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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1332292
異議申立番号 異議2017-700317  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-28 
確定日 2017-09-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第5997822号発明「皮膚外用剤、抗糖化剤及びコラゲナーゼ阻害剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5997822号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 主な手続の経緯
特許第5997822号の請求項1に係る特許についての出願は、平成27年10月6日の出願であって、平成28年9月2日にその発明について特許権の設定登録がなされ、同年9月28日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、平成29年3月28日に森博(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、同年6月20日付けで取消理由が通知され、これに対し同年8月29日に意見書が提出されたものである。

第2 本件発明
特許第5997822号の請求項1に係る発明は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
ショウガ科ショウガ属のショウガを麹菌で発酵させた発酵ショウガを有効成分とすることを特徴とする抗糖化剤。」

第3 申立人主張の取消理由
申立人は、次の取消理由を主張する。

本件特許は、特許請求の範囲の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、この請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

第4 合議体が通知した取消理由及びその概要
当合議体が、平成29年6月20日付けで通知した取消理由は、上記申立人主張の取消理由と同旨である。
そしてその概要は、本件発明は「ショウガ科ショウガ属のショウガを麹菌で発酵させた発酵ショウガ」を有効成分とする抗糖化剤であるのに対し、明細書にはその実施例に発酵ショウガとそれ以外のショウガを含む組成物である発酵ショウガが記載されているに過ぎず、本件特許明細書の記載は、本件発明の「発酵ショウガ」が本件発明の課題を解決できるように記載されていないため、本件発明は課題を解決できると認識できる範囲を超えているというものである。

第5 判断
1 特許法第36条第6項第1号
特許法第36条第6項第1号は、特許請求の範囲の記載は「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」という規定に適合するものでなければならないとするものである。その趣旨は、特許制度は発明を公開させることを前提に特許を付与するものであるところ、発明の詳細な説明に記載していない発明を特許請求の範囲に記載すると、公開されていない発明について権利を請求することになるから、これを防止するというものである。
そして、特許請求の範囲に記載した発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるか否かは、単に表現上の整合性のみで足りるのではなく、発明の詳細な説明の記載により当業者がその発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、あるいはその記載や示唆がなくても当業者が出願時の技術常識に照らしてその発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断する必要がある。

2 検討
そこで、上記1を踏まえ、以下検討する。

(1)本件発明の課題
本件特許明細書【0005】、【0008】?【0009】の記載からみて、本件発明の解決しようとする課題は、「ショウガ科植物のもつ抗糖化作用に比べて高い抗糖化作用を有する発酵ショウガを提供すること」であると解される。

(2)「発酵ショウガ」について
本件特許明細書【0017】?【0018】、【0021】?【0025】には、本件発明の「発酵ショウガ」の製法の具体例について、(i)ショウガ科植物を発酵液と混合した後、30?90℃の条件の下、120?500時間といった長時間をかけて熟成を行う方法(長時間製法)、(ii)ショウガ科植物原料を発酵させる発酵工程と、発酵物に対してショウガ科植物原料を添加する添加工程と、ショウガ科植物原料を添加した発酵物を、加圧下、100℃を超える温度で加熱処理する加熱工程とを有する製法(短時間製法)、(iii)原料となるショウガ科植物を発酵させたもの(発酵工程を経たもの)であれば特に制限されるものではない方法(その他の製法)が挙げられている。

(3)実施例の記載
本件特許明細書【0034】?【0043】には、前記2(2)で述べた「(ii)短時間製法」により得られた発酵ショウガの抗糖化作用を確認したことが記載されている。
そして、前記「(ii)短時間製法」による発酵ショウガは、その製造過程で、発酵物に一旦未発酵のショウガ科植物原料を加え、その後、加圧条件下の高い温度で加熱処理を行う方法であるため、得られたものは、発酵ショウガと、発酵前のショウガの乾燥粉末を加圧下、加熱処理したものの両方を含む組成物であるところ、比較例によれば、発酵前のショウガの乾燥粉末であっても抗糖化作用を有することが理解される。
そうすると、実施例の記載からは、直ちに、発酵処理で得られた発酵ショウガが、発酵前のものに比べて高い抗糖化作用を有するものとなることを、当業者が理解できるとはいえない。

(4)乙第1号証の記載
ところで、特許権者が提出した実験報告書(乙第1号証)には、次の記載がある。

「II 試験内容
1. 被験物質
被験物質として、以下の2種の発酵ショウガを用いた。
1)「短時間製法」においてショウガの乾燥粉末を添加しないで得られた発酵ショウガ
2)「長時間製法」によって得られた発酵ショウガ

1)「短時間製法」(ショウガ乾燥粉末の添加なし)
本件特許明細書の段落[0034]に記載の製造工程から、添加工程及び加熱工程を除いた製法にて発酵ショウガを製造した。
具体的には、グルコース及び酵母エキスを含むGE培地(液体培地)に、黒麹菌であるA.awamoriを添加し、28℃にて2日間、液体用の培養タンクで培養した。その後、培養した培地の濃度が3.8%となるようにGE培地で希釈し、ショウガの乾燥粉末(国産ショウガパウダー)を濃度が1%となるように添加した。このショウガの乾燥粉末を添加した培地を、28℃にて6日間、液体用の培養タンクで培養し、ショウガの乾燥粉末を発酵させた(発酵工程)。その後、凍結乾燥によって乾燥させた(乾燥工程)。
2)「長時間製法」
本件特許明細書の段落[0022]記載の製法にて発酵ショウガを製造した。
具体的には、以下の〔1〕?〔3〕の手順で行った。
〔1〕麹(玄米発酵物)80gに水320mLを添加し、懸濁させて発酵液を調製した。浸水のため30分ほど静置した。
〔2〕酵素液の上澄み240mLとり、生姜粉末20gに添加した。40℃にて14日間静置して培養した。
〔3〕その後、凍結乾燥させた。

2. 抗糖化確認試験
本件特許明細書の段落[0036]?[0042]記載の試験方法で抗糖化確認試験を行った。なお、被験物質の最終濃度は、2.5mg/mLとした。

III 試験結果
1. 結果
「短時間製法」及び「長時間製法」に係る被験物質のAGEs生成阻害率(%)を算出した結果を下記表1に示す。
表1より、本件特許明細書に記載の「短時間製法」においてショウガの乾燥粉末を添加しないで得られた発酵ショウガ、及び本件特許明細書に記載の「長時間製法」によって得られた発酵ショウガは、いずれも、発酵前のショウガの乾燥粉末に比べて高いAGEs生成阻害率を示し、高い抗糖化作用を有することが確認された。


(2頁下から10行?3頁最終行)

そして、本件特許明細書には、上記2(2)のとおり、「(i)長時間製法」や「(iii)その他の製法」のものであっても、発酵ショウガであれば、本件発明の課題を解決できると記載されているところ、乙第1号証によれば、上記2(2)の「(i)長時間製法」、(ii)短時間製法であって発酵前のショウガの乾燥粉末を添加する工程及びその後の加圧下、加熱処理する工程を含まない、すなわち発酵処理のみを行ったものである「(iii)その他の製法」に相当する製法、それぞれの方法で得られた「発酵ショウガ」のいずれもが、実施例で示された「(ii)短時間製法」のものと同様に、発酵前のものに比べて高い抗糖化作用を有するものであることが示されている。

(5)まとめ
そうすると、本件発明の「ショウガ科ショウガ属のショウガを麹菌で発酵させた発酵ショウガ」は、本件特許明細書に記載されるとおり、上記2(2)の(i)?(iii)のいずれの方法であっても、発酵工程を経たものであれば本件発明の課題を解決し得ることが理解できるものといえるから、本件発明が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないということはできない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人の主張する取消理由によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-09-14 
出願番号 特願2015-198955(P2015-198955)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 駒木 亮一森井 隆信  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 関 美祝
長谷川 茜
登録日 2016-09-02 
登録番号 特許第5997822号(P5997822)
権利者 株式会社東洋新薬
発明の名称 皮膚外用剤、抗糖化剤及びコラゲナーゼ阻害剤  
代理人 ▲高▼津 一也  
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