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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E05D
管理番号 1332287
異議申立番号 異議2017-700638  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-21 
確定日 2017-09-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第6048862号発明「引戸装置及び引戸構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6048862号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6048862号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成25年2月15日に出願した特願2013-27690号の一部を平成28年8月5日に新たな特許出願としたものであって、平成28年12月2日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人佐伯澄雄(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第6048862号の請求項1ないし5の特許に係る発明(以下「本件特許発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、甲第1号証ないし甲第5号証を提出し、本件特許発明1ないし5は、甲1発明、甲2記載事項、甲3記載事項、甲4記載事項及び甲5記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨(特許異議申立書25頁22?24行)、主張している。
甲第1号証:特開2011-226064号公報
甲第2号証:「ご高齢者の暮らす住空間向け建材 おもいやりシリーズ ドア/収納/手摺/階段/床/壁/天井/造作部材/畳」、
大建工業株式会社、2012年5月、第4刷、
表紙、121頁、122頁、裏表紙
甲第3号証:「建材総合 リビエリアロ インテリア住宅部材」、
パナソニック株式会社、2012年8月、第3版、
表紙、295頁、裏表紙
甲第4号証:特開2007-191928号公報
甲第5号証:特開2007-177413号公報

4 刊行物の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証(主に、段落【0012】、【0013】、【0015】、【0041】参照。)には、「住居等の建物の内壁2に開設された出入り口としての開口5を閉塞または開放する、アウトセット型納めによって納めた片引き式の引戸7であって、
内壁2の天井側入隅部近傍部位に沿って配設したレール装置1によって、壁面2aに沿って案内される引戸7において、
開口5は、床面から天井面近傍部位にまで形成されており、その内周両側面及び内周天面には、開口枠6が設けられ、
開口枠6は、縦本枠6a及縦額縁6bからなる一対の縦枠と、上本枠6c及び上額縁6dからなる上枠とを備えたいわゆるケーシング枠とされ、これら縦枠及び上枠は、それぞれの額縁6b,6dが壁面2aよりも手前側に突出するように設けられており、
当該レール装置1の前方側及び長手方向両端側を覆い隠すカバー部材50を設けており、このカバー部材50は、レール装置1の前方側を覆い隠す幕板51と、レール装置1の長手方向両端側をそれぞれに覆い隠す一対のエンドキャップ52,52とからなり、エンドキャップ52には、幕板51の端部が嵌め込まれる凹溝が設けられており、容易に取り付けが可能となっている、引戸7。」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

(2)甲第2号証
甲第2号証には、121頁「アウトセットタイプ」の横断面図、及び122頁「アウトセットタイプ」の横断面図を参照すると、「壁体の前面よりも前方に突出するように前後に幅広く形成され、この前方に突出するように配置される突出部に、閉鎖状態の引戸扉の戸先側端部を収める凹所を設けている戸先側の縦枠。」(特許異議申立書13頁23?25行。以下「甲2記載事項」という。)が記載されている。

(3)甲第3号証
甲第3号証には、295頁の縦断面図及び横断面部を参照すると、「上レールの前方側及び長手方向両端側を囲うように覆い、戸幅方向に延びる平板状とされた前側の幕板と、この幕板の長手方向両端側に設けられ、かつ後端面が壁体の前面に当接または近接される両側のエンドキャップを備えているカバー。」(特許異議申立書14頁6?10行。以下「甲3記載事項」という。)が記載されている。
なお、申立人は、「エンドキャップ」は「幕板の長手方向両端側に別体的に設けられ」たものと特定しているが、295頁の図面からは、そのような「別体的」であることは読み取ることができず、上記の「甲3記載事項」のとおり認定した。

5 当審の判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、以下の2点で相違している。
相違点1:戸先側縦枠に関し、本件特許発明1は、壁体の前面よりも前方へ突出するように前後に幅広く形成され、この前方に突出するように配置される突出部に、閉鎖状態の引戸パネルの戸先側端部を収める凹所を設けているのに対し、甲1発明は、縦枠の縦額縁6bが壁面2aよりも手前側に突出するものの、縦枠は前後に幅広く形成されるものではなく、かつ、突出する部分に、閉鎖状態の引戸7の戸先側端部を収める凹所を設けていない点。
相違点2:戸先側の端部カバー部に関し、本件特許発明1は、その内側面が戸先側縦枠の突出部の上端部の外面側に当接または近接されるのに対し、甲1発明は、そのような構成を備えていない点。

イ 判断
(ア)相違点1及び2について
上記相違点1及び2について検討すると、壁体の前面よりも前方へ突出するように前後に幅広く形成され、この前方に突出するように配置される突出部に、閉鎖状態の引戸パネルの戸先側端部を収める凹所を設けている戸先側縦枠、つまり相違点1に係る構成は、甲第2号証に記載されており、甲1発明の縦枠(縦本枠6a及び縦額縁6b)を、甲2記載事項の戸先側縦枠に代えることに格別の困難性はない。
しかしながら、当該戸先側縦枠に代えたとしても、甲1発明の戸先側のエンドキャップ52の内面に、戸先側縦枠の突出部の上端部の外側面が当接または近接すること、つまり相違点2に係る構成は、申立人が提示する甲第2号証及び甲第3号証には記載されておらず、自明な事項とも認められない。
また、甲第4号証及び甲第5号証にも記載されていない。
したがって、相違点2に係る構成は、甲1発明、甲2記載事項及び甲3記載事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことではない。

(イ)申立人の主張について
申立人は、「甲第2号証には、『戸先側縦枠は、壁体の前面よりも前方に突出するように前後に幅広く形成されていること』(甲2記載事項1)が記載されている。」(特許異議申立書18頁19?21行)、「甲1発明に、甲2記載事項1を適用することに十分な動機付けはあり、甲2記載事項1の甲1発明への適用に阻害すべき特段の事情や要因は全く見当たらない。そうした結果、当該適用により、『戸先側の端部カバー部を、その内側面が戸先側縦枠の突出部の上端部の外側面に当接または近接される』ようにすることは当業者であれば容易に想到し得るものである。」(特許異議申立書18頁24?28行)と主張している。
しかしながら、「当該適用により、・・・容易に想到し得るものである。」との主張では、戸先側縦枠を適用することによって、どの様な論理によって容易に想到し得たのか、十分に説明されていない。
甲1発明のカバー部材50は、レール装置1の前方側及び長手方向両端部を覆い隠すものであるが、戸先側の縦枠の上端を覆い隠すことが、甲第1号証において示唆されていない。甲第1号証の図面を参照しても、カバー部材50の下端は、戸先側の縦枠の縦額縁6bの上端に若干かかっていることが読み取れる程度であるから、甲1発明の縦枠に代えて甲2記載事項の戸先側縦枠を適用したとしても、戸先側縦枠の突出部の上端は、甲1発明のカバー部材50で囲われるものにはならない。
また、甲第3号証に記載されているように、本件特許発明1のような構成の上レール用のカバーは周知である(特許異議申立書18頁末行?19頁4行)、とも主張するが、周知であることに基づいて上記相違点2が容易想到であることの説明がなされていない。
よって、甲1発明に甲2記載事項を適用し、甲3記載事項を参酌しても、相違点2に係る構成とはならないから、申立人の主張を採用することはできない。

ウ 本件特許発明1のまとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明、甲2記載事項及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1を更に減縮したものであるから、仮に、請求項2ないし4に記載された事項が、申立人が主張するように、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載されているとしても、上記(1)の本件特許発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明及び甲2記載事項ないし甲5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明5について
本件特許発明5と甲1発明を対比すると、上記(1)アで挙げた相違点1及び2と同じ点で相違するもので、特に相違点2については、上記(1)イで説示したとおり、当業者が容易に想到し得たことではないから、本件特許発明5は、甲1発明、甲2記載事項及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)小括
以上のとおり、本件特許発明1ないし5は、当業者が、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものではない。


6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-09-04 
出願番号 特願2016-154122(P2016-154122)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E05D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐々木 崇  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 前川 慎喜
住田 秀弘
登録日 2016-12-02 
登録番号 特許第6048862号(P6048862)
権利者 パナソニックIPマネジメント株式会社
発明の名称 引戸装置及び引戸構造  

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