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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B65G
管理番号 1332293
判定請求番号 判定2017-600016  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2017-10-27 
種別 判定 
判定請求日 2017-04-04 
確定日 2017-08-31 
事件の表示 上記当事者間の特許第4797025号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す搬送物の位置決め装置は、特許第4797025号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に示す搬送物の位置決め装置(以下、「イ号物件」という)は、特許第4797025号(以下、「本件特許」という。)の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものと認める(当審注:判定請求書の請求の趣旨の欄には、「イ号図面並びにその説明書に示す搬送物の位置決め装置は、特許第4797025号発明の技術的範囲に属する、との判定を求める。」と記載されているところ、「第4797025号発明」は、請求の理由における本件特許発明の説明等の記載からみて、特許第4797025号の請求項1に係る発明」の趣旨であると判断し、上記のとおり認定した。)。

第2 手続の経緯
本件特許発明に係る出願(以下、「本件出願」ともいう。)は、平成17年12月13日の出願であって、平成23年8月5日に特許権の設定登録がされたものである。
その後、平成29年4月4日に本件判定が請求され、平成29年5月15日付けで被請求人に判定請求書副本を送達し、期間を指定して答弁書を提出する機会を与え、平成29年6月19日に被請求人から答弁書が提出されたものである。

第3 本件特許発明
1 本件特許発明
本件特許発明は、これに係る出願の特許権設定登録時の願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、これを符号を付して構成要件に分説すると、次のとおりである。
「A 平面を有する下ブロック、
B 前記下ブロックの前記平面上でスライド可能に形成される中間体、
C 前記下ブロックの前記平面と平行な向きにおいて前記中間体に対してスライド可能に形成される上ブロック、
D 前記下ブロックと前記中間体とを所定の位置関係に保持するための第1のバネ部材、
E 前記中間体と前記上ブロックとを所定の位置関係に保持するための第2のバネ部材、および
F 前記中間体から前記下ブロック側および前記上ブロック側に延びるように形成される軸部材を含み、
G 前記下ブロック内および前記上ブロック内には、前記中間体の動きにともなって動く前記軸部材の可動範囲を規制する可動空間が形成される、
H 搬送物の位置決め装置。」(以下、分説した構成要件を「構成要件A」等という。)

2 本件特許明細書及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の記載
本件特許明細書等の発明の詳細な説明には、本件特許発明が解決しようとする課題及び作用効果について、次の記載がある。なお、下線部は当審において付与した。

「【0007】
・・・天板に載置された搬送物の最大移動間隔だけ、ケーシング内部において上板や軸部が移動できる空間が必要である。たとえば、搬送物を前後左右に最大15mm位置調整可能にしようとすれば、ケーシング内部で上板や軸部が15mm移動できる空間が必要となる。・・・
【0008】
このように、ケーシング内部に大きな空間が必要であるために、ケーシングが大型化し、位置決め装置自体の大型化につながる。・・・
【0009】
それゆえに、この発明の主たる目的は、小型で、載置された搬送物の位置の調整範囲が大きい搬送物の位置決め装置を提供することである。」(段落【0007】ないし【0009】)

「【0011】
搬送物の位置決め装置を下ブロックと中間体と上ブロックとで構成し、下ブロックと中間体とがスライド可能に形成され、中間体と上ブロックとがスライド可能に形成されることにより、下ブロックと中間体との間の変位量と中間体と上ブロックとの間の変位量の合計が、下ブロックと上ブロックとの間の変位量となる。そのため、下ブロックと中間体相互間および中間体と上ブロック相互間は、それぞれ、位置決め装置全体としての変位量の半分の変位量が確保される構造であればよく、各部の大きさを小さくすることができる。また、従来の位置決め装置と同じ大きさであれば、2倍の変位量を得ることができる。なお下ブロックと中間体との間に第1のバネ部材が設けられ、中間体と上ブロックとの間に第2のバネ部材が設けられることにより、通常時においては、各部を所定の位置に保つことができる。
このような構成とするために、ボールと、このボールを保持する保持孔が形成されたリテーナとで中間体を構成することにより、下ブロックと中間体とがスライド可能に形成され、かつ中間体と上ブロックとがスライド可能に形成される。
また、中間体から延びる軸部材の動きが、下ブロックおよび上ブロックの可動空間内に規制されることにより、下ブロックと中間体との変位量および中間体と上ブロックとの変位量が決定される。
さらに、下ブロックと中間体の間の変位量および中間体と上ブロックの間の変位量が小さいため、第1のバネ部材および第2のバネ部材は、小さい変位量に対応できればよい。このようなバネ部材として円錐状に巻回されたコイルバネを用いることができるが、小さい変位量に対応できればよいため、小さいコイルバネを用いることができる。
また、軸部材の端部にフランジ部を形成し、下ブロックに形成されたピストン部材をフランジ部に押し付けることができる構成とすることにより、中間体の動きがロックされ、上ブロックもロックされる。したがって、上ブロックに載置された搬送物を一定の位置に固定することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、下ブロックと中間体との間の変位量および中間体と上ブロックとの間の変位量が小さくても、位置決め装置全体として大きい変位量を得ることができる。・・・各部の間の変位量が小さいため、従来の位置決め装置と同様の変位量を確保するのであれば、下ブロック、中間体、上ブロックを小さくすることができ、位置決め装置全体を小さくすることができる。したがって、ステンレス鋼やアルミニウムなどの高価な材料を使用する場合、低価格で位置決め装置を作製することができる。逆に、従来の位置決め装置と同程度の大きさとするならば、従来のものより大きい変位量を有する位置決め装置を得ることができる。」(段落【0011】及び【0012】)

「【0027】
軸片104のフランジ部104aは、ロックピストン50の突出し部56の下部において、取付フランジ14の凹部16部分に配置される。そして、フランジ部104aの外径は、ロックピストン50の突出し部56の内径より大きく形成される。それにより、軸部100が下ブロック12から抜けないようになっている。さらに、フランジ部104aの外径は、凹部16の内径より小さく形成される。また、軸片104の外径は、ロックシリンダ30の貫通孔34の直径およびロックピストン50の貫通孔52の直径より小さく形成される。それにより、軸片104およびフランジ部104aが移動できる可動空間108が形成され、この可動空間108における軸部100(軸片104およびフランジ部104a)の可動範囲内で、リテーナ82がボール当て板70上をスライドするように移動することができる。」(段落【0027】

「【0033】
ここで、軸片102のフランジ部102aは、天板受台122の凹部124部分に配置される。そして、フランジ部102aの外径は、天板受台122の突出し部134bの内径より大きく形成される。それにより、軸部100が上ブロック120から抜けないようになっている。さらに、フランジ部102aの外径は、凹部124の内径より小さく形成される。また、軸片102の外径は、天板受台122の貫通孔126の直径より小さく形成される。それにより、軸片102およびフランジ部102aが移動できる可動空間170が形成され、この可動空間170における軸部100(軸片102およびフランジ部102a)の可動範囲内で、天板受台122がリテーナ82に対してスライドするように移動することができる。つまり、天板受台122は、ロックシリンダ30の平面部40に取り付けられたボール当て板70の平面と平行な向きにスライドすることができる。」(段落【0033】)

「【0035】
このように、この位置決め装置10では、ロックシリンダ30などからなる下ブロック12と、リテーナ82などからなる中間体80との間でスライドするように変位し、中間体80と天板受台122などからなる上ブロック120との間でスライドするように変位するため、これらの変位量の合計が、位置決め装置10全体で得られる変位量となる。そのため、たとえば天板150の基本位置から15mmの範囲内で位置調整を行なう場合、下ブロック12内の可動空間108内および上ブロック120内の可動空間170内における軸部100の移動範囲は、それぞれ基本位置である中心部から7.5mmであればよい。
【0036】
このように、下ブロック12内の可動空間108および上ブロック120内の可動空間170の範囲は、位置決め装置10の最大調整範囲の半分であればよいため、最大調整範囲で可動空間を確保しなければならない従来の位置決め装置に比べて、下ブロック12、中間体80および上ブロック120を小型化することができる。さらに、第1のバネ部材110および第2のバネ部材140も、最大調整範囲の半分の変位に対応して軸部100を保持すればよいため、これらのバネ部材110,140も小型化することができる。」(段落【0035】及び【0036】)

3 上記2の各記載から、次のことが分かる。
(1)本件特許発明が解決しようとする課題
上記段落【0007】ないし【0009】、【0035】及び【0036】の記載から、本件特許発明が解決しようとする課題は、最大調整範囲で可動空間を確保しなければならない従来の位置決め装置に対する小型化であることが分かる。

(2)本件特許発明の作用効果
上記段落【0011】、【0012】、【0033】、【0035】及び【0036】の記載から、本件特許発明は、「下ブロック内及び上ブロック内には、前記中間体の動きにともなって動く前記軸部材の可動範囲を規制する可動空間が形成される」ことにより、下ブロックと中間体とが互いにスライドするように変位し、中間体と上ブロックとが互いにスライドするように変位するため、これらの変位量の合計が、位置決め装置全体で得られる変位量となり、下ブロックと中間体との間の変位量および中間体と上ブロックとの間の変位量が小さくても、位置決め装置全体として大きい変位量を得ることができ、下ブロック内の可動空間および上ブロック内の可動空間の範囲は、位置決め装置10の最大調整範囲の半分であればよいため、最大調整範囲で可動空間を確保しなければならない従来の位置決め装置に比べて、下ブロック、中間体および上ブロックを小型化することができるとの効果を奏することが分かる。

第4 イ号物件
1 判定請求書、イ号図面及びイ号説明書におけるイ号物件の説明
判定請求書の「6.請求の理由」には、イ号物件の説明として、次の記載がある(なお、以下、判定請求書、イ号図面及びイ号説明書において用いられている記号及び文字は全角で統一し、空白は適宜詰めて摘記する。)。

(1)「(A)平面を有する下ブロック12、
(B)前記下ブロックの前記平面上でスライド可能に形成される中間体80を構成する、ベアリング保持器すなわちリテーナ(ベアリング保持器)82及びリング部材94、
(C)前記下ブロックの前記平面と平行な向きにおいて前記中間体80に対してスライド可能に形成される上ブロック120、
(D)前記下ブロックと前記中間体とを所定の位置関係に保持するための第1のバネ部材110を構成する、第1のセンター復帰用スプリング、
(E)前記中間体80と前記上ブロック120とを所定の位置関係に保持するための第2のバネ部材140を構成する、第2のセンター復帰用スプリング、および
(F)前記中間体80から前記下ブロック側および前記上ブロック側に延びるように形成される軸部材100を構成する、センターシャフトを含み、
(G)前記下ブロック12内および前記上ブロック120内には、前記中間体80の動きにともなって動く前記軸部材(センターシャフト)100の可動範囲を規制する、可動空間が形成される、
(H)搬送物の位置決め装置」(判定請求書第3ページ22行ないし第4ページ8行)

また、判定請求書に添付したイ号図面及び説明書には、次の記載がある。

(2)「【0008】
軸部材(センターシャフト)100は、軸片102のフランジ部102aが、天板受台部122aの凹部124部分に配置される。そして、フランジ部102aの外径は、天板受台部122aの突き出し部122bの内径より小さく形成される。
さらに、フランジ部102aの外径は、凹部124の内径より小さく形成される。
それにより、軸部材(センターシャフト)100が上ブロック120から抜けないようになっている。
軸片102の外径は、天板受台部122aの孔126の直径より小さく形成される。
それにより、軸片102およびフランジ部102aが移動できる可動空間170が形成され、この可動空間170における軸部材(センターシャフト)100(軸片102およびフランジ部102a)の可動範囲内で、天板受台部122aがリテーナ(ベアリング保持器)82に対してスライドするように移動することができる。つまり、天板受台部122aは、ロックシリンダ(ボディ)30の平面部40に取り付けられたボール当て板70の平面と平行な向きにスライドすることができる。

【0009】
軸部材(センターシャフト)100は、軸片104のフランジ部104aが、ロック用ピストン50の突出し部56の下部において、下ブロック12のロックシリンダ(ボディ)30の凹部16部分に配置されている。
そして、フランジ部104aの外径は、ロック用ピストン50の突出し部56の内径より大きく形成される。それにより、軸部材(センターシャフト)100が下ブロック12から抜けないようになっている。さらに、フランジ部104aの外径は、凹部16の内径より小さく形成される。また、軸片104の外径は、ロック用ピストン50の貫通孔34の直径より小さく形成される。それにより、軸片104及びフランジ部104aが移動できる可動空間108が形成され、この可動空間108における軸部材(センターシャフト)100(軸片104及びフランジ部104a)の可動範囲内で、リテーナ(ベアリング保持器)82がボール当て板70をスライドするように移動することができる。

【0010】
ボール当て板70の外方における天板受台部122aの突出し部122aとリテーナ(ベアリング保持器)82の内側の外周縁との間に、可動空間170aが形成されている。
該可動空間170aは、下ブロック12内及び上ブロック120内において、中間体であるリテーナ(ベアリング保持器)82の動きにともなって動く軸部材(センターシャフト)100(センターシャフト)の可動範囲を規制する空間である。

【0011】
リテーナ(ベアリング保持器)82の保持孔88の外側の外径は、上ブロック120の突き出し部122bの内径より小さく形成されている。
それにより、上ブロック120の移動空間並びにリテーナ(ベアリング保持器)82及び軸部材(センターシャフト)100の可動空間が形成され、リテーナ(ベアリング保持器)82が、この可動空間における軸部材(センターシャフト)100の可動範囲内で、ボール当て板70上をスライドするように移動する。

【0012】
リテーナ(ベアリング保持器)82は、ボール(ベアリング)90の保持孔88の外方において、下方に向けて突き出された突き出し部82aが形成されている。
リテーナ(ベアリング保持器)82の保持孔88の外側と突き出し部82aとの間に可動空間170bが形成されている。
該可動空間170bは、下ブロック内及び上ブロック内において、中間体であるリテーナ(ベアリング保持器)82の動きにともなって動く軸部材120(センターシャフト)の可動範囲を規制する可動空間である。

【0013】
中間体は、リテーナ(ベアリング保持器)82と、リング部材94とを含み、リテーナ(ベアリング保持器)82の最外端に形成された突き出し部82aは、スライド方向に移動したとき、リング部材94の最内端に形成された突き出し部94aに係止される。
リング部材94の最外端に形成された突き出し部94bは、ボール当て板70の最外端に係止される。

【0014】
中間体80を構成するリテーナ(ベアリング保持器)82の外方における突き出し部82aとリング部材94との間に、可動空間170bが形成されている。
すなわち、中間体80を構成するリング部材94とリテーナ(ベアリング保持器)82の突き出し部82aとの間に、軸部材(センターシャフト)100及びフランジ部104aが移動できる可動空間170bが形成されている。
中間体80を構成するリング部材94の突き出し部94bとボール当て板70の外周縁との間に、可動空間170cが形成されている。

【0015】
リング部材94は、リテーナ(ベアリング保持器)82の下方において、ボール当て板70との間にて中間体であるリテーナ(ベアリング保持器)82の動きにともなって動く軸部材110(センターシャフト)の可動範囲を規制するように配設されている。
前記可動空間170b及び170cは、下ブロック内及び上ブロック内において、中間体80であるリテーナ(ベアリング保持器)82の動きにともなって動く軸部材(センターシャフト)100の可動範囲を規制する空間である。」(イ号説明書第2ページ行下2行ないし第5ページ1行)

2 答弁書における被請求人の答弁
イ号物件について、被請求人は、平成29年6月19日に提出した答弁書(以下、単に「答弁書」という。)の「(2)イ号物品について」において、次のとおり述べている。

(1)「イ号物品が基本的にはイ号図面1およびイ号図面2に示されるとおりのものであることを前提として、以下、意見を述べる。ただし、イ号図面1において、「可動空間170a」「可動空間170b」および「可動空間170c」としてそれぞれ引出し線で示される部分(隙間)を、本件特許の請求項1に記載された「可動空間」に相当する部分であるかの如く、これと同じ名称で呼ぶことは不適当と考えるので、これらの部分に言及することが必要な場合は、それぞれ「隙間170a」「隙間170b」および「隙間170c」と呼ぶこととする。
また、イ号図面2は「可動状態」として示されているものであるが、この図面は、中間体80が下ブロック12に対して最大限スライドし、かつ、上ブロック120が中間体80に対して最大限スライドした状態を示すものである。」(答弁書第7ページ4ないし13行)

(2)「i)ロックシリンダ30とリテーナ82との間に、ボール当て板70と平行にスライド可能な環状のリング部材94が配設される。リング部材94は、外周側の下方突き出し部94bの内周において、下ブロック12側のボール当て板70の外周に当接可能であり、また、内周側の上方突き出し部94aの内周において、リテーナ82に当接可能である。リング部材94の突き出し部94aとリテーナ82の突き出し部82aとの間には弾性部材が介設されている。
ii)中間体80は、ボール90が下ブロック12側のボール当て板70の面を転動することにより水平方向にスライドする。このとき、ロック用ピストン50の内周面と軸部材100の軸片104との間に介設された第1のバネ部材110が圧縮変形する。下ブロック12に対する中間体80のスライドは、リテーナ82がリング部材94の突き出し部94aに当接し、かつ、その反対側においてリング部材94の突き出し部94bが下ブロック12側のボール当て板70に当接することにより規制される。
iii)上ブロック120は、上ブロック120側のボール当て板70がボール90を転動させながら、水平方向にスライドする。このとき、上ブロック120と軸部材100の軸片102とが相対変位すると、天板受台部122aと軸片102との間に介設された第2のバネ部材140が圧縮変形する。中間体80に対する上ブロック120のスライドは、天板受台部122aの突き出し部122bがリテーナ82に当接することにより規制される。
iv)中間体80が最大限スライドしたとき、軸部材100の軸片104は、下ブロック12側のボール当て板70と対向する箇所およびロック用ピストン50と対向する箇所において下ブロック12に水平方向に近接するが、下ブロック12に当接はしない。
v)中間体80および上ブロック120が最大限スライドしたとき、軸部材100の軸片102は、上ブロック側のボール当て板70と対向する箇所において上ブロック120に水平方向に近接するが、上ブロック120に当接はしない。
上記のとおり、イ号物品では、中間体80が下ブロック12に対して水平方向に最大限スライドし、かつ、上ブロック120が中間体80に対して最大限スライドしても、軸部材100は下ブロック12を構成する部材および上ブロック120を構成する部材のいずれにも当接しない。換言すれば、軸部材100は、下ブロック12を構成する部材との水平方向の隙間がゼロになるまで下ブロック12に対して移動できるものではないし、上ブロック120を構成する部材との水平方向の隙間がゼロになるまで上ブロック120に対して相対移動できるものでもない。
イ号物品では、下ブロック12に対する中間体80のスライドは、リテーナ82がリング部材94の突き出し部94aに当接し、かつ、その反対側においてリング部材94の突き出し部94bが下ブロック12側のボール当て板70に当接することによって規制されるのであり、中間体80に対する上ブロック120のスライドは、天板受台部122aの突き出し部122bがリテーナ82に当接することによって規制されるのである。」(答弁書第7ページ17行ないし第8ページ27行)

3 当審におけるイ号物件の認定
(1) 判定請求書に添付されたイ号図面(以下、イ号図面のうち、「中立(センタリング)状態」として示された図面を「イ号図面1」といい、「可動状態」として示された図面を「イ号図面2」という。)、イ号説明書及びイ号物品のパンフレットから分かること

判定請求書に添付されたイ号図面1及び2、イ号説明書、及びイ号物品のパンフレットから、次のことが分かる。

ア イ号物品のパンフレットから、イ号物件は、搬送物の位置決めを行う装置であることが分かる。
イ イ号図面1から、イ号物件は、ロックシリンダ(ボディ)30、突き出し部56が形成されたロック用ピストン50、ボール当て板70(下側)及びボール当て板70(下側)に形成されたボール当て板上面を有する下ブロック12を備えることが分かる。
ウ イ号図面1から、イ号物件は、下ブロック12のボール当て板上面上でスライド可能に形成される、突き出し部82aを備えたリテーナ82、ボール当て板(下側)70のボール当て板上面及びボール当て板(上側)70のボール当て板下面間を転がるボール90、並びに突き出し部94a及び突き出し部94bを有するリング部材94からなる中間体80を備えることが分かる。
エ イ号図面1から、イ号物件は、天板受台部122a、突き出し部122b、ボール当て板70(上側)及びボール当て板70(上側)に形成されたボール当て板下面を有し、下ブロック12のボール当て板上面と平行な向きにおいて中間体80に対してスライド可能に形成される上ブロック120を備えることが分かる。
オ イ号図面1から、イ号物件は、中間体80から下ブロック側及び上ブロック側に延びる軸部材100(センターシャフト)を備えることが分かる。
カ イ号図面1から、イ号物件は、下ブロック12及び軸部材100の間に第1のバネ部材110を備えることが分かる。
キ イ号図面1から、イ号物件は、上ブロック120及び軸部材100の間に第2のバネ部材140を備えることが分かる。
ク イ号物品のパンフレットの第3ページの「テーブルに横方向の力が加わると、ベアリングがスライドします。その際、センター復帰用スプリングも伸縮します。」及び「横方向の力が解除されると、センター復帰スプリングにより、センターシャフトが中立位置に復帰します」との記載から、イ号物件の第1のバネ部材110及び第2のバネ部材140(イ号物品のパンフレットにおける「センター復帰スプリング」)は、下ブロック12及び上ブロック120と中間体80とを所定の関係に保持する機能を備えていることが分かる。
ケ イ号図面1から、イ号物件は、下ブロック12内に、中間体80の動きにともなって動く軸部材100のフランジ部104aが移動する可動空間108が形成され、上ブロック120内に、中間体80の動きにともなって動く軸部材100のフランジ部102aが移動する可動空間170が形成されることが分かる。
コ イ号図面1から、イ号物件は、上ブロック120の天板受台部122aの突き出し部122bとリテーナ82との間に可動空間170aが形成され、リング部材94の突き出し部94aとリテーナ82との間に可動空間170bが形成され、下ブロック12のボール当て板70(下側)外側面とリング部材94の突き出し部94bとの間に可動空間170cが形成されることが分かる。
そして、イ号図面2から、イ号物件は、下ブロック12に対して軸部材100が最大限スライドし、かつ軸部材100に対して上ブロック120が最大限スライドした状態において、リテーナ82と天板受台部122aの突き出し部122bとが当接し、リング部材94の突き出し部94aとリテーナ82とが当接し、リング部材94の突き出し部94bとボール当て板70(下側)外側面とが当接する一方、軸部材100のフランジ部104aと下ブロック12の間、ロック用ピストン50の突き出し部56と軸部材100との間、ボール当て板70(上側及び下側)と軸部材100との間、及び軸部材100のフランジ部102aと上ブロック120の間には、間隙が存在して当接しないことが分かる。

(2) イ号物件
上記(1)から、当審では、イ号物件は、次のとおり認定できる。
「a ロックシリンダ(ボディ)30、突き出し部56が形成されたロック用ピストン50、ボール当て板70(下側)及びボール当て板70(下側)に形成されたボール当て板上面を有する下ブロック12、
b リテーナ82、ボール90及びリング部材94からなり、前記下ブロック12の前記ボール当て板上面上でスライド可能に形成される中間体80、
c 天板受台部122a、突き出し部122b、ボール当て板70(上側)及びボール当て板70(上側)に形成されたボール当て板下面を有し、下ブロック12の前記ボール当て板上面と平行な向きにおいて中間体80に対してスライド可能に形成される上ブロック120、
d 第1のセンター復帰スプリングからなり、前記下ブロック12と中間体80とを所定の位置関係に保持するための第1のバネ部材110、
e 第2のセンター復帰スプリングからなり、前記中間体80と前記上ブロック120とを所定の位置関係に保持するための第2のバネ部材140、及び
f センターシャフトからなり、前記中間体80から前記下ブロック12側および前記上ブロック120側に延びるように形成される軸部材100を含み、
g 下ブロック12内及び上ブロック120内には、前記中間体80の動きにともなって動く前記軸部材100が移動する可動空間108及び可動空間170が形成され、
上ブロック120の天板受台部122aの突き出し部122bとリテーナ82との間に可動空間170aが形成され、リング部材94の突き出し部94aとリテーナ82との間に可動空間170bが形成され、下ブロック12のボール当て板70(下側)外側面とリング部材94の突き出し部94bとの間に可動空間170cが形成され、
下ブロック12に対して軸部材100が最大限スライドし、かつ軸部材100に対して上ブロック120が最大限スライドした状態において、リテーナ82と天板受台部122aの突き出し部122bとが当接し、リング部材94の突き出し部94aとリテーナ82とが当接し、リング部材94の突き出し部94bとボール当て板70(下側)外側面とが当接する一方、軸部材100のフランジ部104aと下ブロック12の間、ロック用ピストン50の突き出し部56と軸部材100との間、ボール当て板70(上側及び下側)と軸部材100との間、及び軸部材100のフランジ部102aと上ブロック120の間には、間隙が存在して当接しない、
h 搬送物の位置決め装置。」

第5 判断
1 構成要件の充足性について
(1) 構成要件Aについて
イ号物件における下ブロック12のボール当て板70(下側)のボール当て板上面は、中間体80のボール90と接触し、ボール90が転がる平面となるものであるから、イ号物件における構成aは、本件特許発明における構成要件Aを充足する。

(2) 構成要件Bについて
イ号物件の中間体80のボール90は、下ブロック12のボール当て板上面と接触し、ボール90が下ブロック12のボール当て板上面を転がることで、中間体80はボール当て板上面上をスライド可能に形成されているから、イ号物件における構成bは、本件特許発明における構成要件Bを充足する。

(3) 構成要件Cについて
イ号物件の上ブロック120のボール当て板70(上側)のボール当て板下面は、中間体80のボール90と接触しており、ボール90が上ブロック120のボール当て板下面を転がることで、上ブロック120は、中間体80に対して、下ブロック12のボール当て板70上面と平行な向きにスライド可能に形成されているから、イ号物件における構成cは、本件特許発明における構成要件Cを充足する。

(4) 構成要件Dについて
イ号物件の第1のセンター復帰スプリングからなる第1のバネ部材110は、下ブロック12と中間体80とを所定の位置関係に保持するものであるから、イ号物件の構成dは、本件特許発明の構成要件Dを充足する。

(5) 構成要件Eについて
イ号物件の第2のセンター復帰スプリングからなる第2のバネ部材140は、軸部材100と上ブロック120とを所定の位置関係に保持し、それにともない、中間体80と上ブロック120とを所定の位置関係に保持するものであるから、イ号物件の構成eは、本件特許発明の構成要件Eを充足する。

(6) 構成要件Fについて
イ号物件の軸部材100は、中間体80から下ブロック12側及び上ブロック120側に延びるように形成されているものであるから、イ号物件における構成fは、本件特許発明における構成要件Fを充足する。

(7) 構成要件Gについて
ア 構成要件Gにおける「前記下ブロック内および前記上ブロック内」に形成される、「前記中間体の動きにともなって動く前記軸部材の可動範囲を規制する可動空間」の意義について
本件特許明細書等の段落【0011】に「搬送物の位置決め装置を下ブロックと中間体と上ブロックとで構成し、下ブロックと中間体とがスライド可能に形成され、中間体と上ブロックとがスライド可能に形成されることにより、下ブロックと中間体との間の変位量と中間体と上ブロックとの間の変位量の合計が、下ブロックと上ブロックとの間の変位量となる。・・・(後略)・・・」と記載されるように、本件特許発明は、下ブロックと中間体、中間体と上ブロックがそれぞれスライド可能に形成され、下ブロックと中間体との間の変位量と中間体と上ブロックとの間の変位量の合計を、下ブロックと上ブロックとの変位量とするものである。
してみると、本件特許発明の「前記中間体の動きにともなって動く前記軸部材の可動範囲を規制する可動空間」とは、下ブロックに対してスライドする軸部材の可動範囲を規制するとともに、軸部材に対してスライドする上ブロックの可動範囲を規制する空間であると解される。

イ 構成要件Gの充足性
上記アを踏まえて、構成要件Gの充足性について検討する。
(ア) イ号物件の可動空間108は、下ブロック12内に形成され、中間体80の動きにともなって動く軸部材100の可動空間である。
しかし、下ブロック12に対して軸部材100が最大限スライドし、かつ、軸部材100に対して上ブロック120が最大限スライドした状態において、下ブロック12と軸部材100のフランジ部104aとは当接しない。
そうすると、イ号物件の可動空間108は、中間体80の動きにともなって動く軸部材100の可動範囲を規制する可動空間であるとはいえない。
(イ) イ号物件の可動空間170は、上ブロック120内に形成され、中間体の動きにともなって動く軸部材100の可動空間である。
しかし、下ブロック12に対して軸部材100が最大限スライドし、かつ、軸部材100に対して上ブロック120が最大限スライドした状態において、軸部材100のフランジ部102aと上ブロック120とは当接しない。
そうすると、イ号物件の可動空間170は、中間体80の動きにともなって動く軸部材100の可動範囲を規制する可動空間であるとはいえない。
(ウ) イ号物件のロック用ピストン50の突き出し部56と軸部材100との間及び下ブロック12のボール当て板70(下側)と軸部材100との間は、いずれも下ブロック内に形成され、中間体80の動きにともなって動く軸部材100が移動する空間である。
しかし、下ブロック12に対して軸部材100が最大限スライドし、かつ、軸部材100に対して上ブロック120が最大限スライドした状態において、ロック用ピストン50の突き出し部56と軸部材100とは当接せず、下ブロック12のボール当て板70(下側)と軸部材100とは当接しない。
そうすると、イ号物件の上記各空間は、中間体80の動きにともなって動く軸部材100の可動範囲を規制する可動空間であるとはいえない。
(エ) 軸部材100と上ブロック120のボール当て板70(上側)との間は、上ブロック内に形成され、中間体80の動きにともなって動く軸部材100が移動する空間である。
しかし、下ブロック12に対して軸部材100が最大限スライドし、かつ、軸部材100に対して上ブロック120が最大限スライドした状態において、上ブロック120のボール当て板70(上側)と軸部材100とは当接しない。
そうすると、イ号物件の上記各空間は、中間体80の動きにともなって動く軸部材100の可動範囲を規制する可動空間であるとはいえない。
(オ) ところで、イ号説明書の段落【0012】において、「リテーナ(ベアリング保持器)82の保持孔88の外側と突き出し部82aとの間に可動空間170bが形成されている。該可動空間170bは、下ブロック内及び上ブロック内において、中間体であるリテーナ(ベアリング保持器)82の動きにともなって動く軸部材120(センターシャフト)の可動範囲を規制する可動空間である。」と、段落【0014】において、「中間体80を構成するリテーナ(ベアリング保持器)82の外方における突き出し部82aとリング部材94との間に、可動空間170bが形成されている。すなわち、中間体80を構成するリング部材94とリテーナ(ベアリング保持器)82の突き出し部82aとの間に、軸部材(センターシャフト)100及びフランジ部104aが移動できる可動空間170bが形成されている。中間体80を構成するリング部材94の突き出し部94bとボール当て板70の外周縁との間に、可動空間170cが形成されている。」と、段落【0015】において、「前記可動空間170b及び170cは、下ブロック内及び上ブロック内において、中間体80であるリテーナ(ベアリング保持器)82の動きにともなって動く軸部材(センターシャフト)100の可動範囲を規制する空間である。」と記載されている。
そこで検討するに、イ号物件においては、下ブロック12に対して軸部材100が最大限スライドし、かつ軸部材100に対して上ブロック120が最大限スライドした状態において、リング部材94の突き出し部94bとボール当て板70(下側)外側面とが当接し、リング部材94の突き出し部94aとリテーナ82とが当接し、リテーナ82と天板受台部122aの突き出し部122bとが当接することで、スライドの最大限を定めているのであって、ここでの可動空間170a、170b及び170cは、最大限スライドする範囲を規制するための一体的な必須の構成をなすものである。
そして、この可動空間170bは、中間体80のリング部材94の突き出し部94aとリテーナ82との間に形成される空間であり、可動空間170cは、下ブロックのボール当て板70(下側)外側面より外の空間であって、いずれも上ブロック内及び下ブロック内に形成される空間に該当するものではない。
(カ) 上記(ア)ないし(オ)によれば、イ号物件は、「下ブロック内」に形成される「中間体の動きにともなって動く軸部材の可動範囲を規制する可動空間」を有するものということはできない。
(キ) 以上のとおりであるから、イ号物件の構成gは、本件特許発明の構成要件Gを充足しない。

(8) 構成要件Hについて
イ号物件は、搬送物の位置決めを行う装置であるから、イ号物件の構成hは、本件特許発明の構成要件Hを充足する。

2 まとめ
上記1のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Gを充足しない。

第6 むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Gを充足しないから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2017-08-21 
出願番号 特願2007-550036(P2007-550036)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 基樹  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 金澤 俊郎
三島木 英宏
登録日 2011-08-05 
登録番号 特許第4797025号(P4797025)
発明の名称 搬送物の位置決め装置  
代理人 坂井 志郎  
代理人 宮寺 利幸  
代理人 山野 明  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 関口 亨祐  
代理人 千馬 隆之  
代理人 扇谷 一  
代理人 仲宗根 康晴  
代理人 大内 秀治  
代理人 岡田 全啓  
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