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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04M
管理番号 1332680
審判番号 不服2016-4107  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-17 
確定日 2017-10-03 
事件の表示 特願2013-536644「SIP通信におけるテキスト・メッセージについての配信レポート」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月 3日国際公開、WO2012/057978、平成26年 1月16日国内公表、特表2014-501063、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、2011年10月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年10月26日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年5月19日付けで拒絶理由が通知され、平成26年8月22日付けで手続補正がされ、平成27年1月20日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成27年4月27日付けで手続補正がされ、平成27年11月9日付けで、平成27年4月27日付けの補正が却下されるとともに拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年3月17日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされ、平成28年11月15日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年5月17日付けで手続補正がされたものである。


第2 原査定の理由

原査定(平成27年11月9日付け拒絶査定)の理由の概略は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

請求項:1-10
引用文献等:1-3

引 用 文 献 等 一 覧

1.欧州特許出願公開第2056557号明細書
2.特表2009-500973号公報
3.3rd Generation Partnership Project;Technical Specification Group Core Network and Terminals;Support of SMS over IP networks;Stage 3(Release 9),3GPP TS 24.341 V9.1.0 (2010-06),3GPP,2010年 6月15日,URL,http://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/24_series/24.341/24341-910.zip


第3 当審拒絶理由

当審拒絶理由の概略は次のとおりである。

1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



●理由1(明確性)について

請求項1ないし10に係る発明は明確でない。

●理由2(サポート要件)について

請求項1ないし10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。


第4 本願発明

本願請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、平成29年5月17日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-10は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
テキスト・メッセージ・システムであって、
パケット交換ネットワークにおいてエンティティからのテキスト・メッセージがカプセル化されているセッション開始プロトコル(SIP)要求を受信するように動作可能な、ネットワーク・インターフェースと、
前記テキスト・メッセージが受信者に対して成功裏に配信されたか否かを示すための該テキスト・メッセージについての配信ステータスを決定し、
前記テキスト・メッセージ・システムに対する前記SIP要求についての配信ステータスを示す、該SIP要求に対するSIP応答を生成し、
前記SIP応答の配信ステータス・パラメータに前記テキスト・メッセージについての前記決定された配信ステータスを挿入することで、該SIP応答が、前記テキスト・メッセージ・システムに対する前記SIP要求についての前記配信ステータス及び前記受信者に対する該テキスト・メッセージについての該配信ステータスの双方を報告するように動作可能な、
制御システムと、
を含み、
前記ネットワーク・インターフェースは、さらに、前記パケット交換ネットワークの上で前記SIP応答を前記エンティティに対して送信するように動作可能である、テキスト・メッセージ・システム。
【請求項2】
前記SIP応答は、SIP 700応答を含み、該SIP 700応答は、前記配信ステータス・パラメータを含み、該配信ステータス・パラメータは、前記テキスト・メッセージの配信が成功したことを示すパラメータを含んでおり、
前記制御システムは、さらに、前記配信ステータス・パラメータにモバイル・アプリケーション・パート(MAP)RP-ACKを挿入するように動作可能である、請求項1に記載のテキスト・メッセージ・システム。
【請求項3】
前記SIP応答は、SIP 701応答を含み、該SIP 701応答は、前記配信ステータス・パラメータを含み、該配信ステータス・パラメータは、前記テキスト・メッセージの配信が失敗したことを示すパラメータを含んでおり、
前記制御システムは、さらに、前記配信ステータス・パラメータにモバイル・アプリケーション・パート(MAP)RP-エラーを挿入するように動作可能である、請求項1に記載のテキスト・メッセージ・システム。
【請求項4】
前記配信ステータスは、前記エンティティからの前記テキスト・メッセージについてのSMS-サブミット-レポートを含む、請求項1に記載のテキスト・メッセージ・システム。
【請求項5】
前記配信ステータスは、前記受信者への前記テキスト・メッセージについてのSMS-デリバー-レポートを含む、請求項1に記載のテキスト・メッセージ・システム。
【請求項6】
パケット交換ネットワークにおいてエンティティからのテキスト・メッセージがカプセル化されているセッション開始プロトコル(SIP)要求を、ネットワーク・インターフェースで受信するステップと、
制御システムによって、前記テキスト・メッセージが受信者に対して成功裏に配信されたか否かを示すための該テキスト・メッセージについての配信ステータスを決定するステップと、
前記制御システムによって、テキスト・メッセージ・システムに対する前記SIP要求についての配信ステータスを示す、該SIP要求に対するSIP応答を生成するステップと、
前記制御システムによって、前記SIP応答の前記配信ステータス・パラメータに前記テキスト・メッセージについての前記決定された配信ステータスを挿入するステップであり、該挿入するステップにより、該SIP応答が、前記テキスト・メッセージ・システムに対する前記SIP要求についての前記配信ステータス及び前記受信者に対する該テキスト・メッセージについての該配信ステータスの双方を報告する、挿入するステップと、
前記ネットワーク・インターフェースによって、前記パケット交換ネットワークの上で前記SIP応答を前記エンティティに対して送信するステップと、
を含む方法。
【請求項7】
前記SIP応答は、SIP 700応答を含み、該SIP 700応答は、前記配信ステータス・パラメータを含み、該配信ステータス・パラメータは、前記テキスト・メッセージの配信が成功したことを示すパラメータを含んでおり、
前記SIP応答の前記パラメータに前記テキスト・メッセージについての前記決定された配信ステータスを挿入する前記ステップは、前記ステータス・パラメータにモバイル・アプリケーション・パート(MAP)RP-ACKを挿入するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記SIP応答は、SIP 701応答を含み、該SIP 701応答は、前記配信ステータス・パラメータを含み、該配信ステータス・パラメータは、前記テキスト・メッセージの配信が失敗したことを示すパラメータを含んでおり、
前記SIP応答の前記パラメータに前記テキスト・メッセージについての前記決定された配信ステータスを挿入する前記ステップは、前記配信ステータス・パラメータにモバイル・アプリケーション・パート(MAP)RP-エラーを挿入するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記配信ステータスは、前記エンティティからの前記テキスト・メッセージについてのSMS-サブミット-レポートを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記配信ステータスは、前記受信者への前記テキスト・メッセージについてのSMS-デリバー-レポートを含む、請求項6に記載の方法。」


第5 原査定についての判断

1.引用文献1について

平成27年11月9日付け拒絶査定に引用された欧州特許出願公開第2056557号明細書(以下「引用文献1」という。下線は当審が付与。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0004] The short message service (SMS) is maturely developed and widely applied in the traditional circuit switched (CS) domain. In order to continue developing the SMS and enable the SMS in the future IP network, the 3GPP organization sets up a topic to study how to use the SMS over IP. Currently, the 3GPP solves the SMS over IP by introducing an IP short message gateway (IP-SM-GW) as an SMS gateway between the IMS domain and the CS domain. When an IMS domain user sends a short message to a CS domain user, the short message is encapsulated in a SIP message body, and sent to the IP-SM-GW. The IP-SM-GW extracts the short message from the SIP message body, and sends the short message to the CS domain. The short message is sent by the CS domain user to the IMS domain user, and then transferred to the IP-SM-GW. The IP-SM-GW constructs a SIP message, encapsulates the short message into the SIP message body, and sends the SIP message body to the IMS domain user. The 3GPP TS 23.040 is a standard about SMS, and stipulates that a short message can carry a maximum data input of 140 bytes; if the data input is more than 140 bytes, the UE can send the short message through multiple correlated short messages, and the message receiver can assemble the multiple correlated short messages into a complete message.」
(当審訳:
[0004] ショートメッセージサービス(SMS)は十分に成長し、従来の回線交換(CS)ドメインで広く適用されている。SMSの成長を継続し、将来のIP網においてSMSを有効にするために、3GPP組織はSMS over IPをどのように使用するかを研究するトピックを設定する。現在、3GPPは、IMSドメインとCSドメインとの間にSMSゲートウェイとしてIPショートメッセージゲートウェイ(IP-SM-GW)を導入することにより、SMS over IPを解決している。IMSドメインユーザがCSドメインユーザにショートメッセージを送信すると、ショートメッセージはSIPメッセージ本体にカプセル化され、IP-SM-GWに送信される。IP-SM-GWは、SIPメッセージ本体からショートメッセージを抽出し、ショートメッセージをCSドメインに送信する。ショートメッセージが、CSドメインユーザによってIMSドメインユーザに送信され、その後、IP-SM-GWに転送される。IP-SM-GWは、SIPメッセージを構成し、そのショートメッセージをSIPメッセージ本体にカプセル化し、SIPメッセージ本体をIMSドメインユーザーに送信する。3GPP TS 23.040は、SMSに関する標準であって、ショートメッセージは最大140バイトのデータ入力を伝送できることを規定している。データ入力が140バイトより大きい場合、UEは、複数の相関したショートメッセージを介してショートメッセージを送信することができ、メッセージ受信者は、複数の相関したショートメッセージから完全なメッセージを組み立てることができる。)

「[0036] In the second embodiment, a short message is sent from the IMS domain to the CS domain, and multiple short message segments are encapsulated into multiple message bodies of a SIP message.
[0037] As shown in Figure 3 , the process of the second embodiment of the present invention includes the following steps:
[0038] Step 201: UE1 constructs a SIP message containing multiple message bodies. Short message segments which are concatenated to one message are encapsulated in multiple message bodies of the SIP message separately.
[0039] Step 202 to step 204: UE1 sends a SIP message, and the SIP message is routed to the IP-SM-GW through the P-CSCF and the S-CSCF.
[0040] Step 205: The IP-SM-GW extracts the concatenated short message segments from multiple message bodies of the SIP message, and sends them to the CS domain separately.
[0041] Step 206 to step 208: The IP-SM-GW sends a 202 OK response message to confirm the SIP message received in step 204; and the 202 OK response message is routed to UE1 through the S-CSCF and the P-CSCF.
[0042] Step 209: The IP-SM-GW receives delivery reports of the concatenated short message segments from the CS domain, constructs a SIP message, and puts the delivery reports of the concatenated short message segments into multiple message bodies of a SIP message separately.
[0043] Step 210 to step 212: The IP-SM-GW sends the SIP message constructed in step 209. The SIP message is routed to UE1 through the S-CSCF and the P-CSCF.
[0044] Step 213 to step 215: Upon receiving the SIP message, UE1 sends a 200 OK response message for confirmation. The response message is routed to the IP-SM-GW through the P-CSCF and the S-CSCF.」
(当審訳:
[0036] 第2の実施形態では、ショートメッセージはIMSドメインからCSドメインに送信され、複数のショートメッセージセグメントが複数のSIPメッセージ本体にカプセル化される。
[0037] 図3に示すように、本発明の第2の実施形態のプロセスは、以下のステップを含む。
[0038] ステップ201:UE1は、複数のメッセージ本体を含むSIPメッセージを構築する。1つのメッセージに繋げられる複数ショートメッセージセグメントは、複数のSIPメッセージ本体に別々にカプセル化される。
[0039] ステップ202からステップ204:UE1はSIPメッセージを送信し、SIPメッセージはP-CSCFとS-CSCFを介してIP-SM-GWにルーティングされる。
[0040] ステップ205:IP-SM-GWは、複数のSIPメッセージ本体から一連のショートメッセージセグメントを抽出し、それらを別々にCSドメインに送信する。
[0041] ステップ206からステップ208:IP-SM-GWは、ステップ204で受信したSIPメッセージの確認のために202 OK応答メッセージを送信する。202 OK応答メッセージは、S-CSCFとP-CSCFを介してUE1にルーティングされる。
[0042] ステップ209:IP-SM-GWは、CSドメインからの一連のショートメッセージセグメントの配信レポートを受信し、SIPメッセージを構築し、一連のショートメッセージセグメントの配信レポートを複数の別々のSIPメッセージ本体の中に入れる。
[0043] ステップ210からステップ212:IP-SM-GWは、ステップ209で構築したSIPメッセージを送信する。SIPメッセージは、S-CSCFとP-CSCFを介してUE1にルーティングされる。
[0044] ステップ213からステップ215:SIPメッセージを受信すると、UE1は確認のために200 OK応答メッセージを送信する。応答メッセージは、P-CSCFとS-CSCFを介してIP-SM-GWにルーティングされる。)





以上の記載によれば、引用文献1には、

「IMSドメインユーザがCSドメインユーザにショートメッセージを送信すると、前記ショートメッセージはSIPメッセージ本体にカプセル化され、IP-SM-GWに送信され、
UE1は、複数のメッセージ本体を含むSIPメッセージを構築し、送信し、
前記SIPメッセージは、P-CSCFとS-CSCFを介してIP-SM-GWにルーティングされ、
前記IP-SM-GWは、前記SIPメッセージの確認のために202 OK応答メッセージを送信し、前記202 OK応答メッセージは、前記S-CSCFと前記P-CSCFを介して前記UE1にルーティングされ、
前記IP-SM-GWは、一連のショートメッセージセグメントの配信レポートを複数の別々のSIPメッセージ本体の中に入れて送信され、前記IP-SM-GWからのSIPメッセージは、前記S-CSCFと前記P-CSCFを介して前記UE1にルーティングされ、
前記IP-SM-GWからのSIPメッセージを受信すると、前記UE1は確認のために200 OK応答メッセージを送信する、
システム。」(以下、「引用発明」という。)

が記載されていると認める。

平成27年11月9日付け拒絶査定に引用された特表2009-500973号公報(以下、「引用文献2」という。下線は当審が付与。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は移動体電気通信の分野に関し、特にIPマルチメディアシステム(IMS)メッセージを使用するユーザ装置(UE)と非IMSメッセージを使用するUEが相互のメッセージを通信することを可能にする方法及びシステムに関する。」

「【0013】
本発明の1実施形態による方法では、SIPベースのIMSと非IMSメッセージとの間の変換は別々のアプリケーションサーバまたはIP-SM-GWまたはSM-SCで構成された機能モジュールにより行われる。
【0014】
本発明の1実施形態による方法はさらに、
被呼者により戻された応答メッセージとしての転送報告メッセージを発呼者により受信されることのできるメッセージへ変換し、
発呼者IDと被呼者IDを獲得し、発呼者が加入するネットワークタイプに対応するフォーマットのIDへ変換するステップを含んでいる。
【0015】
本発明の1実施形態による方法において、転送報告メッセージを発呼者により受信されることのできるメッセージへ変換するステップは、
転送報告メッセージがSIPメッセージであるならば、パラメータが移動体アプリケーションパート(MAP)メッセージパラメータを参照して規定されるSIP応答メッセージを規定し、被呼者により戻された転送報告メッセージに関連されるデータを獲得し、それをMAPメッセージパラメータへ変換し、SIP応答メッセージを対応する転送報告情報を有するMAP転送報告メッセージへ変換し、
転送報告メッセージがMAPメッセージであるならば、被呼者から戻されたMAP転送報告データを獲得し、それをSIP応答メッセージ中のパラメータへ変換し、MAP応答メッセージを対応する転送報告情報を有するSIP応答メッセージへ変換する。
【0016】
本発明の1実施形態による方法では、転送報告メッセージを発呼者により受信されることのできるメッセージへ変換する処理は、
転送報告メッセージがSIPメッセージであるならば、SIP転送報告メッセージのIDを設定して転送報告メッセージとしてIDを有するSIP転送報告メッセージを使用し、IDを有するSIP転送報告メッセージのメッセージ本体にMAP転送報告パラメータ関連情報を搬送し、IDを有するSIP転送報告メッセージの内容を獲得し、それを対応するパラメータを有するMAP転送報告メッセージに変換し、
転送報告メッセージがMAPメッセージである場合には、被呼者により戻されるMAP転送報告データを獲得し、それをIDを有するSIP転送報告メッセージの内容へ変換する。
【0017】
本発明の1実施形態による方法において、メッセージアプリケーションサーバまたは機能モジュールは被呼者から戻されたMAP転送報告データを獲得し、それをSIP応答メッセージへ変換する。」

引用文献2の上記記載によれば、「非IMSメッセージを使用するUE」が送信した「MAP転送報告データ」を「IMSメッセージを使用するUE」が受信する「SIP応答メッセージ」への「変換」することが記載されており、詳細には、「IP-SM-GW」において、「MAP転送報告メッセージ」から「MAP転送報告データ」を獲得し、該「MAP転送報告データ」を「SIP応答メッセージ中のパラメータ」へ変換することにより、「SIP応答メッセージ」へ変換するものである。

そうすると、引用文献2によれば、

「MAP転送報告データを受信すると、SIP応答メッセージ中のパラメータへ変換することで、MAP応答メッセージを前記SIP応答メッセージへ変換すること。」が記載されている。(以下、「引用文献2記載事項」という。)


第6 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明の「IP-SM-GW」は、本願発明1の「テキスト・メッセージ・システム」に相当し、
引用発明において、「UE1」が送信する「SIPメッセージ」は、本願発明1の「SIP要求」に相当し、
引用発明の「ショートメッセージ」は、本願発明1の「テキスト・メッセージ」に含まれ、
引用発明の「IMSドメイン」は、本願発明1の「パケット交換ネットワーク」に含まれ、
引用発明の「UE1」は、SIPメッセージを構築して送信するから、本願発明1の「エンティティ」に含まれる。

引用発明における「UE1」が送信する「SIPメッセージ」は、「ショートメッセージ」が「SIPメッセージ本体にカプセル化され」ており、「IP-SM-GW」が受信するから、「パケット交換ネットワークにおいてエンティティからのテキスト・メッセージがカプセル化されているセッション開始プロトコル(SIP)要求を受信するように動作可能」であるといえる。

引用発明において、「IP-SM-GWからのSIPメッセージ」は、ショートメッセージの配信レポートを送るためのSIPメッセージであるから、「テキスト・メッセージについての配信状況」を送信するメッセージに含まれ、引用発明の「配信レポート」は、本願発明1の「配信ステータス」に含まれる。

引用発明の「202 OK応答メッセージ」は、SIP要求の受信が成功したことを意味することは自明であるから、本願発明1の「SIP応答」に対応しており「SIP要求についての配信ステータス」を示している。

したがって、本願発明1と引用発明とは、

「テキスト・メッセージ・システムであって、
パケット交換ネットワークにおいてエンティティからのテキスト・メッセージがカプセル化されているセッション開始プロトコル(SIP)要求を受信するように動作可能であって、
前記テキスト・メッセージが受信者に対して成功裏に配信されたか否かを示すための該テキスト・メッセージについての配信ステータスを決定し、
前記テキスト・メッセージ・システムに対する前記SIP要求についての配信ステータスを示す、該SIP要求に対するSIP応答を生成し、
前記ネットワーク・インターフェースは、さらに、前記パケット交換ネットワークの上で前記SIP応答を前記エンティティに対して送信するように動作可能である、テキスト・メッセージ・システム。」

で一致し、下記の点で相違する。

相違点1

一致点の「テキスト・メッセージ・システム」について、本願発明1は「ネットワーク・インターフェース」と「制御システム」を有するのに対し、引用発明の「IP-SM-GW」は、どのような構成を有しているか明らかでない点。

相違点2

一致点の「SIP応答」について、本願発明1は、「SIP応答の配信ステータス・パラメータに前記テキスト・メッセージについての前記決定された配信ステータスを挿入することで、該SIP応答が、前記テキスト・メッセージ・システムに対する前記SIP要求についての前記配信ステータス及び前記受信者に対する該テキスト・メッセージについての該配信ステータスの双方を報告するように動作可能」であるのに対し、引用発明は、「SIP要求についての情報」に「ショートメッセージの配信レポート」を挿入することなく、別々のSIPメッセージで送信している点。

(2)相違点についての判断

事案に鑑み、相違点2について検討する。

引用文献2には、「転送報告のパラメータが含まれたSIP応答」を送信することが記載されており、該「転送報告のパラメータが含まれたSIP応答」には「テキスト・メッセージ」に対する転送報告のステータスが含まれるものの、「SIP要求」についてのステータスが含まれるかどうかは明らかでないから、検討する。

ここで、引用文献2における

「【0089】
図7は以下説明するように、メッセージフォーマット変換機能がIP-SM-GWに存在する場合のメッセージ転送プロセスを示している。
【0090】
1.UEは正規の登録/再登録プロセスを行う。
【0091】
2.SMCは被呼者へ送信されるべきショートメッセージをSMS-GMSC)に転送する。
【0092】
3.SMS-GMSCはHLR/HSSから経路指定情報を得るときIPメッセージを受信することができることを示さなければならず、それによって被呼者がIMSサービスに加入するならば、HLR/HSSはIP-SM-GWのアドレスをSMS-GMSCへ戻される。
【0093】
4.SMS-GMSCはMSCまたはSGSNへショートメッセージを送信する方法と同じ方法で、ショートメッセージに搭載される目的地UEのMSISDNをIP-SM-GWへショートメッセージを送信する。
【0094】
5.IP-SM-GWは目的地UEのMSISDNをUEのSIP URIへ変換し、ショートメッセージをSIPメッセージフォーマットのメッセージへ変換するためにローカルデータベースを使用する。
【0095】
6.IP-SM-GWはSIPメッセージフォーマットの変換されたメッセージをS-CSCFへ送信する。
【0096】
7.S-CSCFはSIPメッセージをUEに転送する。
【0097】
8.UEは200のOK応答をS-CSCFへ戻す。
【0098】
9.S-CSCFは200のOK応答をIP-SM-GWへ戻す。
【0099】
10.UEはSIPメッセージ転送報告メッセージをS-CSCFへ送信する。」


を参照すれば、「UE」は、「ショートメッセージ」に基づく「SIPメッセージ」を受信すると、「200 OK」と「SIPメッセージ転送報告」の2つのメッセージを送信していることが明らかである。

また、

「【0034】
本発明の実施形態による方法を添付図面を参照して以下詳細に説明する。
図1の(a)と(b)は本発明の1実施形態による発呼者により開始される呼のメッセージのフロー図を概略的に示している。
【0035】
図1の(a)と(b)に示されているように、UE1は送信されるインスタントメッセージを生成し、SIPメッセージをサービス呼セッション制御機能エンティティ1(S-CSCF1)に送信する。そのS-CSCF1はサービス制御を行い、被呼者IDがSIP URIフォーマットであることを決定した後、正常としてIMSメッセージを送信し、または被呼者IDがTEl URIフォーマットであることを決定した後、SIPメッセージをアプリケーションサーバとして使用されるIPショートメッセージゲートウェイ(IP-SM-GW)に転送する。アプリケーションサーバとして使用されるIP-SM-GWは被呼者IDでENUM(電話番号マッピング)分解を行う。図2に示されているように、アプリケーションサーバにより被呼者IDをパーズするプロセスを概略的に示すフロー図が示されている。
【0036】
a.被呼者IDがSIP URIフォーマットに適切に変換されるのに成功するならば、図1の(a)のステップ1-8に示されているように、被呼者IDがSIP URIフォーマットに適切に変換されたことを示すメッセージがS-CSCF1に戻され、これはSIP URIの被呼者IDの被呼者IDにしたがって被呼者が加入するIMSネットワークをアドレスし、被呼者が加入するIMSネットワークへメッセージを転送する。S-CSCF1がSIPメッセージを被呼者が加入するIMSネットワークへ転送する態様は従来技術と類似しているか同じであり、それ故ここで詳細に説明しない。」


を参照すれば、「アプリケーションサーバ」についても、「インスタントメッセージ」に基づく「SIPメッセージ」を受信すると、「200 OK」と「SIPメッセージ」の2つのメッセージを送信していることが明らかである。

すなわち、本願の実施形態を参照すれば、「UE」についても、「アプリケーションサーバ」についても「SIPメッセージ」の受信により「200 OK」と「SIPメッセージ」の2つを送信しており、これらの双方を1つのメッセージで報告する概念は引用文献2には記載されていない。

上記の通り、引用文献2記載事項の「転送報告のパラメータが含まれたSIP応答」は「テキスト・メッセージについての該配信ステータス」は含まれているものの、「SIP要求についての前記配信ステータス」は含まれていないと解するべきであり、「SIP応答が、前記テキスト・メッセージ・システムに対する前記SIP要求についての前記配信ステータス及び前記受信者に対する該テキスト・メッセージについての該配信ステータスの双方を報告する」ことは、引用文献2記載事項には記載されていない。
さらに、その他の参考文献にも記載されておらず、周知な技術でもない。

したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができた、とはいえない。


2.本願発明2-5について

本願発明1と同一の構成を備えるから、少なくとも相違点について、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができた、とはいえない。

3.本願発明6-10について

本願発明1-5に対応した方法の発明であって、同様の理由により、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができた、とはいえない。


第7 当審拒絶理由についての判断

平成29年5月17日付けの補正により、本願発明は明確となり、また明細書に記載された内容となった。


第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-20 
出願番号 特願2013-536644(P2013-536644)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04M)
P 1 8・ 121- WY (H04M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 永田 義仁岩田 淳  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 吉田 隆之
山中 実
発明の名称 SIP通信におけるテキスト・メッセージについての配信レポート  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  

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