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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08J
管理番号 1333100
審判番号 不服2016-985  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-22 
確定日 2017-10-05 
事件の表示 特願2011-180817「樹脂成形品」拒絶査定不服審判事件〔平成24年4月5日出願公開、特開2012-67287〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成23年8月22日(優先権主張 平成22年8月26日)の出願であって、平成27年3月2日付で拒絶理由が通知され、同年5月8日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月22日付で拒絶査定がされ、これに対し、平成28年1月22日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
その後、平成28年3月2日付けで審査官により前置報告書が作成され、当審において平成29年3月31日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成29年6月22日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1?16に係る発明は、平成29年6月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
下記一般式(2)で表される化合物に由来する構造単位(a)を少なくとも含むポリカーボネート樹脂から成形された板状部を主体とする成形品であって、
前記ポリカーボネート樹脂が、長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を含有し、該金属化合物の含有量が、金属量として20重量ppm以下であり、
前記ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の波長350nmにおける光線透過率が65%以上であり、
前記ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の波長320nmにおける光線透過率が30%以上であり、
前記ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の初期のイエローインデックス値(初期のYI値)が7以下であり、
該成形品の板状部の厚みが0.5mm以上5mm以下であり、
以下の測定方法により測定された該成形品の板状部の最大位相差が250nm以下であり、
且つ、該成形品の板状部において位相差が150nm以下の面積の割合が該成形品の板状部の全面積に対して50%以上であることを特徴とする成形品。
【化1】

<成形品の位相差の測定と成形品の位相差が150nm以下の面積の割合>
500mmx500mmx3mmの成形プレートを分割して、王子計測機器製の位相差測定装置「KOBRA WWR/XY」により、波長590nmに対する位相差を測定する。測定は20mmx20mmのメッシュに分割して行い、分割したメッシュの中で最も大きな位相差を最大位相差とし、また、150nm以下の位相差を示したメッシュの全メッシュに対する割合を成形品の位相差が150nm以下の面積の全面積に対する割合とする。」


第3.当審の拒絶理由
当審における平成29年3月31日付けの拒絶理由通知は、概略、以下の二つの拒絶の理由を含むものである。

・理由1(明確性)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
B.請求項1の発明特定事項のうち、「位相差」について検討する。当該請求項1でいう「位相差」とは、Δn(複屈折率)、Δn・d(レターデーション)又は表面粗さに基づく値なのか、或いは全く別の物理量なのか、どのような物理量を意味しているのかが請求項の記載からは明確に把握できない。

・理由3(進歩性)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
E.
・請求項 1
・引用文献等 1,5
1.特開2009-161746号公報
5.国際公開第2009/044907号


第4.当審の判断
1 特許法第36条第6項第2号について
特許法第36条第6項第2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は、仮に、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許が付与された発明の技術的範囲が不明確となり,第三者の利益が不当に害されることがあり得るので、そのような不都合な結果を防止することにある。
そうすると、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

まず、本願請求項1の発明特定事項のうち、「位相差」とは、Δn(複屈折)を意味しているのか、又はΔn・d(レターデーション)意味しているのかが特許請求の範囲に記載されていないため、いかなる物理量であるのかが明らかではない。

また、平成29年6月22日提出の補正書によって当該請求項1の中に追加された部分であって、また本願明細書の段落【0104】にも同様の記載がある、以下の記載内容についても検討する。
「<成形品の位相差の測定と成形品の位相差が150nm以下の面積の割合>
500mmx500mmx3mmの成形プレートを分割して、王子計測機器製の位相差測定装置「KOBRA WWR/XY」により、波長590nmに対する位相差を測定した。測定は20mmx20mmのメッシュに分割して行い、分割したメッシュの中で最も大きな位相差を最大位相差とし、また、150nm以下の位相差を示したメッシュの全メッシュに対する割合を成形品の位相差が150nm以下の面積の全面積に対する割合とする。」
しかしながら、請求項中の記載であるか明細書中だけの記載であるかによらず、かかる測定方法の記載を詳細にみると、結局のところ「位相差」というものを測定するための装置名が特定されているだけであって、その他は、「位相差」なるものを用いて当該請求項1中で設定されたパラメータの算出方法を特定しているだけである。よって、そもそも当該測定装置によって得られる「位相差」というものがいかなる物理量を意味しているのかは依然として不明なままである。
また、位相差測定装置「KOBRA WWR/XY」なる装置が、どのような種類の物理量を測定可能なものであって、そこから得られる「位相差」というものが一義的に定まるものといえるのかについても、技術常識から明らかであるとは認められない。

さらに、本願出願時の技術常識を示すものとして、「化学大辞典編集委員会編『化学大辞典1』、縮刷版、共立出版株式会社、1963年7月1日発行、第586頁左欄第39-54行」には、「いそうさ 位相差」の説明として次のとおり記載されている。
「いそうさ 位相差 [英phase difference 独Phasendifferenz] 単周期的な二つの運動が同じ状態にあるとき、その状態に対応するそれぞれの運動の位相の差をいう。したがって、周期の等しい二つの単振動の位相差は初位相の差となる。二つの波動の進行の場合について考えると、二つの波の同じ状態(たとえば振幅極大)に対応する点(場所または時刻)の差を角度で表わしたものが位相差となる。たとえば同一光源から出た波長λの光が二つに分かれて、一つは屈折率n、厚さdの媒質を通り、他は屈折率n’、厚さd’の媒質を通って再び合成される場合、二つの光の同じ状態に対応する点の差異は光路差(nd?n’d’)で表わされる。したがって、これを角度で表わせば、位相差(2π/λ)(nd-n’d’)となる。」(下線は合議体による。)
かかる記載を踏まえると、「位相差」とは角度の差であるから、通常は無次元の値であるにもかかわらず、本願請求項1では「位相差」の単位として長さの単位「nm」を有することが特定されているため、技術常識からみても当該請求項1における「位相差」が何を意味しているのかが明確でないといえる。

なお、上記第3でも述べたとおり、当審において平成29年3月31日付の拒絶理由通知によって、「位相差」がいかなる物理量を意味しているのかについて審判請求人に意見を述べる機会を与えたところ、平成29年6月22日提出の意見書において、次のとおり主張をしている。
「審査官殿のご指摘に対し、出願人は請求項1の記載が明確になるように補正いたしました。すなわち、補正前の請求項1の規定「該成形品の板状部の最大位相差が250nm以下であり、且つ、該成形品の板状部において位相差が150nm以下の面積の割合が該成形品の板状部の全面積に対して50%以上である」との規定について、実施例を根拠に、その測定方法を規定する補正を行いました。
また、当該物理量の規定の意味としては、段落0086?0088に記載のとおり、最大位相差の値が小さいほど成形品の光学歪みが低くなり、光学用途の使用により適するものであり、また、板状部における位相差150nm以下の面積の割合は、この割合が小さすぎると成形品の光学歪みが高い面積の割合が大きくなり、光学用途に使用し難いものであり、光学用途としての適性を表す物理量であることが説明されています。
よって、上記の補正により、請求項1でいう「位相差」がどのような測定原理に基づいて測定されているのかが明確になり、それがどのような意味の物理量を表しているのかが明細書に明確に記載されています。
よって、当該拒絶理由は解消したものと思料します。」
確かに、審判請求人が主張しているように、当該「位相差」を用いて設定されたパラメータの大小と本願発明の課題でもある光学歪みとの関係が説明されていることは認められる。しかしながら、上でも述べたように、測定装置を特定したとしても、結局のところ当該測定装置による「位相差」なるものがいかなる物理量を意味しているのかが明らかにされておらず、当該装置の測定原理も明らかにされていない。その上、上記拒絶理由通知において「Δn(複屈折率)、Δn・d(レターデーション)又は表面粗さ」等の具体的な物理量のどれを意味しているのかといった明示的な問いがあったにもかかわらず、どの物理量を「位相差」と言っているのかについては具体的に述べられていない。よって、審判請求人の主張をみても、依然として「位相差」がいかなる物理量を意味しているのかが明確にならない。

以上のことから、本願請求項1の「位相差」については、特許請求の範囲及び明細書の記載、技術常識並びに審判請求人の主張を踏まえても、依然としていかなる物理量を意味しているのかが明確でない。よって、当該「位相差」の意味が明確でない以上、当該「位相差」から設定されるパラメータについても明確でないから、当該パラメータの数値範囲によって特定される請求項1に係る発明も明確でないといわざるを得ない。そして、請求項1に係る発明が明確でないと、第三者にとっても本願請求項1に係る発明の範囲が明確に把握できないことは明らかである。
したがって、本願の請求項1の記載は、第三者の権利が不当に害されるほどに不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


2 特許法第29条第2項について
(1)本願発明
本願発明1については、上記1に示したとおり、依然として不明確であるものの、「位相差」の単位について「nm」が付されていることを考慮し、長さの単位で表されるものとしてレターデーション(Δn・d)を意味しているものと一応解した上で、以下検討を進める。

(2)引用例の記載事項
当審による平成29年3月31日付け拒絶理由通知において引用例5として引用された、本願の優先日前に頒布されたことが明らかな刊行物である国際公開第2009/044907号(以下、「引用例A」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、記載事項中の下線は合議体によるものである。)


「技術分野
本発明は色相が改善された植物由来成分を有するポリカーボネート、該ポリカーボネートからなる成形体、および該ポリカーボネートの製造方法に関する。」(第1頁第5?7行)


「しかし、従来の検討における最大の問題は、石油原料の一般的なポリマーに比べて、イソソルビド等の無水糖アルコールを原料としたポリマーは色相が悪いことであり、これが商品化や用途展開の支障になっていた。
・・・(中略)・・・
発明が解決しようとする課題
本発明の目的は、色相が良好な植物由来成分を有するポリカーボネート、当該ポリカーボネートからなる成形体及び当該ポリカーボネートの製造方法を提供することにある。なお、以下において、特に注記が無い限り、ポリマーとの記載は、該植物由来成分を有するポリカーボネートのことを指す。」(第2頁第3?25行)


「発明の効果
本発明によれば、植物由来成分を有する良好な色相のポリカーボネート、当該ポリカーボネートからなる成形体、および当該ポリカーボネートの製造方法を提供することができる。
本発明のポリカーボネートは、再生可能資源である植物由来の成分からなり環境負荷が小さく、かつ色相が非常に良好であるため種々の用途に極めて有用である。」(第9頁第14?19行)


「本発明の製造方法では、好ましくは重合触媒の存在下、原料である無水糖アルコール組成物と、グリコール類と、炭酸ジエステルとを常圧で加熱し、予備反応させた後、減圧下で280℃以下の温度で加熱しながら撹拌して、生成するフェノール等のフェノール類または脂肪族アルコールを留出させる。反応系は窒素などの原料、反応混合物に対し不活性なガスの雰囲気に保つことが好ましい。窒素以外の不活性ガスとしては、アルゴンなどを挙げることができる。
・・・(中略)・・・
本発明の製造方法において、無水糖アルコールの分解を抑え、着色が少なく高粘度の樹脂を得るためにはできるだけ低温の条件が好ましいが、重合反応を適切に進めるためには重合温度は180℃以上280℃以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは230?270℃の範囲に最高の重合温度がある条件である。」(第13頁第29行?第14頁第14行)


「本発明のポリカーボネート、または製造方法によって得られたポリカーボネートは、光メディア用途、電気・電子・OA用途、自動車・産業機器用途、医療・保安用途、シート・フィルム・包装用途、雑貨用途をはじめとする様々な用途に幅広く用いることができる。具体的には、光メディア用途としてDVD、CD-ROM、CD-R、ミニディスク、電気・電子・OA用途として携帯電話、パソコンハウジング、電池のパックケース、液晶用部品、コネクタ、自動車・産業機器用途としてヘッドランプ、インナーレンズ、ドアハンドル、バンパ、フェンダ、ルーフレール、インバネ、クラスタ、コンソールボックス、カメラ、電動工具、医療・保安用途として銘板、カーポート、液晶用拡散・反射フィルム、飲料水タンク、雑貨としてパチンコ部品、消火器ケースなどが挙げられる。」(第15頁第3?12行)


「III.発明8、9
・・・(中略)・・・
本発明では、重縮合触媒としてバリウム化合物を用いる。バリウム化合物を重縮合触媒として用いると、最も一般的なナトリウム化合物を用いた場合に比べ、同じ重縮合条件での重合速度が際立って大きい、触媒活性を低下させるような不純物や添加剤があっても影響を受けにくいといった特徴がある。」(第31頁第22行?第32頁第4行)


「バリウム化合物の重縮合触媒としての使用量は、全ジオール成分1モルあたり、バリウム元素として1×10^(-7)から1×10^(-5)モルの範囲にあるのが好ましく、1×10^(-7)?5×10^(-6)モルの範囲にあるとより好ましい。
前記発明8、9によって製造されるポリカーボネートは、Na、Ca、Feの含有量合計が10質量ppm以下、より好ましくは7質量ppm以下、特に好ましくは3質量ppm以下である。Na、Ca、Feの含有量合計がこの範囲を超えると着色が顕著になり、溶融安定性や耐加水分解性が悪化するなどの問題があり好ましくない。」(第32頁第14?20行)


「III.発明8?9に対応する実施例
・・・(中略)・・・
[実施例20]
単蒸留を1回施したイソソルビド(ロケット社製)(61.38g、0.42mol)、1,3-プロパンジオール(14.38g、0.19mol)およびジフェニルカーボネート(128.53g、0.6mol)を三ツ口フラスコに入れ、重縮合触媒として炭酸バリウム(0.0592mg、3×10^(-7)mol)およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(5.47mg、6.0×10^(-5)mol)を加え窒素雰囲気下180℃で溶融した。攪拌下、反応槽内を100mmHg(13.33kPa)に減圧し、生成するフェノールを溜去しながら約20分間反応させた。次に200℃に昇温した後、フェノールを留去しながら30mmHg(4.00kPa)まで減圧した。更に減圧・昇温して、最終的に250℃、0.8mmHg(0.11kPa)の条件下で反応させた。250℃、0.8mmHg(0.11kPa)に到達した時点を時間0分とし10分後にサンプリングして、このサンプルを用いて分析、測定を行って各種の物性値を求めた。結果を表4に示す。」(第44頁第1行?第45頁第2行)


「更に、射出成形機を用いてシリンダー温度250℃、金型温度80℃にて厚さ3mm×幅12.5mm×長さ63mmの試験片を成形して外観を目視確認した。」(第47頁第29行?第48頁第1行)



」(第49頁)


「8. 下記式(7)

(R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれる基であり、R^(G)は炭素数が2から12である脂肪族基であり、またtは0.4≦t≦1である)
で表されるポリカーボネートを製造するにおいて、
Na、Ca、Fe含有量合計が2質量ppm以下である、下記式(1)で表される無水糖アルコールと、

(R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれる基である)
Na、Ca、Fe含有量合計が2質量ppm以下である、下記式(3)で表されるジオールとをジオール成分として用い、

(R^(G)は炭素数が2から12である脂肪族基)
Na、Ca、Fe含有量合計が2質量ppm以下である、下記式(4)

(R^(A)およびR^(B)は、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれる基であり、R^(A)とR^(B)は同じ基であっても異なる基であってもよい。)
で表される炭酸ジエステルを炭酸成分として用い、重縮合触媒としてバリウム化合物の存在下に溶融重縮合させることを特徴とするポリカーボネートの製造法。
9. 請求項8記載の製造法によって得られる、ポリマー中のNa、Ca、Fe含量が10質量ppm以下であり、かつCol-b値が5以下であるポリカーボネート。」(特許請求の範囲の請求項8及び9(第56頁第4行?第57頁第7行))

(3)引用発明
記載事項アとイによれば、引用例Aは、植物由来成分であるイソソルビドを用いたポリカーボネートについて色相が改善されたものを提供し、さらに当該ポリカーボネートからなる成形体を提供することを課題とする文献であり、記載事項エによれば色相が改善するとは着色が少なくなることを意味するものである。そして、記載事項ウによれば、効果として色相が良好であるポリカーボネートは種々の用途に極めて有効である旨も記載されている。
そして、上記の課題の解決及び効果を達成する発明として、記載事項サにおいて、請求項8にはポリカーボネートの製造方法が、また請求項9には当該製造方法によって得られるポリカーボネートが記載されている。したがって、請求項8の製造方法の記載を書き下した請求項9のポリカーボネートに着目すると、引用例Aには、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

引用発明:
「下記式(7)

(R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれる基であり、R^(G)は炭素数が2から12である脂肪族基であり、またtは0.4≦t≦1である)
で表されるポリカーボネートであって、
Na、Ca、Fe含有量合計が2質量ppm以下である、下記式(1)で表される無水糖アルコールと、

(R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれる基である)
Na、Ca、Fe含有量合計が2質量ppm以下である、下記式(3)で表されるジオールとをジオール成分として用い、

(R^(G)は炭素数が2から12である脂肪族基)
Na、Ca、Fe含有量合計が2質量ppm以下である、下記式(4)


(R^(A)およびR^(B)は、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれる基であり、R^(A)とR^(B)は同じ基であっても異なる基であってもよい。)
で表される炭酸ジエステルを炭酸成分として用い、重縮合触媒としてバリウム化合物の存在下に溶融重縮合させることを特徴とするポリカーボネートの製造法によって得られる、
ポリマー中のNa、Ca、Fe含量が10質量ppm以下であり、かつCol-b値が5以下であるポリカーボネート。」

(4)対比
本願発明1と引用発明を対比する。
引用発明において、重縮合をさせる原料として記載されている式(1)で表される無水糖アルコールについては、引用例Aの記載事項クによれば、例えばイソソルビドを用いる例が開示されている。ここで、イソソルビドとは、引用発明の式(1)においてR^(1)?R^(4)のいずれも水素原子の場合の化合物である。よって、引用発明の式(7)における



の部分は、そのようなイソソルビドを代表とする無水糖アルコールに由来する構造単位を表していることは明らかである。
一方、本願発明1の一般式(2)で表される化合物



については、本願明細書の段落【0024】において、「イソソルビド、イソマンニド、イソイデット」のジヒドロキシ化合物であることが記載されており、中でも、イソソルビドが最も好ましい旨記載されている。
ここで、引用発明に係る「ポリカーボネート」とは成形前のポリカーボネート樹脂を意味するものであることは明らかであることを考慮すると、引用発明の式(1)で表される無水糖アルコールがイソソルビドである場合、それを用いて製造された引用発明に係るポリカーボネートは、本願発明1の「下記一般式(2)で表される化合物に由来する構造単位(a)を少なくとも含むポリカーボネート樹脂」に相当するものである。

また、引用発明において「重縮合触媒としてバリウム化合物の存在下に溶融重縮合させる」ことが特定されていることからみて、引用発明のポリカーボネートには、触媒として用いられた「バリウム化合物」が含有されている。そして、当該「バリウム」は長周期型周期表第2族の金属であることは明らかであることから、引用発明も「長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を含有」している点において、本願発明1と共通している。

これらのことから、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致している。
「下記一般式(2)で表される化合物に由来する構造単位(a)を少なくとも含むポリカーボネート樹脂であって、
前記ポリカーボネート樹脂が、長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を含有するポリカーボネート樹脂。
【化1】



そして、本願発明1と引用発明とは、次の点で相違している。
(相違点1)
ポリカーボネートについて、本願発明1は「ポリカーボネート樹脂から成形された板状部を主体とする成形品」であって、かつ「該成形品の板状部の厚みが0.5mm以上5mm以下」であることが特定されているのに対し、引用発明は単に「ポリカーボネート」である点。

(相違点2)
金属化合物の含有量について、本願発明1では「金属量として20重量ppm以下」と特定されているのに対し、引用発明では金属化合物の含有量についての特定がされていない点。

(相違点3)
成形品の特性について、本願発明1は
「ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の波長350nmにおける光線透過率が60%以上であり」、
「前記ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の波長320nmにおける光線透過率が30%以上であり」、
「前記ポリカーボネート樹脂から成形された成形体(厚さ3mm)の初期のイエローインデックス値(初期のYI値)が7以下であり」、さらに、
「<成形品の位相差の測定と成形品の位相差が150nm以下の面積の割合> 500mmx500mmx3mmの成形プレートを分割して、王子計測機器製の位相差測定装置「KOBRA WWR/XY」により、波長590nmに対する位相差を測定する。測定は20mmx20mmのメッシュに分割して行い、分割したメッシュの中で最も大きな位相差を最大位相差とし、また、150nm以下の位相差を示したメッシュの全メッシュに対する割合を成形品の位相差が150nm以下の面積の全面積に対する割合とする」という方法で測定された「成形品の板状部の最大位相差が250nm以下であり、且つ、該成形品の板状部において位相差が150nm以下の面積の割合が該成形品の板状部の全面積に対して50%以上であること」を発明特定事項とするものであるのに対し、引用発明ではそれらの発明特定事項を有するか不明な点。

(5)相違点についての判断
相違点1について:
引用発明に係る「ポリカーボネート」とは、成形前のポリカーボネート樹脂を意味するものであることは先にも述べたとおりである。そして、引用例Aの記載事項イによれば、発明の課題として「ポリカーボネートからなる成形体」を提供することが記載されている。また、同引用例Aの記載事項オによれば、ポリカーボネートの用途として、「DVD、CD-ROM、CD-R」などが例示されているところ、当該「DVD、CD-ROM、CD-R」は、板状の構造を有する成形体であることは明らかである。さらに、同引用例Aの記載事項ケにおける実施例22では、必ずしも引用発明の具体的な実施形態を直接的に表したものではないが、ポリカーボネートから厚さ3mmの試験片を成形したことが記載されている。
このように引用例Aにおいて「DVD、CD-ROM、CD-R」といった板状の成形体と成すことの示唆等があることから、引用発明に係るポリカーボネートを加工して「板状部を主体とする成形品」と成すことは、当業者であれば容易に想到する事項である。
その際に、引用例Aに具体的に記載された3mmという厚さを参考にして、引用発明の成形品を製造することは当業者が容易に想到する事項であるし、本願明細書の記載全体をみても、本願発明1について「0.5mm以上5mm以下」と数値範囲を限定したことで格別顕著な効果が奏されるとも認められないのであるから、当該3mmを包含する「0.5mm以上5mm以下」の数値範囲のものとすることは当業者が適宜になし得たことである。

相違点2について:
引用例Aには、得られたポリカーボネート樹脂中の金属量については明示的な記載はないものの、記載事項キには、触媒であるバリウム化合物の使用量について、「全ジオール成分1モルあたり、バリウム元素として・・・(中略)・・・1×10^(-7)から5×10^(-6)モルの範囲にあるとより好ましい」と記載さている。
一方、本願明細書の例えば段落【0108】に記載された実施例1を参照すると、触媒である酢酸カルシウムの使用量については、「モル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.69/0.31/1.00/1.3×10^(-6)になるように仕込み・・・」と記載されている。そして、この実施例1において製造されたポリカーボネート樹脂組成物の金属量については、本願明細書の段落【0114】の【表1】に示されているように、カルシウム(Ca)が1.3重量ppmであり、Csが測定限界未満となっている。本願明細書のかかる実施例の結果を参考にすると、全ジオール成分であるISB(イソソルビド)とCHDM(1,4-シクロヘキサンジメタノール)を足し合わせた1.00モルあたり、カルシウム元素として1.3×10^(-6)モル仕込んだときに、カルシウム金属を1.3重量ppmの濃度で含むポリカーボネート樹脂組成物が得られたことが理解できる。
よって、引用例Aにおいて示唆されている、全ジオール成分1モル当たり1×10^(-7)から5×10^(-6)モルの量という金属触媒の仕込み量は、上記本願明細書の実施例1の記載における金属触媒の仕込み量1.3×10^(-6)と比べて同じオーダー又はさらに一桁低いオーダーの範囲の量に相当している。したがって、引用発明において、そのような金属触媒の仕込み量に基づいて製造されるポリカーボネート樹脂に含有される金属触媒由来の金属量についても、本願明細書の実施例1における1.3重量ppmよりも一桁低いオーダーであるか又は同じオーダーの量となるものと推定され、当該量は、本願発明1で特定されるところの20重量ppm以下という数値範囲の条件を満たすものであることは明らかである。
さらに、引用例Aの記載事項キにおいては、バリウム以外の金属である「Na、Ca、Fe」の含有量について3質量ppm以下とすることが好ましい旨及び、その範囲を超えるとポリカーボネートの着色が顕著になる旨記載されている。したがって、そもそも樹脂の着色を抑えるという観点からみても、ポリカーボネート樹脂に含まれる金属が少ないほうが望ましいことが、既に引用例Aにおいて明示的に示唆されているのであるから、引用発明においても金属含有量を低く抑えようとすることも当業者が容易に想到し得ることである。
以上のことから、当業者であれば、引用発明Aにおいて、引用例で示唆されている金属触媒の仕込み量を適用し、そのようにすることで金属化合物の含有量を20重量ppm以下とすることは容易になし得たことである。

相違点3について:
引用例Aの記載事項ウによれば、発明の効果として、良好な色相のポリカーボネートが得られたことが記載されており、また記載事項コによれば、ポリマーの色相(col-b)に加えて、成形体の外観(目視)についても実施例についてはいずれも「良好」、比較例については「黄色味がかる」という評価が記載されている。
また、当審による平成29年3月31日付け拒絶理由通知において引用例1として引用された、本願優先日前に頒布されたことが明らかな刊行物である、特開2009-161746号公報(以下、「引用例B」という。)は、上記引用発明で特定された無水糖アルコールと同じくジヒドロキシ化合物を、重合触媒の存在下、炭酸ジエステルと反応させる工程を含むポリカーボネートの製造方法及び当該ポリカーボネートの成形物を開示する文献であるところ、当該引用例Bの段落【0008】には次の記載がある。
「本発明者らは、上記課題を解決するべく、鋭意検討を重ねた結果、分子内に少なくとも一つの連結基-CH_(2)-O-を有するジヒドロキシ化合物、例えば下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物とから得られるポリカーボネートが、機械的強度に優れ、耐熱性があり、屈折率が小さく、アッベ数が大きく、複屈折が小さく、透明性に優れていることを見出した。」
かかる記載からみて、引用例Bには、引用例Aに記載された引用発明と同様の材料、すなわちイソソルビドを含む無水糖アルコールを用いてポリカーボネートを調製するに当たり、屈折率、アッベ数、複屈折及び透明性の点に着目して、これらについて屈折率が小さく、アッベ数が大きく、複屈折が小さく、透明性に優れているものを提供したことが記載されている。ここで、本願発明1における「光線透過率」は引用例Bの「透明性」に対応するものであり、また本願発明1における「位相差」は引用例Bの「複屈折」であるΔnに波長dを乗じたΔn・dすなわちレターデーションに対応するものと認められる。
かかる引用例AおよびBの記載を踏まえると、イソソルビドを含む無水糖アルコールを原料とするポリカーボネートについて、色相のみならず、光線透過率や位相差等を改善しようとすることは、本願優先日前から当業者に周知の課題であったといえる。そうすると、そのような課題を踏まえて、引用発明において、黄色味を含む色相や光線透過率及び位相差に着目し、それらに対応するパラメータを設定し、所望の範囲を定めることは当業者が容易に想到することである。
その際に、引用発明において、本願発明1で特定された「光線透過率」、「初期イエローインデックス値」及び「位相差」に関する各パラメータの数値範囲とすることの技術的困難性について次に検討するが、引用例Aには、それらパラメータについての直接的な記載がないゆえ、ポリカーボネート樹脂および成形品の製造方法の観点から検討することとする。
引用例Aの記載事項クには、イソソルビドを含むジオール成分とジフェニルカーボネートに金属触媒を加えて縮重合させてポリカーボネートを調製したことが記載されている。
また、引用例Aにおける成形時の条件として、記載事項ケにおいて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃としたことが記載されており、また引用例Bにも次の記載がある。
「ポリカーボネートを用いたレンズの成形には、射出成形機や、射出圧縮成形機が適合し、この際の成形条件としては、特に金型表面温度と樹脂温度が重要である・・・金型表面温度は30℃以上170℃以下が好ましく、また、この時の樹脂温度は220℃以上290℃以下となるようにするのが良い。金型表面温度が30℃以下の場合には、樹脂の流動性と転写性が共に悪く、射出成形時に応力歪が残って、複屈折率が大きくなる傾向があり、また、金型温度が170℃以上の場合、転写性は良いが、離型時に変形し易い。また、樹脂温度が290℃以上の場合は樹脂の分解が起こり易く、成形品の強度低下、着色の原因となる。また、成形サイクルも延びるので経済的でない。
上記ポリカーボネートから光学材料、光学部品を成形する場合には、原料の投入工程を始め、重合工程、得られた共重合体を冷媒中に押し出してペレット状又はシート状にする工程では、塵埃等が入り込まないように留意して行う事が望まれる。このクリーン度は、通常コンパクトディスク用の場合にはクラス1000以下であり、更に高度な情報記録用の場合にはクラス100以下である。」(段落【0133】-【0134】、下線は合議体による。)
かかる引用例AとBの記載に基づくと、引用例AやBに記載された製造方法は、本願明細書に記載されている実施例(段落【0108】?【0111】)の製造方法と同等であり、本願発明1を実施する製造方法は特別なものとはいえないから、本願発明1で特定された「光線透過率」、「初期イエローインデックス値」及び「位相差」の各パラメータの数値範囲は、引用発明においても、引用例A及びBの記載に基づいた製造方法を適用することによって容易に得られる範囲にすぎないものと認められる。

また、引用発明もポリカーボネート樹脂中に長周期型周期表第2族の金属を含有するものであること等を踏まえると、本願発明1が引用発明に比して顕著な効果を奏するものであることは本願明細書に記載されていないし、また、本願明細書の記載全体及び技術常識を考慮したとしても、本願発明がそのような顕著な効果を有するものであるとは理解できない。

(6)審判請求人の主張
審判請求人は、平成29年6月22日提出の意見書の特に「[6]理由3について」の部分で、次のとおり主張している。
「引用文献5(合議体注:この審決における引用例Aと同じ)に記載の発明は、その実施例のポリカーボネート樹脂の製造の最終段階において、重合する温度を250℃まであげています。本発明の明細書の段落0088に記載の以下のとおり、引用文献5に記載のような250℃という高温での重合温度は、ポリカーボネートの着色または熱劣化し、色相または耐光性が悪化してしまいます。
『特にポリカーボネート樹脂の着色または熱劣化を抑制し、色相または耐光性の良好なポリカーボネート樹脂を得るには、全反応段階における内温の最高温度が250℃未満であることが好ましく、特に225?245℃であることが好ましい。また、重合反応後半の重合速度の低下を抑止し、熱履歴による劣化を最小限に抑えるためには、重合の最終段階でプラグフロー性と界面更新性に優れた横型反応器を使用することが好ましい。』
ここで、本発明の基礎出願の先願で同一出願人の出願である国際公開第2011/065505号パンフレットには、重合時の温度が250℃以上としたポリカーボネート樹脂の比較データがあります。それらの耐光性試験のデータは、実施例の耐候性試験のデータよりも悪くなっております。
具体的には、比較例1-3、比較例2-3、比較例3-4は、重合の最終段階の温度を260℃とした例であり、これらの例は、実施例と比較し、耐光性が悪くなっております。すなわち、このような高温の熱履歴を与えたポリカーボネート樹脂を用いて、本発明の樹脂組成物の構成にしたとしても、本発明の効果を得ることはできません。」

上記審判請求人の主張について検討する。
確かに、本願明細書の段落【0062】によれば、重合温度を250℃未満とすることが色相または耐光性の観点で良好である旨が記載されている(なお、段落【0088】にはそのような記載はない)。また、引用例Aの記載事項クは、引用発明を具体的に実施するための一つの態様であるところ、当該箇所には「最終的に250℃」の条件下で重合反応を行うことが記載されている。
しかしながら、本願明細書の実施例等をみても、重合温度の最大値の違い、例えば250℃未満と250℃とした場合の違いとして、どのように効果に影響するのかについて具体的なデータが示されているわけではない。よって、本願明細書の段落【0062】の記載があるとはいえ、引用発明に比して、本願発明1が色相及び耐光性の点で予測のできない効果が得られるものとは認めることができない。
また、引用例Aの記載事項エを詳細にみると、「無水糖アルコールの分解を抑え、着色が少なく高粘度の樹脂を得るためにはできるだけ低温の条件が好ましいが、重合反応を適切に進めるためには・・・より好ましくは230?270℃の範囲に最高の重合温度がある条件である」と250℃未満の温度範囲が記載されているのであるから、かかる記載に基づけば、着色をより少なくするために、250℃よりもさらに低い温度で実施しようとすることは、当業者が容易に想到する事項である。

さらに、審判請求人が主張するとおり、国際公開第2011/065505号によって、縮重合時の内温を230℃とした場合に比べて260℃とした場合に耐光性が悪化することが示されているといえるものの、引用例Aの記載事項クの実施例20では、上でも述べたように最高250℃で重合が行われているのであって、当該国際公開において耐光性の点で劣るとされる比較例の重合温度260℃よりも低い温度である。そうすると、250℃という温度が作用効果の点で臨界的な意義を有するとはいえない。
したがって、審判請求人の主張については理由がない。

(7)小括
以上のことからみて、相違点1?3はいずれも当業者が容易に想到する事項であるから、本願発明1は、引用発明に基づき、引用例A及びBの記載を参考にして、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第5.むすび

以上のとおりであるから、本願の請求項1は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願の請求項1に係る発明は、引用発明に基づき、引用例A及びBの記載を参考にして、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこれらの理由により拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-25 
結審通知日 2017-08-01 
審決日 2017-08-22 
出願番号 特願2011-180817(P2011-180817)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C08J)
P 1 8・ 537- WZ (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大村 博一  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 佐久 敬
橋本 栄和
発明の名称 樹脂成形品  

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