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審決分類 審判 全部無効 1項2号公然実施  G01K
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  G01K
審判 全部無効 2項進歩性  G01K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01K
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01K
管理番号 1332434
審判番号 無効2016-800084  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-07-20 
確定日 2017-08-02 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5216947号発明「極低温用測温抵抗体素子」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5216947号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5216947号(以下、「本件特許」という。)は、2012年(平成24年)10月19日(以下、「出願日」という。)に出願(特願2013-500261号)され、平成25年3月8日にその特許権の設定の登録(発明の名称:「極低温用測温抵抗体素子」、請求項の数:6)がなされたものである。
本件特許について、請求人から、平成28年7月20日付け審判請求書により、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めることを請求の趣旨とする審判(無効2016-800084号、以下、「本件無効審判」という。)が請求されたところ、被請求人から、同年10月11日付け訂正請求書により、訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされるとともに、同日付けで、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めることを答弁の趣旨とする答弁書が提出された。
その後、平成29年1月19日付けで請求人及び被請求人双方から口頭審理陳述要領書が提出され、同年2月9日付けで被請求人から上申書が提出され、同年同月16日に口頭審理が行われた。
その後、同年同月23日付けで請求人から、同年3月9日付けで被請求人から、それぞれ上申書が提出された。

第2 本件訂正請求による訂正の適否
1 本件訂正請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)及び特許請求の範囲(以下、「本件特許請求の範囲」という。)を、訂正請求書に添付した訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)及び訂正特許請求の範囲(以下、「本件訂正特許請求の範囲」という。)のとおり、訂正後の請求項1ないし6について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
本件特許請求の範囲の請求項1に「測温抵抗体線と、この測温抵抗体線を内部に収容する外枠と、当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材とを備えた極低温用測温抵抗体素子において、前記充填材は、多結晶体の無機絶縁材粉末と、当該無機絶縁材粉末、前記測温抵抗体線及び前記外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末との混合物であって、当該混合物を前記外枠と前記測温抵抗体線との間に充填した後、前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、その後降温して固化させたことを特徴とする極低温用測温抵抗体素子。」とあるのを、「測温抵抗体線と、この測温抵抗体線を内部に収容する外枠と、当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材とを備えた極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、前記充填材として、多結晶体の無機絶縁材粉末と、当該無機絶縁材粉末、前記測温抵抗体線及び前記外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末との混合物を、前記外枠と前記測温抵抗体線との間に充填し、この充填の後、前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、その後当該溶融したガラス粉末を降温して固化させることを特徴とする極低温用測温抵抗体素子の製造方法。」に訂正する。

(2)訂正事項2
本件特許請求の範囲の請求項2ないし4に「極低温用測温抵抗体素子において、」とあるのを、「極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、」に訂正し、請求項2ないし4の末尾に「極低温用測温抵抗体素子。」とあるのを、「極低温用測温抵抗体素子の製造方法。」に訂正する。

(3)訂正事項3
本件特許請求の範囲の請求項5に「極低温用測温抵抗体素子において、」とあるのを、「極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、」に訂正し、請求項5に「前記測温抵抗体線の両端に接続されるリード線をさらに備え、」とあるのを、「前記極低温用測温抵抗体素子は、前記測温抵抗体線の両端に接続されるリード線をさらに備え、」に訂正し、請求項5に「前記測温抵抗体線は、その両端部が前記各貫通孔の同側端部から露出するように往復して挿入されており、前記充填材は、前記貫通孔の内壁と前記測温抵抗体線との隙間に充填されていることを特徴とする極低温用測温抵抗体素子。」とあるのを、「前記測温抵抗体線を、その両端部が前記各貫通孔の同側端部から露出するように往復して挿入し、前記充填材を、前記貫通孔の内壁と前記測温抵抗体線との隙間に充填することを特徴とする極低温用測温抵抗体素子の製造方法。」に訂正する。

(4)訂正事項4
本件特許請求の範囲の請求項6に「請求項5の極低温用測温抵抗体素子において、前記各貫通孔の両側端部を封止する、絶縁材を材料とする封止材をさらに備えていることを特徴とする極低温用測温抵抗体素子。」とあるのを、「請求項5の極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、絶縁材を材料とする封止材によって前記各貫通孔の両側端部を封止する工程をさらに備えていることを特徴とする極低温用測温抵抗体素子の製造方法。」に訂正する。

(5)訂正事項5
本件明細書の【発明の名称】を「極低温用測温抵抗体素子の製造方法」に訂正する。

(6)訂正事項6
本件明細書の段落【0001】の「測温抵抗体素子に関する。」を、「測温抵抗体素子の製造方法に関する。」に訂正する。

(7)訂正事項7
本件明細書の段落【0019】の「90Kから4Kの極低温域で精度よく温度測定ができる温抵抗体素子を提供することを課題としている。」を、「90Kから4Kの極低温域で精度よく温度測定ができる測温抵抗体素子の製造方法を提供することを課題としている。」に訂正する。

(8)訂正事項8
本件明細書の段落【0020】の「以下の測温抵抗体素子とした。」を、「以下の測温抵抗体素子の製造方法とした。」に訂正する。

(9)訂正事項9
本件明細書の段落【0021】の「極低温用測温抵抗体素子において、充填材は、多結晶体の無機絶縁材粉末と、この無機絶縁材粉末、測温抵抗体線及び外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末との混合物とし、当該充填材を外枠と測温抵抗体線との間に充填した後、ガラス粉末の軟化点よりも高い温度で、かつ測温抵抗体線、外枠及び無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱してガラス粉末のみを溶融させ、その後降温して固化させた極低温用測温抵抗体素子とした。」を、「極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、充填材として、多結晶体の無機絶縁材粉末と、この無機絶縁材粉末、測温抵抗体線及び外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末との混合物を、外枠と測温抵抗体線との間に充填し、この充填の後、ガラス粉末の軟化点よりも高い温度で、かつ測温抵抗体線、外枠及び無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱してガラス粉末のみを溶融させ、その後当該溶融したガラス粉末を降温して固化させた極低温用測温抵抗体素子とした。」に訂正する。

(10)訂正事項10
本件明細書の段落【0026】の「充填材中の無機絶縁材粉末は、従来のものと同様、アルミナ、マグネシア、シリカもしくはこれらの混合物を材料とする多結晶体の粉末を用いことができ、」を、「充填材中の無機絶縁材粉末は、従来のものと同様、アルミナ、マグネシア、シリカもしくはこれらの混合物を材料とする多結晶体の粉末を用いることができ、」に訂正する。

(11)訂正事項11
本件明細書の段落【0029】の「後に述べる我々の試験の結果が示すように、本発明による極低温用測温抵抗体素子の低温域における温度測定誤差を小さく抑えることができる。」を、「後に述べる我々の試験の結果が示すように、本発明の製造方法による極低温用測温抵抗体素子の低温域における温度測定誤差を小さく抑えることができる。」に訂正する。

(12)訂正事項12
本件明細書の段落【0036】の「但し、従来の構造の測温抵抗体素子は、貫通孔内の無機絶縁材末が脱落しないように貫通孔の両側端部が絶縁材を材料とする封止材で封止されていたが、本発明の極低温用測温抵抗体素子においては、ガラス粉末を溶融させた後は、無機絶縁材粉末はガラス粉末で連結されるので脱落する懸念がなく、封止材は必須でない。」を、「但し、従来の構造の測温抵抗体素子は、貫通孔内の無機絶縁材末が脱落しないように貫通孔の両側端部が絶縁材を材料とする封止材で封止されていたが、本発明の製造方法による極低温用測温抵抗体素子においては、ガラス粉末を溶融させた後は、無機絶縁材粉末はガラス粉末で連結されるので脱落する懸念がなく、封止材は必須でない。」に訂正する。

(13)訂正事項13
本件明細書の段落【0038】の「測定電流値の影響を受けずに精度よく温度測定ができる測温抵抗体素子とした。」を、「測定電流値の影響を受けずに精度よく温度測定ができる測温抵抗体素子の製造方法とした。」に訂正する。

(14)訂正事項14
本件明細書の段落【0082】の「本発明の極低温用測温抵抗体素子は、クライオポンプ内の温度測定、水素ステーションでの温度測定等において、4Kから90Kの極低温域の温度を測定する温度センサ素子に好適である。」を、「本発明の製造方法による極低温用測温抵抗体素子は、クライオポンプ内の温度測定、水素ステーションでの温度測定等において、4Kから90Kの極低温域の温度を測定する温度センサ素子に好適である。」に訂正する。

2 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正前の請求項1の記載は、「・・・特徴とする極低温用測温抵抗体素子。」であるから、訂正前の請求項1に係る発明の対象が「極低温用測温抵抗体素子」という物であることは、明らかである。そして、訂正前の請求項1には、「測温抵抗体線と、この測温抵抗体線を内部に収容する外枠と、当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材とを備えた極低温用測温抵抗体素子」に関し、「当該混合物を前記外枠と前記測温抵抗体線との間に充填した後、前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、その後降温して固化させた」と特定されていることから、「極低温用測温抵抗体素子」という物について、その製造方法が記載されているといえる。
ここで、「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である」(最高裁第二小法廷判決平成27年6月5日(平成24年(受)第1204号))と判示されている。そこで、上記判示事項を踏まえて検討すると、訂正前の請求項1には、前述のとおり「極低温用測温抵抗体素子」の製造方法が記載されているので、訂正前の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるものということができる。
そして、訂正事項1は、「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがある訂正前の請求項1を、「発明が明確であること」という要件を満たすようにするために、発明の対象を「極低温用測温抵抗体素子の製造方法」とするともに、発明の対象を「製造方法」としたことと整合を図るために、「測温抵抗体線と、この測温抵抗体線を内部に収容する外枠と、当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材とを備えた極低温用測温抵抗体素子の製造方法」として、「前記充填材として、多結晶体の無機絶縁材粉末と、当該無機絶縁材粉末、前記測温抵抗体線及び前記外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末との混合物を、前記外枠と前記測温抵抗体線との間に充填し、この充填の後、前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、その後当該溶融したガラス粉末を降温して固化させること」を特定する、訂正後の請求項1の記載に訂正するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号の「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無
本件特許請求の範囲の請求項1には、「測温抵抗体線と、この測温抵抗体線を内部に収容する外枠と、当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材とを備えた極低温用測温抵抗体素子」に関し、「前記充填材は、多結晶体の無機絶縁材粉末と、当該無機絶縁材粉末、前記測温抵抗体線及び前記外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末との混合物であって、当該混合物を前記外枠と前記測温抵抗体線との間に充填した後、前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、その後降温して固化させた」と記載され、また、本件明細書の段落【0050】には、「本実施形態に係る測温抵抗体素子1を製造する際には、・・・」と記載されているので、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張、変更の存否
(ア)発明が解決しようとする課題とその解決手段について
特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項は、同法第134条の2第1項に規定する訂正がいかなる場合にも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならない旨を規定したものである。そして、特許法第36条第4項第1号の規定により委任された特許法施行規則の第24条の2には、「特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と規定されているから、訂正前の請求項1に係る発明と訂正後の請求項1に係る発明において解決しようとする課題及びその解決手段が実質的に変更されたか否かにより、訂正後の請求項1に係る発明の技術的意義が、訂正前の請求項1に係る発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更したものであるか否かについて検討する。
本件明細書の記載によれば、訂正前の請求項1に係る発明の課題は、「90Kから4Kの極低温域で精度よく温度測定ができる」ことにあり(【0019】)、また、その解決手段は、「測温抵抗体線と、この測温抵抗体線を内部に収容する外枠と、当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材とを備えた極低温用測温抵抗体素子」について、「充填材は、多結晶体の無機絶縁材粉末と、この無機絶縁材粉末、測温抵抗体線及び外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末との混合物とし、当該充填材を外枠と測温抵抗体線との間に充填した後、ガラス粉末の軟化点よりも高い温度で、かつ測温抵抗体線、外枠及び無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱してガラス粉末のみを溶融させ、その後降温して固化させた」ことにある(【0021】)。
一方、本件訂正明細書の記載によれば、訂正後の請求項1に係る発明の課題も、「90Kから4Kの極低温域で精度よく温度測定ができる」ことにあり(【0019】)、また、その解決手段も、「測温抵抗体線と、この測温抵抗体線を内部に収容する外枠と、当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材とを備えた極低温用測温抵抗体素子」について、「充填材として、多結晶体の無機絶縁材粉末と、この無機絶縁材粉末、測温抵抗体線及び外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末との混合物を、外枠と測温抵抗体線との間に充填し、この充填の後、ガラス粉末の軟化点よりも高い温度で、かつ測温抵抗体線、外枠及び無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱してガラス粉末のみを溶融させ、その後当該溶融したガラス粉末を降温して固化させた」ことにある(【0021】)。
してみると、訂正前の請求項1に係る発明と訂正後の請求項1に係る発明の課題に、何ら変更はなく、訂正前の請求項1に係る発明と訂正後の請求項1に係る発明における課題解決手段にも、実質的な変更はない。
したがって、訂正後の請求項1に係る発明の技術的意義は、訂正前の請求項1に係る発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更するものではない。

(イ)訂正による第三者の不測の不利益について
特許請求の範囲は、「特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべて」が記載されたもの(特許法第36条第5項)である。また、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項は、同法第134条の2第1項に規定する訂正がいかなる場合にも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならない旨を規定したものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる場合、言い替えれば、訂正前の発明の「実施」に該当しないとされた行為が訂正後の発明の「実施」に該当する行為となる場合、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれがあるため、そうした事態が生じないことを担保したものである。そこで、訂正前の請求項1に係る発明と訂正後の請求項1に係る発明とにおいてそれぞれの発明の「実施」に該当する行為の異同により、訂正後の請求項1に係る発明の「実施」に該当する行為が、訂正前の請求項1に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものであるか否かについて検討する。
特許法第2条第3項第1号に規定された「物の発明」(訂正前の請求項1に係る発明)について「実施」とは、「その物の生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」であり、同項第3号に規定された「物を生産する方法の発明」(訂正後の請求項1に係る発明)について「実施」とは、「その方法の使用をする行為」(同項第2号)のほか「その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」である。
そして、訂正前の請求項1に係る発明は、「前記充填材は、多結晶体の無機絶縁材粉末と、当該無機絶縁材粉末、前記測温抵抗体線及び前記外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末との混合物であって、当該混合物を前記外枠と前記測温抵抗体線との間に充填した後、前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、その後降温して固化させた」との製造方法(以下、「特定製造方法」という。)により「極低温用測温抵抗体素子」という物が特定された「物の発明」であるから、特定製造方法により生産された「極低温用測温抵抗体素子」「の生産」「をする行為」(すなわち、特定製造方法により「極低温用測温抵抗体素子」の生産をする行為)と、特定製造方法により生産された「極低温用測温抵抗体素子」の「使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」とに加え、特定製造方法により生産された「極低温用測温抵抗体素子」と同一の構造、特性を有する物「の生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」も、その発明の実施に含むものである。
一方、訂正後の請求項1に係る発明は、特定製造方法により「極低温用測温抵抗体素子の製造方法」という方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから、特定製造方法による「極低温用測温抵抗体素子の製造方法」「の使用をする行為」(すなわち、特定製造方法の使用によって「極低温用測温抵抗体素子」の生産をする行為)と、特定製造方法により生産された「極低温用測温抵抗体素子」「の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」とを、その発明の実施に含むものである。
してみると、訂正後の請求項1に係る発明の「実施」に該当する行為は、訂正前の請求項1に係る発明の「実施」に該当する行為に全て含まれ、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないものといえる。
したがって、訂正前の請求項1に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものとはいえない。

(ウ)まとめ
以上のとおり、訂正後の請求項1に係る発明の技術的意義は、訂正前の請求項1に係る発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更するものではなく、また、訂正後の請求項1に係る発明の「実施」に該当する行為は、訂正前の請求項1に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものとはいえないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2ないし4について
訂正事項2ないし4は、上記(1)と同様の理由により、特許法第134条の2第1項ただし書第3号の「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、また、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項5、6、8、9、11ないし14について
訂正事項5、6、8、9、11ないし14は、訂正事項1ないし4の訂正に伴って特許請求の範囲と明細書の記載の整合を図るものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号の「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、また、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項7について
訂正事項7は、本来その意であることが明らかな字句の誤りを正すとともに、訂正事項1ないし4の訂正に伴って特許請求の範囲と明細書の記載の整合を図るものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」及び同項第3号の「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、また、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項10について
訂正事項10は、本来その意であることが明らかな字句の誤りを正すものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当し、また、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
そして、訂正前の請求項1ないし6は、請求項2ないし6が、訂正の対象とされた請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあることから、一群の請求項に該当する。
したがって、訂正後の請求項〔1ないし6〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明
本件訂正後の請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれを「本件訂正発明1」等という。)は、本件訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
測温抵抗体線と、この測温抵抗体線を内部に収容する外枠と、当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材とを備えた極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、
前記充填材として、多結晶体の無機絶縁材粉末と、当該無機絶縁材粉末、前記測温抵抗体線及び前記外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末との混合物を、前記外枠と前記測温抵抗体線との間に充填し、
この充填の後、前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、
その後当該溶融したガラス粉末を降温して固化させる
ことを特徴とする極低温用測温抵抗体素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、前記測温抵抗体線は、白金とコバルトの合金を材料とし、これをコイル状に形成したものである
ことを特徴とする極低温用測温抵抗体素子の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、
前記白金とコバルトの合金は、白金にコバルトが0.5mol%含まれた合金であり、
前記ガラス粉末溶融のための加熱温度は、460℃以上520℃以下であり、かつ、前記ガラス粉末の軟化点より50℃以上高い温度である
ことを特徴とする極低温用測温抵抗体素子の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、
前記無機絶縁材粉末は、アルミナ粉末であり、
前記ガラス粉末は、酸化ビスマスが主成分で、これに酸化亜鉛及び酸化ボロンを加えたものであり、
前記ガラス粉末の前記充填材に対する混合比率は、3.5wt%から10.0wt%の範囲である
ことを特徴とする極低温用測温抵抗体素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、
極低温用測温抵抗体素子は、前記測温抵抗体線の両端に接続されるリード線をさらに備え、
前記外枠は、軸方向に二つの貫通孔を有する略円形断面の柱状をした絶縁碍子であり、
前記測温抵抗体線を、その両端部が前記各貫通孔の同側端部から露出するように往復して挿入し、
前記充填材を、前記貫通孔の内壁と前記測温抵抗体線との隙間に充填する
ことを特徴とする極低温用測温抵抗体素子の製造方法。
【請求項6】
請求項5の極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、
絶縁材を材料とする封止材によって前記各貫通孔の両側端部を封止する工程をさらに備えている
ことを特徴とする極低温用測温抵抗体素子の製造方法。」

第4 請求人の主張
1 無効理由の概要
請求人が主張する、本件特許を無効とすべき理由は、審判請求書、口頭審理陳述要領書(請求人)、口頭審理調書、上申書(請求人)の記載内容を総合すれば、概略、以下のとおりである。
なお、特許法第36条第6項第2号に関する無効理由(無効理由9)について、請求人は、口頭審理において、仮に本件訂正が認められるならば当該無効理由を取り下げる旨述べている(口頭審理調書)ところ、上記第2のとおり本件訂正は認められるので、無効理由9は取り下げられた。
(1)無効理由1(新規性:公然実施)
本件訂正発明1、5及び6は、出願日より前に、株式会社田中製作所(東京都大田区大森西2-10-4、以下、「田中製作所」という。)が、品番・品名を「OS 101 Pt 100Ω 1615 2mA A級」とする測温抵抗体素子(以下、「先行実施品」という。)を、有限会社オーエスティ技研(京都府城陽市久世上大谷40-3、以下、「オーエスティ技研」という。)に販売したことによって、公然実施された発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当するから、その発明に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきである。

(2)無効理由2(進歩性:先行実施品に係る発明を主たる引用発明として)
本件訂正発明1、5及び6は、公然実施された先行実施品に係る発明並びに甲第5号証及び甲第10号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきである。

(3)無効理由3(進歩性:先行実施品に係る発明を主たる引用発明として)
本件訂正発明2ないし4は、公然実施された先行実施品に係る発明及び甲第5号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきである。

(4)無効理由4(新規性:刊行物記載)
本件訂正発明1、5及び6は、出願日前に頒布された刊行物である甲第5号証に記載された発明(以下、「甲5発明」という。)であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その発明に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきである。

(5)無効理由5(進歩性:甲5発明を主たる引用発明として)
本件訂正発明1、5及び6は、甲5発明及び甲第6号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきである。

(6)無効理由6(進歩性:甲5発明を主たる引用発明として)
本件訂正発明2ないし4は、甲5発明及び甲第6号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきである。

(7)無効理由7(サポート要件)
本件訂正発明1ないし6は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、その発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効にされるべきである。

(8)無効理由8(実施可能要件)
本件訂正明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明1ないし6の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、その発明に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効にされるべきである。

2 証拠方法
請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
(1)甲第1号証:平成27年6月8日京都地方法務局所属公証人谷口幸夫作成に係る同年第173号事実実験公正証書

(2)甲第2号証:平成28年1月27日東京法務局所属公証人三木勇次作成に係る同年第28号事実実験公正証書

(3)甲第3号証:「白金抵抗体素子 尼崎事業所受注番号:D15L95」,日鉄住金テクノロジー,平成27年(2015年)7月 報告

(4)甲第4号証:「測温抵抗素子の構造・組成分析 一貫番号:AJD15617 案件番号:D15617」,日鉄住金テクノロジー,平成28年(2016年)1月 報告

(5)甲第5号証:特公平1-19241号公報(平成1年4月11日公告)

(6)甲第6号証:特開昭53-53758号公報(昭和53年5月16日公開)

(7)甲第7号証:「互換形、極低温用Pt-Co測温抵抗体」横河技報(1988年)Vol.32 No.3 P.29?32(昭和63年発行)

(8)甲第8号証:実公昭62-37145号公報(昭和62年9月22日公告)

(9)甲第9号証:特許第4136346号公報(平成20年8月20日発行)

(10)甲第10号証:特開昭58-150833号公報(昭和58年9月7日公開)

(11)甲第11号証:特開昭61-179502号公報(昭和61年8月12日公開)

(12)甲第12号証:IEC 60751 2008抜粋

(13)甲第13号証:特公平6-21756号公報(平成6年3月23日公告)

(14)甲第14号証:AIP(米国物理学会)Conference Proceedings 613,1644(2002)

(15)甲第15号証:「工業計測技術大系1 温度 工業計測技術大系編集委員会編」日刊工業新聞社 P.52?55、P.172?175(昭和40年3月30日発行)

(16)甲第16号証:「CERACOIL 測温抵抗体用セラミック白金抵抗素子」株式会社岡崎製作所 カタログ(昭和54年(1979年)5月発行)

(17)甲第17号証:有限会社オーエスティ技研「OST works shop 会社紹介」、平成25年(2013年)12月28日、INTERNET ARCHIVE、平成28年(2016年)12月20日検索、インターネット(URL:http://web.archive.org/web/20131228142006/http://oststore.com/html/company.html)

(18)甲第18号証の1:「株式会社田中製作所のホームページ」、株式会社田中製作所、平成28年(2016年)12月20日検索、インターネット(URL:http://www3.hp-ez.com/hp/tanaka-works/page1)

(19)甲第18号証の2:「製品サイズと仕様」、株式会社田中製作所、平成28年(2016年)12月20日検索、インターネット(URL:http://www3.hp-ez.com/hp/tanaka-works/page4)

(20)甲第19号証:「帝国データバンク企業情報/G‐Search」、帝国データバンク、平成28年(2016年)12月20日検索、インターネット(URL:https://contents.nifty.com/member/service/g-way/mmdb/aps/WTBK/main.jsp?ssid=)

(21)甲第20号証:荒井康夫、安江任著、「ファインセラミックスの構造と物性」、技報堂出版株式会社、平成16年(2004年)1月20日、P.56?63

(22)甲第21号証:松下純一著、「セラミック材料入門」、株式会社培風館、平成14年(2002年)7月15日、P.65?69

(23)甲第22号証:山里産業株式会社 技術開発本部 木村秀夫氏作成に係る実験成績証明書、平成29年2月15日

第5 被請求人の反論
1 被請求人の主張の概要
答弁書、口頭審理陳述要領書(被請求人)、口頭審理調書及び上申書(被請求人)の記載内容を総合すると、被請求人の主張は、請求人の主張する無効理由1ないし8はいずれも理由がない、というものである。

2 証拠方法
被請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
(1)乙第1号証:JIS R3103-1(2001)「ガラスの粘性及び粘性定点-第1部:軟化点の測定方法」1頁、2頁、13頁

(2)乙第2号証:「粉体粉末冶金用語事典」(社)粉体粉末冶金協会 編 日刊工業新聞社(2001年5月30日 初版1刷発行)209頁、225頁

(3)乙第3号証:「セラミックス基礎講座4 はじめてガラスを作る人のために」東京工業大学工学部 無機材料工学科 編 内田老鶴圃(2012年3月10日 第2版6刷発行)47?50頁

(4)乙第4号証:「広辞苑」第六版 新村 出 編 (株)岩波書店(2008年1月11日発行)941頁

(5)乙第5号証:「大辞林」松村 明 編 (株)三省堂(1990年4月30日発行)820頁

第6 当審の判断
1 無効理由1ないし3について
(1)先行実施品
ア 先行実施品の公然実施について
(ア)甲第1号証及び甲第2号証
a 甲第1号証の写真1(甲第1号証では、写真の番号として、○に数字の1が記載されているが、都合上、○を省略して「写真1」のように表記する。以下同じ。)からは、田中製作所が2009年3月2日付けでオーエスティ技研に対し発行した納品書が見て取れ、同納品書の品番・品名の欄には「OS 101 Pt 100Ω 1615 2mA A級」との記載が、数量・単位の欄には「30本」との記載がそれぞれ読み取れる。

b 甲第1号証の写真2からは、田中製作所が2012年3月12日付けでオーエスティ技研に対し発行した請求書が見て取れ、同請求書の品番・品名の欄には「OS 101 Pt 100Ω 1615 2mA A級」との記載が、数量・単位の欄には「25本」との記載がそれぞれ読み取れる。

c 甲第1号証第12ないし17ページの別添冊子「株式会社 田中製作所」(田中製作所のウェブページのアーカイブ)(以下、「田中製作所カタログ」という。)からは、次の記載が読み取れる。
「標準素子タイプサイズ
1615-1.6x10 抵抗値 100Ω
1620-1.6x20 素子数 シングル
2020-2.0x20 規定電流 5mA以下
2830-2.8x30 リードサイズ 9±2mm
クラス 1/3,A,B 使用温度範囲-200?750℃」(甲第1号証第15ページ「製品サイズと仕様」)

d 甲第1号証によれば、オーエスティ技研の代表取締役岡本隆(以下、「岡本氏」という。)は、上記aの納品書及び上記bの請求書を提示し、上記cに記載の「標準素子タイプ」の「1615」の測温抵抗体素子55本を過去2度にわたって田中製作所から購入した旨、申し述べている(甲第1号証第2ページ第18行ないし第3ページ第16行)。

e 甲第2号証の写真番号1からは、田中製作所が2009年3月2日付けでオーエスティ技研に対し発行した納品書が見て取れ、同納品書の品番・品名の欄には「OS 101 Pt 100Ω 1615 2mA A級」との記載が、数量・単位の欄には「30本」との記載がそれぞれ読み取れる。

f 甲第2号証の写真番号2からは、田中製作所が2012年3月12日付けでオーエスティ技研に対し発行した請求書が見て取れ、同請求書の品番・品名の欄には「OS 101 Pt 100Ω 1615 2mA A級」との記載が、数量・単位の欄には「25本」との記載がそれぞれ読み取れる。

g 甲第2号証によれば、田中製作所の代表取締役田中勝則(以下、「田中氏」という。)は、田中製作所のパソコンに保管する電子データよりプリントアウトした上記eの納品書及び上記fの請求書を提示するとともに、これらが上記aの納品書及び上記bの請求書と合致している旨を申し述べ、さらに、当該納品書及び請求書により販売した測温抵抗体素子は、上記cに記載の「標準素子タイプ」の「1615」である旨、申し述べている(甲第2号証第2ページ第17行ないし第3ページ第17行)。

(イ)先行実施品の公然実施についての判断
以上のとおり、オーエスティ技研に保管されていた納品書(上記(ア)a)及び請求書(上記(ア)b)と、田中製作所に保管されていた納品書(上記(ア)e)及び請求書(上記(ア)f)とで内容が合致している点、上記(ア)cに記載の「標準素子タイプ」の「1615」を田中製作所がオーエスティ技研に販売した点に関し、岡本氏の申述内容(上記(ア)d)と田中氏の申述内容(上記(ア)g)とが一致している点、並びに、当該納品書及び請求書の品番・品名の欄に記載に「1615」の文字が含まれている点から、田中製作所からオーエスティ技研に対し、上記(ア)cに記載の「標準素子タイプ」の「1615」なる測温抵抗体素子が、出願日前の平成21年(2009年)3月2日及び平成24年(2012年)3月12日に、合計55本販売された事実が認められる。
そして、「標準素子タイプ」の「1615」なる測温抵抗体素子は、ウェブページに掲載された田中製作所カタログによって紹介されていた製品であって、販売が守秘義務を含む契約に基づき行われたとも認められないから、その内容が公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況で販売されたものといえる。
したがって、田中製作所からオーエスティ技研に対し平成21年3月2日及び平成24年3月12日に品番・品名を「OS 101 Pt 100Ω 1615 2mA A級」として販売された、「標準素子タイプ」の「1615」なる合計55本の測温抵抗体素子(以下、「先行実施品」という。)は、出願日前に公然実施されたものといえる。

イ 甲3分析対象製品と先行実施品との関係について
(ア)甲第1号証ないし甲第4号証
a 甲第1号証によれば、岡本氏は、平成27年4月20日の時点までオーエスティ技研において在庫として保管されていた、甲第1号証の写真3及び写真4の素子2本(以下、「オーエスティ技研在庫品」という。)について、それらは55本の先行実施品のうちの残り2本である旨、申し述べている(甲第1号証第2ページ第18行ないし第3ページ第16行)。

b 甲第1号証の写真3及び写真4からは、オーエスティ技研在庫品が、紙片とともに、簡単に手で開け閉めできるチャック付きのビニール袋に入れられ、封印等がなされることなく保管されていた点が見て取れ、また、当該紙片に「Pt A級 2mA JIS 1604 100.00Ω 株式会社田中製作所」との記載が読み取れるものの、「標準素子タイプ」の「1615」であることを示す記載や、製造年月や製造番号等を示す記載は見あたらない。

c 甲第1号証の写真7からは、オーエスティ技研在庫品自体に、品番、品名、製造年月や製造番号等を示す刻印やラベル等の表示は見あたらない。

d 甲第1号証によれば、2本のオーエスティ技研在庫品は、個別に容器に入れて公証人により封緘された状態で、分析試験会社である日鉄住金テクノロジー株式会社(以下、「日鉄住金テクノロジー」という。)宛への郵送手続がなされた(甲第1号証第3ページ第17行ないし第5ページ第12行、写真5ないし11)。

e 甲第1号証の田中製作所カタログからは、次の記載が読み取れる。
(a)「セラミック白金測温抵抗体素子は、セラミック管の中に抵抗調整された白金コイルを挿入し、充填材により振動、衝撃に耐えるように加工、工夫、研究された最も信頼性の高い白金測温抵抗体温度素子です・・・そして一般的に多く使用されている保護管に充填材を詰め込み使用されるセラミックそのままのタイプと3種類を容易しております・・・」(甲第1号証第13ページ「製品説明」)

(b)「白金抵抗線とセラミック管と充填材とで構成され・・・セラミックには、高品質の準再結晶アルミナを使用し・・・充填材には独自の化合物を開発し・・・セラミック両端を封じるうわ薬は、セラミック外径からはみ出ることのなく・・・」(甲第1号証第14ページ「製品特徴」)

(c)「標準素子タイプサイズ
1615-1.6x10 抵抗値 100Ω
1620-1.6x20 素子数 シングル
2020-2.0x20 規定電流 5mA以下
2830-2.8x30 リードサイズ 9±2mm
クラス 1/3,A,B 使用温度範囲-200?750℃」(甲第1号証第15ページ「製品サイズと仕様」)

f 甲第2号証によれば、田中氏は、田中製作所で製造している測温抵抗体素子の封止ガラスの材料が平成24年10月3日を境に徳力化学株式会社製から日本琺瑯釉薬株式会社製に変更されている旨、申し述べ、また、田中製作所が在庫として保管している測温抵抗体素子のうち写真番号4の4本(以下、「田中製作所在庫品」という。)を提示するとともに、田中製作所在庫品は、両端の封止ガラスが白く濁った色をしていることから徳力化学株式会社製の材料を使用して製造されたものであると判別でき、よってオーエスティ技研に販売された型式1615の測温抵抗体素子55本(先行実施品)と同時期に製造した測温抵抗体素子の在庫品であるといえる旨、申し述べている(甲第2号証第3ページ第18行ないし第5ページ第13行)。

g 甲第2号証によれば、田中製作所在庫品のうち2本は、個別に容器に入れて公証人により封絨された状態で、分析試験会社である日鉄住金テクノロジー株式会社(以下、「日鉄住金テクノロジー」という。)宛への郵送手続がなされた(甲第2号証第5ページ第14行ないし第7ページ第15行、写真番号4ないし11)。

h 甲第3号証によれば、日鉄住金テクノロジーにおいて試料2個を受領した際、試料容器は公証人に封緘された状態のまま未開封であり、受領した試料2個のうち任意の1個を対象(以下、「甲3分析対象製品」という。)として調査が行われた(甲第3号証第2ページ「2.供試料」、写真1)。

i 甲第3号証によれば、甲3分析対象製品の寸法は、リードを含まない白金抵抗体素子の長さが16mmであり、甲3分析対象製品の直径の平均値が、先端付近、中央付近、下端付近のいずれにおいても1.65mmである(甲第3号証第2ページ「4.1.外観観察」、第3ページ「表1」、写真3)。

j 甲第3号証によれば、甲3分析対象製品は、下側ガラス封止と上側ガラス封止とアルミナボディとリードとを有し、アルミナボディは、Alを主体としSi、Ca、Mgも含む酸化物からなり、円形穴を2個有する略円形断面を呈し、穴内に、マグネシアからなる粒子及びSi、O、Al、Ba、K、Zrからなるガラス質の粒子と、僅かにRhを含むPt線とが存在している(甲第3号証第3ページ「4.2.外部材料調査」、「4.3.断面形状及び充填材の調査」、写真4、図4、写真10、図6、図7、図10)。

k 甲第4号証によれば、日鉄住金テクノロジーにおいて試料2個を受領した際、試料容器は公証人に封緘された状態のまま未開封であり、受領した試料2個のうち任意の1個を対象(以下、「甲4分析対象製品」という。)として調査が行われた(甲第4号証第2ページ「2.供試料」、写真1)。

l 甲第4号証によれば、「やや明るい灰色粒子」について、甲3分析対象製品では「Ca,Si,O主体でCa,Mgを含む酸化物であった」のに対し、甲4分析対象製品では「Oが検知されずAl主体で微量のSi,Mgを含む金属物質であった」とされている(甲第4号証第1ページ「1.はじめに」、第5ページ「4.4.前回調査品との比較」)。

m 甲第3号証の写真10と甲第4号証の写真10とを見比べると、後者では、「明るい灰色」の粒子の多くが互いにつながり合っているように見受けられるのに対し、前者では、「明るい灰色」の粒子がつながり合っているように見受けられる箇所は少ない。

(イ)甲3分析対象製品と先行実施品との関係についての判断
甲3分析対象製品が、出願日前に公然実施された先行実施品のうちの1本であるか否かについて検討するにあたり、上記(ア)d及びhのとおりオーエスティ技研在庫品のうちの1本が甲3分析対象製品とされているので、岡本氏の申述(上記(ア)a)のとおりオーエスティ技研在庫品が先行実施品のうちの2本であるといえるか否かについて、以下検討する。
a 田中製作所カタログの「標準素子タイプ」における「1615-1.6x10」なる記載(上記(ア)e(c))は、「1615-1.6x15」の誤記と認められる(口頭審理調書)ので、甲3分析対象製品の寸法(上記(ア)i)は、田中製作所カタログの当該記載と矛盾するものではない。また、甲3分析対象製品の構造(上記(ア)j)も、田中製作所カタログの記載(上記(ア)e(a)及び(b))と矛盾するものではない。しかしながら、上記(ア)b及びcのとおり、オーエスティ技研在庫品自体から直接、その品番、品名、製造時期を知ることができないし、また、ビニール袋に入れられた紙片及びオーエスティ技研在庫品が、販売時からそのままの状態で保管されていたかどうかも定かではないから、甲3分析対象製品の寸法及び構造が、田中製作所カタログの「標準素子タイプ」の「1615」に関する記載と矛盾しないからといって、ただちに、オーエスティ技研在庫品が、田中製作所で製造された「標準素子タイプ」の「1615」なる測温抵抗体素子であると認められるものではない。

b そこで、次に、オーエスティ技研在庫品が田中製作所で製造されたものであるか否かについて検討する。
上記(ア)g及びkのとおり田中製作所在庫品のうちの1本が甲4分析対象製品とされている。
そして、上記(ア)lによれば、甲3分析対象製品と、甲4分析対象製品とにおいて、「やや明るい灰色粒子」の材料が明らかに相違しているから、オーエスティ技研在庫品は、田中製作所在庫品と、同一の材料を用いて製造されたものであるということはできない。
また、上記(ア)mのとおり、甲3分析対象製品と、甲4分析対象製品とにおいて、「明るい灰色」の粒子の外観形状が明らかに相違しているから、オーエスティ技研在庫品は、田中製作所在庫品と、必ずしも同一の手法で製造されたものであるということはできない。
したがって、オーエスティ技研在庫品について、田中製作所在庫品と同様に田中製作所で製造されたことが明らかであるということはできない。

c なお、仮に、オーエスティ技研在庫品が田中製作所で製造されたものであるとしても、その製造・販売時期については、オーエスティ技研在庫品自体からも、ビニール袋に入れられた紙片からも見分けることができないから、先行実施品のうちの2本であるとは限らない。これに関連して、田中氏の申述(上記(ア)f)によれば、平成24年10月3日までは徳力化学製の材料が採用されていたとのことであるが、田中製作所においてその16日後の出願日(同年同月19日)以降にも引き続き徳力化学製の材料を用いた製品が製造・販売されていた可能性がないとはいえず、オーエスティ技研が出願日以降に田中製作所から同じ「標準素子タイプ」の「1615」を購入した可能性もないとはいえない。

d まとめ
以上検討したとおり、岡本氏の申述(上記(ア)a)を裏付ける客観的な証拠はないから、甲3分析対象製品(オーエスティ技研在庫品のうちの1個)が、出願日前に公然実施された先行実施品のうちの1本であるということはできない。

ウ 小括
以上のとおり、先行実施品は、出願日前に公然実施されたといえるものの、甲3分析対象製品が先行実施品のうちの1本であるということはできないから、甲第3号証に記載された分析調査結果をもって先行実施品の分析調査結果とすることはできない。
したがって、出願日前に公然実施された先行実施品の具体的構成は、明らかでない。
そして、先行実施品の具体的構成が明らかでない以上、本件訂正発明1、5及び6は、いずれも出願日前に公然実施された先行実施品に係る発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第2号に該当しないから、無効理由1によっては、本件訂正発明1、5及び6に係る特許を無効とすることはできない。
また、先行実施品の具体的構成が明らかでない以上、本件訂正発明1、5及び6は、いずれも、先行実施品に係る発明並びに甲5号証及び甲10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、無効理由2によっては、本件訂正発明1、5及び6に係る特許を無効とすることはできない。
さらに、先行実施品の具体的構成が明らかでない以上、本件訂正発明2ないし4は、いずれも、先行実施品に係る発明及び甲5ないし10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、無効理由3によっては、本件訂正発明2ないし4に係る特許を無効とすることはできない。

(2)甲3分析対象製品が先行実施品であったと仮定した場合
仮に、甲3分析対象製品が出願日前に公然実施された先行実施品のうちの1個であったとして、すなわち、甲第3号証に記載された分析調査結果が先行実施品の分析調査結果であったとして、更に検討する。
ア 実施品発明
甲3分析対象製品が先行実施品のうちの1個であるとすると、先行実施品である甲3分析対象製品は、「白金抵抗線とセラミック管と充填材とで構成され」た「白金測温抵抗体素子」である(甲第1号証第13ページ「製品説明」、第14ページ「製品特徴」1、2)ところ、当該「白金測温抵抗体素子」の製造工程を有することは自明であるので、甲第1号証の田中製作所カタログ及び甲第3号証から、先行実施品である甲3分析対象製品の製造方法として、次の発明(以下、「実施品発明」という。)が把握されるものと認められる(括弧内は、特に関連する記載箇所を示す。)。
「白金抵抗線とセラミック管と充填材とで構成され-200℃?+750℃までの温度領域の計測ができる白金測温抵抗体素子の製造方法であって、(甲第1号証第13ページ「製品説明」、第14ページ「製品特徴」1、2)
白金一本式抵抗線を使用した白金コイルをセラミック管の中に挿入し、充填材により振動、衝撃に耐えるように加工して、750度耐熱試験を実施するものであり、(甲第1号証第13ページ「製品説明」、第14ページ「製品特徴」7、8)
充填材には、独自の化合物を開発し、白金の温度変化率に近い素材を使って、白金コイルを保護するものであり、(甲第1号証第14ページ「製品特徴」4)
白金測温抵抗体素子は、下側ガラス封止と、上側ガラス封止と、アルミナボディと、リードとを有しており、(甲第3号証写真4)
下側ガラス封止は、O、Si、Pb、Ba、Al、Na、Ca、Kからなり、上側ガラス封止は、O、Si、Pb、Zr、Al、Zn、Ca、Feからなり、(甲第3号証第3ページ「4.2.外部材料調査」、図3、図5)
アルミナボディは、Alを主体としSi、Ca、Mgも含む酸化物からなり、円形穴を2個有する略円形断面を呈し、穴内に、マグネシアからなる粒子及びSi、O、Al、Ba、K、Zrからなるガラス質の粒子と、僅かにRhを含むPt線とが存在し、(甲第3号証第3ページ「4.2.外部材料調査」、「4.3.断面形状及び充填材の調査」、図4、写真10、図6、図7、図10)
マッピング分析結果からマグネシア粒子とガラス部の重量比を算出すると、多くの誤差を含み真値と乖離している可能性があるものの、ガラス部の重量%として77.2wt%という値が得られたものである、(甲第3号証第4ページ)
白金測温抵抗体素子の製造方法。」

イ 甲第5号証ないし甲第10号証の記載事項
(ア)甲第5号証
a 出願日前に頒布された刊行物である甲第5号証には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同じ。)。
(a)「本発明は温度変化による電気抵抗の変化を利用して流体または固体の温度を測定する測温抵抗体、流体の流れの中に置いた場合の温度変化による電気抵抗の変化を検出してこれによつて流体の流速を測定する流速計測用センサー、またはシーズヒーターなどの抵抗線を細管内に固定し保護する方法にかかるものである。」(第1欄第9ないし15行)

(b)「第4図乃至第6図は本発明の他の実施例を示すもので、第4図および第5図に示す如く2本の透孔を穿つたセラミツク製円柱体3aを用意し、リード線1,1を両端に電気溶接した抵抗細線2を前記2本の透孔に挿通し、セラミツク製円柱体3aの外側にモールド5を被嵌してリード線1,1の一部をモールド5より突出させ適宜の接着剤で仮止した後、セラミツク粉末4aをモールド5内に注入し、第2図について説明した如く遠心力Cによりセラミツク製円柱体3a内へのセラミツク粉末4aの充填率を増加しその後80?100℃にて約1時間乾燥し、第6図に示す如くセラミツク製円柱体3aの両開口部に4b,4bの如く実施例1に例示したセラミツク泥漿を追加充填し乾燥して後セラミツク粉末4aを焼成または焼結し、セラミツク4a,4bを焼結する。」(第3欄第37行ないし第4欄第8行)

(c)「本発明は以上の如く構成されているので、たとえば外径0.8mm、内径0.5mm、長さ4mmのセラミツク管3を用い、白金抵抗細線1の径を20?50ミクロン、その螺旋状部の長さ3mm(抵抗1.0?3オーム)、白金リード線2の径を0.2?0.4mm程度に構成することにより測温抵抗体として-200?+600℃の範囲で正確に且つ応答速度0.1?2秒以内に迅速に測定することができ、また該センサーと周囲の流体との熱伝達量により流体の流速を測定する場合には上記同様-200?+200℃の範囲で0.1?50m/sec.程度の流速を±2%以内の誤差で正確に且つ応答時間0.5秒程度で迅速に測定することができ、また耐衝撃性、耐熱性にすぐれた流体中の活性ガス、化学薬品等に対する抵抗も極めて大きい。抵抗線1あるいはリード線2として白金以外の導体を使用する場合はその耐熱性、耐酸化性、耐薬品性によつて測定する流体またはその温度に制限を受ける。
本発明は上記の如く極めて小さな管内に抵抗線とともに無機質絶縁物を高密度で充填することができ、従つてこの方法で製作した計測器用センサーは従来の計測器用センサーに比し熱容量が極めて小さく従つて熱応答が極めて速く且つ正確に測定することができしかも物理的強度が強く、測温抵抗体、流速測定用センサー、温度補償用抵抗体等として使用し得るとともに、本発明の方法により高温用シーズヒーターも同様に製造することができ、何れの場合にも何等特殊な設備、技術を要せず簡易確実に製造し、廉価に供給し得る効果を有するものである。」(第4欄第29行ないし第6欄第2行)

b したがって、上記a(a)ないし(c)の記載から、甲第5号証には、次の技術が記載されていると認められる。
「測温抵抗体において、2本の透孔を穿つたセラミツク製円柱体の前記2本の透孔に、リード線を両端に電気溶接した抵抗細線を挿通し、セラミツク粉末を注入し遠心力により充填率を増加し、その後、セラミツク製円柱体の両開口部にセラミツク泥漿を追加充填し、セラミツクを焼結することにより、抵抗線を細管内に固定し保護し、物理的強度が強く耐衝撃性にすぐれたものとする」技術。

(イ)甲第6号証
a 出願日前に頒布された刊行物である甲第6号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(a)「本発明は、極低温領域における抵抗式または熱電式の温度検出に有効な温度検出素子材料に関するものである。」(第1ページ左下欄第9ないし11行)

(b)「一方、-200℃以上の温度の測定に広く利用されている金属素子を用いた工業用温度検出器、すなわち白金測温抵抗体や規格熱電対などは、-200℃以下の極低温領域では極端に感度が低下し、-250℃以下では測温が殆んど不可能である。
本発明の温度検出素子材料は、上記金属素子の欠点である極低温領域での感度低下を改良したものであり、原理的には、金属中の自由電子と稀薄状態にある磁気双極子(コバルト原子)との相互作用(近藤効果)を利用したものである。
すなわち、本発明の温度検出素子材料は、母体金属としての高純度の白金に、磁性不純物であるコバルトを0.05?2.0%加えた合金により形成したことを特徴とするものである。
このような本発明の温度検出素子材料においては、以下に示す実験結果から明らかなように、約-250℃以上の領域で有効となる白金自身の抵抗温度特性と、上記の温度以下の領域で有効となるコバルトの電気抵抗への効果が組合わされ、その結果、-200℃以下の温度領域における抵抗一温度係数及びゼーベック係数を純白金に比べて大ならしめると共に、純白金に匹敵する安定性と均質性をもたせることができ、従来実用形計器では殆んど測定不可能であった-250℃以下の極低温領域の温度を実用上十分な感度と再現性をもって測定することが可能となる。
上記白金とコバルトとの合金において、コバルトの合金濃度が0.05モル%程度よりも低いと、-260℃付近に抵抗-温度係数が小さい領域、すなわち温度に対する感度が小さい領域が生じて、この領域では実用温度計として使用できなくなる。
一方、コバルトの合金濃度が2.0モル%程度よりも大きくなると、磁性不純物原子間の相互作用が顕著となり、抵抗-温度特性に特異点(急激な折曲り)が生じて温度計として不都合となるほか、合金の均質性、安定性も悪くなる。而して、コバルトの合金濃度が0.05?2.0モル%の範囲のものは、その合金濃度によって抵抗温度特性は異なるが、いずれも実用温度計として利用可能であり、利用目的に応じて効果的に使い分けることができる。
また、本発明の温度検出素子材料は、純度、均質性、安定性の点において、他種の同様な原理に基づく稀薄合金に比べて総合的に優れたものを得ることができる。すなわち、白金は工業材料のうちで最も高純度のものが利用できる材料であり、その純度は抵抗温度係数を測定することによって高精度で決定できる。一方、コバルトも当該目的に十分な純度のものが利用でき、しかも白金に対して上記範囲で十分な溶解度を有しているので、均質かつ安定な合金を比較的容易に得ることができる。而して、例えば0.5モル%の合金の場合、800℃で1時間加熱したことによる0℃での抵抗値の変化が10^(-5)以下であるようなすぐれた安定性が得られている。」(第1ページ右下欄第5行ないし第2ページ左下欄第6行)

b したがって、上記a(a)及び(b)の記載から、甲第6号証には、次の技術が記載されていると認められる。
「白金測温抵抗体は、-200℃以下の極低温領域では極端に感度が低下し、-250℃以下では測温か殆んど不可能であるが、温度検出素子材料を、母体金属としての高純度の白金に、磁性不純物であるコバルトを0.05?2.0モル%加えた合金により形成すると、-250℃以下の極低温領域の温度を実用上十分な感度と再現性をもって測定することが可能となり、例えば0.5モル%の合金の場合すぐれた安定性が得られる」技術。

(ウ)甲第7号証
a 出願日前に頒布された刊行物である甲第7号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(a)「4.原理
通常の白金測温抵抗体は高純度のPtを完全焼鈍して使っているが,極低温領域において電気抵抗がほぼ0Ωになり,13K付近から下ではほとんど感度がなくなる。
一方,高純度のPtに微量の磁性不純物であるコバルトを添加した磁性希薄合金をつくると,極低温域で有効な感度が得られることが知られている。」(29ページ右欄本文第13ないし19行)

(b)「[2] 非磁性不純物を添加した場合
R(T)=Ri+Rl(T) と表され、図1の[2]のように極低温域での抵抗は[1]に比べて増すが,感度(dR/dT)は極めて小さい。」(30ページ右欄本文第2ないし5行)(なお、摘記にあたり都合上、○に数字は、[ ]に数字と表記した。)

(c)「例えば互換精度を±0.5Kに入れるのに必要な各線材のCo濃度を図8を用いて計算すると0.5±0.005at.%となる。」(32ページ左欄本文第5ないし7行)

(d)「Pt-Co合金の再結晶化現象
・・・
従つて400℃程度の低い温度で熱処理を行えば、結晶粒度を変えずに結晶の加工歪を補正して残留抵抗を調整することができる。」(32ページ右欄本文第4ないし12行)

b したがって、上記a(a)ないし(c)の記載から、甲第7号証には、次の技術が記載されていると認められる。
「高純度のPtを用いる通常の白金測温抵抗体は、極低温領域において電気抵抗がほぼ0Ωになり、13K付近から下ではほとんど感度がなくなり、非磁性不純物を添加した場合でも極低温域での感度は極めて小さいが、高純度のPtに微量の磁性不純物であるコバルトを添加した磁性希薄合金をつくると極低温域で有効な感度が得られ、互換精度を±0.5Kに入れるのに必要な各線材のCo濃度を計算すると0.5±0.005at.%となる」技術。

c また、上記a(a)及び(d)の記載から、甲第7号証には、次の技術が記載されていると認められる。
「測温抵抗体において、高純度のPtに微量の磁性不純物であるコバルトを添加した磁性希薄合金をつくり、極低温域で有効な感度を得るにあたり、400℃程度の低い温度で熱処理を行うことによって、結晶粒度を変えずに結晶の加工歪を補正して残留抵抗を調整することができる」技術。

(エ)甲第8号証
a 出願日前に頒布された刊行物である甲第8号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(a)「実用新案登録請求の範囲
コバルト含有率が0.5mol%近傍の白金・コバルト合金よりなる抵抗線を硼硅酸ガラスの巻枠に巻回し上記硼硅酸ガラスと同質ガラスでコーテイングした温度センサを収納した保護管内に、無機粉末を充填すると共にヘリウムガスを封入したことを特徴とする極低温用温度計。」(第1欄第1ないし7行)

(b)「第2図は、このような温度センサTHを保護管5内に収納した本考案温度計の構造を示す。
筒状の保護管5は先端部近傍に温度センサTHが配置される。保護管の後端部はカツプ状の本体6の底部に形成された孔6aに嵌合され、7で示すように溶接で両者が気密に接合されている。
8は本体6上記の開放部に嵌合されたハーメチツク端子であり、その外周部を巻回する金属部8aと本体6とは溶接部9により気密に接合されている。8bはハーメチツク端子の絶縁部を気密に貫通する複数のリード線ガイド用の金属棒である。
10は保護管5内及び本体6内に充填された熱伝導特性の良い無気粉末、例えばアルミナ(Al_(2)O_(3))である。
さらに本考案温度計の特徴は、これら内部にヘリウムガス11が封入されており、極低温領域での熱伝等特性を一層向上させている点にある。」(第2欄第6ないし23行)

(c)「従来の温度計では無機粉末を充填したものが知られているが、極低温で使用した場合粉末のすき間に存在している空気が液化し、体積収縮によつて保護管内に負圧が生じ、温度センサに圧力歪が生じ測定精度が低下する。
本考案のごとくすき間の空気をヘリウムで置換した構成によれば液化点4.23Kまではヘリウムは気体の状体を保持し高成度、高精度で安定な測定ができる。実用上は4.23Kまでの測定ができれば極低温用温度計として充分である。」(第3欄第15行ないし第4欄第2行)

b したがって、上記a(a)ないし(c)の記載から、甲第8号証には、次の技術が記載されていると認められる。
「4.23Kまで安定な測定ができる極低温用温度計において、コバルト含有率が0.5mol%近傍の白金・コバルト合金よりなる抵抗線を用いる」技術。

(オ)甲第9号証
a 出願日前に頒布された刊行物である甲第9号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にPbOを含有せず、荷重軟化点(Td)が500℃以下のビスマス系ガラス粉末を含有する封着用組成物であって、ビスマス系ガラス粉末が、重量%表示で、
Bi_(2)O_(3) :65?76%
ZnO :13?20%
CaO、SrO及びBaOの内の少なくとも1種 :0.5?10%
Al_(2)O_(3) :0.5?1.5%
B_(2)O_(3) :5?12%
の組成を有することを特徴とする封着用組成物。」

(b)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は封着用組成物に関し、詳しくは実質的に鉛を含有しない封着用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、封着用組成物はPbO-SiO_(2)-B_(2)O_(3)系等の鉛ガラス粉末とPbTiO_(3)のようなセラミックスフィラーからなるのが一般的であった。しかし近年、鉛を含むガラスは環境上の観点から使用が避けられる傾向が出てきている。このような中で、鉛成分を含まずに低温で封着できる組成物の開発が急がれている。
鉛を含まない低融点ガラスとしては、リン酸塩ガラス、硼珪酸塩ガラス、アルカリ珪酸塩ガラスなどが知られているが、その中で低温での焼成が可能、即ちガラスの低融化及び化学的耐久性の観点から、ビスマス系ガラスが着目されている。
しかし、これまでに開発されてきたビスマス系ガラスの大部分は低融点ではあるが、熱膨張係数が高い、若しくは安定性が悪い等の問題点があった。例えば、特開平9-278483号公報に開示されているBi_(2)O_(3)系ガラスは、ZnO量が少ないため熱膨張係数が大きいという問題がある。
またZnOが多く含まれるガラスも開発されているが(特開平10-139478号公報)、Bi_(2)O_(3)量が多くてAl_(2)O_(3)が含有されていないため、ガラスの化学的耐久性に問題がある。またBi_(2)O_(3)量が多いためにガラスの安定性が悪く、フィラーを含有させて熱処理を行うと結晶化が促進され、十分な封着ができないという問題があった。
それ故、低融点であり、且つ熱膨張係数がそれほど高くなく、更に安定性の良いビスマス系ガラスの開発、及び該ガラスと耐火物フィラーからなる封着用組成物の開発が強く望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記従来のビスマス系ガラスを用いた封着用組成物における問題点を解消し、且つ耐火物フィラーを含有させても低温での封着が可能で、熱膨張係数がそれほど高くなく、しかも安定性のよい封着用組成物を提供することを課題とする。」

b したがって、上記a(a)及び(b)の記載から、甲第9号証には、次の技術が記載されていると認められる。
「荷重軟化点(Td)が500℃以下であり、Bi_(2)O_(3)を主成分としZnO及びB_(2)O_(3)を含む組成を有するビスマス系ガラス粉末を、低温で封着できる組成物として用いる」技術。

(カ)甲第10号証
a 出願日前に頒布された刊行物である甲第10号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(a)「本発明は、絶縁保持体の孔内に螺旋状の抵抗線を螺旋間に絶縁充填物を介在するようにして収容した測温抵抗体に関するものである。」(第1ページ右下欄第8ないし10行)

(b)「以下、本発明を添付する図面に示す具体的な実施例に基いて詳細に説明する。
セラミツク等の耐熱絶縁体で形成した直径0.9mmの柱状の絶縁保持体(1)には軸方向に直径0.2?0.25mmの2個の孔(2)(2)が設けてある。
白金線を密に螺旋巻きにした外径0.17mmの抵抗線(3)を、前記絶縁保持体(1)の2倍の長さより若干短くし、その両端にリード線(4)(4)を溶接等により接続する。
絶縁保持体(1)を第1図に示すように垂直状に位置させ、抵抗線(3)の中間部を折り曲げてリード線(4)(4)をそれぞれ孔(2)(2)に上方より挿通させる。抵抗線(3)の螺旋間にリード線(4)(4)の自重により間隙が生じないときはリード線(4)(4)を下方へ引つ張つて絶縁保持体(1)下端開口を接着剤にて閉蓋(5)する。
次に、アルミナAl_(2)O_(3)、マグネシアMgO、ベリリアの絶縁粉末とガラス粉末や樹脂粉末の可融性物質とをバイブレータ等により振動を与えつつ上方より孔(2)(2)内に流入させ抵抗線(3)の螺旋間に介在させ充填する。この例の充填物は80?95重量%を直径10?20μ程度の粉状アルミナ(6)で残余(5?20重量%)を直径20μ以下の粉状のガラス(7)で構成する。粉状アルミナ(6)は第2図に示すような球状の外形形状をした粉末である。アルミナ(6)は球状で、しかも、粉状アルミナ(6)の直径を10?20μ、粉状のガラス(7)の直径を20μ以下に設定したことによりガラス(7)がアルミナ(6)中に均等に混合できて全体にわたり同じ割合で結合できる。球状のアルミナ(6)の間には抵抗がすくないのでガラス(7)は容易に入りやすい。充填後に絶縁保持体(1)上端開口を接着剤にて閉蓋(8)する。
続いて、この絶縁保持体(1)を1015℃で3分間以上加熱して焼成する。すると、第2図に示すようにガラス(7)が融解してアルミナ(6)、抵抗線(3)、孔(2)内壁表面を濡らしてこれ等を融着する。
本発明の測温抵抗体は、上述のような構成で抵抗線を収容する孔内の絶縁粉末の粒子が抵抗線、孔内壁に融着しているため、振動を受けても絶縁粉末粒子が孔内を移動することは皆無となり、抵抗線の断線の虞はなく耐振性は向上し、高温時においても抵抗線は歪みを生じず経時変化特性や安定特性を損なうことはない。」(第2ページ左上欄第17行ないし右下欄第1行)

b したがって、上記a(a)及び(b)の記載から、甲第10号証には、次の技術が記載されていると認められる。
「測温抵抗体において、セラミツク等の耐熱絶縁体で形成した柱状の絶縁保持体の軸方向に2個の孔を設け、抵抗線の両端にリード線を接続し、抵抗線の中間部を折り曲げて、それぞれ孔に上方より挿通させ、絶縁保持体下端開口を接着剤にて閉蓋し、次に、80?95重量%を粉状アルミナで残余(5?20重量%)を粉状のガラスで構成された充填物を、上方より孔内に流入させ抵抗線の螺旋間に介在させ充填し、充填後に絶縁保持体上端開口を接着剤にて閉蓋し、続いて、この絶縁保持体を加熱して焼成すると、ガラスが融解してアルミナ、抵抗線、孔内壁表面を濡らしてこれ等を融着するため、振動を受けても絶縁粉末粒子が孔内を移動することは皆無となり、抵抗線の断線の虞はなく耐振性は向上する」技術。

ウ 対比
(ア)本件訂正発明1について
a 本件訂正発明1と、実施品発明とを対比する。
(a)実施品発明において、「白金測温抵抗体素子」は、「白金抵抗線とセラミック管と充填材とで構成され」たものであるところ、「アルミナボディは、Alを主体としSi、Ca、Mgも含む酸化物からなり、円形穴を2個有する略円形断面を呈し、穴内に、マグネシアからなる粒子及びSi、O、Al、Ba、K、Zrからなるガラス質の粒子と、僅かにRhを含むPt線とが存在し」ていることから、実施品発明は、「僅かにRhを含むPt線」が「白金抵抗線」として用いられ、「マグネシアからなる粒子及びSi、O、Al、Ba、K、Zrからなるガラス質の粒子」が「充填材」として用いられ、「Alを主体としSi、Ca、Mgも含む酸化物からな」る「アルミナボディ」が「セラミック管」として用いられているものということができる。
そして、実施品発明における、「僅かにRhを含むPt線」である「白金抵抗線」は、本件訂正発明1の「測温抵抗体線」に相当する。
また、実施品発明における、「Alを主体としSi、Ca、Mgも含む酸化物からな」る「アルミナボディ」である「セラミック管」は、その「穴内に」、「僅かにRhを含むPt線」である「白金抵抗線」「が存在し」ているので、本件訂正発明1の「この測温抵抗体線を内部に収容する外枠」に相当する。
さらに、実施品発明における、「マグネシアからなる粒子及びSi、O、Al、Ba、K、Zrからなるガラス質の粒子」である「充填材」は、「アルミナボディ」である「セラミック管」の「穴内に」、「僅かにRhを含むPt線と」ともに「存在し」ているので、本件訂正発明1の「当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材」に相当する。
そして、実施品発明における「-200℃?+750℃までの温度領域の計測ができる白金測温抵抗体素子」と、本件訂正発明1の「極低温用測温抵抗体素子」とは、「測温抵抗体素子」である点で共通する。
したがって、実施品発明の「白金抵抗線とセラミック管と充填材とで構成され-200℃?+750℃までの温度領域の計測ができる白金測温抵抗体素子の製造方法」と、本件訂正発明1の「測温抵抗体線と、この測温抵抗体線を内部に収容する外枠と、当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材とを備えた極低温用測温抵抗体素子の製造方法」とは、「測温抵抗体線と、この測温抵抗体線を内部に収容する外枠と、当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材とを備えた測温抵抗体素子の製造方法」である点で共通する。

(b)実施品発明の「マグネシアからなる粒子」は、多結晶体の粉末ということができ、絶縁材であることも明らかであるので、本件訂正発明1の「多結晶体の無機絶縁材粉末」に相当する。また、実施品発明の「Si、O、Al、Ba、K、Zrからなるガラス質の粒子」は、非晶質体の粉末ということができ、絶縁材であることも明らかであるので、本件訂正発明1の「非晶質体の絶縁材であるガラス粉末」に相当する。
ここで、白金の融点は1768℃(ロジウムを含む合金の場合は、ロジウムの含有率に応じ更に融点が高くなる。)であり、アルミナ(α)の融点は2072℃であり、マグネシアの融点は2852℃である。これに対し、実施品発明における「Si、O、Al、Ba、K、Zrからなるガラス質の粒子」の軟化点は、明らかでないものの、乙第3号証によれば、最も高い軟化点を有すると考えられるガラス材料は「石英ガラス」であって、その軟化点は1667℃であるから、実施品発明における「Si、O、Al、Ba、K、Zrからなるガラス質の粒子」の軟化点は、1667℃以下と認められ、「マグネシアからなる粒子」、「僅かにRhを含むPt線」及び「Alを主体とし、Si、Ca、Mgも含む酸化物であ」る「アルミナボディ」の溶融する温度よりも低いものということができる。
したがって、実施品発明において、「Alを主体としSi、Ca、Mgも含む酸化物からな」る「アルミナボディ」である「セラミック管」の「穴内」への「充填材」として、「マグネシアからなる粒子及びSi、O、Al、Ba、K、Zrからなるガラス質の粒子」を用いることは、本件訂正発明1において、「前記充填材として、多結晶体の無機絶縁材粉末と、当該無機絶縁材粉末、前記測温抵抗体線及び前記外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末との混合物を、前記外枠と前記測温抵抗体線との間に充填」することに相当する。

b したがって、上記a(a)及び(b)から、本件訂正発明1と実施品発明とは、
「測温抵抗体線と、この測温抵抗体線を内部に収容する外枠と、当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材とを備えた測温抵抗体素子の製造方法において、
前記充填材として、多結晶体の無機絶縁材粉末と、当該無機絶縁材粉末、前記測温抵抗体線及び前記外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末との混合物を、前記外枠と前記測温抵抗体線との間に充填する
測温抵抗体素子の製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
測温抵抗体素子が、本件訂正発明1では、「極低温用」であるのに対し、
実施品発明では、「-200℃?+750℃までの温度領域の計測ができる」点。

(相違点2)
本件訂正発明1では、「この充填の後、前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、その後当該溶融したガラス粉末を降温して固化させる」のに対し、
実施品発明では、そのような工程を有しているか否か明らかでない点。

(イ)本件訂正発明2について
a 本件訂正発明2と、実施品発明とを対比する。
実施品発明において、「僅かにRhを含むPt線」である「白金抵抗線」が、「白金コイル」の形態で「セラミック管の中に挿入」されることと、本件訂正発明2において、「前記測温抵抗体線は、白金とコバルトの合金を材料とし、これをコイル状に形成したものである」こととは、「前記測温抵抗体線は、コイル状に形成したものである」点で共通する。

b したがって、上記aから、本件訂正発明2と実施品発明とは、本件訂正発明1と実施品発明との一致点及び相違点(上記(ア)b)に加え、更に、
「前記測温抵抗体線は、コイル状に形成したものである」
点で一致し、次の点で相違する。

(相違点3)
測温抵抗体線の材料が、本件訂正発明2では、「白金とコバルトの合金」であるのに対し、
実施品発明では、「僅かにRhを含む」「白金」である点。

(ウ)本件訂正発明3について
本件訂正発明3と、実施品発明とを対比すると、本件訂正発明3と実施品発明とは、本件訂正発明1と実施品発明との一致点及び相違点(上記(ア)b)並びに本件訂正発明2と実施品発明との一致点及び相違点(上記(イ)b)に加え、更に、次の点で相違する。

(相違点4)
本件訂正発明3では、「前記白金とコバルトの合金は、白金にコバルトが0.5mol%含まれた合金であ」るのに対し、
実施品発明では、そのような構成とはされていない点。

(相違点5)
本件訂正発明3では、「前記ガラス粉末溶融のための加熱温度は、460℃以上520℃以下であり、かつ、前記ガラス粉末の軟化点より50℃以上高い温度である」のに対し、
実施品発明では、そのような構成とされているか明らかでない点。

(エ)本件訂正発明4について
本件訂正発明4と、実施品発明とを対比すると、本件訂正発明4と実施品発明とは、本件訂正発明1と実施品発明との一致点及び相違点(上記(ア)b)、本件訂正発明2と実施品発明との一致点及び相違点(上記(イ)b)並びに本件訂正発明3と実施品発明との一致点及び相違点(上記(ウ))に加え、更に、次の点で相違する。

(相違点6)
無機絶縁材粉末が、本件訂正発明4では、「アルミナ粉末であ」るのに対し、
実施品発明では、「マグネシアからなる粒子」である点。

(相違点7)
ガラス粉末が、本件訂正発明4では、「酸化ビスマスが主成分で、これに酸化亜鉛及び酸化ボロンを加えたものであ」るのに対し、
実施品発明では、「Si、O、Al、Ba、K、Zrからなるガラス質の粒子」である点。

(相違点8)
本件訂正発明4では、「前記ガラス粉末の前記充填材に対する混合比率は、3.5wt%から10.0wt%の範囲である」のに対し、
実施品発明では、「マッピング分析結果からマグネシア粒子とガラス部の重量比を算出すると、多くの誤差を含み真値と乖離している可能性があるものの、ガラス部の重量%として77.2wt%という値が得られたものである」点。

(オ)本件訂正発明5について
a 本件訂正発明5と、実施品発明とを対比する。
両端にリード線が接続された1本の測温抵抗体線を、セラミック製柱状体の軸方向に貫通する2個の穴に挿通させ、穴内に絶縁粉末を充填し、絶縁保持体の両側開口を封止してなる構造は、測温抵抗体素子における常とう手段と認められる(例えば甲5号証(上記イ(ア)b)、甲10号証(上記イ(カ)b))。したがって、実施品発明も、「リード」が、「白金一本式抵抗線を使用した」ものである「白金抵抗線」の両端に接続されるとともに、「2個」の「円形穴」が、「アルミナボディ」である「セラミック管」を軸方向に貫通し、その中に「白金抵抗線」が往復して挿通されているものと捉えることができる。
そして、実施品発明における、「Alを主体としSi、Ca、Mgも含む酸化物からな」る「アルミナボディ」である「セラミック管」は、管状の絶縁体であることが明らかであって、絶縁碍子ということができるから、実施品発明において、「白金一本式抵抗線を使用し」、「アルミナボディは、Alを主体としSi、Ca、Mgも含む酸化物からなり、円形穴を2個有する略円形断面を呈し、穴内に、マグネシアからなる粒子及びSi、O、Al、Ba、K、Zrからなるガラス質の粒子と、僅かにRhを含むPt線とが存在」することと、本件訂正発明5において、「極低温用測温抵抗体素子は、前記測温抵抗体線の両端に接続されるリード線をさらに備え、前記外枠は、軸方向に二つの貫通孔を有する略円形断面の柱状をした絶縁碍子であり、前記測温抵抗体線を、その両端部が前記各貫通孔の同側端部から露出するように往復して挿入し、前記充填材を、前記貫通孔の内壁と前記測温抵抗体線との隙間に充填すること」とは、「測温抵抗体素子は、前記測温抵抗体線の両端に接続されるリード線をさらに備え、前記外枠は、軸方向に二つの貫通孔を有する略円形断面の柱状をした絶縁碍子であり、前記測温抵抗体線を、その両端部が前記各貫通孔の同側端部から露出するように往復して挿入し、前記充填材を、前記貫通孔の内壁と前記測温抵抗体線との隙間に充填する」点で共通する。

b したがって、上記aから、本件訂正発明5と実施品発明とは、本件訂正発明1と実施品発明との一致点及び相違点(上記(ア)b)に加え、更に、
「測温抵抗体素子は、前記測温抵抗体線の両端に接続されるリード線をさらに備え、
前記外枠は、軸方向に二つの貫通孔を有する略円形断面の柱状をした絶縁碍子であり、
前記測温抵抗体線を、その両端部が前記各貫通孔の同側端部から露出するように往復して挿入し、
前記充填材を、前記貫通孔の内壁と前記測温抵抗体線との隙間に充填する」
点で一致する。

(カ)本件訂正発明6について
a 本件訂正発明6と、実施品発明とを対比する。
上記(オ)aを踏まえると、実施品発明の「下側ガラス封止」及び「上側ガラス封止」は、「アルミナボディ」である「セラミック管」の「2個」の「円形穴」を両側から封止するものといえる。
そして、実施品発明における、「O、Si、Pb、Ba、Al、Na、Ca、Kからな」る「下側ガラス封止」及び「O、Si、Pb、Zr、Al、Zn、Ca、Feからな」る「上側ガラス封止」が、いずれも酸化物であって絶縁体を材料とするものであるので、実施品発明において、「白金測温抵抗体素子」が、「下側ガラス封止と、上側ガラス封止と」「を有して」いることは、本件訂正発明6において、「絶縁材を材料とする封止材によって前記各貫通孔の両側端部を封止する工程をさらに備えていること」に相当する。

b したがって、上記aから、本件訂正発明6と実施品発明とは、本件訂正発明1と実施品発明との一致点及び相違点(上記(ア)b)並びに本件訂正発明5と実施品発明との一致点(上記(オ)b)に加え、更に、
「絶縁材を材料とする封止材によって前記各貫通孔の両側端部を封止する工程をさらに備えている」
ことの点で一致する。

エ 判断
(ア)無効理由1について
a 本件訂正発明1について
(a)上記相違点1について検討するにあたり、まず、本件訂正発明1の「極低温用測温抵抗体素子」における「極低温用」の意義について、検討する。
本件訂正明細書には、「本発明は、4K(K:絶対温度の単位)から90Kの極低温域の温度を測定する測温抵抗体素子の製造方法に関する。」(【0001】)、「測定温度が73K(-200℃)以下になると、温度変化に対する白金の電気抵抗の変化割合が減少して測定感度が低下するために、温度測定誤差が増加し、測定不可能となる。このため、73K以下の温度も測定対象とする場合は、測温抵抗体線4の材料として特許文献1及び非特許文献1に示されるような白金とコバルトの合金が通常用いられる。」(【0009】)、「白金とコバルトの合金を材料とする低温用の測温抵抗体線を用い、外枠内に無機絶縁材粉末を介在させてその測温抵抗体線を収容した従来の測温抵抗体素子は、約90K以下の温度において、温度が下降するにつれて温度測定誤差がプラス側に増加し、温度が10K以下になるとその増加が急激になるという問題があった。」(【0012】)、「本発明は、上述した誤差に鑑みてなされたものであり、90Kから4Kの極低温域で精度よく温度測定ができる測温抵抗体素子の製造方法を提供することを課題としている。」(【0019】)及び「従来の測温抵抗体素子で見られていた90K以下の温度において、温度が下降するにつれて温度測定誤差がプラス側に増加し、特に10Kから4Kの低温域で誤差が急増し、かつその誤差はSN比を大きくするために測定電流を増すと増加するという現象が生じず、90Kから4Kの極低温域においても、測定電流値の影響を受けずに精度よく温度測定ができる測温抵抗体素子の製造方法とした。」(【0038】)とあり、また、一般に、「極低温」とは、「絶対零度、すなわちセ氏マイナス273.15度に近い低温。液体水素や液体ヘリウムの温度領域を指す。」とされている(「株式会社岩波書店 広辞苑第六版」)。したがって、本件訂正発明1における「極低温用測温抵抗体素子」とは、「90Kから4K」の温度範囲のうち、少なくとも絶対零度に近い「10Kから4K」の温度範囲において、「誤差」を生じることなく「精度よく温度測定ができる」ような「測温抵抗体素子」を意味するものと理解できる。
そこで、次に、実施品発明の「白金測温抵抗体素子」が、「90Kから4K」の温度範囲のうち、少なくとも絶対零度に近い「10Kから4K」の温度範囲において、「誤差」を生じることなく「精度よく温度測定ができる」ものといえるか否か、について検討する。
実施品発明は、「-200℃?+750℃までの温度領域の計測ができ」るとされている。一方で、例えば甲第6号証(上記イ(イ)b)、甲第7号証(上記イ(ウ)b)に示されているように、磁性不純物を添加していない通常の白金測温抵抗体が、極低温領域でほとんど感度がなくなることは、技術常識であるところ、実施品発明の「白金測温抵抗体素子」は、「白金抵抗線」として「僅かにRhを含むPt線」を用いたものであるので、絶対零度に近い「10Kから4K」の温度範囲では、ほとんど感度がなくなるため精度の良い測定ができないことは、明らかである。してみると、実施品発明の「白金測温抵抗体素子」は、「90Kから4K」の温度範囲のうち、73K(-200℃)以上の温度範囲で「計測ができる」ものであるとしても、絶対零度に近い「10Kから4K」の温度範囲では、「誤差」を生じることなく「精度よく温度測定ができる」ものとはいえない。
したがって、実施品発明の「白金測温抵抗体素子」が「極低温用」のものであるということはできないから、相違点1は、実質的な相違点である。

(b)次に、上記相違点2について検討する。
実施品発明は、「アルミナボディ」である「セラミック管」の「穴内」に、「マグネシアからなる粒子及びSi、O、Al、Ba、K、Zrからなるガラス質の粒子」を「充填」し、「充填材により振動、衝撃に耐えるように加工」したものであるところ、例えば甲第5号証(上記イ(ア)b)、甲第10号証(上記イ(カ)b)に示されているように、一般に、測温抵抗体において、抵抗線を挿入したセラミック製柱状体内に充填材を充填し焼成することにより、振動や衝撃に強いものとすることは、周知技術と認められる。
しかしながら、仮に実施品発明における「充填材により振動、衝撃に耐えるよう」な「加工」が、当該周知技術のように、「充填」後に焼成を行うことを意味するものであったとしても、焼成の際の加熱温度が「Si、O、Al、Ba、K、Zrからなるガラス質の粒子」の軟化点に比して高いか否かは明らかでない。
ところで、請求人は、甲第3号証の写真10、11から、充填後の加熱の際の温度がガラス質の軟化点よりも高いことは、明らかである旨主張している。しかしながら、写真10、11に見られるような、ガラス質の粒子の変形や、ガラス質とマグネシア粒子の密着が、充填後の加熱によって生じた否か、明らかでなく、また、仮にそれらが充填後の加熱により生じたものであるとしても、ガラスは軟化点以下の温度であっても時間をかければある程度の変形は生じると認められるから、充填後の加熱温度についてガラス質の軟化点よりも高いことが明らかであるとはいえない。なお、請求人は、甲第22号証を提示し、角張った形状のガラス粉末とマグネシア粉末とを混合してアルミナ碍子の2穴に充填し、軟化点より高い温度で加熱(ガラスの軟化点である736℃よりも高温の756℃で60分加熱)して冷却したサンプルの断面を分析した結果を示しているが、実施品発明において、充填時におけるガラス質粒子の形状が不明である(なお、甲第11号証に示されているように、球形粒子からなる充填材を焼成する例も知られている(第2ページ右上欄第3行ないし左下欄第8行)。)以上は、充填後の加熱温度についてガラス質の軟化点よりも高いことが、当該分析結果から明らかであるとはいえない。
したがって、上記相違点2は、実質的な相違点である。

(c)以上のとおり、上記相違点1及び2は、いずれも実質的な相違点であるので、本件訂正発明1は、実施品発明ではない。

b 本件訂正発明5について
上記a(a)及び(b)のとおり、上記相違点1及び2は、いずれも実質的な相違点であるので、本件訂正発明5は、実施品発明ではない。

c 本件訂正発明6について
上記a(a)及び(b)のとおり、上記相違点1及び2は、いずれも実質的な相違点であるので、本件訂正発明6は、実施品発明ではない。

d 小括
以上のとおり、甲3分析対象製品が出願日前に公然実施された先行実施品のうちの1個であったと仮定しても、本件訂正発明1、5及び6は、いずれも実施品発明ではなく特許法第29条第1項第2号に該当しないから、無効理由1によっては、本件訂正発明1、5及び6に係る特許を無効とすることはできない。

(イ)無効理由2について
a 本件訂正発明1について
(a)本件訂正発明1は、測温抵抗体素子を「極低温用」とした上で(相違点1)、この極低温領域における温度測定精度の向上を目的に、「この充填の後、前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、その後当該溶融したガラス粉末を降温して固化させる」ようにしたものであって(相違点2)、これにより、極低温領域である4Kの低温までジュール熱の影響を受けない精度のよい温度測定を可能とするもの(本件訂正明細書【0025】)ということができる。そこで、以下、上記相違点1及び2について、まとめて検討する。
甲第10号証には、「測温抵抗体において、セラミツク等の耐熱絶縁体で形成した柱状の絶縁保持体の軸方向に2個の孔を設け、抵抗線の両端にリード線を接続し、抵抗線の中間部を折り曲げて、それぞれ孔に上方より挿通させ、絶縁保持体下端開口を接着剤にて閉蓋し、次に、80?95重量%を粉状アルミナで残余(5?20重量%)を粉状のガラスで構成された充填物を、上方より孔内に流入させ抵抗線の螺旋間に介在させ充填し、充填後に絶縁保持体上端開口を接着剤にて閉蓋し、続いて、この絶縁保持体を加熱して焼成すると、ガラスが融解してアルミナ、抵抗線、孔内壁表面を濡らしてこれ等を融着するため、振動を受けても絶縁粉末粒子が孔内を移動することは皆無となり、抵抗線の断線の虞はなく耐振性は向上する」技術(上記イ(カ)b)が記載されている。
しかしながら、甲第10号証には、測温抵抗体の測定温度範囲については記載されておらず、また、抵抗線が白金にコバルトを含んだものであるとの記載もないから、甲第10号証に記載の測温抵抗体が「極低温用」のものであるということはできない。
そして、このような点は、甲第5号証においても同様である。
したがって、実施品発明において、甲第5号証及び甲第10号証に記載された技術を考慮したとしても、極低温領域にまで温度検出範囲を広げ、「極低温用」の測温抵抗体素子とした上で、更に、極低温領域である4Kの低温までジュール熱の影響を受けない精度のよい温度測定を可能とするために、「この充填の後、前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、その後当該溶融したガラス粉末を降温して固化させる」ようにして、本件訂正発明1の上記相違点1及び2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(b)したがって、本件訂正発明1は、実施品発明並びに甲第5号証及び甲第10号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

b 本件訂正発明5について
本件訂正発明5の上記相違点1及び2に係る構成とすることが、上記aで検討したとおり当業者が容易になし得たことであるとはいえない以上、本件訂正発明5は、実施品発明並びに甲第5号証及び甲第10号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

c 本件訂正発明6について
本件訂正発明6の上記相違点1及び2に係る構成とすることが、上記aで検討したとおり当業者が容易になし得たことであるとはいえない以上、本件訂正発明6は、実施品発明並びに甲第5号証及び甲第10号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

d 小括
以上のとおり、甲3分析対象製品が出願日前に公然実施された先行実施品のうちの1個であったと仮定しても、本件訂正発明1、5及び6は、いずれも、実施品発明並びに甲第5号証及び甲10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、無効理由2によっては、本件訂正発明1、5及び6に係る特許を無効とすることはできない。

(ウ)無効理由3について
a 本件訂正発明2について
(a)上記相違点3については、極低温用の測温抵抗線の材料に関するものである。したがって、技術的なつながりから、上記相違点1及び2とまとめて、上記(イ)a(a)で既に検討した点に加え、更に検討する。
甲第6号証(上記イ(イ)b)、甲第7号証(上記イ(ウ)b)、甲第8号証(上記イ(エ)b)には、測温抵抗体において、白金にコバルトが含まれた合金よりなる抵抗線を用いることで、極低温領域まで温度検出範囲を広げることが記載されているものの、「この充填の後、前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、その後当該溶融したガラス粉末を降温して固化させる」ようにする点については記載されていない。
そして、このような点は、甲第9号証においても同様である。
したがって、実施品発明において、甲第5号証ないし甲第10号証に記載された技術を考慮したとしても、白金にコバルトが含まれた合金よりなる抵抗線を用いて極低温領域にまで温度検出範囲を広げ、「極低温用」の測温抵抗体素子とした上で、更に、極低温領域である4Kの低温までジュール熱の影響を受けない精度のよい温度測定を可能とするために、「前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、その後当該溶融したガラス粉末を降温して固化させる」ようにして、本件訂正発明2の上記相違点1、2及び3に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(b)したがって、本件訂正発明2は、実施品発明及び甲第5号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

b 本件訂正発明3について
(a)上記相違点4については、上記相違点3と同様に、極低温用の測温抵抗線の材料に関するものである。したがって、技術的なつながりから、上記相違点1、2及び3とまとめて検討する。ここで、上記相違点1、2及び3については、上記a(a)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことであるとはいえないから、本件訂正発明3の上記相違点1、2、3及び4に係る構成とすることも、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(b)次に、上記相違点5について検討する。
甲第7号証には、「測温抵抗体において、高純度のPtに微量の磁性不純物であるコバルトを添加した磁性希薄合金をつくり、極低温域で有効な感度を得るにあたり、400℃程度の低い温度で熱処理を行うことによって、結晶粒度を変えずに結晶の加工歪を補正して残留抵抗を調整することができる」技術(上記イ(ウ)c)が記載されている。
しかしながら、甲第7号証に記載された上記技術は、磁性希薄合金を用いた測温抵抗体の抵抗素線に対する熱処理に関するものであって、保護管への充填後に充填材のガラス粉末を溶融させるための熱処理に関するものではないから、実施品発明において、甲第7号証に記載された上記技術を考慮したとしても、「セラミック管」に「充填材」を充填した後に、「ガラス粉末溶融のため」に「460℃以上520℃以下」で加熱すること、まして「ガラス粉末の軟化点より50℃以上高い温度」で加熱することは、当業者にとって動機付けられないことである。
そして、測温抵抗体素子の製造に関し、保護管へ充填材を充填した後に「ガラス粉末溶融のため」に「460℃以上520℃以下」かつ「ガラス粉末の軟化点より50℃以上高い温度」に加熱することについては、甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証ないし甲第10号証のいずれにも記載されておらず周知技術であったともいえないから、実施品発明において、本件訂正発明3の上記相違点5に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(c)したがって、本件訂正発明3は、実施品発明及び甲第5号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

c 本件訂正発明4について
(a)まず、上記相違点6について検討する。
測温抵抗体の充填材としてアルミナ粉末を用いることは、一般的なことである。しかしながら、実施品発明は、「充填材には、独自の化合物を開発し、白金の温度変化率に近い素材を使って、白金コイルを保護する」ようにしたものであるから、実施品発明において、「充填材」に用いる材料を変更し「マグネシア」に代えてアルミナを採用することは、当業者にとって動機付けられないことである。
したがって、実施品発明において、本件訂正発明4の上記相違点6に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(b)次に、上記相違点7について検討する。
甲第9号証には、「荷重軟化点(Td)が500℃以下であり、Bi_(2)O_(3)を主成分としZnO及びB_(2)O_(3)を含む組成を有するビスマス系ガラス粉末を、低温で封着できる組成物として用いる」技術(上記イ(オ)b)が記載されている。
しかしながら、実施品発明は、「750度耐熱試験を実施」し、「-200℃?+750℃までの温度領域の計測ができる」ようにしたものであるところ、「Si、O、Al、Ba、K、Zrからなるガラス質の粒子」の代わりに「荷重軟化点(Td)が500℃以下であり、Bi_(2)O_(3)を主成分としZnO及びB_(2)O_(3)を含む組成を有するビスマス系ガラス粉末」を用いたとすると、「+750℃」に近い温度では当該「ビスマス系ガラス粉末」が軟化してしまうから、実施品発明において、甲第9号証に記載された上記技術を考慮したとしても、「硬質ガラス粉末」に代えて「荷重軟化点(Td)が500℃以下」の「ビスマス系ガラス粉末」を採用することは、当業者にとって動機付けられないことである。
そして、測温抵抗体素子の充填材に、「酸化ビスマスが主成分で、これに酸化亜鉛及び酸化ボロンを加え」てなる「ガラス粉末」を用いることについては、甲第5号証ないし甲第8号証及び甲第10号証のいずれにも記載されておらず周知技術であったともいえないから、実施品発明において、本件訂正発明4の上記相違点7に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(c)続いて、上記相違点8について検討する。
甲第10号証には、「測温抵抗体において、セラミツク等の耐熱絶縁体で形成した柱状の絶縁保持体の軸方向に2個の孔を設け、抵抗線の両端にリード線を接続し、抵抗線の中間部を折り曲げて、それぞれ孔に上方より挿通させ、絶縁保持体下端開口を接着剤にて閉蓋し、次に、80?95重量%を粉状アルミナで残余(5?20重量%)を粉状のガラスで構成された充填物を、上方より孔内に流入させ抵抗線の螺旋間に介在させ充填し、充填後に絶縁保持体上端開口を接着剤にて閉蓋し、続いて、この絶縁保持体を加熱して焼成すると、ガラスが融解してアルミナ、抵抗線、孔内壁表面を濡らしてこれ等を融着するため、振動を受けても絶縁粉末粒子が孔内を移動することは皆無となり、抵抗線の断線の虞はなく耐振性は向上する」技術(上記イ(カ)b)が記載されている。
しかしながら、実施品発明は、「充填材には、独自の化合物を開発し、白金の温度変化率に近い素材を使って、白金コイルを保護する」ようにしたものであるから、実施品発明において、甲第10号証に記載された上記技術を考慮したとしても、「充填材」に用いる材料である「マグネシア」と「ガラス質」との比率を大幅に変更して「ガラス質」を「3.5wt%から10.0wt%の範囲」とすることは、当業者にとって動機付けられないことである。
したがって、実施品発明において、本件訂正発明4の上記相違点8に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(d)加えて、本件訂正発明4の上記相違点1ないし5に係る構成とすることは、上記b(a)及び(b)で検討したとおり当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(e)したがって、本件訂正発明4は、実施品発明及び甲第5号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

d 小括
以上のとおり、甲3分析対象製品が出願日前に公然実施された先行実施品のうちの1個であったと仮定しても、本件訂正発明2ないし4は、いずれも実施品発明及び甲5ないし10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、無効理由3によっては、本件訂正発明2ないし4に係る特許を無効とすることはできない。

2 無効理由4ないし6について
(1)甲第5号証ないし甲第10号証の記載事項
ア 甲第5号証
(ア)甲第5号証には、図面とともに、次の事項が記載されている(上記1(2)イ(ア)aで摘記した事項と重複する部分についても、再掲した。)。
a 「本発明は温度変化による電気抵抗の変化を利用して流体または固体の温度を測定する測温抵抗体、流体の流れの中に置いた場合の温度変化による電気抵抗の変化を検出してこれによつて流体の流速を測定する流速計測用センサー、またはシーズヒーターなどの抵抗線を細管内に固定し保護する方法にかかるものである。」(第1欄第9ないし15行)

b 「以下実施例を図面について説明すれば、第1図に示す如く径20ミクロンの白金細線を径約0.35mmの螺旋状に巻いた抵抗細線2の両端に径0.2mmの白金リード線1,1を電気溶接等によつて接続し、アルミナまたはシリカ或はその混合物よりなる内径0.5mm、長さ約4mmのセラミツク細管3にリード線1,1と抵抗細線2との溶着部が納まるように該白金抵抗細線2を挿通し、セラミツク細管3の外側にたとえば熱収縮性プラスチツクチユーブで作つたモールド5を被嵌して白金リード線1の一部をモールド5より突出させ適宜の接着剤で仮止し他側の白金リード線1は瞬間接着剤6によりモールド5の一部に固定した後、セラミツク粉末たとえば粒子径7ミクロン以下のアルミナ粉末50%とシリカ粉末50%との混合微粉末を約3倍量の水、メチルアルコール等適宜の揮発性液体に混和して得た泥漿状分散体4をモールド5内に注入し、第2図に示す如く遠心器7の保持具8に挾持し直径30cm、1000r.p.m.で廻転し遠心力Cを加えると約20分間でセラミツク細管3内のセラミツク粉末の充填率は95%に達するので、その後上澄液を除去し80?100℃で約1時間加熱乾燥する。状況によつては分散体の注入および遠心分離を2段階に分けて行なう。
かくして第3図に示す如くセラミツク粉末4aを充填した後セラミツク細管3の両開口部に4b,4bの如く1200℃程度で焼結するセラミツクの泥漿たとえばアルミナ粉末70%と硬質ガラス粉末30%との混合物を約2倍量の水、メチルアルコール等適宜の揮発性液体に混和して得た泥漿状分散体を追加充填して80?100℃で約1時間乾燥後、1時間で約400℃に昇温し約400℃に2時間維持してプラスチツクモールド5を焼失せしめ、3時間で約1200℃に昇温し、約1200℃に約30分間維持してセラミツク粉末4aを焼成し、セラミツク管内の空気、吸着ガス、水蒸気等を完全に追出し、セラミツク4b,4bを焼結し常温まで約10時間かけて徐冷すると、白金抵抗細線2はセラミツク管3内に焼成セラミツクによつて固定される。充填セラミツク4aとしてセラミツク4bと同質のものを用いれば白金抵抗細線2と一体的に焼結することもできる。」(第2欄第22行ないし第3欄第36行)

c 「第4図乃至第6図は本発明の他の実施例を示すもので、第4図および第5図に示す如く2本の透孔を穿つたセラミツク製円柱体3aを用意し、リード線1,1を両端に電気溶接した抵抗細線2を前記2本の透孔に挿通し、セラミツク製円柱体3aの外側にモールド5を被嵌してリード線1,1の一部をモールド5より突出させ適宜の接着剤で仮止した後、セラミツク粉末4aをモールド5内に注入し、第2図について説明した如く遠心力Cによりセラミツク製円柱体3a内へのセラミツク粉末4aの充填率を増加しその後80?100℃にて約1時間乾燥し、第6図に示す如くセラミツク製円柱体3aの両開口部に4b,4bの如く実施例1に例示したセラミツク泥漿を追加充填し乾燥して後セラミツク粉末4aを焼成または焼結し、セラミツク4a,4bを焼結する。」(第3欄第37行ないし第4欄第8行)

d 「以上実施例ではリード線1および抵抗細線2として白金を、細管3としてアルミナ等セラミツクを、また充填するセラミツク粉末4a,4bとしてアルミナ粉末とシリカ粉末あるいは硬質ガラス粉末との混合物を使用したが、リード線1、抵抗線2には外気により表面酸化を起さない範囲で適宜導体を使用することができ、また細管3の材料としてはムライト、ジルコニア等のセラミツクあるいは金属を、セラミツク粉末4a,4bの材料としてはアルミナ、シルカ、マグネシア、石英ガラス等またはその混和物を使用し得る。尚セラミツク管3と充填用セラミツク粉末4aと抵抗線2とは熱膨張係数が可及的等しくなるように夫々の材料を選定し組合わせる必要があり、温度の変化により電気抵抗の変化を利用する計測器用センサーとして使用する場合には抵抗細線2として抵抗の温度係数の大きい白金、タングステン、ニツケル、ステンレス鋼、洋銀、燐青銅等の導線を使用する。勿論抵抗細線2は螺旋状のものに限られず真直のものを使用することもある。」(第4欄第9ないし28行)

e 「本発明は以上の如く構成されているので、たとえば外径0.8mm、内径0.5mm、長さ4mmのセラミツク管3を用い、白金抵抗細線1の径を20?50ミクロン、その螺旋状部の長さ3mm(抵抗1.0?3オーム)、白金リード線2の径を0.2?0.4mm程度に構成することにより測温抵抗体として-200?+600℃の範囲で正確に且つ応答速度0.1?2秒以内に迅速に測定することができ、また該センサーと周囲の流体との熱伝達量により流体の流速を測定する場合には上記同様-200?+200℃の範囲で0.1?50m/sec.程度の流速を±2%以内の誤差で正確に且つ応答時間0.5秒程度で迅速に測定することができ、また耐衝撃性、耐熱性にすぐれた流体中の活性ガス、化学薬品等に対する抵抗も極めて大きい。抵抗線1あるいはリード線2として白金以外の導体を使用する場合はその耐熱性、耐酸化性、耐薬品性によつて測定する流体またはその温度に制限を受ける。
本発明は上記の如く極めて小さな管内に抵抗線とともに無機質絶縁物を高密度で充填することができ、従つてこの方法で製作した計測器用センサーは従来の計測器用センサーに比し熱容量が極めて小さく従つて熱応答が極めて速く且つ正確に測定することができしかも物理的強度が強く、測温抵抗体、流速測定用センサー、温度補償用抵抗体等として使用し得るとともに、本発明の方法により高温用シーズヒーターも同様に製造することができ、何れの場合にも何等特殊な設備、技術を要せず簡易確実に製造し、廉価に供給し得る効果を有するものである。」(第4欄第29行ないし第6欄第2行)

(イ)したがって、上記(ア)a、b、d及びeの記載から、甲第5号証には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「温度変化による電気抵抗の変化を利用して温度を測定する測温抵抗体の抵抗線を細管内に固定し保護して製作する計測器用センサーの製造方法であって、
白金細線を螺旋状に巻いた抵抗細線2の両端に白金リード線1,1を接続し、アルミナよりなるセラミツク細管3に該白金抵抗細線2を挿通し、セラミツク粉末を注入し遠心力を加え、かくしてセラミツク粉末4aを充填した後、セラミツク細管3の両開口部に1200℃程度で焼結するセラミツクの泥漿4b,4bたとえばアルミナ粉末70%と硬質ガラス粉末30%との混合物を追加充填し、約1200℃に昇温し約30分間維持してセラミツク粉末4aを焼成し、セラミツク管内の空気、吸着ガス、水蒸気等を完全に追出し、セラミツク4b,4bを焼結し常温まで徐冷すると、白金抵抗細線2はセラミツク管3内に焼成セラミツクによつて固定され、
充填セラミツク4aとしてセラミツク4bと同質のものを用い、白金抵抗細線2と一体的に焼結し、
測温抵抗体として-200?+600℃の範囲で正確に測定することができる、方法。」

イ 甲第6号証ないし甲第10号証
甲第6号証ないし甲第10号証の記載事項については、上記1(2)イ(イ)ないし(カ)のとおりである。

(2)対比・判断
ア 対比
(ア)本件訂正発明1について
a 本件訂正発明1と、甲5発明とを対比する。
(a)甲5発明の「白金抵抗細線2」は、「白金細線を螺旋状に巻いた抵抗細線2」であって、「温度変化による電気抵抗の変化を利用して温度を測定する測温抵抗体の抵抗線」として用いられるものであるから、本件訂正発明1の「測温抵抗体線」に相当する。
また、甲5発明の「アルミナよりなるセラミツク細管3」は、「白金抵抗細線2」が「挿通」されるものであるから、本件訂正発明1の「この測温抵抗体線を内部に収容する外枠」に相当する。
さらに、甲5発明の「セラミツク粉末4a」は、「注入し遠心力を加え」ることによって、「白金抵抗細線2を挿通し」た「セラミツク細管3に」「充填」されるものであるから、本件訂正発明1の「当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材」に相当する。
そして、甲5発明における「測温抵抗体として-200?+600℃の範囲で正確に測定することができる」「計測器用センサー」と、本件訂正発明1の「極低温用測温抵抗体素子」とは、「測温抵抗体素子」である点で共通する。
したがって、甲5発明の「温度変化による電気抵抗の変化を利用して温度を測定する測温抵抗体の抵抗線を細管内に固定し保護して製作する計測器用センサーの製造方法」と、本件訂正発明1の「測温抵抗体線と、この測温抵抗体線を内部に収容する外枠と、当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材とを備えた極低温用測温抵抗体素子の製造方法」とは、「測温抵抗体線と、この測温抵抗体線を内部に収容する外枠と、当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材とを備えた測温抵抗体素子の製造方法」である点で共通する。

(b)甲5発明において、「セラミツクの泥漿4b,4b」に用いる「アルミナ粉末」が、多結晶体の絶縁材であることは、明らかであり、また、「硬質ガラス粉末」が、非晶質体の絶縁材であることも、明らかである。そして、甲5発明において、「セラミツク細管3の両開口部に」「追加充填」される「セラミツクの泥漿4b,4b」は「たとえばアルミナ粉末70%と硬質ガラス粉末30%との混合物」とされているところ、「充填セラミツク4aとしてセラミツク4bと同質のものを用い、白金抵抗細線2と一体的に焼結」するのであるから、甲5発明において、「白金抵抗細線2を挿通し」た「セラミツク細管3に」は、「セラミツク4bと同質の」「アルミナ粉末70%と硬質ガラス粉末30%との混合物」が、「充填」されるものといえる。
ここで、白金の融点は1768℃であり、アルミナ(α)の融点は2072℃である。これに対し、「硬質ガラス粉末」の軟化点は、明らかでないものの、乙3号証によれば、最も高い軟化点を有すると考えられるガラス材料は「石英ガラス」であって、その軟化点は1667℃であるから、甲5発明における「硬質ガラス粉末」の軟化点は、1667℃以下と認められ、「アルミナ粉末」、「白金抵抗細線2」及び「アルミナよりなるセラミツク細管3」の溶融する温度よりも低いものということができる。
したがって、甲5発明において、「充填セラミツク4aとしてセラミツク4bと同質のものを用い」、「白金抵抗細線2を挿通し」た「セラミツク細管3に」、「セラミツク粉末を注入し遠心力を加え、かくしてセラミツク粉末4aを充填」することは、本件訂正発明1において、「前記充填材として、多結晶体の無機絶縁材粉末と、当該無機絶縁材粉末、前記測温抵抗体線及び前記外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末との混合物を、前記外枠と前記測温抵抗体線との間に充填」することに相当する。

(c)白金の融点は1768℃であり、アルミナ(α)の融点は2072℃であるので、甲5発明において、「セラミツクの泥漿4b,4bたとえばアルミナ粉末70%と硬質ガラス粉末30%との混合物」が「焼結する」温度である「1200℃」が、「白金抵抗細線2」、「アルミナよりなるセラミツク細管3」及び「アルミナ粉末」の溶融する温度よりも低い温度であることは、明らかである。
したがって、甲5発明において、「セラミツク粉末4aを充填した後、」「約1200℃に昇温し約30分間維持してセラミツク粉末4aを焼成し、セラミツク管内の空気、吸着ガス、水蒸気等を完全に追出し、セラミツク4b,4bを焼結し常温まで徐冷すると、白金抵抗細線2はセラミツク管3内に焼成セラミツクによつて固定され」ることと、本件訂正発明1において、「この充填の後、前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、その後当該溶融したガラス粉末を降温して固化させること」とは、「この充填の後、前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱し、その後降温させる」点で共通する。

b したがって、上記a(a)ないし(c)から、本件訂正発明1と甲5発明とは、
「測温抵抗体線と、この測温抵抗体線を内部に収容する外枠と、当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材とを備えた測温抵抗体素子の製造方法において、
前記充填材として、多結晶体の無機絶縁材粉末と、当該無機絶縁材粉末、前記測温抵抗体線及び前記外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末との混合物を、前記外枠と前記測温抵抗体線との間に充填し、
この充填の後、前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱し、
その後降温させる
測温抵抗体素子の製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点A)
測温抵抗体素子が、本件訂正発明1では、「極低温用」であるのに対し、
甲5発明では、「-200?+600℃の範囲で正確に測定することができる」点。

(相違点B)
充填の後に、本件訂正発明1では、「前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ」前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して「当該ガラス粉末のみを溶融させ、」その後「当該溶融したガラス粉末を」降温して「固化させる」のに対し、
甲5発明では、「約1200℃に昇温し約30分間維持してセラミツク粉末4aを焼成し、セラミツク管内の空気、吸着ガス、水蒸気等を完全に追出し、セラミツク4b,4bを焼結し常温まで徐冷すると、白金抵抗細線2はセラミツク管3内に焼成セラミツクによつて固定され」るものの、「約1200℃」が「硬質ガラス粉末」の軟化点よりも高い温度であるか否か、及び、「硬質ガラス粉末」が「約1200℃に昇温し約30分間維持し」た際に「溶融」しその後「常温まで徐冷」して「固化」しているか否かについては、特定がない点。

(イ)本件訂正発明2について
a 本件訂正発明2と、甲5発明とを対比する。
甲5発明において、「白金抵抗細線2」は「白金細線を螺旋状に巻いた」ものであることと、本件訂正発明2において、「前記測温抵抗体線は、白金とコバルトの合金を材料とし、これをコイル状に形成したものである」こととは、「前記測温抵抗体線は、コイル状に形成したものである」点で共通する。

b したがって、上記aから、本件訂正発明2と甲5発明とは、本件訂正発明1と甲5発明との一致点及び相違点(上記(ア)b)に加え、更に、
「前記測温抵抗体線は、コイル状に形成したものである」
点で一致し、次の点で相違する。

(相違点C)
測温抵抗体線の材料が、本件訂正発明2では、「白金とコバルトの合金」であるのに対し、
甲5発明では、「白金」である点。

(ウ)本件訂正発明3について
本件訂正発明3と、甲5発明とを対比すると、本件訂正発明3と甲5発明とは、本件訂正発明1と甲5発明との一致点及び相違点(上記(ア)b)並びに本件訂正発明2と甲5発明との一致点及び相違点(上記(イ)b)に加え、更に、次の点で相違する。

(相違点D)
本件訂正発明3では、「前記白金とコバルトの合金は、白金にコバルトが0.5mol%含まれた合金であ」るのに対し、
甲5発明では、そのような特定はない点。

(相違点E)
本件訂正発明3では、「前記ガラス粉末溶融のための加熱温度は、460℃以上520℃以下であり、かつ、前記ガラス粉末の軟化点より50℃以上高い温度である」のに対し、
甲5発明では、そのような特定はない点。

(エ)本件訂正発明4について
a 本件訂正発明4と、甲5発明とを対比する。
上記(ア)a(b)を踏まえると、甲5発明において、「充填セラミツク4aとしてセラミツク4bと同質のもの」すなわち「アルミナ粉末70%と硬質ガラス粉末30%との混合物」「を用い」ることと、本件訂正発明4において、「前記無機絶縁材粉末は、アルミナ粉末であり、前記ガラス粉末は、酸化ビスマスが主成分で、これに酸化亜鉛及び酸化ボロンを加えたものであり、前記ガラス粉末の前記充填材に対する混合比率は、3.5wt%から10.0wt%の範囲である」こととは、「前記無機絶縁材粉末は、アルミナ粉末であ」る点で共通する。

b したがって、上記aから、本件訂正発明4と甲5発明とは、本件訂正発明1と甲5発明との一致点及び相違点(上記(ア)b)、本件訂正発明2と甲5発明との一致点及び相違点(上記(イ)b)並びに本件訂正発明3と甲5発明との一致点及び相違点(上記(ウ))に加え、更に、
「前記無機絶縁材粉末は、アルミナ粉末である」
点で一致し、次の点で相違する。

(相違点F)
ガラス粉末が、本件訂正発明4では、「酸化ビスマスが主成分で、これに酸化亜鉛及び酸化ボロンを加えたものであ」るのに対し、
甲5発明では、「硬質ガラス粉末」である点。

(相違点G)
本件訂正発明4では、「前記ガラス粉末の前記充填材に対する混合比率は、3.5wt%から10.0wt%の範囲である」のに対し、
甲5発明では、「アルミナ粉末70%と硬質ガラス粉末30%との混合物」である点。

(オ)本件訂正発明5について
a 本件訂正発明5と、甲5発明とを対比する。
甲5発明における、「白金抵抗細線2」「の両端に」「接続」された「白金リード線1,1」は、本件訂正発明5の「前記測温抵抗体線の両端に接続されるリード線」に相当する。そして、甲5発明の「アルミナまたはシリカ或はその混合物よりなるセラミツク細管3」は、管状の絶縁体であることは明らかであって、絶縁碍子ということができるから、甲5発明において、「アルミナまたはシリカ或はその混合物よりなるセラミツク細管3に、両端に白金リード線1,1を接続された白金抵抗細線2を挿通し、セラミツク粉末を注入し遠心力を加え、かくしてセラミツク粉末4aを充填」することと、本件訂正発明5において、「極低温用測温抵抗体素子は、前記測温抵抗体線の両端に接続されるリード線をさらに備え、前記外枠は、軸方向に二つの貫通孔を有する略円形断面の柱状をした絶縁碍子であり、前記測温抵抗体線を、その両端部が前記各貫通孔の同側端部から露出するように往復して挿入し、前記充填材を、前記貫通孔の内壁と前記測温抵抗体線との隙間に充填すること」とは、「測温抵抗体素子は、前記測温抵抗体線の両端に接続されるリード線をさらに備え、前記外枠は、軸方向に貫通孔を有する柱状をした絶縁碍子であり、前記測温抵抗体線を、前記貫通孔に挿入し、前記充填材を、前記貫通孔の内壁と前記測温抵抗体線との隙間に充填する」点で共通する。

b したがって、上記aから、本件訂正発明5と甲5発明とは、本件訂正発明1と甲5発明との一致点及び相違点(上記(ア)b)に加え、更に、
「測温抵抗体素子は、前記測温抵抗体線の両端に接続されるリード線をさらに備え、
前記外枠は、軸方向に貫通孔を有する柱状をした絶縁碍子であり、
前記測温抵抗体線を、前記貫通孔に挿入し、
前記充填材を、前記貫通孔の内壁と前記測温抵抗体線との隙間に充填する」
点で一致し、次の点で相違する。

(相違点H)
本件訂正発明5では、「前記外枠は、軸方向に二つの貫通孔を有する略円形断面の柱状をした絶縁碍子であり、前記測温抵抗体線を、その両端部が前記各貫通孔の同側端部から露出するように往復して挿入」するのに対し、
甲5発明では、「セラミツク細管3に」「白金抵抗細線2を挿通」するものの、軸方向に二つの貫通孔を有する点、及び白金抵抗細線2を、その両端部が各貫通孔の同側端部から露出するように往復して挿入することについて特定がない点。

(カ)本件訂正発明6について
a 本件訂正発明6と、甲5発明とを対比する。
甲5発明における、「セラミツク細管3の両開口部に」「追加充填し」「焼結」する「セラミツク4b,4b」は、絶縁材であることは明らかであるので、「絶縁材を材料とする封止材」に相当し、甲5発明において、「セラミツク細管3の両開口部に1200℃程度で焼結するセラミツクの泥漿4b,4bたとえばアルミナ粉末と硬質ガラス粉末との混合物を追加充填し、約1200℃に昇温し約30分間維持して」「セラミツク4b,4bを焼結」することと、本件訂正発明6において、「絶縁材を材料とする封止材によって前記各貫通孔の両側端部を封止する工程」とは、「絶縁材を材料とする封止材によって前記貫通孔の両側端部を封止する工程」である点で共通する。

b したがって、上記aから、本件訂正発明6と甲5発明とは、本件訂正発明1と甲5発明との一致点及び相違点(上記(ア)b)並びに本件訂正発明5と甲5発明との一致点及び相違点(上記(オ)b)に加え、更に、
「絶縁材を材料とする封止材によって前記貫通孔の両側端部を封止する工程をさらに備えている」
点で一致し、次の点で相違する。

(相違点I)
絶縁材を材料とする封止材によって封止するのが、本件訂正発明6では、前記「各」貫通孔の両側端部であって、「二つの貫通孔」を前提としている(請求項6において引用されている請求項5)のに対し、
甲5発明では、二つの貫通孔を前提とするものではない点。

イ 判断
(ア)無効理由4について
a 本件訂正発明1について
(a)上記相違点Aについて検討するにあたり、本件訂正発明1における「極低温用」の意義については、上記1(2)エ(ア)a(a)において検討したとおりであるので、甲5発明の「計測器用センサー」が、「90Kから4K」の温度範囲のうち、少なくとも絶対零度に近い「10Kから4K」の温度範囲において、「誤差」を生じることなく「精度よく温度測定ができる」ものといえるか否か、について検討する。
甲5発明は、「測温抵抗体として-200?+600℃の範囲で正確に測定することができる」とされている。一方で、例えば甲第6号証(上記1(2)イ(イ)b)、甲第7号証(上記1(2)イ(ウ)b)に示されているように、磁性不純物を添加していない通常の白金測温抵抗体が、極低温領域でほとんど感度がなくなることは、技術常識であるところ、甲5発明の「計測器用センサー」は、「測温抵抗体の抵抗線」として「白金抵抗細線2」を用いたものであるので、絶対零度に近い「10Kから4K」の温度範囲では、ほとんど感度がなくなるため精度の良い測定ができないことは、明らかである。してみると、甲5発明の「計測器用センサー」は、「90Kから4K」の温度範囲のうち、73K(-200℃)以上の温度範囲で「正確に測定することができる」ものであるとしても、絶対零度に近い「10Kから4K」の温度範囲では、「誤差」を生じることなく「精度よく温度測定ができる」ものとはいえない。
したがって、甲5発明の「測温抵抗体」が「極低温用」のものであるということはできないから、相違点Aは、実質的な相違点である。

(b)次に、上記相違点Bについて検討する。
一般に、「硬質ガラス」という用語は、普通のガラスよりも軟化温度の高いガラスの通称として用いられるものであり、ホウケイ酸ガラスは、そのような「硬質ガラス」の代表的な材料として広く知られているものである(甲第20号証63ページ、甲第21号証69ページ、乙第4号証、乙第5号証)。しかしながら、甲5発明において、「セラミツク粉末4a」として「充填」に用いる「硬質ガラス粉末」が、何も「硬質ガラス」の代表的な材料であるホウケイ酸ガラスに限ったものでないことは、甲第5号証の「充填するセラミツク粉末4a,4bとしてアルミナ粉末とシリカ粉末あるいは硬質ガラス粉末との混合物を使用したが、・・・セラミツク粉末4a,4bの材料としてはアルミナ、シルカ、マグネシア、石英ガラス等またはその混和物を使用し得る。」(上記(1)ア(ア)d)との記載からも、明らかであり、甲5発明の「硬質ガラス粉末」には、種々の「硬質ガラス」の材料が想定されるものといえる。そして、甲5発明では、「硬質ガラス粉末」の軟化点について何ら特定がなく、甲5発明の「硬質ガラス粉末」に想定される種々の材料が、様々な軟化点を有することも明らかであるところ、乙第3号証によれば、例えば「ホウケイ酸塩ガラス(低膨張)」の軟化点は820℃である一方、例えば「石英ガラス」の軟化点は1667℃であり、甲5発明の「硬質ガラス粉末」としては、加熱温度である「約1200℃」に比して、軟化点が低いものも高いものもいずれも想定されるのであるから、甲第5号証に、軟化点よりも高い温度で加熱するという技術思想が記載されているということはできず、上記相違点Bは、実質的な相違点である。

(c)以上のとおり、上記相違点A及びBは、いずれも実質的な相違点であるので、本件訂正発明1は、甲5発明ではない。

b 本件訂正発明5について
(a)本件訂正発明5における、「絶縁碍子」の「二つの貫通孔」に「測温抵抗体線」が「往復して挿入」される構成は、甲5発明において特定されておらず、甲5発明の構成と異なるものであるから、上記相違点Hは、実質的な相違点である。
なお、甲第5号証には、「2本の透孔を穿つたセラミツク製円柱体3aを用意し、リード線1,1を両端に電気溶接した抵抗細線2を前記2本の透孔に挿通し、・・・セラミツク粉末4aをモールド5内に注入し、・・・遠心力Cによりセラミツク製円柱体3a内へのセラミツク粉末4aの充填率を増加しその後・・・セラミツク製円柱体3aの両開口部に4b,4bの如く実施例1に例示したセラミツク泥漿を追加充填し乾燥して後セラミツク粉末4aを焼成または焼結し、セラミツク4a,4bを焼結する。」(上記(1)ア(ア)c)との構成が記載されているが、甲5発明とは異なる「他の実施例」に関するものである。

(b)加えて、上記相違点A及びBは、上記a(a)及び(b)のとおり、いずれも実質的な相違点である。

(c)以上のとおり、上記相違点A、B及びHは、いずれも実質的な相違点であるので、本件訂正発明5は、甲5発明ではない。

c 本件訂正発明6について
(a)本件訂正発明6における、前記「各」貫通孔の両側端部が封止される構成は、甲5発明において特定されておらず、甲5発明の構成と異なるものであるから、相違点Iは、実質的な相違点である。

(b)加えて、上記相違点A、B及びHは、上記a(a)及び(b)並びに上記b(a)のとおり、いずれも実質的な相違点である。

(c)以上のとおり、上記相違点A、B、H及びIは、いずれも実質的な相違点であるので、本件訂正発明6は、甲5発明ではない。

d 小括
以上のとおり、本件訂正発明1、5及び6は、いずれも甲5発明ではなく特許法第29条第1項第3号に該当しないから、無効理由4によっては、本件訂正発明1、5及び6に係る特許を無効とすることはできない。

(イ)無効理由5について
a 本件訂正発明1について
(a)本件訂正発明1は、測温抵抗体素子を「極低温用」とした上で(相違点A)、この極低温領域における温度測定精度の向上を目的に、「前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、その後当該溶融したガラス粉末を降温して固化させる」ようにしたものであって(相違点B)、これにより、極低温領域である4Kの低温までジュール熱の影響を受けない精度のよい温度測定を可能とするもの(本件訂正明細書【0025】)ということができる。そこで、以下、上記相違点A及びBについて、まとめて検討する。
甲第10号証には、「測温抵抗体において、セラミツク等の耐熱絶縁体で形成した柱状の絶縁保持体の軸方向に2個の孔を設け、抵抗線の両端にリード線を接続し、抵抗線の中間部を折り曲げて、それぞれ孔に上方より挿通させ、絶縁保持体下端開口を接着剤にて閉蓋し、次に、80?95重量%を粉状アルミナで残余(5?20重量%)を粉状のガラスで構成された充填物を、上方より孔内に流入させ抵抗線の螺旋間に介在させ充填し、充填後に絶縁保持体上端開口を接着剤にて閉蓋し、続いて、この絶縁保持体を加熱して焼成すると、ガラスが融解してアルミナ、抵抗線、孔内壁表面を濡らしてこれ等を融着するため、振動を受けても絶縁粉末粒子が孔内を移動することは皆無となり、抵抗線の断線の虞はなく耐振性は向上する」技術(上記1(2)イ(カ)b)が記載されている。
しかしながら、甲第10号証には、測温抵抗体の測定温度範囲については記載されておらず、また、抵抗線が白金にコバルトを含んだものであるとの記載もないから、甲第10号証に記載の測温抵抗体が「極低温用」のものであるということはできない。
一方、甲第6号証(上記1(2)イ(イ)b)、甲第7号証(上記1(2)イ(ウ)b)、甲第8号証(上記1(2)イ(エ)b)には、測温抵抗体において、白金にコバルトが含まれた合金よりなる抵抗線を用いることで、極低温領域まで温度検出範囲を広げることが記載されているものの、「前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、その後当該溶融したガラス粉末を降温して固化させる」ようにする点については記載されていない。
そして、このような点は、甲第9号証においても同様である。
したがって、甲5発明において、甲第6号証ないし甲第10号証に記載された技術を考慮したとしても、極低温領域にまで温度検出範囲を広げ、「極低温用」の測温抵抗体素子とした上で、更に、極低温領域である4Kの低温までジュール熱の影響を受けない精度のよい温度測定を可能とするために、「前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、その後当該溶融したガラス粉末を降温して固化させる」ようにして、本件訂正発明1の上記相違点A及びBに係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(b)したがって、本件訂正発明1は、甲5発明及び甲第6号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

b 本件訂正発明5について
(a)上記相違点Hについて検討するに、甲第5号証には、「他の実施例」として、「2本の透孔を穿つたセラミツク製円柱体3aを用意し、リード線1,1を両端に電気溶接した抵抗細線2を前記2本の透孔に挿通し、・・・セラミツク粉末4aをモールド5内に注入し、・・・遠心力Cによりセラミツク製円柱体3a内へのセラミツク粉末4aの充填率を増加しその後・・・セラミツク製円柱体3aの両開口部に4b,4bの如く実施例1に例示したセラミツク泥漿を追加充填し乾燥して後セラミツク粉末4aを焼成または焼結し、セラミツク4a,4bを焼結する。」(上記(1)ア(ア)c)との構成が記載されており、当該「他の実施例」の記載は、甲5発明における、「セラミツク細管3に」「白金抵抗細線2を挿通」する構成に代えて、「2本の透孔を穿つたセラミツク製円柱体3a」の「前記2本の透孔に」「抵抗細線2を」「挿通」する構成を採用することを示唆するものといえるから、甲5発明において、本件訂正発明1の上記相違点Hに係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(b)しかしながら、本件訂正発明5の上記相違点A及びBに係る構成とすることが、上記a(c)で検討したとおり当業者が容易になし得たことであるとはいえない以上、本件訂正発明5は、甲5発明及び甲第6号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

c 本件訂正発明6について
(a)上記相違点Iについて検討するに、甲第5号証の「他の実施例」の記載(上記b(a)を参照。)は、甲5発明における、「セラミツク細管3の両開口部に」「追加充填し」た「セラミツク」「を焼結」する構成に代えて、「2本の透孔を穿つたセラミツク製円柱体3a」「の両開口部に」「追加充填し」た「セラミツク」「を焼結する」構成を採用することを示唆するものといえるから、甲5発明において、本件訂正発明6の上記相違点Iに係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(b)しかしながら、本件訂正発明6の上記相違点A及びBに係る構成とすることが、上記aで検討したとおり当業者が容易になし得たことであるとはいえない以上、本件訂正発明6は、甲5発明及び甲第6号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

d 小括
以上のとおり、本件訂正発明1、5及び6は、いずれも、甲5発明及び甲第6号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、無効理由5によっては、本件訂正発明1、5及び6に係る特許を無効とすることはできない。

(ウ)無効理由6について
a 本件訂正発明2について
(a)上記相違点Cについては、極低温用の測温抵抗線の材料に関するものである。したがって、技術的なつながりから、上記相違点A及びBとまとめて検討する。ここで、上記相違点A及びBについては、上記(イ)a(a)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことであるとはいえないから、本件訂正発明2の上記相違点A、B及びCに係る構成とすることも、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(b)したがって、本件訂正発明2は、本件訂正発明2は、甲5発明及び甲第6号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

b 本件訂正発明3について
(a)上記相違点Dについては、上記相違点Cと同様に、極低温用の測温抵抗線の材料に関するものである。したがって、技術的なつながりから、上記相違点A、B及びCとまとめて検討する。ここで、上記相違点A、B及びCについては、上記a(a)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことであるとはいえないから、本件訂正発明3の上記相違点A、B、C及びDに係る構成とすることも、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(b)次に、上記相違点Eについて検討する。
甲第7号証には、「測温抵抗体において、高純度のPtに微量の磁性不純物であるコバルトを添加した磁性希薄合金をつくり、極低温域で有効な感度を得るにあたり、400℃程度の低い温度で熱処理を行うことによって、結晶粒度を変えずに結晶の加工歪を補正して残留抵抗を調整することができる」技術(上記1(2)イ(ウ)c)が記載されている。
しかしながら、甲第7号証に記載された上記技術は、磁性希薄合金を用いた測温抵抗体の抵抗素線に対する熱処理に関するものであって、保護管への充填後に充填材のガラス粉末を溶融させるための熱処理に関するものではないから、甲5発明において、甲第7号証に記載された上記技術を考慮したとしても、「セラミツク細管3」に「セラミツク粉末4aを充填した後」の加熱温度を「ガラス粉末溶融のため」に「460℃以上520℃以下」とすること、まして「ガラス粉末の軟化点より50℃以上高い温度」とすることは、当業者にとって動機付けられないことである。
また、甲5発明において、「セラミツク細管3」に「セラミツク粉末4aを充填した後」の加熱温度を「約1200℃」としているのは、「セラミツクの泥漿4b,4b」が「焼結する」温度が「1200℃程度」であるためであるところ、充填後の加熱温度を「1200℃」よりも大幅に低い「460℃以上520℃以下」に変更すると、「セラミツクの泥漿4b,4b」を「焼結」することができなくなってしまうのであり、この点から見ても、甲5発明において、加熱温度を「460℃以上520℃以下」とすることは、当業者にとって動機付けられないことである。
そして、測温抵抗体素子の製造に関し、保護管へ充填材を充填した後に「ガラス粉末溶融のため」に「460℃以上520℃以下」かつ「ガラス粉末の軟化点より50℃以上高い温度」に加熱することについては、甲第6号証及び甲第8号証ないし甲第10号証のいずれにも記載されておらず周知技術であったともいえないから、甲5発明において、本件訂正発明3の上記相違点Eに係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(c)したがって、本件訂正発明3は、甲5発明及び甲第6号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

c 本件訂正発明4について
(a)まず、上記相違点Fについて検討する。
甲第9号証には、「荷重軟化点(Td)が500℃以下であり、Bi_(2)O_(3)を主成分としZnO及びB_(2)O_(3)を含む組成を有するビスマス系ガラス粉末を、低温で封着できる組成物として用いる」技術(上記1(2)イ(オ)b)が記載されている。
しかしながら、甲5発明は、「測温抵抗体として-200?+600℃の範囲で正確に測定することができる」ものであるところ、「硬質ガラス粉末」の代わりに「荷重軟化点(Td)が500℃以下であり、Bi_(2)O_(3)を主成分としZnO及びB_(2)O_(3)を含む組成を有するビスマス系ガラス粉末」を用いたとすると、「600℃」に近い温度では当該「ビスマス系ガラス粉末」が軟化してしまうから、甲5発明において、甲第9号証に記載された上記技術を考慮したとしても、「硬質ガラス粉末」に代えて「荷重軟化点(Td)が500℃以下」の「ビスマス系ガラス粉末」を採用することは、当業者にとって動機付けられないことである。
そして、測温抵抗体素子の充填材に、「酸化ビスマスが主成分で、これに酸化亜鉛及び酸化ボロンを加え」てなる「ガラス粉末」を用いることについては、甲第6号証ないし甲第8号証及び甲第10号証のいずれにも記載されておらず周知技術であったともいえないから、甲5発明において、本件訂正発明4の上記相違点Fに係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(c)次に、上記相違点Gについて検討する。
甲第10号証には、「測温抵抗体において、セラミツク等の耐熱絶縁体で形成した柱状の絶縁保持体の軸方向に2個の孔を設け、抵抗線の両端にリード線を接続し、抵抗線の中間部を折り曲げて、それぞれ孔に上方より挿通させ、絶縁保持体下端開口を接着剤にて閉蓋し、次に、80?95重量%を粉状アルミナで残余(5?20重量%)を粉状のガラスで構成された充填物を、上方より孔内に流入させ抵抗線の螺旋間に介在させ充填し、充填後に絶縁保持体上端開口を接着剤にて閉蓋し、続いて、この絶縁保持体を加熱して焼成すると、ガラスが融解してアルミナ、抵抗線、孔内壁表面を濡らしてこれ等を融着するため、振動を受けても絶縁粉末粒子が孔内を移動することは皆無となり、抵抗線の断線の虞はなく耐振性は向上する」技術(上記1(2)イ(カ)b)が記載されている。
しかしながら、甲5発明の「充填セラミツク4a」に用いられる「硬質ガラス粉末」は、「融着」のためのものとはいえないから、甲5発明において、甲第10号証に記載された上記技術を考慮したとしても、「充填セラミツク4a」に用いる「硬質ガラス粉末」の混合比率を、「3.5wt%から10.0wt%の範囲」に変更することは、当業者にとって動機付けられないことである。
したがって、実施品発明において、本件訂正発明4の上記相違点Gに係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(d)加えて、本件訂正発明4の上記相違点AないしEに係る構成とすることは、上記b(a)及び(b)で検討したとおり当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(e)したがって、本件訂正発明4は、甲5発明及び甲第6号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

d 小括
以上のとおり、本件訂正発明2ないし4は、いずれも、甲5発明及び甲第6号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、無効理由6によっては、本件訂正発明2ないし4に係る特許を無効とすることはできない。

3 無効理由7について
請求人は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、酸化ビスマスが主成分でこれに酸化亜鉛と酸化ボロンを加えた比重7.4で軟化点温度405℃のガラス粉末を用いた例しか記載されていないから、これ以外のガラス粉末、少なくともビスマス系ガラス粉末以外のガラス粉末を用いた場合にも、同様の効果を奏するか否か判断できない旨、主張をしている(審判請求書第8ページ第2段落、第64ページ(4-5))。
しかしながら、「無機絶縁材粉末、測温抵抗体線及び外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い」ガラス粉末を用い、「ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ測温抵抗体線、外枠及び無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱してガラス粉末のみを溶融」させることができれば、無機絶縁材粉末の多くをガラスが連結した状態となり(本件訂正明細書【0023】)、この連結により高い熱伝導を有するものとなる(同【0025】)から、ビスマス系ガラス粉末以外のガラス粉末を用いた場合にあっても、90Kから4Kの極低温域での温度測定精度の向上という課題(同【0019】)が解決可能であることは、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者が十分理解し得るところである。
したがって、本件訂正発明1ないし6は、発明の詳細な説明に記載したものであり、本件訂正特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものであるから、無効理由7によっては、本件訂正発明1ないし6に係る特許を無効とすることはできない。

4 無効理由8について
請求人は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、酸化ビスマスが主成分でこれに酸化亜鉛と酸化ボロンを加えた比重7.4で軟化点温度405℃のガラス粉末以外のガラス粉末、少なくともビスマス系ガラス粉末以外のガラス粉末を用いた場合に、同様の効果を奏するためには、何度の加熱温度で実施すればよいか判断できない旨、主張をしている(審判請求書第8ページ第3段落)。
しかしながら、各種ガラスの軟化点については、当業者であれば当然に理解している技術常識である(乙第3号証)ので、ビスマス系ガラス粉末以外のガラス粉末であっても、「無機絶縁材粉末、測温抵抗体線及び外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い」ガラス粉末を選択して用いることにより、「ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ測温抵抗体線、外枠及び無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱してガラス粉末のみを溶融」させるようにできることは、明らかであるといえる。
したがって、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件訂正発明1ないし6を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されており、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものであるから、無効理由8によっては、本件訂正発明1ないし6に係る特許を無効とすることはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由1ないし8及び提出した証拠方法によっては、本件の請求項1ないし6に係る発明の特許を無効とすることはできない。
また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
極低温用測温抵抗体素子の製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、4K(K:絶対温度の単位)から90Kの極低温域の温度を測定する測温抵抗体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測温抵抗体素子による温度測定は、測温抵抗体素子の内部に収容した測温抵抗体線の電気抵抗が温度により変化する性質を利用して行うものであって、測温抵抗体線の温度が測温抵抗体素子の温度出力となる。具体的には、測温抵抗体線の両端に接続されたリード線に一定電流を流し、電圧降下から電気抵抗値が求められ、その電気抵抗値が温度に換算される。電圧降下の測定法には、リード線の分岐数により、2線式、3線式及び4線式があるのは周知のとおりである。
【0003】
測温抵抗体素子の構成としては、外枠内に無機絶縁材粉末を介在させてコイル状の測温抵抗体線を設置したものが一般に用いられる。
【0004】
このような構成の測温抵抗体素子が一般に用いられている理由としては、製作が容易で安価であることが挙げられる。また、測温抵抗体線とその支持物の熱膨張率の差により測温抵抗体線に外部から力が加わると、測温抵抗体線の長さと断面積が変化することにより電気抵抗が変化して温度測定誤差が生じるが、コイル状の測温抵抗体線を無機絶縁材粉末の中に設置したこのような構成にすると、測温抵抗体線に加わる力が小さく、温度測定誤差が生じ難いことも一般的に用いられる理由として挙げられる。
【0005】
一般に広く使用されている測温抵抗体素子の代表的な構造を図1及び図2に示す。図1は長手方向の断面図、図2は図1のII-II断面図である。但し、図1の測温抵抗体線4のコイル部は外面図で示している。
【0006】
図1及び図2に示すように、測温抵抗体素子1は、両端にリード線5が繋がれたコイル状の測温抵抗体線4が、外枠である略円形断面をした柱状の絶縁碍子2に設けられた長手方向の2つの貫通孔3に、両端に接続された2本のリード線5が各貫通孔3の同側端部から露出するように往復して挿入されている。測温抵抗体線4は、貫通孔3内の隙間に充填された無機絶縁材粉末である充填材6を介在して貫通孔3内に設置されており、各貫通孔3の両側端部は内部の充填材6が脱落しないよう封止材7で封止された構造となっている。
【0007】
充填材6である無機絶縁材粉末は、アルミナ、マグネシア、シリカもしくはこれらの混合物などを材料とする多結晶体の粉末が用いられる。絶縁碍子2もアルミナ、マグネシア、シリカもしくはこれらの混合物などを材料とする多結晶体を成形したセラミックが専ら用いられる。
【0008】
封止材7としては、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコンもしくはこれらの混合物を主成分とする多結晶体の接着剤が通常使用され、エポキシ樹脂などのエナメルが用いられる場合もある。さらに、特許文献2の第1図(a)に示されているように、無機絶縁材粉末の脱落の恐れのない状態で使用される測温抵抗体素子には、封止材7が設けられていないものもある。
【0009】
測温抵抗体線4の材料としては、JISC1604「測温抵抗体」に示されるように、白金が通常用いられる。しかし、測定温度が73K(-200℃)以下になると、温度変化に対する白金の電気抵抗の変化割合が減少して測定感度が低下するために、温度測定誤差が増加し、測定不可能となる。このため、73K以下の温度も測定対象とする場合は、測温抵抗体線4の材料として特許文献1及び非特許文献1に示されるような白金とコバルトの合金が通常用いられる。白金とコバルトの合金は低温域でも測定感度の低下が少なく、非特許文献1に示される如く4Kから少なくとも325Kの温度範囲において精度良く温度を測定することができる。下限が4Kであるのは、4Kがヘリウムの沸点で、これ以下の温度での温度校正が困難なことによる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭53-53758号公報「温度検出素子材料」
【特許文献2】実開昭57-126035号公報「測温抵抗素子」
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「互換形、極低温用Pt-Co測温抵抗体」横河技報(1988年)Vol.32 No.3 P.29?32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
白金とコバルトの合金を材料とする低温用の測温抵抗体線を用い、外枠内に無機絶縁材粉末を介在させてその測温抵抗体線を収容した従来の測温抵抗体素子は、約90K以下の温度において、温度が下降するにつれて温度測定誤差がプラス側に増加し、温度が10K以下になるとその増加が急激になるという問題があった。図1及び図2に示した測温抵抗体素子で、白金とコバルトの合金を材料とする低温用の測温抵抗体線を用いたものについて、電気抵抗を測定するために流す電流を標準的な0.2mA、1mA及び2mAとした場合の4Kから10Kの低温域における温度測定誤差を表1に示す。また、表1をグラフにしたものを図7に示す。
【0013】
【表1】

【0014】
90K以上の温度測定では、測定電流が大きい程、測定する測温抵抗体線の電圧降下が大きいためにSN比(ノイズ成分に対する信号成分の比)が大きくなり、ノイズの影響を受けない測定ができるが、表1、図7の温度測定誤差は、ノイズの多い環境においてノイズの影響を少なくするために測定電流を大きくすることが逆に誤差を大きくする問題もあることを示している。
【0015】
以上のように、従来の測温抵抗体素子には、プラス側の温度測定誤差が約90K以下の温度、特に10Kから4Kの温度域において大きくなり、かつその誤差は、SN比を大きくするために測定電流を増すと増加するという問題があった。
【0016】
この誤差の原因として、温度が90K以下になると、低温化による飽和蒸気圧の降下のために無機絶縁材粉末の隙間に存在する空気の液化が始まり、気体で存在していた際に果たしていた伝熱媒体としての機能が減少して熱伝導が低下し、測定電流によって発生するジュール熱を放熱する性能が落ちることにより、測温抵抗体線の温度が外部温度より高くなっていくことが考えられた。
【0017】
即ち、空気が気体として存在する温度では、測定電流により測温抵抗体線に生じたジュール熱は、無機絶縁材粉末を伝わる熱と無機絶縁材粉末の間に存在する空気の分子運動により伝わる熱によって外枠、図1の構造では絶縁碍子2を経由して外部に放出され、外部温度と測温抵抗体線の温度差が微小であったものが、温度が90K以下になると空気成分の液滴化が始まり、温度が10K以下のなると空気のほぼ全量が液滴化さらには固体化して体積が極小となり、ほぼ真空になった中に無機絶縁材粉末が存在している状態となる。
このため、測温抵抗体線に生じたジュール熱は無機絶縁材粉末のみを伝わって、絶縁碍子経由で外部に放出されることとなる。この放熱性能の低下により、ジュール熱の排出が不十分となり、測温抵抗体線の温度が90K以下で外部温度より高くなり始め、10Kから4Kの低温域では表1、図7に示すような温度まで高くなり、かつ、ジュール熱は測定電流の2乗に比例するので、測定電流が大きい程、ジュール熱が増加し、ジュール熱の不十分な排出よる測温抵抗体線の温度上昇が助長されると考えられるのである。
【0018】
なお、殆どの気体が液化、固体化する低温度領域では、通常、必然的に高真空状態である。測温抵抗体素子として、特許文献2の第1図(a)に示されるような封止材を設けない構造のものもあるが、このような構造でも、無機絶縁材粉末が真空中に存在する状態となって、プラス側に温度測定誤差が発生する問題があることは同じである。
【0019】
本発明は、上述した誤差に鑑みてなされたものであり、90Kから4Kの極低温域で精度よく温度測定ができる測温抵抗体素子の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本件発明者は、鋭意研究の結果、90K以下の温度において、温度が下降するにつれて温度測定誤差がプラス側に増加し、特に10Kから4Kの低温域でその誤差が大きく、かつその誤差はSN比を大きくするために測定電流を増すと増加するという従来の測温抵抗体素子に見られた問題を生じさせないために、以下の測温抵抗体素子の製造方法とした。
【0021】
測温抵抗体線と、この測温抵抗体線を内部に収容する外枠と、外枠と測温抵抗体線との間に充填される充填材とを備えた極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、充填材として、多結晶体の無機絶縁材粉末と、この無機絶縁材粉末、測温抵抗体線及び外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末との混合物を、外枠と測温抵抗体線との間に充填し、この充填の後、ガラス粉末の軟化点よりも高い温度で、かつ測温抵抗体線、外枠及び無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱してガラス粉末のみを溶融させ、その後当該溶融したガラス粉末を降温して固化させた極低温用測温抵抗体素子とした。
【0022】
従来の充填材は、多結晶体の無機絶縁材粉末のみであったのに対し、本発明では、多結晶体の無機絶縁材粉末と非晶質体の絶縁材であるガラス粉末とを混合した混合物を充填材として外枠と測温抵抗体線との間に充填し、これを当該ガラス粉末の軟化点よりも高く設定された加熱温度で加熱して当該ガラス粉末を外枠内で溶融させた後、降温して固化させたものである点が異なる。
【0023】
非晶質体であるガラスは、温度が転移点を超えると溶融が始まり、固体状態にあったものが液体の性質を持ち始める。さらに温度を上げてリルトン点とも呼ばれる軟化点の温度に達するとガラスは自重で変形する状態まで溶融する。したがって、軟化点以上に加熱することにより充填材中のガラス粉末は無機絶縁材粉末の隙間に広がり、降温した際には無機絶縁材粉末の多くをガラスが連結した状態となる。
【0024】
対して、金属、単結晶体及び多結晶体は、転移点、軟化点が無く、温度が融点に達するまで、ほぼその形状を維持し、融点を超えると溶融して液状となる。
したがって、加熱温度は、無機絶縁材粉末の融点、並びに測温抵抗体線及び外枠の融点または転移点以下の温度で、かつガラス粉末の軟化点以上の温度に設定される。
【0025】
本発明の態様では、無機絶縁材粉末に混合したガラス粉末のみを溶融させたことにより、無機絶縁材粉末の各粒子の多くは相互にガラスによって連結した状態となっている。この連結により高い熱伝導を有し、90K以下の低温域において無機絶縁材粉末の隙間に存在する空気等の気体が低温のため液滴化、さらには固体化しても、従来のものに見られた測定電流によって発生するジュール熱の放熱が妨げられてプラスの温度測定誤差が生じる現象が本態様では生じず、4Kの低温まで、ジュール熱の影響を受けない精度のよい温度測定が可能である。加えて、低温においても充填材の熱伝導が保たれるので、測定対象の温度変化に対する測温抵抗体線の温度追従も悪化せず、温度測定の応答速度が遅くならないという副次的な効果もある。
【0026】
充填材中の無機絶縁材粉末は、従来のものと同様、アルミナ、マグネシア、シリカもしくはこれらの混合物を材料とする多結晶体の粉末を用いることができ、外枠も従来のものと同様、アルミナ、マグネシア、シリカもしくはこれらの混合物を材料とする多結晶体を成形したセラミックを用いることができる。これらの材料の融点は1500℃以上であり、非晶質体のガラスの軟化点は、特殊な高温用ガラスを除いて、せいぜい800℃である。
【0027】
測温抵抗体線として、従来と同様に、特許文献1及び非特許文献1に示した低温域で測定精度のよい白金とコバルトの合金を材料とするものを使用できる。白金とコバルトの合金の融点は、特殊な高温用のものを除いたガラスの軟化点より遥かに高い。
【0028】
以上のような材料の融点と軟化点より、無機絶縁材粉末、外枠及び測温抵抗体線は形状を保ち、ガラス粉末のみを溶融させる加熱が可能である。
【0029】
白金とコバルトの合金は、非特許文献1に記載されているように、内部歪の量により電気抵抗値が変化するために、内部歪が変化すると温度測定値が変化して誤差となる。一方、ガラス粉末を溶融させる加熱温度よって白金とコバルトの合金を材料とする測温抵抗体線の焼鈍度合いが変わり、その内部歪の量が変化するので、ガラス粉末を溶融させる加熱温度を、内部歪が温度測定誤差を小さくする量になる温度とすることが望ましい。この観点から、測温抵抗体線の材料を白金にコバルトが0.5mol%含まれた合金とし、加熱温度を460℃以上520℃以下とすることが好適で、この温度とすることにより、後に述べる我々の試験の結果が示すように、本発明の製造方法による極低温用測温抵抗体素子の低温域における温度測定誤差を小さく抑えることができる。
【0030】
また、充填材中のガラス粉末を軟化点以上に加熱することによりガラス粉末は溶融して無機絶縁材粉末の隙間に広がり、冷却した際には無機絶縁材粉末の多くをガラスが連結した状態となるが、ガラス粉末の無機絶縁材粉末の隙間への広がりをより確実なものとするためには、加熱温度を軟化点より50℃以上高い温度とすることが望ましい。換言すれば、軟化点が410℃以下のガラス粉末を用いて、加熱温度を460℃以上520℃以下とすることが好適である。
【0031】
無機絶縁材粉末の材料を、無機絶縁材のなかでは比較的熱伝導がよく、かつ安価なアルミナ粉末とし、ガラス粉末を、化学的に安定で扱い易く、鉛等の毒性物が含まれず、電気絶縁性を有し、かつ軟化点温度が405℃前後になる、酸化ビスマス(Bi_(2)O_(3))を主成分としてこれに酸化亜鉛(ZnO)及び酸化ボロン(B_(2)O_(3))を加えた材料とすることにより、経済的で、毒性物質を含まず、温度測定誤差の少ない極低温用測温抵抗体素子とすることができる。
【0032】
充填材における無機絶縁材粉末に対するガラス粉末の混合比率に関し、混合比率が少ないと、無機絶縁材粉末の各粒子間のガラスによる連結が十分に行われず、熱伝導の向上が限られたものとなってジュール熱によるプラス側の温度測定誤差が発生する。また、混合比率が多すぎると、ガラスとしての性質が支配的になって測温抵抗体線を拘束する力が強くなり、測温抵抗体線と充填材の熱膨張差による測温抵抗体線の長さと断面積の変化、及び当該熱膨張差による測温抵抗体線の内部歪の変化が電気抵抗の変化を生じさせ、温度測定誤差を増加させる要因となる。
【0033】
このように、無機絶縁材粉末と混合するガラス粉末の混合比率が少ない場合、多い場合ともに温度測定誤差の増加をもたらすが、無機絶縁材粉末をアルミナ粉末とし、ガラス粉末を酸化ビスマスが主成分でこれに酸化亜鉛及び酸化ボロンを加えた材料とし、ガラス粉末の混合比率を3.5wt%から10wt%の範囲とすることにより、熱伝導がよく、かつ測温抵抗体線を拘束する力が抑制されたものとなり、後に述べる我々の試験の結果が示すように、温度測定誤差の小さい測温抵抗体素子が得られる。なお、ガラス粉末の混合比率の数値は、無機絶縁材粉末とガラス粉末の合計重量に対するガラス粉末重量の比率(以下、充填材中のガラス粉末量を示すwt%は合計重量に対する比率を示す)で、上述のガラス粉末の比重は7.4である。
【0034】
白金にコバルトが0.5mol%含まれた合金を材料とする測温抵抗体線の内部歪は、ガラス粉末を溶融させるための加熱温度を460℃以上520℃以下にすることにより適切な歪量になって温度測定誤差が小さくなるが、適切な内部歪をガラス粉末の混合比率を多くした充填材の測温抵抗体線に対する拘束力により実現することは、この拘束力による内部歪は測温抵抗体線と充填材の熱膨張差により生じるものであるために温度によって変化し、また、当該熱膨張差に起因する測温抵抗体線の長さと断面積の変化による温度測定誤差を生じさせるので好ましくない。したがって、本発明では、内部歪をガラス粉末溶融の加熱温度により調節し、充填材による拘束力は抑制した。
【0035】
充填材による測温抵抗体線の拘束力は抑制されているため、測温抵抗体線をコイル状にすることは、測温抵抗体線と充填材の熱膨張差に起因する測温抵抗体線の長さと断面積の変化、及び内部歪の変化をさらに軽減し、測定誤差を少なくする効果がある。
【0036】
また、以上示した本発明の態様は、図1及び図2に示した従来から広く使用されている測温抵抗体素子の構造に適用することに支障はなく、適用することにより製作が容易で安価な測温抵抗体素子とすることができる。但し、従来の構造の測温抵抗体素子は、貫通孔内の無機絶縁材末が脱落しないように貫通孔の両側端部が絶縁材を材料とする封止材で封止されていたが、本発明の製造方法による極低温用測温抵抗体素子においては、ガラス粉末を溶融させた後は、無機絶縁材粉末はガラス粉末で連結されるので脱落する懸念がなく、封止材は必須でない。しかし、ガラス粉末の溶融までの製作工程において、封止していないために無機絶縁材粉末とガラス粉末の混合物が脱落する恐れがある場合は、封止材を設けることによりこれを防ぐことができる。封止材の材料としては、従来のものと同様、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコンもしくはこれらの混合物の多結晶体を主成分とする接着剤が使用できる。これらの接着剤の耐熱温度は1000℃以上あり、一般のガラスの軟化点がせいぜい800℃であるのに対して十分高く、ガラス粉末溶融のための加熱によって損傷することはない。
【0037】
本発明のさらなる特徴、目的、構成、並びに作用効果は、添付図面と併せて読むべき以下の詳細な説明から容易に理解できるであろう。
【発明の効果】
【0038】
従来の測温抵抗体素子において外枠と測温抵抗体線との隙間に充填されていた無機絶縁材粉末を、無機絶縁材粉末とガラス粉末の混合物に変え、これをガラス粉末の溶融温度以上に加熱して熱伝導性能を高めることにより、従来の測温抵抗体素子で見られていた90K以下の温度において、温度が下降するにつれて温度測定誤差がプラス側に増加し、特に10Kから4Kの低温域で誤差が急増し、かつその誤差はSN比を大きくするために測定電流を増すと増加するという現象が生じず、90Kから4Kの極低温域においても、測定電流値の影響を受けずに精度よく温度測定ができる測温抵抗体素子の製造方法とした。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来及び本発明の実施の一形態に係る極低温用測温抵抗体素子の縦断面図である。
【図2】図1の極低温用測温抵抗体素子のII-II矢視断面図である。
【図3】電気抵抗値と温度の関係の設定値から温度が高く出力される計器を用いて、本発明に係るガラス粉末溶融のための加熱温度と温度測定誤差の関係を試験した結果を示すグラフである。
【図4】電気抵抗値と温度の関係の設定値から温度が低く出力される計器を用いて、本発明に係るガラス粉末溶融のための加熱温度と温度測定誤差の関係を試験した結果を示すグラフである。
【図5】本発明に係るガラス粉末の混合比率と電気抵抗値測定電流を増加した際の温度測定値変化の関係を試験した結果を示すグラフである。
【図6】本発明に係る極低温用測温抵抗体素子による測定温度と温度測定誤差との関係を示すグラフである。
【図7】比較例(従来例)に係る極低温用測温抵抗体素子による測定温度と温度測定誤差との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0041】
本発明の実施の一形態に係る測温抵抗体素子の具体的構造を図1及び図2に示す。構造は従来のものと変わりない。充填材6が従来は多結晶体の無機絶縁材粉末であったのに対し、本形態では、多結晶体の無機絶縁材粉末と非晶質体の絶縁材であるガラス粉末の混合物とし、ガラス粉末の軟化点よりも高い加熱温度で加熱してガラス粉末のみを溶融させた後、降温して固化させたものである点が従来のもと異なる。
【0042】
図1は長手方向の断面図、図2は、図1のII-II断面図である。図1の測温抵抗体線4のコイル部は、外面図で示している。
【0043】
図1に示すように、本実施形態に係る測温抵抗体素子1は、外殻を構成する絶縁碍子2と、この絶縁碍子2に収容される測温抵抗体線4と、絶縁碍子2と測温抵抗体線4との間に充填される充填材6とを備えている。
【0044】
絶縁碍子2は、多結晶体であるアルミナ、マグネシア、シリカもしくはこれらの混合物を材料としたセラミックであり、軸方向に二つの貫通孔を有する略円形断面の柱状をしている。絶縁碍子2としては、アルミナとシリカの混合物を材料とするセラミックで作られた、外径φ1.4mm、長さ10.5mmの絶縁碍子が好適な一例である。2つの貫通孔3の径は、例えば、φ0.4mmである。無論、絶縁碍子2の別の例として、円筒形に形成された貫通孔が1つのものを採用してもよい。その場合には、測温抵抗体線4は貫通孔内で折り返された状態で収容してもよいし、折り返さない状態で収容してもよい。
【0045】
絶縁碍子2の各貫通孔3には、測温抵抗体線4が収容されている。本実施形態では、測温抵抗体線4は、コイル状の白金とコバルトの合金である。測温抵抗体線4は、当該測温抵抗体線4の一端部と他端部とがそれぞれ絶縁碍子2の各貫通孔3の同じ側から突出するように、貫通孔3に往復して挿入されている。図1及び図2の測温抵抗体線4としては、コバルトを0.5mol%含んだ白金とコバルトの合金を材料とする外径φ20μmの線が好適な一例である。コバルトの含有量としては、特許文献1に示されるように、例えば、0.05mol%から2.0molm%であってもよい。或いは、白金とコバルトの合金に代えて、極低温域において使用されるその他の抵抗体線、例えば、ロジウムと鉄の合金を採用してもよい。
【0046】
また、測温抵抗体線4の一端部及び他端部には、それぞれリード線5が接続されている。リード線5としては、電気抵抗が小さく、測温抵抗体線の電気抵抗の測定値に影響を与えることが少ない白金とロジウムの合金が好適な一例である。
【0047】
貫通孔3の内部には、充填材6が充填されている。充填材6は、絶縁碍子2と測温抵抗体線4との間に充填され、機械的に測温抵抗体線4を保持しているとともに、測定電流が発生するジュール熱を、絶縁碍子2を経由して外部に放熱するための熱媒体として機能するものである。本実施形態において、充填材6は、アルミナ、マグネシア、シリカもしくはこれらの混合物などの多結晶体を材料とする無機絶縁材粉末と、この無機絶縁材粉末に混合した非晶質体の絶縁材であるガラスとで構成されている。この充填材6は、無機絶縁材粉末にガラス粉末を均一に混合した上で所定の温度以上で加熱してガラス粉末を溶かした後、降温して固化したものである。無機絶縁材粉末の大部分が固化したガラスによって連結されている。
この連結により充填材6は、極低温域においても高い熱伝導性を有し、測定電流が発生するジュール熱を放出する機能を維持するので、極低温域での温度測定誤差を小さくする効果がある。
【0048】
充填材6の無機絶縁材粉末としては、例えば、比較的熱伝導率が高く安価なアルミナ粉末が好適な一例である。
【0049】
絶縁碍子2の両端部には、封止材7が設けられている。封止材7は、貫通孔3の内部に充填した充填材6が脱落しないように、絶縁碍子2の両端部に設けられ、貫通孔3の両側端部を封止している。封止は、アルミナ、シリカ、ジルコン、またはこれらの混合物の多結晶体を主成分とする接着剤により行われる。なお、本発明においては、封止材7は、必須ではなく、省略してもよい。
【0050】
本実施形態に係る測温抵抗体素子1を製造する際には、絶縁碍子2の内部に測温抵抗体線4を図1に示すように、両端部が絶縁碍子2の一端側に揃うように往復させて挿入する。その状態で、無機絶縁材粉末と、絶縁碍子2、測温抵抗体線4及び無機絶縁材粉末の融点よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末とを均一に混合したものを貫通孔3内に充填し、必要ならば封止材7で封止する。次いで、この組立体を電気炉の中に入れて、予め設定された加熱温度で例えば、2時間加熱する。加熱温度は、白金にコバルトが0.5mol%含まれた合金を材料とする測温抵抗体線4を用いた測温抵抗体素子1では、ガラス粉末の軟化点以上の温度であって、測温抵抗体線4の焼鈍による内部歪が適切なものとなる460℃以上520℃以下が好適である。
このように加熱処理された測温抵抗体素子1は、充填材6中のガラス粉末が内部で溶融し、溶融したガラス粉末が無機絶縁材粉末の粒子を連結した状態で固化したものに変化して極低温域でも測定電流が発生するジュール熱を放出する機能を維持することに加え、測温抵抗体線4の内部歪が適切な量となっていることから、極低温域において温度測定誤差を小さくする効果が高められたものとなる。
【0051】
ガラス粉末は、その軟化点以上に加熱すると溶融して無機絶縁材粉末の隙間に広がるが、上述の460℃以上520℃以下の加熱温度においてより確実な溶融をするために、比較的軟化点の低い素材が好適である。例えば、酸化ビスマスを主成分とした軟化点が405℃程度のガラス粉末が好適な一例である。加熱温度が下限の460℃であっても軟化点より50℃以上温度が高いのでガラス粉末はより確実に溶融し、また、このガラスは有害な鉛成分を実質的に含まない無鉛ガラスの粉末を生成することができる利点もある。
【0052】
本実施形態の極低温用測温抵抗体素子1において、無機絶縁材粉末は、アルミナ粉末であり、ガラス粉末は、酸化ビスマスを主成分とし、これに酸化亜鉛及び酸化ボロンを加えた比重7.4のものであり、ガラス粉末の充填材6中における混合比率は、3.5wt%から10.0wt%の範囲としたものが好適である。混合比率をこの範囲とすることにより、極低温域において高い熱伝導を維持するに十分な無機絶縁材粉末のガラスによる連結がなされること、及び、測温抵抗体線4を拘束する力が抑制されて熱膨張が測温抵抗体線4にもたらす変形と内部歪の変化を微小にできることから、極低温域においても温度測定誤差の小さい測温抵抗体素子1を得ることができる。
【0053】
次に、以上述べた本発明の効果及び実施形態の裏付けとなる試験結果について説明する。
【0054】
試験は以下に示す試験1から試験3の3つの試験を行なった。各試験の試験体と試験内容に共通する項目は次のとおりである。
【0055】
試験体の構成は図1及び図2に示したものと同じである。
測温抵抗体線4には、白金にコバルトが0.5mol%含まれた合金を材料とする外径φ20μmの線を使用し、リード線5は外径φ0.2mmの白金とロジウムの合金を使用した。
また、絶縁碍子2は、アルミナとシリカの混合物を成形したセラミックで作られた、外径φ1.4mm、長さ10.5mmのもので、長手方向に設けられた2つの貫通孔3の径はφ0.4mmである。封止材7には、アルミナを主成分とする耐熱性接着剤を使用した。
充填材6は、アルミナ粉末に、酸化ビスマスが主成分でこれに酸化亜鉛と酸化ボロンを加えた比重が7.4で軟化点温度が405℃のガラス粉末を混合したものを用いた。
【0056】
これらを図1及び図2に示す形状に組み立てた後、ガラス粉末を溶融させるための加熱を行って極低温用測温抵抗体素子1とした。なお、ガラス粉末溶融のための加熱時間は2時間とし、電気抵抗値の測定は4線式に拠った。
【0057】
[試験1:ガラス粉末を溶融させるための加熱温度に関する試験]
白金とコバルトの合金を材料とする測温抵抗体線は内部歪の量により電気抵抗値が変化するが、ガラス粉末を溶融させる加熱温度よってその焼鈍度合いが変わり、内部歪の量が変化するので、ガラス粉末を溶融させる加熱温度によって温度測定誤差が増減する。
【0058】
温度測定誤差の少ない適切な内部歪とするための加熱温度を検証するために、充填材6中のアルミナ粉末に混合するガラス粉末の混合比率を4.2wt%にした本発明による極低温用測温抵抗体素子を5体作り、各体のガラス粉末を溶融させるための加熱温度を455℃から540℃の範囲で異なる温度とし、90K及び10Kにおける温度測定誤差を試験した。これらの加熱温度は使用したガラス粉末の軟化点温度405℃より50℃以上高い温度である。
【0059】
電気抵抗値測定のための電流は2mAとし、温度測定誤差は、公的機関で校正されたゲルマニュウム温度計を規準温度計として計測した。
【0060】
白金とコバルトの合金を材料とする測温抵抗体線の電気抵抗値と温度との関係を定めるJIS等の公的規準は、現状未だ制定されておらず、白金とコバルトの合金を材料とする測温抵抗体線の電気抵抗を測定し、温度に変換して出力する計器に設定されている電気抵抗値と温度の関係は計器メーカによって少し異なるものとなっている。
【0061】
試験は、計器に設定された電気抵抗値と温度の関係から温度が高く出力される計器と低く出力される計器を用いて実施した。試験結果を表2に、表2をグラフにしたものを図3及び図4に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
表2中の計器1は、計器に設定された電気抵抗値と温度の関係から温度が高く出力される計器を指し、この計器を用いた試験結果は図3に示すとおりで、計器2は、温度が低く出力される計器を指し、この計器を用いた試験結果は図4に示すとおりである。図3から、ガラス粉末を溶融させるための加熱温度を490℃から520℃の範囲とすると、約1℃以内の温度測定誤差となる。また、図4からは、460℃から490℃の範囲で約1℃以内の温度測定誤差となる。
【0064】
図3と図4の結果は、本発明による測温抵抗体素子において、ガラス粉末を溶融させるための加熱温度が460℃以上520℃以下で、かつ、当該ガラス粉末の軟化点温度より50℃以上高い温度とすれば、電気抵抗値と温度の関係の設定から温度が高く出力される計器、温度が低く出力される計器、または中間的な温度が出力される計器の何れかを用いることによって、90Kから10Kにおいて約1℃以内の温度測定誤差が得られることを示している。
【0065】
図3の結果はまた、ガラス粉末溶融のための加熱温度を503℃とし、電気抵抗値と温度の関係の設定から温度が高く出力される計器を用いれば、温度測定誤差がほぼ零となることを示している。以下の試験ではガラス粉末溶融のための加熱温度を503℃とし、電気抵抗値と温度の関係の設定から温度が高く出力される計器を用いて行った。
【0066】
[試験2:ガラス粉末の混合率とジュール熱による誤差との関係を検証する試験]
図3及び図4の試験結果の温度測定誤差には、測温抵抗体線4に流されている電気抵抗値測定のための電流が発生するジュール熱に起因する誤差が含まれている。充填材6においてアルミナ粉末粒子がガラスにより連結され、ジュール熱の排出が十分に行われていることを検証するための試験を次に実施した。
【0067】
前出のJISC1604では、測温抵抗体の電気抵抗値測定のための電流として0.5mA、1mA及び2mAの3電流が規定されているが、SN比を大きくしてノイズの影響を抑える意味から2mAを採用することが望ましい。測定電流を2mAとした際に発生するジュール熱に起因するプラス側の温度測定誤差を評価するために、電流を0.2mAから2mAに増した際の温度測定値の変化を、ガラス粉末の混合比率を変えたものについて試験した。
【0068】
充填材6のアルミナ粉末に混合するガラス粉末の混合比率を1.8wt%、3.5wt%、4.2wt%、6.1wt%、及び9.9wt%とした5種類の本発明による極低温用測温抵抗体素子により、測定電流を変化させた際の温度測定値の変化を調べた結果を表3に、これをグラフ化したものを図5に示す。試験温度は8K及び10Kとし、混合比率4.2wt%以上のものについては20Kでも試験した。
【0069】
【表3】

【0070】
図5に示すように、ガラス粉末の混合比率が3.5wt%以上では、電気抵抗値測定のための電流を0.2mAから2mAに増しても、温度測定値の変化は0.1℃以下と微小である。ジュール熱は電流の二乗に比例し、この試験の場合では100倍に増加していることを考えると、ジュール熱の外部への放出は十分に行われており、電気抵抗値測定のためにJISに規定される最大の電流2mAを流しても、そのジュール熱に起因してプラス側に生じる誤差は、ガラス粉末の混合比率が3.5wt%から少なくとも10.0wt%の範囲にあれば、無視できる程度に小さい。
【0071】
図5において混合比率が1.8wt%のものは、電流の増加に伴いプラス側に温度測定値が上昇しているが、これは、ガラス量が少ないために連結が不充分で、発生したジュール熱が内部に残って測温抵抗体線の温度を上昇させたことの現れである。
【0072】
[試験3:10Kから4Kの低温域での温度測定誤差を検証する試験]
充填材6のアルミナ粉末に混合するガラス粉末の混合比率を7.7wt%とした本発明による極低温用測温抵抗体素子を作り、4Kから10Kの低温域における温度測定誤差を試験した。温度測定誤差は、公的機関で校正されたゲルマニュウム温度計を規準温度計として計測した。
【0073】
測定電流を0.2mA、1mA及び2mAとした試験結果を表4に、これをグラフ化したものを図6に示す。
【0074】
【表4】

【0075】
表1及び図7に温度測定誤差示した従来の測温抵抗体素子は、試験3に使用した測温抵抗体素子と、充填材6にガラス粉末が混合されずガラス粉末溶融のための加熱を行っていない点のみが異なり、その他の構造、寸法、及び材料は同じものである。
【0076】
表4及び図6の温度測定誤差を表1及び図7に示した従来の測温抵抗体素子の温度測定誤差と比較すると、充填材6にガラス粉末を混合し、溶融させることにより誤差が大幅に軽減されていることが解かる。
【0077】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはいうまでもない。
【0078】
例えば、実施形態の説明の冒頭に、絶縁碍子、測温抵抗体線の寸法と材料を示し、また、リード線、封止材、無機絶縁材粉末、及びガラス粉末の材料を示したが、本発明による極低温用測温抵抗体素子の寸法、材料はこれに限ったものではない。
【0079】
一例としては、絶縁碍子2の材料を窒化ボロンの多結晶体を成形したセラミックとしてもよいし、無機絶縁材粉末を多結晶体の窒化ボロンを粉末したものを用いることが可能である。
【0080】
測温抵抗体線の外径は20μmに限ったものではなく、また、リード線として白金とロジウムの合金以外の低電気抵抗の材料を用いてもよく、封止材としてガラス粉末を溶融するための加熱温度に耐える絶縁性接着剤であれば使用できる。
【0081】
ガラス粉末の材料も、軟化点が測温抵抗体線の内部歪を大きく変えるような高い温度のもの以外であれば適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の製造方法による極低温用測温抵抗体素子は、クライオポンプ内の温度測定、水素ステーションでの温度測定等において、4Kから90Kの極低温域の温度を測定する温度センサ素子に好適である。
【0083】
本発明による無機絶縁材粉末にガラス粉末を混合し、ガラス粉末を溶融させる方法は、低温域での使用において、貫通孔内に存在する空気等の気体が液滴化、固体化することによる熱伝導の低下を防止することができる。
熱伝導が低下すると、熱の移動量が少なくなるために、測定対象の温度変化に対する測温抵抗体線の温度追従が悪くなり、温度測定の応答速度が遅くなるという弊害も発生する。本発明による無機絶縁材粉末にガラス粉末を混合し、ガラス粉末を溶融させる方法は、液滴化、固体化による熱伝導の低下が生じないため、このような弊害は生じない。
【0084】
熱電対素線を金属シース内に無機絶縁材粉末を介在させて熱電対素線を収容したシース熱電対も極低温域の温度センサとして使用されることがある。シース熱電対の場合、電気抵抗値を測定する電流は不要であるため、極低温域での使用において無機絶縁材粉末の隙間に存在する空気等の気体が液滴化、固体化して熱伝導が低下しても、測温抵抗体素子のように測定電流が発生するジュール熱に起因する温度測定誤差が発生することはないが、熱伝導の低下によって温度測定の応答速度が遅くなる弊害は生じる。
【0085】
本発明による無機絶縁材にガラス粉末を混合し、ガラス粉末を溶融させることにより熱伝導の低下を防ぐ方法を、シース熱電対の測温点(プラス熱電対素線とマイナス熱電対素線の接合点)周辺の無機絶縁材粉末に適用して、シース内部空気の液滴化、固体化による熱伝導の低下を無くすことにより、極低温域で使用しても温度測定の応答速度が低下しないシース熱電対とすることができる。
【0086】
また、金属シース内に無機絶縁材粉末を介在させて測温抵抗体素子を収容したシース測温抵抗体において、測温抵抗体素子を本発明による極低温用測温抵抗体素子として低温域で使用するシース熱電対とするケースで、測温抵抗体素子周辺の無機絶縁材粉末にガラス粉末を混合し、ガラス粉末を溶融させることによって、極低温用測温抵抗体内部に加えてシースと測温抵抗体素子との間の空気の液滴化、固体化による熱伝導の低下をも無くして、極低温域で使用しても、温度測定の応答速度が速く、かつ、測定電流が発生するジュール熱による温度測定誤差が小さいシース測温抵抗体とすることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 極低温用測温抵抗体素子
2 絶縁碍子
3 貫通孔
4 測温抵抗体線
5 リード線
6 充填材
7 封止材
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測温抵抗体線と、この測温抵抗体線を内部に収容する外枠と、当該外枠と前記測温抵抗体線との間に充填される充填材とを備えた極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、
前記充填材として、多結晶体の無機絶縁材粉末と、当該無機絶縁材粉末、前記測温抵抗体線及び前記外枠の溶融する温度よりも軟化点が低い非晶質体の絶縁材であるガラス粉末との混合物を、前記外枠と前記測温抵抗体線との間に充填し、
この充填の後、前記ガラス粉末の軟化点よりも高く、かつ前記測温抵抗体線、前記外枠及び前記無機絶縁材粉末の溶融する温度より低い温度で加熱して当該ガラス粉末のみを溶融させ、
その後当該溶融したガラス粉末を降温して固化させる
ことを特徴とする極低温用測温抵抗体素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、前記測温抵抗体線は、白金とコバルトの合金を材料とし、これをコイル状に形成したものである
ことを特徴とする極低温用測温抵抗体素子の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、
前記白金とコバルトの合金は、白金にコバルトが0.5mol%含まれた合金であり、
前記ガラス粉末溶融のための加熱温度は、460℃以上520℃以下であり、かつ、前記ガラス粉末の軟化点より50℃以上高い温度である
ことを特徴とする極低温用測温抵抗体素子の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、
前記無機絶縁材粉末は、アルミナ粉末であり、
前記ガラス粉末は、酸化ビスマスが主成分で、これに酸化亜鉛及び酸化ボロンを加えたものであり、
前記ガラス粉末の前記充填材に対する混合比率は、3.5wt%から10.0wt%の範囲である
ことを特徴とする極低温用測温抵抗体素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、
極低温用測温抵抗体素子は、前記測温抵抗体線の両端に接続されるリード線をさらに備え、
前記外枠は、軸方向に二つの貫通孔を有する略円形断面の柱状をした絶縁碍子であり、
前記測温抵抗体線を、その両端部が前記各貫通孔の同側端部から露出するように往復して挿入し、
前記充填材を、前記貫通孔の内壁と前記測温抵抗体線との隙間に充填する
ことを特徴とする極低温用測温抵抗体素子の製造方法。
【請求項6】
請求項5の極低温用測温抵抗体素子の製造方法において、
絶縁材を材料とする封止材によって前記各貫通孔の両側端部を封止する工程をさらに備えている
ことを特徴とする極低温用測温抵抗体素子の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-03-31 
結審通知日 2017-04-05 
審決日 2017-06-23 
出願番号 特願2013-500261(P2013-500261)
審決分類 P 1 113・ 113- YAA (G01K)
P 1 113・ 112- YAA (G01K)
P 1 113・ 536- YAA (G01K)
P 1 113・ 121- YAA (G01K)
P 1 113・ 537- YAA (G01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 久夫  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 関根 洋之
大和田 有軌
登録日 2013-03-08 
登録番号 特許第5216947号(P5216947)
発明の名称 極低温用測温抵抗体素子の製造方法  
代理人 森岡 則夫  
代理人 中川 正人  
代理人 小谷 悦司  
代理人 小谷 悦司  
代理人 小谷 昌崇  
代理人 小原 英一  
代理人 柳野 隆生  
代理人 小原 深美子  
代理人 小谷 昌崇  
代理人 佐藤 興  
代理人 佐藤 興  
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