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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B02C |
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管理番号 | 1332718 |
審判番号 | 不服2013-22354 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-10-27 |
確定日 | 2017-10-06 |
事件の表示 | 特願2008-285917「シュレッダ-補助器」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月19日出願公開、特開2009- 56464〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願(特願2008-285917号)は、平成20年10月10日に実用新案登録第3143556号に基づいて特許出願されたものであって、平成25年10月29日(差出日:平成25年10月27日)に請求された拒絶査定不服審判についてした平成26年9月16日付けの審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成26年(行ケ)第10242号、平成27年6月10日判決言渡)があったので、審理を再開し、平成27年7月13日付けで当審において拒絶理由が通知され、これに対して平成27年9月23日に意見書が提出されるとともに明細書、特許請求の範囲及び図面について補正する手続補正書が提出されたものである。 上記実用新案登録及び本件出願に関する手続の経緯の詳細は、次のとおりである。 1 実用新案登録第3143556号 実用新案登録出願(実願2006-8029号) :平成18年 8月24日(差出日) 手続補正指令書(1回目) :平成18年10月16日(起案日) 手続補正書(1回目) :平成18年12月 7日(差出日) 手続補正書(2回目) :平成18年12月11日(差出日) 手続補正指令書(2回目) :平成19年 2月23日(起案日) 手続補正書(3回目) :平成19年 4月23日(差出日) 手続補正指令書(3回目) :平成19年 6月21日(起案日) 手続補正書(4回目) :平成19年 8月24日(差出日) 手続補正指令書(4回目) :平成19年10月12日(起案日) 手続補正指令書(5回目) :平成19年10月12日(起案日) 手続補正書(5回目) :平成19年12月20日(差出日) 手続補正書(6回目) :平成19年12月21日(差出日) 手続補正指令書(6回目) :平成20年 2月19日(起案日) 手続補正書(7回目) :平成20年 4月20日(差出日) 設定登録(実用新案登録第3143556号) :平成20年 7月 9日(登録日) 登録実用新案公報 :平成20年 7月31日(発行日) 2 本件出願 特許出願(特願2008-285917号) :平成20年10月10日(差出日) 審査請求 :平成20年10月10日(差出日) 拒絶理由通知 :平成23年11月22日(起案日) 意見書 :平成24年 1月27日(差出日) 手続補正書 :平成24年 1月27日(差出日) 拒絶理由通知(最後) :平成24年10月26日(起案日) 意見書 :平成25年 1月 4日(差出日) 手続補正書 :平成25年 1月 4日(差出日) 補正の却下の決定 :平成25年 7月22日(起案日) 拒絶査定 :平成25年 7月22日(起案日) 拒絶査定不服審判請求(不服2013-22354号) :平成25年10月29日(受付日) 審決 :平成26年 9月16日(起案日) 審決の取消しの訴え提起(平成26年(行ケ)第10242号) :平成26年11月 7日(提起日) 判決 :平成27年 6月10日(言渡日) 拒絶理由通知 :平成27年 7月13日(起案日) 意見書 :平成27年 9月23日(差出日) 手続補正書 :平成27年 9月23日(差出日) 第2 本件出願の明細書、特許請求の範囲及び図面について 本件出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面は、それぞれ、平成27年9月23日提出の手続補正書によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面であって、次のとおりである。 ア 明細書 「 【発明の名称】シュレッダ-補助器 【技術分野】 【0001】 シュレッダ-機による幼児の指切断等の怪我を防ぐ為の補助的部品。 【背景技術】 【0002】 近年、情報漏洩を防ぐ為、シュレッダ-機が個人の家庭でも普及するようになり、それに伴い幼児の指切断等の事故も多発してきているが、それを防ぐ手段として、補助的な器具を取り付けることにより、幼児の怪我等を未然に防止しようとするもので、再度製作し直すより安価。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 幼児の指挟み事故を未然に防ぐ。 【課題を解決する為の手段】 【0004】 シュレッダ-機本体にシュレッダ-補助器を取り付ける。 【発明の効果】 【0005】 シュレッダ-補助器を取り付けることにより、シュレッダ-機本体の刃部分に幼児の指が届かなくなり、指切断等の怪我を未然に防ぐことができる。 【図面の簡単な説明】 【0006】 【図1】シュレッダ-補助器の横断面図 シュレッダ-機本体の作動しているシュレッダ-機の刃部分の5cm位上方から紙を差し込む為の補助器であり、本考案「図1」は横断面図であるが、シュレッダ-補助器が徐々に狭くなり幼児の指が入り難くなることを表している。 【0007】 【図2】シュレッダ-補助器の正面図 本考案の正面図であるが、シュレッダ-機本体の刃部分の上方にシュレッダ-補助器の下方を取り付ける。 【0008】 【図3】シュレッダ-補助器を接続した全体の横断面図 【0009】 【図4】シュレッダ-補助器を接続した全体の正面図 【符号の説明】 【0010】 「図1」シュレッダ-補助器の横断面図において (ア)シュレッダ-補助器の高さ5cm、 (イ)シュレッダ-補助器の上部外幅2cm、 (ウ)シュレッダ-補助器上部片側の厚さ8mm、 (エ)シュレッダ-補助器下部片側の厚さ2mm、 (オ)シュレッダ-補助器の上部内幅4mm、 (カ)シュレッダ-補助器の下部内幅2mm、 (キ)シュレッダ-補助器の下部外幅6mm、 (ク)シュレッダ-補助器の上部の高さから下方へ1cmの所迄、ラッパ状のカ-ブを描く、 (ケ)シュレッダ-補助器の底部から上方へ計って、ストッパ-片側高さ1cm (コ)ストッパ-上部片側の厚さ1cm、 (サ)ストッパ-底部片側の厚さ4mm、 (シ)ストッパ-上部の点Aから計って下方へ5mmの所を起点Bとし、 (ス)ストッパ-底部の点Cにかけてシュレッダ-機本体に沿うようなカ-ブを描く (セ)シュレッダ-補助器に埋め込まれた金属製爪部分は高さ1cm、 (ソ)金属製爪部分の厚さ0.7mm、 (タ)金属製爪部分はシュレッダ-補助器の内部壁から計って1mmの所に埋め込まれ、 (チ)ストッパ-底部の点Cから、上方へ計って、蛇の鎌首状の頂点までの高さ1.5cm、 (ツ)蛇の鎌首型の上部の横断面幅4mm、 (テ)蛇の鎌首状は、蛇の鎌首型の頂点から下方へ向かって計り8mmの所迄、 (ト)金属製爪部分の蛇の鎌首状終点を点Dとし、 (ナ)点Dから水平に直線を伸ばし、其処から蛇の鎌首状の立ち上がり迄の角度を100度とし、 (ニ)点Dからストッパ-底部へ向かっての傾斜角は、金属製爪部分底部から水平に直線を伸ばした所まで計って45度とし、 「図2」において (ヌ)シュレッダ-補助器の高さ5cm (ネ)シュレッダ-補助器の横幅約35cm (ノ)シュレッダ-補助器の上部である紙差し込み口は、外幅2cm、 (ハ)シュレッダ-補助器の上部である紙差し込み口の内幅4mm、 (ヒ)シュレッダ-補助器の下部でありシュレッダ-機本体に取り付ける部分は外幅6mm、 (フ)シュレッダ-補助器下部であり、シュレッダ-機本体に取り付ける部分の内幅は2mm、 (ヘ)金属製のバネ状でシュレッダ-機本体紙差込口を挟み込む、金属製爪部分の一部1cmは、プラスチック製のシュレッダ-補助器に埋め込まれており、其処とバネのように押し戻し挟み込む、 (ホ)ストッパ-底部から計って、高さ1.5cmの蛇の鎌首状に戻って返す部分があり、 「図3」シュレッダ-補助器を接続した全体の横断面図において (マ)シュレッダ-補助器の上部である紙差込口は、徐々に狭くなっており、 (ミ)シュレッダ-補助器の上部外幅2cm、 (ム)シュレッダ-補助器の下部外幅は6mm、 (メ)シュレッダ-補助器の上部内幅は4mm、 (モ)シュレッダ-補助器の下部内幅は2mm、 (ヤ)シュレッダ-補助器が挿入し易いよう、傾斜角を、シュレッダ-機本体の水平面から測って85度とし、 「図4」シュレッダ-補助器を接続した全体の正面図において (ユ)シュレッダ-補助器の高さ5cm、 (ヨ)シュレッダ-補助器の横幅約35cm、 (ラ)シュレッダ-補助器の上部外幅は2cm、 (リ)シュレッダ-補助器の上部内幅は4mm、 以上からなるシュレッダ-補助器。」 イ 特許請求の範囲 「 【請求項1】 ・シュレッダ-機による幼児の指切断等の事故防止用補助的部品である「シュレッダ-補助器」 ・シュレッダ-補助器において、 形状:(1)シュレッダ-機本体に取り付け、 (2)ラッパ状の形状を有し、 (3)シュレッダ-補助器の下部は、シュレッダ-機本体の刃部分にシュレッダ-補助器の落ち込み防止の為、プラスチック製の部分が、ストッパ-の役割を果たす形状を有しており、 (4)シュレッダ-補助器に埋め込まれた金属製爪部分は、ストッパ-底部の外側からストッパ-上部に向かって伸び、ストッパ-と対になり、両側からシュレッダ-機本体を挟み込み、バネ状で、内側へ押し戻そうとする力が働き、 (5)金属製爪部分は、上部が、蛇の鎌首状に反り返った形状を有しており、 (6)金属製爪部分は蛇の鎌首状から、シュレッダ-補助器の下部へ向かって、ストッパ-底部を包むが如く、カ-ブを描きながら、シュレッダ-補助器内部へ到達する形状を有する、 (7)金属製爪部分の一部は、約1cm、シュレッダ-補助器の下部に、埋め込まれた形状を有しており、 (8)シュレッダ-補助器の横幅は、約35cmであるが、これはメ-カ-や機種により、シュレッダ-機本体の刃部分の横幅が異なる為、約35cmとしたが、A3用紙が余裕を持って縦に入る位の横幅であり、 材質:(9)シュレッダ-補助器の全体はプラスチック製であり、 (10)シュレッダ-補助器に埋め込まれた爪部分は金属製であり、 色: (11)シュレッダ-補助器の全体の色は、透明であり、 (12)シュレッダ-補助器に埋め込まれた、金属製爪部分の色は黒であり、 構造又は組み合わせ:(13)金属製爪部分が、バネ状に、押し戻そうとする力が働くことにより、 (14)シュレッダ-機本体を、挟み込む状態になり、 (15)シュレッダ-機本体から、着脱式に、取り付け取り外しが可能、 以上からなるシュレッダ-補助器。」 ウ 図面 「【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 」 第3 本件出願の時について 本件出願は、特許法第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願であるところ、同法第46条の2第2項には次のように規定されている。 「前項の規定による特許出願は、その願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が当該特許出願の基礎とされた実用新案登録の願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にあるものに限り、その実用新案登録に係る実用新案登録出願の時にしたものとみなす。」 同法第46条の2第2項の規定によれば、実用新案登録に基づく特許出願がその実用新案登録に係る実用新案登録出願の時にしたものとみなされる(以下、「出願時遡及」という。)ためには、以下の(要件1)を満たす必要がある。そして、出願時遡及の効果は実用新案登録出願の願書に最初に添付した明細書等に記載した事項に対して与えられるものであり、実用新案登録出願の願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でない新規事項について出願時遡及の効果を与えてはならないことは、補正の制限(実用新案法第2条の2第2項)の趣旨からかんがみて当然であることを踏まえると、同法第46条の2第2項は、出願時遡及が認められるためには、以下の(要件2)を満たす必要があるものと解釈することが合理的である。 (要件1)実用新案登録に基づく特許出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が、その特許出願の基礎とされた実用新案登録に係る実用新案登録出願の登録時の明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内であること。 (要件2)実用新案登録に基づく特許出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が、その特許出願の基礎とされた実用新案登録に係る実用新案登録出願の出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内であること。」 ((要件1)及び(要件2)の下線は、特に重要な箇所を示すため当審が付したものである。) <参照>実用新案法第2条の2第2項 「前項本文の規定により明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面について補正をするときは、願書に最初に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。 」 そこで、事案にかんがみ、以下、上記(要件2)に照らして、本件出願が実用新案登録第3143556号に係る実用新案登録出願(実願2006-8029号)の時(平成18年8月24日)にしたものとみなすことができるか、検討する。 1 特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面 特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許出願の明細書等」という。)に記載した事項は、上記第2 アないしウに示したとおりである。 2 実用新案登録出願の出願当初の明細書、実用新案登録請求の範囲及び図面 特許出願の基礎とされた実用新案登録に係る実用新案登録出願の出願当初の明細書、実用新案登録請求の範囲及び図面(以下、「実用新案登録出願の当初明細書等」という。)に記載した事項は、次のとおりである。 ア 明細書 「【考案の名称】シュレッダー補助器 【技術分野】 【0001】 シュレッダー機による幼児の指切断等のケガを防ぐ為の補助的部品。 【背景技術】 【0002】 近年、情報漏洩を防ぐ為、シュレッダー機が個人の家庭でも普及する様になり、それ故、幼児の指切断等の事故も多発している。それを防ぐ手段として、補助的な器具を取付けることにより、幼児のケガ等を未然に防止しようとするもの。再度製作し直すより安価。 【考案の開示】 【考案が解決しようとする課題】 【0003】 幼児の指挟み事故を未然に防ぐ。 【課題を解決するための手段】 【0004】 シュレッダー機に補助器を取付ける。 【図面の簡単な説明】 【0005】 【図1】機械の作動している場所(シュレッダー機の刃)から5cm位上方から、紙を差込む為の補助器。これを取付けることにより、シュレッダーの刃の部分に幼児の指が届かなくなる。本考案〔図1〕は横断面図である。補助器が徐々にせまくなり、幼児の指が入りにくくなることを表している。 【図2】本考案の正面図である。シュレッダー刃の部分上方に、補助器を取付けることを表している。」 イ 実用新案登録請求の範囲 「【請求項1】 シュレッダー機による幼児の指切断等のケガを防ぐ為の補助的部品。」 ウ 図面 「【図1】 【図2】 」 3 比較・判断 特許出願の明細書等と実用新案登録出願の当初明細書等とを比較すると、特許出願の明細書等における少なくとも次の点について、実用新案登録の明細書等に明示的な記載がない。 「特許請求の範囲における請求項1の(3)ないし(15)に記載された事項、明細書における段落【0010】の図1及び図2に関する事項並びに図面における図1及び図2に記載された事項」に関する点。 そして、この点については、以下のaないしfにおいて説明するとおり、実用新案登録出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、明らかに新たな技術的事項を導入するものであるから、特許出願の明細書等に記載した事項は、実用新案登録出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえず、上記(要件2)を満たしていない。 a 請求項1の(3)、(9)及び(10)について 特許出願の明細書等の特許請求の範囲における請求項1の(3)には「シュレッダ-補助器の下部は、・・・プラスチック製の部分が・・・」と記載されているが、実用新案登録出願の当初明細書等にはシュレッダ-補助器の材質に関する記載も示唆も無く、実用新案登録出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。 同様に、特許請求の範囲における請求項1の(9)の「シュレッダー補助器の全体はプラスチック製であり」及び(10)の「シュレッダ-補助器に埋め込まれた爪部分は金属製であり」という記載は、実用新案登録出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。 b 請求項1の(4)ないし(7)、(10)及び(12)ないし(15)について 特許出願の明細書等の特許請求の範囲における請求項1の(4)には「シュレッダ-補助器に埋め込まれた金属製爪部分は・・・」と記載されているが、実用新案登録出願の当初明細書等にはシュレッダ-補助器に埋め込まれた金属製爪部分に関する記載も示唆も無く、実用新案登録出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。 同様に、特許請求の範囲における請求項1の(5)ないし(7)及び(12)ないし(15)の「金属製爪部分」に関する記載並びに(10)の「シュレッダ-補助器に埋め込まれた爪部分は金属製であり」という記載は、実用新案登録出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。 c 請求項1の(8)について 特許出願の明細書等の特許請求の範囲における請求項1の(8)には「シュレッダ-補助器の横幅は、約35cmであるが、・・・」と記載されているが、実用新案登録出願の当初明細書等にはシュレッダ-補助器の横幅の長さに関する記載も示唆も無く、実用新案登録出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。 d 請求項1の(11)及び(12)について 特許出願の明細書等の特許請求の範囲における請求項1の(11)には「シュレッダ-補助器の全体の色は、透明であり」と記載されているが、実用新案登録出願の当初明細書等にはシュレッダ-補助器の色に関する記載も示唆も無く、実用新案登録出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。 同様に、特許請求の範囲における請求項1の(12)の「シュレッダー補助器に埋め込まれた、金属製爪部分の色は黒であり」という記載は、実用新案登録出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。 e 図1及び段落【0010】の図1に関する事項について 特許出願の明細書等の図1にはシュレッダ-補助器の横断面図が記載されており、段落【0010】には図1に関して、 「「図1」シュレッダ-補助器の横断面図において (ア)シュレッダ-補助器の高さ5cm、 (イ)シュレッダ-補助器の上部外幅2cm、 (ウ)シュレッダ-補助器上部片側の厚さ8mm、 (エ)シュレッダ-補助器下部片側の厚さ2mm、 (オ)シュレッダ-補助器の上部内幅4mm、 (カ)シュレッダ-補助器の下部内幅2mm、 (キ)シュレッダ-補助器の下部外幅6mm、 (ク)シュレッダ-補助器の上部の高さから下方へ1cmの所迄、ラッパ状のカ-ブを描く、 (ケ)シュレッダ-補助器の底部から上方へ計って、ストッパ-片側高さ1cm (コ)ストッパ-上部片側の厚さ1cm、 (サ)ストッパ-底部片側の厚さ4mm、 (シ)ストッパ-上部の点Aから計って下方へ5mmの所を起点Bとし、 (ス)ストッパ-底部の点Cにかけてシュレッダ-機本体に沿うようなカ-ブを描く (セ)シュレッダ-補助器に埋め込まれた金属製爪部分は高さ1cm、 (ソ)金属製爪部分の厚さ0.7mm、 (タ)金属製爪部分はシュレッダ-補助器の内部壁から計って1mmの所に埋め込まれ、 (チ)ストッパ-底部の点Cから、上方へ計って、蛇の鎌首状の頂点までの高さ1.5cm、 (ツ)蛇の鎌首型の上部の横断面幅4mm、 (テ)蛇の鎌首状は、蛇の鎌首型の頂点から下方へ向かって計り8mmの所迄、 (ト)金属製爪部分の蛇の鎌首状終点を点Dとし、 (ナ)点Dから水平に直線を伸ばし、其処から蛇の鎌首状の立ち上がり迄の角度を100度とし、 (ニ)点Dからストッパ-底部へ向かっての傾斜角は、金属製爪部分底部から水平に直線を伸ばした所まで計って45度とし、」と記載されているが、実用新案登録出願の当初明細書等にはシュレッダ-補助器の横断面図及びシュレッダ-補助器の横断面図における寸法についての記載も示唆も無く、実用新案登録出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。 f 図2及び段落【0010】の図2に関する事項について 特許出願の明細書等の図2にはシュレッダ-補助器の正面図が記載されており、段落【0010】には図2に関して、 「「図2」において (ヌ)シュレッダ-補助器の高さ5cm (ネ)シュレッダ-補助器の横幅約35cm (ノ)シュレッダ-補助器の上部である紙差し込み口は、外幅2cm、 (ハ)シュレッダ-補助器の上部である紙差し込み口の内幅4mm、 (ヒ)シュレッダ-補助器の下部でありシュレッダ-機本体に取り付ける部分は外幅6mm、 (フ)シュレッダ-補助器下部であり、シュレッダ-機本体に取り付ける部分の内幅は2mm、 (ヘ)金属製のバネ状でシュレッダ-機本体紙差込口を挟み込む、金属製爪部分の一部1cmは、プラスチック製のシュレッダ-補助器に埋め込まれており、其処とバネのように押し戻し挟み込む、 (ホ)ストッパ-底部から計って、高さ1.5cmの蛇の鎌首状に戻って返す部分があり、」と記載されているが、実用新案登録出願の当初明細書等にはシュレッダ-補助器の正面図及びシュレッダ-補助器の正面図における寸法についての記載も示唆も無く、実用新案登録出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。 4 まとめ 上記3のとおり、本件出願は、実用新案登録に基づく特許出願がその登録に係る実用新案登録出願の時にしたものとみなされるための(要件2)を満たしていないので、(要件1)について検討するまでもなく、平成18年8月24日(実用新案登録出願の時)に出願したものとみなすことはできず、本件出願の時は、本件出願の現実の出願日である平成20年10月10日である。 第4 本願発明について 1 本願発明 本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年9月23日付け手続補正書によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記第2 イに示した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりのものである。 そして、本件出願は、上記第3のとおり、平成20年10月10日に出願されたものである。 2 引用文献 平成27年7月13日付けで通知した拒絶理由で引用した登録実用新案第3143556号公報(発行日:平成20年7月31日)(以下、「引用文献」という。)には、その記載(特に、第20ページ下から第16行ないし第21ページ第15行)からみて、次の発明(以下、「引用文献に記載された発明」という。)が記載されている。 「・シュレッダ-機による幼児の指切断等の事故防止用補助的部品である「シュレッダ-補助器」 ・シュレッダ-補助器において、 形状:(1)シュレッダ-機本体に取り付け、 (2)ラッパ状の形状を有し、 (3)シュレッダ-補助器の下部は、シュレッダ-機本体の刃部分にシュレッダ-補助器の落ち込み防止の為、プラスチック製の部分が、ストッパ-の役割を果たす形状を有しており、 (4)シュレッダ-補助器に埋め込まれた金属製爪部分は、ストッパ-底部の外側からストッパ-上部に向かって伸び、ストッパ-と対になり、両側からシュレッダ-機本体を挟み込み、バネ状で、内側へ押し戻そうとする力が働き、 (5)金属製爪部分は、上部が、蛇の鎌首状に反り返った形状を有しており、 (6)金属製爪部分は蛇の鎌首状から、シュレッダ-補助器の下部へ向かって、ストッパ-底部を包むが如く、カ-ブを描きながら、シュレッダ-補助器内部へ到達する形状を有する、 (7)金属製爪部分の一部は、約1cm、シュレッダ-補助器の下部に、埋め込まれた形状を有しており、 (8)シュレッダ-補助器の横幅は、約35cmであるが、これはメ-カ-や機種により、シュレッダ-機本体の刃部分の横幅が異なる為、約35cmとしたが、A3用紙が余裕を持って縦に入る位の横幅であり、 材質:(9)シュレッダ-補助器の全体はプラスチック製であり、 (10)シュレッダ-補助器に埋め込まれた爪部分は金属製であり、 色: (11)シュレッダ-補助器の全体の色は、透明であり、 (12)シュレッダ-補助器に埋め込まれた、金属製爪部分の色は黒であり、 構造又は組み合わせ:(13)金属製爪部分が、バネ状に、押し戻そうとする力が働くことにより、 (14)シュレッダ-機本体を、挟み込む状態になり、 (15)シュレッダ-機本体から、着脱式に、取り付け取り外しが可能、 以上からなるシュレッダ-補助器。」 3 対比・判断 本願発明と引用文献に記載された発明とを対比すると、両者は一致し、相違点は存在しない。 したがって、本願発明の発明特定事項と引用文献に記載された発明の発明特定事項との間に差異はないから、本願発明は、引用文献に記載された発明と同一である。 4 まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 第5 むすび 上記第4のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないので、本件出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 なお、平成27年9月23日提出の意見書における主張に関連して、次の点を補足する。 <補足> (1)本件出願の時の遡及について 上記第3において検討したように、本件出願が実用新案登録第3143556号に係る実用新案登録出願(実願2006-8029号)の時(平成18年8月24日)にしたものとみなすことはできない。 つまり、本件出願の時は実用新案登録出願(実願2006-8029号)の時(平成18年8月24日)に遡及しない。 (2)刊行物に載せることについて 実用新案法(昭和三十四年四月十三日法律第百二十三号)においては、実用新案公報に関して同法第十4条及び第五十3条において以下のように規定されている。 第十4条 実用新案権は、設定の登録により発生する。 2 実用新案登録出願があつたときは、その実用新案登録出願が放棄され、取り下げられ、又は却下された場合を除き、実用新案権の設定の登録をする。 3 前項の登録があつたときは、次に掲げる事項を実用新案公報に掲載しなければならない。 一 実用新案権者の氏名又は名称及び住所又は居所 二 実用新案登録出願の番号及び年月日 三 考案者の氏名及び住所又は居所 四 願書に添付した明細書及び実用新案登録請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容 五 願書に添付した要約書に記載した事項 六 登録番号及び設定の登録の年月日 七 前各号に掲げるもののほか、必要な事項 第五十3条 特許庁は、実用新案公報を発行する。 (下線は、特に関連する箇所を示すため当審が付したものである。) つまり、実用新案権の設定の登録があったときに、願書に添付した明細書及び実用新案登録請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容を掲載した実用新案公報を特許庁が発行することは、実用新案法により規定されていることである。 すなわち、実用新案権の設定の登録後に実用新案公報(登録実用新案第3143556号公報)が発行されたことは、審判請求人(実用新案権者)が実用新案登録出願を行ったことによるものである。 |
審理終結日 | 2016-02-01 |
結審通知日 | 2016-02-09 |
審決日 | 2016-02-23 |
出願番号 | 特願2008-285917(P2008-285917) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(B02C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 篠原 将之 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
金澤 俊郎 梶本 直樹 |
発明の名称 | シュレッダ-補助器 |