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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1332833
審判番号 不服2016-19166  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-21 
確定日 2017-10-17 
事件の表示 特願2015- 43141「半導体装置の作製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月 6日出願公開、特開2015-144300、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2003年(平成15年)12月19日(国内優先権主張 2003年(平成15年)1月8日)を国際出願日とする特願2004-539104号の一部を、平成22年12月16日に新たな出願としたものである特願2010-280794号の一部を、平成25年7月31日に新たな出願としたものである特願2013-159341号の一部を、平成27年3月5に新たな出願としたものであって、同年3月6日付で審査請求がなされ、平成28年1月26日付で拒絶理由通知が通知され、同年3月10日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、同年9月15日付で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされたものである。
これに対して、平成28年12月21日付けで審判請求がなされ、当審において平成29年6月19日付で拒絶理由が通知され、同年8月7日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願に記載された発明は、平成29年8月7日付の手続補正書(以下、「本手続補正書」という。)により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、請求項1および2に係る発明を、それぞれ「本願発明1」および「本願発明2」という。)。
「【請求項1】
第1の基板上にタングステンを含む金属膜を形成し、
前記金属膜上に絶縁膜を形成することで前記金属膜と前記絶縁膜との間にタングステンを含む金属酸化膜を形成し、
前記絶縁膜上に結晶領域を有する第1の半導体素子と、非晶質領域を有する第2の半導体素子とを形成し、
剥離しようとする領域の周縁に沿って前記金属膜に部分的にレーザー光を照射した後、物理的手段を用いることにより、前記金属酸化膜中、前記金属酸化膜と前記絶縁膜との界面、又は前記金属酸化膜と前記金属膜との界面で剥離して、前記第1の基板を除去し、
前記絶縁膜、前記第1の半導体素子、及び前記第2の半導体素子を含む被剥離層に、第2の基板を接着することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
第1の基板上にタングステンを含む金属膜を形成し、
前記金属膜上に絶縁膜を形成することで前記金属膜と前記絶縁膜との間にタングステンを含む金属酸化膜を形成し、
前記絶縁膜上に結晶領域を有する第1の半導体素子と、非晶質領域を有する第2の半導体素子とを形成し、
剥離しようとする領域の周縁に沿って前記金属膜に部分的にレーザー光を照射した後、物理的手段を用いることにより、前記金属酸化膜中、前記金属酸化膜と前記絶縁膜との界面、又は前記金属酸化膜と前記金属膜との界面で剥離して、前記第1の基板を除去し、
前記絶縁膜、前記第1の半導体素子、及び前記第2の半導体素子を含む被剥離層に、第2の基板を接着し、
前記第1の半導体素子と電気的に接続された第1の配線、及び前記第2の半導体素子と電気的に接続された第2の配線を露出させることを特徴とする半導体装置の作製方法。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
「この出願については、平成28年 1月26日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書並びに手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

●理由1(特許法第29条第2項)について

・請求項 1-2
・引用文献等 1-2
出願人は、平成28年3月10日付けの意見書において
「2-4 [理由1]特許法第29条第2項について
・・・引用文献1には、段落[0099]乃至[0100]、段落[0122]乃至[0137]に、第1分離層120の全領域に対しレーザー光を照射することにより、第1分離層120を構成する物質の原子間または分子間の結合力を消失または減少させ、層内剥離および/または界面剥離を生じさせることの記載があります。すなわち、引用文献1には、第1分離層120の全領域に対しレーザー光を照射することが、層内剥離および/または界面剥離を行うための必要なステップとして記載されています。したがって、引用発明1において、第1分離層120の全領域に対しレーザー光を照射するステップを経ずに、層内剥離および/または界面剥離を行うことはあり得ません。
また、引用文献2には、段落[0017]乃至[0018]に、単結晶シリコンからなる基体を陽極化成することにより多孔質シリコンからなる分離層を形成し、分離層上に単結晶シリコンからなる素子形成層を形成し、分離層の機械的な破断を行うことが記載されています。また、段落[0027]に、後の工程で多孔質Si層2の引っ張りによる破断をより容易に行うことができるようにするため、多孔質Si層2のエッジ部の側壁にあらかじめレーザービームの照射などによって傷13を付けておくことが記載されています。
しかしながら、引用文献2には、分離層として多孔質シリコンからなる分離層を用いることが必須として記載されており、それ以外の分離層を用いることの記載はありません。
したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1乃至2に記載された発明から当業者が容易に想到できたものではありません。・・・」
旨主張している。
出願人の上記主張について検討するに、出願人も上記において述べているように、引用文献1には段落[0099]乃至[0100]、段落[0122]乃至[0137]に、第1分離層120の全領域に対しレーザー光を照射することにより、第1分離層120を構成する物質の原子間または分子間の結合力を消失または減少させ、層内剥離および/または界面剥離を生じさせると記載されている。
してみるに、引用文献1には、レーザー光によって結合力を減少させる発明が記載されており、また、結合力を減少した後に物理的な作用等で剥離をなさねばならないことは明らかであるものと認められる。
また、剥離のきっかけとなる部分的なレーザによる破断及び、それに続く機械的な破断は、引用文献2に記載されており、剥離を予定している部分の結合力の程度によって、全体の結合力を弱めるか、引用文献2に記載されたような剥離手段を用いるかは、当業者が適宜選択しうるところと認められるので、出願人の上記主張を採用することは出来ない。
よって、本願出願については、平成28年 1月26日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものとする。
また、請求項2に係る発明である、半導体層に形成された素子への配線を露出させる工程を設けることは、素子への接続を考慮すれば当然行うものと認められる。

<引用文献等一覧>
1.特開平11-026733号公報
2.特開平08-213645号公報」
2 原査定の拒絶理由通知の概要
平成28年1月26日付拒絶理由通知書の概要は、次のとおりである。
「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1について

・請求項 1、2
・引用文献等 1-2
・備考
引用文献1の[0107]には「金属としては、例えば、Al,Li,Ti,Mn,In,Sn,Y,La,Ce,Nd,Pr,Gd,Smまたはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金が」例示されており、タングステンに限定する格別な効果は認められず、等価な材料の置き換えに過ぎない。
また引用文献1の段落[0127]には、照射する光としてレーザ光が例示されている。
してみるに、本願発明と引用文献1に記載された発明を比較すると、引用文献1は、金属膜を形成した領域の一部にレーザー光を照射した後、物理的手段を用いることにより剥離するものではない点で相違する。
前記相違点について検討するに、引用文献2の段落[0027]-[0028]にはエッジの側壁に傷13をレーザーによって付け、外力によって分離させる技術的手段が記載されており、当該技術的手段を引用文献1の剥離のための手段として用いることに困難性があるものとは認められないので、本願発明は前記引用例より当業者が容易に想到し得るものである。

また、請求項2に係る発明に関して、半導体層に形成された素子への配線を露出させる工程を設けることは、接続を考慮すれば当然行うものと認められる。

拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。


<引用文献等一覧>
1.特開平11-026733号公報
2.特開平08-213645号公報」

第4 原査定の理由(特許法第29条第2項)について
1 引用文献について
(1)引用例1について
ア 引用例1の記載
原査定の理由に引用された、特開平11-26733号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。)
(ア)「【0090】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0091】(第1の実施の形態)図1?図9は本発明の第1の実施の形態(薄膜デバイスの転写方法)を説明するための図である。
【0092】[工程1]図1に示すように、基板100上に第1分離層(光吸収層)120を形成する。
・・・ 中 略 ・・・
【0099】2 第1分離層120の説明
第1分離層120は、照射される光を吸収し、その層内および/または界面において剥離(以下、「層内剥離」、「界面剥離」と言う)を生じるような性質を有するものであり、好ましくは、光の照射により、第1分離層120を構成する物質の原子間または分子間の結合力が消失または減少すること、すなわち、アブレーションが生じて層内剥離および/または界面剥離に至るものがよい。
・・・ 中 略 ・・・
【0107】F.金属
金属としては、例えば、Al,Li,Ti,Mn,In,Sn,Y,La,Ce,Nd,Pr,Gd,Smまたはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金が挙げられる。
・・・ 中 略 ・・・
【0112】[工程2]次に、図2に示すように、第1分離層120上に、被転写層(薄膜デバイス層)140を形成する。
【0113】この薄膜デバイス層140のK部分(図2において1点線鎖線で囲んで示される部分)の拡大断面図を、図2の右側に示す。図示されるように、薄膜デバイス層140は、例えば、SiO_(2)膜(中間層)142上に形成されたTFT(薄膜トランジスタ)を含んで構成され、このTFTは、ポリシリコン層にn型不純物を導入して形成されたソース,ドレイン層146と、チャネル層144と、ゲート絶縁膜148と、ゲート電極150と、層間絶縁膜154と、例えばアルミニュウムからなる電極152とを具備する。
【0114】本実施の形態では、第1分離層120に接して設けられる中間層としてSiO_(2)膜を使用しているが、Si_(3)N_(4)などのその他の絶縁膜を使用することもできる。SiO_(2)膜(中間層)の厚みは、その形成目的や発揮し得る機能の程度に応じて適宜決定されるが、通常は、10nm?5μm程度であるのが好ましく、40nm?1μm程度であるのがより好ましい。中間層は、種々の目的で形成され、例えば、被転写層140を物理的または化学的に保護する保護層,絶縁層,導電層,レーザー光の遮光層,マイグレーション防止用のバリア層,反射層としての機能の内の少なくとも1つを発揮するものが挙げられる。
【0115】なお、場合によっては、SiO_(2)膜等の中間層を形成せず、第1分離層120上に直接被転写層(薄膜デバイス層)140を形成してもよい。
【0116】被転写層140(薄膜デバイス層)は、図2の右側に示されるようなTFT等の薄膜デバイスを含む層である。
【0117】薄膜デバイスとしては、TFTの他に、例えば、薄膜ダイオードや、シリコンのPIN接合からなる光電変換素子(光センサ、太陽電池)やシリコン抵抗素子、その他の薄膜半導体デバイス、電極(例:ITO、メサ膜のような透明電極)、スイッチング素子、メモリー、圧電素子等のアクチュエータ、マイクロミラー(ピエゾ薄膜セラミックス)、磁気記録薄膜ヘッド、コイル、インダクター、薄膜高透磁材料およびそれらを組み合わせたマイクロ磁気デバイス、フィルター、反射膜、ダイクロイックミラー等がある。上記の例示に限らず、本発明の趣旨に反しない種々の薄膜デバイスに適用できる。
・・・ 中 略 ・・・
【0122】[工程5]次に、図4に示すように、基板100の裏面側から光を照射する。
【0123】この光は、基板100を透過した後に第1分離層120に照射される。これにより、第1分離層120に層内剥離および/または界面剥離が生じ、結合力が減少または消滅する。
【0124】第1分離層120の層内剥離および/または界面剥離が生じる原理は、第1分離層120の構成材料にアブレーションが生じること、また、第1分離層120に含まれているガスの放出、さらには照射直後に生じる溶融、蒸散等の相変化によるものであることが推定される。
【0125】ここで、アブレーションとは、照射光を吸収した固定材料(第1分離層120の構成材料)が光化学的または熱的に励起され、その表面や内部の原子または分子の結合が切断されて放出することをいい、主に、第1分離層120の構成材料の全部または一部が溶融、蒸散(気化)等の相変化を生じる現象として現れる。また、前記相変化によって微小な発砲状態となり、結合力が低下することもある。
【0126】第1分離層120が層内剥離を生じるか、界面剥離を生じるか、またはその両方であるかは、第1分離層120の組成や、その他種々の要因に左右され、その要因の1つとして、照射される光の種類、波長、強度、到達深さ等の条件が挙げられる。
【0127】照射する光としては、第1分離層120に層内剥離および/または界面剥離を起こさせるものであればいかなるものでもよく、例えば、X線、紫外線、可視光、赤外線(熱線)、レーザ光、ミリ波、マイクロ波、電子線、放射線(α線、β線、γ線)等が挙げられる。そのなかでも、第1分離層120の剥離(アブレーション)を生じさせ易いという点で、レーザ光が好ましい。
【0128】このレーザ光を発生させるレーザ装置としては、各種気体レーザ、固体レーザ(半導体レーザ)等が挙げられるが、エキシマレーザ、Nd-YAGレーザ、Arレーザ、CO_(2)レーザ、COレーザ、He-Neレーザ等が好適に用いられ、その中でもエキシマレーザが特に好ましい。
【0129】エキシマレーザは、短波長域で高エネルギーを出力するため、極めて短時間で第1分離層2にアブレーションを生じさせることができ、よって隣接する転写体180や基板100等に温度上昇をほとんど生じさせることなく、すなわち劣化、損傷を生じさせることなく、第1分離層120を剥離することができる。
【0130】また、第1分離層120にアブレーションを生じさせるに際して、光の波長依存性がある場合、照射されるレーザ光の波長は、100nm?350nm程度であるのが好ましい。
【0131】図10に、基板100の、光の波長に対する透過率の一例を示す。図示されるように、300nmの波長に対して透過率が急峻に増大する特性をもつ。このような場合には、300nm以上の波長の光(例えば、波長308nmのXe-Clエキシマレーザー光)を照射する。
【0132】また、第1分離層120に、例えばガス放出、気化、昇華等の相変化を起こさせて分離特性を与える場合、照射されるレーザ光の波長は、350から1200nm程度であるのが好ましい。
【0133】また、照射されるレーザ光のエネルギー密度、特に、エキシマレーザの場合のエネルギー密度は、10?5000mJ/cm^(2)程度とするのが好ましく、100?500mJ/cm^(2)程度とするのがより好ましい。また、照射時間は、1?1000nsec程度とするのが好ましく、10?100nsec程度とするのがより好ましい。エネルギー密度が低いかまたは照射時間が短いと、十分なアブレーション等が生じず、また、エネルギー密度が高いかまたは照射時間が長いと、第1分離層120を透過した照射光により被転写層140に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0134】なお、第1分離層120を透過した照射光が被転写層140にまで達して悪影響を及ぼす場合の対策としては、例えば、第1分離層(レーザー吸収層)120上にタンタル(Ta)等の金属膜を形成する方法がある。これにより、第1分離層120を透過したレーザー光は、金属膜124の界面で完全に反射され、それよりの上の薄膜デバイスに悪影響を与えない。あるいは、第1分離層120上にシリコン系介在層例えばSiO_(2)を介して、シリコン系レーザー吸収層であるアモルファスシリコン層を形成することもできる。こうすると、第1分離層120を透過した光は、その上のアモルファスシリコン層にて吸収される。ただしその透過光は、上層のアモルファスシリコン層にて再度アブレーションを生ずるほどの光エネルギーがない。また、金属とは異なり、アモルファスシリコン層上に薄膜デバイス層を形成できるので、既に確立された薄膜形成技術により品質の優れた薄膜デバイス層を形成できる。
【0135】レーザ光に代表される照射光は、その強度が均一となるように照射されるのが好ましい。照射光の照射方向は、第1分離層120に対し垂直な方向に限らず、第1分離層120に対し所定角度傾斜した方向であってもよい。
【0136】また、第1分離層120の面積が照射光の1回の照射面積より大きい場合には、第1分離層120の全領域に対し、複数回に分けて照射光を照射することもできる。また、同一箇所に2回以上照射してもよい。また、異なる種類、異なる波長(波長域)の照射光(レーザ光)を同一領域または異なる領域に2回以上照射してもよい。
【0137】次に、図5に示すように、基板100に力を加えて、この基板100を第1分離層120から離脱させる。図5では図示されないが、この離脱後、基板100上に第1分離層120が付着することもある。
【0138】[工程6]次に、図6に示すように、残存している第1分離層120を、例えば洗浄、エッチング、アッシング、研磨等の方法またはこれらを組み合わせた方法により除去する。これにより、被転写層(薄膜デバイス層)140が、一次転写体180に転写されたことになる。
【0139】なお、離脱した基板100にも第1分離層120の一部が付着している場合には同様に除去する。なお、基板100が石英ガラスのような高価な材料、希少な材料で構成されている場合等には、基板100は、好ましくは再利用(リサイクル)に供される。すなわち、再利用したい基板100に対し、本発明を適用することができ、有用性が高い。
【0140】[工程7]次に、図7に示すように、薄膜デバイス層140の下面(露出面)に、接着層190を介して、二次転写層200を接着する。
・・・ 中 略 ・・・
【0154】[工程8]次に、図8に示すように、第2分離層である熱溶融性接着層160を加熱し、熱溶融させる。この結果、熱溶融性接着層160の接着力が弱まるため、一次転写体180を、薄膜デバイス層140により離脱させることができる。なお、一次転写体180に付着した熱溶融性接着剤を除去することで、この一次転写体180を繰り返し再利用することができる。
【0155】[工程9]最後に、薄膜デバイス層140の表面に付着した熱溶融性接着層160を除去することで、図9に示すように、二次転写体200に転写された薄膜デバイス層140を得ることができる。ここで、この二次転写体200に対する薄膜デバイス層140の積層関係は、図2に示すように当初の基板100に対する薄膜デバイス層140の積層関係と同じとなる。
【0156】以上のような各工程を経て、被転写層(薄膜デバイス層)140の二次転写体200への転写が完了する。その後、被転写層(薄膜デバイス層)140に隣接するSiO_(2)膜の除去や、被転写層140上への配線等の導電層や所望の保護膜の形成等を行うこともできる。
【0157】本発明では、被剥離物である被転写層(薄膜デバイス層)140自体を直接に剥離するのではなく、第1分離層120及び第2分離層160において分離して二次転写体200に転写するため、被分離物(被転写層140)の特性、条件等にかかわらず、容易かつ確実に、しかも均一に転写することができ、分離操作に伴う被分離物(被転写層140)へのダメージもなく、被転写層140の高い信頼性を維持することができる。」
イ 引用例1発明について
上記アの記載から、引用例1には、実質的に次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「基板100上に、金属(Al,Li,Ti,Mn,In,Sn,Y,La,Ce,Nd,Pr,Gd,Sm)からなる第1分離層(光吸収層)120を形成し、
第1分離層120上に、絶縁膜上に形成された、ポリシリコン層にn型不純物を導入して形成されたソース,ドレイン層146と、チャネル層144と、ゲート絶縁膜148と、ゲート電極150と、層間絶縁膜154と、例えばアルミニュウムからなる電極152とを具備するTFTを含んで構成された、被転写層(薄膜デバイス層)140を形成し、
基板100の裏面側から、強度が均一となるようにレーザ光を照射し、
基板100に力を加えて、この基板100を第1分離層120から離脱し、
被転写層(薄膜デバイス層)140の下面(露出面)に、二次転写層200を接着し、
被転写層(薄膜デバイス層)140上への配線等の導電層や所望の保護膜の形成等を行う、
薄膜デバイスの転写方法。」
(2)引用例2について
ア 引用例2の記載
原査定の理由に引用された、特開平8-213645号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0021】
【実施例】以下、この発明の実施例について図面を参照しながら説明する。なお、実施例の全図において、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0022】図1?図10はこの発明の第1実施例による薄膜太陽電池の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0023】この第1実施例による薄膜太陽電池の製造方法においては、まず、図1に示すように、単結晶Si基板1を陽極化成(陽極酸化)することにより多孔質Si層2を形成する。この陽極化成法による多孔質Si層2の形成方法はよく知られており(例えば、応用物理第57巻、第11号、第1710頁(1988))、例えば、電流密度を30mAとし、陽極化成溶液としてHF:H_(2) O:C_(2 )H_(5) OH=1:1:1を用いた場合、得られる多孔質Si層2の厚さは5?50μm、多孔度(porosity)は10?50%である。この多孔質Si層2の厚さは、単結晶Si基板1を繰り返し使用する観点からは、この単結晶Si基板1の厚さの減少を少なくし、使用可能回数を多くするために、可能な限り薄くすることが望ましく、好適には5?15μm、例えば約10μmに選ばれる。また、単結晶Si基板1は、陽極化成によりその上に多孔質Si層2を形成する観点からはp型であることが望ましいが、n型であっても、条件設定によっては多孔質Si層2を形成することが可能である。
【0024】次に、図2に示すように、多孔質Si層2上に例えばCVD法により例えば700?1100℃の温度でp^(+ )型Si層3、p型Si層4およびn^(+ )型Si層5を順次エピタキシャル成長させた後、n^(+ )型Si層5上に例えばCVD法により例えば単層のSiO_(2 )膜やSiN膜あるいはそれらの積層膜からなる保護膜6を形成する。ここで、p^(+) 型Si層3、p型Si層4およびn^(+) 型Si層5は太陽電池層を構成し、それらの合計の厚さは典型的には1?50μm、例えば5μmである。また、この場合、太陽電池層を構成するこれらのp^(+) 型Si層3、p型Si層4およびn^(+) 型Si層5の結晶性を良好にするため、それらのエピタキシャル成長前に、多孔質Si層2を例えば400?600℃の温度で短時間酸化することによりその内部の孔の内壁に薄い酸化膜を形成してその強度を高めるとともに、例えば真空中において例えば950?1000℃の温度でH_(2) アニールすることにより多孔質Si層2の表面の孔を極力埋めておき、エピタキシャル成長が良好に行われるようにするのが好ましい。このようにすることにより、単結晶のp^(+ )型Si層3、p型Si層4およびn^(+) 型Si層5を得ることができる(例えば、日経マイクロデバイス、1994年7月号、第76頁)。
【0025】次に、図3に示すように、上述のように多孔質Si層2、p^(+ )型Si層3、p型Si層4、n^(+) 型Si層5および保護膜6が形成された単結晶Si基板1の全体を熱酸化することにより、その表面全体に例えば膜厚が50?500nmのSiO_(2) 膜からなる酸化膜7を形成する。この熱酸化時には、多孔質Si層2の酸化速度が単結晶Si基板1の酸化速度よりも速く、また、多孔質Si層2の体積が膨張するため、エッジ部における多孔質Si層2とp^(+) 型Si層3との界面に酸化膜7がバーズビーク状に形成され、エッジ部におけるp^(+) 型Si層3、p型Si層4、n^(+) 型Si層5および保護膜6の全体が持ち上がった構造となる。
【0026】次に、酸化膜7をエッチング除去する。これによって、図4に示すように、エッジ部における多孔質Si層2とp^(+) 型Si層3との間に楔状の間隙8が形成される。この楔状の間隙8は、後の工程で多孔質Si層2の引っ張りによる破断を容易に行うことができるようにするためのものである。
【0027】次に、図5に示すように、単結晶Si基板1の裏面を接着剤9により治具10に接着するとともに、保護膜6の表面に接着剤11によりもう一つの治具12を接着する。これらの治具10、12は、後の工程で行われる引っ張りに耐えられるだけの十分な強度を有するものが用いられ、例えば金属や石英などからなるものが用いられる。また、接着剤9、11は、後の工程で行われる引っ張りに耐えられるだけの十分な接着強度を有するものが用いられ、例えば瞬間接着剤などが用いられる。さらに、この場合、後の工程で多孔質Si層2の引っ張りによる破断をより容易に行うことができるようにするため、多孔質Si層2のエッジ部の側壁にあらかじめ傷13を付けておく。この傷13は、機械的な方法で付けることができるほか、レーザービームの照射などによって付けることもできる。
【0028】次に、図5に示すように、治具10、12に十分に大きな外力Pを加えて引っ張る。このとき、この外力Pは、単結晶Si基板1の中心から多孔質Si層2の傷13が付いているエッジ部側にずれた位置に加え、多孔質Si層2のエッジ部に応力集中が起きるようにする。この結果、多孔質Si層2はそれ自身機械的強度が低いことに加えて、多孔質Si層2のエッジ部の側壁にあらかじめ傷13が付いていることやエッジ部における多孔質Si層2とp^(+ )型Si層3との間に楔状の間隙8が形成されていることによりこれらの場所で応力集中が極めて顕著に起き、図6に示すように、多孔質Si層2の内部や多孔質Si層2とp^(+) 型Si層3との界面で破断が起きる。これによって、単結晶Si基板1と、p^(+ )型Si層3、p型Si層4、n^(+) 型Si層5および保護膜6とが互いに分離される。」
イ 引用例2発明について
上記アの記載から、引用例2には、実質的に次の発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「薄膜太陽電池の製造方法において、
結晶Si基板1を陽極化成(陽極酸化)することにより多孔質Si層2を形成し、
多孔質Si層2上に太陽電池層を構成し、
太陽電池層上に保護膜6を形成し、
結晶Si基板1の裏面に治具10を接着するとともに、保護膜6の表面にもう一つの治具12を接着し、
多孔質Si層2のエッジ部の側壁にレーザービームの照射などによって傷13を付け、
治具10、12に十分に大きな外力Pを加えて引っ張り、多孔質Si層2の内部や多孔質Si層2と太陽電池層との界面で破断させること。」
2 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用例1発明とを対比すると次のことがいえる。
(ア)引用例1発明の「基板100」,「絶縁膜上に形成された、ポリシリコン層にn型不純物を導入して形成されたソース,ドレイン層146と、チャネル層144と、ゲート絶縁膜148と、ゲート電極150と、層間絶縁膜154と、例えばアルミニュウムからなる電極152とを具備するTFT」,「二次転写層200」および「薄膜デバイスの転写方法」は、それぞれ、本願発明1の「第1の基板」,「前記絶縁膜上に結晶領域を有する第1の半導体素子」,「第2の基板」および「半導体装置の作製方法」に相当する。
(イ)引用例1発明の「基板100上に、金属(Al,Li,Ti,Mn,In,Sn,Y,La,Ce,Nd,Pr,Gd,Sm)からなる第1分離層(光吸収層)120を形成」することと、本願発明1の「第1の基板上にタングステンを含む金属膜を形成」することは、「第1の基板上に」「金属膜を形成」する点で共通する。
(ウ)引用例1発明は、「第1分離層120上に、絶縁膜上に形成された、ポリシリコン層にn型不純物を導入して形成されたソース,ドレイン層146と、チャネル層144と、ゲート絶縁膜148と、ゲート電極150と、層間絶縁膜154と、例えばアルミニュウムからなる電極152とを具備するTFTを含んで構成された、被転写層(薄膜デバイス層)140を形成し」ているから、引用例1発明は、「第1分離層120」上に「絶縁膜」が形成されていると言える。そうすると、引用例1発明も、本願発明1の「前記金属膜上に絶縁膜を形成すること」を行っていると認められる。
(エ)引用例1発明の「基板100の裏面側から、強度が均一となるようにレーザ光を照射し、基板100に力を加えて、この基板100を第1分離層120から離脱」することと、本願発明1の「剥離しようとする領域の周縁に沿って前記金属膜に部分的にレーザー光を照射した後、物理的手段を用いることにより、前記金属酸化膜中、前記金属酸化膜と前記絶縁膜との界面、又は前記金属酸化膜と前記金属膜との界面で剥離して、前記第1の基板を除去」することは、「剥離しようとする領域の」「前記金属膜に」「レーザー光を照射した後、物理的手段を用いることにより、」「前記第1の基板を除去」する点で共通する。
(オ)引用例1発明の「薄膜デバイス層140の下面(露出面)に、二次転写層200を接着」することと、本願発明1の「前記絶縁膜、前記第1の半導体素子、及び前記第2の半導体素子を含む被剥離層に、第2の基板を接着する」ことは、「前記絶縁膜、前記第1の半導体素子」「を含む被剥離層に、第2の基板を接着する」点で共通する。
(ウ)そうすると、本願発明1と引用例1発明は、以下の点で一致し、また、相違する。
[一致点]
「第1の基板上に金属膜を形成し、
前記金属膜上に絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上に結晶領域を有する第1の半導体素子を形成し、
剥離しようとする領域の前記金属膜にレーザー光を照射した後、物理的手段を用いることにより、前記第1の基板を除去し、
前記絶縁膜、前記第1の半導体素子を含む被剥離層に、第2の基板を接着することを特徴とする半導体装置の作製方法。」
[相違点1]
本願発明1は「金属膜」に「タングステンを含」んでいるのに対して、引用例1発明はそうでない点。
[相違点2]
本願発明1は「前記金属膜上に絶縁膜を形成することで前記金属膜と前記絶縁膜との間にタングステンを含む金属酸化膜を形成し」、「前記金属酸化膜中、前記金属酸化膜と前記絶縁膜との界面、又は前記金属酸化膜と前記金属膜との界面で剥離して」いるのに対して、引用例1発明はそのようになっていない点。
[相違点3]
本願発明1は「前記絶縁膜上に」「非晶質領域を有する第2の半導体素子とを形成し」、「前記第2の半導体素子を含む被剥離層」に「第2の基板」を接着しているのに対して、引用例1発明はそうでない点。
[相違点4]
本願発明1は「剥離しようとする領域の周縁に沿って前記金属膜に部分的にレーザー光を照射し」ているのに対して、引用例1発明はそうでない点。
イ 本願発明1についての当審の判断
[相違点2]について検討する。
引用例1発明は、「基板100に力を加えて、この基板100を第1分離層120から離脱し」ており、該「離脱」によって、「基板100」(本願発明1の「第1の基板」に相当する。)と「第1分離層120」(本願発明1の「金属膜」に相当する。)が離脱するから、本願発明1の「前記金属酸化膜中、前記金属酸化膜と前記絶縁膜との界面、又は前記金属酸化膜と前記金属膜との界面で剥離」することとは、異なる部分で剥離を行っていると認められる。また、このため引用例1発明において「前記金属酸化膜中、前記金属酸化膜と前記絶縁膜との界面、又は前記金属酸化膜と前記金属膜との界面で剥離」することを採用することが容易であるとは認められない。
さらに、引用例2には、[相違点2]に係る、「前記金属膜上に絶縁膜を形成することで前記金属膜と前記絶縁膜との間にタングステンを含む金属酸化膜を形成し」、「前記金属酸化膜中、前記金属酸化膜と前記絶縁膜との界面、又は前記金属酸化膜と前記金属膜との界面で剥離」することは記載されていないから、引用例2の記載事項から、引用例1発明において、[相違点2]に係る構成を採用することが容易であるとも言えない。
そして、本願発明1は、[相違点2]に係る構成を採用することで、「本発明により作製した半導体装置は、プラスチック基板上に形成されているため、従来のものと比べて軽量で薄型化が可能である。」(本願明細書【0037】)という格別の効果を有するものである。
そうすると、[相違点2]に係る構成は、引用例1ないし2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
したがって、本願発明1は、引用例1ないし2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本願発明2について
ア 対比
本願発明2と引用例1発明とを対比すると次のことがいえる。
(ア)引用例1発明の「基板100」,「絶縁膜上に形成された、ポリシリコン層にn型不純物を導入して形成されたソース,ドレイン層146と、チャネル層144と、ゲート絶縁膜148と、ゲート電極150と、層間絶縁膜154と、例えばアルミニュウムからなる電極152とを具備するTFT」,「二次転写層200」および「薄膜デバイスの転写方法」は、それぞれ、本願発明2の「第1の基板」,「前記絶縁膜上に結晶領域を有する第1の半導体素子」,「第2の基板」および「半導体装置の作製方法」に相当する。
(イ)引用例1発明の「基板100上に、金属(Al,Li,Ti,Mn,In,Sn,Y,La,Ce,Nd,Pr,Gd,Sm)からなる第1分離層(光吸収層)120を形成」することと、本願発明2の「第1の基板上にタングステンを含む金属膜を形成」することは、「第1の基板上に」「金属膜を形成」する点で共通する。
(ウ)引用例1発明は、「第1分離層120上に、絶縁膜上に形成された、ポリシリコン層にn型不純物を導入して形成されたソース,ドレイン層146と、チャネル層144と、ゲート絶縁膜148と、ゲート電極150と、層間絶縁膜154と、例えばアルミニュウムからなる電極152とを具備するTFTを含んで構成された、被転写層(薄膜デバイス層)140を形成し」ているから、引用例1発明は、「第1分離層120」上に「絶縁膜」が形成されていると言える。そうすると、引用例1発明も、本願発明2の「前記金属膜上に絶縁膜を形成すること」を行っていると認められる。
(エ)引用例1発明の「基板100の裏面側から、強度が均一となるようにレーザ光を照射し、基板100に力を加えて、この基板100を第1分離層120から離脱」することと、本願発明2の「剥離しようとする領域の周縁に沿って前記金属膜に部分的にレーザー光を照射した後、物理的手段を用いることにより、前記金属酸化膜中、前記金属酸化膜と前記絶縁膜との界面、又は前記金属酸化膜と前記金属膜との界面で剥離して、前記第1の基板を除去」することは、「剥離しようとする領域の」「前記金属膜に」「レーザー光を照射した後、物理的手段を用いることにより、」「前記第1の基板を除去」する点で共通する。
(オ)引用例1発明の「薄膜デバイス層140の下面(露出面)に、二次転写層200を接着」することと、本願発明2の「前記絶縁膜、前記第1の半導体素子、及び前記第2の半導体素子を含む被剥離層に、第2の基板を接着する」ことは、「前記絶縁膜、前記第1の半導体素子」「を含む被剥離層に、第2の基板を接着する」点で共通する。
(ウ)引用例1発明の「薄膜デバイス層140上への配線等の導電層や所望の保護膜の形成等を行う」ことは、本願発明2の「前記第1の半導体素子と電気的に接続された第1の配線、及び前記第2の半導体素子と電気的に接続された第2の配線を露出させること」に相当する。
(エ)そうすると、本願発明2と引用例1発明は、以下の点で一致し、また、相違する。
[一致点]
「第1の基板上に金属膜を形成し、
前記金属膜上に絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上に結晶領域を有する第1の半導体素子を形成し、
剥離しようとする領域の前記金属膜にレーザー光を照射した後、物理的手段を用いることにより、前記第1の基板を除去し、
前記絶縁膜、前記第1の半導体素子を含む被剥離層に、第2の基板を接着し、
前記第1の半導体素子と電気的に接続された第1の配線を露出させることを特徴とする半導体装置の作製方法。」
[相違点5]
本願発明2は「金属膜」に「タングステンを含」んでいるのに対して、引用例1発明はそうでない点。
[相違点6]
本願発明2は「前記金属膜上に絶縁膜を形成することで前記金属膜と前記絶縁膜との間にタングステンを含む金属酸化膜を形成し」、「前記金属酸化膜中、前記金属酸化膜と前記絶縁膜との界面、又は前記金属酸化膜と前記金属膜との界面で剥離して」いるのに対して、引用例1発明はそのようになっていない点。
[相違点7]
本願発明2は「前記絶縁膜上に」「非晶質領域を有する第2の半導体素子とを形成し」、「前記第2の半導体素子を含む被剥離層」に「第2の基板」を接着し、また、「前記第2の半導体素子と電気的に接続された第2の配線を露出させ」ているのに対して、引用例1発明はそうでない点。
[相違点8]
本願発明2は「剥離しようとする領域の周縁に沿って前記金属膜に部分的にレーザー光を照射し」ているのに対して、引用例1発明はそうでない点。
イ 本願発明2についての当審の判断
上記「(1)イ」で検討したように、[相違点6](上記「(1)イ」における[相違点2]に対応する。)に係る構成は、引用例1ないし2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
したがって、本願発明2は、引用例1ないし2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 原査定についての判断
本手続補正書の補正により、本願発明1および2は、「前記金属膜上に絶縁膜を形成することで前記金属膜と前記絶縁膜との間にタングステンを含む金属酸化膜を形成し」、「前記金属酸化膜中、前記金属酸化膜と前記絶縁膜との界面、又は前記金属酸化膜と前記金属膜との界面で剥離」するという技術的事項を有するものとなった。
当該、「前記金属膜上に絶縁膜を形成することで前記金属膜と前記絶縁膜との間にタングステンを含む金属酸化膜を形成し」、「前記金属酸化膜中、前記金属酸化膜と前記絶縁膜との界面、又は前記金属酸化膜と前記金属膜との界面で剥離」することは、前記「第4 2(1)イ」で検討したとおり、原査定における引用例1および2には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1および2は、当業者であっても、原査定における引用文献1および2に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審の拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
平成29年6月19日付で当審より通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。
「A.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

B.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



請求人は平成28年3月10日付の手続補正書により、請求項1および2を
「【請求項1】
第1の基板上にタングステンを含む金属膜を形成し、
前記金属膜上に絶縁膜を形成することで前記金属膜と前記絶縁膜との間にタングステンを含む金属酸化膜を形成し、
前記絶縁膜上に結晶領域を有する第1の半導体素子と、非晶質領域を有する第2の半導体素子とを形成し、
前記金属膜を形成した領域の一部のみにレーザー光を照射した後、物理的手段を用いることにより、前記金属酸化膜中、前記金属酸化膜と前記絶縁膜との界面、又は前記金属酸化膜と前記金属膜との界面で剥離して、前記第1の基板を除去し、
前記絶縁膜、前記第1の半導体素子、及び前記第2の半導体素子を含む被剥離層に、第2の基板を接着することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
第1の基板上にタングステンを含む金属膜を形成し、
前記金属膜上に絶縁膜を形成することで前記金属膜と前記絶縁膜との間にタングステンを含む金属酸化膜を形成し、
前記絶縁膜上に結晶領域を有する第1の半導体素子と、非晶質領域を有する第2の半導体素子とを形成し、
前記金属膜を形成した領域の一部のみにレーザー光を照射した後、物理的手段を用いることにより、前記金属酸化膜中、前記金属酸化膜と前記絶縁膜との界面、又は前記金属酸化膜と前記金属膜との界面で剥離して、前記第1の基板を除去し、
前記絶縁膜、前記第1の半導体素子、及び前記第2の半導体素子を含む被剥離層に、第2の基板を接着し、
前記第1の半導体素子と電気的に接続された第1の配線、及び前記第2の半導体素子と電気的に接続された第2の配線を露出させることを特徴とする半導体装置の作製方法。」
としたが、上記請求項1および2に記載された「前記金属膜を形成した領域の一部のみにレーザー光を照射した後」とは、「金属膜」を形成した領域のどの部分にレーザー光を照射したのかわからない。
したがって、請求項1および2に記載された発明は明確であるとは言えない。(理由B)
また、発明の詳細な説明には、「金属膜を形成した領域の一部のみにレーザー光を照射した」に対応する記載は無いことから、特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとは言えない。(理由A)
なお、発明の詳細な説明には、
「【0090】
次いで、後の剥離を行いやすくするために、タングステン膜301と酸化シリコン膜302との密着性を部分的に低下させる処理を行う。密着性を部分的に低下させる処理は、剥離しようとする領域の周縁に沿ってタングステン膜301または酸化シリコン膜302にレーザー光を部分的に照射する処理、或いは、剥離しようとする領域の周縁に沿って外部から局所的に圧力を加えて酸化タングステン膜301の膜内または界面の一部分に損傷を与える処理である。具体的にはダイヤモンドペンなどで硬い針を垂直に押しつけて荷重をかけて動かせばよい。好ましくは、スクライバー装置を用い、押し込み量を0.1mm?2mmとし、圧力をかけて動かせばよい。このように、剥離を行う前に剥離現象が生じやすくなるような部分、即ち、きっかけをつくることが重要であり、密着性を選択的(部分的)に低下させる前処理を行うことで、剥離不良がなくなり、さらに歩留まりも向上する。なお、この工程は、水またはアルコール類に可溶な粘着剤305を全面に塗布する前に行ってもよい。」
と記載されているが、「金属膜を形成した領域の一部のみにレーザー光を照射した」処理は、剥離しようとする領域の周縁に沿ってタングステン膜301にレーザー光を部分的に照射する処理以外の処理を含むものであるから、「金属膜を形成した領域の一部のみにレーザー光を照射した」処理が、剥離しようとする領域の周縁に沿ってタングステン膜301にレーザー光を部分的に照射する処理であるとは認められない。」

第7 当審の拒絶理由(特許法第36条第6項第1号および同法第36条第6項第2号)について
当審拒絶理由で拒絶の理由を示した、補正前の請求項1および2は、本手続補正書により
「【請求項1】
第1の基板上にタングステンを含む金属膜を形成し、
前記金属膜上に絶縁膜を形成することで前記金属膜と前記絶縁膜との間にタングステンを含む金属酸化膜を形成し、
前記絶縁膜上に結晶領域を有する第1の半導体素子と、非晶質領域を有する第2の半導体素子とを形成し、
剥離しようとする領域の周縁に沿って前記金属膜に部分的にレーザー光を照射した後、物理的手段を用いることにより、前記金属酸化膜中、前記金属酸化膜と前記絶縁膜との界面、又は前記金属酸化膜と前記金属膜との界面で剥離して、前記第1の基板を除去し、
前記絶縁膜、前記第1の半導体素子、及び前記第2の半導体素子を含む被剥離層に、第2の基板を接着することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
第1の基板上にタングステンを含む金属膜を形成し、
前記金属膜上に絶縁膜を形成することで前記金属膜と前記絶縁膜との間にタングステンを含む金属酸化膜を形成し、
前記絶縁膜上に結晶領域を有する第1の半導体素子と、非晶質領域を有する第2の半導体素子とを形成し、
剥離しようとする領域の周縁に沿って前記金属膜に部分的にレーザー光を照射した後、物理的手段を用いることにより、前記金属酸化膜中、前記金属酸化膜と前記絶縁膜との界面、又は前記金属酸化膜と前記金属膜との界面で剥離して、前記第1の基板を除去し、
前記絶縁膜、前記第1の半導体素子、及び前記第2の半導体素子を含む被剥離層に、第2の基板を接着し、
前記第1の半導体素子と電気的に接続された第1の配線、及び前記第2の半導体素子と電気的に接続された第2の配線を露出させることを特徴とする半導体装置の作製方法。」
と補正され、補正前請求項1および2の「前記金属膜を形成した領域の一部のみにレーザー光を照射した後」との記載は「前記金属膜に部分的にレーザー光を照射した後」となったから、本手続補正書により、平成28年3月10日付の手続補正書は、特許法第36条第6項第1号および第2号に規定する要件を満たさないとの、当審拒絶理由で示した理由AおよびBは解消した。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-28 
出願番号 特願2015-43141(P2015-43141)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 右田 勝則  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 深沢 正志
小田 浩
発明の名称 半導体装置の作製方法  
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