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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1332729
審判番号 不服2015-18879  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-20 
確定日 2017-09-20 
事件の表示 特願2013-556955「無線端末及びホストデバイスのための通信方法、無線端末、及びホストデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月13日国際公開、WO2012/119543、平成26年 5月29日国内公表、特表2014-513453〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)3月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年3月9日 中華人民共和国)を国際出願日とする特願2013-556955号であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年 9月24日付け 拒絶理由の通知
平成26年12月25日 意見書、手続補正書の提出
平成27年 3月 5日付け 拒絶理由の通知
平成27年 6月 3日 意見書、手続補正書の提出
平成27年 7月 2日付け 平成27年6月3日付け手続補正書による
補正の却下、拒絶査定
平成27年10月20日 審判請求書、手続補正書の提出
平成27年11月19日 前置報告書
平成28年 7月22日付け 当審による拒絶理由の通知
平成28年10月26日 意見書、手続補正書の提出
平成28年12月20日付け 当審による拒絶理由の通知
平成29年 4月 3日 意見書の提出

第2 本件発明
本願の請求項に係る発明は、平成28年10月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1から14までに記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された、次の事項により特定されるものである。

「【請求項1】
無線端末のための通信方法であって、
無線端末によって、前記無線端末のUSBポートのポートタイプをホストデバイスに通知するステップであって、前記ポートタイプはネットワーク層データ転送プロトコルに基づき、その結果、前記ポートタイプに対応するポートドライバを使用することによって、ホストデバイスが前記USBポートを駆動するステップと、
前記無線端末によって、前記USBポートを経由した前記ホストデバイスとのインタラクションを介して、前記無線端末と前記ホストデバイスとの間のネットワーク層データ転送プロトコルに基づく通信リンクを確立するステップと、
前記無線端末によって、ネットワーク層データ転送プロトコルに基づく通信リンクを経由して、1又は2以上のサービスについてのサービスパケット及び前記サービスパケットのタイプを送信するステップと、
を含み、
前記無線端末によって、前記USBポートを経由した前記ホストデバイスとのインタラクションを介して、前記無線端末と前記ホストデバイスとの間の前記ネットワーク層データ転送プロトコルに基づく通信リンクを確立するステップは、特に、
前記無線端末によって、DHCPを使用することによって、前記無線端末及び前記ホストデバイスにIPアドレスを割り当てるとともに、前記無線端末と前記ホストデバイスとの間の前記ネットワーク層データ転送プロトコルに基づく前記通信リンクを確立するステップを含む、無線端末のための通信方法。」

第3 当審の平成28年12月20日付け拒絶理由の概要
当審が平成28年12月20日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。

理由1.(明確性)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由2.(実施可能要件)本件出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由3.(進歩性)本件出願の請求項1-14に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用刊行物>
1.特表2008-538690号公報
2.桑野雅彦“第2章 コミュニケーション・クラスでシリアル・ポート接続機器を作る USB仮想COMポート・デバイスの設計事例”、Interface、CQ出版株式会社、2007年1月1日、第33巻、第1号、p64-73(周知技術として例示)
3.細川達己“何でも接続!USB活用術 Part4 USBネットワークの利用形態”、UNIX USER、ソフトバンク クリエイティブ株式会社、2005年11月1日、第14巻、第11号、p64-69(周知技術として例示)
4.特表2007-535200号公報(周知技術として例示)

<参考文献>(技術常識の裏付けとして例示)
1.三木昭一郎“ファームウェアとアプリケーションの働きがイメージで分かる 今さら聞けないUSB通信のしくみ”、トランジスタ技術、CQ出版株式会社、2010年1月1日、第47巻、第1号、p112-122
2.桑野雅彦、藤原尚伸“USBシステムを理解するために必要なポイントを整理 今さら聞けないUSBの基礎知識”、Interface、CQ出版株式会社、2010年3月1日、第36巻、第3号、p54-65

第4 当審の判断
理由3について検討する。

1.特表2008-538690号公報に記載された発明
特表2008-538690号公報(当審が平成28年12月20日付けで通知した拒絶理由の引用文献1)には、以下の記載がある(なお、下線は、当審において付したものである。)。
(1)「【0003】
ワイヤレスデバイスは、TE2デバイス(TE2 device)に結合され、TE2デバイスのためのワイヤレスデータサービスを提供し、またはサポートするために使用されることができる。ワイヤレスデバイスは、ワイヤレスデータネットワークに対してアクセスを提供することができるセルラ電話(cellular telephone)、ユーザ端末、データカード、または他の何らかのデバイスとすることができる。TE2デバイスは、ラップトップコンピュータ、携帯型個人情報端末(personal digital assistant)(PDA)、または他の何らかのコンピューティングデバイス(computing device)とすることができる。用語「TE2デバイス(TE2 device)」と用語「端末装置(terminal equipment)」は、同義語であり、交換可能に使用される。ワイヤレスデバイスは、例えば内蔵カード、PCMCIA着脱可能カード、コード付き(tethered)モード電話など様々な方法でTE2デバイスに結合されることができる。TE2デバイスは、様々なハードウェア相互接続および/またはソフトウェア相互接続を使用してワイヤレスデバイスと通信することができる。どんな場合も、TE2デバイスは、一般的なインターネットアクセスおよび/または他の形式のデータ接続のためのワイヤレスデータネットワークにアクセスするためにワイヤレスデバイスを使用する。」

(2)「【0015】
ワイヤレスデバイス120は、ワイヤライン接続(図1に示されるような)またはワイヤレス接続を経由してTE2デバイス110に結合されることができる。ワイヤライン接続は、ユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus)(USB)、RS232/EIA232インターフェース、パーソナルコンピュータメモリカード国際協会(Personal Computer Memory Card International Association)(PCMCIA)インターフェース、IEEE-1394バス、ペリフェラルコンポーネント相互接続(Personal Component Interconnect)(PCI)バスなどのシリアルバス、共用メモリ、メッセージキュー(message queue)やイベントなどのプロセス間通信(Inter-Process Communication)(IPC)などを経由したものとすることができる。ワイヤレス接続は、IEEE802.11、ブルートゥースなどを経由したものとすることができる。
【0016】
ワイヤレスデバイス120に結合されるTE2デバイス110が「取り付けられた」コンフィギュレーション(“attached” configuration)においては、モバイルユーザは、TE2デバイス110を経由して様々なサービス(例えば、IP接続性サービスおよび/またはワイヤレスデータサービス)を得ることができる。これらのサービスを得るために、TE2デバイス110は、ワイヤレスデバイス120と通信し、このワイヤレスデバイスは、さらにワイヤレスネットワーク130と通信する。ワイヤレスデバイス120は、望ましいサービスを得るために無線通信を提供し、TE2デバイス110は、望ましいサービスについてのエンドツーエンド通信をサポートする。
【0017】
図2は、ワイヤレスデバイス120およびワイヤレスネットワーク130を経由しての、TE2デバイス110とリモートホスト170との間のデータ通信についての例示のプロトコルスタック200を、示している。そのプロトコルスタックは、トランスポート層、ネットワーク層、リンク層、および物理層を含む。
【0018】
TE2デバイス110とリモートホスト170とは、トランスポート層にある伝送制御プロトコル(Transmission Control Protocol)(TCP)、ユーザデータグラムプロトコル(User Datagram Protocol)(UDP)、または他の何らかのプロトコル、を使用して通信することができる。TCPおよびUDPは、一般的に、ネットワーク層にあるインターネットプロトコル(IP)の上部で動作する。トランスポート層データ(例えば、TCPおよび/またはUDPについての)は、IPパケットの形でカプセル化され(encapsulated)、これらのIPパケットは、ワイヤレスデバイス120、無線ネットワーク140、およびIPゲートウェイ150を経由してTE2デバイス110とリモートホスト170との間で交換される。
【0019】
TE2デバイス110とワイヤレスデバイス120との間のリンク層は、イーサネット(登録商標)(Ethernet(登録商標))または他の何らかのプロトコルとすることができる。ワイヤレスデバイス120とワイヤレスネットワーク130との間のリンク層は、一般的にワイヤレスネットワーク技術に依存している。CDMAネットワークでは、リンク層は、無線リンクプロトコル(Radio Link Protocol)(RLP)上でPPPを用いてインプリメントされる。ワイヤレスデバイス120は、データセッションのために、IPゲートウェイ150を用いてPPPセッションを維持し、データ交換のためにRLPを経由して無線ネットワーク140と通信する。RLPは、エアリンクインターフェース(air-link interface)(例えば、IS-2000またはIS-856)の上部で動作する。無線ネットワーク140は、物理層の上部で動作する、技術に依存するインターフェース(例えば、CDMAネットワークのための「R-P」インターフェース)を経由してIPゲートウェイ150と通信する。IPゲートウェイ150は、リンク層と物理層の上でIPを経由してリモートホスト170と通信する。」

(3)「【0021】
図4は、ワイヤレスデバイス120aを経由してTE2デバイス110aに対してデータ/IP接続性を提供するためのコンフィギュレーション400を示しており、これらは、図1におけるそれぞれTE2デバイス110とワイヤレスデバイス120の一実施形態である。TE2デバイス110aにおいて、アプリケーション410とソケット412は、データプロトコルスタック414上で実行する。ソケットは、ネットワーク上で実行される2つのアプリケーションの間の双方向の通信経路の1つのエンドポイント(endpoint)であり、ポート番号にバインドされ(bound)、その結果、TCPなどのトランスポート層プロトコルは、送信されるべきデータについてのアプリケーションを識別することができる。TE2デバイス110aは、インターフェース418を経由してワイヤレスデバイス120aと通信する。ワイヤレスデバイス120aにおいて、アプリケーション420とソケット422は、データプロトコルスタック424上で実行する。図4に示される実施形態では、各デバイスにおけるデータプロトコルスタックは、IPの上部で動作するTCPおよび/またはUDPを利用する。一般に、データプロトコルスタックは、任意数の層についてのプロトコルの任意の組合せをインプリメントすることができる。ワイヤレスデバイス120aは、Rmインターフェース428aを経由してTE2デバイス110aと通信し、Umインターフェース428bを経由してワイヤレスネットワーク130と通信し、ここでRmおよびUm中における「m」は、モバイルを意味する。」

(4)「【0057】
ワイヤレスデータサービス
図8は、TE2デバイス110eとワイヤレスデバイス120eとを有するコンフィギュレーション800を示しており、これらは、それぞれ、TE2デバイス110bとワイヤレスデバイス120bの要素のすべてを含んでいる。ワイヤレスデバイス120eはさらに、ハイパーテキスト転送プロトコル(Hypertext Transfer Protocol)(HTTP)サーバ820と、簡易メール転送プロトコル(Simple Mail Transfer Protocol)(SMTP)サーバ822と、動的ホストコンフィギュレーションプロトコル(Dynamic Host Configuration Protocol)(DHCP)サーバ824と、をさらにインプリメントする。HTTPサーバ820は、ワイヤレスデバイス120eとTE2デバイス110eとの間のコンテンツの転送をサポートする。SMTPサーバ822は、電子メールベースのアプリケーション(email-based application)をサポートする。DHCPサーバ824は、TE2デバイス110eについての動的IPコンフィギュレーションをサポートする。ワイヤレスデバイス120eは、TE2デバイス110eについての他のサービスをサポートするために異なるサーバおよび/または他のサーバをインプリメントすることができる。TE2デバイス110eは、アプリケーション510内で実行されるウェブブラウザ810と、位置ベース/GPSアプリケーション812と、メディアストリーミングアプリケーション814と、電子メールクライアント(email client)816と、を有する。TE2デバイス110eは、異なるエンドアプリケーションおよび/または他のエンドアプリケーションをサポートすることもできる。コンフィギュレーション800によってサポートされる一部の例示のワイヤレスデータサービスについては、下記に説明される。」

(5)「【0065】
DHCPを使用した動的アドレス割当て。TE2デバイス110eは、データセッションをセットアップし、ワイヤレスデバイス120eからIPアドレスおよび他のコンフィギュレーション情報を取得するために、ATコマンドおよびPPPを使用することができる。この場合には、TE2デバイス110e上のインターフェース518は、ダイアルアップモデムインターフェース(dial-up modem interface)のように振る舞う。もしこの情報が、LAN環境において一般的に使用されるDHCPまたは他の標準プロトコルを使用して、IPコンフィギュレーションを動的に取得することができる場合には、インターフェース518は、IPベースのインターフェースのように機能することができる。ワイヤレスネットワーク130は、一般的にDHCPなどLANベースのアドレス割当てスキームをサポートしないので、この機能は、ワイヤレスデバイス120eによってサポートされることができる。
【0066】
DHCPを伴う動的IPコンフィギュレーションの場合、TE2デバイス110eは、インターフェース518からのDHCPDISCOVERメッセージを最初にブロードキャストする。このメッセージは、ワイヤレスデバイス120eにおけるRmインターフェース528aを経由して受信され、DHCPサーバ824に対して転送される。DHCPサーバ824は、DHCPDISCOVERメッセージを処理し、(必要に応じて)ネットワーク技術特有のプロシージャを使用して、ワイヤレスネットワーク130からIPコンフィギュレーションを取得する。次いでDHCPサーバ824は、TE2デバイス110eに対してDHCPOFFERメッセージを送信する。この応答メッセージは、(1)TE2デバイス110eがそのIPアドレスとして使用することができるIPアドレスa.b.c.d 、(2)図1中のIPゲートウェイ150のIPアドレスであり得る、TE2デバイス110eがそのサブネットの外側のIPパケットを送信するために使用することができるIPアドレス、および(3)ワイヤレスデバイス120eによってスプーフィングされあるいはそのふりをされるIPアドレスであり得る、DHCPサーバ824のIPアドレス、を含むことができる。TE2デバイス110eは、その後にDHCPOFFERメッセージ中において通知される(advertised)ような、スプーフィングされたIPアドレスを使用して、DHCPメッセージをDHCPサーバ824に対して送信することができる。これらのDHCPメッセージは、Rmインターフェース528aを経由して受信され、経路指定またはパケットフィルタリングを使用してDHCPサーバ824に対して供給される。
【0067】
一般に、ここにおいて説明される技法およびコンフィギュレーションにより、TE2デバイスは、IPベースのインターフェースを使用して取り付けられたワイヤレスデバイスを経由してワイヤレスデータサービスを得ることができるようになる。いくつかの例示のワイヤレスデータサービスが、特定のコンフィギュレーション800について、上記に説明されている。他のサービスもまた、TE2デバイスに対して提供されることができる。
【0068】
ワイヤレスデータサービスは、ワイヤレスデバイス中心であるかもしれないし、ワイヤレスネットワーク経由で取得するために特別な手段および/またはプロトコルを必要とするかもしれない。ここにおいて説明される技法は、TE2デバイスからこれらの複雑さ(intricacy)を隠すことができる。TE2デバイス中において実行されるエンドアプリケーションは、IPベースのインターフェースを使用してワイヤレスデバイスを経由してこれらのワイヤレスデータサービスを取得することができる。これらのエンドアプリケーションは、IPベースのフレームワーク上で動作する、ウェブブラウザなど、標準のIPベースのプロトコルを使用することができる。TE2デバイスについてのIPベースのインターフェースをサポートするいくつかの利点は、次のものを含んでいる。すなわち、
・TE2デバイス中におけるエンドアプリケーションは、データアプリケーション開発業者によってよく理解され、非常に安定しており、立証された機能を有するIPベースのプロトコルを使用することができる。
・エンドアプリケーションは、標準のIPプロトコルに基づいた多数の既存のアプリケーションを再使用することができる。
・エンドアプリケーションは、ユーザによって一般に使用され非常に人気のある、ウェブベースのユーザインターフェースなど、標準化され、よく知られているユーザインターフェースを使用することができる。これらのユーザインターフェースは、ユーザに対してコンテンツを提供するためにIPベースのフレームワークを必要とする。
IPベースのインターフェースは、一様(uniform)であり、(1)ワイヤレスデバイスのタイプ、アーキテクチャ、および製造業者、(2)望ましいワイヤレスデータサービスにアクセスするワイヤレスデバイスによって、サポートされ使用されるワイヤレス技術、(3)TE2デバイスについての環境またはオペレーティングシステム、および(4)TE2デバイスとワイヤレスデバイスとの間の物理的相互接続、から独立している。」

(6)「【0070】
その後に、ワイヤレスデバイス120は、通信経路1についてIPアドレスa.b.c.d を使用してTE2デバイス110とワイヤレスネットワーク130との間で交換されるデータを転送する(ブロック914)。このデータは、このデータが、Umインターフェース上にインストールされるパケットフィルタのどれともマッチングしないので、ワイヤレスデバイス120を対象としない。ワイヤレスデバイス120はまた、(1)TE2デバイス110に送信されるアウトバウンドパケットについてIPアドレスw.x.y.z を使用すること、および(2)TE2デバイス110から受信されるインバウンドパケットに対してアドレスベースの経路指定またはパケットフィルタリングを実行すること、によって、通信経路2についてRmインターフェースを経由してTE2デバイスとデータを交換することもできる(ブロック916)。ワイヤレスデバイス120は、(1)ワイヤレスネットワーク130に送信されるアウトバウンドパケットについてIPアドレスa.b.c.d を使用し、(2)ワイヤレスネットワークから受信されるインバウンドパケットに対してパケットフィルタリングを実行することにより、通信経路3についてUmインターフェースを経由してワイヤレスネットワーク130とデータを交換することもできる(ブロック918)。」

(7)図8



(8)そうすると、引用文献1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「ワイヤレスデバイスは、ワイヤレスデータネットワークに対してアクセスを提供することができるセルラ電話、ユーザ端末、データカード、または他の何らかのデバイスとすることができ、
ワイヤレスデバイス120は、ワイヤライン接続を経由してTE2デバイス110に結合されることができ、ワイヤライン接続は、ユニバーサルシリアルバス(USB)を経由したものとすることができ、
ワイヤレスデバイス120に結合されるTE2デバイス110が「取り付けられた」コンフィギュレーションにおいては、モバイルユーザは、TE2デバイス110を経由して様々なサービス(例えば、IP接続性サービスおよび/またはワイヤレスデータサービス)を得ることができ、これらのサービスを得るために、TE2デバイス110は、ワイヤレスデバイス120と通信し、
トランスポート層データ(例えば、TCPおよび/またはUDPについての)は、IPパケットの形でカプセル化され、これらのIPパケットは、ワイヤレスデバイス120、無線ネットワーク140、およびIPゲートウェイ150を経由してTE2デバイス110とリモートホスト170との間で交換され、
TE2デバイス110とワイヤレスデバイス120との間のリンク層は、イーサネット(登録商標)または他の何らかのプロトコルとすることができ、
TE2デバイス110aにおいて、アプリケーション410とソケット412は、データプロトコルスタック414上で実行し、ソケットは、ネットワーク上で実行される2つのアプリケーションの間の双方向の通信経路の1つのエンドポイントであり、ポート番号にバインドされ、その結果、TCPなどのトランスポート層プロトコルは、送信されるべきデータについてのアプリケーションを識別することができ、TE2デバイス110aは、インターフェース418を経由してワイヤレスデバイス120aと通信し、
ワイヤレスデバイス120eはさらに、動的ホストコンフィギュレーションプロトコル(DHCP)サーバ824をインプリメントし、
DHCPサーバ824は、TE2デバイス110eについての動的IPコンフィギュレーションをサポートし、
TE2デバイス110eは、データセッションをセットアップし、ワイヤレスデバイス120eからIPアドレスおよび他のコンフィギュレーション情報を取得するために、ATコマンドおよびPPPを使用することができ、
もしこの情報が、LAN環境において一般的に使用されるDHCPまたは他の標準プロトコルを使用して、IPコンフィギュレーションを動的に取得することができる場合には、インターフェース518は、IPベースのインターフェースのように機能することができ、この機能は、ワイヤレスデバイス120eによってサポートされ、
DHCPを伴う動的IPコンフィギュレーションの場合、TE2デバイス110eは、インターフェース518からのDHCPDISCOVERメッセージを最初にブロードキャストし、このメッセージは、ワイヤレスデバイス120eにおけるRmインターフェース528aを経由して受信され、DHCPサーバ824に対して転送され、
次いでDHCPサーバ824は、TE2デバイス110eに対してDHCPOFFERメッセージを送信し、この応答メッセージは、(1)TE2デバイス110eがそのIPアドレスとして使用することができるIPアドレスa.b.c.d 、(2)図1中のIPゲートウェイ150のIPアドレスであり得る、TE2デバイス110eがそのサブネットの外側のIPパケットを送信するために使用することができるIPアドレス、および(3)ワイヤレスデバイス120eによってスプーフィングされあるいはそのふりをされるIPアドレスであり得る、DHCPサーバ824のIPアドレス、を含むことができ、
TE2デバイス110eは、その後にDHCPOFFERメッセージ中において通知されるような、スプーフィングされたIPアドレスを使用して、DHCPメッセージをDHCPサーバ824に対して送信することができ、これらのDHCPメッセージは、Rmインターフェース528aを経由して受信され、経路指定またはパケットフィルタリングを使用してDHCPサーバ824に対して供給され、
TE2デバイス中において実行されるエンドアプリケーションは、IPベースのインターフェースを使用してワイヤレスデバイスを経由してこれらのワイヤレスデータサービスを取得することができ、これらのエンドアプリケーションは、IPベースのフレームワーク上で動作する、ウェブブラウザなど、標準のIPベースのプロトコルを使用することができ、
ワイヤレスデバイス120はまた、(1)TE2デバイス110に送信されるアウトバウンドパケットについてIPアドレスw.x.y.z を使用すること、および(2)TE2デバイス110から受信されるインバウンドパケットに対してアドレスベースの経路指定またはパケットフィルタリングを実行すること、によって、通信経路2についてRmインターフェースを経由してTE2デバイスとデータを交換することもできる、
方法。」

2.技術常識について
(1)当審の平成28年12月20日付け拒絶理由で例示した参考文献1(上記第3参照)には、次の記載がある(当審注:「マル1」?「マル6」は、丸印が付された数字の1?6を示す。)。
「接続時の自動認識処理(プラグ・アンド・プレイ)
USBの一番の特徴は接続時の自動認識(プラグ・アンド・プレイ)に対応していることです.USBホストの電源を落とすことなく、周辺機器(USBデバイス)をパソコン(USBホスト)に接続して使用できます.USBデバイスを接続してから使用可能になるまでの間に行われる一連の処理を「エニュメレーション」と呼びます.
図6はUSBデバイス(例として、マス・ストレージ・クラスのUSBハード・ディスク)が接続されたときのUSBホスト内の処理をイメージ化したものです.

マル1 パソコン側のハブ・ドライバがUSBデバイスの接続を認識
USBホストのUSBコネクタにUSBデバイスが接続されると、ホスト・コントローラ・ドライバがハブ・ドライバに対して、USBデバイスが接続されたことを通知します.

マル2 USBホストがUSBデバイスを管理するための番号(デバイス・アドレス)を割り当て
(中略)

マル3 USBデバイスの正体(デバイス・ディスクリプタ)を取得
次に、接続されたUSBデバイスからディスクリプタ(表3)と呼ばれる情報を取得します.まずUSBデバイスがどのクラスに属するのかを知るために、デバイス・ディスクリプタを取得します.ディスクリプタ情報の取得にはGET_DESCRIPTORリクエストを使用します.

マル4 クラスを判別してホストの通信の準備
USBホストは、取得したデバイス・ディスクリプタ内のbDeviceClassに設定されているクラス・コード(表5)からデバイス・クラスを判別します.クラス・コードが00(h)の場合、インターフェース・ディスクリプタ内のbInterfaceClassを参照し、デバイス・クラスを判別します.
(中略)
クラス・コードから判別したクラスからUSBデバイスに合わせてデータ通信路(図3のベルト・コンベア)を構築していきます.USBでは4種類のデータ通信路が用意されており、用途に合わせて通信路を使い分けます.

マル5 デバイスの通信の準備(コンフィグレーション設定)
USBホストからのデータ通信路(ベルト・コンベア)をUSBデバイス側のエンドポイントに適切に割り当ててもらうために、USBデバイスに対して通知を出します.通知にはSET_CONFIGURATIONリクエストを使用します.

マル6 データ転送の準備完了
コンフィグレーション設定が完了すると、クラス内で定義された転送プロトコル(図3のクラス・レイヤ間で使用する箱)にのっとってデータ送受信が可能となります.

●自作USBデバイスを使用するには…
USBデバイスを接続し、データ転送可能状態になるということはUSBホストにおいてクラス・ドライバのロードが完了したことを意味します.USBホスト側で使用しているOSがWindows系OS(WindowsXP/Vista/7など)やLinux系OSの場合は、ほとんどの標準クラスのクラス・ドライバがデフォルトでインストールされています.そのため標準クラスに属するUSBデバイスを開発した場合は、USBデバイスをUSBホストに接続するだけでクラス・ドライバが自動でロードされ、使用することが可能になります.」(p117右欄下から12行目-p120左欄第7行の抜粋)

(2)同じく、参考文献2(上記第3参照)には、次の記載がある(当審注:「マル3」は、丸印が付された数字の3を示す。)。
「●コントロール転送の実際
より具体的に、USBではどのようにデータ転送が行われるのかを見てみましょう.
まずUSBケーブルを接続した直後に行われる、最初のコントロール転送のようすを図6に示します.
(中略)
●ディスクリプタとは
図6のコントロール転送で、ターゲットからホストに対して転送される具体的なデータとして、各種ディスクリプタ(表5)があります.コラムにより接続されたターゲットの通信速度は判定できますが、さらに詳しい種類まではわかりません.そこでコントロール転送を使って、まず表5(a)の標準デバイス・ディスクリプタを取得します.この中に、ベンダIDやプロダクトID、USB周辺機器としての大まかな分類を示すクラス・コードなどが格納されています.表6にクラス・コードを示します.
また図1(b)に示したように、ターゲットごとにエンドポイントの個数も異なります.エンドポイントの個数やどのエンドポイントをどの転送モードで使うかなどは、インターフェース・ディスクリプタ内に記述されています.つまり、ターゲットとしてのさまざまな仕様は、これらのディスクリプタの内容を調べればすべてわかるようになっています.
●USBの状態管理
(中略)
最終的にUSB機器として動作可能状態になるには、デバイス・リクエストとしてSET_CONFIGURATIONリクエストを発行して、ターゲットをマル3の状態にしてからです.」(p58右欄第4行-p62右欄第5行から抜粋。)

「2.USBホストとUSBドライバ
USBシステムの全体像がわかったところで、次はUSBホストには何が必要かを整理しましょう.今回はホストとしてWindowsパソコンを想定しています.
●USB機器を接続するにはドライバが必要
先月号(2010年2月号)の本誌特集でも詳しく解説されていたように、周辺機器を制御するには、ハードウェアとアプリケーションをつなぐ架け橋となるデバイス・ドライバ(以下ドライバ)が必要です.図9にWindowsにおけるUSBホストのソフトウェア構成を示します.USBホスト・コントローラを制御するホスト・コントローラ・ドライバや、USBハブを制御するハブ・ドライバ、そしてUSBターゲットの種類ごとに用意されている各種クラス・ドライバなどが階層化された構造となっています.
●Windowsに標準で用意されているドライバ
たとえば、WindowsパソコンにUSBキーボードを差し込んだら、ドライバのインストーラは起動せずに自動的にドライバが読み込まれ、キーボードが使えるようになります.これはWindowsが標準でUSBキーボード用のドライバを持っているからです.USBキーボードには各社からいろいろな種類(フル・キーボード、10キーなし小型キーボード、10キーのみ)が発売されていますが、これらはすべて同じクラスで管理され、ドライバを用意せずともそのまま使えます.
Windowsが標準でドライバを持っているデバイスには次のようなものがあります.
・USBハブ…ハブ・クラス
・キーボードやマウス…HID(HumanInterfaceDevice)クラス
・ハード・ディスクやUSBフラッシュ・メモリ…マスストレージ・クラス
・USB接続仮想シリアル・ポート…コミュニケーション・デバイス・クラス
●USB標準クラスはドライバ要らず
これらの標準クラスにはOSに初めからドライバが用意されているので、新規にドライバを用意する必要がありません.必要に応じてアプリケーションを作成するだけですぐにUSBターゲットと通信が行えます.標準クラスを採用すれば、それだけ開発負荷を減らせるわけで、手軽にUSB周辺機器を開発するなら、既存の標準クラスに対応させるのが得策です.本特集では、第4章でマスストレージ・クラスに、第5章と第6章ではコミュニケーション・デバイス・クラスに対応させたUSBターゲットを作成しています.」(p62右欄下から11行目-p64左欄第26行)

(3)上記(1)、(2)に例示されるように、USB機器の分野において、以下(i)及び(ii)は、技術常識(以下、「技術常識A」という。)である。
(i)USBホスト(PC等)にUSBデバイスを接続した場合、プラグアンドプレイにより、接続されたUSBデバイスのクラス等の情報を記述したディスクリプタがUSBホストに送られ、USBホストでは、該ディスクリプタの記述内容に対応するドライバが使用され、USBポートを介したデータ転送が可能になること。
(ii)OSによっては、標準クラスのドライバが予め用意されており、該標準クラスのドライバが使用できる場合には、新規にドライバを用意する必要はないこと。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「ワイヤレスデバイス120」、「TE2デバイス110」、及び「動的ホストコンフィギュレーションプロトコル(DHCP)」はそれぞれ本願発明の「無線端末」、「ホストデバイス」及び「DHCP」に相当する。

(2)引用発明では、「ワイヤレスデバイス120」は、「USBを経由」して「TE2デバイス110」に接続される。
そして、上記技術常識Aに鑑みれば、引用発明においても、「ワイヤレスデバイス120」を「USBを経由」して「TE2デバイス110」に接続し、プラグアンドプレイによって、「ワイヤレスデバイス120」と「TE2デバイス110」との間でデータ転送を可能な状態にしているといえるから、本願発明と引用発明とは、「無線端末を、無線端末のUSBポートを介してホストデバイスに接続し、データ転送を可能な状態にするステップ」を有する点で共通するといえる。

(3)引用発明では、「ワイヤレスデバイス120」は、「動的ホストコンフィギュレーションプロトコル(DHCP)サーバ824をインプリメントし」、「DHCPサーバ824は、TE2デバイス110eについての動的IPコンフィギュレーションをサポート」するとしている。
そして、引用発明では、「ワイヤレスデバイス120」と「TE2デバイス110」とが、「DHCPを伴う動的IPコンフィギュレーション」によって割り当てられたIPアドレスを用いて通信することにより、「TE2デバイス中において実行されるエンドアプリケーションは、IPベースのインターフェースを使用してワイヤレスデバイスを経由してこれらのワイヤレスデータサービスを取得することができ、これらのエンドアプリケーションは、IPベースのフレームワーク上で動作する、ウェブブラウザなど、標準のIPベースのプロトコルを使用することができ」るのである。
ここで、動的ホストコンフィギュレーションプロトコル(DHCP)サーバとは、予めDHCPクライアント用にいくつかのIPアドレスを用意しておき、DHCPクライアントの要求に応じて、この中から1つのアドレスを割り当てるものであることは、当業者に自明である。
また、「IPベースのプロトコル」がネットワーク層データ転送プロトコルであることも自明である。
そうすると、引用発明の「ワイヤレスデバイス120」と「TE2デバイス110」との間には、ネットワーク層データ転送プロトコルに基づく通信リンクが確立しているといえ、引用発明も、本願発明にいう「前記無線端末によって、前記USBポートを経由した前記ホストデバイスとのインタラクションを介して、前記無線端末と前記ホストデバイスとの間の前記ネットワーク層データ転送プロトコルに基づく通信リンクを確立するステップ」であって、「前記無線端末によって、DHCPを使用することによって、前記無線端末及び前記ホストデバイスにIPアドレスを割り当てるとともに、前記無線端末と前記ホストデバイスとの間の前記ネットワーク層データ転送プロトコルに基づく前記通信リンクを確立するステップ」を有するものといえる。

(4)引用発明においても、「トランスポート層データ」は、「IPパケットの形でカプセル化」され、これらの「IPパケット」は、ワイヤレスデバイス120とTE2デバイス110との間で交換されるから、本願発明にいう「前記無線端末によって、ネットワーク層データ転送プロトコルに基づく通信リンクを経由して、1又は2以上のサービスについてのサービスパケット及び前記サービスパケットのタイプを送信するステップ」を有するものといえる。

(5)よって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。
(一致点)
「無線端末のための通信方法であって、
無線端末を、無線端末のUSBポートを介してホストデバイスに接続し、データ転送を可能な状態にするステップと、
前記無線端末によって、前記USBポートを経由した前記ホストデバイスとのインタラクションを介して、前記無線端末と前記ホストデバイスとの間のネットワーク層データ転送プロトコルに基づく通信リンクを確立するステップと、
前記無線端末によって、ネットワーク層データ転送プロトコルに基づく通信リンクを経由して、1又は2以上のサービスについてのサービスパケット及び前記サービスパケットのタイプを送信するステップと、
を含み、
前記無線端末によって、前記USBポートを経由した前記ホストデバイスとのインタラクションを介して、前記無線端末と前記ホストデバイスとの間の前記ネットワーク層データ転送プロトコルに基づく通信リンクを確立するステップは、特に、
前記無線端末によって、DHCPを使用することによって、前記無線端末及び前記ホストデバイスにIPアドレスを割り当てるとともに、前記無線端末と前記ホストデバイスとの間の前記ネットワーク層データ転送プロトコルに基づく前記通信リンクを確立するステップを含む、無線端末のための通信方法。」

(相違点)
無線端末を、無線端末のUSBポートを介してホストデバイスに接続し、データ転送を可能な状態にするステップが、本願発明では、「無線端末によって、前記無線端末のUSBポートのポートタイプをホストデバイスに通知するステップであって、前記ポートタイプはネットワーク層データ転送プロトコルに基づき、その結果、前記ポートタイプに対応するポートドライバを使用することによって、ホストデバイスが前記USBポートを駆動するステップ」であるのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

4.判断
本願発明は、「無線端末」と「ホストデバイス」とをUSB接続するものであるから、上記技術常識Aに鑑みれば、本願発明の「無線端末によって、前記無線端末のUSBポートのポートタイプをホストデバイスに通知するステップ」とは、無線端末とホストデバイスとをUSB接続する際に、プラグアンドプレイによって、特定の情報を記述したディスクリプタをホストデバイスに通知するステップであると解することができる。なお、このように解することは、平成29年4月3日付け意見書の1(2)の審判請求人の主張とも整合する。
そして、本願発明の「前記ポートタイプはネットワーク層データ転送プロトコルに基づき、その結果、前記ポートタイプに対応するポートドライバを使用することによって、ホストデバイスが前記USBポートを駆動する」とは、上記ディスクリプタを通知した結果、ホストデバイスがネットワーク層データ転送プロトコルに基づく通信リンクに用いるポートドライバを使用してUSBポートを駆動することを意味すると解することができる。

一方、引用発明は、「ワイヤレスデバイス120」と「TEデバイス110」とをUSB接続してデータ転送を可能な状態にした後、「DHCPを伴う動的IPコンフィギュレーション」によってネットワーク層データ転送プロトコルに基づく通信リンクを確立し、IPパケットを交換するものであるところ、上記技術常識Aに鑑みれば、引用発明において、「ワイヤレスデバイス120」と「TEデバイス110」とをUSB接続する際に、「TEデバイス110」が「ネットワーク層データ転送プロトコルに基づく通信リンク」に用いる「ポートドライバ」を使用してUSBポートを駆動するよう、USBデバイスである「ワイヤレスデバイス120」のクラス等の情報を記述したディスクリプタを「TEデバイス110」に通知することは、当業者が容易になし得ることであるから、上記相違点に係る構成を想到することに格別の困難はない。

なお、請求項1に係る発明は、「無線端末」がコミュニケーションクラスに準拠した機器であることを示す「ディスクリプタ」を通知することや、「ホストデバイス」のOSに予め用意された「ポートドライバ」を使用することについて限定するものではないが、仮にそのように限定的に解釈したとしても、USBデバイスをコミュニケーションクラスに準拠した機器に見せかけることにより、USBホストのOSに予め用意された標準クラスのポートドライバを使用することは、周知技術であるし(例えば、当審が平成28年12月20日付けで通知した拒絶理由の引用文献2(特に、編集部による要約部分(p64第5-8行)及び「●USB仮想シリアル・ポートの仕組み」の欄(左欄下から3行目?右欄第10行)参照)又は同拒絶理由の引用文献3(特に、「ネットワークにおけるUSB機器の利用」の欄(p64)及び「USB接続のPDA」の欄(p65)参照。また、p67の左欄第1行-第6行及び※印の解説欄には、Linuxザウルス側のDHCPサーバにより、IPアドレスを割り当てることも記載されている。)参照)、
「無線端末」をUSBデバイスとしてUSBホストに接続し、USBコミュニケーションデバイスクラス(CDC)に対応したドライバを使用することも周知(例えば、当審が平成28年12月20日付けで通知した拒絶理由の上記引用文献3又は同拒絶理由の引用文献4(特に、段落17、段落20、段落34、図4B参照)。)であるから、「無線端末」が、コミュニケーションクラスに準拠した機器であることを示す「ディスクリプタ」を通知し、「ホストデバイス」のOSに予め用意された「ポートドライバ」を使用することも、当業者が容易になし得ることである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、また、他の理由について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-17 
結審通知日 2017-04-18 
審決日 2017-05-08 
出願番号 特願2013-556955(P2013-556955)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠山 敬彦  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 山本 章裕
北岡 浩
発明の名称 無線端末及びホストデバイスのための通信方法、無線端末、及びホストデバイス  
代理人 木内 敬二  
代理人 佐伯 義文  

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