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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F24C
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 F24C
管理番号 1332878
審判番号 不服2016-15865  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-25 
確定日 2017-10-17 
事件の表示 特願2011-162738号「高周波調理器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年2月4日出願公開,特開2013-24535号,請求項の数(1)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は,平成23年7月26日の出願であって,平成27年3月12日付けで拒絶理由が通知され,同年5月12日に意見書及び手続補正書が提出され,同年9月11日付けで拒絶理由が通知され,同年11月16日に意見書及び手続補正書が提出され,平成28年5月13日付けで平成27年11月16日付け手続補正書でした補正の却下の決定がなされるとともに,同日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成28年10月25日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成28年5月13日付け補正の却下の決定及び原査定の概要
1 上記補正の却下の決定の概要
平成27年11月16日付け手続補正書でした明細書,特許請求の範囲又は図面についての補正のうち,請求項1についての補正は,補正前の「前記マイクロ波透過性カバーの側部辺端面上部とを覆う」との発明特定事項の下線部が削除されたものとなっていることから,特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当しない。また,この補正は,同法第17条の2第5項第3号の規定に規定される誤記の訂正を目的とするものにも,同条同項第4号の規定される明瞭でない記載の釈明を目的とするものにも該当しない。

2 原査定の概要
(1)新規事項の追加
平成27年5月12日付けでした手続補正は,請求項1に「この上辺端面に連続する前記マイクロ波透過性カバーの側部辺端面上部とを覆う」という事項を追加することを含むものであるが,これは,この出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,当初明細書等という)に記載した事項の範囲内にないし,当初明細書等の記載から自明な事項でもないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(2)進歩性
この出願の請求項1及び2に係る発明は,その出願前に頒布された下記の刊行物1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開2003-086349号公報(引用文献1)
刊行物2:特開平04-209493号公報(引用文献2)
刊行物3:特開2003-142250号公報(引用文献3)


第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成28年10月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「加熱室と,
高周波発生手段と,
前記加熱室の反対面に形成され,前記高周波発生手段が発生したマイクロ波を導く導波管と,
前記加熱室壁に形成され,前記導波管で導かれたマイクロ波を前記加熱室内に供給せしめる給電口と,
この給電口を塞ぐマイクロ波透過性カバーと,
前記給電口より上の面に構成された傘状の防汚カバーと,を設け,
前記防汚カバーは両端部にカバー押さえ部を設け,
前記カバー押さえ部は前記加熱室壁面との隙間を小さくするような段差を設け,
前記防汚カバーは,前記マイクロ波透過性カバーの上辺端面を覆うとともに,この上辺端面に連続する前記マイクロ波透過性カバーの側部辺端面上部とを覆い,かつ前記マイクロ波透過性カバーを前記加熱室の壁面に密着するように押しつける構成である高周波調理器。」


第4 当審の判断

1 新規事項の追加について
平成28年10月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1には,「前記防汚カバーは両端部にカバー押さえ部を設け」と記載されており,防汚カバーはその両端部にカバー押さえ部を備えるものであると理解できる。そして,本願発明の図3には,カバー押さえ部8がマイクロ波透過性カバーの側部辺端面上部を覆うことが示されている。
よって,請求項1に,「前記防汚カバーは,前記マイクロ波透過性カバーの上辺端面を覆うとともに,この上辺端面に連続する前記マイクロ波透過性カバーの側部辺端面上部とを覆い」という事項を追加することは新規事項追加には該当しない。

したがって,上記手続補正は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているものと認められる。


2 進歩性について
拒絶査定に引用した上記刊行物1ないし3には,それぞれ次の事項が記載されている。
(1)刊行物1の記載事項
(1a)「【0002】
【従来の技術】図14は従来の高周波加熱装置における断面図,図15はその要部斜視図である。図において,20は前面に開口部を有する略箱形の加熱室であり,前面に開口部を有する高周波加熱装置の本体(図示せず)内に形成されている。20aは加熱室20の側板であり,図14の向って右側の側板20aの上部および下部に給電口21が設けられている。22は加熱室20外側に設けられた300MHzから30GHzまでの周波数帯にある高周波を発振させる高周波発振器,23は高周波発信器22のアンテナ,24は高周波発振器22およびアンテナ23からの高周波を給電口21を介して加熱室20へ伝搬する導波管である。25は被加熱物26が載置される載置台,27は載置台25を支持するロータリプレート,金属材料によって形成され,加熱室20の底板20b近傍に回転可能に設けらている。28はロータリプレート27を回転させるモータであり,軸部28aを介してロータリープレート27と連結されている。
【0003】29は導波管24から給電口21を介して伝搬される高周波を透過する高周波透過性の給電口カバーである。給電口カバー29の形状は例えば長方形の板状であり,給電口カバー29の四隅に形成された穴29aに耐熱性のビスなどの留め具30を用いて加熱室20の側板20aに形成された留め具受け20eに固定されるのが一般的である。
【0004】なお,高周波加熱装置の本体前面には,開閉自在の図示されていないドアが取り付けられている。このドアにより本体および加熱室20の開口部は適宜閉塞される。また,本体前面の右側には表示部,操作ボタンなどが配された図示されていない操作パネルが設けられている。」

(1b)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来の高周波加熱装置は以上のように構成されており,被加熱物から飛散した食品カスや汁等の液体が給電口カバーに付着したり,給電口カバーと給電口がある壁面との隙間から侵入することで,給電口周辺で炭化し,燃焼が起こる原因になりうるという課題があった。また,かかる状況を防ぐために汚れた給電口カバーを清掃する場合があるが,この場合,ビスをはずすなど,煩雑な給電口カバーの着脱作業を要するという課題があった。
【0008】本発明は,上記のような課題を解決するためになされたもので,給電口カバーと加熱室壁面との間への食品カス,液体等の侵入可能性を下げ,安全性を向上させるとともに,給電口カバーを加熱室から簡単に着脱可能とすることで清掃性を向上する高周波加熱装置を提供することを目的としたものである。」

(1c)「【0024】実施の形態6.図7は本発明の実施の形態6における高周波加熱装置の給電口カバーの構造を示す要部斜視図である。従来技術および実施の形態1?5と同一または同一相当部分には同じ符号を付して表し,図示,説明を省略する。図において,10は給電口21に被加熱物から飛散した食品カスや醤油などの液体が付着,侵入しないように設けられた給電口カバー,11,12は加熱室の側板20aの給電口21上下に設けられた上部レール,下部レールであり,給電口カバー10は上部レール11,下部レール12間にスライドさせて,加熱室内に装着される。」

(1d)「【0026】実施の形態7.図8は本発明の実施の形態7における高周波加熱装置のカバー押え部材の構成を示す要部斜視図である。従来技術および実施の形態1?6と同一または同一相当部分には同じ符号を付して表し,図示,説明を省略する。全体的な構成においては,実施の形態6と同様である。8は上部レール11に設けられた固定バネ,9は固定バネ8の端部に設けられた弾性体よりなる当接部であり,給電口カバー10と当接し,固定バネ8の付勢力により給電口カバー10を押えている。カバー押え部材は,固定バネ8,当接部9により構成されている。カバー押え部材は,給電口カバー10を押さえる効果と,適当な力で給電口カバー10をはずすように構成されている。
【0027】実施の形態7によれば,上部レール11により,上部からの食品カス等の侵入防止効果を高めるとともに,給電口カバー10の着脱作業を簡易化することができ,清掃性の向上を高めることができる。また,給電口カバー10をより確実に固定するできるという効果がある。」

(1e)図8には,上部レール11が,給電口カバー10の上辺端面を覆うことが記載されている。また,給電口21が加熱壁の側板20aに形成されること,及び,給電口カバー10が給電口21を塞ぐことが記載されている。

(1f)図14には,側壁20aを挟んで加熱室20と導波管24とが位置することが示されており,即ち,加熱室20の側板20aの加熱室20側とは反対側に導波管24を形成することが記載されている。

(1g)
刊行物1の実施の形態7に記載される高周波加熱装置の全体的な構成は,上記(1d)に示唆されるとおり,従来技術や実施の形態6と同様のものと把握されるところ,上記(1a)ないし(1f)を総合すると,刊行物1の,特に実施の形態7には以下の発明が記載されているものと認められる。(以下「引用発明」という。)

「加熱室20と,高周波発振器22と,加熱室20の側板20aの加熱室20側とは反対側に形成され,高周波発振器22およびアンテナ23からの高周波を給電口21を介して加熱室20へ伝搬する導波管24と,加熱室壁20aに設けられた給電口21と,給電口21を塞ぐ給電口カバー10と,加熱室の側板20aの給電口21上に設けられた,給電口カバー10の上辺端面を覆う上部レール11と,上部レール11に設けられた固定バネ8と固定バネ8の端部に設けられた弾性体9よりなる当接部であって,給電口カバー10と当接し,固定バネ8の付勢力により給電口カバー10を押える当接部を備える高周波加熱装置。」


(2) 刊行物2の記載事項
(2a)「【0010】
【実施例】図1乃至図3は本発明実施例の電子レンジを示す。食品を収納する加熱室1が設けられており,この加熱室にはマイクロ波を発生するマグネトロン2が導波部3を介して連結されている。この場合,上記導波部3は壁体4等で構成されていて上記加熱室1と1つの壁5を挟んでおり,この壁5には給電口6が形成されている。従って,上記マグネトロン2から発生したマイクロ波は上記導波管3で導かれ上記給電口6から加熱室1内へ供給され,加熱室内で食品のマイクロ波加熱が実行される。
【0011】そして,上記壁5の給電口6周縁部分には,導波管3側に突出した給電口周縁座押し部7が形成されており,また,給電口6はマイクロ波透過性カバー8で塞がれている。」


(3) 刊行物3の記載事項
(3a)「【0003】図5において1は加熱室で,右側の側壁に高周波の取り入れ口となる開口部2が設けてある。3は高周波の発生手段であるマグネトロンであり前記加熱室1へ発生させた高周波を導く導波管4に取付けられている。導波管4の多端近傍には前記開口部2が配置している。開口部2は開口部隠蔽体5で覆われている。この開口部隠蔽体5がないと,調理中に食品から発生する油煙や食品カスが開口部2の内部及び端面に付着すると強電界域である導波管4の内部で電界集中が発生し焦げ・スパークとなり発煙発火,電波漏洩等の重大欠陥となる。」

(3b)「【0017】図1において加熱室壁面1には高周波の加熱室への出口である開口部2が設けられ,可とう性を有する雲母積層板の薄板から成る開口部隠蔽体5は前記加熱室壁面1に設けられた複数の係止部7に両側を挿入され装着されている。この状態を平面的に見ると図2に示した様になる。
【0018】本発明の加熱室壁面1は緩やかな曲面を造る径寸法Cで構成されている。ちなみにこの曲率は連続していれば場所により異なっていても効果は得られる。
【0019】この曲率について図2と図3を用いて説明する。開口部隠蔽体5の平面状態での寸法Lは加熱室1の係止部7間の寸法L'以下に弾性変形させて曲げて係止部7に挿入する。よって図1の加熱室壁面のC寸法はこの弾性変形させた時の曲率より大きい径寸法にすることで,装着した後も加熱室壁面1と開口部隠蔽体5は隙間無く密着させることが出来る。」

(3c)図2には,複数の係止部7のうち左上の係止部7が,開口部隠遮体5の左側の上辺端面に連続する側部辺端面上部を覆うことが記載されている。

(3d)刊行物3の実施例1に記載される高周波加熱装置の全体的な構成は,上記(3a)に記載される従来技術と同様のものと把握されるところ,上記(3a)?(3c)より,刊行物3には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。

「加熱室と,高周波の発生手段であるマグネトロンと,加熱室へ発生させた高周波を導く導波管と,加熱室の右側の側壁であって,導波管の他端に設けられる高周波取り入れ口となる開口部2と,開口部2を覆う開口部隠遮体5と,開口部隠蔽体5の両側が挿入される複数の係止部7とを備え,複数の係止部7のうち左上の係止部7は,開口部隠遮体5の左側の上辺端面に連続する側部辺端面上部を覆い,加熱室壁面1は緩やかな曲面を造る径寸法Cで構成され,開口部遮蔽体5の平面状態での寸法Lは係止部7間の寸法L’以下に弾性変形させて曲げて係止部に挿入され,加熱室壁面のC寸法はこの弾性変形させた時の曲率より大きい径寸法にすることで,装着した後も加熱室壁面1と開口部隠遮体5とが隙間なく密着する,高周波加熱装置。」


(4)対比
ア 引用発明の「高周波加熱装置」,「加熱室20」はそれぞれ,本願発明の「高周波調理器」,「加熱室」に相当する。

イ 引用発明の「高周波発振器22およびアンテナ23」は,本願発明の「高周波発生手段」に相当する。
また,引用発明の「高周波」の周波数は,上記(1a)によれば,300MHzから30GHzであるところ,マイクロ波の周波数は一般的に2.45GHz程度であることは技術常識であり,また,引用発明も本願発明と同様に誘電加熱による調理に相応しい周波数を供給しているのだから,本願発明の「マイクロ波」に相当する。
そうすると,引用発明の「高周波発信器22およびアンテナ23からの高周波を」「伝搬する導波管24」は,本願発明の「前記高周波発生手段が発生したマイクロ波を導く導波管」に相当する。

ウ 引用発明の「給電口21」は,これを「介して」導波管24から高周波を「加熱室20へ伝搬」するものであるから,本願発明の「前記導波管で導かれたマイクロ波を前記加熱室内に供給せしめる給電口」に相当する。
また,引用発明の「加熱室壁20aに設けられた給電口21」は,本願発明の「前記加熱室壁に形成され」た「給電口」に相当する。

エ 引用発明の「給電口カバー10」は,上記(2a)にも記載される技術常識を踏まえれば,当然にマイクロ波透過性を有するものであるから,本願発明の「マイクロ波透過性カバー」に相当する。

オ 引用発明の「上部レール11」は,給電口カバー10の上辺端面を覆うことで,防汚の機能も有するといえるから,本願発明の「防汚カバー」に相当する。

カ してみると,本願発明と引用発明とは,
「加熱室と,
高周波発生手段と,
前記加熱室の反対面に形成され,前記高周波発生手段が発生したマイクロ波を導く導波管と,
前記加熱室壁に形成され,前記導波管で導かれたマイクロ波を前記加熱室内に供給せしめる給電口と,
この給電口を塞ぐマイクロ波透過性カバーと,
前記給電口より上の面に構成された防汚カバーと,を設け,
前記防汚カバーは,前記マイクロ波透過性カバーの上辺端面を覆う構成である高周波調理器。」
である点で一致し,以下の2点で相違する。

[相違点1]
本願発明では防汚カバーが傘状であるのに対して,引用発明では上部レール11が傘状であるか不明である点。

[相違点2]
本願発明では,防汚カバーは両端部にカバー押さえ部を設け,カバー押さえ部は加熱室壁面との隙間を小さくするような段差を設け,防汚カバーは,マイクロ波透過性カバーの上辺端面に連続する側部辺端面上部を覆うとともに,マイクロ波透過性カバーを加熱室の壁面に密着するように押しつける構成であるのに対し,引用発明では,上部レール11は,給電口カバー10の側部辺端面上部を覆うものではなく,マイクロ波透過性カバーを加熱室の壁面に押しつけるのに,上部レール11に設けられた固定バネ8と固定バネ8の端部に設けられた弾性体9よりなる当接部を備える点。


(5)判断
ア 相違点1について
上記相違点1について検討するに,本願明細書の【0025】には,「傘状の防汚カバー」に関して,「マイクロ波透過性カバーのおもて面や裏面に(蒸気や調味料が)付着することを防止し,マイクロ波透過性カバーの溶融・変形をなくすことができる」と記載されている。
他方,引用発明の「上部レール11」は,上記(1d)によれば,「上部からの食品カス等の侵入防止効果を高める」ものであり,これは本願発明の傘状の防汚カバーが奏する上記作用効果と何ら異なるところはない。
そうすると,上記相違点1は実質的なものではないか,仮に相違するとしても,引用発明の上部レール11を傘状とする程度のことは,当業者が必要に応じて適宜なし得た設計的事項にすぎない。


イ 相違点2について
上記(3d)の「高周波加熱装置」,「開口部隠遮体5」はそれぞれ,本願発明の「高周波調理器」,「マイクロ波透過性カバー」に相当するところ,上記(3d)には,本願発明と同様の構成を有する高周波調理器において,マイクロ波透過性カバーの側部辺端面上部を覆う手段として係止部を設けるという事項が開示されているといえる。

そこで,当該事項を引用発明に適用することについて検討する。
引用発明は,上記(1b)のとおり,「給電口カバーと加熱室壁面との間への食品カス,液体等の侵入可能性を下げ,安全性を向上させるとともに,給電口カバーを加熱室から簡単に着脱可能とすることで清掃性を向上する高周波加熱装置を提供すること」を課題とするものである。そして,引用発明において,給電口カバー10を上部レール11,下部レール12間にスライドさせて加熱室内に装着することは,上記侵入可能性の低下と清掃性の向上とを両立させることと技術的に密接に結びついている。
他方,上記(3d)に開示される係止部7のうちの一つは,たしかに,開口部隠蔽体5の側部上辺端面上部を覆うものであるが,開口部隠遮体5を水平方向に弾性変形させて装着することを前提とした手段であるところ,係止部7は,開口部隠遮体5の側部端面上部についてはその片側(図2では左側)を覆うものであって,両側を覆うことは想定していない。また,仮に引用発明において上記両側を覆うように構成すれば,給電口カバー10の上記スライドを阻害してしまう。
よって,引用発明に上記事項を適用する動機付けは認められない。

なお,念のため,引用発明の給電口カバーの装着態様を,スライドに代えて,上記(3d)の「開口部遮蔽体5の平面状態での寸法Lは係止部7間の寸法L’以下に弾性変形させて曲げて係止部に挿入され」という態様に変更することについて検討しておくと,給電口カバー10の上辺端面を覆う上部レール11が不要となるから,引用発明の「上部からの食品カス等の侵入防止効果を高める」という作用効果が十分でなくなる恐れがある。
よって,やはりその動機付けがあるとは認められない。

したがって,引用発明をして,上記相違点2に係る本願発明の構成とすることを,当業者が容易に想到し得たとはいえない。


(6) 小活
以上より,本願発明は,引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとは認められない。


第5 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-02 
出願番号 特願2011-162738(P2011-162738)
審決分類 P 1 8・ 55- WY (F24C)
P 1 8・ 121- WY (F24C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 嶌田 康平宮崎 賢司渡邉 洋土屋 正志  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 中村 則夫
井上 哲男
発明の名称 高周波調理器  
代理人 鎌田 健司  
代理人 前田 浩夫  

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