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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1332893
審判番号 不服2016-13364  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-07 
確定日 2017-09-28 
事件の表示 特願2015-20538「ポリオレフィン微多孔フィルムの製造方法及び積層多孔フィルムの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年5月14日出願公開、特開2015-91995〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年2月8日に出願された特願2012-24791号(以下、「原出願」という。)の一部を平成27年2月4日に新たな特許出願としたものであって、同日に上申書が提出され、同年10月16日付けで拒絶理由が通知され、同年12月16日に意見書が提出されたが、平成28年5月27日付けで拒絶査定がされ、同年9月7日に拒絶査定不服審判が請求され、同年10月5日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書(方式)が提出されたものである。

第2 本願発明について
本願の請求項1?10に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
下記工程(1)?(3)を有する、原料ポリオレフィンシートをテンター延伸することによるポリオレフィン微多孔フィルムの製造方法。
(工程1)原料ポリオレフィンシートを加熱する工程
(工程2)加熱された原料ポリオレフィンシートを、工程1における加熱温度よりも低い温度で加熱しながら、所定のフィルム拡幅速度で第一の延伸を行う工程
(工程3)第一の延伸を行った原料ポリオレフィンシートを、工程1における加熱温度よりも低い加熱温度であり、且つ、工程2における加熱温度よりも高い加熱温度で加熱しながら、第一の延伸のフィルム拡幅速度よりも小さいフィルム拡幅速度で第二の延伸を行う工程」

第3 本願の出願の時について
1.本願の出願の時
原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当審において付した。

・「【請求項1】
炉内を搬送される微細空孔を有する原料ポリオレフィンシートを、前記炉内の複数の延伸領域にてテンター延伸することにより、ポリオレフィン微多孔フィルムを製造する方法であって、
前記複数の延伸領域は、フィルム拡幅速度の異なる少なくとも2つの延伸領域を有し、当該少なくとも2つの延伸領域におけるフィルム拡幅速度が大きい延伸領域の温度が、フィルム拡幅速度が小さい延伸領域より低く、
且つ、最もフィルム拡幅速度が大きい延伸領域が、最もフィルム拡幅速度が小さい延伸領域より、前段に位置することを特徴とするポリオレフィン微多孔フィルムの製造方法。」

・「【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、通常のテンター延伸装置を使用し、延伸工程における温度とフィルム拡幅速度とを適切に組み合わせるだけで、ポリオレフィンフィルムの細孔を著しく閉塞させることなく、フィルムを延伸させることができるため、セパレータの基材多孔質フィルムに適したポリオレフィン微多孔フィルムを、生産性良く製造することができる。」

原出願の当初明細書等には、テンター延伸する前の原料ポリオレフィンシートは「微細空孔を有する原料ポリオレフィンシート」と記載されており(請求項1)、原料ポリオレフィンシートは微細空孔を有するものである。また、原出願の当初明細書等には、発明の効果として、「通常のテンター延伸装置を使用し、延伸工程における温度とフィルム拡幅速度とを適切に組み合わせるだけで、ポリオレフィンフィルムの細孔を著しく閉塞させることなく、フィルムを延伸させることができる」との記載があり(【0011】)、「細孔を著しく閉塞させることなく、フィルムを延伸させる」ということは、延伸させる前から細孔が存在していることになり、これは、原料ポリオレフィンシートは微細空孔を有するものであるとする請求項1の記載に合致する。
以上のように、原出願の当初明細書等には、微細空孔を有する原料ポリオレフィンシートをテンター延伸することは記載されているが、微細空孔を有しない原料ポリオレフィンシートをテンター延伸することは記載されているとはいえず、示唆もされていない。
一方、本願発明においては、テンター延伸する前の原料ポリオレフィンシートは単なる「原料ポリオレフィンシート」であり、微細空孔を有すると特定されないものであるから、当該原料ポリオレフィンシートには、例えば、延伸により微細空孔を形成するためのフィラーや可塑剤等の剤が含まれた状態であり、まだ微細空孔が形成されていない原料ポリオレフィンシートといった、原出願の当初明細書等に記載されていた「微細空孔を有する原料ポリオレフィンシート」ではない態様の原料ポリオレフィンシートも含まれることになる。
してみると、本願発明、すなわち特許請求の範囲の請求項1に係る発明において、テンター延伸する前の原料ポリオレフィンシートを、微細空孔を有するとの限定を削除して、単なる「原料ポリオレフィンシート」とすることは、原出願の当初明細書等に記載も示唆もされておらず、原出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、本願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項は、原出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内であるとはいえない。したがって、本願は適法な分割出願であるとはいえないので、出願時の遡及は認められず、本願の出願日は本願の現実の出願日である平成27年2月4日である。

2.請求人の主張の検討
(1)審判請求書の3.(2)(2-1)の主張
請求人は、以下の主張をしている。

「原出願の当初明細書の段落[0014]には『なお、本発明において、原料となるシート状のポリオレフィンを『原料ポリオレフィン』と称する』と記載され、段落[0016]?[0044]に当該原料ポリオレフィンを用いた実施形態が図1?4に基づいて記載されていることからも、原出願の当初明細書等には、本発明の製造方法において、微細空孔を有する有さないに拘らず『原料ポリオレフィンシート』を用いる点が記載されている。
そして、原料ポリオレフィンシートについて説明する原出願の明細書段落[0046]?[0050]には、空隙率が30?50体積%が好ましい、とする記載があるものの(段落[0049])、原料ポリオレフィンシート自体が空隙を有することが必須とする記載はないし、
本願発明の目的『特別な装置を使用せずに、非水電解液二次電池用セパレータに適した細孔構造を有するポリオレフィン微多孔フィルムを再現性よく、高効率に製造する方法を提供すること(明細書段落[0008])』を達成するために、細孔を著しく閉塞させないようにする必要があるのは原料ポリオレフィンシートではなく、あくまで目的物である生産されたポリオレフィンフィルム(ポリオレフィン微多孔フィルム)であることは当業者が理解できるところである。」

ここで、まず、原出願の当初明細書等の【0014】の記載を確認する。その記載は次のとおりである。なお、下線は当審において付した。

「【0014】
本発明のポリオレフィン微多孔フィルムの製造方法は、炉内を搬送される微細空孔を有する原料ポリオレフィンシートを、前記炉内の複数の延伸領域にてテンター延伸することにより、ポリオレフィン微多孔フィルムを製造する方法であって、前記複数の延伸領域は、フィルム拡幅速度の異なる少なくとも2つの延伸領域を有し、当該少なくとも2つの延伸領域におけるフィルム拡幅速度が大きい延伸領域の温度が、フィルム拡幅速度が小さい延伸領域より低く、且つ、最もフィルム拡幅速度が大きい延伸領域が、最もフィルム拡幅速度が小さい延伸領域より、前段に位置することを特徴とする。
なお、本発明において、原料となるシート状のポリオレフィンを「原料ポリオレフィンシート」と称し、該シートを延伸してものをフィルムと呼び、また、前段とは、原料ポリオレフィンシート乃至はフィルムの搬送方向を基準に手前側を指し、後段とは搬送方向を指す。」

上記【0014】には、「なお、本発明において、原料となるシート状のポリオレフィンを『原料ポリオレフィンシート』と称し」との記載があるが、その「本発明において、」の「本発明」とは、同じく上記【0014】に記載された「本発明のポリオレフィン微多孔フィルムの製造方法は、炉内を搬送される微細空孔を有する原料ポリオレフィンシートを、・・・(略)・・・前段に位置することを特徴とする。」という発明であるから、当該「原料ポリオレフィンシート」と称される、原料となるシート状のポリオレフィンは、「微細空孔を有する原料ポリオレフィンシート」を指していることは明らかであって、原出願の当初明細書等の【0014】以降等で単に「原料ポリオレフィンシート」と称されていたとしても、そのシートはその前提において微細空孔を有するものであるといえる。したがって、請求人が主張するように、「原出願の当初明細書等には、本発明の製造方法において、微細空孔を有する有さないに拘らず『原料ポリオレフィンシート』を用いる点が記載されている。」、「原料ポリオレフィンシート自体が空隙を有することが必須とする記載はない」とはいえない。
また、請求人は発明の目的に関しても主張しているが、原出願の当初明細書等における発明の目的の記載には、原料ポリオレフィンシートが微細空孔を有する原料ポリオレフィンシートでないものまでをも包含することについて、記載も示唆もされていない(請求項1、【0008】)。

(2)審判請求書の3.(2)(2-2)の主張
請求人は、以下の主張をしている。

「原出願の当初明細書の段落[0050]には『原料ポリオレフィンシートの製造方法は特に制限されない、例えば原料ポリオレフィンに空隙を持たせるために・・・』と記載されているところからも、多孔質フィルムの原料となる原料ポリオレフィンシートは微細空孔を有するものに限られず、フィラーや可塑剤等の孔を形成するための剤が含まれた状態のシートや、フィラーや可塑剤等の孔を形成するための剤が除去された後の空隙を有するシート等の、延伸後に多孔質フィルムとなるための要素を備えるシートであると理解するのが相当である。」

しかしながら、第3 2.(1)で述べたとおり、原出願の当初明細書等の【0014】以降等で「原料ポリオレフィンシート」と称されていても、そのシートは微細空孔を有するものであるといえるから、原出願の当初明細書等の【0050】に記載された「原料ポリオレフィンシート」も微細空孔を有するもののみであると解されるのであり、当該【0050】の記載は、延伸する前の微細空孔を有する原料ポリオレフィンシートの製造方法の例として、フィラーを抽出除去する方法が挙げられていると解されるものである。したがって、請求人が主張するように、「多孔質フィルムの原料となる原料ポリオレフィンシートは微細空孔を有するものに限られず、・・・(略)・・・延伸後に多孔質フィルムとなるための要素を備えるシートであると理解するのが相当である。」とはいえない。
また、請求人は、

・「『原出願に係る原料ポリオレフィンシートが延伸されて得られるものは多孔質フィルム(ポリオレフィン微多孔フィルム)であることから、原出願に係る原料ポリオレフィンシートが、単なる「無孔のシート」では有りえず、多孔質フィルムとなるための何らかの要素を備えるものであることは具体的な事例を示すまでもなく、当業者は当然に理解できる』ものである。」

・「『高分子量ポリオレフィンと、可塑剤等の低分子量液体成分とが分離した状態で延伸中に微細空孔が形成されるもの』等が空隙を有さない原料ポリオレフィンシートとして周知であることから、原出願の当初明細書等の記載から、原料ポリオレフィンシートが微多孔を有するもののみならず、(延伸後には微多孔を有するシートになり得る)空隙を有さないものを含むことは、当業者にとって当然に理解できる自明な事項であることは明らかである。」

とも主張しているが、すでに検討してきたとおり、原出願の当初明細書等に記載されているのは「微細空孔を有する原料ポリオレフィンシート」であるから、請求人が主張するような「多孔質フィルムとなるための何らかの要素を備えるもの」、「(延伸後には微多孔を有するシートになり得る)空隙を有さないもの」が、原料ポリオレフィンシートとして原出願の当初明細書等に記載されているとはいえないし、自明のことでもない。

(3)審判請求書の3.(2)(2-3)の主張
請求人は、

「本発明の製造方法において、原料ポリオレフィンシートが、微細空孔(空隙)を有するポリオレフィンシートのみならず、空隙を有さないポリオレフィンシートを包含することは、上述の『(2-1)認定(I)について』及び『(2-2)認定(II)について』にて詳述の通り、当業者に自明な事項であり、原出願当初明細書等の記載の範囲内といえる。すなわち、『微細空孔を有する』の削除によって、空隙を有さない『原料ポリオレフィンシート』を包含することになるわけでなく、本発明の製造方法に係る原料ポリオレフィンシートの概念には、そもそも空隙を有さない態様が含まれているため、『微細空孔を有する』の削除は何ら新たな技術的事項を導入するわけではない。」

と主張しているが、第3 2.(1)、(2)で述べたとおり、原出願の当初明細書等に記載されているのは「微細空孔を有する原料ポリオレフィンシート」であるから、微細空孔を有すると特定されない原料ポリオレフィンシートは、微細空孔を有さない原料ポリオレフィンシートを包含するようになり、本願発明において、「微細空孔を有する」の削除は、新たな技術的事項を導入するものである。原出願の当初明細書等には、あくまでも延伸前にすでに微細空孔を有する原料ポリオレフィンシートのみしか記載されておらず、延伸により微細空孔を原料ポリオレフィンシートに形成するような態様は含まれない。
また、請求人は、

「また、(延伸後には微多孔を有するシートになり得る)空隙を有さないポリオレフィンフィルムが原出願の出願時に周知の存在であることを考慮すると、原出願における「微細空孔を有する原料ポリオレフィンシート」において、削除された「微細空孔を有する」は、目的物である延伸後のポリオレフィン微多孔フィルムにおける不可欠な構成要素であるとまではいえない。」

とも主張しているが、原出願の当初明細書等には、原料ポリオレフィンシートが微細空孔を有することを不可欠な構成要素として、所定の温度及び拡幅速度でテンター延伸する、ポリオレフィン微多孔フィルムの製造方法が記載されており、微細空孔を有さない原料ポリオレフィンシートを当該所定の温度及び拡幅速度でテンター延伸することは、記載も示唆もされていない。
原出願の当初明細書等には、原料ポリオレフィンシートに延伸前から存在している微細空孔に対して、温度と拡幅速度とを適切に組み合わせてテンター延伸することで、非水電解液二次電池用セパレータに適した細孔構造を有するポリオレフィン微多孔フィルムを再現性よく、高効率に製造するという課題を解決できることが記載されている(請求項1、【0008】、【0011】)。それに対して、延伸前に微細空孔がない原料ポリオレフィンシートをテンター延伸するとした場合、微細空孔がない原料ポリオレフィンシートにテンター延伸により微細空孔を形成するという、原出願の当初明細書等に記載がない機能をテンター延伸が有するものとなり、これは新たな技術的事項を導入するものである。

以上のことから、請求人の主張は採用できない。

第4 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶理由の概要は、請求項1に係る発明は、引用文献等1(特開2013-159750号公報(原出願の公開特許公報))に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないというものを含むものである。

第5 当審の判断
1.刊行物及びその記載事項
第3 1.で述べたとおり、本願の出願日は、本願の現実の出願日である平成27年2月4日であるから、原査定の拒絶理由で引用文献等1として引用された特開2013-159750号公報(以下、「引用文献」という。)は、本願の出願前である平成25年8月19日に頒布された刊行物である。そして、引用文献には、次の事項(以下、「摘示ア」のようにいう。)が記載されている。

ア 「【請求項1】
炉内を搬送される微細空孔を有する原料ポリオレフィンシートを、前記炉内の複数の延伸領域にてテンター延伸することにより、ポリオレフィン微多孔フィルムを製造する方法であって、
前記複数の延伸領域は、フィルム拡幅速度の異なる少なくとも2つの延伸領域を有し、当該少なくとも2つの延伸領域におけるフィルム拡幅速度が大きい延伸領域の温度が、フィルム拡幅速度が小さい延伸領域より低く、
且つ、最もフィルム拡幅速度が大きい延伸領域が、最もフィルム拡幅速度が小さい延伸領域より、前段に位置することを特徴とするポリオレフィン微多孔フィルムの製造方法。」

イ 「【0016】
図1及び図2に一軸式のテンター式延伸機1によるフィルム延伸工程を模式的に示す。フィルム延伸工程は、原料ポリオレフィンシート10を横方向(フィルム幅方向)に延伸して、ポリオレフィン微多孔フィルム11を得る工程である。
【0017】
フィルム延伸工程では、原料ポリオレフィンシート10をテンター延伸法によって横延伸する。フィルム延伸に用いられる加熱炉20は、予熱領域21、延伸領域22,23及び熱固定領域24を備える。
加熱炉20におけるそれぞれの領域の温度を独立に調節することができ、原料樹脂の種類やフィルム延伸条件に合わせて適宜温度を設定することができる。例えば、原料ポリオレフィンシート10がポリエチレン系樹脂からなる場合、80?170℃程度の温度範囲で設定される。
【0018】
フィルム延伸工程についてさらに詳細に説明する。
まず、幅F_(1)の原料ポリオレフィンシート10は、テンターレールRにおけるチャックCによって固定される。次いで、テンターレールR上をチャックCが前段から後段(矢印方向)に移動することにより、原料ポリオレフィンシート10は、予熱領域21に導入される。原料ポリオレフィンシート10は、この予熱領域21で加熱されながら、チャックCの移動に伴いに移動する。なお、原料ポリオレフィンシート10の搬送速度は、通常、1?100m/分程度、好ましくは3?40m/分である。
【0019】
予熱領域21では、原料ポリオレフィンシート10を延伸するのに十分な温度にまで原料ポリオレフィンシート10が加熱される。
予熱領域21における予熱温度は、原料ポリオレフィンシート10に含まれる熱可塑性樹脂が非晶性樹脂の場合、(Tg-20)?(Tg+30)℃とすることが好ましい。一方、原料ポリオレフィンシート10に含まれる熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合、(Tm-40)?(Tm+20)℃とすることが好ましい。なお、本明細書における予熱温度とは、加熱炉20の予熱領域21内の雰囲気の温度をいう。
【0020】
予熱された原料ポリオレフィンシート10は、後段に移動して、予熱領域21から延伸領域22,23に導入される。延伸領域22,23では、原料ポリオレフィンシート10を、加熱しながら幅方向(フィルム搬送方向に垂直な方向)に延伸する。延伸領域22,23内の雰囲気の温度は、上記本発明の製造方法の条件を満たすように設定される。
【0021】
原料ポリオレフィンシート10がポリエチレン系樹脂からなる場合、予熱された原料ポリオレフィンシート10を予熱温度よりも低い温度で横延伸することにより、原料ポリオレフィンシート10を一層均一に延伸することができる傾向にある。
その結果、厚みや位相差の均一性に優れた延伸フィルムを得ることができる。原料ポリオレフィンシート10がポリエチレン系樹脂からなる場合の延伸領域22,23内の雰囲気の温度は、予熱温度より5?30℃低いことが好ましく、10?25℃低いことがより好ましい。」

ウ 「【0077】
<原料ポリオレフィンシートの調製>
超高分子量ポリエチレン粉末(340M、三井化学社製、分子量320万)を70重量%および重量平均分子量1000のポリエチレンワックス(FNP-0115、日本精鑞社製)30重量%と、該超高分子量ポリエチレンとポリエチレンワックスとの合計量100重量部に対して、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を0.4重量%、酸化防止剤(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を0.1重量%、ステアリン酸ナトリウムを1.3重量%を加え、更に全体積に対して38体積%となるように平均粒径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)を加え、これらを粉末のままヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練機で溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物とした。該ポリオレフィン樹脂組成物を表面温度が150℃の一対のロールにて圧延しシートを作製した。このシートを塩酸水溶液(塩酸4mol/L、非イオン系界面活性剤0.5重量%)に浸漬し、炭酸カルシウムを溶解、除去し、原料ポリオレフィンシートを得た。
【0078】
テンター式延伸機として、株式会社市金工業社製の一軸延伸型テンター式延伸機を用いた。
該テンター式延伸機の延伸領域を、前段から延伸領域A、延伸領域Bの2領域に分けて、それぞれの延伸領域でフィルム拡幅速度、温度を変更して延伸操作を行なった。各延伸領域のテンターレールは直線である。
レールパターンとして下表の3パターンを設定した。下記表1のL、W、Vは、それぞれ各延伸領域のフィルム搬送方向の距離をL、テンターレールが各領域の入口および出口を通過する位置のフィルム搬送方向と垂直方向における位置の差をW、フィルムが各領域を搬送方向へ通過する速度をVとする。各領域のフィルム拡幅速度SはS=V×W/Lより計算された値である。
【0079】
【表1】



エ 「【0081】
実施例1
レールパターンをパターン1に設定し、延伸領域Aの温度を95℃、延伸領域Bの温度を115℃、予熱領域及び熱固定領域の温度をそれぞれ120℃に設定して原料ポリオレフィンシートを延伸し、実施例1のポリオレフィン微多孔フィルムを得た。」

オ 「【図1】

【図2】



2.引用文献に記載された発明
引用文献には、摘示ア?オ、特に摘示アの記載と、摘示イの【0019】、【0020】の予熱領域、延伸領域についての記載と、摘示エの記載とから、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「炉内を搬送される微細空孔を有する原料ポリオレフィンシートを、前記炉内の延伸領域A、延伸領域Bにてテンター延伸することにより、ポリオレフィン微多孔フィルムを製造する方法であって、
120℃に設定した予熱領域で原料ポリオレフィンシートが加熱され、原料ポリオレフィンシートは予熱領域から延伸領域に導入され、
延伸領域Aでは、フィルム拡幅速度が7.7m/min、温度が95℃であり、延伸領域Bでは、フィルム拡幅速度が1.3m/min、温度が115℃であり、
且つ、延伸領域Aが、延伸領域Bより、前段に位置するポリオレフィン微多孔フィルムの製造方法。」

3.本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「炉内を搬送される微細空孔を有する原料ポリオレフィンシートを、前記炉内の延伸領域A、延伸領域Bにてテンター延伸することにより、ポリオレフィン微多孔フィルムを製造する方法」は、本願発明における「原料ポリオレフィンシートをテンター延伸することによるポリオレフィン微多孔フィルムの製造方法」に相当する。そして、本願発明における「原料ポリオレフィンシート」が「微細空孔を有する」ものを包含するものであることは明らかである。
引用発明において、「120℃に設定した予熱領域で原料ポリオレフィンシートが加熱され」ることは、本願発明において、「(工程1)原料ポリオレフィンシートを加熱する工程」を「有する」ことに相当する。
引用発明において、120℃に設定した予熱領域の次に原料ポリオレフィンシートが導入される延伸領域Aでは、フィルム拡幅速度が7.7m/min、温度が95℃であるから、「延伸領域A」にて「テンター延伸する」ことは、本願発明において、「(工程2)加熱された原料ポリオレフィンシートを、工程1における加熱温度よりも低い温度で加熱しながら、所定のフィルム拡幅速度で第一の延伸を行う工程」を「有する」ことに相当する。
引用発明において、予熱領域は120℃に設定され、また、延伸領域Bは延伸領域Aの後段に位置し、延伸領域Aでは、フィルム拡幅速度が7.7m/min、温度が95℃であり、延伸領域Bでは、フィルム拡幅速度が1.3m/min、温度が115℃であるから、「延伸領域B」にて「テンター延伸する」ことは、本願発明において、「(工程3)第一の延伸を行った原料ポリオレフィンシートを、工程1における加熱温度よりも低い加熱温度であり、且つ、工程2における加熱温度よりも高い加熱温度で加熱しながら、第一の延伸のフィルム拡幅速度よりも小さいフィルム拡幅速度で第二の延伸を行う工程」を「有する」ことに相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは一致し、相違点はない。
よって、本願発明は、引用発明、すなわち引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明、すなわち特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-25 
結審通知日 2017-08-01 
審決日 2017-08-15 
出願番号 特願2015-20538(P2015-20538)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 芦原 ゆりか  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 小野寺 務
西山 義之
発明の名称 ポリオレフィン微多孔フィルムの製造方法及び積層多孔フィルムの製造方法  
代理人 遠坂 啓太  
代理人 久保山 隆  
代理人 森 博  
代理人 加藤 久  
代理人 南瀬 透  
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