(2)O_(3)(平均粒径:0.6μm)7.985kg,MgO(平均粒径:0.8μm)0.403kg,Mn_(3)O_(4)(平均粒径:0.9μm)3.051kg,SrCO_(3)(平均粒径:0.6μm)0.097kgを用い,焼成温度1300℃での保持時間を8時間とし,パルベライザーによる解粒処理を行わなかった以外は,実施例4と同様にして平均粒径36.5μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成,物性,最大山谷深さRz,結合粒子の直径比,結合粒子割合,現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また,図7に,実施例5のキャリア芯材のSEM写真を示す。」とあったのを,「実施例5 原料として,Fe_(2)O_(3)(平均粒径:0.6μm)7.985kg,MgO(平均粒径:0.8μm)0.403kg,Mn_(3)O_(4)(平均粒径:0.9μm)3.051kg,SrCO_(3)(平均粒径:0.6μm)0.097kgを純水5.58kg中に分散し,分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を30g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し,混合スラリーを得た。 この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し,粒径10μm?75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径50μmを超える粗粒は篩を用いて除去した。 この造粒物を,電気炉に投入し1300℃まで4.5時間かけて昇温した。その後,1300℃で8時間保持することにより焼成を行った。その後8時間かけて室温まで冷却した。この間,電気炉内の酸素濃度は15000ppmとなるよう,酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。 得られた焼成物をハンマーミル(スクリーン目開き:0.3mm)で1回解粒し,平均粒径36.5μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成,物性,最大山谷深さRz,結合粒子の直径比,結合粒子割合,現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また,図7に,実施例5のキャリア芯材のSEM写真を示す。」に訂正する。

キ 訂正事項7
明細書の【0061】に「実施例6 原料として,Fe_(2)O_(3)(平均粒径:0.6μm)7.985kg,MgO(平均粒径:0.8μm)0.605kg,Mn_(3)O_(4)(平均粒径:0.9μm)2.669kg,SrCO_(3)(平均粒径:0.6μm)0.067kgを用い,焼成温度1300℃での保持時間を8時間とした以外は,実施例4と同様にして平均粒径36.3μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成,物性,最大山谷深さRz,結合粒子の直径比,結合粒子割合,現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また,図8に,実施例6のキャリア芯材のSEM写真を示す。」とあったのを,「実施例6 原料として,Fe_(2)O_(3)(平均粒径:0.6μm)7.985kg,MgO(平均粒径:0.8μm)0.605kg,Mn_(3)O_(4)(平均粒径:0.9μm)2.669kg,SrCO_(3)(平均粒径:0.6μm)0.067kgを純水5.58kg中に分散し,分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を30g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し,混合スラリーを得た。 この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し,粒径10μm?75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径50μmを超える粗粒は篩を用いて除去した。 この造粒物を,電気炉に投入し1300℃まで4.5時間かけて昇温した。その後,1300℃で8時間保持することにより焼成を行った。その後8時間かけて室温まで冷却した。この間,電気炉内の酸素濃度は15000ppmとなるよう,酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。 得られた焼成物をハンマーミル(スクリーン目開き:0.3mm)で1回解粒した後,パルベライザーで1回解粒し,平均粒径36.3μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成,物性,最大山谷深さRz,結合粒子の直径比,結合粒子割合,現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また,図8に,実施例6のキャリア芯材のSEM写真を示す。」に訂正する。

ク 訂正事項8
明細書の【0074】の表1から実施例4のデータを削除する。

ケ 訂正事項9
明細書の【0075】の表2から実施例4のデータを削除する。

コ 訂正事項10
明細書の【0076】に「実施例1?6」とあったのを,「実施例1?3,5,6」に訂正する。

サ 訂正事項11
図面から図6を削除する。

2 訂正の目的の適否について
訂正事項1は,訂正前の請求項1ないし4に係る発明において,キャリア芯材が「組成式(MnO)x(MgO)y(Fe_(2)O_(3))zで表され,x+y+z=100mol%であり,少なくともMnO及び/又はMgOの一部をSrOで0.15mol%?1.0mol%置換したフェライト粒子からなる」ことを限定する訂正事項であり,訂正事項3ないし11は,明細書の発明の詳細な説明の記載を当該訂正事項1による訂正後の請求項1ないし4の記載に整合させる訂正事項であるから,これら訂正事項1,3ないし11は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また,訂正事項2は,訂正前の請求項1ないし4に係る発明において,「5個数%?20個数%」という結合粒子の含有率について,その測定方法が特定されていなかったものを,「走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM-6510LA)を用いて倍率250倍で撮影した画像より任意の400粒子を選択し,その中で結合粒子の数をカウントし,上記400粒子中に含まれる結合粒子の個数割合を結合粒子の含有率とする。」という測定方法により測定された値であることを特定する訂正事項であり,訂正事項3は,明細書の発明の詳細な説明の記載を当該訂正事項2による訂正後の請求項1ないし4の記載に整合させる訂正事項でもあるから,これら訂正事項2及び3は,同法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものにも該当する。
したがって,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1及び3号に掲げる事項を目的とするものである。

3 新規事項の追加の有無について
本件訂正前の願書に添付された特許請求の範囲,明細書及び図面(特許された時点での特許請求の範囲,明細書及び図面である。以下,本件訂正前の願書に添付された特許請求の範囲,明細書及び図面を総称して「特許明細書等」という。)のうち,特許明細書の【0026】には,訂正事項1による限定事項が記載されており,【0064】には,訂正事項2により特定された測定方法が記載されているから,訂正事項1ないし11が,特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。
したがって,本件訂正は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。

4 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の存否について
訂正事項1ないし11が,いずれも,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかであるから,本件訂正は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。

5 小括
前記2ないし4のとおりであって,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書き1及び3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので,訂正後の請求項〔1ないし4〕について訂正を認める。


第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許の請求項1ないし4に係る発明
前記第2 5で述べたとおり,本件訂正は適法になされたものであるから,本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下,それぞれを「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」という。)は,それぞれ,前記第2 1(1)イ(イ)において,本件訂正後の特許請求の範囲の記載として示した請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。

2 平成29年2月28日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由について
(1)平成29年2月28日付け取消理由通知(決定の予告)の概要
平成29年2月28日付け取消理由通知(決定の予告)により本件訂正前の請求項1ないし4に係る特許に対して通知した取消理由は,概略次のとおりである。

取消理由1:
請求項1ないし4(決定注:平成28年9月12日付けの訂正の請求による訂正後の請求項1ないし4である。後述する取消理由2についても同様。)に係る発明において,結合粒子の含有率測定を「走査電子顕微鏡(・・・中略・・・)を用いて倍率250倍で撮影した画像より任意の400粒子を選択し,その中で結合粒子の数をカウント」することにより行うとされているが,前記画像を観察するだけで,写っているものが「結合粒子」なのか,「独立した2個の球状の粒子が奥行き方向に重なって写っているもの」なのかを判別することは容易なことではなく,その判別基準が本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているわけでもないから,同一のキャリア芯材を対象としても,測定者によって,本件訂正後の請求項1に記載された「結合粒子の含有率測定」による「含有率」が5ないし20個数%の範囲に入ったり入らなかったりすることが想定される。
したがって,請求項1ないし4に係る発明は外延が明確でないから,その特許は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

取消理由2:
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は,甲7(特開2004-240322号公報)に記載された比較例6に対応する発明と同一であるか,又は当該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は,特許法29条1項又は2項の規定に違反してされたものである。

(2)取消理由1の成否についての判断
ア 「JIS R 1633:1998 ファインセラミックス及びファインセラミックス粉体用の走査電子顕微鏡(SEM)観察のための試料調製方法」(乙3)は,粉体材料の観察に用いる試料を調製する際の粉体材料の分散方法について,乾式分散と湿式分散のいずれかを用いることとしており,そのうちの乾式分散については,「導電性両面テープなどをはり付けたSEM観察用試料台の上に,ミクロスパーテルや綿棒で採取した粉体材料を振りかけて粉体材料を分散させる。その後,エアスプレーなどの空気流を吹きかけて,余分に振りかけられた粉体材料を除去する。」と規定している(乙3の2ページの「7.2 粉体材料の観察」欄の「a) 粉体材料の乾式分散」欄を参照。)。
本件特許発明1ないし4の結合粒子の含有率の測定方法における「走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM-6510LA)を用いて倍率250倍で撮影した画像より任意の400粒子を選択し,その中で結合粒子の数をカウント」することは,粉体材料を走査電子顕微鏡で観察することにほかならないから,本件特許発明1ないし4における結合粒子の含有率の測定に際して,「JIS R 1633:1998」に準拠して,走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM-6510LA)を用いた倍率250倍の画像を撮影するための試料の調製を行うことは,当業者にとっての技術常識であり,通常の技術的手段である。(なお,この点は,平成29年7月3日提出の意見書において特許異議申立人も認めている。)
したがって,たとえ本件訂正後の請求項1ないし4や,訂正明細書等に明記がなくとも,本件特許発明1ないし4における結合粒子の含有率の測定において,走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM-6510LA)による観察用の試料の調製を行うときに,観察用試料台に両面テープをはり付け,その上にキャリア芯材を振りかけてキャリア芯材を分散させ,その後エアスプレーなどにより空気流を吹きかけて,余分に振りかけられたキャリア芯材を除去するという方法を用いることは当然のことと認められる。

イ 日本電子株式会社JSM-6510シリーズ走査電子顕微鏡の仕様(乙4)によれば,本件特許発明1ないし4における結合粒子の含有率の測定に用いる「走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM-6510LA)」は,試料ステージを-10ないし+90°の範囲で傾斜させるとともに,回転角度360°まで回転させる機能(以下,当該機能を「傾斜・回転機能」という。)を有していると認められる。

ウ 特定の測定方法により測定したパラメータの数値範囲を規定する発明において,そもそも,何らかのパラメータを測定する際には測定値に多少の測定誤差やばらつきが生じることは避けられないから,当該発明におけるパラメータの数値範囲に関する明確性要件の充足・非充足については,規定された特定の測定方法により有意な測定値(すなわち,実質的に明確といえる測定値)が得られるのか否かという観点から判断されるべきものと考えられるところ,適宜の手段を講じて測定値の測定誤差やばらつきをできる限り小さくすることは,測定者が当然に配慮すべき事項にすぎないから,前記パラメータの数値範囲に関する明確性要件については,技術常識や当業者の通常の創意工夫によりなし得る適宜の手段を講じることで前記測定誤差やばらつきを小さくでき,パラメータの測定値として有意な値(すなわち,実質的に明確といえる値)が得られるのであれば,そのようなパラメータの数値範囲を規定する発明については明確性要件に違反せず,技術常識や当業者の通常の創意工夫によりなし得る如何なる手段を講じても,パラメータの測定値として有意な値が得られないほどに測定誤差やばらつきが大きなものになるのであれば,そのようなパラメータの数値範囲を規定する発明については,明確性要件に違反するというべきである。
これを本件についてみると,本件特許発明1ないし4における結合粒子の含有率の測定では,結合粒子と通常粒子とを区別してカウントする必要があるところ,カウント対象の粒子に「複数の粒子が奥行き方向に重なった状態」のものが存在すると,これが複数の通常粒子であるにもかかわらず結合粒子と誤認する可能性があり,当該誤認に起因して,結合粒子の含有率の測定値にばらつきが生じるおそれがあるといえる。
しかしながら,前記誤認に起因する測定値のばらつきを小さくするための手段としては,例えば,前記アで述べた観察用の試料の調製時に行う「エアスプレーなどによる空気流の吹きかけ」において,風量を大きくしたり,吹きかける時間や回数を増やすことにより,「複数の粒子が奥行き方向に重なった状態」のものをできるだけ少なくするといった手段や,前記イで述べた日本電子社製の走査電子顕微鏡:JSM-6510LAが有している傾斜・回転機能を利用して,「複数の粒子が奥行き方向に重なった状態」のものなのか,結合粒子なのかが判別し難いものについて,様々な角度から観察することによって,どちらであるのかを判別するといった手段が考えられ,これらの手段は技術常識や当業者の通常の創意工夫によりなし得るものといえる。
そして,これらの手段を講じたときに測定値のばらつきを相当に小さくできることは明らかであって,本件特許発明1ないし4の結合粒子の含有率の測定値について,技術常識や当業者の通常の創意工夫によりなし得る如何なる手段を講じても,キャリア芯材における結合粒子の含有率の値として有意な値が得られないほどに前記誤認に起因するばらつきが大きくなると認めるに足りる証拠はない。

エ 以上によれば,本件特許発明1ないし4の測定方法により測定された結合粒子の含有率の値に多少のばらつきが生じることは否めないものの,本件訂正後の請求項1ないし4の記載が明確性要件に違反するとまではいえない。
したがって,取消理由1によって,本件訂正後の請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。

オ(ア) なお,特許異議申立人は,平成29年7月3日提出の意見書において,キャリア芯材のSEM観察を行う際に,「JIS R 1633:1998」に準拠して試料調製を行うことが,当業者にとっての技術常識であることを認めた上で,甲5(特開2006-337828号公報)の図1に示されるSEM写真でも「JIS R 1633:1998」に準拠して試料調製を行われていると解されるにもかかわらず,結合粒子なのか,「独立した2個の球状の粒子が奥行き方向に重なって写っているもの」なのかについての判断が,特許異議申立人と特許権者とで異なるものがあることを根拠に,空気流の吹きかけを行って試料を調製しても,結合粒子なのか,「独立した2個の球状の粒子が奥行き方向に重なって写っているもの」なのかの判別が困難であり,明確でない旨主張している(32ページ20行ないし33ページ10行)。
しかしながら,甲5の図1は,甲5に記載された「表面が溝又は筋で10μm四方あたり2?50の領域に分割されており,マンガンフェライトを主成分とすることを特徴とする電子写真用フェライトキャリア芯材。」(請求項1)の発明の実施例である「実施例2」のキャリア芯材の表面の溝や筋を示すために撮影されたものであって,表面の溝や筋が確認できる限りは,複数のキャリア芯材が奥行き方向に重なっていても構わないことは明らかなのだから,試料調製に際して,「複数の粒子が奥行き方向に重なった状態のもの」を可能な限り少なくするように風量を大きくしたり,吹きかける時間や回数を増やしたりしているとは考えられない。このようなSEM写真において,結合粒子なのか,それとも「複数の粒子が奥行き方向に重なった状態のもの」なのかの判別が困難なものが存在するからといって,本件特許発明1ないし4の測定方法では,技術常識や当業者の通常の創意工夫によりなし得る如何なる手段を講じても,キャリア芯材における結合粒子の含有率の値として有意な値が得られないほどに測定値のばらつきが大きなものになるということにはならない。
したがって,当該特許異議申立人の主張は採用できない。
(イ) また,特許異議申立人は,同意見書において,前記イで述べた傾斜・回転機能が訂正明細書等に記載も示唆もされていないから,当該傾斜・回転機能を利用して,「複数の粒子が奥行き方向に重なった状態」のものなのか,結合粒子なのかを判別できることをもって,取消理由1が解消されるとするのは妥当でないなどとも主張する(34ページ5ないし15行)。
しかしながら,前記ウで述べたように,パラメータの数値範囲に関する明確性要件については,技術常識や当業者の通常の創意工夫によりなし得る適宜の手段を講じることで前記測定誤差やばらつきを小さくでき,パラメータの測定値として有意な値が得られるのか,それとも,如何なる手段を講じても,パラメータの測定値として有意な値が得られないほどに測定誤差やばらつきが大きなものになるのかという観点から判断すべきである。測定誤差やばらつきを小さくするための適宜の手段は,測定上のテクニックともいうべきものであって,これが技術常識や当業者の通常の創意工夫によりなし得る範囲のものであれば,明細書等に記載がなくとも,当業者は当該適宜の手段を施して適切な測定値を得ることができると考えられるから,当該手段の明細書等における記載の有無をもって明確性要件の充足・非充足を判断することは妥当でない。
したがって,当該特許異議申立人の主張も採用できない。

(3)取消理由2の成否についての判断
ア 引用例
(ア) 甲7の記載
甲7(特開2004-240322号公報)は,本件特許の出願前に頒布された刊行物であるところ,当該甲7には次の記載がある。(下線部は,後述する「引用発明」の認定に特に関連する箇所を示す。)
a 「【請求項1】
次式(A)で表されるフェライト成分と,
(MnO)x(MgO)y(Fe_(2)O_(3))z ・・・(A)
(ただし,式(A)において,x,yおよびzはモル%を表し,40≦x≦60,0.1≦y≦10,x+y+z=100である)
該フェライト成分100重量部に対して,
該フェライト成分に固溶されていないZrO_(2)を0.01?5.0重量部の量で含有するフェライト粒子からなり,
かつ1k/4π・A/mにおける磁化が65?85Am^(2)/kgの範囲内にあり,1000V印加時における電気抵抗が105?109Ωの範囲内にあることを特徴とする電子写真現像剤用キャリア芯材。」

b 「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は,電子写真法あるいは静電印刷法等により形成された静電潜像を現像する際に用いられる樹脂被覆キャリアを形成するためのキャリア芯材,このキャリア芯材から形成される,樹脂で被覆された被覆キャリア,この被覆キャリアを含有する電子写真用二成分系現像剤,および,この電子写真用二成分系現像剤を用いた画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真現像法は,トナー粒子を感光体上に形成された静電潜像に付着させ,現像する方法である。ここで使用される現像剤は,トナー粒子とキャリアからなる二成分系現像剤とトナー粒子のみを使用する一成分系現像剤とに分けられる。・・・(中略)・・・
【0004】
二成分系現像剤は,一成分系現像剤と異なり,キャリアが,トナー粒子を撹拌し,トナー粒子に所望の帯電性を付与すると共に,トナー粒子を搬送するとの機能を有しており,現像剤設計において制御性が良いため,特に高画質の要求されるフルカラー機並びに画像維持の信頼性および耐久性の要求される高速機の分野に広く使用されている。
【0005】
従って,二成分系現像剤には,所望の画像特性(画像濃度,カブリ,白斑(キャリア付着,飛散による),階調性,解像力等)が,初期の段階からこの二成分系現像剤の耐刷期間の間に変化することなく安定に維持されていることが必要であり,このためには,当然のことながら,使用期間中にキャリアの特性が変化することなく,かつ安定であることが必要になる。
・・・(中略)・・・
【0020】
【発明の目的】
本発明は,ハーフトーンの忠実な再現性,階調性,解像力,更にベタ部の均一性に優れ,且つキャリア付着(白斑)のない高品位な画像品質を長期に渡って維持できる電子写真現像剤用キャリアを形成できるキャリア芯材,このキャリア芯材を用いて形成される被覆キャリア粒子を提供することを目的としている。
・・・(中略)・・・
【0022】
【発明の概要】
本発明の電子写真現像用キャリア芯材は,次式(A)で表されるフェライト成分と,
(MnO)x(MgO)y(Fe_(2)O_(3))z ・・・(A)
(ただし,式(A)において,x,yおよびzはモル%を表し,40≦x≦60,0.1≦y≦10,x+y+z=100である)
該フェライト成分100重量部に対して,
該フェライト成分に固溶されていないZrO_(2)を0.01?5.0重量部の量で含有するフェライト粒子からなり,
かつ1000k/4π・A/mにおける磁化が65?85Am^(2)/kgの範囲内にあり,1000V印加時における電気抵抗が105?109Ωの範囲内にあることを特徴としている。
・・・(中略)・・・
【0024】
本発明の電子写真用二成分系現像剤は,上記の被覆キャリアと,平均粒子径が3?15μmの範囲内にあるトナー粒子とを含有することを特徴している。
また,本発明の画像形成方法は,交番電界を用いて形成した静電潜像を前記の電子写真用二成分系現像剤を用いて現像することを特徴としている。
本発明によれば,所定の組成を有するMn-Mg系フェライトに所定量の酸化ジルコニウム(ZrO_(2)),さらに必要により,酸化ビスマス(Bi_(2)O_(3))を含有させることにより,従来のキャリアでは独立して制御することが不可能であった,磁化と抵抗とを独立に制御することができ,高磁化で,かつ高抵抗のフェライト系キャリア芯材を得ることができる。
【0025】
さらに,このようなフェライト系キャリア芯材の表面を樹脂で被覆した被覆キャリアを用いて形成された二成分系現像剤を用いることにより,交番電界による画像形成方法において,効率よく画像を形成することができる。」

c 「【0084】
【実施例1】
MnO:49.9モル%,MgO:0.1モル%,Fe_(2)O_(3):50.0モル%になるようにMnO,MgO,及びFe_(2)O_(3)を秤量し,さらにこれら金属酸化物100重量部に対して,1.5重量部のZrO_(2),0.5重量部のBi_(2)O_(3)をそれぞれ秤量し添加した。
この混合物を湿式ボールミルで5時間混合,粉砕後,ロータリーキルンを用いて,950℃で1時間保持し,仮焼成を行った。
【0085】
こうして得られた仮焼成物を湿式ボールミルで7時間粉砕し,平均粒子径1.5μmとした。
上記のようにして得られたスラリーに分散剤及びバインダーを適量添加し,次いでスプレードライヤーにより造粒,乾燥をした後,この造粒物を電気炉で温度1250℃,酸素濃度0.3%の条件で6時間保持し,本焼成を行った。
【0086】
得られた焼成物を,解砕後,分級し粒度調整を行い,フェライト粒子を得た。こうして得られたフェライト粒子を,500℃に保持されたロータリー式大気炉で1時間保持しそのフェライト粒子表面に酸化被膜処理を施した。
上記のようにして酸化被膜処理を施したフェライト粒子を磁力選鉱,混合し,キャリア芯材を得た。キャリア芯材の平均粒径は32.9μmであった。
・・・(中略)・・・
【0097】
【実施例3】
実施例1において,組成比をMnO:45.0モル%,MgO:5.0モル%,Fe_(2)O_(3):50.0モル%に変更し,この金属酸化物100重量部に対して,ZrO_(2)を2.5重量部添加した以外は,同様にして平均粒子径28.1μmのキャリア芯材を製造した。また,実施例1と同様の方法で,このキャリア芯材を用いた被覆キャリア(キャリア3)及び2成分現像剤を調製した。
・・・(中略)・・・
【0113】
【比較例6】
実施例3に示す組成比がMnO:45.0モル%,MgO:5.0モル%,Fe_(2)O_(3):50.0モル%の金属酸化物を用いて,この金属酸化物100重量部に対して,ZrO_(2)を添加せず,代わりにSrOを2.5重量部添加した以外は,同様にして平均粒子径29.1μmのキャリア芯材を製造した。また,実施例3と同様の方法で,このキャリア芯材を用いた被覆キャリア(キャリア11)及び2成分現像剤を調製した。
【0114】
得られたキャリア芯材の組成を表1に,キャリア芯材の磁気特性,各工程別の電気抵抗,被覆キャリアの平均粒子径,635メッシュ通過率,電気抵抗,磁気特性を表2に示す。また,この被覆キャリアを用いて調製された二成分現像剤での耐刷試験後の画像評価(画像濃度,カブリ,トナー飛散,キャリア付着(白斑),ハーフトーンの均一性)及びこれらを基にした二成分現像剤総合評価を表3に示す。
・・・(中略)・・・
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
【表3】



(イ)甲7に記載された発明
前記(ア)aないしcの記載から,甲7に,比較例6に対応する発明として,次の発明が記載されていると認められる。

「MnO:45.0モル%,MgO:5.0モル%,Fe_(2)O_(3):50.0モル%になるようにMnO,MgO,及びFe_(2)O_(3)を秤量し,さらにこれら金属酸化物100重量部に対して,2.5重量部のSrOを秤量し添加し,
この混合物を湿式ボールミルで5時間混合,粉砕後,ロータリーキルンを用いて,950℃で1時間保持し,仮焼成を行い,
得られた仮焼成物を湿式ボールミルで7時間粉砕し,平均粒子径1.5μmとし,
得られたスラリーに分散剤及びバインダーを適量添加し,次いでスプレードライヤーにより造粒,乾燥をした後,この造粒物を電気炉で温度1250℃,酸素濃度0.3%の条件で6時間保持し,本焼成を行い,
得られた焼成物を,解砕後,分級し粒度調整を行い,フェライト粒子を得,得られたフェライト粒子を,500℃に保持されたロータリー式大気炉で1時間保持しそのフェライト粒子表面に酸化被膜処理を施し,酸化被膜処理を施したフェライト粒子を磁力選鉱,混合して得た,
平均粒子径29.1μmのキャリア芯材。」(以下,「引用発明」という。)

イ 本件特許発明1について
(ア)対比
引用発明のキャリア芯材の原料は,MnO:45.0モル%,MgO:5.0モル%,Fe_(2)O_(3):50.0モル%になるようにMnO,MgO,及びFe_(2)O_(3)を秤量し,さらにこれら金属酸化物100重量部に対して,2.5重量部のSrOを秤量し添加した混合物であるから,引用発明のキャリア芯材中にSrOは約2.8モル%存在し,引用発明のキャリア芯材は,組成式(MnO)x(MgO)y(Fe_(2)O_(3))zで表され,x+y+z=100mol%であり,少なくともMnO及び/又はMgOの一部をSrOで置換したフェライト粒子からなるものであるといえる。
したがって,引用発明は,「組成式(MnO)x(MgO)y(Fe_(2)O_(3))zで表され,x+y+z=100mol%であり,少なくともMnO及び/又はMgOの一部をSrOで置換したフェライト粒子からなるキャリア芯材」である点で,本件特許発明1と共通する。
よって,本件特許発明1と引用発明は,
「組成式(MnO)x(MgO)y(Fe_(2)O_(3))zで表され,x+y+z=100mol%であり,少なくともMnO及び/又はMgOの一部をSrOで置換したフェライト粒子からなるキャリア芯材。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:
本件特許発明1におけるSrOによるMnO及び/又はMgOの置換量が,0.15mol%?1.0mol%であるのに対して,
引用発明におけるSrOによるMnO及び/又はMgOの置換量が,約2.8mol%である点。

相違点2:
本件特許発明1では,球形粒子が2個?5個の結合した結合粒子であって,粒径の最も大きい母粒子と,前記母粒子よりも粒径が小さく少なくとも1つの粒径が前記母粒子の粒径の1/2よりも大きい1個?4個の子粒子とが結合した結合粒子の「走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM-6510LA)を用いて倍率250倍で撮影した画像より任意の400粒子を選択し,その中で結合粒子の数をカウントし,上記400粒子中に含まれる結合粒子の個数割合を結合粒子の含有率とする。」という方法で測定される含有率が5個数%ないし20個数%であり,前記結合粒子以外の通常粒子は球形であるのに対して,
引用発明が,このような構成を有しているのか否かは定かでない点。

(イ)新規性欠如の成否についての判断
本件特許発明1と引用発明の間に,少なくとも相違点1が存在する以上,本件特許発明1は引用発明と同一発明とはいえない。

(ウ)進歩性欠如について
a まず,本件訂正後の明細書(以下,「訂正明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載等から,引用発明が,相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する構成を具備していると推認することが可能なのか否かについて検討する。
結合粒子の含有率を5個数%ないし20個数%とするための方法について,訂正明細書の発明の詳細な説明には,「このような結合粒子は,例えば,後述するキャリア芯材の製造工程において,焼成温度での保持時間を長くしたり,焼成後の解粒操作を調整することにより得ることができる。この方法によれば,キャリア芯材中の結合粒子の含有割合を容易に調整することできる。(決定注:「調整することができる。」の誤記と解される。)」(【0022】),「結合粒子の含有割合は,焼成温度での保持時間によっても調整することができ,通常,保持時間を長くすると結合粒子の含有割合は増える。保持時間としては6時間以上が好ましく,8時間以上がより好ましい。」(【0033】)及び「この解粒処理によっても,結合粒子の含有割合を調整することができる。すなわち,焼成物に与える衝撃力を強く,長くするほど,結合粒子の結合が解消され結合粒子の含有割合は減少する。」(【0034】)と説明され,焼成工程の保持時間(h)を8又は10時間とし,解粒工程として,ハンマーミル処理を1回,ハンマーミル処理を1回とパルベライザー処理を1回又はハンマーミル処理を1回とパルベライザー処理を2回行った実施例1ないし3,5,6が開示されている。訂正明細書の発明の詳細な説明のこれらの記載からは,結合粒子の含有率は,専ら,キャリア芯材の製造時における焼成工程の保持時間と解粒処理における衝撃力及び処理時間とによって決まるものであって,焼成工程の保持時間を長くすると大きくなり,解粒処理における衝撃力を強くしたり処理時間を長くすると小さくなることを把握することができる。
しかるに,引用発明の製造時における焼成工程の保持時間は6時間であって,訂正明細書において好ましいとされた「6時間以上」という条件を満足するものの,訂正明細書に記載された各実施例における焼成工程の保持時間よりは若干短い。そうすると,引用発明の製造途中(焼成工程後であって解粒処理前)の結合粒子の含有率は,訂正明細書に記載された各実施例の製造途中(焼成工程後であって解粒処理前)の結合粒子の含有割合よりも若干小さいものと推察される。
しかしながら,引用発明の製造時の解粒処理における衝撃力や処理時間については甲7に明記されてなく,また,訂正明細書に記載された各実施例の製造時の解粒処理における衝撃力や処理時間も訂正明細書に具体的に特定されているわけでもないから,訂正明細書に記載された各実施例と引用発明について,それらの製造時の解粒処理における衝撃力や処理時間の大小関係は不明である。
そうすると,訂正明細書に記載された各実施例の製造方法との対比によって,解粒処理終了後の(すなわち,製造完了後の)引用発明の結合粒子の含有率を推測することはできない。また,他に,引用発明の結合粒子の含有率を推し量るすべもない。
したがって,引用発明が,相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する構成を具備しているとはいえない。
b(a) さらに,相違点2の容易想到性について検討してみても,5ないし20個数%の結合粒子を含有することにより何らかの優れた効果が得られることが,本件特許の出願前に公知であったことを示す証拠は見当たらないから,引用発明において,結合粒子の含有率が5ないし20個数%となるように,製造時における焼成工程の保持時間や解粒処理における衝撃力及び処理時間を調整することには,何らの動機付けもない。
(b) また,そもそも,引用発明は甲7の請求項1に記載された発明の実施例が奏する効果を示すための比較例6なのであって,甲7の記載に接した当業者が,当該比較例6の構成を変更して用いようと考えるはずもないから,この点からも,引用発明において,結合粒子の含有率が5ないし20個数%となるように,製造時における焼成工程の保持時間や解粒処理における衝撃力及び処理時間を調整することに,動機付けは存在しない。
(c) したがって,引用発明を,相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることが,当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。
c そして,本件特許発明1は,相違点2に係る発明特定事項を具備することで,現像領域へのトナー供給量を増加させ,現像メモリーの発生を抑制することができ,感光体表面を傷つけることもないという訂正明細書記載の効果を奏するものと認められる。
d 以上のとおりであるから,相違点1について検討するまでもなく,本件特許発明1は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4と引用発明とを対比すると,少なくとも,前記イ(ア)で認定した相違点1及び2で相違する。
したがって,前記イ(イ)及び(ウ)で述べたのと同様の理由で,本件特許発明2ないし4は,いずれも,引用発明と同一発明ではなく,かつ,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

エ 小括
前記イ及びウのとおりであるから,取消理由2によって,本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。

3 特許異議申立人の主張について
(1)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
特許異議申立書に記載された特許異議申立理由(以下,「申立理由」という。)のうち,平成29年2月28日付け取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった理由(平成28年2月19日付け取消理由通知及び同年7月13日付け取消理由通知(決定の予告)において採用した理由を含む。)は,概略次のとおりである。

申立理由1:
本件特許の請求項1ないし4に係る発明(決定注:特許された時点での請求項1ないし4である。申立理由2及び3についても同様。)は,甲1のFig.7に示されたキャリア芯材に対応する発明,甲2に記載された比較例1に対応する発明,甲3のFig.1に示されたフェライトキャリアコアに対応する発明,甲4の図2に示された球状フェライト粒子に対応する発明,甲5に記載された実施例2に対応する発明,甲6に記載された比較例1に対応する発明,甲7に記載された実施例1に対応する発明,及び甲8に記載された実施例1に対応する発明(以下,それぞれを「甲1発明」ないし「甲8発明」という。)のいずれとも同一であるか,これら発明のいずれかに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は,特許法29条1項又は2項の規定に違反してされたものである。
甲1:小林弘道外2名,「2成分系現像剤用キャリアの現状と将来展望」,日本画像学会誌,日本画像学会,平成16年9月10日,43巻,5号,356ないし364ページ
甲2:特開2009-122133号公報
甲3:望月武史,「クリーンキャリアコアの開発」,粉体及び粉末冶金,粉体粉末冶金協会,平成13年2月,48巻,2号,117ないし125ページ
甲4:国際公開第2005/062132号
甲5:特開2006-337828号公報
甲6:特開平11-202559号公報
甲7:取消理由2において引用された甲7
甲8:特開2004-240321号公報

申立理由2:
「結合粒子以外の通常粒子は球形で」との発明特定事項について,「通常粒子」が,結合粒子以外の全粒子を意味するのか,結合粒子以外の粒子であって球形の粒子を意味するのかが不明確であり,どのような形状が「球形」であるのか不明確であるから,「結合粒子が5個数%?20個数%含まれ」との発明特定事項について,粒子の形状を問わず全粒子に対する結合粒子の割合を指しているのか,それとも,異形粒子を除いた球形粒子と結合粒子に対する結合粒子の割合を指しているのか,すなわち,異形粒子を含んでよいのか否かが不明確である。また,仮に異形粒子を含んでよいのだとすると,許容される異形粒子の含有割合が不明確である。さらに,結合粒子の割合を求める方法は,各請求項には規定されていないところ,当該方法によって,結合粒子の含有割合が5ないし20個数%の範囲内になるか否かの結論が相違することも考えられる。したがって,請求項1ないし4に係る発明は明確でないから,その特許は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって,同法113条4号に該当する。
また,仮に,「球形」粒子に,解粒操作の衝撃で不定形になった粒子も含まれるとするならば,請求項1ないし4に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものでないから,その特許は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

申立理由3:
「結合粒子以外の通常粒子は球形で」との発明特定事項が,結合粒子以外の全粒子が球形であることを指すのだとすると,本件特許の明細書(決定注:特許された時点の明細書)の発明の詳細な説明には,異形粒子を除去する手段について記載されていないから,当業者が請求項1ないし4に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから,その特許は,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

申立理由4
本件発明の課題の一つに「球形状を逸脱した極端な異形化した粒子を含まず,感光体表面を傷つけないこと」があるのは明らかであるところ,請求項1ないし4に係る発明は,異形粒子を含む余地があり,球形の定義が明らかでないため,発明の課題を解決するための手段が反映されておらず,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。
また,結合粒子の割合を求める方法が異なることによって,あるいは,結合粒子の割合を求める際に選択する任意の粒子が異なることによって,結合粒子の含有割合が変動し,請求項1ないし4の範囲外となるのであれば,請求項1ないし4に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものでないから,その特許は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2)申立理由1の成否について
ア(ア) 申立理由1において主引例とされているもののうち,甲1発明ないし甲6発明における「結合粒子の含有率」が5ないし20個数%の範囲にあるとの特許異議申立人の主張は,甲1のFig.7,甲2の図2の比較例1の画像,甲3のFig.1,甲4の図2,甲5の図1,甲6の図2をそれぞれ根拠としているが,特許異議申立人がこれらの走査電子顕微鏡による撮影画像から各発明の「結合粒子の含有率」を求める際に選択した「任意の粒子」の全数(以下,「サンプルサイズ」という。)は,それぞれ11,8,146,24,60,十数個である。
本件訂正後の請求項1に記載された「結合粒子の含有率測定」における400というサンプルサイズの値は,統計学上概ね妥当なサンプルサイズと考えられるから,本件訂正後の請求項1に記載された「結合粒子の含有率測定」により測定した「結合粒子の含有率」は,キャリア芯材全体における「結合粒子の含有率」と概ね一致すると推察されるが,特許異議申立人が前記各発明の「結合粒子の含有率」を求める際に用いた前記各サンプルサイズの値は,キャリア芯材中の粒子の全数からみてあまりにも少なすぎるから,これらのサンプルサイズで求めた「結合粒子の含有率」は,たとえ概数としても各発明のキャリア芯材全体における「結合粒子の含有率」と一致するとはいえない。
そうすると,前記各サンプルサイズで求めた各発明の「結合粒子の含有率」が5ないし20個数%の範囲内であるからといって,本件訂正後の請求項1に記載された「結合粒子の含有率測定」(サンプルサイズ400)により測定した各発明の「結合粒子の含有率」が5ないし20個数%の範囲内にあるということはできない。
加えて,特許異議申立人が各撮影画像から各発明の「結合粒子の含有率」を求める際に「結合粒子」あるいは「通常粒子」とカウントしたものの中には,「結合粒子」なのか,それとも,独立した複数の「通常粒子」が奥行き方向に重なって写っているものなのかが判別し難いものが散見されるのであって,特許異議申立人が主張する各発明の各サンプルサイズでの「結合粒子の含有率」の値が妥当なものであり,5ないし20個数%の範囲内にあるとも認め難い。
以上によれば,甲1発明ないし甲6発明のいずれについても,本件訂正後の請求項1に記載された「結合粒子の含有率測定」(サンプルサイズ400)により測定した「結合粒子の含有率」が5ないし20個数%の範囲内にあるとは認められない。
したがって,本件特許発明1ないし4は,甲1発明ないし甲6発明のいずれとも同一ではない。
(イ) また,甲1発明ないし甲6発明のいずれにおいても,「結合粒子の含有率」が5ないし20個数%となるように,製造時における焼成工程の保持時間や解粒処理における衝撃力及び処理時間を調整することに,動機付けが存在しないことは,前記2(3)イ(ウ)b(a)で述べたのと同様である。
したがって,本件特許発明1ないし4は,甲1発明ないし甲6発明のいずれかに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ(ア) 申立理由1において主引例とされているもののうち,甲7発明について,特許異議申立人は,特許異議申立書において,甲7に記載された実施例1と同じ方法で焼成物を得た後,解粒処理として,ハンマーミル1回とピンミルを行った場合,ハンマーミル2回とピンミルを行った場合,及びハンマーミル3回とピンミルを行った場合の「結合粒子の含有率」(250倍のSEM写真に含まれる全粒子でカウント)を測定した結果が,10.9個数%,6.7個数%及び7.5個数%であることを示した上で,解粒処理条件によらず,甲7発明における「結合粒子の含有率」が5ないし20個数%の範囲内にあると主張し(34ページ9行ないし35ページ冒頭の「測定結果」の表),甲8発明についても同様の主張をしている(37ページ下から3ないし末行)。
しかしながら,前記測定に用いた250倍のSEM写真等,特許異議申立人の主張を裏付ける客観的な証拠は提出されていないから,特許異議申立人がいう各解粒処理条件で製造した甲7発明の「結合粒子の含有率」が特許異議申立人が主張するとおりの値になると認めることはできない。
この点を措くとしても,特許異議申立人が行った3つの解粒処理条件における値のみからは,他の解粒処理条件で製造した甲7発明の「結合粒子の含有率」が5ないし20個数%の範囲内にあると推認するには至らない。
加えて,特許異議申立人の前記測定は,250倍のSEM写真に含まれる全粒子でカウントしたものであるところ,そのサンプルサイズは,各解粒処理条件で製造したキャリア芯材の平均粒径からみてせいぜい百数十程度と考えられる。そうすると,前記ア(ア)と同様の理由で,サンプルサイズ百数十で測定した甲7発明の「結合粒子の含有率」が5ないし20個数%の範囲内であるからといって,本件訂正後の請求項1に記載された「結合粒子の含有率測定」(サンプルサイズ400)により測定した甲7発明や甲8発明の「結合粒子の含有率」が5ないし20個数%の範囲内にあるということはできない。
したがって,本件特許発明1ないし4は,甲7発明及び甲8発明のいずれとも同一ではない。
(イ) また,甲7発明及び甲8発明のいずれにおいても,「結合粒子の含有率」が5ないし20個数%となるように,製造時における焼成工程の保持時間や解粒処理における衝撃力及び処理時間を調整することに,動機付けが存在しないことは,前記2(3)イ(ウ)b(a)で述べたのと同様である。
したがって,本件特許発明1ないし4は,甲7発明又は甲8発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 前記ア及びイのとおりであるから,申立理由1は成り立たない。

(3)申立理由2の成否について
明確性要件違反について
特許異議申立人が不明確と主張する「前記結合粒子以外の通常粒子は球形で,」との発明特定事項における「通常粒子」は,文言上,結合粒子以外の全粒子を指すと解するのが相当であって,結合粒子以外の粒子のうちの球形のものを指すとの特許異議申立人がいうような解釈には無理がある。なお,当該解釈は,訂正明細書の発明の詳細な説明の【0008】に記載された「また異形キャリアとして,不等多角形状や塊状のキャリアが提案されているが,球形状を逸脱した極端な異形化により,粒子同士の引っかかりなどが強くなって磁気ブラシが硬くなり,磁気ブラシで感光体表面が摺擦されることによって感光体表面が傷付けられるおそれがある。」との発明が解決しようとする課題や,【0009】に記載された「そこで,本発明の目的は,現像領域へのトナー供給量を増加させることができ,しかも磁気ブラシによって感光体表面が傷つけられることのないキャリア芯材を提供することにある。」との発明の目的とも整合する。
一方で,技術常識からみて,「球形」とは真球形状及びある程度真球から逸脱していても全体としてみて球といえる形状の両方を含む概念と解するのが相当であるところ,例えば訂正明細書に記載された「実施例6」のSEM写真を示す訂正図面の図8に,「球形」とはいえない形状を有し,かつ,結合粒子にも該当しない粒子(以下,「異形粒子」という。)とおぼしきものが散見される(特許異議申立書53ページ「本件特許公報 図8 参考図」を参照。)ことや,製造時に「異形粒子」が生じることは避けられず,当該「異形粒子」を100%除去することがおおよそ不可能であることが技術常識であること等に照らせば,本件特許発明1ないし4の「前記結合粒子以外の通常粒子は球形で,」との発明特定事項が,結合粒子以外の通常粒子が100%「球形」の粒子(以下,「球形粒子」という。)であることを指していると解するのは不合理であり,製造に際して不可避的に生じる「異形粒子」の存在は許容していると解するのが合理的である。なお,当該「異形粒子」の存在は,その量が製造に際して不可避的に生じる程度であれば,感光体表面が傷つけられるおそれはきわめて小さいと考えられるから,前述した発明が解決しようとする課題との関係で矛盾するものではない。
そうすると,本件特許発明1ないし4の「前記結合粒子以外の通常粒子は球形で,」との発明特定事項は,結合粒子以外の通常粒子は球形粒子であるが,製造に際して不可避的に生じた異形粒子が存在してもよいことを意味していると解するのが相当である。
また,「結合粒子の下記方法で測定される含有率」については,測定方法が「走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM-6510LA)を用いて倍率250倍で撮影した画像より任意の400粒子を選択し,その中で結合粒子の数をカウントし,上記400粒子中に含まれる結合粒子の個数割合を結合粒子の含有率とする。」と規定されているのだから,文言上「カウントされた結合粒子の数/400」であって,分母の400が選択された全粒子数(結合粒子と通常粒子(すなわち,結合粒子と球形粒子と異形粒子)の合計数)であることは明らかであって,測定方法等によって,結合粒子の含有率が5ないし20個数%という範囲内になるか否かの結論が相違することはないというべきである。
さらに,本件特許発明1ないし4には,異形粒子の含有率の数値範囲を規定する発明特定事項は存在しないから,結合粒子以外の粒子として球形粒子と異形粒子とが含まれるキャリア芯材について,これが「結合粒子以外の通常粒子は球形で」との発明特定事項を充足するのか否かの判断に難しい面があることは否めないが,当該点は,前記キャリア芯材に含まれる異形粒子の量が,製造に際して不可避的に生じる程度の量であるのか否かを,技術常識等から総合的に判断すれば,評価できる問題であって,本件特許発明1ないし4の明確性が,その特許を取り消さなければならないほどの重大な瑕疵であるとまではいえない。
以上のとおり,特許異議申立人が明確でないと主張する各点について,本件特許発明1ないし4が明確でないとすることはできない。
したがって,申立理由2のうち明確性要件違反については成り立たない。

イ サポート要件違反について
前記アで述べたとおり,本件特許発明1ないし4の「前記結合粒子以外の通常粒子は球形で,」との発明特定事項は,結合粒子以外の通常粒子は球形粒子であるが,製造に際して不可避的に生じた異形粒子が存在してもよいことを意味していると解するのが相当であるところ,訂正明細書等に記載されたキャリア芯材は,このようなものについて説明し,その具体例として実施例1ないし3,5,6を開示していると認められるから,本件特許発明1ないし4は発明の詳細な説明に記載されたものと認められる。
したがって,申立理由2のうちサポート要件違反についても成り立たない。

(4)申立理由3の成否について
前記(3)アで述べたとおり,本件特許発明1ないし4の「前記結合粒子以外の通常粒子は球形で,」との発明特定事項については,結合粒子以外の通常粒子は球形粒子であるが,製造に際して不可避的に生じた異形粒子が存在してもよいことを意味するものと解するのが相当であるから,本件特許発明1ないし4のキャリア芯材を製造するに際して,異形粒子を100%除去する必要はない。
したがって,特許異議申立人が主張する点に関して当業者が本件特許発明1ないし4を実施できないということはできないから,申立理由3は成り立たない。

(5)申立理由4の成否について
前記(3)アで述べたとおり,技術常識からみて,「球形」とは真球形状及びある程度真球から逸脱していても全体としてみて球といえる形状の両方を含む概念と解するのが相当であり,かつ,本件特許発明1ないし4のキャリア芯材は,製造に際して不可避的に生じる「異形粒子」の存在は許容していると解するのが合理的であるところ,当該「異形粒子」の存在は,その量が製造に際して不可避的に生じる程度であれば,感光体表面が傷つけられるおそれはきわめて小さいと考えられ,発明が解決しようとする課題との関係で矛盾するものではないから,この点に関して,本件特許発明1ないし4が,発明の詳細な説明の記載や本件特許の出願時の技術常識に照らし,当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えているとはいえない。
また,前記2(2)で述べたように,本件特許発明1ないし4の結合粒子の含有率は,技術常識や当業者の通常の創意工夫によりなし得る適宜の手段を講じることで前記測定誤差やばらつきを小さくでき,パラメータの測定値として有意な値が得られると考えられるから,結合粒子の割合を求める方法が異なることによって,あるいは,結合粒子の割合を求める際に選択する任意の粒子が異なることによって,結合粒子の含有割合が変動し,本件特許発明1ないし4の範囲外となるようなものでない。したがって,当該点に関しても,本件特許発明1ないし4が発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。
したがって,申立理由4は成り立たない。

(6)平成29年7月3日提出の意見書における特許異議申立人の主張について
特許異議申立人が,平成29年7月3日提出の意見書において,本件特許発明1ないし4は,甲14(特開2014-137518号公報),甲15(特開2005-250154号公報),甲16(特開2010-169703号公報),甲17(特開2012-53287号公報),甲18(特開2004-94035号公報),甲19(特開2011-191546号公報),甲20(特開2014-77974号公報),甲21(特開2004-333759号公報),甲22(特開2012-252332号公報),甲23(特開2013-228680号公報)に記載された発明のいずれとも同一であるか,又はこれら発明のいずれに基づいても,当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張しているので,当該主張について一応検討しておく。
本件特許発明1ないし4と甲14ないし甲23に記載された発明とを対比すると,甲14ないし甲23に記載された発明のいずれにおいても,少なくとも,両者は,前記2(3)イ(ア)で認定した相違点2と同様の点(以下,「相違点2’」という。)で相違する。
そして,これら甲14ないし甲23には,いずれにも,製造時における焼成工程の保持時間について記載されているものの,解粒処理における衝撃力や処理時間については説明されていないばかりか,どのような種類の解粒装置を用いたのかすら,記載がない。
しかるに,訂正明細書に記載された各実施例の製造時の解粒処理における衝撃力や処理時間も訂正明細書に具体的に特定されているわけでもないから,訂正明細書に記載された各実施例の製造方法との対比によって,解粒処理終了後の(すなわち,製造完了後の)甲14ないし甲23に記載された発明の結合粒子の含有率を推測することはできず,他に,甲14ないし甲23に記載された発明の結合粒子の含有率を推し量るすべもないことは,前記2(3)イ(ウ)aと同様である。
したがって,甲14ないし甲23に記載された発明が,相違点2’に係る本件特許発明1ないし4の発明特定事項に相当する構成を具備しているとはいえないから,本件特許発明1ないし4が,甲14ないし甲23に記載された発明のいずれかと同一であるとはいえない。
また,5ないし20個数%の結合粒子を含有することにより何らかの優れた効果が得られることが,本件特許の出願前に公知であったことを示す証拠は見当たらないから,甲14ないし甲23に記載された発明において,結合粒子の含有率が5ないし20個数%となるように,製造時における焼成工程の保持時間や解粒処理における衝撃力及び処理時間を調整することには,何らの動機付けもないこと,及び本件特許発明1ないし4が,相違点2’に係る発明特定事項を具備することで,現像領域へのトナー供給量を増加させ,現像メモリーの発生を抑制することができ,感光体表面を傷つけることもないという訂正明細書記載の効果を奏するものと認められることは,前記2(3)イ(ウ)b(a)及びcで述べたのと同様である。
したがって,本件特許発明1ないし4が,甲14ないし甲23に記載された発明のいずれかに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
よって,当該特許異議申立人の主張は採用できない。


第4 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては,本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
キャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子写真方式を用いたファクシミリやプリンター、複写機などの画像形成装置では、感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて可視像化し、この可視像を用紙等に転写した後、加熱・加圧して定着させている。高画質化やカラー化の観点から、現像剤としては、キャリアとトナーとを含むいわゆる二成分現像剤が広く使用されている。
【0003】
二成分現像剤を用いた現像方式では、キャリアとトナーとを現像装置内で撹拌混合し、摩擦によってトナーを所定量まで帯電させる。そして、回転する現像ローラに現像剤を供給し、現像ローラ上で磁気ブラシを形成させて、磁気ブラシを介して感光体へトナーを電気的に移動させて感光体上の静電潜像を可視像化する。トナー移動後のキャリアは現像ローラ上に残留し、現像装置内で再びトナーと混合される。このため、キャリアの特性として、磁気ブラシを形成する磁気特性及び所望の電荷をトナーに付与する帯電特性が要求される。このようなキャリアとしては、マグネタイトや各種フェライト等からなるキャリア芯材の表面を樹脂で被覆した、いわゆるコーティングキャリアがこれまで多く用いられていた。また、コーティングキャリアに用いられていたこれまでのキャリア芯材は真球状であった。
【0004】
近年、画像形成装置における画像形成速度の高速化という市場要求に対応するため、現像ローラの回転速度を速めて、現像領域への現像剤の単位時間当たりの供給量を増加させる傾向にある。
【0005】
ところが、真球状のキャリア芯材を用いたコーティングキャリアでは、現像領域へのトナー供給が不十分となり画像濃度が低下する不具合があった。例えば、現像ローラの1周前の画像の影響を受けて画像濃度が低下する「現像メモリー」と呼ばれる不具合があった。
【0006】
そこで、キャリア芯材の表面を凹凸形状としたり、キャリア芯材の形状を異形化することで、感光体表面との摩擦抵抗及びキャリア同士の摩擦抵抗を大きくし、現像領域へのトナー供給量を増加させる技術が提案されている(例えば、特許文献1,2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-25204号公報
【特許文献2】特開2007-148452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、キャリア芯材表面を凹凸形状にしただけでは、キャリア化した際に凹部にコート樹脂が厚く成膜されるため、キャリア化後の表面凹凸が不十分となるためトナー保持性が十分でない。また異形キャリアとして、不等多角形状や塊状のキャリアが提案されているが、球形状を逸脱した極端な異形化により、粒子同士の引っかかりなどが強くなって磁気ブラシが硬くなり、磁気ブラシで感光体表面が摺擦されることによって感光体表面が傷つけられるおそれがある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、現像領域へのトナー供給量を増加させることができ、しかも磁気ブラシによって感光体表面が傷つけられることのないキャリア芯材を提供することにある。
【0010】
また本発明の他の目的は、長期間の使用においても安定して良好な画質画像を形成することができる電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、本発明によれば、組成式(MnO)x(MgO)y(Fe_(2)O_(3))zで表され、x+y+z=100mol%であり、少なくともMnO及び/又はMgOの一部をSrOで0.15mol%?1.0mol%置換したフェライト粒子からなるキャリア芯材であって、球形粒子が2個?5個の結合した結合粒子の下記方法で測定される含有率が5個数%?20個数%であり、前記結合粒子以外の通常粒子は球形で、前記結合粒子は、粒径の最も大きい母粒子と、前記母粒子よりも粒径の小さい1個?4個の子粒子とが結合した粒子であり、前記子粒子の少なくとも1つの子粒子の粒径は、前記母粒子の粒径の1/2よりも大きいことを特徴とするフェライト粒子からなるキャリア芯材が提供される。
(結合粒子の含有率測定)
走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM-6510LA)を用いて倍率250倍で撮影した画像より任意の400粒子を選択し、その中で結合粒子の数をカウントし、上記400粒子中に含まれる結合粒子の個数割合を結合粒子の含有率とする。
【0012】
なお、結合粒子では母粒子と子粒子とが結合部分を共有した形態で存在しているので、本明細書における母粒子及び子粒子の粒径は、キャリア芯材の形状を走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM-6510LA)を用いて倍率250倍で撮影した画像において、結合粒子の結合部分を除いた領域から粒子を球形近似することによりそれぞれ算出した。
【0013】
また、前記結合粒子以外の通常粒子の表面の最大山谷深さRzは1.5μm以上であるのが好ましい。なお、キャリア芯材の最大山谷深さRzの測定方法は、後述する実施例で説明する。
【0014】
本発明に係るキャリア芯材の体積平均粒径(以下、単に「平均粒径」と記すことがある)は25μm以上50μm未満であるのが好ましい。
【0015】
また、本発明によれば、前記記載のキャリア芯材の表面を樹脂で被覆したことを特徴とする電子写真現像用キャリアが提供される。
【0016】
さらに、本発明によれば、前記記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るキャリア芯材によれば、現像領域へのトナー供給量を増加させることができ「現像メモリー」の発生を抑制できる。また、磁気ブラシによって感光体表面は傷つけられることもない。これにより、本発明に係るキャリア芯材を含む現像剤を用いれば、長期間の使用においても安定して良好な画質画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 実施例1のキャリア芯材のSEM写真である。
【図2】 実施例2のキャリア芯材のSEM写真である。
【図3】 実施例3のキャリア芯材のSEM写真である。
【図4】 比較例1のキャリア芯材のSEM写真である。
【図5】 比較例2のキャリア芯材のSEM写真である。
【図6】 (削除)
【図7】 実施例5のキャリア芯材のSEM写真である。
【図8】 実施例6のキャリア芯材のSEM写真である。
【図9】 比較例3のキャリア芯材のSEM写真である。
【図10】 本発明に係るキャリアを用いた現像装置の一例を示す概説図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者等は、磁気ブラシによって感光体表面を傷つけることなく、現像領域へのトナー供給量を増加できないか鋭意検討を重ねた結果、数個のフェライト球形粒子が結合した結合粒子を、キャリア芯材中に所定の個数割合含有させればよいことを見出し、本発明を成すに至った。すなわち、本発明に係るフェライト粒子からなるキャリア芯材は、球形粒子が2個?5個の結合した結合粒子が5個数%?20個数%含まれ、前記結合粒子は、粒径の最も大きい母粒子と、前記母粒子よりも粒径の小さい1個?4個の子粒子とが結合した粒子であり、前記子粒子の少なくとも1つの子粒子の粒径は、前記母粒子の粒径の1/2よりも大きいことを特徴とする。なお、キャリア芯材は、フェライト粒子からなる紛体であり、ここでは、本発明にかかる結合粒子以外のフェライト粒子を通常粒子とする。
【0020】
母粒子と子粒子とが結合した、球形から大きく外れた異形な結合粒子がキャリア芯材中に所定の個数割合で含まれていると、通常の球形粒子と結合粒子との間にトナーが取り込まれる空間が生じ得る。そして、通常の球形粒子と結合粒子との間の空間に取り込まれたトナーは、現像ローラの回転によって現像領域に搬送されると共に、前記空間に取り込まれていたトナーが磁気ブラシの表面に現れ現像に寄与する。加えて、従来の不等多角形状や塊状のキャリアと異なって、本発明で使用する結合粒子は、球形粒子同士が結合した粒子であるため角部がない。このため、感光体表面を磁気ブラシで摺擦しても粒子の角部で感光体表面が傷つくことはない。また、少なくとも1つの子粒子の粒径が母粒子の粒径に対して1/2より大きいため、トナーが取り込まれ得る通常の球形粒子と結合粒子との間の空間及び結合粒子同士の空間が大きい。これにより、より多くのトナーが現像領域に搬送され、「現像メモリー」の発生が効果的に抑制されるようになる。
【0021】
本発明で使用する結合粒子において、母粒子と子粒子の組成は、同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0022】
このような結合粒子は、例えば、後述するキャリア芯材の製造工程において、焼成温度での保持時間を長くしたり、焼成後の解粒操作を調整することにより得ることができる。この方法によれば、キャリア芯材中の結合粒子の含有割合を容易に調整することできる。
【0023】
キャリア芯材における結合粒子の含有割合は5個数%?20個数%である。結合粒子の含有割合が5個数%未満であると、現像領域へのトナー供給量が不十分となることがある一方、結合粒子の含有割合が20個数%を超えると、キャリア芯材の流動性が悪くなりすぎて磁気ブラシ内でのキャリアの循環移動が十分に行われず、画像形成速度が速くなった場合に十分な画像濃度が得られない。より好ましい結合粒子の含有割合は10個数%?20個数%の範囲である。
【0024】
本発明のキャリア芯材における前記結合粒子以外の通常粒子の表面の最大山谷深さRzは1.5μm以上であるのが好ましい。通常粒子表面の最大山谷深さRzが1.5μm以上であると、通常粒子同士の間に形成される空間も大きくなり、より多くのトナーがこの空間に取り込まれて現像領域へのトナー搬送量が増え、「現像メモリー」などの画像不具合が一層抑制される。粒子表面の最大山谷深さRzの好ましい上限値は2.5μmであり、より好ましくは2.0μmである。
【0025】
本発明のキャリア芯材の体積平均粒径としては、25μm以上50μm未満の範囲が好ましく、より好ましくは30μm以上40μm以下の範囲である。
【0026】
本発明のキャリア芯材を構成するフェライト粒子の組成に特に限定はなく、組成式M_(X)Fe_(3-X)O_(4)(但し、Mは、Mg,Mn,Ca,Ti,Sr,Cu,Zn,Niからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素、0≦X≦1)で表されるものが例示される。これらの中でも、一般式(MnO)x(MgO)y(Fe_(2)O_(3))zで表され、x,y,zがそれぞれ45mol%?55mol%,0?20mol%,30mol%?50mol%であり、MnO及び/又はMgOの一部をSrOで0.15mol%?1.0mol%置換したものが好ましい。
【0027】
本発明のキャリア芯材の製造方法に特に限定はないが、以下に説明する製造方法が好適である。
【0028】
まず、Fe成分原料、M成分原料を秤量する。なお、MはMg、Mn、Ca、Ti、Cu、Sr、Zn、Ni等の2価の価数をとり得る金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。Fe成分原料としては、Fe_(2)O_(3)等が好適に使用される。M成分原料としては、MnであればMnCO_(3)、Mn_(3)O_(4)等が使用でき、MgであればMgO、Mg(OH)_(2)、MgCO_(3)が好適に使用できる。また、Ca成分原料としては、CaO、Ca(OH)_(2)、CaCO_(3)等から選択される少なくとも1種の化合物が好適に使用される。Sr成分原料としては、SrCO_(3)、Sr(NO_(3))_(2)などが好適に使用される。
【0029】
次いで、原料を分散媒中に投入しスラリーを作製する。本発明で使用する分散媒としては水が好適である。分散媒には、前記仮焼成原料の他、必要によりバインダー、分散剤等を配合してもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールが好適に使用できる。バインダーの配合量としてはスラリー中の濃度が0.5質量%?2質量%程度とするのが好ましい。また、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム等が好適に使用できる。分散剤の配合量としてはスラリー中の濃度が0.5質量%?2質量%程度とするのが好ましい。その他、潤滑剤や焼結促進剤等を配合してもよい。スラリーの固形分濃度は50質量%?90質量%の範囲が望ましい。より好ましくは60質量%?80質量%である。60質量%以上であれば、造粒品中に粒子内細孔が少なく、焼成時の焼結不足を防ぐことができる
【0030】
なお、秤量した原料を混合し仮焼成し解粒した後、分散媒に投入しスラリーを作製してもよい。仮焼成の温度としては750℃?900℃の範囲が好ましい。750℃以上であれば、仮焼による一部フェライト化が進み、焼成時のガス発生量が少なく、固体間反応が十分に進むため、好ましい。一方、900℃以下であれば、仮焼による焼結が弱く、後のスラリー粉砕工程で原料を十分に粉砕できるので好ましい。また、仮焼成時の雰囲気としては大気雰囲気が好ましい。
【0031】
次に、以上のようにして作製されたスラリーを湿式粉砕する。例えば、ボールミルや振動ミルを用いて所定時間湿式粉砕する。粉砕後の原材料の平均粒径は5μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下である。振動ミルやボールミルには、所定粒径のメディアを内在させるのがよい。メディアの材質としては、鉄系のクロム鋼や酸化物系のジルコニア、チタニア、アルミナなどが挙げられる。粉砕工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。粉砕物の粒径は、粉砕時間や回転速度、使用するメディアの材質・粒径などによって調整される。
【0032】
そして、粉砕されたスラリーを噴霧乾燥させて造粒する。具体的には、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機にスラリーを導入し、雰囲気中へ噴霧することによって球状に造粒する。噴霧乾燥時の雰囲気温度は100℃?300℃の範囲が好ましい。これにより、粒径10μm?75μmの球状の造粒物が得られる。次いで、得られた造粒物を振動ふるいを用いて分級し所定の粒径範囲の造粒物を作製する。
【0033】
次に、前記の造粒物を所定温度に加熱した炉に投入して、フェライト粒子を合成するための一般的な手法で焼成することにより、フェライト粒子を生成させる。焼成温度としては1100℃?1300℃の範囲が好ましい。焼成温度が1100℃以下であると、相変態が起こりにくくなるとともに焼結も進みにくくなる。また、焼成温度が1300℃を超えると、過剰焼結による過大グレインの発生がするおそれがある。結合粒子の含有割合は、焼成温度での保持時間によっても調整することができ、通常、保持時間を長くすると結合粒子の含有割合は増える。保持時間としては6時間以上が好ましく、8時間以上がより好ましい。前記焼成温度に至るまでの昇温速度としては250℃/h?500℃/hの範囲が好ましい。焼成工程における酸素濃度は0.05%?5%の範囲に制御するのが好ましい。
【0034】
このようにして得られた焼成物を解粒する。具体的には、例えば、ハンマーミル等によって焼成物を解粒する。解粒工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。この解粒処理によっても、結合粒子の含有割合を調整することができる。すなわち、焼成物に与える衝撃力を強く、長くするほど、結合粒子の結合が解消され結合粒子の含有割合は減少する。
【0035】
解粒処理後、必要により、粒径を所定範囲に揃えるため分級を行ってもよい。分級方法としては、風力分級や篩分級など従来公知の方法を用いることができる。また、風力分級機で1次分級した後、振動篩や超音波篩で粒径を所定範囲に揃えるようにしてもよい。さらに、分級工程後に、磁場選鉱機によって非磁性粒子を除去するようにしてもよい。フェライト粒子の粒径としては25μm以上50μm未満が好ましい。
【0036】
その後、必要に応じて、分級後のフェライト粒子を酸化性雰囲気中で加熱して、粒子表面に酸化被膜を形成してフェライト粒子の高抵抗化を図ってもよい(高抵抗化処理)。酸化性雰囲気としては大気雰囲気又は酸素と窒素の混合雰囲気のいずれでもよい。また、加熱温度は、200℃?800℃の範囲が好ましく、250℃?600℃の範囲がさらに好ましい。加熱時間は0.5時間?5時間の範囲が好ましい。
【0037】
以上のようにして作製したフェライト粒子を本発明のキャリア芯材として用いる。そして、所望の帯電性等を得るために、キャリア芯材の外周を樹脂で被覆して電子写真現像用キャリアとする。
【0038】
キャリア芯材の表面を被覆する樹脂としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリ塩化ビニリデン、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、並びにポリ塩化ビニル系やポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エストラマー、フッ素シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0039】
キャリア芯材の表面を樹脂で被覆するには、樹脂の溶液又は分散液をキャリア芯材に施せばよい。塗布溶液用の溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類溶媒;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒などの1種又は2種以上を用いることができる。塗布溶液中の樹脂成分濃度は、一般に0.001質量%?30質量%、特に0.001質量%?2質量%の範囲内にあるのがよい。
【0040】
キャリア芯材への樹脂の被覆方法としては、例えばスプレードライ法や流動床法あるいは流動床を用いたスプレードライ法、浸漬法等を用いることができる。これらの中でも、少ない樹脂量で効率的に塗布できる点で流動床法が特に好ましい。樹脂被覆量は、例えば流動床法の場合には吹き付ける樹脂溶液量や吹き付け時間によって調整することができる。
【0041】
キャリアの粒子径は、一般に、体積平均粒子径で25μm以上50μm未満の範囲、特に30μm以上40μm以下の範囲が好ましい。
【0042】
本発明に係る電子写真用現像剤は、以上のようにして作製したキャリアとトナーとを混合してなる。キャリアとトナーとの混合比に特に限定はなく、使用する現像装置の現像条件などから適宜決定すればよい。一般に現像剤中のトナー濃度は1質量%?15質量%の範囲が好ましい。トナー濃度が1質量%未満の場合、画像濃度が薄くなりすぎ、他方トナー濃度が15質量%を超える場合、現像装置内でトナー飛散が発生し機内汚れや転写紙などの背景部分にトナーが付着する不具合が生じるおそれがあるからである。より好ましいトナー濃度は3質量%?10質量%の範囲である。
【0043】
トナーとしては、重合法、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法など従来公知の方法で製造したものが使用できる。具体的には、熱可塑性樹脂を主成分とする結着樹脂中に、着色剤、離型剤、帯電制御剤等を含有させたものが好適に使用できる。
【0044】
トナーの粒径は、一般に、コールターカウンターによる体積平均粒径で5μm?15μmの範囲が好ましく、7μm?12μmの範囲がより好ましい。
【0045】
トナー表面には、必要により、改質剤を添加してもよい。改質剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0046】
キャリアとトナーとの混合は、従来公知の混合装置を用いることができる。例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、タンブラーミキサー、ハイブリタイザー等を用いることができる。
【0047】
本発明の現像剤を用いた現像方法に特に限定はないが、磁気ブラシ現像法が好適である。図10に、磁気ブラシ現像を行う現像装置の一例を示す概説図を示す。図10に示す現像装置は、複数の磁極を内蔵した回転自在の現像ローラ3と、現像部へ搬送される現像ローラ3上の現像剤量を規制する規制ブレード6と、水平方向に平行に配置され、互いに逆向きに現像剤を撹拌搬送する2本のスクリュー1,2と、2本のスクリュー1,2の間に形成され、両スクリューの両端部において、一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤の移動を可能とし、両端部以外での現像剤の移動を防ぐ仕切板4とを備える。
【0048】
2本のスクリュー1,2は、螺旋状の羽根13,23が同じ傾斜角で軸部11,21に形成されたものであって、不図示の駆動機構によって同方向に回転し、現像剤を互いに逆方向に搬送する。そして、スクリュー1,2の両端部において一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤が移動する。これによりトナーとキャリアからなる現像剤は装置内を常に循環し撹拌されることになる。
【0049】
一方、現像ローラ3は、表面に数μmの凹凸を付けた金属製の筒状体の内部に、磁極発生手段として、現像磁極N_(1)、搬送磁極S_(1)、剥離磁極N_(2)、汲み上げ磁極N_(3)、ブレード磁極S_(2)の5つの磁極を順に配置した固定磁石を有してなる。現像ローラ3が矢印方向に回転すると、汲み上げ磁極N_(3)の磁力によって、スクリュー1から現像ローラ3へ現像剤が汲み上げられる。現像ローラ3の表面に担持された現像剤は、規制ブレード6により層規制された後、現像領域へ搬送される。
【0050】
現像領域では、直流電圧に交流電圧を重畳したバイアス電圧が転写電圧電源8から現像ローラ3に印加される。バイアス電圧の直流電圧成分は、感光体ドラム5表面の背景部電位と画像部電位との間の電位とされる。また、背景部電位と画像部電位とは、バイアス電圧の最大値と最小値との間の電位とされる。バイアス電圧のピーク間電圧は0.5?5kVの範囲が好ましく、周波数は1?10kHzの範囲が好ましい。またバイアス電圧の波形は矩形波、サイン波、三角波などいずれであってもよい。これによって、現像領域においてトナー及びキャリアが振動し、トナーが感光体ドラム5上の静電潜像に付着して現像がなされる。
【0051】
その後現像ローラ3上の現像剤は、搬送磁極S_(1)によって装置内部に搬送され、剥離電極N_(2)によって現像ローラ3から剥離して、スクリュー1,2によって装置内を再び循環搬送され、現像に供していない現像剤と混合撹拌される。そして汲み上げ極N_(3)によって、新たに現像剤がスクリュー1から現像ローラ3へ供給される。
【0052】
なお、図10に示した実施形態では現像ローラ3に内蔵された磁極は5つであったが、現像剤の現像領域での移動量を一層大きくしたり、汲み上げ性等を一層向上させるために、磁極を8極や10極、12極と増やしてももちろん構わない。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0054】
実施例1
Fe_(2)O_(3)(平均粒径:0.6μm)7.985kg、Mn_(3)O_(4)(平均粒径:0.9μm)3.814kg、SrCO_(3)(平均粒径:0.6μm)0.112kgを純水5.58kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を30g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm?75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径50μmを超える粗粒は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1170℃まで4.5時間かけて昇温した。その後、1170℃で10時間保持することにより焼成を行った。その後8時間かけて室温まで冷却した。この間、電気炉内の酸素濃度は15000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。
得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で1回解粒した後、パルベライザー(DOWAテクノエンジ社製)でさらに2回解粒し、平均粒径34.0μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、図1に、実施例1のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0055】
実施例2
実施例1において焼成温度1170℃での保持時間を8時間とし、パルベライザーによる解粒処理を1回とした以外は、実施例1と同様にして平均粒径35.0μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、図2に、実施例2のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0056】
実施例3
実施例1において焼成温度1170℃での保持時間を8時間とし、パルベライザーによる解粒処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして平均粒径34.9μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、図3に、実施例3のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0057】
比較例1
原料として、Fe_(2)O_(3)(平均粒径:0.6μm)7.985kg、Mn_(3)O_(4)(平均粒径:0.9μm)3.120gを用い、焼成温度1170℃での保持時間を3時間とし、ハンマーミル(スクリーン目開き:1.5mm)で1回解粒した後、パルベライザーによる解粒処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして平均粒径34.8μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、図4に、比較例1のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0058】
比較例2
原料として、Fe_(2)O_(3)(平均粒径:0.6μm)7.985kg、Mn_(3)O_(4)(平均粒径:0.9μm)3.814g、SrCO_(3)(平均粒径:0.6μm)0.073kgを用い、焼成温度1170℃での保持時間を3時間とし、ハンマーミル(スクリーン目開き:1.5mm)で1回解粒した後、パルベライザーによる解粒処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして平均粒径32.7μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、図5に、比較例2のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0059】
(削除)
【0060】
実施例5
原料として、Fe_(2)O_(3)(平均粒径:0.6μm)7.985kg、MgO(平均粒径:0.8μm)0.403kg、Mn_(3)O_(4)(平均粒径:0.9μm)3.051kg、SrCO_(3)(平均粒径:0.6μm)0.097kgを純水5.58kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を30g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm?75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径50μmを超える粗粒は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1300℃まで4.5時間かけて昇温した。その後、1300℃で8時間保持することにより焼成を行った。
その後8時間かけて室温まで冷却した。この間、電気炉内の酸素濃度は15000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。
得られた焼成物をハンマーミル(スクリーン目開き:0.3mm)で1回解粒し、平均粒径36.5μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、図7に、実施例5のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0061】
実施例6
原料として、Fe_(2)O_(3)(平均粒径:0.6μm)7.985kg、MgO(平均粒径:0.8μm)0.605kg、Mn_(3)O_(4)(平均粒径:0.9μm)2.669kg、SrCO_(3)(平均粒径:0.6μm)0.067kgを純水5.58kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を30g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm?75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径50μmを超える粗粒は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1300℃まで4.5時間かけて昇温した。その後、1300℃で8時間保持することにより焼成を行った。
その後8時間かけて室温まで冷却した。この間、電気炉内の酸素濃度は15000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。
得られた焼成物をハンマーミル(スクリーン目開き:0.3mm)で1回解粒した後、パルベライザーで1回解粒し、平均粒径36.3μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、図8に、実施例6のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0062】
比較例3
Fe_(2)O_(3)(平均粒径:0.6μm)7.985kg、MgO(平均粒径:0.8μm)0.605kg、Mn_(3)O_(4)(平均粒径:0.9μm)2.669kgを純水5.58kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を30g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm?75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径50μmを超える粗粒は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1200℃まで4.5時間かけて昇温した。その後、1200℃で3時間保持することにより焼成を行った。その後8時間かけて室温まで冷却した。この間、電気炉内の酸素濃度は15000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。
得られた焼成物をハンマーミル(スクリーン目開き:1.5mm)で1回解粒し、平均粒径33.6μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、図9に、比較例3のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0063】
(組成分析)
(Feの分析)
鉄元素を含むキャリア芯材を秤量し、塩酸と硝酸の混酸水に溶解させた。この溶液を蒸発乾固させた後、硫酸水を添加して再溶解し過剰な塩酸と硝酸とを揮発させる。この溶液に固体Alを添加して液中のFe^(3+)を全てFe^(2+)に還元する。続いて、この溶液中のFe^(2+)イオンの量を過マンガン酸カリウム溶液で電位差滴定することにより定量分析し、Fe(Fe^(2+))の滴定量を求めた。
(Mnの分析)
キャリア芯材のMn含有量は、JIS G1311-1987記載のフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)に準拠して定量分析を行った。本願発明に記載したキャリア芯材のMn含有量は、このフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)で定量分析し得られたMn量である。
(Mgの分析)
キャリア芯材のMg含有量は、以下の方法で分析を行った。本願発明に係るキャリア芯材を酸溶液中で溶解し、ICPにて定量分析を行った。本願発明に記載したキャリア芯材のMg含有量は、このICPによる定量分析で得られたMg量である。
(Srの分析)
キャリア芯材のSr含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
【0064】
(結合粒子の含有率及び粒径)
キャリア芯材の形状を走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM-6510LA)を用いて倍率250倍で撮影した。撮影した画像より任意の400粒子を選択し、その中で結合粒子の数をカウントし、上記400粒子中に含まれる結合粒子の個数割合を結合粒子含有率とした。
なお、結合粒子は、粒径の最も大きい母粒子と、前記母粒子よりも粒径の小さい1個?4個の子粒子とが結合した粒子であり、前記子粒子の少なくとも1つの子粒子の粒径は、前記母粒子の粒径の1/2よりも大きいものとした。そして、結合粒子では母粒子と子粒子とが結合部分を共有した形態で存在しているので、母粒子及び子粒子の粒径は、キャリア芯材の形状を走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM-6510LA)を用いて倍率250倍で撮影した画像において、結合粒子の結合部分を除いた領域から粒子を球形近似することによりそれぞれ算出した。
【0065】
(見掛密度)
キャリア芯材の見掛け密度はJIS Z 2504に準拠して測定した。
【0066】
(流動度)
キャリア芯材の流動度はJIS Z 2502に準拠して測定した。
【0067】
(平均粒径)
キャリア芯材の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装社製「マイクロトラックModel9320-X100」)を用いて測定した。
【0068】
(磁気特性)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製「VSM-P7」)を用いて、外部磁場を0?79.58×10^(4)A/m(10000エルステッド)の範囲で1サイクル連続的に印加して、飽和磁化、残留磁化、保磁力及び79.58×10^(3)A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ_(1k)(Am^(2)/kg)をそれぞれ測定した。
【0069】
(最大山谷深さRz)
超深度カラー3D形状測定顕微鏡(「VK-X100」株式会社キーエンス製)を用い、100倍対物レンズで表面を観察して求めた。具体的には、まず、表面の平坦な粘着テープにフェライト粒子を固定し、100倍対物レンズで測定視野を決定した後、オートフォーカス機能を用いて焦点を粘着テープ面に調整した。フェライト粒子を固定した平坦な粘着テープ面に対し、垂直方向(Z方向)からレーザー光線を照射し、面のX方向Y方向に走査した。また、表面からの反射光の強度が最大となった時のレンズの高さ位置をつなぎ合わせることでZ方向のデータを取得した。これらX、YおよびZ方向の位置データをつなぎ合わせフェライト粒子表面の3次元形状を得た。なお、フェライト粒子表面の3次元形状の取り込みにはオート撮影機能を用いた。
各パラメータの測定には、粒子粗さ検査ソフトウェア(三谷商事製)を用いて行った。まず、前処理として、得られたフェライト粒子表面の3次元形状の粒子認識と形状選別を行った。粒子認識は以下の方法で行った。撮影によって得られた3次元形状のうち、Z方向の最大値を100%、最小値を0%として最大値から最小値までの間を100等分する。この100?35%にあたる領域を抽出し、独立した領域の輪郭を粒子輪郭として認識した。次に形状選別で粗大、微小、会合などの粒子を除外した。この形状選別を行うことで以降に行う極率補正時の誤差を小さくすることができる。具体的には面積相当径28μm以下、38μm以上、針状比1.15以上に該当する粒子を除外した。ここで針状比とは粒子の最大長/対角幅の比から算出したパラメータであり、対角幅とは最大長に平行な2本の直線で粒子を挟んだときの2直線の最短距離を表す。
つぎに表面の3次元形状から解析に用いる部分の取り出しを行った。まず上記の方法で認識した粒子輪郭から求められる重心を中心として15.0μmの正方形を描く。描いた正方形の中に21本の平行線を引き、その線分上にあたる粗さ曲線を21本分取り出した。
【0070】
フェライト粒子は略球形状であるため、取り出した粗さ曲線は、バックグラウンドとして一定の曲率を持っている。このため、バックグラウンドの補正として、最適な二次曲線をフィッティングし、粗さ曲線から差し引く補正を行った。この場合、ローパスフィルタを1.5μmの強度で適用し、カットオフ値λを80μmとした。
【0071】
最大山谷深さRzは、粗さ曲線の中で最も高い山の高さと最も深い谷の深さの和として求めた。以上説明した最大高さRzの測定は、JIS B0601(2001年度版)に準拠して行われるものである。最大高さRzの算出には、各パラメータの平均値として、30粒子の平均値を用いることとした。
【0072】
(画像メモリー)
得られたキャリア芯材の表面を樹脂で被覆してキャリアを作製した。具体的には、シリコーン樹脂450重量部と、(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン9重量部とを、溶媒としてのトルエン450重量部に溶解してコート溶液を作製した。このコート溶液を、流動床型コーティング装置を用いてキャリア芯材50000重量部に塗布し、温度300℃の電気炉で加熱してキャリアを得た。以下、全ての実施例、比較例についても同様にしてキャリアを得た。
【0073】
得られたキャリアと平均粒径5.0μm程度のトナーとを、ポットミルを用いて所定時間混合し、二成分系の電子写真現像剤を得た。この場合、キャリアとトナーとをトナーの重量/(トナーおよびキャリアの重量)=5/100となるように調整した。以下、全ての実施例、比較例についても同様にして現像剤を得た。得られた現像剤を、図10に示す構造の現像装置(現像スリーブの周速度Vs:406mm/sec,感光体ドラムの周速度Vp:205mm/sec,感光体ドラム-現像スリーブ間距離:0.3mm)に投入し、感光体ドラムの長手方向にベタ画像部と非画像部とが隣り合い、その後は広い面積の中間調が続く画像を初期と20万枚画像形成後に取得し、現像ローラ2周目の現像ローラ1周目のベタ画像が現像された領域とそうでない領域との画像濃度を反射濃度計(東京電色社製の型番TC-6D)を用いて測定し、その差を求め下記基準で評価した。結果を表2に合わせて示す。
「◎」:0.003未満
「○」:0.003以上0.006未満
「△」:0.006以上0.020未満
「×」:0.020以上
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
表2から明らかなように、本発明で規定する結合粒子の含有割合を満たす実施例1?3,5,6のキャリア芯材を用いた現像剤では、「現像メモリー」の発生は抑制されていた。
【0077】
これに対して、結合粒子の含有割合が4.2個数%以下の比較例1?3のキャリア芯材を用いた現像剤では、「現像メモリー」の発生が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係るキャリア芯材によれば、現像領域へのトナー供給量を増加させることができ、また、磁気ブラシによって感光体表面は傷つけられることもなく有用である。
【符号の説明】
【0079】
3 現像ローラ
5 感光体ドラム
C キャリア
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式(MnO)x(MgO)y(Fe_(2)O_(3))zで表され、x+y+z=100mol%であり、少なくともMnO及び/又はMgOの一部をSrOで0.15mol%?1.0mol%置換したフェライト粒子からなるキャリア芯材であって、
球形粒子が2個?5個の結合した結合粒子の下記方法で測定される含有率が5個数%?20個数%であり、
前記結合粒子以外の通常粒子は球形で、
前記結合粒子は、粒径の最も大きい母粒子と、前記母粒子よりも粒径の小さい1個?4個の子粒子とが結合した粒子であり、
前記子粒子の少なくとも1つの子粒子の粒径は、前記母粒子の粒径の1/2よりも大きい
ことを特徴とするフェライト粒子からなるキャリア芯材。
(結合粒子の含有率測定)
走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM-6510LA)を用いて倍率250倍で撮影した画像より任意の400粒子を選択し、その中で結合粒子の数をカウントし、上記400粒子中に含まれる結合粒子の個数割合を結合粒子の含有率とする。
【請求項2】
体積平均粒径が25μm以上50μm未満である請求項1記載のキャリア芯材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキャリア芯材の表面を樹脂で被覆したことを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【請求項4】
請求項3記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤。
【図面】










 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-07-31 
出願番号 特願2014-214857(P2014-214857)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (G03G)
P 1 651・ 113- YAA (G03G)
P 1 651・ 121- YAA (G03G)
P 1 651・ 536- YAA (G03G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 福田 由紀  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 鉄 豊郎
清水 康司
登録日 2015-04-10 
登録番号 特許第5726360号(P5726360)
権利者 DOWA IPクリエイション株式会社 DOWAエレクトロニクス株式会社
発明の名称 キャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤  
代理人 山田 茂樹  
代理人 山田 茂樹  
代理人 山田 茂樹  

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